溶接ワイヤ・棒消費量計算

継手形状と溶接長からワイヤ/棒の必要重量とシールドガス消費量を算出

継手形状・板厚・溶接長・プロセスを入力するだけで、盛金断面積→必要ワイヤ重量→シールドガス量を一括算出。見積作業を高速化します。

シナリオプリセット

継手形状

溶接プロセス

歩留まり 92% / シールドガスあり

形状寸法

施工条件

算出結果

盛金断面積

19.8 mm²

単位重量

0.155 kg/m

総盛金重量

1.55 kg

必要ワイヤ/棒重量

1.69 kg

歩留 92%

アーク時間

28.6 min

シールドガス消費量

429 L

※ 標準条件の目安値。実歩留まりは姿勢・アーク長・スパッタで±10%変動。見積には安全率を上乗せ推奨

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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溶接ワイヤは何kg発注すればいい?現場の電卓問題を一発で

鉄骨の見積で「この案件、ワイヤ何kg買えばいい?」と聞かれたとき、手が止まった経験はないだろうか。隅肉6mmが10m、V開先12mmが5m、さらに補修で棒が数本──継手ごとに断面積を電卓で叩いて、歩留まりを掛けて、ガス流量まで計算して、一覧表にまとめる。この地味な作業が意外と曲者だ。

既存のメーカー早見表はPDFで継手形状ごとに散らばっていて、プロセスが違えば別ファイル。Excel管理にすれば今度は数式メンテが面倒。ちょっとした補修見積のために30分かけて手計算するのは、どう考えても生産性が悪い。

このツールは継手形状・板厚・溶接長・プロセスを入力するだけで、盛金断面積から必要ワイヤ重量、シールドガス消費量、アーク時間までを一括で出す。鉄骨工場の見積担当でも、配管屋の現場監督でも、スマホで即座に使える軽さを目指した。JIS Z 3604と溶接施工一般書の歩掛式をベースに、実務でそのまま発注書に転記できる精度で数値を返す。

なぜ作ったのか

きっかけは知り合いの鉄骨屋の一言だった。「毎回ワイヤの発注で悩むんだよ。足りないと作業止まるし、余ると在庫になる」。聞けば、見積時点ではメーカー配布のPDF早見表を使い、現場では経験則で係数を掛け、最終的にエイヤで2袋発注する──というどんぶり勘定が常態化していた。

自分も試しにネットで「溶接ワイヤ 消費量 計算」と検索してみた。出てくるのはメーカー各社の早見表PDFか、英語のサブスク型ソフト、もしくは個人ブログの断片的な記事ばかり。継手形状を切り替えながら板厚・開先角度・歩留まりを一つのUIで扱えるWebツールは、ほぼ無かった。Excelテンプレートは有志のものがあるが、プロセスごとにシートを切り替える必要があったり、tan関数の引数にラジアン/度の取り違えバグが残っていたりする。

この「無いなら作る」の動機は明快だったが、問題は精度の担保だ。盛金断面積の式は一見シンプルだが、V開先なら t²·tan(α/2)、X開先なら半分、レ形なら tan(α)/2 と微妙に違い、余盛10%の補正係数をどこに掛けるかで結果が1割ずれる。試作版を溶接歴30年の職人に見せたところ、「V開先で余盛を忘れてる」「SMAWの歩留まりは0.65が相場、手元にある別の本は0.6だけど現場感覚では0.65が近い」と細かい指摘をもらった。テストベクトルを3ケース用意し、手計算と突き合わせながら歩留まり係数を固めていった。

完成版はシンプルだが、中身は溶接現場の泥臭い知見の集積でもある。

溶接消費材の基礎知識

盛金断面積とは何か

溶接の「消費量計算」は、つまるところ溶接ビードの体積を求める問題に帰着する。ビードの長さは溶接長そのものだから、必要なのは「ビード1mあたり何立方センチか」、つまり盛金断面積だ。

盛金断面積はビードを継手の直角方向でスパッと切ったときに見える断面の面積を指す。隅肉溶接なら直角二等辺三角形、V開先なら台形に近い逆三角形、X開先なら両側から彫った砂時計状の断面になる。実際には表面に余盛(reinforcement)と呼ばれる凸部があり、設計上の理論断面より1割ほど大きい。本ツールでは一律で1.1倍の補正係数を掛けている。

具体的にイメージするなら、隅肉L=6mmは断面が「6mm×6mmの正方形の半分=18mm²」、そこに余盛10%を足して19.8mm²。これが1mmごとに並ぶと考えると、1mの溶接ビードは 19.8mm² × 1000mm = 19,800mm³ = 19.8cm³。鋼の密度7.85g/cm³を掛ければ155g/mだ。10mなら1.55kg──これが「盛金総重量」となる。

歩留まりとプロセスの違い

ただし「盛金1.55kg」はワイヤを1.55kg買えばいい、という意味ではない。溶接中はスパッタで飛散するし、棒の端(スタブロス)も捨てる。フラックス入りワイヤはフラックス分が消える。このワイヤ/棒重量に対する実際の盛金重量の比を歩留まり(deposition efficiency)と呼ぶ。

SMAW(被覆アーク溶接棒): 0.65  ← スタブロスが大きい
GMAW(MAG/MIG ソリッドワイヤ): 0.92
FCAW(フラックスコアドワイヤ): 0.85
SAW(サブマージアーク): 0.95  ← 連続送給でロス最小
TIG(GTAW): 0.95

SMAWの0.65は極端に低く見えるが、これは被覆棒を最後まで使い切れず手元側を捨てるためだ。対してGMAW以降は連続送給なのでロスが小さい。歩留まりの数値は JIS Z 3604 溶接技能者の認証における試験方法 および溶接学会発行の施工便覧を参照しつつ、現場感覚で微調整している。

実務での重要性

溶接材料費は鉄骨工事の材料費で5〜10%を占め、発注ミスの影響は金銭ではなく工程遅延として跳ね返る。FCAWワイヤの20kgリールが1本足りないだけで、ワイヤ交換待ちの数十分が発生し、熟練工の手が止まる。逆に余剰発注すれば在庫スペースを食い、湿気を吸ったワイヤは水素割れリスクで使い物にならなくなる。

具体例を挙げよう。板厚22mmのV開先をSMAWで50m施工する案件で、歩留まりを0.8と甘く見積もって発注したとする。実際の現場歩留まりが0.62だったとすると、必要量は理論値の約1.3倍。50kg余分にワイヤが不足し、2日間の工程遅延+緊急発注の特急料金で数十万円の持ち出しになる。建築鉄骨現寸検査・工作図作成の手引きでも「材料発注の精度確保」は工程管理の基本項目に挙げられている。

また、シールドガスの消費量を見誤るとボンベ交換のタイミングが読めなくなる。100%CO₂を15L/minで流した場合、一般的な7m³ボンベ1本は約8時間で空になる。アーク時間の事前計算ができていれば、昼休みにボンベを交換するよう段取れる。できていなければ、午後のど真ん中でボンベが空になり、半自動溶接機の前で職人が手を止めるハメになる。

JIS Z 3021(溶接記号)や建築鉄骨溶接指針でも、設計段階で継手形状と溶接長を明確にすることが求められている。本ツールはその「設計図→材料発注」のギャップを埋める位置付けだ。

活躍する場面

鉄骨製作工場の見積もり。柱梁接合部の隅肉・開先を一覧化し、プロセスごとにワイヤ必要量を算出して発注計画に反映する。

配管施工現場。SUS/炭素鋼の突合せ溶接でTIG+FCAWを使い分けるプラント工事で、溶接長と板厚から消費量を前日に集計し、翌日の材料手配に使う。

造船現場。SAWの長尺直線溶接が主体で、ワイヤドラム1本で何m溶接できるかを把握しておく必要がある。アーク時間から人員割り振りも逆算できる。

補修・改修工事。短尺の溶接が多数ある補修案件で、トータルで棒を何本買えばいいかを一気に積算する。

基本の使い方

  1. 継手形状を選ぶ — 隅肉/V開先/X開先/レ形から該当するものを選択する。継手が切り替わると、入力欄も脚長/開先角度+ルート間隔に自動で切り替わる
  2. 寸法と溶接長を入力 — 板厚、脚長または開先角度、総溶接長を入力する。複数継手がある場合は継手ごとに計算して合算する
  3. プロセスと速度を入力 — SMAW/GMAW/FCAW/SAW/TIGから選び、デフォルトの溶接速度・ガス流量が入る。現場実績値があれば上書きする

結果欄に盛金断面積、単位長さ重量、総盛金重量、必要ワイヤ/棒重量、アーク時間、ガス消費量が一覧表示される。発注書にそのまま転記できる単位で出している。

具体的な使用例

ケース1: 隅肉L=6mm 長さ10m GMAW(一般鉄骨)

最もよくある案件設定。柱梁接合部の隅肉を半自動(MAG)で施工する。

  • 入力: 隅肉、脚長6mm、溶接長10m、GMAW、速度350mm/min、ガス15L/min
  • 結果: 盛金断面積 19.8mm²、総盛金 1.55kg、必要ワイヤ 1.69kg、アーク時間 28.6min、ガス 429L
  • 解釈: 20kgリール1本で100m以上賄える計算。補修用スペアを含めても1本で十分

ケース2: V開先60° t=12mm ルート2mm 長さ5m SMAW(配管突合せ)

中厚板の配管を手棒で施工するケース。歩留まりが低いSMAWでは発注量が跳ね上がる。

  • 入力: V開先、板厚12mm、開先角度60°、ルート間隔2mm、溶接長5m、SMAW
  • 結果: 断面積 117.9mm²、総盛金 4.63kg、必要棒 7.12kg、アーク時間 27.8min、ガス 0L
  • 解釈: 5mでも棒7kg超。スタブロスで3割以上が捨てられる現実を数値で確認できる

ケース3: 隅肉L=8mm 長さ20m FCAW(造船ブロック)

船体ブロックの長尺隅肉にフラックスコアドワイヤを使うケース。

  • 入力: 隅肉、脚長8mm、溶接長20m、FCAW、速度300mm/min、ガス18L/min
  • 結果: 断面積 35.2mm²、総盛金 5.53kg、必要ワイヤ 6.50kg、アーク時間 66.7min、ガス 1200L
  • 解釈: 15kgリール1本でまだ余裕。ガスは7m³ボンベ1本で十分まかなえる

ケース4: X開先60° t=20mm ルート2mm 長さ8m SAW(重工業厚板)

厚板のX開先をサブマージアークで一気に落とすケース。歩留まり0.95で発注量は最小。

  • 入力: X開先、板厚20mm、開先角度60°、ルート間隔2mm、溶接長8m、SAW、速度600mm/min
  • 結果: 断面積 約171mm²、総盛金 約10.74kg、必要ワイヤ 約11.3kg、アーク時間 約13.3min、ガス 0L
  • 解釈: 厚板でも両側X開先にすればV開先比で断面積が半減。SAWの速度600mm/minでわずか13分強、ワイヤドラム1本の消費は軽微

ケース5: 隅肉L=9mm 長さ15m TIG(ステンレス配管意匠部)

意匠性が問われるステンレス配管をTIGで美しく仕上げるケース(炭素鋼換算で参考値)。

  • 入力: 隅肉、脚長9mm、溶接長15m、TIG、速度100mm/min、ガス10L/min
  • 結果: 断面積 44.6mm²、総盛金 5.25kg、必要ワイヤ 5.52kg、アーク時間 150min、ガス 1500L
  • 解釈: TIGは歩留まり0.95と高いがアーク時間が長い。15mに2.5時間、アルゴンボンベ(7m³=7000L)1本でも約4.5回分。人件費が支配的になる工法とわかる

ケース6: V開先60° t=16mm ルート3mm 長さ3m GMAW(橋梁補修)

既設橋梁の添接板補修。短尺だが板厚16mmのため盛金量は無視できない。

  • 入力: V開先、板厚16mm、開先角度60°、ルート間隔3mm、溶接長3m、GMAW
  • 結果: 断面積 約215mm²、総盛金 約5.07kg、必要ワイヤ 約5.51kg、アーク時間 約8.6min、ガス 約129L
  • 解釈: わずか3mでもワイヤ5.5kg必要。小ロット補修でも発注単位が15kgリールなら1本買わざるを得ない

ケース7: レ形開先45° t=10mm ルート2mm 長さ6m FCAW(T継手補強)

T継手の片側をレ形に開先加工して溶接する補強ケース。

  • 入力: レ形、板厚10mm、開先角度45°、ルート間隔2mm、溶接長6m、FCAW
  • 結果: 断面積 約77mm²、総盛金 約3.63kg、必要ワイヤ 約4.27kg、アーク時間 約20min、ガス 約360L
  • 解釈: レ形の式は (g·t + t²·tan(α)/2) × 1.1 で他と微妙に異なる。ツール側で自動切替するので式の取り違え事故がない

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較:幾何学計算 vs 実測係数法

溶接消費量の計算には、大きく2つのアプローチがある。1つは実測係数法、つまりメーカーが継手条件ごとに実測して作った早見表(例: 「隅肉6mm×1mあたり0.17kg」のような表)を引く方法。もう1つは幾何学計算法、継手形状から盛金断面積を数式で求め、密度と歩留まりで実消費量に換算する方法だ。

実測係数法は経験則の裏付けがあって現場感覚と合いやすい反面、早見表に載っていない非標準条件(例: 開先角度55°)には対応できない。幾何学計算法は任意条件に対応できるが、余盛補正係数や歩留まりの精度が結果を左右する。

本ツールは幾何学計算法を採用した。Webツールとして任意入力を受ける以上、柔軟性が優先だからだ。ただし、歩留まり係数は実測係数法の裏付けがある業界標準値(SMAW 0.65、GMAW 0.92等)を使い、テストベクトルで早見表の値と突き合わせて検証している。

実装詳細

計算フローは以下の通り。

// 1. 盛金断面積(余盛10%補正込み)
const A =
  jointType === "fillet"
    ? (L * L / 2) * 1.1
    : jointType === "v-groove"
    ? (g * t + t * t * Math.tan((alpha / 2) * Math.PI / 180)) * 1.1
    : jointType === "x-groove"
    ? (g * t + (t * t / 2) * Math.tan((alpha / 2) * Math.PI / 180)) * 1.1
    : (g * t + (t * t * Math.tan(alpha * Math.PI / 180)) / 2) * 1.1;

// 2. 盛金単位長さ重量(炭素鋼 ρ=7.85 g/cm³)
const depositKgPerM = (A * 7.85) / 1000;

// 3. 総盛金重量
const totalDepositKg = depositKgPerM * weldLengthM;

// 4. プロセス歩留まりで実ワイヤ重量に換算
const consumedFillerKg = totalDepositKg / processSpec.yield;

// 5. アーク時間とガス消費量
const arcTimeMin = (weldLengthM * 1000) / speedMmMin;
const gasConsumptionL = processSpec.usesGas ? arcTimeMin * gasFlowLMin : 0;

tan関数の引数は度ではなくラジアンである点に注意。V開先は α/2 が片側の開先角度になるためこれをラジアン変換する。X開先は両側から彫るので材料を片側ぶんカットした三角形2つ分=V開先の半分、さらにルート間隔部分の矩形を足して補正する。

計算例:隅肉6mm×10m×GMAW

  • 脚長 L = 6mm、断面積 A = (6² / 2) × 1.1 = 18 × 1.1 = 19.8 mm²
  • 単位重量 = 19.8 × 7.85 / 1000 = 0.155 kg/m
  • 総盛金 = 0.155 × 10 = 1.55 kg
  • GMAW歩留まり 0.92 → 必要ワイヤ = 1.55 / 0.92 = 1.69 kg
  • アーク時間 = 10 × 1000 / 350 = 28.6 min
  • ガス消費 = 28.6 × 15 = 429 L

この流れを継手形状ごとに式を切り替えながら実行している。ブラウザ内完結のため外部APIは一切呼ばず、入力が変わった瞬間に再計算される。

他ツールとの違い

溶接材料メーカーが配布する早見表PDFは昔から定番の見積ツールだ。神戸製鋼、日鉄溶接工業、パナソニックなどが自社ワイヤの歩掛表を公開している。ただし早見表はワイヤ銘柄ごとにPDFが分かれ、継手形状別のページを探すだけでひと仕事になる。現場で「隅肉6mmの歩掛どれだっけ」と検索しているうちに、見積提出の締切が近づく。

このツールはメーカー横断で使える中立的な計算機として作った。断面積は幾何学計算で出し、歩留まりはJIS Z 3604や溶接学会の一般値を採用している。銘柄固有の歩留まりではないぶん、どのワイヤメーカーの見積にも流用できる。

表計算ソフトで自前のシートを組んでいる見積担当者もいる。Excelテンプレは自由度が高い反面、継手を変えるたびに数式の参照先を切り替える必要があり、ファイルが壊れやすい。このツールは継手を切り替えるだけで必要な入力欄だけが表示されるため、入力ミスが起きにくい。スマホからでも現場でサッと叩ける。

逆に、銘柄ごとの細かい歩留まり差(例: ソリッドワイヤとメタルコアドの差)や、特殊な開先形状(U形・J形)を厳密に出したい場合はメーカー早見表のほうが正確だ。そこは使い分けてほしい。本ツールは「見積段階の概算」「現場での発注量チェック」を主戦場と位置づけている。

豆知識・読み物

余盛10%という補正係数はどこから来たのか

断面積の計算で最後に掛けている1.1は、開先の理論断面に対して実際の盛金が余盛(reinforcement)ぶん膨らむことを示す補正だ。JIS Z 3001の溶接用語では、余盛は「母材表面より上に盛られた溶接金属」と定義されている。一般的な余盛高さは板厚の10〜15%程度で、断面積換算すると約10%の増分になる。これがREINFORCEMENT_FACTOR = 1.1の根拠だ。

スパッタはどこへ消えるのか

GMAWの歩留まり92%という数字は、残りの8%がスパッタ・ヒューム・スタブエンド(棒の吸い残し)として失われていることを意味する。実測するとスパッタが3〜5%、ヒュームが0.5〜1%、残りがスタブエンドや飛散だ。特に短絡移行モードではスパッタが増え、歩留まりが85%程度まで下がることもある。パルスMAGや表面張力移行(STT等)を使うとスパッタが激減し、歩留まりが95%近くまで上がる報告もある(溶接学会論文集)。

被覆アーク溶接棒の「含有水分」

SMAWで歩留まり65%という低い値が付くのは、スタブエンドが50mm以上残ること、被覆剤(フラックス)が溶けずにスラグになること、が主因だ。加えて、低水素系溶接棒は吸湿しやすく、JIS Z 3211では規定水分量が決められている。乾燥炉で300〜400度に加熱してから使うのが常識で、湿った棒を使うと溶着金属に水素が溶け込み低温割れ(遅れ割れ)の原因になる。歩留まり以前に品質問題だ。

見積精度と利益率の関係

ある鉄骨工場の実データでは、溶接材料費は全製造原価の3〜6%程度。決して主原価ではないが、見積を10%外すと粗利が1ポイント以上吹き飛ぶこともある。薄利の下請工事ほどワイヤ発注量の精度が利益を左右する。

Tips

  • 発注は1箱単位で切り上げる: ソリッドワイヤは15kg/20kgスプール、FCAWは15kg、SMAW棒は5kg箱が標準。計算で6.5kgと出たら、7kgではなく1箱(15kg)を発注する前提で在庫計画を組む。端数は次ロットで消化する。
  • ロット管理で歩留まりを測る: 工事ごとに払出量と理論必要量を記録しておくと、自社の実歩留まり係数が見えてくる。本ツールの一般値より高い/低い場合、溶接条件やスパッタ対策に改善余地がある。
  • 下向き姿勢を優先する: 立向・上向は歩留まりが5〜10%下がる。継手配置を工夫して下向きで施工できるようにするだけで、材料費が数%改善する。
  • ガス流量は下げすぎない: GMAWでガス流量を15L/min未満にするとシールド不足でポロシティが出やすい。消費量を抑えたいからといって流量を削ると、手直し工数で材料費の節約分が吹き飛ぶ。
  • 短尺×多数本の継手は長さを合算する: 1本50mmの継手が200本あるなら、総溶接長10mとして入力すればよい。アーク時間は同じ結果になる。

FAQ

ステンレスやアルミの場合はどう計算する?

本ツールは炭素鋼(ρ=7.85 g/cm³)を前提としている。ステンレスの場合は盛金重量を約1.02倍(SUS304: ρ≒7.93)、アルミの場合は約0.34倍(A5083: ρ≒2.66)して読み替えてほしい。歩留まりはGMAWで鋼とほぼ同等だが、アルミMIGは酸化皮膜の影響でやや下がる(88〜90%程度)。将来的には材質選択機能を追加予定だ。

多層盛の場合、層数を入れなくていいの?

断面積ベースで計算しているので層数は不要だ。V開先12mmを3層で盛ろうが5層で盛ろうが、最終的な盛金断面積は同じなので必要ワイヤ重量も同じになる。ただしアーク時間は層ごとの停止時間ぶん伸びるため、速度入力値を実効値(運転率を掛けたもの)にすると精度が上がる。

短尺継手が大量にある工事はどう入力する?

合計長で入力すればよい。例えばブラケット取付の隅肉30mm×80本なら、総溶接長を2.4mと入れる。ただし実際には着火・終了ごとにスタブエンドロスや捨て盛りが発生するので、短尺が多い工事では実消費が計算値の1.1〜1.2倍になることがある。見積では2割増しを見込むと安全だ。

歩留まり係数の値は本当に妥当?

SMAW 65%、GMAW 92%、FCAW 85%、SAW 95%、TIG 95%という値は溶接学会や溶接協会の一般的な教科書値に基づいている。実際には銘柄・姿勢・溶接士のクセで±5%程度変動する。初回は標準値で見積り、実績を積んで自社係数に置き換えていくのが王道だ。各メーカーカタログの歩留まり表も参考になる。

スパッタロスを別枠で見たほうが正確では?

理論上はそうだが、歩留まり係数にスパッタロスが既に織り込まれているので二重計上になる。本ツールのyieldはスパッタ・ヒューム・スタブエンドをすべて含んだ総合歩留まりだ。独自にスパッタ率を測っている場合は、歩留まり係数を上書きできる将来機能を検討中。現状は総合値でご了承を。

シールドガスのボンベ本数に換算したい

一般的な7m³ボンベ(Ar/CO₂混合)は内容量約7000L。計算結果のガス消費量をこの値で割ればボンベ本数が出る。例えば1200Lなら0.17本だが、現場では予備込みで1本用意する。連続稼働する工場では10m³ボンベやバルクガスも検討するとコストが下がる。

まとめ

継手形状と溶接長さえ入れれば、ワイヤ・棒の必要重量とシールドガス消費量が一発で出る。見積の最初の一歩として、また現場での発注量チェックとして活用してほしい。

溶接関連の設計・施工判断には以下のツールも併せて使うと便利だ。

使い勝手の気になる点や追加してほしい材質があれば、お問い合わせから気軽に教えてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。鉄骨屋の知人が「毎回ワイヤ発注で悩む」と嘆いていたのが開発のきっかけ。歩留まり係数は職人との対話で詰めた、泥臭い見積ツールだ。

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