溶接シールドガス 消費量・ボンベ本数計算

溶接長・進行速度・ガス流量から総消費量と必要ボンベ本数・コストを算出

溶接長・速度・ガス流量からシールドガスの総消費量と必要ボンベ本数・概算コストを算出。プロセスを切り替えると推奨流量が自動で入る。

ガス種: CO2 / Ar80/CO2 / 推奨 14 L/min

総ガス消費量

2,500 L

必要ボンベ本数

1 本

理論 0.36

概算コスト

¥3,500

アーク時間

2.78 h

166.7 min

ボンベ単価 × 本数

¥3,500 × 1

7m³ ボンベ

単価は参考値です。地域・契約・時期で変動します。始終端パージ・やり直し工数は含まれません。実案件では余裕係数 1.1〜1.3 を乗じてください。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

PR

📘 溶接・シールドガス関連の書籍・機材を探す

「ガスがもう無い」を朝イチで言わせないために

製缶工場の朝、溶接ブースに入った途端「あれ、Arボンベ空だ」と声が上がる。段取り担当が慌てて業者に電話し、配達待ちで午前中が溶けていく。そんな光景、製造現場なら一度は見たことがあるよね。

シールドガスは地味だが、切れた瞬間に全工程が止まる、現場の命綱みたいな存在だ。それでいて「この案件で何本必要か」を事前に真面目に計算している工場は、意外と少ない。だいたいは「前回これくらいだったから」の勘で発注して、足りなければ追加、余ればデッド在庫。

このツールは、総溶接長と溶接速度、プロセス、ガス流量を入れるだけで、総消費量・ボンベ本数・概算コストを即座に出す。見積り段階でガス代を原価に乗せ、発注段階で本数の根拠を持てる。アーク時間も同時に出るので、工程計画にもそのまま使える。アナログ管理から抜け出す最初の一歩として作った。

なぜ作ったのか

もともと /welding-filler-consumption で溶接ワイヤの消費量は計算できるようにしていた。ところが現場の声を聞くと「ワイヤは出るのに、ガス代はExcelで別計算。プロセスごとに式を書き換えてるから、新人が引き継ぐと毎回ミスる」と言われた。

実際に製缶工場の見積り書を見せてもらうと、ガス代の欄は「一式」になっていて、根拠が不明。見積り担当の経験と勘で数字が入っていた。ひどい時は「ワイヤ代の30%」という謎ルールで計算されていた工場もあった。プロセスも流量も違うのに、一律の比率で済むわけがない。

試しに現場で使われていた管理Excelを借りてきたら、SUMIFで週次の使用量を集計するだけのもので、事前の見積りには使えない代物だった。一方で、ガス消費量の式そのものはえらくシンプルだ。V = q × t。流量に時間を掛けるだけ。時間も t = L / v で出る。ワイヤ計算が断面積・密度・歩留まりと絡んで複雑化するのに比べると、むしろ単純すぎて逆に「ツール化されていない」盲点になっていた。

それならいっそ、ワイヤ計算の姉妹ツールとしてガス専用を切り出したほうが分かりやすい。プロセス選択で流量を自動充填し、ボンベ容量は国内流通の代表値をプリセット化。見積り担当が30秒で答えを出せるUIに寄せた、というのが制作の出発点。

シールドガスの基礎 — なぜ溶接にガスを流すのか

シールドガスとは

アーク溶接で溶融した金属は、空気中の酸素・窒素・水素と反応すると、気孔(ブローホール)や酸化物、水素脆化を起こす。そこでアーク周辺を不活性・低活性ガスで覆い、空気を遮断するのがシールドガス(shielding gas)の役割だ。ホースで流れ込むあの透明な気流は、実は溶接品質の8割を左右している。シールドガス - Wikipedia

たとえるなら、ロウソクの炎をガラスの筒で覆って風から守るイメージ。筒が倒れれば(風が吹けば)炎は乱れる。溶接でも同じで、流量が足りなければ酸化欠陥、強すぎれば乱流で空気を巻き込んで逆に欠陥になる。「適正流量」という言葉の意味はここにある。

主要ガスの特徴

ガス用途特徴
CO2炭素鋼のMAG安価、深溶込み、スパッタ多め
Ar80/CO2 20炭素鋼のMAGスパッタ少、ビード外観良
Ar100アルミMIG・TIG不活性、高品質、高コスト
Ar/He 混合厚板アルミMIG入熱大、高速溶接可

JIS Z 3253「溶接及び熱切断用シールドガス」で化学成分と区分が定められている。

短絡移行とスプレー移行

同じMAG溶接でも「ワイヤがどうやって溶融池に移るか」で流量設計が変わる。短絡移行は低電流域で、ワイヤ先端が溶融池に接触→短絡→電流急増→切れる、を高速繰り返す方式。薄板向きで流量は12〜16L/minが目安。スプレー移行は高電流域で、ワイヤ先端から霧状の金属が連続で飛ぶ方式。厚板・高能率向きで、アーク長が長くなる分、シールド範囲を広く守る必要があり18〜22L/min必要になる。

流量設定の第一原理

流量は「多ければ多いほど良い」ではない。ノズル径・被溶接物の風環境・移行形態で最適値が決まる。流量過多は乱流を生み、逆に空気を引き込む。これが「過剰流量による気孔欠陥」の正体だ。

目安: 屋内・無風 → 標準流量
     屋内・扉開放あり → +20%
     屋外 → 風防併用 or +50%(それでも欠陥多発なら中止)

ガス計算を怠ると何が起きるか

ガス切れ=全ライン停止

溶接ブースでガスが切れると、その瞬間から次のボンベ交換が終わるまで、アーク溶接は一切できない。配達依頼から到着まで半日〜1日かかることも珍しくない。仮に5人の溶接工が止まれば、時給3000円として1日12万円の損失。月に2回起きれば年間288万円が溶けていく。

過剰流量による品質不良

逆に「足りなくなるのが怖いから多めに流しておけ」という現場ルールも、実は高くつく。JIS Z 3141の超音波探傷試験で気孔(ブローホール)が検出されると、グラインダーで削ってやり直し。1箇所の手直しに30分、溶接工1人日の工数が吹き飛ぶ。労働安全衛生規則第329条では溶接作業場の換気義務もあり、過剰ガスは作業環境悪化にも直結する。

コスト試算の精度

製缶案件の見積りで、ガス代は総コストの3〜8%程度を占める。ここを「一式」で丸めてしまうと、受注後に原価が合わないのはもちろん、競合との価格差分析もできない。7m³ボンベ(¥3500)と液体Ar47L(¥15000、ガス換算31000L)ではガス単価が¥0.50/Lと¥0.48/Lでほぼ同じだが、物流費・設置スペース・凍結リスクで変わる。ここを数字で比較できるかどうかで、調達担当の仕事の質が決まる。

プロセスごとの感覚

同じ1mの溶接でも、TIG(10L/min, 低速)とMAGスプレー(18L/min, 高速)ではガス消費量が変わる。体感として「TIGは速度が遅いから1mあたりのガスが多い」と思いがちだが、実際はTIGの低流量が効いて案件によって逆転する。この感覚を数字で持てるかどうかが、工程計画のズレを生むか潰すかの分かれ目になる。

活躍する場面

見積り作成時 — 原価表のガス代欄を「一式」から「¥○○円(根拠: 本数×単価)」に変えられる。発注後の原価管理も楽になる。

ガス発注判断 — 今週の案件リストから溶接長を合計し、ボンベ本数を逆算。「来週末までにAr ボンベ追加3本、CO2は既存在庫で足りる」と具体的に言える。

工程計画・稼働予測 — アーク時間(h)が同時に出るので、溶接工の稼働工数にそのまま流用できる。/weekload と組み合わせて週間工数を埋める。

在庫最適化 — 液体Arと7m³ボンベのどちらを契約するか、月次使用量から逆算できる。物流コストまで含めた比較材料になる。

基本の使い方

① 溶接条件を入れる — 総溶接長(m)と溶接速度(mm/min)を入力。速度は過去実績か溶接条件表から拾う。

② プロセスを選ぶ — MAG短絡/MAGスプレー/MIGアルミ/TIGから選択。選ぶと標準流量が自動入力される。必要に応じ手動で上書き可。

③ ボンベを選ぶ — 7m³/10m³/液体Ar47Lから選択。総ガス消費量・本数・コスト・アーク時間が即座に出る。コピーボタンで見積り書にそのまま貼り付け可能。

具体的な使用例

ケース1: 中規模架台 — L=50m, v=300mm/min, MAG短絡15L/min, 7m³ボンベ

鉄骨架台の現場溶接を想定。

  • 入力: L=50m / v=300mm/min / MAG短絡 / q=15L/min / 7m³ボンベ
  • 結果: アーク時間 2.78h / 総ガス消費 2500L / ボンベ 1本 / コスト ¥3500
  • 解釈: 1日で終わる規模、手持ち1本で余裕。理論値0.36本なので同週の別案件と相乗りで発注計画を立てたい。

ケース2: 大型配管サポート — L=200m, v=400mm/min, MAGスプレー18L/min, 7m³

プラント配管サポート架構の量産を想定。

  • 入力: L=200m / v=400mm/min / MAGスプレー / q=18L/min / 7m³ボンベ
  • 結果: アーク時間 8.33h / 総ガス消費 9000L / ボンベ 2本 / コスト ¥7000
  • 解釈: 1日強でボンベ2本消費。理論値1.29本なので1本目使い切ってから2本目に切り替える運用で、2本目は半分以上残る計算。

ケース3: 小物補修TIG — L=30m, v=250mm/min, TIG10L/min, 7m³

精密部品のTIG補修を想定。

  • 入力: L=30m / v=250mm/min / TIG / q=10L/min / 7m³ボンベ
  • 結果: アーク時間 2.00h / 総ガス消費 1200L / ボンベ 1本 / コスト ¥3500
  • 解釈: 既存ボンベで十分、新規発注不要。TIGの低流量のおかげで小物補修はガス代が気にならない。

ケース4: アルミ船体大規模 — L=500m, v=350mm/min, MIGアルミ16L/min, 7m³

小型船体のアルミMIG溶接を想定。

  • 入力: L=500m / v=350mm/min / MIGアルミ / q=16L/min / 7m³ボンベ
  • 結果: アーク時間 23.81h / 総ガス消費 22857L / ボンベ 4本 / コスト ¥14000
  • 解釈: 約3日間の連続稼働、4本が切れるタイミングは交代予定を組んでおく。理論値3.27本なので4本目の残量は約7割、次案件に持ち越せる。

ケース5: 薄板量産(10m³ボンベ運用) — L=100m, v=200mm/min, MAG短絡14L/min, 10m³

薄板筐体の量産ラインを想定。

  • 入力: L=100m / v=200mm/min / MAG短絡 / q=14L/min / 10m³ボンベ
  • 結果: アーク時間 8.33h / 総ガス消費 7000L / ボンベ 1本 / コスト ¥4500
  • 解釈: 10m³ボンベ1本でちょうど1日分。7m³ボンベだと1本使い切り+2本目の頭をかじる運用になり無駄が出るので、10m³への切替が合理的。

ケース6: 造船所規模の液体Ar運用 — L=1000m, v=450mm/min, MAGスプレー18L/min, 液体Ar47L

大型構造物の連続生産を想定。

  • 入力: L=1000m / v=450mm/min / MAGスプレー / q=18L/min / 液体Ar47L(31000L換算)
  • 結果: アーク時間 37.04h / 総ガス消費 40000L / 液体Ar 2本 / コスト ¥30000
  • 解釈: 約5日の連続稼働。7m³ボンベだと6本必要でボンベ交換ロスが増えるため、液体Ar運用が工数・コスト両面で有利。月次で複数案件を束ねると更に効く。

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較

ガス消費量の算出には大きく3つの方向性がある。

  1. シンプル式: V = q × t — 流量×アーク時間。理論値そのもの。
  2. ロス補正式: V = q × t + V_purge × N_joint — 始終端パージを継手数分加算。
  3. 統計回帰式: 過去案件データから溶接長当たり消費量(L/m)を回帰して推定。

本ツールは方式1を採用した。理由は、MVPで一番重要なのは「ざっくり正しく、素早く出す」こと。方式2はパージ回数や時間が現場ごとに違いすぎて、入力項目が増えると見積り担当が使わなくなる。方式3は過去データが無い工場には適用できない。単純式に余裕係数1.1〜1.3を掛ける運用のほうが、初期導入のハードルが低い。

実装詳細

アーク時間とガス消費量は次の流れで計算する。

// 入力: L [m], v [mm/min], q [L/min], bottle {volumeL, unitCost}
const arcTimeMin = L * 1000 / v;           // [min]
const arcTimeHour = arcTimeMin / 60;        // [h]
const totalGasL = q * arcTimeMin;           // [L]
const bottlesExact = totalGasL / bottle.volumeL;
const bottlesCount = Math.ceil(bottlesExact);
const costYen = bottlesCount * bottle.unitCost;

ポイントは単位の整合。Lはm、vはmm/minなので、時間をminに揃えるには L×1000/v となる。ここを L/v と書いてしまうと1000倍ずれる古典的バグが発生する。arcTimeMin を中間変数として明示することで、後段の V = q × t が単位的に自然に読めるようにしてある。

ボンベ本数は Math.ceil() で切り上げ。現実に0.36本を買うことはできないので、理論値と切上げ値の両方をUIに出し、ユーザーに判断材料を渡している。

計算例(ケース1を手計算)

L=50m, v=300mm/min, q=15L/min, 7m³ボンベ(volumeL=7000, unitCost=3500)。

1. arcTimeMin = 50 × 1000 / 300 = 50000/300 = 166.67 min
2. arcTimeHour = 166.67 / 60 = 2.78 h
3. totalGasL = 15 × 166.67 = 2500 L
4. bottlesExact = 2500 / 7000 = 0.357
5. bottlesCount = ceil(0.357) = 1
6. costYen = 1 × 3500 = ¥3500

このシンプルさが売りで、計算過程が完全に追える。現場で「この数字なんで2500になったの?」と聞かれたら、3秒で答えられる。見積り書のエビデンスとしても強い。

他ツールとの違い

市販の溶接材料メーカーサイトにもガス消費量の早見表はある。ただ、多くは「1時間あたり○L」という単発値だけで、溶接長と速度からアーク時間を逆算し、ボンベ本数と円単位のコストまで一気通貫で出してくれるものは意外と少ない。Excelテンプレートを配布しているメーカーもあるが、マクロ有効化のハードルとバージョン互換問題でスマホから見られないのが実情だ。

このツールは、現場でスマホを片手に立ち話しながら「じゃあ7立米ボンベ何本いる?」に即答できることを目指した。入力は溶接長・速度・プロセス・流量・ボンベ種類の5項目だけ。プロセスを切り替えると流量プリセットが自動で入るので、手ぶらでも概算が出せる。

そして最大の差別化ポイントは、同サイト内の ワイヤ消費量ツール と組み合わせて使える点だ。ワイヤ側で溶接金属量・ワイヤ重量・所要時間を算出し、こちらでシールドガス量を算出すれば、「材料費(ワイヤ)+副資材費(ガス)+工数(アーク時間)」を同じ入力条件から一気に積み上げられる。Excelで別々に管理していた見積根拠が、ブラウザのタブ2つだけで完結する。

さらに 入熱計算溶接条件ガイド を併用すれば、電流・電圧・速度の妥当性もチェックできる。単品の電卓としてではなく、溶接見積りのワークフローの一部として設計しているのがこのツール群の思想だ。

豆知識・読み物

なぜ国内の標準ボンベは「7立米」なのか

街の鉄工所でよく見るあの緑や黒のボンベ、実は容量表記が「7m³(立方メートル)」になっている。内容積47リットルの鋼製容器に、高圧ガス保安法で定められた充填圧14.7MPa(150kgf/cm²)でArやCO2を詰めると、大気圧換算でおよそ7000リットル=7m³になる計算だ。47Lの容器というサイズ自体は戦後の工業用酸素ボンベの規格を引き継いでおり、「運搬できる限界の重量(約60kg)」と「1人で立てられる直径」から決まった歴史的な寸法だと言われている。詳しくは高圧ガス保安協会の技術資料を参照すると面白い。

CO2がArより圧倒的に安い理由

MAG溶接で使うCO2は、1本あたりAr100の半額以下で買えることが多い。これは製造方法の違いによる。アルゴンは空気を-186℃まで冷やして分離する深冷分離で取り出すため大量の電力を食うのに対し、CO2は化学工場やアンモニア製造の副生ガスとして大量に出る。つまりCO2は「もともと捨てるはずのもの」を精製している副産物で、原料コストがほぼゼロに近い。コスト重視の製缶業でMAGが主流なのはこの経済合理性が大きい。

液体アルゴンという選択肢

大型の造船所やアルミ製缶工場では、ボンベではなく47L液体アルゴン(LGC)を使う。液体1Lは気化すると約780Lのガスになるので、47Lの容器でおよそ31000L=31m³、7m³ボンベ4本半に相当する。ボンベ交換の頻度が激減するため、週に何十本もガスを消費する工場では液体運用のほうが実コストも安くなる。本ツールでも「液体Ar 47L」プリセットを用意しているのはこのためだ。

Tips

  • 始終端パージで意外と消費する: アークスタート前のプリフロー(2〜3秒)とエンドのポストフロー(5〜10秒)は1打点ごとに発生する。短ビードの多い小物組立は、本ツールの理論値に1.2〜1.3倍の余裕係数を掛けておくと外さない。
  • 風対策で流量を上げすぎない: 屋外や大型扇風機の近くで「シールドが飛ぶから」と流量を25L/min以上に上げる人がいるが、30L/min超は逆に乱流でシールドガスを空気と混ぜてしまう。風対策は流量ではなく衝立やトーチシールドカップの大径化で行うのが定石。
  • ガスセーバー(省ガス機)の効果: プリフロー時の無駄を1/3〜1/2に抑える電磁弁付きソレノイドは、月間10本以上使う現場なら1年以内にペイする。本ツールの出力本数と月間ベースを掛け算すれば投資回収期間が一目で分かる。
  • TIGは絞りすぎも禁物: TIGで10L/minが標準だからと5L/minまで絞るとセリウム電極が酸化して黒くなる。消費を下げたいならコレットボディを大径に変えて層流を保つのが正解。
  • ボンベ残量は圧力計で読む: 14.7MPa満タンのボンベが7MPaなら残り約半分=3.5m³。本ツールで算出した必要量と残量を比較すれば「途中でガス切れ」を未然に防げる。

FAQ

Q. CO2とMAG用混合ガス、どちらを入力すればいい?

どちらも同じ流量プリセット(14L/min)で計算して問題ない。CO2単独もAr80/CO2も、トーチから出る体積流量は同じに設定するのが一般的で、消費量としては差が出ない。違いが出るのは単価のほうで、CO2単独なら7m³ボンベで2000円前後、混合ガスだと3500〜4500円とおよそ倍になる。ボンベ単価欄を手で書き換えるか、自社契約単価を反映させて使ってほしい。

Q. TIGの適正流量はどれくらい?細径ノズルと太径で違う?

一般的な4〜6番ノズル(内径6〜10mm)なら8〜12L/minが標準で、本ツールはTIGプリセットを10L/minに設定している。8番以上の大径ガスレンズを使う場合は15L/minまで上げて良い。逆に12L/min以上で大径ノズルを使わないと、ノズル内が乱流化してタングステンが黒く汚れる原因になる。15L/min超の設定をすると警告バナーが出るのはこのためだ。

Q. ボンベ残量が中途半端なとき、どう発注判断すべき?

このツールで算出した理論本数に1.2を掛けた値を「発注基準量」とするのがおすすめだ。たとえば理論3.27本なら、切上げ4本ではなく3.27×1.2≒3.9本分のガスを確保する感覚で発注する。残1本ギリギリで走ると、やり直しや追加工で足りなくなるリスクが高い。圧力計で3〜4MPa以下になったボンベは「予備扱い」にしておき、新品ボンベから使い始めると工程が安定する。

Q. 始終端のパージロスやアーク率はどう扱われている?

MVP段階では純粋な「アーク時間×流量」だけを計算している。プリフロー・ポストフローの始終端ロスや、実作業でのアーク率(50〜70%)は含めていない。実案件では免責欄にあるとおり1.1〜1.3の余裕係数を掛けるか、アーク率を考慮して溶接速度を実効値に下げて入力するのが現実的だ。将来アップデートで「継手数」「始終端秒数」を追加する予定がある。

Q. 入力した溶接長や単価は外部に送信される?履歴は残る?

すべての計算はブラウザ内のJavaScriptで完結しており、入力値がサーバーに送信されることはない。単価や案件名を入れても社外に出る心配はないので、見積り検討用途でも安心して使える。履歴やクラウド保存機能もないため、ページを閉じると入力はリセットされる。記録を残したい場合はコピー機能で結果文字列を取得し、自社の見積システムに貼り付ける運用を推奨する。

まとめ

溶接シールドガスの消費量は「アーク時間×流量」という単純な式だが、プロセスごとの標準流量やボンベ容量を覚えておかないと現場で即答できない。このツールを使えば、溶接長と速度を入れるだけで必要ボンベ本数と概算コストが数秒で出る。見積り・発注・工程計画のいずれでも、スマホひとつで完結する手軽さが武器だ。

さらに精度を上げたいなら、ワイヤ消費量ツールで材料費を、入熱計算で施工条件の妥当性を、溶接条件ガイドで電流電圧の目安を、溶接強度チェックで継手設計を確認してほしい。溶接見積りの全工程が、この4ツールのクロス利用で組み立てられる。気になる点や追加して欲しい機能があれば、お問い合わせからぜひ教えてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。MAG短絡とスプレー移行で流量設計が全く違うのを現場で何度もやらかした経験から、プロセス切り替え時に推奨流量が自動で入るUIにこだわった。

運営者情報を見る

© 2026 Mahiro Apps