電気設備公開 2026-09-09

照明・採光計算まとめ|採光補正係数・照度・グレア・非常用照明

窓を大きくしたのに暗い、照度は足りているのにまぶしい

明るさの設計は、直感が最も裏切られる分野だ。窓を1.5倍に広げたのに部屋は思ったほど明るくならない。カタログどおりの器具を並べて照度も基準を満たしているのに、モニタが見づらいとクレームが来る。逆に、廊下の照明を減らしたら「暗い」ではなく「まぶしい」と言われる。

理由は単純で、「明るさ」がひとつの数字ではないからだ。法規が要求するのは開口部の面積比、環境性能で見るのは昼光率、照明設計で使うのは平均照度、快適性を決めるのはグレアと色温度、そして非常時に必要なのは床面1lx——全部単位も基準も違う数字を、私たちはまとめて「明るさ」と呼んでいる。

この記事では、照明・採光の設計で必要な9つの計算領域を、確認すべき順序に沿って整理した。それぞれの勘どころと無料ツールへのリンクをまとめてあるので、「明るさまわり、全部見たか?」のセルフチェックに使ってほしい。

なぜこの記事を書いたのか

照明と採光の情報は、別々の業界に分断されている

「採光計算」で検索すると建築確認申請の話が出てくる。「照度計算」で調べると照明メーカーの光束法の解説が出てくる。「UGR」を調べると学術寄りの資料に飛ぶ。どれも正しいのだが、実務でこの3つは同じ部屋の同じ設計の話だ。

しかもいちばん誤解が多いのが、「採光計算」という言葉が2つの意味で使われていること。建築確認で言う採光計算は建築基準法の有効採光面積の話で、窓の面積と隣地までの距離だけで決まる。一方、環境設計で言う採光計算は昼光率の話で、こちらは室の奥行きや内装の反射率が効いてくる。法規はクリアしているのに実際は暗い部屋が生まれるのは、この2つを同じものだと思っているからだ。

さらに現場では、「照度が足りない」と言われて器具を増やした結果グレアが悪化する、という逆効果もよく起きる。明るさの問題は、量(照度)・分布・質(グレア・色)の3層で切り分けないと解けない。

この記事は、法規から快適性、非常時、ランニングコストまでを1本の流れに並べ、それぞれをブラウザで計算できるツールと紐づけた。

照明・採光設計の全体像|9つの計算領域

明るさの設計は、下流に行くほど「守るべき最低ライン」から「快適さの作り込み」に変わっていく。

#計算領域主な検討内容対応ツール
1建築基準法の採光有効採光面積・採光補正係数(床面積の1/7)本文の式で手計算
2昼光率窓から実際に何%の明るさが届くか昼光率計算ツール
3平均照度と台数光束法での必要灯数・平均照度照度計算シミュレーター / 照度計算・照明台数算出ツール
4点ごとの照度逐点法で「その位置」の照度を出す逐点法 照度計算
5グレア不快グレア指標 UGR の評価UGRグレア評価計算
6光源の色色温度と演色性の選定色温度⇄色度・RGB変換ツール
7非常用照明床面1lx(LEDは2lx)の離隔距離非常用照明 離隔距離・照度チェッカー
8表示の視認性サイン・掲示のコントラスト比WCAGコントラストチェッカー
9コストと副作用電気代、窓の断熱・日射のトレードオフ電気代計算ツール / 窓断熱リフォーム省エネ効果計算

確認する順序

① 建築基準法の採光をクリアするか(居室なら避けて通れない)
  ↓ ここは面積比だけ。実際の明るさは保証されない
② 昼光率で「昼間に本当に明るいか」を見る
  ↓ 昼光でどこまで賄えるかが決まる
③ 足りない分を人工照明で埋める(平均照度・必要台数)
  ↓ 平均が足りていても偏りは残る
④ 逐点法で作業面・机上・階段の実際の値を確認
  ↓ 量が満たせたら次は質
⑤⑥ グレアと色温度で「見え方」を詰める
  ↓ ここまでが平常時
⑦ 非常用照明で停電時の最低ラインを確保
  ↓
⑧⑨ サインの視認性とランニングコスト・窓の副作用

②で昼光が足りるほど③の台数は減るし、③で器具を増やすほど⑤のグレアは悪化する。領域は独立していないので、上から順に一度通してから戻るのが結局いちばん早い。

①建築基準法の採光計算|有効採光面積と採光補正係数

まず「採光義務のある居室か」を確認する

建築基準法第28条は、住宅・学校・病院・寄宿舎などの居室に採光のための開口部を義務づけている。逆に言えば、事務所や店舗の居室には採光義務がない。ここを取り違えて事務所ビルで採光計算に悩む人が毎年いる。

必要な開口部の割合は用途で違う。

居室の用途必要な有効採光面積(床面積比)
住宅の居室1/7 以上
幼稚園・小中高校の教室1/5 以上
病院・診療所の病室、寄宿舎の寝室1/7 以上
保育所の保育室1/5 以上
学校の音楽教室・視聴覚教室 等1/10 以上

住宅の居室については、床面において50lx以上を確保できる照明設備を設ける場合に1/10まで緩和できる規定が令和5年に施行されている。窓が取れない計画では検討の余地がある。

採光補正係数|窓の面積がそのまま効くわけではない

有効採光面積は、窓の面積そのものではない。

有効採光面積 = 開口部の面積 × 採光補正係数 A

採光補正係数 A = (D / H) × α − β      (上限 3.0)

D: 隣地境界線・向かいの建物までの水平距離 [m]
H: 開口部の中心から、その上にある建築物の各部分までの垂直距離 [m]

用途地域による係数(建築基準法施行令 第20条)
  住居系   α = 6 、β = 1.4
  工業系   α = 8 、β = 1.0
  商業系・無指定  α = 10 、β = 1.0

D/H が効くというのがポイントで、隣地が近く(Dが小さい)、窓の上に軒やバルコニーが張り出している(Hが大きい)ほど係数は下がる。ゼロや負になれば、その窓は採光上まったく効かない扱いになる。

一方で救済もある。水平距離が一定以上あれば、算定値が1未満でも1として扱える(住居系で7m、工業系で5m、商業系で4m)。天窓は算定した係数を3倍にできるので、隣地条件が厳しい敷地では強力な手になる。幅90cm以上の縁側越しの場合は0.7を掛ける。

「法規はクリア、でも暗い」が起きる理由

この計算に部屋の奥行きも内装の色も入っていないことに注目してほしい。同じ窓でも、奥行き3mの部屋と8mの部屋では奥の明るさがまるで違うのに、有効採光面積は同じ値になる。

だから①はあくまで入口の関門で、実際の明るさは②で別に確かめる必要がある。専用の計算ツールは用意していないので、上の式で手計算してほしい。

②昼光率|窓から実際にどれだけ届くか

昼光率 とは

昼光率は、屋外の明るさに対して室内のある点が何%の明るさになるかを表す。

昼光率 D = (室内のある点の照度 E) / (全天空照度 Es) × 100  [%]

全天空照度の目安
  快晴(直射日光を除く) 約 10,000 lx
  普通の日(設計用の標準) 約 15,000 lx
  薄曇り 約 30,000 lx
  暗い日 約 5,000 lx

昼光率1%なら、標準の15,000lxの日に室内は150lx。数字にすると小さく見えるが、住宅の居室ではこれで足りることも多い。

割合で表す理由は、屋外の明るさが刻々と変わるからだ。絶対値の照度で設計すると「いつの明るさの話か」が定まらない。比で押さえておけば、その日の空の明るさを掛けるだけで実際の照度が出る。

目安の水準

昼光率評価想定する空間
5% 以上十分な採光製図室・精密作業
2% 以上良好な採光事務室・教室
1% 以上最低限の採光居室・住宅
0.5% 以上採光不足廊下・階段
0.5% 未満昼光利用が困難

昼光率を下げる要因は、①には出てこないものばかりだ。ガラスの種類(Low-Eや複層は可視光透過率が下がる)、窓の汚れ(汚れた窓は新品の6〜7割まで落ちる)、室内の反射率(濃い色の内装は奥まで光を回さない)、そして部屋の奥行き。窓を大きくするより内装を明るくしたほうが効く、というケースは実際にある。

昼光率計算ツールで窓面積・位置・室内反射率から昼光率を算出して基準判定

③平均照度と必要台数|光束法

昼光で足りない分は人工照明で埋める。ここで使うのが光束法で、照明設計の中心にある計算だ。

光束法の式

E = (F × N × U × M) / A

E: 平均照度 [lx]
F: 器具1台あたりの光束 [lm]
N: 器具の台数
U: 照明率(室の形と反射率で決まる。0.3〜0.8程度)
M: 保守率(汚れと光束低下の見込み。0.6〜0.8程度)
A: 床面積 [m²]

必要台数 N = (E × A) / (F × U × M)

照明率Uを引くのに使うのが室指数だ。

室指数 K = (X × Y) / (H × (X + Y))

X, Y: 室の間口・奥行き [m]
H: 作業面から光源までの高さ [m]

室指数が大きい(=天井が低く広い部屋)ほど光が壁に逃げず、照明率が上がる。天井の高い細長い部屋は同じ台数でも暗くなるのはこのためで、倉庫や体育館で台数が跳ね上がる理由でもある。

保守率を1.0にしない

新品・清掃直後の状態で設計すると、数年後に必ず基準を割る。LEDでも光束は経時的に低下するし、器具にはホコリが積もる。事務所の清掃条件で0.7前後、粉塵の多い工場で0.6前後を見込むのが一般的だ。

保守率0.7は「3割余分に必要」という意味で、台数が10台か14台かを分ける。ここを1.0で計算した図面は、竣工検査は通っても数年後にクレームになる。

2つのツールの使い分け

ツール向いている場面
照度計算シミュレーター事務所・学校・工場・店舗など非住宅。JIS Z 9110 の用途プリセット18種から推奨照度を引いて判定まで一気に出す
照度計算・照明台数算出ツール住宅・小規模空間。シーリング/ダウンライト/ペンダントなど器具の種類から照明率を補正して台数を出す

用途基準から入るなら前者、器具から入るなら後者、という分け方が実務的だ。

照度計算シミュレーターで用途別のJIS基準と平均照度を判定、照度計算・照明台数算出ツールで器具タイプ別の必要台数を算出

④逐点法|「平均」では見えない偏り

光束法が出すのは部屋全体の平均だ。平均750lxでも、器具の真下は1,200lx、隅は300lxということが普通に起きる。「その位置で何lxか」を出すのが逐点法になる。

逆二乗則とcos³則

直下(真下)の水平面照度
  E = I / h²

斜め位置の水平面照度
  E = (I × cos³θ) / h²

I: その方向の光度 [cd]
h: 光源から作業面までの垂直距離 [m]
θ: 直下からの角度

効いてくるのは2つ。距離の2乗で落ちることと、角度がついたぶんcos³で落ちることだ。cos³は想像以上にきつく、θ=45°で 0.354、θ=60°では 0.125 まで下がる。器具の真下から少し外れただけで照度が1/3になる、という感覚を持っておくといい。

だから逐点法が要るのは、平均照度では判断できない場所だ。

  • 作業台・机上のように「ここが暗いと困る」点が決まっている場合
  • 天井の高い空間(距離の2乗が容赦なく効く)
  • 器具の間隔を広げたいとき(間の落ち込みが許容範囲か)
  • スポットライトのように配光の狭い器具

逐点法 照度計算で逆二乗則とcos³則から点照度を計算しJIS基準と比較

⑤グレア|明るくすれば良いわけではない

照度を満たしても「まぶしくて見づらい」なら設計は失敗だ。この不快さを数値化したのが**UGR(Unified Glare Rating)**で、値が大きいほどまぶしい。

UGRの制限値

空間UGR の上限
事務所(一般作業)19
学校の教室19
工場(精密作業)19
病院の一般病室19
店舗の販売エリア22
工場(粗作業)25

UGRが1違うと体感で「少しまぶしい」程度の差、3違うとはっきりわかる差になる。19と22の間には明確な壁がある。

UGRを悪化させる要因

輝度(器具の見かけの明るさ)が高いほど悪化する。同じ光束でも、発光面が小さい器具ほど輝度が高くなる——だから小さくて明るいダウンライトは要注意で、乳白カバーで発光面を広げると同じ照度でもUGRは下がる。

背景が暗いほど悪化する。夜のオフィスや、天井を暗い色にした空間は同じ器具でもまぶしく感じる。天井・壁を明るくするとグレアは改善する。

視線方向に器具があるほど悪化する。器具の並べ方を90°回すだけでUGRが数ポイント変わることもある。

つまり**「器具を増やして照度を上げる」はグレアには逆方向に効く**。③と⑤は行ったり来たりしながら詰める領域だ。

UGRグレア評価計算で室内照明のUGRを算出し用途別の上限と比較

⑥光源の色|色温度と演色性

明るさの「量」が決まったら、次は光の「色」だ。ここは好みの問題に見えて、実は法則がある。

色温度と照度の相性——クルイトフ効果

低い照度で色温度の高い(青白い)光を使うと、人は寒々しく陰気に感じる。逆に高い照度で色温度の低い(オレンジ色の)光を使うと、暑苦しく不自然に感じる。この関係はクルイトフ効果として古くから知られている。

空間目安の照度相性のいい色温度
寝室・間接照明30〜75 lx2,700K(電球色)
リビング(団らん)150〜300 lx2,700〜3,000K
ダイニング・店舗300〜500 lx3,000〜3,500K
事務所・教室500〜750 lx4,000〜5,000K(白色〜昼白色)
精密作業・検査750 lx 以上5,000〜6,500K(昼白色〜昼光色)

照度を落とすなら色温度も一緒に落とす——これがいちばん実用的な指針だ。リビングを調光する場面で、色温度が固定のままだと暗くしただけ寒々しくなる。調光と調色がセットになっている器具が増えているのはこのためだ。

演色性は別の指標

色温度は「光の色」、演色性(Ra / CRI)は「照らされた物の色が正しく見えるか」で、まったく別の話だ。同じ5,000Kの光でも、Ra 70の器具と Ra 95の器具では肌や食材の見え方が違う。物販・飲食・医療ではRa 90以上が望ましく、倉庫や駐車場ならRa 70でも困らない。

塗装の色合わせのように色そのものを判断する作業では、光源が変わると同じ塗料が違う色に見えるメタメリズムが問題になる。色の側の話は色コード変換まとめに詳しくまとめてある。

色温度⇄色度・RGB変換ツールで色温度から色度座標・RGB・光源色区分を確認

⑦非常用照明|停電時に守るべき最低ライン

ここまでは平常時の話だが、建築基準法は停電時の明るさも要求している建築基準法施行令第126条の4・5による非常用の照明装置だ。

要求される照度

光源床面での必要照度
白熱灯1 lx 以上
蛍光灯・LED2 lx 以上
階段室10 lx 以上

蛍光灯・LEDが白熱灯の2倍を要求されるのは、演色性の低い光源では同じ照度でも視認性が落ちるためだ。「LEDのほうが効率がいいから有利」ではない点に注意したい。予備電源で30分以上の点灯も必要になる。

器具の間隔は逐点法で決まる

非常用照明の配置は、④の逐点法そのものだ。器具の直下光度と取付高さから、床面で必要照度を満たせる最大の離隔距離が決まる。天井が高いほど直下照度は距離の2乗で落ちるので、倉庫のような空間では器具間隔がかなり詰まる。

直下照度 E₀ = I₀ / h²

例)I₀ = 200 cd、取付高さ h = 2.5 m
  E₀ = 200 / 2.5² = 32 lx  → LEDの要求 2 lx に対して十分
  ここから cos³則で、2 lx を下回らない最大の水平距離を求める

なお非常用照明と誘導灯は別制度だ。非常用照明は建築基準法、誘導灯は消防法の管轄で、要求も設置場所も違う。両方必要な建物では、それぞれ別に検討する。

非常用照明 離隔距離・照度チェッカーで直下光度と取付高さから最大離隔距離・器具間隔を算出

⑧表示の視認性|照度を上げても読めないもの

照度が十分でも読めない表示がある。原因は明るさではなくコントラストだ。

サイン・案内表示・掲示物・館内のデジタルサイネージは、文字と背景の輝度差で可読性が決まる。W3CのWCAG 2.1はWeb向けの基準だが、輝度比の考え方はサイン計画にもそのまま使える。

コントラスト比 = (L1 + 0.05) / (L2 + 0.05)     (1:1 〜 21:1)

基準(通常の文字)  4.5:1 以上
基準(大きい文字)  3:1 以上

ここで直感を裏切るのが、色相の差はコントラスト比にほとんど効かないという点だ。相対輝度は R・G・B に 0.2126 / 0.7152 / 0.0722 の重みを掛けて求めるため、緑の寄与が圧倒的に大きい。赤地に青文字のように「正反対の色」でも、輝度が近ければ比は1.5:1程度にしかならず読めない。配色は色相ではなく明度で決める——これがサイン設計の第一原理になる。

高齢者施設では、加齢による水晶体の黄変で青系の識別が落ちることも考慮したい。段差や手すりの識別には、色の違いより明度差を大きく取るほうが確実に効く。

WCAGコントラストチェッカーで文字色と背景色の組み合わせが基準を満たすか判定

⑨コストと副作用|明るさにはお金と熱がついてくる

照明の電気代

照明は建物の消費電力の2〜3割を占める。台数が10台か14台かは、竣工後20年ぶんのランニングコストの差になる。

年間電気代 = 消費電力[kW] × 点灯時間[h/日] × 稼働日数 × 電力量単価[円/kWh]

例)40W器具 × 20台 = 0.8kW、10時間/日、250日、31円/kWh
   0.8 × 10 × 250 × 31 = 62,000 円/年

②で昼光率を上げて日中の点灯を減らせれば、この数字が直接下がる。昼光利用は環境性能の話であると同時に、いちばん確実なコスト削減でもある。

電気代計算ツールで消費電力から月額・年額を試算

窓を大きくすることの副作用

採光のために窓を大きくすると、断熱性能と日射取得の両方が動く。窓は壁より圧倒的に熱を通すので、開口部が増えれば冬は寒く、夏は日射で暑くなる。

つまり①②で「窓を大きくする」と決めた瞬間に、空調側の設計条件が変わっている。採光・断熱・冷房負荷は同じ窓の3つの側面で、片方だけ最適化すると必ずどこかにしわ寄せが行く。

窓断熱リフォーム省エネ効果計算でガラス仕様を変えたときの冷暖房費とCO2の変化を確認、エアコン能力選定シミュレーターで方位と窓を含めた必要能力を確認

空調側の設計全体は空調・換気設計の計算まとめ、器具までの配線と回路は電気配線設計まとめにまとめている。

照明・採光設計チェックリスト

設計レビューや自己チェックに使えるリストをまとめた。

  • その居室に建築基準法の採光義務があるか確認したか(事務所・店舗は対象外)
  • 有効採光面積は用途に応じた床面積比(住宅1/7 等)を満たしているか
  • 採光補正係数の D/H に、軒・バルコニーの張り出しを含めたか
  • 天窓の3倍、縁側の0.7倍などの補正を適用したか
  • 法規クリア後に、昼光率で「実際に明るいか」を確認したか → 昼光率計算ツール
  • 昼光率の計算にガラスの可視光透過率と窓の汚れを見込んだか
  • 室内の反射率(内装の色)を実際の仕様で入れたか
  • 平均照度は用途別のJIS基準を満たしているか → 照度計算シミュレーター
  • 住宅・小規模空間は器具タイプから台数を出したか → 照度計算・照明台数算出ツール
  • 保守率を1.0にしていないか(事務所0.7・粉塵環境0.6が目安)
  • 室指数から照明率を引いたか(天井の高い細長い部屋は要注意)
  • 作業面・机上など「ここが暗いと困る点」を逐点法で確認したか → 逐点法 照度計算
  • 器具間隔を広げた箇所の落ち込みは許容範囲か
  • UGRは用途別の上限(事務所19・店舗22 等)以内か → UGRグレア評価計算
  • 発光面の小さい器具を多用していないか(同じ照度でもUGRが上がる)
  • 色温度は想定照度と釣り合っているか(低照度×高色温度は寒々しい) → 色温度⇄色度・RGB変換ツール
  • 色の判断が要る作業には演色性 Ra 90以上を選んだか
  • 非常用照明は光源種別の要求照度(白熱1lx/LED2lx/階段10lx)を満たすか → 非常用照明 離隔距離・照度チェッカー
  • 非常用照明と誘導灯(消防法)を別々に検討したか
  • サイン・掲示の配色を色相ではなく明度差で決めたか → WCAGコントラストチェッカー
  • 台数増による年間電気代の増分を試算したか → 電気代計算ツール
  • 窓を大きくした影響を断熱・冷房負荷側でも確認したか → 窓断熱リフォーム省エネ効果計算 / エアコン能力選定シミュレーター

豆知識|明るさにまつわる数字の話

ルクスとルーメンとカンデラの関係

混同されがちな3つは、光源から面までを追うと整理できる。カンデラ(cd)は光源がある方向へどれだけ強く光るかという光度。ルーメン(lm)は光源が全方向に放つ光の総量=光束。ルクス(lx)は照らされた面が受け取る量で、1 lx = 1 lm/m²。

つまり同じ1,000lmの電球でも、傘で光を一方向に絞れば真下の照度は上がる。器具のlm表示だけで明るさを比較できない理由がここにある。

満月の夜は0.2lx、晴天の屋外は10万lx

人間の目が扱う照度の幅は50万倍にもなる。屋外の直射日光下で10万lx、曇天で1万lx、日没直後で数百lx、満月の夜で0.2lx。事務所の750lxは、屋外から見れば曇りの日の1/13程度でしかない。

「窓際は明るい」という体感が数字とずれるのは、目の順応が強力だからだ。窓際3,000lxと部屋の奥300lxは10倍違うのに、歩いていると連続して見えてしまう。設計で数字を使う理由はここにある。

保守率という「未来の汚れ」を見込む文化

照明設計で保守率を掛けるのは、竣工時ではなく更新直前の状態で基準を満たすという考え方だ。同じ思想は空調のフィルタ目詰まりや配管のスケール付着にもある。設備設計が「新品の性能」で計算しないのは、引き渡し後の十数年を設計対象にしているからにほかならない。

昼光率の基準が「割合」である理由

昼光率が%で定義されているのは、太陽が動くからだ。時刻・季節・天候で屋外照度は5,000〜30,000lxの範囲で動くのに、室内の比率は室の形と窓で決まってほぼ一定になる。変わるものを分母に置いて、変わらないものを取り出す——設計指標としてよくできた発想だ。

Tips|明るさの設計で失敗しないために

  • ①と②を別物として扱う — 建築基準法の採光と昼光率は、名前が似ているだけで計算も意味も違う。①をクリアしても「明るい部屋」の保証にはならない
  • 暗いと言われたら、まず照度より配置を疑う — 平均は足りていて分布が悪いケースが多い。逐点法で暗い点を特定してから器具を足すほうが、全体を増やすより安く効く
  • 保守率と照明率をカタログのままにしない — 汚れ方も内装の色も現場ごとに違う。この2つの係数は結果を1.5倍以上動かす
  • 調光するなら調色もセットで考える — 照度だけ落とすと寒々しくなる。色温度も一緒に落とせる器具を選ぶ
  • 非常用照明は天井高で決まる — 意匠で天井を上げた瞬間に器具間隔が詰まる。天井高が変わったら必ず再計算する
  • 窓の検討は必ず空調とセットで戻す — 採光のために大きくした窓は、冷暖房費と冷房能力の両方に効く。片側だけ最適化しない
Q. 「採光計算」と「昼光率計算」は何が違うのか?

まったく別の計算だ。①で扱った建築基準法の採光計算は、開口部の面積に採光補正係数を掛けた「有効採光面積」が床面積の1/7以上あるかを見る法規のチェックで、部屋の奥行きも内装の色も入らない。一方②の昼光率は、屋外の明るさに対して室内が何%になるかという環境性能の指標で、窓の性能・室形状・反射率がすべて効く。確認申請には①、実際の明るさの検討には②を使う。名前が似ているせいで混同されるが、片方だけでは設計にならない。

Q. 照度計算ツールが2つあるのはなぜ?どちらを使えばいい?

計算の入口が違う。照度計算シミュレーターはJIS Z 9110の用途プリセット18種(事務所・学校・工場・医療・商業など)から推奨照度を引いて判定まで出すので、非住宅の設計に向く。照度計算・照明台数算出ツールはシーリング・ダウンライト・ペンダントといった器具の種類から照明率を補正するので、住宅や小規模空間で「この器具を何台置くか」を決めるのに向く。光束法という中身は同じなので、入りやすいほうから使えばいい。

Q. 照度を満たしているのに「暗い」と言われる。何を疑えばいい?

3つある。1つ目は分布で、平均は足りていても作業位置が器具の間に落ちている可能性がある(④の逐点法で確認)。2つ目は壁と天井の明るさで、床面照度が同じでも周囲が暗いと空間は暗く感じる。天井や壁を明るい色にするだけで体感は変わる。3つ目は色温度で、低い照度に高い色温度を合わせると陰気に見える(⑥のクルイトフ効果)。器具を足す前にこの3つを潰したほうが、費用対効果はずっと高い。

Q. LEDに替えたら「まぶしい」と言われるようになった。なぜ?

⑤で触れたとおり、UGRは光束ではなく輝度(発光面の見かけの明るさ)で悪化する。LEDは発光面が小さいので、同じ光束の蛍光灯と入れ替えると輝度が跳ね上がる。対策は、乳白カバーやルーバーで発光面を広げる、直下ではなく間接や配光の広い器具に替える、天井・壁を明るくして背景輝度を上げる、の3つ。照度を下げるのは最後の手段でいい。

Q. 非常用照明はLEDのほうが有利ではないのか?

省エネでは有利だが、要求照度では不利になる。⑦の表のとおり、蛍光灯・LEDは床面2lx以上で、白熱灯の1lxの2倍を求められる。演色性の低い光源では同じ照度でも視認性が落ちるためだ。器具の直下光度と取付高さから満たせる離隔距離が変わるので、光源を変えたら非常用照明 離隔距離・照度チェッカーで必ず再計算してほしい。なお非常用照明(建築基準法)と誘導灯(消防法)は別制度なので、片方の検討で済ませないこと。

Q. 計算結果のデータはサーバーに保存される?

いずれのツールもブラウザ内で計算が完結しており、入力データや計算結果がサーバーに送信されることはない。実案件の寸法や仕様も安心して入力できる。

まとめ|「明るさ」を6つの数字に分解する

照明・採光の設計は、法規(有効採光面積)→ 昼光率 → 平均照度 → 点照度 → グレアと色 → 非常時という順で、扱う数字が入れ替わっていく。ひとつの「明るさ」で語ろうとするから、窓を広げても暗いままだったり、照度を満たしてもまぶしかったりする。

特に混同されやすい①と②を分けて考えられれば、それだけで設計の精度は大きく上がる。①は通行証、②が実力だ。

この記事で紹介したツールを使えば、ブラウザだけで一通りの検証が完了する:

窓まわりの空調側は空調・換気設計の計算まとめ、器具への配線は電気配線設計まとめ、色そのものの扱いは色コード変換まとめにそれぞれまとめてある。

なお本文中の法令の数値は執筆時点のもので、実際の確認申請では最新の条文と特定行政庁の運用を確認してほしい。

不具合の報告や機能リクエストはお問い合わせページから。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。設備設計の実務で、確認申請の採光計算は通ったのに「奥が暗い」と言われた住宅を経験。以来、法規の採光と昼光率は必ず別々に計算するようにしている。

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