機械設計公開 2026-09-10

はめあい・軸まわり設計の計算まとめ|締め代・圧入・焼きばめ

図面のどこにも「締め代」という数字は書いていない

歯車を軸に圧入することになって、必要な圧入力を計算しようとする。ツールを開くと、最初の入力欄に「締め代 [mm]」と出てくる。

そこで図面に戻るのだが、書いてあるのは φ40 H7/u6 だけだ。締め代という数字はどこにもない。焼きばめの加熱温度を出そうとしても同じで、やはり締め代から聞かれる。

つまり実務の入口(図面のはめあい記号)と、計算ツールの入口(締め代の数値)が一段ずれている。この一段は、JIS B 0401 のはめあい表を引く作業で、慣れていれば1分、慣れていなければ「どの表のどの行か」で30分溶ける。

しかもこの一段は、単なる変換ではない。同じ H7/u6 でも呼び径がφ35かφ45かで締め代が3割変わるし、表から出た締め代がそのまま効くわけでもない(表面の凹凸が潰れるぶんが引かれる)。

この記事は、はめあい記号から始めて、締め代 → 面圧 → 伝達トルク → 圧入力・加熱温度 まで一本につなぐための地図として書いた。各領域にブラウザだけで動く無料の計算ツールを紐づけてある。

なぜこの記事を書いたのか|「回り止め」の選択肢が横並びで比べられない

軸に部品を固定する方法は4つある。キー、スプライン、テーパ、締りばめ(圧入・焼きばめ)。

ところが設計の現場でこの4つが同じ土俵で比較されることは、ほとんどない。キーの計算はキーのツール、圧入の計算は圧入のツールで、出てくる数字の単位も判定基準も違う。「この軸、キーで足りるのか、圧入にすべきか」を決めたいだけなのに、比べる方法がない。

方式決め手になる数字分解位相決め
平行キーせん断応力・面圧できるできる
スプライン歯面の面圧できる歯数ぶんの分解能
テーパ押し込み量と締結力できる締めるまで自由
締りばめ締め代・接触面圧事実上できない自由(入れたら固定)

さらに厄介なのが、この選択が「はめあい記号をどう書くか」と一体だということ。キーで回り止めするなら軸と穴は中間ばめでいい。締りばめで回り止めするなら、そもそも締め代がトルクを伝える主役になる。回り止め方式を決めないと、はめあい記号も決まらない

なお、必要な軸径そのものをトルクから出す話や、歯車・ベルトから軸に入る力の話は動力伝達設計まとめが扱っている。この記事は軸径が決まったあと——そこに何をどう固定し、どう精度を出すかに絞っている。

軸まわりの全体像|12の確認領域と、決める順番

#領域決めるもの対応ツール
1はめあい記号記号 → 上下の寸法許容差JIS はめあい検索ツール
2基準方式穴基準か軸基準か穴基準/軸基準方式アドバイザー
3はめあいの選定用途 → 推奨記号はめあいグレード選定アシスタント
4しまりばめ締め代 → 面圧 → トルク → 圧入力圧入・締りばめ しめしろ計算
5焼きばめ・冷やしばめ加熱/冷却温度熱膨張フィットシミュレーター
6運転温度温度ではめあいが変わる熱膨張フィットシミュレーター
7回り止め方式キー/スプライン/テーパ/圧入キー溝強度チェッカー / スプライン強度計算シミュレーター / テーパー・勾配 変換計算
8軸受まわりはめあいと寿命ベアリング寿命計算 / すべり軸受 PV値・寿命設計ツール
9芯出しシム量・水平移動量カップリング芯出しシム計算
10回転バランス許容アンバランス・修正質量動バランス計算シミュレーター / 慣性モーメント計算機
11軸そのもの段付きR・疲労・危険速度応力集中係数Kt計算 / 疲労寿命シミュレーター / 固有振動数・共振計算ツール
12図面化粗さ・公差の積み上げ・シール表面粗さ換算ブリッジ / 公差積み上げシミュレーター / Oリング溝設計計算

決める順序

① 回り止め方式を決める(キー/スプライン/テーパ/締りばめ)
  ↓ これが決まらないと、はめあいの狙いが決まらない
② 穴基準か軸基準かを決める(図面体系の話。部品単位ではなく設計全体で1つ)
  ↓
③ 用途から はめあい記号 を選ぶ(H7/g6・H7/n6・H7/u6 …)
  ↓ ここで初めて
④ 呼び径を入れて 締め代/すきま の数値を引く
  ↓ しまりばめなら
⑤ 面圧 → 伝達トルク → 圧入力 → 加熱温度 と展開する
  ↓ 並行して
⑥ 運転温度での再確認(常温で決めた値は運転時には別物)

②を部品ごとに決めてしまうのが、いちばんよくある事故だ。同じ装置の中で穴基準と軸基準が混在すると、加工指示も検査治具も二重になる。

①はめあい記号を分解する|H7/g6 は3つの情報でできている

φ40 H7/g6 という表記は、3つの情報が詰め込まれている。

φ40   H7        /  g6
│     │  │         │  │
│     │  └ IT等級(公差の幅)
│     └── 基本偏差(公差域の位置。大文字=穴、小文字=軸)
└──────── 呼び径(基準寸法)
  • 基本偏差は公差域が基準寸法からどちら側にどれだけ離れているかを示す。穴の H は下側偏差ゼロ(つまり基準寸法以上)、軸の h は上側偏差ゼロ(基準寸法以下)で、この2つが基準になる
  • IT等級は公差の幅そのもの。数字が小さいほど狭い。φ40なら IT6 = 16 µm、IT7 = 25 µm、IT8 = 39 µm

重要なのは、同じ記号でも呼び径が変わると数値が変わること。IT等級は基準寸法の区分ごとに値が決まっているし、基本偏差も区分ごとの表になっている。記号は径に依存しない顔をしているが、実際の数値は径で決まる

JIS はめあい検索ツールに呼び径と穴・軸のクラスを入れると、上下の寸法許容差とすきま・締め代の範囲、そして「すきまばめ/中間ばめ/しまりばめ」の分類が出る。

3つの分類

分類定義代表例用途
すきまばめ常に すきま > 0H7/g6・H7/h6・H8/f7回る・すべる・分解する
中間ばめすきまにも締め代にもなりうるH7/js6・H7/k6・H7/n6位置決めしたいが分解もしたい
しまりばめ常に 締め代 > 0H7/p6・H7/s6・H7/u6回り止めそのものを担わせる

中間ばめは「どちらにもなる」のであって「ちょうどいい」わけではない。φ40 H7/n6 なら −8 µm(すきま8 µm)から +33 µm(締め代33 µm)まで振れる。ロットによって手で入るものと、プレスが要るものが混在する。これを許容できる用途にだけ使う。

②穴基準か軸基準か|部品ごとではなく設計全体で1つ

穴と軸の両方を狙いの寸法で作るのは無駄なので、片方を固定してもう片方で調整する。どちらを固定するかが基準方式の話だ。

  • 穴基準(H7 を固定して軸側で調整)— JIS のデフォルト。穴は工具径に依存して公差を動かしにくいので、こちらが基本
  • 軸基準(h6 を固定して穴側で調整)— 1本の軸に複数の部品を付ける場合や、引抜き・研削済みの標準シャフトを使う場合

穴基準/軸基準方式アドバイザーに構成を入れると、根拠つきで診断が出る。代表的な答えは次のとおり。

構成推奨理由
1本の軸に複数の穴部品軸基準軸を1寸法で精密加工し、部品側の穴で個別調整するほうが安い
1つの穴に複数の軸穴基準穴を1寸法で加工し、軸側で調整
標準シャフト(引抜・研削品)を使う軸基準流通品が h 等級寸法で来るので、それに合わせる
転がり軸受を使う穴基準軸受の外径・内径は規格で固定されている
単純な1穴1軸穴基準JIS のデフォルト

軸受の行は少し説明が要る。転がり軸受は内径も外径も JIS B 1512 で公差が固定されていて、設計者が動かせるのは相手側(軸とハウジング穴)だけだ。だから「はめあい方式を選ぶ」以前に、片側は決まっている。

③用途からはめあいを選ぶ|すきま・中間・しまりの分かれ目

記号の意味が分かっても、「この用途ならどれか」は別の知識になる。はめあいグレード選定アシスタントは用途と組立方法から推奨記号を返す。φ40・鋼×鋼で引くと次のようになる。

用途 × 組立方法推奨分類
固定(動かさない)× 焼きばめH7/u6しまりばめ
固定 × プレス圧入H7/p6しまりばめ
固定 × 手押し・木槌H7/n6中間ばめ
低速回転 × 手押しH7/g6すきまばめ
分解する前提 × 手押しH7/h6すきまばめ
衝撃荷重 × プレス圧入H7/s6しまりばめ

読みどころは、同じ「固定したい」でも組立方法で3段階に分かれること。焼きばめの設備があるなら u6 まで攻められるが、手押しで組みたいなら n6 が上限になる。設備の制約が公差の指示に直結する

④しまりばめ|締め代から圧入力までを一本でつなぐ

しまりばめでは、締め代が接触面圧を生み、接触面圧が摩擦を生み、摩擦がトルクを伝える。式の流れはこうなる。

締め代 δ(表の値)
  → 有効締め代 δe = δ − 平滑化控除(表面の凹凸が潰れるぶん)
  → 接触面圧 p ∝ δe   (厚肉円筒の式。ハブ外径・軸内径・材料で決まる)
  → 伝達トルク T = μ · p · π · d² · L / 2
  → 圧入力     F = μ · p · π · d · L

φ40・ハブ外径80・嵌合長40・S45C調質どうし・摩擦係数0.12・研削面(Rz 3.2)で、3つのしまりばめを比べる。

はめあい表の締め代有効締め代接触面圧伝達トルク圧入力
H7/p61〜42 µm0〜36.9 µm0〜71.2 MPa0〜859 N·m0〜43.0 kN
H7/s618〜59 µm12.9〜53.9 µm24.9〜104.1 MPa300〜1,255 N·m15.0〜62.8 kN
H7/u635〜76 µm29.9〜70.9 µm57.7〜136.9 MPa696〜1,651 N·m34.8〜82.6 kN

H7/p6 の行を見てほしい。表の締め代は 1〜42 µm あるのに、平滑化控除 5.12 µm を引くと有効締め代の下限がゼロになる。つまり公差の最悪側では、しまりばめを指定したのに何も伝わらない。p6 を「軽い圧入」として選ぶと、ロットによっては手で回る個体が混ざる。

平滑化控除は表面粗さから来ていて、圧入時に山が潰れるぶんだけ締め代が目減りする現象だ。研削面(Rz 3.2)で約5 µm、旋削面ならもっと大きい。呼び径が小さいほど、この目減りの比率が効く——φ10の p6 なら締め代自体が18 µm程度しかないので、5 µm は3割に相当する。

面圧が高すぎればハブが降伏する。上の条件では降伏締め代は 95.1 µm で、u6 の上限 70.9 µm に対する安全率は 1.34。u6 はハブ側にも余裕がないので、ハブ外径が細い設計では s6 に落とすか、ハブを厚くする判断になる。

圧入・締りばめ しめしろ計算は、はめあい記号を選ぶだけでここまで一気に出る。締め代を手入力するモードもあるが、図面から始めるなら記号モードのほうが速い

⑤焼きばめ・冷やしばめ|温度で入れる

締め代が大きくなると、常温では入らない(あるいはカジる)。そこでハブを温めて膨らませるか、軸を冷やして縮める。

必要膨張量 = 締め代の最大値 + 組立余裕(20 µm)
ΔT = 必要膨張量 / (呼び径 × 線膨張係数)

鋼の線膨張係数 α ≒ 11.7 ×10⁻⁶ /K

φ40 の例で必要加熱温度を出すと次のようになる(基準温度20℃)。

はめあい締め代の最大必要膨張量ΔT加熱温度
H7/p642 µm62 µm132.5 K152.5 ℃
H7/s659 µm79 µm168.8 K188.8 ℃
H7/u676 µm96 µm205.1 K225.1 ℃

温度の目安として押さえておきたい線が2本ある。軸受は120℃を超えて加熱してはいけない(保持器と潤滑剤、そして焼入れ組織が傷む)。また調質鋼を焼戻し温度以上に上げると硬さが落ちる。u6 の225℃は、相手が軸受なら選べないということだ。

一方で、冷やしばめ側の限界も知っておきたい。ドライアイス(−79℃)で得られる収縮量は、φ40なら 40 × 11.7e-6 × 99 ≒ 46 µm。液体窒素(−196℃)なら約 101 µm。加熱のほうが自由度は大きいが、相手の材質で頭が押さえられる場面では冷やす側に振る。

熱膨張フィットシミュレーターは、はめあいの上下許容差から必要加熱温度を逆算する。単に温度を出すだけでなく、組立余裕(隙間なく入れようとすると現場では入らない)を織り込む点が実務的だ。

⑥運転温度|常温で決めたはめあいは、運転中には別物になる

はめあい表は常温(20℃)の話だ。ところが運転中の温度は違う。しかも軸とハブで材料が違えば、膨張の差がそのまま締め代の変化になる

線膨張係数の代表値は、鋼 11.7、ステンレス(オーステナイト系)約17、アルミ 23.1、青銅 18.0、POM 110(いずれも ×10⁻⁶/K)。

たとえば鋼の軸にアルミのハブを圧入した場合、温度が上がるとアルミのほうが速く膨らむので、締め代は減る方向に動く。φ40 で温度が80℃上がると、差分は 40 × (23.1−11.7)e-6 × 80 ≒ 36 µm。s6 の締め代下限 18 µm では、運転温度でとっくに緩んでいる

逆に、アルミの軸に鋼のハブでは締め代が増える方向に動き、面圧が上がってハブが割れる方向に行く。異材の組み合わせでは、常温の締め代だけを見ても答えが出ない

熱膨張フィットシミュレーターは、常温と運転温度の両方ではめあい状態を並べて表示する。「常温ではしまりばめ、運転温度ではすきまばめ」という遷移が起きていないかを確認するのが本来の使い方になる。

⑦回り止めをどれにするか|4方式の比較

ここが冒頭で触れた「横並びで比べられない」部分だ。4方式それぞれの決め手を並べる。

平行キー

キーの破壊はせん断(切れる)と面圧(潰れる)の2モード。φ35・80 N·m・キー長40mm・S45C(許容せん断120 MPa/許容面圧150 MPa)で計算すると、

接線力 F = T × 1000 / (d/2) = 80 × 1000 / 17.5 = 4,571 N
JIS B 1301 で φ35 のキーは b=10 × h=8、軸側溝深さ t1=5.0

せん断応力 τ = F / (b × L) = 4,571 / (10 × 40) = 11.43 MPa  → 安全率 10.5
面圧      p = F / (t1 × L) = 4,571 / (5.0 × 40) = 22.86 MPa  → 安全率 6.56

安全率が2つ出て、小さいほうが面圧側になる。これはキーの一般的な傾向で、キー自体は無事なのに軸のキー溝が広がってガタが出る、という壊れ方をする。

見落としやすいのが軸そのものの強度低下だ。キー溝を切ると断面が欠け、応力集中も加わる。H.F.Moore の式では

強度低下係数 = 1 − 0.2(b/d) − 1.1(t1/d)
φ35・b=10・t1=5.0 なら 1 − 0.2(0.286) − 1.1(0.143) = 0.786

つまり**キー溝を切った時点で軸の強度は約79%**になる。軸径を決めるときにキー溝の有無を聞かれるのはこのためだ。

キー溝強度チェッカーは呼び径から JIS のキー寸法を自動で選び、せん断・面圧・軸強度低下率を同時に出す。

スプライン

歯を多数持つので面圧が分散する。大トルクや、起動停止を繰り返して衝撃が入る用途ではこちらが確実だ。軸方向にスライドさせながらトルクを伝えられるのも平行キーにない特性になる。スプライン強度計算シミュレーターで JIS B 1603 準拠の面圧・安全率が出る。

テーパ

テーパ嵌合は、押し込み量で締結力を調整できるのが特徴。工作機械の主軸(7/24テーパ、モールステーパ)やプーリーのブッシュに使われる。

テーパ比半角全角勾配
1:55.7106°11.4212°10.000 %
1:102.8624°5.7248°5.000 %
1:201.4321°2.8642°2.500 %
1:500.5729°1.1459°1.000 %

「1:10」と「勾配5%」が同じものを指すのが混乱のもとで、テーパ比は直径の変化で、勾配は片側(半径側)の変化で定義される。図面の指示がどちらの流儀かを取り違えると、角度が2倍ずれる。テーパー・勾配 変換計算はテーパー比・勾配・角度・寸法を双方向に変換する。

締りばめ

④で扱ったとおり。分解できないのと引き換えに、キー溝による断面欠損がない。φ40 H7/u6 の伝達トルク下限 696 N·m は、同じ径のキー1本より1桁大きい。高トルクで分解不要なら第一候補になる。

選び方のまとめ

状況第一候補
分解・調整が必要平行キー
大トルク・衝撃・繰返し起動スプライン
軸方向にスライドさせるスプライン
位相を自由に決めたい/高トルク/分解不要締りばめ
押し込み量で締結力を調整したいテーパ

⑧軸受まわり|回る側をきつく、回らない側をゆるく

転がり軸受のはめあいには、はっきりした原則がある。荷重に対して回転する側を、しまりばめ寄りにする

  • 内輪回転荷重(軸が回り、荷重の向きが一定)— 内輪が荷重に対して回るので、内輪と軸は締める。軸を k5・m5 あたりで作る
  • 外輪静止荷重(ハウジングは回らない)— ゆるめでよい。ハウジング穴は H7・J7 あたり

この原則を外すと、内輪が軸の上でじりじり滑る「クリープ」が起きる。滑った跡は光沢のある摩耗痕になり、進行すると軸が痩せてガタが出る。軸受が壊れる前に、軸のほうが先に負ける

軸受の寿命そのもの(L10)と荷重の関係は動力伝達設計まとめで扱っているので、ここでは触れない。この記事の担当ははめあい側だ。ただし1つだけ補足すると、⑤で述べた**軸受の加熱上限120℃**は、内輪を焼きばめで入れるときの制約として効いてくる。締め代を大きく取りすぎると、そもそも入れる手段がなくなる。

すべり軸受を使う場合は考え方が変わり、寿命は面圧と周速の積(PV値)で決まる。すべり軸受 PV値・寿命設計ツールで材質別の許容値と比較できる。すきまを詰めすぎると油膜が切れるので、こちらは「ゆるく作る」方向の設計になる。

⑨芯出し|つないだあとが本番

カップリングで軸をつないだら、芯出しをする。カタログの「偏心0.2mmまで許容」はその範囲なら壊れないという意味であって、性能が変わらないという意味ではない。

現場ではダイヤルゲージでリム(外周)とフェース(端面)を読み、脚に入れるシム厚を計算する。この計算は符号の扱いを間違えやすく、「合わせたつもりで逆に開いた」が起きやすい工程だ。カップリング芯出しシム計算は読み値からシム量と水平移動量を出す。

芯出しの精度は軸受荷重に直結し、軸受荷重は寿命に効く。⑧の原則を守っていても、芯が出ていなければ意味がない

⑩回転バランス|回転数が2倍になれば許容は半分

回転体の残留アンバランスは、ISO 1940 のバランス等級 G で管理する。許容偏心量は

e_per [µm] = G × 1000 / ω        ω = 2π × 回転数 / 60 [rad/s]
許容アンバランス U = 質量 × e_per   [g·mm](kg × µm = g·mm)
修正質量 = U / 修正半径 / 修正面数

質量5 kg・修正半径80 mm・単面修正で、条件を振ってみる。

条件許容偏心許容アンバランス修正質量遠心力
1,450 min⁻¹・G6.341.49 µm207.5 g·mm2.59 g4.78 N
2,900 min⁻¹・G6.320.75 µm103.7 g·mm1.30 g9.57 N
5,800 min⁻¹・G6.310.37 µm51.9 g·mm0.65 g19.13 N
2,900 min⁻¹・G2.58.23 µm41.2 g·mm0.51 g3.80 N

式に ω が分母で入っているので、回転数が2倍になれば許容量は半分になる。同じ部品でも、モーターを2極(2,900 min⁻¹)にした瞬間に、4極(1,450 min⁻¹)で通っていたバランスが通らなくなる。

修正質量の欄も見どころで、2,900 min⁻¹・G6.3 で許される「取り付け忘れたビス1本ぶん」は1.3 gしかない。M4×10のビスがおよそ1.5 g なので、バランス取りのあとで小ねじを1本足したら等級から外れる。回転体に後付けの部品を足すときは、対称位置にも同じ質量を足すのが鉄則になる。

動バランス計算シミュレーターは等級・質量・回転数から許容値と修正質量を出す。慣性モーメント(GD²)そのものは慣性モーメント計算機で基本形状から合計できる。

⑪軸そのもの|段付きR・疲労・危険速度

はめあいの検討が終わっても、軸が壊れないことは別に確認が要る。

段付き部のRは応力集中の巣で、軸の疲労破壊はほぼここか、キー溝の端から始まる。R を大きくすれば応力集中係数 Kt は下がるが、軸受の面取りと干渉するので無限には大きくできない。応力集中係数Kt計算で6形状×3荷重モードの Kt が出る。

繰返し荷重が入る軸では、静的な安全率が足りていても疲労で折れる。疲労寿命シミュレーターで SN曲線・グッドマン線図から寿命を見る。

危険速度(曲げ振動の固有振動数)は、長い軸や高速回転で効く。運転回転数が危険速度に近いと共振する。固有振動数・共振計算ツールで1次固有振動数と加振周波数の関係を確認できる。

必要軸径そのものは軸径選定シミュレーター、ねじり応力とねじれ角は軸のねじり応力・ねじり角計算機、材料ごとの許容応力の根拠は材料の許容応力・安全率 逆引きで引ける。軸材の硬さ指定を換算したいときは硬さ換算ツール、すきまばめ部の摩耗量を見積もるなら摩擦・摩耗量予測計算を使う。

⑫図面に落とす|粗さ・公差の積み上げ・シール

最後に、決めた内容を図面の指示にする段階でつまずきやすい点を3つ。

表面粗さ。④で見たとおり、粗さは締め代を目減りさせる。しまりばめ部に Ra 6.3(旋削のまま)を指示すると、研削面より大きく削られる。逆に、すきまばめの摺動部で粗さを指示し忘れると、当たりが出るまで摩耗が進む。表面粗さ換算ブリッジで Ra・Rz・▽記号の対応と、加工方法別の達成レンジが引ける。

公差の積み上げ。軸に部品を3つ並べて位置決めするとき、各部品の公差が累積する。公差積み上げシミュレーターでワーストケース法と RSS 法の両方を出しておくと、「全部が最悪側に振れたら組めない」を先に見つけられる。

シール。軸が回りながら密封する箇所では、Oリングの溝寸法とつぶし率が効く。溝が浅ければ漏れ、深すぎればつぶし不足で密封しない。Oリング溝設計計算で JIS B 2401 準拠の溝寸法・つぶし率・充填率が出る。

軸まわり設計チェックリスト

  • 回り止め方式を先に決めたか。これが決まらないと、はめあいの狙いが決まらない
  • 穴基準/軸基準を設計全体で1つに揃えたか。部品ごとに決めると加工指示が二重になる
  • 呼び径を入れて実際の数値を引いたか。記号は径に依存しない顔をしているが、数値は径で変わる
  • 中間ばめの振れ幅を許容できるか。φ40 H7/n6 は すきま8 µm〜締め代33 µm まで振れる
  • 平滑化控除を引いたあとの有効締め代がゼロになっていないか。H7/p6 は下限で伝達トルク0
  • ハブ側の安全率を見たか。締め代の上限で降伏していないか
  • 加熱温度が相手の上限を超えていないか。軸受は120℃まで
  • 運転温度ではめあいが変わらないか。とくに異材の組み合わせ
  • 軸受は「荷重に対して回る側」をしまりばめにしたか
  • キー溝を切った軸の強度低下(約2割)を織り込んだか
  • 回転数を上げたときにバランス等級が通るか。許容量は回転数に反比例する
  • 段付きRとキー溝端の応力集中を確認したか
  • しまりばめ部の表面粗さを図面に指示したか

豆知識|H の由来・µm という単位・「しめしろ」の表記

なぜ穴が大文字で軸が小文字なのか。ISO 286 のはめあい体系では、基本偏差を表す記号にアルファベットを使い、**穴は大文字(A〜ZC)、軸は小文字(a〜zc)**と決めている。この使い分けのおかげで H7/g6 という表記だけで「前が穴、後ろが軸」と読める。図面で φ40H7 とだけ書いてあれば穴、φ40h6 なら軸だ。大文字小文字の打ち間違いが、そのまま穴と軸の取り違えになる。

µm という単位が使われる理由。はめあいの世界の数字は 1〜200 µm の範囲にほぼ収まる。これを mm で書くと 0.001〜0.200 となり、小数点以下の桁を数える作業が発生する。ゼロを数え間違えると10倍・100倍の事故になるので、桁を固定して整数で扱える µm が現場語として定着した。一方で図面の寸法許容差は mm 表記(φ40 +0.025/0)なので、この2つの行き来は避けられない。

「しめしろ」と「締め代」。JIS の用語は「しめしろ」(ひらがな)で、対になる「すきま」もひらがなだ。実務では「締め代」「締代」の表記も広く使われている。検索するときは両方の表記で当たると、引っかかる資料が変わる。ちなみに英語では interference(しめしろ)と clearance(すきま)で、interference fit = しまりばめ、clearance fit = すきまばめと一対一に対応する。

焼きばめは古い技術。鉄輪を木製の車輪にはめるのに、熱した鉄輪を落として水で冷やす——これは産業革命以前からある方法だ。蒸気機関車の動輪のタイヤも同じ原理で、いまも鉄道車両の輪心とタイヤは焼きばめで組まれている。接着剤も溶接も使わず、金属の熱膨張だけで数十トンの力を保持するという点で、原理としてはほとんど変わっていない。

Tips|設計と現場ですぐ効くこと

1. 図面の記号から始められるツールを選ぶ。締め代を手入力するモードしかないツールは、はめあい表を引く手間が先に発生する。圧入・締りばめ しめしろ計算のように記号モードがあるものは、図面をそのまま入力できる。

2. 呼び径の区分の境目に注意する。JIS の寸法区分は「30を超え40以下」「40を超え50以下」のように切れている。φ40 と φ41 では表の行が変わる。設計値が境目に近いときは、両方の行を引いて差を確認しておく。

3. 圧入の前に面取りを指示する。軸端に 15〜30° の導入面取り(C1〜C2 程度)がないと、圧入の入り口でカジって傷が残る。図面に書き忘れると現場でヤスリを当てることになり、そこだけ寸法が狂う。

4. 分解する可能性を1%でも考えるなら、抜き用のねじ穴を用意する。締りばめは入れるより抜くほうが難しい。ハブに引き抜きボルト用のタップを2〜3箇所切っておくだけで、後年の保全が別物になる。

5. 測るときの温度をそろえる。はめあい公差は20℃で定義されている。鋼のφ40は1℃で約0.47 µm伸びるので、手で握って温まった軸を測ると5℃差で2.3 µm——H7の公差25 µmの1割近くを食う。マイクロメータもワークも、測定室の温度になじませてから当てる。

よくある質問

図面には H7/u6 としか書いていない。締め代の数値はどこで引けばいいのか

JIS B 0401 のはめあい表を引くのが正攻法だが、呼び径を入れて記号を選べば数値が出るツールを使うほうが速い。すきまばめ・中間ばめ中心ならJIS はめあい検索ツール、しまりばめ(p6・r6・s6・t6・u6)なら圧入・締りばめ しめしろ計算が記号モードを持っている。

注意点が1つあって、表の値は呼び径の区分ごとに変わる。「30を超え40以下」と「40を超え50以下」では u6 の値が違うので、φ40 と φ42 で答えが変わる。呼び径を必ず入れること。本文①と Tips 2 で触れたとおりだ。

しまりばめを指定したのに、組み立てたら手で回ってしまった。何が起きているのか

考えられる原因は3つある。

1つ目は平滑化控除。表の締め代から、表面の凹凸が潰れるぶんが引かれる。研削面で約5 µm、旋削面ならもっと大きい。本文④のとおり、φ40 H7/p6 は公差の最悪側で有効締め代がゼロになる。

2つ目は公差の下限側に当たったこと。しまりばめの締め代には幅があり、H7/p6 なら 1〜42 µm。下限に近い個体は、ほとんど締まっていない。

3つ目は運転温度で、異材の組み合わせなら温度で締め代が動く(本文⑥)。組立直後は締まっていたのに、暖まったら緩むというケースがこれだ。

対策としては、1段階強いはめあい(p6 → s6)に上げるか、粗さ指示を細かくして平滑化控除を減らすか、キーを併用して回り止めを分担させるかになる。

キーで足りるのか、圧入にすべきかを、どう判断すればいいのか

分解の必要性が最初の分岐になる。保守で外す前提ならキー(またはスプライン)、外さないなら締りばめが候補に入る。

そのうえで伝達トルクを比べる。本文⑦の例では、φ35のキー1本(S45C・キー長40)が面圧側の安全率6.56で 80 N·m を伝えている。一方 φ40 H7/u6 の締りばめは下限でも 696 N·m。桁が違うので、大トルクで分解不要なら締りばめが有利になる。

ただし締りばめは組立設備(プレスまたは加熱炉)が要り、失敗したときのリカバリーが効かない。設備の有無が決め手になることも多い。中間として、締りばめとキーを併用して「主に締め代で伝え、キーは非常用」とする設計もある。

軸受を焼きばめで入れたい。加熱温度の上限はあるのか

**120℃**を目安とする。これを超えると、保持器の材質(樹脂保持器なら特に)、封入グリース、そして軸受鋼の焼戻し状態に影響が出る。寸法安定処理を施した特殊仕様でなければ、この線は動かない。

本文⑤の表のとおり、φ40 の H7/u6 は加熱温度が225℃になるので、軸受には使えない。軸受の内輪を締めるはめあいは k5・m5 あたりが標準で、この程度なら加熱温度も120℃以内に収まる。

加熱には温度管理できる方法(ベアリングヒーター、オイルバス、温風)を使う。バーナーで直接あぶるのは、局所的に温度が跳ね上がるので避けたい。

入力した図面寸法や材質はサーバーに送られるのか

この記事で紹介しているツールはすべてブラウザ内で計算が完結していて、入力値も結果もサーバーに送信されない。開発中の製品の寸法・公差・材質を入れても外部には出ない

ページを離れると入力は消えるので、結果を残したいときは各ツールのコピー機能でテキストとして控えておくのが確実だ。

本文の数値をそのまま実務に使っていいのか

目安として使い、最終判断は JIS 規格の原典とメーカーの技術資料で確認してほしい。とくに次の3つは幅が大きい。

  • 摩擦係数 — 本文の圧入計算は 0.12 で統一しているが、実際は 0.05〜0.20 の幅がある。潤滑の有無、表面処理、材料の組み合わせで変わり、伝達トルクと圧入力はこれに正比例する
  • 平滑化控除 — 表面粗さの実測値で変わる。図面指示どおりに仕上がっているとは限らない
  • 許容応力 — キー・軸の許容せん断応力や許容面圧は、社内基準や適用規格で違う値が使われる

本文の計算例は、各ツールの実装と同じ式・同じ定数で算出している。ツールに同じ値を入れれば同じ答えが出るが、それが自社の設計基準と一致する保証はない。安全に関わる箇所では、必ず社内の設計標準と突き合わせてほしい。

まとめ|記号から数値への一段を、飛ばさずに渡る

軸まわりの設計でつまずくのは、計算が難しいからではなく、図面に書いてある情報と、計算に必要な情報が一段ずれているからだ。

押さえるのは3つ。

  • 締め代は図面に書かれていない。記号 → 呼び径の区分 → 表 → 数値、という一段を必ず渡る。同じ H7/u6 でも φ35 と φ45 で3割違う
  • 表の締め代がそのまま効くわけではない。表面が潰れるぶんが引かれ、運転温度で動き、異材ならさらに動く
  • 回り止め方式を先に決める。キー・スプライン・テーパ・締りばめのどれを主役にするかで、はめあいの狙いが変わる

ブラウザだけで一通り確認できる:

歯車・ベルト・減速機から軸に入る力の話は動力伝達設計まとめ、軸を支える部材の断面計算は断面性能・強度計算まとめ、板を曲げて作るハウジングの加工は板金・プレス加工の計算まとめにまとめてある。

不具合の報告や機能リクエストはお問い合わせページから。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。φ25の軸に歯車をH7/p6で圧入する設計を出して、量産で「手で回る個体が混ざる」と連絡をもらったことがある。表面粗さで締め代が目減りするという当たり前を、そのとき初めて数字で理解した。以来、しまりばめの下限側は必ず粗さ込みで確認している。

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この記事で紹介したツール

JIS はめあい検索ツール

基準寸法とクラスからJISはめあいを即時算出

穴基準/軸基準方式アドバイザー

穴基準と軸基準どちらを使うか診断

はめあいグレード選定アシスタント

用途から推奨はめあいコードを逆引き

圧入・締りばめ しめしろ計算

はめあい記号から最小・最大しめしろと伝達トルクを両端照査

熱膨張フィットシミュレーター

温度変化による軸と穴のはめあい状態変化を計算。焼きばめ温度の逆算にも対応

キー溝強度チェッカー

JIS B 1301準拠の平行キー自動選定+せん断・面圧・軸強度低下率を即判定

スプライン強度計算シミュレーター

JIS B 1603準拠のインボリュートスプライン面圧・せん断・安全率を自動計算

テーパー・勾配 変換計算

テーパー比・勾配・角度・寸法の双方向変換ツール

ベアリング寿命計算

転がり軸受のL10寿命・修正寿命L10aをワンページで即計算

すべり軸受 PV値・寿命設計ツール

面圧×周速のPV値算出と材質別許容値比較

カップリング芯出しシム計算

ダイヤルゲージ読み値からシム量・水平移動量を計算。リム&フェース法の芯出し作業を効率化

動バランス計算シミュレーター

ISO 1940バランス等級から許容残留アンバランス量と修正質量を算出

慣性モーメント計算機

基本形状のイナーシャ(J/GD²)を即計算。複数部品の合計も一発算出

軸径選定シミュレーター

伝達動力・回転数から必要軸径を算出、キー溝補正・危険速度チェック付き

軸のねじり応力・ねじり角計算機

円軸・中空軸・矩形軸のトルクから最大せん断応力とねじり角を算出し、許容せん断応力との比で安全率判定

応力集中係数Kt計算

6形状×3荷重モードの応力集中係数をPeterson近似式で即算出

疲労寿命シミュレーター

SN曲線・グッドマン線図・マイナー則で繰返し荷重の疲労寿命を即判定

固有振動数・共振計算ツール

ばね質量系・梁・静たわみ法で1次固有振動数を計算し加振周波数との共振を判定

材料の許容応力・安全率 逆引き

材料15種の許容引張・せん断・曲げ応力と安全率の根拠を逆引き

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HRC・HB・HV・HRB・HSの5スケールをリアルタイム相互変換。引張強さの近似値も同時表示

摩擦・摩耗量予測計算

アーチャードの摩耗式で摩耗体積・摩耗深さ・摩擦発熱量を予測

表面粗さ換算ブリッジ

Ra 1.6は▽▽▽?Rzは?プリセットをタップするだけでRa・Rz・RzJIS・Rmax・三角記号を同時換算。加工方法別の達成粗さレンジも表示

公差積み上げシミュレーター

ワーストケース法・RSS法で累積公差を計算し干渉を即判定

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