電気設備公開 2026-03-31更新 2026-09-08

電気配線設計まとめ|ブレーカー・電圧降下・電線管・ケーブルラック

「前回も2.0mmで通ったから」が事故を招く

電気配線の設計で、ブレーカーの定格と電線の太さを「なんとなく」で決めていないだろうか。負荷容量が増えたのにブレーカーはそのまま、電線管の占有率は確認していない——こうした見落としが、過熱・漏電・火災という最悪の結果につながる。

電気配線設計で押さえるべき計算は11ある。分電盤の負荷集計・ブレーカー選定・漏電遮断器選定・電圧降下・電線サイズ変換・許容電流・電線管サイズ・束径・ケーブルラック幅・ラック耐荷重・引込み張力だ。これらは独立しておらず、負荷容量→ブレーカー→電線→管路→施工性という一連のフローで相互に依存している。

しかも下流に行くほど、図面上は正しいのに現場で成立しないという失敗が出てくる。管サイズは基準内なのにケーブルが入らない、ラック幅は足りているのに支持金物がたわむ——このあたりは机上の占有率だけでは見えない。

この記事では、電気配線設計の計算項目を設計フローに沿って整理し、各計算の勘どころと無料ツールへのリンクをまとめた。電気設備の設計2〜5年目のエンジニアが「配線の選定、全部やったか?」とセルフチェックできる構成にしている。

なぜこの記事を書いたのか

電気配線の情報は断片的に散らばっている。「ブレーカー 選定」で検索すれば内線規程の抜粋が出てくるし、「電圧降下 計算」で調べれば公式の解説が出てくる。しかし、7つの計算項目をどの順番で、どう連携させて進めるべきかを俯瞰できるページが少なかった。

実務で怖いのは「計算を忘れた」ではなく「計算すべき項目を知らなかった」だ。ブレーカーは選んだけど電圧降下は未確認、電線管の占有率を超えていたのに束径を検算しなかった——こうした抜けは、設計フロー全体を一覧化していれば防げる。

特に電気配線設計は上流の決定が下流をすべて支配する。負荷容量が変われば、ブレーカーも電線も管路もすべてやり直し。だからこそ、全体像を把握した上で1つずつ確認する習慣が重要になる。

そしてもう一段、設計と施工の境目にある計算が抜けやすい。ケーブルの引込み張力、ラックの支持間隔、分電盤の相不平衡——どれも「設計図には現れないが、現場で止まる」種類の項目だ。この記事ではそこまで含めて一覧にしている。

電気配線設計の全体像|11の計算領域と設計フロー

電気配線設計と一口に言っても、検討すべき範囲は広い。以下の11領域を設計フローに沿ってカバーすることで、選定ミスを防げる。

#計算領域主な検討内容対応ツール
0分電盤の負荷集計回路の積み上げ・不平衡率・主幹容量分電盤負荷集計シミュレーター
1ブレーカー・電線一括選定負荷容量からAT・電線・管を一括決定ブレーカー・電線一括選定
2電圧降下配線長・負荷電流による電圧ドロップ電圧降下チェッカー
3電線サイズ変換AWG⇔SQ⇔直径の相互変換AWG・SQ変換
4許容電流ケーブル種類・布設条件による減少係数許容電流早見
5電線管サイズ占有率32%/48%基準の管径選定電線管サイズ判定
6束径電線束ね直径と推奨配管径束径計算
7ケーブルラック幅営繕基準に基づくラック幅選定ラック幅選定
8ラック耐荷重・支持間隔積載質量と支持スパンの検定ケーブルラック耐荷重・支持間隔チェッカー
9引込み張力・側圧曲がりを含むルートの引き入れ可否ケーブル引込み張力・側圧計算
10漏電遮断器の選定感度電流・動作時間・不要動作漏電遮断器選定ツール / 漏電ブレーカー選定ガイド

設計フローと依存関係

電気配線設計は上流から下流へ一方向に流れるのが基本だ。配管設計のようなイテレーションは少なく、上流の決定が下流を支配する:

Phase 0: 盤単位で負荷を積み上げる(⓪)

  • 回路ごとの負荷を集計し、主幹の容量と単相3線式の不平衡率を確認する
  • ここが固まらないと①以降がすべて仮置きになる

Phase 1: 負荷確定と保護選定(①②⑩)

  • 負荷容量を確定し、ブレーカーの定格ATを選定(①)
  • ブレーカーATに対応する電線サイズが決まる(①)
  • 配線長を入れて電圧降下を検証(②)。NGなら電線を太くする
  • 人が触れる回路・屋外回路には漏電遮断器の感度電流と動作時間を選定(⑩)

Phase 2: 電線の仕様確定(③④)

  • 海外規格混在時はAWG⇔SQ変換で統一(③)
  • 布設条件(管内、気中、直埋など)を反映した許容電流を確認(④)。周囲温度や多条布設の減少係数を含めてNGなら電線を太くする

Phase 3: 管路・ラック選定(⑤⑥⑦)

  • 電線の本数と外径から電線管サイズを選定(⑤)
  • 束ね直径を計算して管径とのクロスチェック(⑥)
  • 幹線ルートではケーブルラック幅を選定(⑦)

Phase 4: 施工性の検証(⑧⑨)

  • ラックの積載質量と支持間隔を検定する(⑧)
  • 曲がりの多いルートは引込み張力と側圧を確認する(⑨)。ここでNGなら、プルボックスの追加やルート変更という図面レベルの手戻りになる

上流で電線サイズが変わると、下流の管路・ラック・施工性がすべてやり直しになる。だから「ブレーカーだけ選んだ」「電線管だけ決めた」では不十分で、11領域を通しで確認する必要がある。

三相200V・15kWのモーター1台を、始動電流からブレーカー・電線・電圧降下・電線管・ケーブルラックまで実際に通した例題は、モーター分岐回路の通し例題|始動電流からブレーカー・電線・電圧降下・電線管・ラックまでにまとめた。2つのツールがブレーカーに60Aと175Aを返すこと、許容電流では14sqで足りても電圧降下で38sqに上がることを数値で追っている。

⓪分電盤の負荷集計|すべての計算の出発点

回路1本ずつのブレーカー選定は、実は設計の2番目の作業だ。その前に盤単位で負荷を積み上げる工程がある。ここが甘いと、個々の回路が正しくても主幹で落ちる。

負荷集計で見る3つの数字

1. 主幹容量 — 各回路の負荷を合計し、需要率(すべての負荷が同時に使われるわけではない)を掛けて主幹のATを決める。全負荷の単純合計で主幹を選ぶと、無駄に大きな主幹と幹線を引くことになる。

2. 相の不平衡率 — 単相3線式ではL1相とL2相に負荷を振り分ける。片寄ると中性線に電流が流れ、電圧が偏る。内線規程では原則として不平衡率40%以下(低圧受電の場合)を求めている。

不平衡率 = |L1相の負荷 − L2相の負荷| / (総負荷 / 2) × 100 [%]

三相3線式でも同様に、単相負荷を各相に振り分けたときの偏りを確認する。

3. 予備回路 — 竣工後の増設は必ず起きる。分電盤の回路数には2〜4回路の予備を残すのが実務の常識で、これを盛り込むのも集計段階の仕事だ。

不平衡を放置すると何が起きるか

中性線に電流が流れると、中性線が過熱する。しかも単相3線式の中性線にはブレーカーが入らないので、過電流が流れても保護されない。さらに中性線が断線すると、軽負荷側の相に過電圧(最大200V)がかかって機器が壊れる。片寄った盤は、この事故のリスクを常に抱えていることになる。

→ 分電盤負荷集計シミュレーターで回路の積み上げ・不平衡率・主幹容量を一括算定

①ブレーカー・電線サイズ一括選定|回路1本ずつを決める

ブレーカー 電線 選定 の基本

電気配線設計のすべてはここから始まる。負荷の容量(kW)と電圧・相数から負荷電流を算出し、それに見合うブレーカーの定格AT(アンペアトリップ)を選定する。

負荷電流の基本式は単相・三相で異なる:

【単相2線式】
I = P / V

【単相3線式】
I = P / V(平衡負荷の場合)

【三相3線式】
I = P / (√3 × V × cosθ)

I: 負荷電流 [A]
P: 消費電力 [W]
V: 線間電圧 [V]
cosθ: 力率(一般負荷0.8〜1.0)

内線規程に基づく選定ルール

ブレーカーと電線の関係は内線規程(JEAC 8001)で明確に規定されている。基本的なルールは以下の通り:

  • ブレーカー定格AT ≧ 負荷電流 — 当然だが、これだけでは不十分
  • 電線の許容電流 ≧ ブレーカー定格AT — 電線がブレーカーの遮断前に過熱しないこと
  • 電線管サイズ — 占有率基準を満たす管径を選ぶ

この3つの関係が崩れると、ブレーカーが遮断する前に電線が過熱し、最悪の場合は被覆の溶融や火災に至る。「電線がブレーカーより先に壊れない」ことが鉄則だ。

ブレーカーの種類と使い分け

配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB)の選定も重要だ。分電盤の主幹にはMCCB、分岐回路には感度電流30mAのELCBを設置するのが一般的。電気設備の技術基準の解釈では、水気のある場所への漏電遮断器設置を義務付けている。

→ ブレーカー・電線サイズ一括選定で負荷容量からブレーカーAT・電線・電線管を一括選定

②電圧降下チェッカー|配線が長いと電圧が足りない

電圧降下 計算 の基本

電線には抵抗がある。電流が流れると電圧降下が発生し、末端の機器に供給される電圧が低下する。モーターの起動不良、照明のちらつき、制御機器の誤動作——電圧降下が原因のトラブルは多い。

電圧降下の基本式:

【単相2線式】
e = 2 × I × (R cosθ + X sinθ) × L

【三相3線式】
e = √3 × I × (R cosθ + X sinθ) × L

e: 電圧降下 [V]
I: 負荷電流 [A]
R: 電線の抵抗 [Ω/m]
X: 電線のリアクタンス [Ω/m]
L: 配線長(片道)[m]
cosθ: 力率

許容電圧降下の基準

内線規程では電圧降下の許容値を以下のように定めている:

区間許容電圧降下
幹線(引込口→分電盤)供給電圧の3%以内
分岐回路(分電盤→コンセント)供給電圧の2%以内
幹線+分岐の合計供給電圧の5%以内

たとえば100V回路で幹線3%=3V、分岐2%=2V。合計5V以内に収める必要がある。200V回路なら幹線6V、分岐4V、合計10V以内だ。

電圧降下を減らすには

電圧降下が許容値を超えた場合の対策は3つ:

  1. 電線を太くする — 抵抗Rが下がり、電圧降下が減る。最も確実な方法
  2. 配線ルートを短くする — 距離Lが下がる。建物の設計段階でしか対応できない
  3. 電圧を上げる — 100V→200Vにすれば電流が半分になり、電圧降下も半分。動力回路では有効

延長コードやテンポラリー配線は特に要注意。細い電線を長距離引き回すと、電圧降下が5%を大幅に超える。工事現場の仮設電源でトラブルが多い原因はこれだ。

→ 電圧降下・配線太さチェッカーで電圧降下と発熱リスクをリアルタイム計算

③AWG・SQ電線サイズ変換|規格の壁を越える

電線サイズ AWG SQ 変換 とは

日本の電線サイズはSQ(mm²=断面積)表記が標準だが、海外製機器はAWG(American Wire Gauge)表記が多い。輸入機器の端子台に「AWG 10」と書いてあったとき、日本のIV線で何SQを使えばいいのか——この変換を間違えると、端子のかしめ不良や許容電流のミスマッチが起きる。

主要な対応表:

AWG断面積 [mm²]近似SQ直径 [mm]
142.082.01.63
123.313.52.05
105.265.52.59
88.378.03.26
613.3144.11
421.2225.19
233.6386.54

AWGは数字が小さいほど太くなる点に注意。これは歴史的にダイス(引抜き型)の通過回数を表しているためで、通す回数が多いほど細くなる。ASTM B258がAWGの公式規格だ。

SQとAWGは1対1対応ではない

上の表を見てわかる通り、AWGとSQの断面積は完全には一致しない。AWG 10は5.26mm²だが、日本のSQでは5.5mm²になる。この差は許容電流に数%の影響を与えるので、厳密な設計では変換後の実断面積で計算し直すべきだ。

→ AWG・SQ電線サイズ変換&許容電流早見でAWG⇔SQ⇔直径を双方向変換、許容電流も同時に確認

④ケーブル許容電流|布設条件で大幅に変わる

ケーブル 許容電流 とは

ケーブルの許容電流とは、絶縁体の最高許容温度を超えずに連続通電できる最大電流のこと。カタログに載っている基準値は「気中1条、周囲温度30℃」など特定の布設条件での値であり、実際の施工条件では減少係数を掛ける必要がある。

許容電流を左右する要因

要因影響減少係数の目安
周囲温度高温ほど放熱が悪化40℃で0.82〜0.91
管内布設対流が制限される0.70〜0.80
多条布設相互加熱で温度上昇3条で0.70
直埋布設土壌熱抵抗に依存0.75〜0.85

これらの減少係数は掛け算で適用される。たとえば「管内布設(×0.80)、周囲温度40℃(×0.87)」なら 0.80 × 0.87 = 0.696。カタログ値の約70%まで許容電流が落ちる。

見落としがちな多条布設の影響

電線管内に複数のケーブルを収めると、ケーブル同士が発熱を共有して温度が上がる。電技解釈では管内布設時の許容電流値を規定しており、気中の基準値からの低減が必要だ。特にCVケーブルの3条以上の管内布設では、許容電流がカタログ値の50〜60%にまで落ちることもある。

電線サイズの選定時には、減少係数を適用した後の許容電流 ≧ ブレーカー定格AT であることを必ず確認する。これが逆転していると、ブレーカーが遮断する前に電線が過熱する。

→ ケーブル許容電流 早見・計算ツールでケーブル種類・布設方法・温度から許容電流を即表示

⑤電線管サイズ判定|占有率の壁を越える

電線管 サイズ 選定 の基本

電線管のサイズは、収納する電線の断面積の合計と管の内断面積の比率(占有率)で決まる。占有率が高すぎると電線の引き入れが困難になり、放熱も悪化して許容電流が低下する。

内線規程が定める占有率の基準:

条件占有率上限
電線3本以下32%以内
電線4本以上40%以内
占有率 = 電線の総断面積 / 管の内断面積 × 100 [%]

電線の断面積: 絶縁被覆を含む仕上がり外径から算出
管の内断面積: 管の呼び径に対応する内径から算出

管の種類による選択肢

電線管は大きく3種類ある:

  • 薄鋼電線管(C管) — 屋内の一般配線に最も多用される。呼び径C19〜C75
  • 厚鋼電線管(G管) — 屋外や機械的衝撃を受ける場所。呼び径G16〜G104
  • PF管・CD管(合成樹脂管) — コンクリート埋設やRC造の隠蔽配線。可とう性あり

同じ呼び径でも管種によって内径が異なるので、占有率の計算には管種の指定が必要だ。たとえばC19とG16は呼び径が違うが内径はほぼ同等で、使い分けは施工条件による。

LANケーブルなど弱電を通すとき

PF管にLANケーブルを何本通せるか——という相談は現場で頻繁に出る。考え方は電力線と同じで、ケーブル外径の合計断面積 ÷ 管の内断面積を占有率の基準と比べるだけだ。

ただし弱電には電力線と違う制約が2つある。

1つは曲げ半径。Cat6/6AのUTPは外径の4〜8倍以上の曲げ半径が必要で、これを割ると特性インピーダンスが乱れて伝送性能が落ちる。占有率がクリアでも、管の曲がりがきつければ引けない。

もう1つは電力線との離隔。同一管内に電力線と通信線を混在させるのは原則として不可で、ラック上でも金属セパレータで分けるのが標準だ。ノイズの誘導だけでなく、絶縁レベルの違いという安全上の理由もある。

→ 電線管サイズ判定シミュレーターで電線の占有率を計算し、最適な管サイズを自動判定

⑥電線束径計算|管路設計のダブルチェック

電線 束径 計算 とは

電線管の占有率計算とは別に、電線を束ねたときの外接円直径(束径)を算出する計算だ。占有率がクリアしていても、束径が管の内径を物理的に超えていたら入らない。

束径の計算は電線の本数によって公式が変わる:

【2本の場合】
D = 2d

【3本の場合】
D = d × (1 + 2/√3) ≈ 2.155d

【4本以上(正多角形配置)】
D = d × (1 + 1/sin(π/n))

d: 電線の仕上がり外径 [mm]
n: 電線の本数
D: 束径(外接円直径)[mm]

占有率と束径のクロスチェック

占有率の計算は電線の断面積の合計で判定するが、束径の計算は電線の**配置(幾何形状)**で判定する。同じ占有率でも、太い電線3本と細い電線10本では束径が異なる。

実務では両方を計算してクロスチェックするのが安全だ。特に異径電線(太さの異なる電線)を混在させる場合、占有率は余裕があっても束径が管の内径に近くなることがある。

→ 電線束径計算機で電線の種類と本数から束ね直径と推奨配管径を概算

⑦ケーブルラック幅選定|幹線ルートの動脈を設計する

ケーブルラック 幅 選定 とは

ケーブルラックは、大量のケーブルを整理して敷設するための金属製トレーだ。ビルや工場の天井裏、EPS(電気シャフト)で幹線ケーブルを集約するルートに使う。

ラック幅の選定は公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)(いわゆる営繕基準)に基づくのが標準的だ:

必要ラック幅 = ケーブルの仕上がり外径の合計 × 余裕係数

余裕係数:
- 電力ケーブル: 外径合計の1.2倍以上
- 弱電ケーブル(制御・通信): 外径合計の1.0倍以上
- 電力と弱電の混在: セパレータで分離

ラック幅の標準サイズ

ケーブルラックの幅は規格品で決まっている。JIS C 8461では以下のサイズが標準だ:

100, 150, 200, 300, 400, 500, 600 [mm]

ケーブル外径の合計に余裕係数を掛けた値以上の、最小の標準サイズを選ぶ。将来の増設を見込む場合は、さらに1〜2サイズ上を選定することが多い。

段積みと荷重制限

ラック上にケーブルを積む高さには制限がある。一般的にはケーブル外径の合計が100mm以下(単層敷き)が望ましい。段積みすると下のケーブルの放熱が悪化し、許容電流の減少係数が必要になる。

また、ケーブルラックの許容荷重にも注意が必要だ。ケーブルの重量が支持間隔あたりの許容荷重を超えないことを確認する。CVT 100mm²が10条、ラック長50mともなれば、ケーブル重量だけで数百kgになる。

→ ケーブルラック幅選定シミュレーターで営繕基準に基づくラック幅を自動算出、SVG配置図付き

⑧ケーブルラックの耐荷重・支持間隔|幅が足りても落ちる

ラック幅は「並ぶかどうか」の話で、そこに載る重さは別問題だ。幅の検討だけで終わらせると、支持金物やラック本体の強度を誰も見ていない状態になる。

積載質量の積み上げ

ケーブルの単位質量は太さで大きく変わる。CVT 100mm²は1mあたり約4kg、CVT 38mm²でも約1.6kgある。これが10条並べば1mあたり40kg、支持間隔2mなら1スパンに80kgが乗る計算だ。

1mあたりの積載質量 = Σ(各ケーブルの単位質量 × 条数)
1スパンの荷重 = 1mあたりの積載質量 × 支持間隔 + ラック自重

支持間隔は「メーカーの許容荷重曲線」で決まる

ケーブルラックの許容荷重は、支持間隔を長くするほど下がる。カタログには「支持間隔2mで◯kg/m、3mで◯kg/m」という形で許容値が載っており、スパンが伸びるとたわみと曲げ応力の両方が効いてくる。

一般的な鋼製ラックの支持間隔は2m以下が標準で、水平ルートでは1.5〜2m、垂直ルートではもう少し詰める。天井インサートの位置と合わないからと3m飛ばすと、許容荷重が一段下がることに気づかないまま施工されがちだ。

さらに、屋外や積雪地域では雪の重さが乗る。カバー付きラックでは特にこの荷重が無視できない。

→ ケーブルラック耐荷重・支持間隔チェッカーで積載質量を積み上げ、支持スパンごとの検定比を算出

⑨ケーブル引込み張力・側圧|「入るはずが入らない」を防ぐ

管路やラックの寸法が足りていても、引き入れられるとは限らない。曲がりの多いルートでは、ケーブルを引く力が途中で急激に増える。

張力は曲がりで指数関数的に増える

ケーブルを管路に引き込むときの張力は、直線部では摩擦係数×重量×距離で素直に増えるが、曲がり部では指数関数的に増える。

【直線部】
T2 = T1 + μ × w × L

【曲がり部(ベンド)】
T2 = T1 × e^(μ × θ)

T1: 入口側張力 [N]      T2: 出口側張力 [N]
μ : 摩擦係数(0.2〜0.5)
w : ケーブル単位質量 [kg/m] × g
L : 直線長さ [m]        θ : 曲がり角度 [rad]

90°ベンドが1つ入るだけで、μ=0.35 なら張力は e^(0.35×π/2) ≈ 1.73倍になる。同じ90°でも、ルートの前半にあるか後半にあるかで最終張力がまるで違う——これがベンドの位置を設計で気にする理由だ。同じ曲がりなら、張力の小さい入口側に寄せたほうが有利になる。

側圧(サイドウォールプレッシャー)

もう1つの制約が側圧だ。曲がり部でケーブルが管壁に押し付けられる力で、これが大きすぎると絶縁体が潰れて特性が落ちる。

側圧 P = T / R

T: その位置での張力 [N]
R: 曲率半径 [m]

分母が曲率半径なので、きつい曲がりほど側圧が跳ね上がる。許容側圧はケーブル種別で決まっており、CVケーブルで概ね5〜7kN/m程度が目安になる。

対処は「プルボックス」

張力または側圧がNGになったら、途中にプルボックスを設けて引き直す。そこで張力がリセットされるので、区間を分割すれば成立する。ただしプルボックスは点検口が必要で、意匠・構造との調整が発生する。だからこそ施工前に計算しておく価値がある。

→ ケーブル引込み張力・側圧計算でルートの張力と側圧を計算し許容値で判定

⑩漏電遮断器の選定|感度電流と不要動作のバランス

過電流を守るのがブレーカーなら、**地絡(漏電)を守るのが漏電遮断器(ELCB)**だ。両者は守る対象がまったく違うので、片方があればいいという関係ではない。

感度電流の選び方

感度電流主な用途
15 mA医療機器・特に危険度の高い場所
30 mA人体保護の標準。住宅・一般回路・水気のある場所
100〜500 mA火災保護・地絡保護(機器保護が目的で人体保護ではない)

30mAという値には根拠がある。人体に流れる電流が概ね50mAを超えると心室細動のリスクが生じるとされ、その手前で0.1秒以内に遮断することで感電を致命傷にしないという考え方だ。電気設備の技術基準の解釈では、対地電圧150Vを超える機器や水気のある場所への設置が義務づけられている。

不要動作(もらい漏電)という現実問題

現場で最も多いトラブルが、漏電していないのにELCBが落ちる不要動作だ。原因の大半は対地静電容量による漏れ電流。

  • インバータ機器・PCの電源にはノイズフィルタが入っており、常時1回路あたり0.5〜2mA程度の漏れ電流がある
  • 長いケーブルはそれ自体が対地静電容量を持ち、電線長に比例して漏れ電流が増える
  • これらが積み上がって感度電流の1/2を超えると、突入電流のタイミングで誤動作する

対策は回路の分割(1台のELCBに機器を集中させない)と、インバータ回路には高調波・サージ対応形を使うこと。感度電流を上げて逃げるのは、人体保護を犠牲にするので最後の手段になる。

保護協調|上下で同時に落ちない

上位(主幹)と下位(分岐)の両方にELCBがある場合、分岐で漏電したときに主幹まで落ちると全館停電になる。これを避けるには、上位の感度電流を大きく、動作時間を遅く(時延形)して段差をつける必要がある。一般には感度電流で3倍以上、動作時間で2段階の差をつける。

→ 漏電遮断器選定ツールで感度電流・極数・遮断容量と保護協調を判定、漏電ブレーカー選定ガイドで不要動作リスクを概算

電気配線設計チェックリスト

設計レビューや自己チェックに使えるリストをまとめた。

豆知識|電気配線で知っておきたいトリビア

「許容電流」は温度で決まる

電線の許容電流の正体は「絶縁体が劣化しない上限温度から逆算した電流値」だ。IVケーブルの絶縁体(塩化ビニル)の最高許容温度は60℃、CVケーブル(架橋ポリエチレン)は90℃。CVケーブルの許容電流がIVより大きいのは、絶縁体が高温に耐えるからであって、導体の銅自体が違うわけではない。JIS C 3605にケーブルの許容電流算出方法が規定されている。

「32%ルール」の由来

電線管の占有率32%という数値は、電線を管内に引き入れる際の摩擦と放熱のバランスから決められた経験値だ。3本以下の場合32%、4本以上の場合40%と区別があるのは、本数が少ないほど1本あたりの電線が太くなる傾向があり、引き入れ時に管壁との摩擦が大きくなるためだ。ちなみに米国のNEC(National Electrical Code)では40%が基準で、日本より緩い。

AWGの起源は19世紀のワイヤ工場

AWG(American Wire Gauge)の番号体系は、1857年にJ. R. Brownが制定した。ブラウン・アンド・シャープ社のダイス(引抜き型)を通す回数がそのまま番号になったため、番号が大きいほど細くなるという直感に反する体系になった。AWG 0000(4/0と表記)が最も太く、AWG 40が最も細い。

電圧降下5%の「根拠」

内線規程の「幹線+分岐で5%以内」という基準には技術的な根拠がある。100V機器の多くは電圧が95V以上であれば正常動作するように設計されている。5%低下した95Vが事実上の下限だ。ただし、モーターの起動時は定格電流の5〜7倍の突入電流が流れるため、起動時の一時的な電圧降下は5%を超えることがある。これは「瞬時」であれば問題ないとされている。

Tips|電気配線設計で失敗しないために

  • まず負荷リストを固める — 負荷容量が変わると、ブレーカーから管路まですべてやり直しになる。設計着手前に負荷リストのフリーズを確認する
  • 電圧降下は幹線と分岐を分けて計算 — 「合計5%以内」だけ見ていると、幹線で4%使い切って分岐回路で1%しか余裕がないという状況に陥る。幹線3%・分岐2%の配分を守る
  • 許容電流は「最悪条件」で計算 — 夏場の機械室の温度は40℃を超える。30℃基準のカタログ値をそのまま使うと過負荷になる
  • 電線管はワンサイズ上を選ぶ習慣 — 占有率ギリギリだと電線の引き入れが極めて困難。将来の増設余地も考え、1サイズ上を選ぶのが実務の知恵
  • ケーブルラックは増設率20%を見込む — ビルの改修・テナント入替でケーブルが増えることは確実。竣工時に満杯では対応できない
  • ベンドは引き入れの入口側に寄せる — 同じ90°でも、張力が小さいうちに曲がるほうが最終張力は小さい。ルート図を描く段階で意識しておくと、後からプルボックスを足さずに済む
  • 単相3線式の負荷は「大物から」振り分ける — エアコンや電気温水器のような大きい負荷を先に左右へ配ってから、小口を埋めていくほうが不平衡率が収まりやすい
Q. ブレーカーの定格ATと電線の許容電流、どちらを先に決める?

ブレーカーの定格ATを先に決める。負荷電流からブレーカーATを選定し、そのATに対応する許容電流を持つ電線を選ぶのが正しい順序だ。電線を先に決めてしまうと、ブレーカーの遮断特性と電線の保護協調が取れなくなるリスクがある。内線規程では「電線の許容電流 ≧ ブレーカー定格AT」を原則としている。

Q. 電圧降下が許容値を超えた場合、まず何をすべき?

最も効果的なのは電線を太くすること。電圧降下は電線の抵抗に比例するので、断面積を2倍にすれば電圧降下はほぼ半分になる。配線ルートの短縮が可能なら、距離を減らすのも有効。100V回路を200V回路に変更できれば電流が半分になり、電圧降下も半分に減る。

Q. 電線管の占有率が32%をわずかに超えたが、1サイズ上にすると大きすぎる。どうする?

まず電線の被覆外径を正確に確認する。メーカーによって外径が異なるため、カタログ値でなく実測値に近いデータで再計算すると基準内に収まることがある。それでもダメなら、電線の本数を分散(管を2本に分ける)するか、管種をPF管など内径の大きいものに変更する方法がある。占有率の基準は安全のための数値なので、超過は認められない。

Q. 計算結果のデータはサーバーに保存される?

いずれのツールもブラウザ内で完結しており、入力データや計算結果がサーバーに送信されることはない。設計データを安心して入力できる。

Q. 内線規程と電技解釈、どちらに従えばいい?

電技解釈(電気設備の技術基準の解釈)は法的拘束力を持つ最低基準で、内線規程は業界の推奨基準だ。内線規程は電技解釈より厳しい値を設定していることが多い。実務では内線規程に準拠するのが一般的で、内線規程を満たせば電技解釈も自動的にクリアする。発注者の仕様書で「内線規程準拠」と指定されることが多い。

Q. ケーブルラックの幅は足りているのに、支持間隔まで確認する必要がある?

ある。幅は「並ぶか」の判定でしかなく、載る重さはまったく別の話だ。CVT 100mm²は1mあたり約4kgあり、10条並べば1mで40kg、支持間隔2mなら1スパン80kgになる。ラックの許容荷重は支持間隔が長いほど小さくなるので、天井インサートの位置に合わせて3m飛ばした瞬間に許容を割ることがある。ケーブルラック耐荷重・支持間隔チェッカーでスパンごとの検定比を見ておくと安全だ。

Q. 引込み張力の計算は、どのくらいのルートからやるべき?

90°ベンドが2つ以上、または亘長が50mを超えるあたりから計算する価値が出る。⑨で見たとおり張力は曲がりで指数関数的に増えるので、ベンド3つで元の5倍近くになることもある。太物のCVTを長距離引くルートは、施工前に区間を切ってプルボックスの要否を判断しておきたい。図面確定後に「入らない」となると、点検口の追加で意匠・構造との再調整が発生する。

Q. 漏電遮断器が原因不明で落ちる。感度電流を上げてもいい?

最後の手段にしてほしい。30mAは人体保護のための値で、上げると保護のレベルそのものが下がる。まず疑うべきは対地静電容量による漏れ電流の積み上がりで、インバータ機器やPCのノイズフィルタ、長いケーブルが原因になっていることが多い。対策の順序は「回路の分割 → 高調波・サージ対応形への変更 → それでもダメなら感度電流の見直し」。詳しくは⑩で扱っている。

Q. 分電盤の不平衡率はどのくらいまで許容される?

内線規程では低圧受電の単相3線式で原則40%以下とされている。ただしこれは上限であって目標ではない。実務では竣工時に20%前後に収めておき、将来の増設で悪化する余地を残しておくのが安全だ。中性線にはブレーカーが入らず過電流でも保護されないので、片寄りは事故リスクとして残り続ける。分電盤負荷集計シミュレーターで振り分け案を何通りか試すのが早い。

まとめ|上流から下流へ、11の計算を通しで確認する習慣が品質を決める

電気配線設計で必要な計算は、負荷集計・ブレーカー選定・電圧降下・電線サイズ変換・許容電流・電線管サイズ・束径・ラック幅・ラック耐荷重・引込み張力・漏電遮断器の11領域。上流の負荷集計とブレーカー・電線選定が下流の管路・ラック・施工性をすべて支配するので、通しでの確認が欠かせない。

見落としやすいのは、設計と施工の境目にある⑧⑨だ。図面上の寸法は満たしているのに現場で成立しない、という失敗はここで起きる。

この記事で紹介したツールを使えば、ブラウザだけで一通りの検証が完了する:

受変電・保護協調・接地・非常電源まで含めた上流側は受変電・保護協調の計算まとめにまとめている。あわせて配管設計まとめも参照してほしい。電気配線と配管は建物のインフラとして並走する設備なので、両方の設計フローを理解しておくと現場での調整がスムーズになる。

不具合の報告や機能リクエストはお問い合わせページから。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。電気設備設計歴6年。初担当の工場案件で電圧降下を見落とし、モーターが起動しなかった苦い経験が原点。ベンド3つのルートでCVTが入らず、プルボックスを追加した現場も忘れられない。

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この記事で紹介したツール

分電盤負荷集計シミュレーター

分電盤の負荷集計・不平衡率・主幹容量を自動算定

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ケーブル許容電流 早見・計算ツール

ケーブル種類・布設方法・温度から許容電流を即表示

電線管サイズ判定シミュレーター

電線の占有率を計算し、最適な管サイズを自動判定

電線束径計算機

電線の種類と本数から束ね直径と推奨配管径を概算

ケーブルラック幅選定シミュレーター

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ケーブルラック耐荷重・支持間隔チェッカー

ケーブル条数から積載質量を積み上げ、許容荷重をスパン換算して検定比を算出

ケーブル引込み張力・側圧計算

敷設ルートの引込み張力と側圧を自動計算し、許容値でOK/NG判定

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漏電ブレーカー選定ガイド

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