溶接パス数・施工時間見積りツール

開先形状と溶接法からパス数・溶着金属量・概算施工時間を自動算出

開先形状と溶接法を選択すると、パス数・溶着金属量・概算アーク時間を自動算出します。

シナリオ選択

開先形状

V形・X形は全角度を入力

溶接条件

GMAW(半自動MAG/MIG)

推定結果

開先断面積

227.1 mm²

推定パス数

8 パス

溶着量

2.050 kg/m

アーク時間

32.0 min/m

総溶着量

2.05 kg

総アーク時間

32 min

概算値です。施工条件で変動します

本ツールは概算見積り用です。実際のパス数は溶接姿勢・入熱制限・溶接士の技量により変動します。施工計画の参考値としてご利用ください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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「このV開先、何パスで埋まる?」を3秒で答える

施工計画書を書いていて、手が止まる瞬間がある。「板厚20mmのV開先、GMAWで何パス必要だっけ?」——開先断面積を三角関数で手計算し、1パスあたりの溶着面積で割り、溶着金属量を出して、施工時間を見積もる。電卓とメモ用紙を行き来するこの作業、1継手ならまだいい。だが実際の現場は数十継手、ときには数百継手。開先形状も板厚もバラバラだ。

「溶接パス数・施工時間見積りツール」は、開先形状(V/レ/X/K/I形)と溶接法(SMAW/GMAW/FCAW)を選び、板厚・開先角度・ルートギャップ・ルートフェイスを入力するだけで、パス数・溶着金属量・概算アーク時間を即座に算出する。施工計画の「あの面倒な手計算」を、ブラウザ上で完結させるためのツールだ。

なぜ溶接パス数の自動見積りツールを作ったのか

きっかけは、ある厚板構造物の施工計画書を作成したときの失敗だった。板厚25mmのX開先を10継手、板厚12mmのレ開先を30継手——合計40継手のパス数と溶着金属量を手計算で見積もった。三角関数の計算を電卓で繰り返し、Excelに転記していく作業に丸一日かかった。

問題はそのあと。設計変更で開先角度が60°から45°に変わり、全部やり直し。さらに溶接法がSMAWからFCAWに変更になり、もう一度やり直し。結局3日間、ひたすら同じ計算を繰り返した。

既存の溶接関連ツールを探してみたが、「溶着金属量だけ出す」「パス数は経験値で入力」といった部分的なものが多く、開先形状の選択からパス数・時間見積もりまで一気通貫で計算できるものがなかった。特に、5種類の開先形状(V/レ/X/K/I)と3種類の溶接法の組み合わせを瞬時に切り替えて比較できるツールは見当たらない。

「開先の幾何計算は決まった公式。溶接法ごとのパラメータもJIS等で標準化されている。なら自動化できるはず」——そう考えて、開先断面積の幾何計算エンジンと溶接法パラメータのデータベースを組み合わせたこのツールを作った。設計変更が入っても、パラメータを変えれば即座に結果が更新される。あの3日間を3分に圧縮したかった。

開先設計と溶接パス数の基礎知識

開先(グルーブ)とは何か

溶接で2枚の母材をつなぐとき、板の端にV字やレの字の「溝」を加工する。これが**開先(groove)**だ。日常に例えるなら、2枚の板をボンドで接着するとき、断面をヤスリで斜めに削って接着面積を増やすイメージに近い。開先を設けることで、溶接金属が母材の内部まで溶け込み、強固な継手が得られる。

JIS Z 3001(溶接用語)では、開先形状を標準化しており、代表的なものに以下の5種類がある。

  • V形: 両方の母材を対称にV字型に加工。最も一般的
  • レ形(bevel): 片側の母材だけを斜めに加工。加工コストが半分で済む
  • X形: 両面からV形に加工。厚板で溶接変形を抑えたいとき
  • K形: 両面からレ形に加工。X形の片側加工版
  • I形(突合せ): 開先加工なし。薄板のギャップ溶接向け

開先断面積 の求め方

パス数を見積もるには、まず開先の断面積を正確に計算する必要がある。各形状の断面積は次の幾何公式で求まる。

V形:  A = (t - f)² × tan(α/2) + g × t
レ形: A = (t - f)² × tan(α) / 2 + g × t
X形:  A = 2 × [(t/2 - f)² × tan(α/2)] + g × t
K形:  A = 2 × [(t/2 - f)² × tan(α) / 2] + g × t
I形:  A = g × t

ここで、t は母材板厚、f はルートフェイス(開先底部の平坦部)、α は開先角度、g はルートギャップ(母材間の隙間)だ。

V形の公式を直感的に理解するには、開先断面を「三角形+長方形」に分解するといい。三角形部分が (t - f)² × tan(α/2) で、長方形部分(ルートギャップ × 板厚)が g × t だ。

多層盛り溶接 とパス数の関係

板厚が6mm程度の薄板なら、1回のパス(1層)で溶接できることもある。しかし板厚が12mmを超えると、1パスでは開先を埋めきれない。そこで多層盛り溶接——複数パスを重ねて開先を埋めていく手法を使う。

パス数の目安は、開先断面積を1パスあたりの溶着断面積(溶接法で決まる)で割った値だ。

パス数 = ceil(開先断面積 / 1パスあたり溶着断面積)

1パスあたりの溶着断面積は溶接法によって異なる。

溶接法1パス溶着断面積典型的な溶接速度
SMAW(被覆アーク)約20 mm²150 mm/min
GMAW(半自動MAG/MIG)約30 mm²250 mm/min
FCAW(フラックス入りワイヤ)約28 mm²230 mm/min

GMAWはSMAWの1.5倍の断面積を一度に溶着できるため、同じ開先でもパス数が少なくなる。これが溶接法選定の重要な判断材料になる。

パス数管理が施工品質とコストを左右する理由

入熱制限とパス間温度

溶接のパス数は「開先を埋めるための回数」という単純な話にとどまらない。JIS Z 3115をはじめとする溶接施工管理規格では、入熱量パス間温度の管理が求められている。

1パスあたりの入熱量が大きすぎると、母材の熱影響部(HAZ)が粗大化して靱性が低下する。逆にパス数を増やしすぎると、施工時間が膨らみ、パス間温度が下がりすぎて割れのリスクが高まる。つまり「ちょうどいいパス数」を把握していないと、品質面でもコスト面でも問題が起きる。

パス数見積もりを怠った場合の実害

パス数の見積もりが甘いと何が起きるか。

  • 溶接材料の過不足: パス数を少なく見積もると、ワイヤや溶接棒が現場で不足して工事が止まる。多く見積もると無駄な在庫を抱える
  • 工程遅延: 板厚40mmのV開先をSMAWで施工すると20パス以上。1パス約6.7分/mとして、溶接線10mなら67分×20パス = 約22時間。工数見積もりを誤ると、工程が数日ずれる
  • 溶接変形の増大: パス数が多い継手は入熱の累積が大きく、角変形や縦収縮が大きくなる。変形矯正の手間を事前に考慮しないと、寸法精度が出ない

建築鉄骨の場合、建築基準法施行令第67条で溶接部の品質確保が義務付けられている。パス数管理は施工管理技術者の基本業務だ。

施工計画・材料発注・工数管理で頼れる3つの場面

場面1: 施工計画書の作成

新築の鉄骨工事で、柱-梁接合部のパス数と施工時間を一括算出。開先形状と板厚の組み合わせが10種類あっても、パラメータを変えるだけで瞬時に比較できる。監理者への提出資料作成が格段に速くなる。

場面2: 溶接材料の発注数量算出

溶着金属量(kg/m)に溶接線の総延長を掛ければ、必要なワイヤやフラックスの総量が出る。発注数量の根拠として見積書に添付できる。ロス率も溶接法ごとに織り込み済みなので、「多めに頼んでおく」という曖昧な発注から脱却できる。

場面3: 溶接法変更の影響比較

「SMAWからGMAWに変更したら工期はどれだけ短縮される?」——こうした問いに、溶接法セグメントを切り替えるだけで即答できる。コストと品質のトレードオフを数値で議論する材料になる。

場面4: 設計変更時のやり直し

開先角度や板厚が変更になった場合、該当するパラメータを修正するだけで結果が再計算される。手計算のやり直しに費やしていた時間をゼロにできる。

溶接パス数見積りツールの使い方

ステップ1: 開先形状を設定

画面上部のセグメントボタンで開先形状(V/レ/X/K/I形)を選択し、板厚・開先角度・ルートギャップ・ルートフェイスを入力する。I形を選んだ場合、開先角度とルートフェイスの入力欄は非表示になる。

ステップ2: 溶接法と溶接線長さを入力

SMAW / GMAW / FCAW のいずれかを選び、溶接線の長さ(m)を入力する。溶接法によって1パスあたりの溶着断面積・溶接速度・ロス率が自動的に切り替わる。

ステップ3: 結果を確認・コピー

開先断面積・推定パス数・溶着金属量(kg/m)・アーク時間(min/m)・溶接線長さを掛けた合計値が即座に表示される。「結果をコピー」ボタンで、施工計画書やメールにそのまま貼り付け可能だ。

開先形状×溶接法の組み合わせ別シミュレーション

実際のパラメータでツールに入力した結果を6ケース紹介する。

ケース1: V形 / 板厚20mm / GMAW(標準的な厚板)

入力: V形、t=20mm、α=60°、g=2mm、f=2mm、GMAW、溶接線1m

結果: 開先断面積 227.1 mm²、推定パス数 8パス、溶着量 2.050 kg/m、アーク時間 32.0 min/m

解釈: 板厚20mmのV開先はGMAWで8パス。1mあたり約32分のアーク時間で、ワイヤ消費は約2kgだ。10m施工なら約5.3時間、ワイヤ20.5kgが目安になる。

ケース2: V形 / 板厚12mm / SMAW(中板・手溶接)

入力: V形、t=12mm、α=45°、g=3mm、f=2mm、SMAW、溶接線1m

結果: 開先断面積 77.4 mm²、推定パス数 4パス、溶着量 0.729 kg/m、アーク時間 26.7 min/m

解釈: 板厚12mmなら4パスで埋まる。SMAWは溶接速度が遅いため、断面積の割にアーク時間は長め。GMAW(3パス、12.0 min/m)と比較すると倍以上の時間差がある。

ケース3: レ形 / 板厚12mm / SMAW(片側加工で経済的)

入力: レ形、t=12mm、α=45°、g=3mm、f=2mm、SMAW、溶接線1m

結果: 開先断面積 86.0 mm²、推定パス数 5パス、溶着量 0.810 kg/m、アーク時間 33.3 min/m

解釈: 同じ板厚12mmでもレ形はV形より断面積が約11%大きくなる(86.0 vs 77.4 mm²)。これはレ形の場合、片側のみに開先角度45°がフルに付くためだ。加工コストは半分だが、溶着量はやや増える——このトレードオフを数値で把握できる。

ケース4: X形 / 板厚30mm / FCAW(厚板の変形抑制)

入力: X形、t=30mm、α=60°、g=2mm、f=2mm、FCAW、溶接線1m

結果: 開先断面積 255.1 mm²、推定パス数 10パス、溶着量 2.363 kg/m、アーク時間 43.5 min/m

解釈: 板厚30mmをV形で施工すると断面積は約493 mm²になるが、X形なら255.1 mm²と約半分。パス数も大幅に減り、なにより両面から溶接するため角変形が相殺される。厚板ではX形の優位性が際立つ。

ケース5: K形 / 板厚25mm / GMAW(レ形の両面版)

入力: K形、t=25mm、α=45°、g=2mm、f=2mm、GMAW、溶接線1m

結果: 開先断面積 160.3 mm²、推定パス数 6パス、溶着量 1.447 kg/m、アーク時間 24.0 min/m

解釈: K形は片側のみ開先加工で両面溶接する経済的な形状。板厚25mmでGMAWなら6パス、アーク時間は24.0 min/m。同条件のX形(断面積約208 mm²)と比較して断面積が約23%少なく、溶着金属量を節約できる。

ケース6: I形 / 板厚6mm / SMAW(薄板の突合せ)

入力: I形、t=6mm、g=3mm、SMAW、溶接線1m

結果: 開先断面積 18.0 mm²、推定パス数 1パス、溶着量 0.170 kg/m、アーク時間 6.7 min/m

解釈: 薄板のI形突合せはギャップ分だけの最小断面積。1パスで完了し、アーク時間もわずか6.7分/m。ただしルートギャップが0mmだと断面積=0で「溶接不要」と判定される。裏当て金の有無を現場で確認してほしい。

開先断面積からパス数を導く計算アルゴリズム

手法の比較: 経験式 vs 幾何計算

溶接パス数の見積もり方法は大きく2つある。

方法A: 経験式(回帰式)。過去の施工データから「板厚→パス数」の回帰式を導く方法だ。たとえば「V形・GMAWなら板厚(mm) ÷ 3 ≒ パス数」のような簡易式。現場では便利だが、開先角度やルートギャップが標準と異なるとズレが大きい。

方法B: 幾何計算(本ツールの採用手法)。開先形状の断面積を三角関数で正確に算出し、溶接法ごとの1パスあたり溶着断面積で除算する方法だ。パラメータの変化に対して連続的に追従でき、設計変更にも即座に対応できる。

本ツールでは方法Bを採用した。理由は明確で、5種類の開先形状×3種類の溶接法の全組み合わせに対応するには、パラメータドリブンの幾何計算が最も汎用性が高いからだ。

計算フロー

1. 入力パラメータ取得
   t(板厚), α(開先角度), g(ギャップ), f(ルートフェイス), 溶接法

2. 開先断面積 A の算出(形状別)
   V形:  A = (t-f)² × tan(α/2) + g×t
   レ形: A = (t-f)² × tan(α)/2 + g×t
   X形:  A = 2×[(t/2-f)² × tan(α/2)] + g×t
   K形:  A = 2×[(t/2-f)² × tan(α)/2] + g×t
   I形:  A = g×t

3. パス数 = ceil(A / singlePassArea)

4. 溶着金属量 = A × 10⁻⁶ × 7850 × (1 + lossFactor)  [kg/m]

5. アーク時間 = パス数 × 1000 / travelSpeed  [min/m]

ステップバイステップ計算例(V形 t=20mm)

ケース1の数値で追ってみよう。

入力: V形, t=20mm, α=60°, g=2mm, f=2mm, GMAW

Step 1: 開先断面積
  A = (20-2)² × tan(60°/2) + 2×20
    = 18² × tan(30°) + 40
    = 324 × 0.5774 + 40
    = 187.1 + 40
    = 227.1 mm²

Step 2: パス数(GMAW: singlePassArea=30mm²)
  passCount = ceil(227.1 / 30) = ceil(7.57) = 8

Step 3: 溶着金属量(GMAW: lossFactor=0.15)
  filler = 227.1 × 10⁻⁶ × 7850 × 1.15
         = 227.1 × 0.0090275
         = 2.050 kg/m

Step 4: アーク時間(GMAW: travelSpeed=250 mm/min)
  arcTime = 8 × 1000 / 250 = 32.0 min/m

溶接法パラメータの根拠

各溶接法の1パスあたり溶着断面積・溶接速度・ロス率は、日本溶接協会の技術資料およびJIS Z 3312(MAG溶接ソリッドワイヤ)、JIS Z 3313(フラックス入りワイヤ)の推奨施工条件を参考に、現場での標準的な半自動溶接条件を代表値として設定した。SMAWのロス率20%はスパッタとスタブ(溶接棒の残り)を考慮した値、GMAWの15%はスパッタ分のみだ。

これらはあくまで代表値であり、実際の溶接条件(電流・電圧・姿勢)によって変動する。概算見積もりの出発点として使い、詳細な施工計画ではWPS(溶接施工要領書)の実測値で補正してほしい。

既存の溶接計算ツールとの決定的な違い

溶接パス数の見積りツールは世の中にほとんど存在しない。Excel で自作している現場が大半で、開先形状ごとに断面積の公式を切り替える手間が地味に重い。ネット上の溶接計算ツールは「入熱量の算出」や「溶接棒の消費量」に特化したものが多く、開先断面積 → パス数 → 施工時間を一気通貫で出せるものは見当たらない。

このツールの強みは、同じサイト内の関連ツールと組み合わせて使える点にある。パス数と溶着量を算出したら、そのまま溶接ワイヤ・棒消費量計算で材料発注量を確認し、溶接入熱量・パス間温度管理ツールで入熱制限をチェックする。さらに溶接条件セレクターで推奨電流・電圧を参照すれば、施工計画書の数値欄がほぼ埋まる。

市販の溶接積算ソフトは年間数十万円のライセンス費がかかるうえ、現場でサッと確認するには重すぎる。このツールは開先形状を選んで数値を入れるだけ。5秒で概算が出るから、打ち合わせ中のその場判断にも使える。

溶接パス数にまつわる豆知識

溶接姿勢でパス数は変わる

同じ開先でも、下向き(F)・立向き(V)・上向き(O)・横向き(H)で1パスあたりの溶着量が大きく異なる。下向きなら溶融金属が重力で安定するため、1パスの断面積を大きく取れる。一方、上向き姿勢では溶融金属が垂れやすいため、電流を下げてウィービング幅を狭くせざるを得ない。結果、同じV形開先でも上向きは下向きの1.5〜2倍のパス数になることがある。現場で「図面と同じ開先なのにパス数が全然違う」と感じたら、溶接姿勢の影響を疑ってみてほしい。

日本溶接協会(JWES)の技術資料でも、姿勢別の溶接能率データが公開されている。

自動溶接と手溶接のパス数差

近年普及が進むロボット溶接やサブマージアーク溶接(SAW)では、1パスあたりの溶着断面積が手溶接の2〜5倍に達する。SAWの場合、V形開先t=20mmを2〜3パスで埋められるケースもある。ただし設備投資と冶具の段取りが必要なので、少量多品種の現場ではSMAW/GMAWが依然主力だ。

「余盛り」の存在

JIS Z 3001では溶接ビードの余盛り高さの推奨範囲が規定されている。開先を完全に埋めた後、表面に1〜3mm程度の余盛りを付けるのが一般的で、この分も1パスとしてカウントされる。つまり理論上の開先断面積だけで割り切れない「+1パス」が発生しやすい。本ツールの推定値はこの余盛り分を含まない純粋な開先充填パス数なので、実際の施工では+1〜2パスを見込んでおくと安全だ。

溶接パス数見積りを精度よく行うための Tips

  • ルートパスは別計算で考える — 初層(ルートパス)は開先底部の狭い空間に溶接するため、通常パスより断面積が小さい。ツールの結果に対して「初層は小さめ、仕上げ層は大きめ」と頭の中で補正すると、実態に近い見積りになる

  • パス間温度の上限を意識する — 高張力鋼(HT570以上)ではパス間温度の上限が200〜250℃に制限される場合がある。パス間の冷却待ち時間を含めると、アーク時間の1.5〜3倍が実作業時間になる。ツールの「総アーク時間」はあくまり純アーク時間なので、冷却待ちや段取り替えの係数を別途掛けること

  • X形・K形は裏はつりの工数を加算する — 両側から溶接するX形やK形開先では、片側を溶接した後に裏側をガウジング(裏はつり)してから反対側を溶接する。このガウジング作業はツールの計算に含まれていないので、施工計画では別途30分〜1時間/mを見込む

  • 溶接長が長い場合は分割して管理する — 10mを超える長尺溶接では、変形制御のために「飛ばし溶接」や「後退法」で分割施工するのが一般的。パス数×溶接長の総量は変わらないが、1区間あたりの施工時間を把握するために溶接長を区間単位で入力すると管理しやすい

よくある質問

推定パス数と実際のパス数がずれるのはなぜ?

本ツールは開先断面積を溶接法ごとの「1パスあたり平均溶着断面積」で割る単純モデルで算出している。実際の現場では溶接姿勢(立向き・上向きなど)、溶接士の技量、入熱制限による電流低下などでパス数が増減する。特に初層(ルートパス)と仕上げ層は通常パスと断面積が異なるため、±2〜3パス程度の誤差は想定範囲内だ。施工計画には10〜20%の余裕を持たせることを推奨する。

I形開先でルートギャップ0の場合、パス数0と表示されるが正しい?

正しい。I形開先でギャップが0mmということは、母材同士が完全に密着しており、充填すべき断面積がゼロになる。実際にはこの条件で突合せ溶接を行うことは稀で、通常は1〜3mm程度のギャップを設ける。ギャップ0で溶接が必要な場合は、開先形状をV形やレ形に変更して再計算してほしい。

アーク時間と実作業時間の違いは?

ツールが表示する「アーク時間」は、純粋にアークが出ている時間の合計だ。実際の施工時間にはパス間の冷却待ち、スラグ除去、溶接棒・ワイヤの交換、姿勢変更、仮付け確認などが含まれる。一般的に、実作業時間はアーク時間の2〜4倍になる。SMAWは棒交換が頻繁なため倍率が大きく、GMAWやFCAWはワイヤが連続供給されるため比較的小さい。

入力したデータはサーバーに送信される?

一切送信されない。すべての計算はブラウザ上のJavaScriptで完結しており、入力値がサーバーやクラウドに送られることはない。板厚や開先角度などの設計情報が外部に漏れる心配なく、社内ネットワーク環境でも安心して利用できる。

GMAW・FCAW・SMAWのパラメータは変更できる?

現在のバージョンでは、溶接法ごとの1パスあたり溶着断面積・溶接速度・ロス率は固定値を使用している。これらは一般的な手溶接・半自動溶接の平均的な条件をもとに設定した値だ。特殊な条件(大電流SAW、パルスGMAWなど)で精度を上げたい場合は、ツールの推定値をベースに現場実績の補正係数を掛ける使い方を推奨する。

まとめ — パス数の「だいたい」を5秒で掴む

溶接パス数・施工時間見積りツールは、開先形状と溶接法を選ぶだけで断面積・パス数・溶着量・施工時間を一括算出するツールだ。施工計画書の作成、材料発注量の概算、工数見積りの初動を大幅に短縮できる。

算出した溶着量をもとに溶接ワイヤ・棒消費量計算で材料の発注量を確認し、溶接シールドガス 消費量・ボンベ本数計算でガスの手配もあわせて行えば、材料まわりの準備が一巡する。入熱制限のある鋼種なら溶接入熱量・パス間温度管理ツールで許容範囲を照合し、溶接条件の細かい設定は溶接条件セレクターを活用してほしい。

不具合や改善要望があれば、お問い合わせから気軽に連絡を。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。X開先40継手の手計算で3日溶かした反省から、このツールを作った

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