25Aの管の内径は25mmではない
図面に「給水 SGP 25A」と書いてある。流量計算の内径の欄に、何も考えずに25と打ち込む。数字が書いてあるのだから、それが管の太さだと思うよね。
ところが SGP 25A の外径は34.0mm、内径は27.6mm だ。どちらも25ではない。しかも同じ25A でも、ステンレスの Sch10S なら内径は28.4mm、銅管の25A は外径からして28.58mm と、管種を替えるたびに数字がばらばらに動く。「25」はどの寸法にも一致していない。
種明かしはひとつで、呼び径は寸法ではなく名前だということ。「25A」は「このくらいの太さの系列」を指す背番号にすぎず、実際の外径・肉厚・内径は管種ごとの JIS の寸法表で決まっている。背番号から寸法を計算で出す方法は無く、表を引くしかない。
このツールは、SGP・STPG370・SUS304TP・銅管・塩ビ管の5管種について、呼び径A・インチ(B呼称)・外径 mm のどこからでも寸法表を引き、肉厚・内径・内断面積・単位質量・満水質量までを一度に出す。ノギスで測った外径から「これは何Aの何管か」を逆に引くこともできるし、同じ呼び径で管種を替えたら内径がどう変わるかも並べて見られる。
配管寸法の入口を1つにしたかった
配管の寸法表そのものは、検索すればいくらでも出てくる。メーカーのカタログ、商社の技術資料、JIS 解説のまとめページ。困らないように見えるが、実際に使うと手が止まる。どれも管種ごとに別ページの静的な表だからだ。
SGP の表を開き、25A の行を目で追って外径と厚さを拾う。次にステンレスで同じ25A を見たくなったら、別のページを開いて同じ作業をやり直す。銅管なら K・L・M の3列から選び、塩ビなら「25」が鋼管のどの A に相当するのかを別の対応表で確かめる。しかも表は「A → 寸法」の一方向にしか引けない。
逆向きに引きたい場面は、現場のほうが多い。改修で既設の配管を調べると、手元にあるのはノギスで測った「外径 φ34」という数字だけで、管の刻印は塗装の下に消えている。φ34 から25A だと当てるには、表を上から順に眺めて近い外径を探すしかない。そこに塩ビ管の可能性も混ざると、見る表がさらに増える。
作るきっかけになったのは、このサイトの内側の事情だ。流量・圧力損失・ポンプ揚程・保温・支持間隔と、配管系の計算ツールは10本を超えていて、それぞれが内部に自前の寸法表を持っている。このツールを作る途中でそれらの表を突き合わせたところ、ラベルと中身が食い違う表が見つかった。「Sch40」と名付けた行に、中身は SGP の値が入っていたのだ。表の形も数値の桁も正しいので、誰も気づかないまま使われていた。
寸法表が各所に分散していると、どれか1つが間違っても検出する手段が無い。だから、5管種の寸法を1か所に集めて、A からもインチからも外径からも同じ表を引ける入口を作ることにした。
配管の呼び径と寸法の関係
配管 呼び径 とは:A呼称とB呼称は同じ管の2つの名前
配管の呼び径には2つの呼び方がある。A呼称は mm に由来する数字(15A・20A・25A…)、B呼称はインチに由来する数字(1/2B・3/4B・1B…)で、どちらも同じ管を指す。25A と 1B は同じ管、50A と 2B も同じ管だ。
ここで引っかかるのが、B の数字をインチとして mm に換算しても外径にならないこと。1インチは25.4mm だが、1B の SGP の外径は34.0mm ある。呼び径の由来は、配管が規格化された初期のころの「内径のおおよその値」だった。その後、同じ外径を保ったまま材料が改良され、肉厚が薄くなったり厚い系列が追加されたりして、内径は呼び名から離れていった。継手やねじとの互換性を守るために外径のほうを動かせなかったので、名前だけが昔の名残として残っている。
国際的にも事情は同じで、米国の NPS(Nominal Pipe Size)も「NPS 1 の外径は1.315インチ」と、名前と寸法が一致しない(Wikipedia「Nominal Pipe Size」)。日本の鋼管の外径の系列はこれと同じ流れを汲んでいる。
外径が固定され、肉厚は内側に増える
配管の寸法でいちばん大事な性質はこれだ。同じ呼び径なら外径は固定で、肉厚を厚くすると内径が狭くなる。
中身を入れる箱で考えると分かりやすい。棚に収める都合で外寸は決まっていて変えられない。丈夫にしたければ壁を厚くするしかないが、そのぶん中は狭くなる。配管も同じで、継手・フランジ・支持金具が外径に合わせて作られているので、外径は動かせない。圧力に耐えるために壁を厚くすると、流れる断面が削られる。
たとえば STPG370 の50A は、Sch40 でも Sch80 でも外径は60.5mm で同じだ。肉厚が3.9mm と5.5mm で違うので、内径は52.7mm と49.5mm に分かれる。SGP・STPG・SUS の鋼管3種は、同じ呼び径なら外径が共通になっている(JIS G 3452 配管用炭素鋼鋼管、JIS G 3454、JIS G 3459)。
スケジュール 番号 とは:肉厚の系列
Sch40・Sch80 の「スケジュール番号」は、肉厚の系列を表す番号だ。もとは次の関係から来ている。
Sch ≒ 1000 × P / S
P : 使用圧力
S : 材料の許容応力(P と同じ単位)
使用圧力が高いほど、あるいは材料が弱いほど大きい番号が必要になり、番号が大きいほど肉厚が厚い。ただし実際の肉厚は、この式から毎回計算するのではなく、呼び径ごとに表として決められた値を使う。
ステンレス鋼管には Sch10S・Sch20S のように末尾に S の付く系列がある。これは薄肉系列を米国のステンレス管規格(ASME B36.19)から取り入れたもので、Sch40 以上の炭素鋼由来の系列と区別するための印だ(JIS G 3459 配管用ステンレス鋼鋼管 の表の注記による)。同じ「40」でも JIS の SUS Sch40 と ASME の 40S では値が違う場合があるので、S の有無は読み飛ばせない。
管種によって外径の体系そのものが違う
鋼管3種は外径が共通だが、ほかの管種は体系ごと別物だ。
- 鋼管(SGP・STPG・SUS): 同じ呼び径なら外径共通。20A は27.2mm
- 銅管(JIS H 3300): インチ系の外径で、20A(3/4B)は22.22mm。鋼管の20A より5mm 細い。肉厚は K(厚)・L(中)・M(薄)の3系列(JIS H 3300 銅及び銅合金の継目無管)
- 塩ビ管(JIS K 6741): A も B も使わない独自の呼び径番号(13・16・20・25・30・40…)。「13」は慣用的に 1/2 インチ相当。厚肉の VP と薄肉の VU があり、外径は共通(JIS K 6741 硬質ポリ塩化ビニル管)
同じ「20」という数字でも、鋼管・銅管・塩ビで外径が違うので、継手を互いに流用することはできない。
配管 内径 計算:外径と肉厚から出す3つの量
寸法表から外径 D と肉厚 t を引けば、残りは式で出る。
内径 d = D − 2t [mm]
内断面積 A = π/4 × d² [mm²]
単位質量 W = k × t × (D − t) [kg/m]
満水質量 W_full = W + A × 0.001 [kg/m](水 1000 kg/m³)
単位質量の式は、リングの断面積 π/4 × (D² − d²) を展開すると π × t × (D − t) になることから来ている。これに密度を掛け、mm² から m² への換算を係数 k にまとめた。炭素鋼の係数 0.02466 は JIS G 3452 と G 3454 の表の注記に書かれている値そのものだ。ほかの管種は、ステンレス SUS304 が密度7.93、銅が8.94、塩ビが1.43(g/cm³)を π と掛けて係数にする。
満水質量の A × 0.001 は、断面積 A [mm²] の水が1m ぶん入ったときの質量 [kg] だ。1mm² × 1m = 1cm³ = 1g なので、mm² の数値に0.001を掛ければ kg/m になる。
呼び径を取り違えると何が起きるか
内径を呼び径の数字で代用すると、流速が2割狂う
いちばん起きやすいのが、冒頭の「25A だから内径25mm」の代用だ。SGP 25A の実際の内径は27.6mm。25mm で計算すると、断面積は実際の 25² / 27.6² = 0.8205 倍、つまり約18%小さく見積もることになる。同じ流量を流すなら流速は 27.6² / 25² = 1.2188 倍、2割強も多く出る。
圧力損失は流速のおおむね2乗で効くので、狂いはさらに広がる。ポンプの揚程を過大に見積もって1ランク大きい機種を選ぶ、あるいは逆に「流速が速すぎる」と判断して配管を1サイズ上げる。どちらも材料費と工事費に直結する手戻りだ。計算式が正しくても、入れた内径が名前の数字なら結果は信用できない。
SGP と STPG を取り違えると、端部で食い違う
SGP(JIS G 3452)と STPG370(JIS G 3454)は同じ呼び径なら外径が同じなので、継手は同じものが付く。取り違えても外からは分からない。しかし肉厚が違うので内径も違う。
問題が出るのは、内径に合わせて作る部品のところだ。流量計・オリフィス・差込み型のセンサーは内径を前提に校正されるので、SGP のつもりで手配した計器を STPG Sch80 の管に付けると、測定値がずれる。圧力側の取り違えはもっと深刻だ。JIS G 3452 の適用範囲は「使用圧力の比較的低い蒸気、水(上水道用を除く)、油、ガス、空気など」で、使用圧力の高い蒸気や流体の配管は STPG(JIS G 3454)の守備範囲になる。SGP で足りるつもりで高圧側に使うと、規格の想定から外れる。
銅管と鋼管は「同じ20A」でも外径が5mm違う
銅管の20A は外径22.22mm、鋼管の20A は27.2mm。呼び名が同じなので、管種を替える改修で同じ呼びの継手・支持金具・保温材を手配すると、現場で1本も合わない。Uボルトやサドルは外径で選ぶ部品なので、5mm の差は「ゆるくて固定できない」に直結する。保温材の内径も外径に合わせて作られているので、同じことが起きる。
塩ビの VP と VU は継手を共用できるが、用途は共用できない
塩ビ管の VP と VU は、JIS K 6741 で外径が共通に決められている。継手も共通なので、見た目ではほとんど区別がつかない。違うのは肉厚で、VU は VP より大幅に薄く、そのぶん使える圧力も低い。VU は主に排水・通気に使われる管で、圧力のかかる給水には VP を使うのが原則だ。継手が合ってしまうぶん、取り違えがそのまま施工まで進みやすい。
このツールが役に立つ場面
図面の呼び径から流量計算の内径を拾う。 設計図には「SUS Sch10S 40A」のように呼び径と区分しか書いていない。流速や圧力損失を出すには実際の内径が要る。管種と区分を選べば内径と内断面積がそのまま出るので、流体設計マスターにその値を渡せばいい。
既設管の外径をノギスで測って、管種と呼び径を当てる。 改修工事の調査で、刻印の読めない配管に当たることは多い。測った外径を入れると、許容差±0.5mm の範囲で当てはまる管種と呼び径の候補がすべて並ぶ。鋼管なのか塩ビなのかの見当もつく。
支持の検討で満水質量を出す。 配管サポートの間隔や吊り金物の選定は、管の自重に中の水の重さを足した満水質量で考える。単位質量と満水質量が kg/m で出るので、支持間隔を掛ければ1スパンの荷重になる。
改修で管種を替えたとき、内径がどれだけ変わるかを見る。 腐食した SGP を SUS に更新する、給湯の鋼管を銅管に替える。同じ呼び径でも内径が変わるので、流量に余裕があるかを確かめたい。同じ呼び径で各管種を並べた比較が出るので、1画面で差が読める。
基本の使い方(3ステップ)
① 管種を選ぶ。 SGP・STPG・SUS・銅管・塩ビの5つから選ぶ。欄の下に正式名称と JIS 番号が表示される。
② どこから引くかを選び、サイズを指定する。 「呼び径A」「インチ(B)」「外径」の3つから引き方を選ぶ。呼び径とインチは、その管種に実在するサイズだけが選択肢に出る。外径を選んだときは mm の数値を入力する。外径から引いた場合、±0.5mm 以内に入る候補を5管種すべてから探すので、選んでいた管種に該当が無ければ別の管種の候補が主結果になり、その旨が注記される。
③ 肉厚区分を選ぶ。 STPG なら Sch40/Sch80、SUS なら Sch10S/Sch20S/Sch40、銅管なら K/L/M、塩ビなら VP/VU。SGP は区分が1つしか無いので、この欄は表示されない。そのサイズに無い区分を選んだ場合(銅管 K の65A など)は、存在する区分に切り替えて結果を出し、切り替えたことが注記される。
結果には外径・肉厚・内径・内断面積・単位質量が並び、満水質量を出す設定にすれば中に水を満たしたときの質量も表示される。下には選んだ管の断面図と、同じ呼び径の他管種の比較が続く。
具体的な使用例(8ケース)
いずれもツールに同じ入力を与えたときの出力だ。単位質量・満水質量は JIS の表と同じく有効数字3桁で表示される。
ケース1:給水の SGP 20A
- 入力: SGP・呼び径A・20A・満水あり
- 結果: 外径27.2mm・肉厚2.8mm・内径21.6mm・内断面積366.4mm²・単位質量1.68kg/m・満水質量2.05kg/m
- 解釈: 建物内の給水枝管でいちばん多い呼び。内径は21.6mm で、「20」より少し広い。流量計算にはこの21.6を使う。ただし建物の給水では、内面を塩ビでライニングした鋼管(SGP-VB など)が多く、その場合の内径はライニングの厚みの分だけ狭くなる。ライニング鋼管の内径はメーカーの表で確かめてほしい。水を満たすと1m あたり約0.37kg 重くなり、満水では管の自重の1.2倍になる
ケース2:STPG370 50A の Sch40 と Sch80
- 入力: STPG・呼び径A・50A・Sch40 → 同じく Sch80
- 結果: Sch40 は肉厚3.9mm・内径52.7mm・内断面積2,181mm²・5.44kg/m。Sch80 は肉厚5.5mm・内径49.5mm・内断面積1,924mm²・7.46kg/m。外径はどちらも60.5mm
- 解釈: 外径が同じで肉厚だけ内側に増える、という性質がそのまま見える。Sch80 にすると内径は3.2mm 狭くなり、内断面積は約12%減り、質量は約37%増える。高圧に備えて Sch80 を選ぶときは、流れの断面が減るぶんを流量計算でも見直す必要がある
ケース3:サニタリーの SUS304TP Sch10S 25A
- 入力: SUS・呼び径A・25A・Sch10S・満水あり
- 結果: 外径34.0mm・肉厚2.8mm・内径28.4mm・内断面積633.5mm²・単位質量2.18kg/m・満水質量2.81kg/m
- 解釈: 外径は SGP 25A と同じ34.0mm だが、肉厚が薄いので内径は SGP 25A の27.6mm より広い28.4mm。食品・薬液ラインで薄肉の Sch10S が主流なのは、ステンレスの強度で薄くしても耐圧が足りるうえ、材料費と重量を抑えられるからだ
ケース4:給湯の銅管 L タイプ 20A
- 入力: 銅管・呼び径A・20A・Lタイプ・満水あり
- 結果: 外径22.22mm・肉厚1.14mm・内径19.94mm・内断面積312.3mm²・単位質量0.675kg/m・満水質量0.987kg/m
- 解釈: 同じ20A でも鋼管の外径27.2mm より5mm 細い。内径は19.94mm で、SGP 20A の21.6mm より狭い。質量は SGP 20A の4割程度しかない。鋼管から銅管に替える改修では、継手も支持金具も外径22.22mm 用に揃え直すことになる
ケース5:排水の塩ビ VU 75
- 入力: 塩ビ・呼び径・75・VU・満水あり
- 結果: 外径89.0mm・肉厚3.0mm・内径83.0mm・内断面積5,411mm²・単位質量1.16kg/m・満水質量6.57kg/m
- 解釈: 塩ビの呼び径「75」は内径75mm ではなく、実際の内径は83.0mm ある。管の自重は1.16kg/m と軽いが、満水にすると6.57kg/m と約5.7倍になる。排水管の支持は、管そのものより中の水の重さで決まることが分かる
ケース6:インチで指定された 1-1/4B の SGP
- 入力: SGP・インチ(B)・1-1/4
- 結果: 32A に対応。外径42.7mm・肉厚3.5mm・内径35.7mm・単位質量3.38kg/m
- 解釈: 海外の図面や古い資料ではインチで書かれていることが多い。1-1/4インチを mm にすると31.75mm だが、外径は42.7mm で、どちらにも近くない。インチの数字は名前であって寸法ではない、という例だ
ケース7:外径 φ21.7 からの逆引き
- 入力: SGP・外径・21.7
- 結果: 候補は4件。SGP 15A・STPG 15A・SUS 15A(いずれも外径21.7mm、差0)と、塩ビ16(外径22.0mm、差+0.3mm)。主結果は SGP 15A で、肉厚2.8mm・内径16.1mm・1.31kg/m
- 解釈: 鋼管3種は外径が共通なので、外径だけでは区別がつかない。塩ビ16 も0.3mm 差で許容範囲に入ってくる。ノギスで測った値だけで管種を決めず、材質(磁石が付くか、色、刻印の跡)と合わせて絞り込む必要がある
ケース8:外径 φ34.0 を塩ビとして逆引き
- 入力: 塩ビ・外径・34.0
- 結果: 塩ビに該当なし。候補は SGP・STPG・SUS の25A の3件(いずれも差0)。主結果は SGP 25A に切り替わり、肉厚3.2mm・内径27.6mm・2.43kg/m。管種が切り替わったことが注記される
- 解釈: 塩ビの外径は32.0mm(呼び径25)と38.0mm(呼び径30)で、34.0mm は±0.5mm の範囲に入らない。塩ビだと思って測った管が、実は塗装された鋼管だったという可能性をツールが示している
仕組み・アルゴリズム
手法の比較:式か、表の引き当てか
呼び径から寸法を出す方法として、2つの候補を考えた。
- 近似式で出す: たとえば「外径 ≒ 呼び径 × 係数 + 定数」のような回帰式
- 規格表を引き当てる: JIS の寸法表をそのまま持ち、呼び径で行を引く
1は成り立たない。前半で見たとおり、呼び径は名前であって寸法ではない。15A の SGP の外径は21.7mm、同じ15A の銅管は15.88mm で、管種ごとに系列が違う。同じ管種の中でも外径と呼び径の比は一定でなく、式で近似すると誤差が表の丸め単位(0.1mm)より大きくなる。したがって規格表の引き当て一択だ。
表は「管種 × サイズ × 肉厚区分」の3次元になる。ただし前半で説明したように、外径は管種とサイズで決まり、肉厚区分には依らない。そこで1サイズを1行にし、区分ごとの肉厚をその行にぶら下げる形に畳んだ。
// 1サイズ1行。区分は walls のキー
{ type: "stpg", id: "50", a: 50, b: "2", od: 60.5,
walls: { sch40: 3.9, sch80: 5.5 } }
5管種で合計85行(SGP 20・STPG 18・SUS 18・銅管 14・塩ビ 15)、区分を展開すると170通りになる。範囲は6A〜300A(銅管は8A〜150A、塩ビは13〜300)に揃えた。
寸法の出典と照合
寸法は JIS 規格値だ。ただし kikakurui.com で公開されている JIS 本文は、寸法表の数値部分が「余白を省略しています」として省かれていて、注記と算出式しか取れなかった。そこで寸法は、複数のメーカー・団体が公表している表を2系統以上突き合わせて確定した。全170行の外径・肉厚で食い違いは0件だった(1社が1.65mm を1.7mm と1桁丸めで載せていたものを除く)。
単位質量は表を持たず、式で出す
単位質量は JIS の表にも列として載っているが、あえて持たずに式で出している。JIS G 3452 の注記によれば、表の質量そのものが 0.02466 × t × (D − t) の計算値だからだ。式で出せば表と3桁で一致し、区分が増えても質量列を転記する手間と転記ミスの機会が無くなる。
ここで1つ判断が要った。係数 0.02466 は π × 7.85 × 10⁻³ = 0.0246615 を丸めたもので、丸める前の値を使いたくなる。実際にそうして全行を照合すると、STPG Sch80 250A だけが94.0kg/m になり、JIS 表の93.9 とずれた。ほかは全行一致していたので、表のほうは丸めた係数で計算されていることになる。そこで炭素鋼は JIS の係数 0.02466 をそのまま使っている。
ステンレス・銅・塩ビは JIS の注記に係数の形での記載が無いので、π × 密度で係数を作った。SUS304 の π × 7.93 × 10⁻³ は、公表されている JIS G 3459 の Sch10S の質量18行と全一致した。
塩ビ管の肉厚は「最小厚さ+許容差の半分」
塩ビ管の肉厚だけは扱いが違う。JIS K 6741 の2007年版以降、肉厚は「最小厚さ」と「プラス側の許容差」で規定されていて、単一の肉厚値が無い。最小厚さで計算すると内径が広く出すぎ、質量が軽く出すぎる。
同規格の表の注記には「1m当たりの質量は、管の寸法を許容差の中心として計算した」と書かれている。そこで最小厚さ+許容差/2 を肉厚として持った。VU75 なら最小厚さ2.7mm、許容差0.6mm なので 2.7 + 0.6/2 = 3.0mm になる。この厚さで計算すると、JIS の1m当たり質量とは全25値で0.2%以内、概略内径とは全サイズで一致した。使用例の VU75 の内径83.0mm が JIS の概略内径83と合っているのはこのためだ。
逆引きの許容差と境界の扱い
外径からの逆引きは、85行すべての外径と入力値の差を取る総当たりだ。行数が少ないので索引を作る必要はない。
hits = PIPE_TABLE.filter(e => Math.abs(e.od - input) <= 0.5 + 1e-9)
// 並び: |差| の小さい順 → 管種順(SGP・STPG・SUS・銅管・塩ビ)→ サイズ順
許容差を±0.5mm にしたのは、ノギスの読み取りや塗装の厚み、外径の製造公差を吸収しつつ、隣の呼び径(鋼管15A の21.7 と20A の27.2 のように、隣接サイズは数mm 以上離れている)を誤って拾わない幅だからだ。差がちょうど0.5mm の入力は候補に含める。φ21.2 と入れたら鋼管15A の3種がヒットする。浮動小数点で0.5がわずかに超えて外れないよう、比較には 1e-9 の余裕を足している。
主結果は、候補のうち選んでいた管種の先頭。該当が無ければ候補全体の先頭に切り替え、そのことを注記する。候補が0件のときは、範囲外で最も近い上下の外径を示す(φ100 なら SGP 80A の89.1mm と SGP 90A の101.6mm)。
計算例:SGP 100A
消火栓の立て管などで使う SGP 100A を、前半の式に順に当てはめる。
表から D = 114.3 mm、t = 4.5 mm
内径 d = 114.3 − 2 × 4.5 = 105.3 mm
内断面積 A = π/4 × 105.3² = 8,708.6 mm²(87.09 cm²)
単位質量 W = 0.02466 × 4.5 × (114.3 − 4.5)
= 0.02466 × 4.5 × 109.8 = 12.18 → 12.2 kg/m
満水質量 W_full = 12.18 + 8,708.6 × 0.001 = 20.89 → 20.9 kg/m
単位質量の12.2kg/m は JIS G 3452 の表の値と一致する。満水にすると1m あたり20.9kg で、中の水が管の自重の7割ほどを上乗せする。立て管の支持やスラブの荷重を考えるときに効いてくる数字だ。
配管寸法表との違い — 呼び径 換算 を往復して管種を横に並べる
前半で触れたとおり、配管の寸法は管種ごとの表を1枚ずつ見て調べるのが普通だった。ここでは、このツールが表の代わりに何をしているかと、隣のツールとの分担だけを書く。
1. どこから入っても同じ1行に着く。 呼び径A・インチ(B呼称)・外径 mm のどれを起点にしても、行き着く先は「外径・肉厚・内径・内断面積・単位質量」の同じ1行だ。外径から入ると、選んだ管種に限らず、±0.5mm に入る管を5管種すべてから拾ってくる。手元の管が鋼管なのか塩ビなのかまだ分からない段階で使えるのはこの逆引きがあるからだ。
2. 同じ呼び径を管種の横並びで見られる。 SGP、STPG Sch40、SUS Sch10S、SUS Sch40、銅管Lタイプ、塩ビVP を同じ呼び径で1枚の表に並べる。SGP から SUS へ替える改修で内径がどちらへ動くか、銅管だけ外径が小さいことなどが、別の表と見比べなくても分かる。
3. 満水質量まで出る。 管自体の単位質量に、管内を満たした水の質量を足した値まで出す。支持の検討で本当に要るのは、管の重さではなく水が入った状態の重さだ。
4. 隣のツールとの分担。
- 内径が決まったあとの流速・圧力損失は、流体設計マスターが受け持つ
- 保温厚は外径で決まるので、外径は配管保温厚さ計算ツールに渡す
- 満水質量は、配管サポート間隔チェッカーで支持間隔を決めるときの荷重になる
- エアコンの冷媒配管の銅管は外径そのもので呼ぶ別の系列なので、冷媒配管サイジング計算に任せている。このツールの銅管は給水・給湯用の K・L・M タイプだ
配管サイズの豆知識 — ガス管・銅管・塩ビ管の呼び名はどこから来たか
SGP が「ガス管」と呼ばれる理由と、白管・黒管
配管用炭素鋼鋼管(SGP)は、現場では今も「ガス管」と呼ばれる。もともと都市ガスの配管に使われていた管の流れを引く規格で、水・空気・油・蒸気と用途が広がった今も、呼び名だけが残った(Wikipedia「鋼管」にも「SGP(一般配管用鋼管)=ガス管」とある)。
JIS G 3452 は、亜鉛めっきをしていない管を黒管、亜鉛めっきをした管を白管と定めている。図面や帳票で白管だと示したいときは、種類の記号の後ろに −ZN を付けるという決まりまである。給水に白管が長く使われたのは、めっきで錆びを遅らせるためだ。ただ、めっきの有無は外径や肉厚には関係しないので、寸法を引くときはどちらも同じ SGP の行を見ればよい。
銅管の外径は、呼びより1/8インチ太い
給水・給湯用の銅管は、アメリカの ASTM B88 の体系を下敷きにしている。この体系では呼び寸法より外径が1/8インチ大きいと決まっていて、K・L・M のどのタイプでも外径は同じだ。タイプの違いは肉厚だけにある。
面白いのは、同じアメリカでもエアコン・冷凍機用の銅管(ACR)は外径そのもので呼ぶことだ。英語版 Wikipedia「Copper tubing」によれば、「1インチの L タイプ」と「1-1/8インチの ACR 管」は寸法がまったく同じで、名前だけが違う。日本の空調現場で冷媒管を「2分・3分」と呼ぶのも外径で呼んでいる例で、1インチを8つに割った「分」を単位にしている。同じ太さの銅管が、給水では呼び径、冷媒では外径で呼ばれているわけだ。
塩ビ管の「13」「20」はインチではない
塩ビ管の呼び径 13・16・20・25・30 は、鋼管の A 呼称とも B 呼称とも違う、独自の番号だ。呼び13 は、1/2インチ級の管の太さをミリで呼んだ数字と説明されることが多く、家庭の水道メーターや給水栓の口径を「13mm」「20mm」と呼ぶのと同じ系統の数字だ。住宅の給水が「13 か 20 か」で語られるのはこのためだ。同じ1/2インチ級の管が、鋼管では 15A、塩ビでは 13 と呼ばれていて、業界ごとにミリへの置き換え方が違ったことが呼び名に残っている。
配管サイズを現場で読むコツ
- 鋼管の外径は「呼びB×25.4」に少し足すと当たる。 1B以下なら +7〜9mm、1-1/4〜2B なら +10〜11mm、2-1/2B 以上なら +13mm 前後を足すと、SGP の外径に近い値になる。たとえば 1B は 25.4+8.6 = 34.0、4B は 101.6+12.7 = 114.3 だ。図面の呼びから継手や支持金具の大きさを見当付けるときに、ツールを開く前の検算として使える
- ノギスで外径を測るときは、塗装・めっき・保温の厚みを除いた素管で測る。 保温材の上から測った値や、何度も塗り重ねた既設管の値は、±0.5mm の逆引きから簡単に外れる。保温を剥がせないときは、露出している継手やバルブまわりの素管を探して測るほうが早い。ノギスが届かない大径管は、巻尺で周長を測り円周率で割れば外径になる
- 逆引きで候補が複数出たら、次は肉厚を測る。 外径だけでは鋼管同士の区別がつかないので、管端や切断面で肉厚を当てて絞り込む。管端が見えないときは、管の表面の印字(規格記号と呼び径)を探すのがいちばん確実だ
- 塩ビの VP と VU は外径が同じなので、外径では見分けられない。 管に印字された「VP」「VU」を読むか、管端の肉厚を見る。同じ呼び径なら VP のほうがはっきり厚い
配管サイズ換算のよくある質問
Q: 表示された内径が、図面やメーカーの表と0.1mm違うのはなぜ?
このツールの内径は、JIS の外径と肉厚から「外径 − 2 × 肉厚」で計算した値だ。JIS は外径と肉厚を規定していて、内径そのものは規定していない。メーカーや書籍の表は内径を独自の桁で丸めて載せていることが多く、そこで小数点以下の差が出る。実物の管も外径・肉厚それぞれに許容差があるので、0.1mm 単位の差は許容差の中に収まる。流量計算に使うならこの差はまず効かないが、はめあいの検討などで実寸が要るときは、現物を測ってほしい。
Q: ステンレスの Sch40 と Sch40S は同じもの?
JIS G 3459 のステンレス鋼管は、Sch40 を「S」なしで表記している(「S」が付く系列との違いは、上の「スケジュール番号とは」の節で説明したとおり)。このツールも JIS の表記どおり「Sch40」と表示する。米国規格の 40S と比べると、250A までは肉厚がほぼ揃っているが、300A では JIS の Sch40 のほうが厚い。海外の図面やカタログに「40S」とあるときは、300A のサイズで数字がずれることがあるので、相手の規格表で肉厚を確かめてほしい。このツールが出すのは JIS の Sch40 の値だ。
Q: 塩ビ管の呼び径は何インチ?
塩ビ管の呼び径はインチではない独自の番号なので、厳密には「何インチ」に当たるものは無い。ただ現場では、呼び13 を 1/2インチ、呼び20 を 3/4インチのように読み替える慣習がある。このツールはその慣習に従ってインチ相当の値を出していて、相当値であることが分かるように注記が添えられる。インチから引いたときも同じ対応で塩ビの呼び径を返す。例外は呼び16 で、慣習で対応するインチが無いため、インチの対応は出ない。
Q: 選んだ肉厚区分やサイズと違うものが表示された
規格に無い組み合わせを選んだときは、エラーにせず、いちばん近い実在の管を表示している。銅管の K タイプは 50A までしか無いので、それより太いサイズで K を選ぶと L タイプの値になる。塩ビの VU は呼び40 以上にしか無いので、呼び13 などで VU を選ぶと VP の値になる。サイズそのものが無い場合、たとえば銅管の 90A は、近いサイズに置き換える。置き換えたときは、結果の近くに「何を何に置き換えたか」が表示されるので、そこを確認してほしい。
Q: 300A より太い管は引ける?
いまは 300A まで(銅管は 150A まで、塩ビは呼び300 まで)を収録している。SGP や STPG は規格上さらに太いサイズまであるが、設備配管で調べられることが少なく、表を倍に広げるほどの需要は無いと判断した。外径の入力欄は 600mm まで受け付けるので、300A を超える外径を入れると「該当なし」になり、いちばん近い候補として 300A 前後の管が出る。それより太い管の寸法は、JIS の規格票で確認してほしい。
Q: 入力した管のサイズはどこかへ送信される?
送信されない。寸法表はページに組み込まれていて、呼び径の選択も外径の逆引きもブラウザの中だけで計算している。入力した外径や選んだ管種がサーバーに送られたり、記録として残ったりすることは無い。既設設備の調査結果や、社外に出せない図面の寸法をそのまま入れても問題ない。
まとめ
呼び径は寸法ではなく名前なので、A・インチ・外径のどこから入っても、最後は外径と肉厚の実寸に戻して考えるのが確実だ。このツールで内径と満水質量が出たら、次の計算へ進もう。
- 内径から流速と圧力損失を出すなら流体設計マスター
- 外径から保温厚を決めるなら配管保温厚さ計算ツール
- 満水質量を荷重にして支持間隔を決めるなら配管サポート間隔チェッカー
寸法が決まったあとに使えるツールは、ほかにもある。
- 給排水の管径を器具の数から選ぶなら給排水管径計算ツール
- 内径から圧力損失を出すなら配管圧力損失計算、ポンプの揚程まで見るならポンプ揚程・選定計算ツール
- 外径と肉厚から水撃の圧力上昇を見るならウォーターハンマー圧力計算ツール
- 空調機の結露水の配管ならドレン配管サイジングツール、エアコンの冷媒の銅管なら冷媒配管サイジング計算
- 温度変化による伸び縮みは配管熱膨張・伸縮量計算ツール、それを吸収するループはエキスパンションループ設計ツール
- 外径と肉厚から配管の応力を検定するなら配管応力 サステインド/熱膨張 検定(ASME B31.3)
- 呼び径からバルブを回すのに要るトルクを見るならバルブ操作トルク計算ツール
収録してほしい管種や規格、表の数値の気になる点があれば、お問い合わせページから知らせてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。図面に25Aと書いてあったので内径25mmで流量を計算し、あとでSGP 25Aの内径が27.6mmだと知って計算し直したことがある。それ以来、呼び径を見たら必ず管種と肉厚区分を確かめてから数字を拾うようにしている。
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