非常用照明 離隔距離・照度チェッカー

建築基準法施行令126条の4/告示1830号に基づく床面照度判定

器具カタログの直下光度と取付高さを入れると、建築基準法の床面照度(白熱1lx/LED2lx/階段10lx)を満たす最大離隔距離と器具間隔を逐点法で算出する。

シナリオプリセット

器具条件

I₀ は器具メーカーカタログの鉛直下方向光度。h は床面からの取付高さ。

要求照度

LED・蛍光灯 2 lx告示1830号

判定5.78 m≥ 2 lx を満たす最大離隔距離
OK

直下照度 E₀

32.0 lx

要求 2 lx

最大離隔距離 d_max

5.78 m

器具真下から水平距離

推奨器具間隔

11.56 m

2·d_max

要求照度 E_req

2 lx

LED 2lx

逐点法 E = I₀·h /(h²+d²)^(3/2)
本計算は点光源・直射成分のみの理論値。実施設計では器具配光(IES/LDT)、反射、保守率を含めた照明計算ソフトで最終確認を。建築確認申請には一級建築士事務所の計算書が必要。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

PR

📘 非常照明・建築電気設備の設計実務に役立つ書籍

非常照明の「1lx・2lx・10lx」、そこでつまづいていないか

建築確認の差し戻しで意外と多いのが非常用照明の照度計算だ。「カタログ光度は載っているけど、床面で1lx出ているか手計算したことはない」「LED化で2lxに緩和されたのは知っているが、条文まで遡ったことはない」——そんな設計者・設備担当者の声をよく聞く。天井に貼り付けた器具が、避難経路の床にどれだけ光を落とすのか。その答えは施行令126条の4・126条の5、そして告示1830号にすべて書かれているのだが、実際に数字を詰める段になると急に手が止まる。

このツールは、器具の直下光度 I₀ と取付高さ h、要求照度区分(白熱1lx/LED・蛍光灯2lx/階段10lx)を入れるだけで、直下照度 E₀・最大離隔距離 d_max・推奨器具間隔を即座に返す。逐点法の解析解で逆算しているので、配光データがなくても一次スクリーニングに使える。確認申請前の素早いセルフチェックに、どうぞ。

なぜ作ったのか

mahiroapps には既に一般照明向けの逐点法ツール /lux-calc と室内平均照度ツール /room-lighting があるが、「非常用照明の法令要求に特化して、直下判定と最大離隔距離を一発で出すツール」は無かった。設計の現場では、一般照明と非常照明は計算の目的がまったく違う。一般照明は「机上面で何百lx」という作業環境の話、非常照明は「停電時の避難経路で床面1lxまたは2lx」という人命の話だ。必要な精度も、参照する規格も、許容される近似も違う。

自分自身、テナント改装の確認申請で「非常照明の計算根拠を付けてください」と指摘され、一般照明ソフトで無理やり出力した計算書を出したところ、審査員から「これ平均照度で出してますよね、直下で1lx取れているかを見たいんです」と差し戻された経験がある。逐点法で直下を押さえ、そこから水平距離 d_max を逆算する——やっていることは単純だが、毎回 Excel を開いて (h²+d²)^(3/2) と格闘するのは馬鹿らしい。それに、白熱灯ベースの旧基準1lxと、LED・蛍光灯化後の2lx、そして階段の10lxを区分して判定してくれるツールが欲しかった。

だから作った。「法令区分のプリセット」「解析解での逆算」「直下不足時の赤バナー警告」の三点セットが、このツールの核だ。

非常照明の法令基礎 ― 施行令126条の4・126条の5と告示1830号

非常用の照明装置 とは

建築基準法施行令第126条の4は、一定規模以上の特殊建築物・階数3以上の建築物などに対して「非常用の照明装置」の設置を義務づけている。停電時に自動点灯し、避難経路の床面を照らす照明のことだ。蛍光灯の誘導灯(EXITサイン)とは別物で、混同しやすいので注意したい。誘導灯は消防法、非常用の照明装置は建築基準法という縦割りになっている。詳細は建築基準法施行令 第126条の4(e-Gov)を参照。

床面照度要件 ― 1lx/2lx/10lx区分

核となるのが施行令第126条の5で、「避難上必要な部分の床面で1ルクス以上」と定めている。ここが有名な「1ルクス基準」だ。ただしこの1lxは白熱灯を想定した値で、光源色と視認性の関係から導かれた歴史的な数字。

その後、昭和45年建設省告示第1830号が光源種別ごとの要求照度を整理した。現在広く使われている運用は次のとおりだ。

白熱灯(居室・廊下)    : 床面 1 lx 以上
LED・蛍光灯(居室・廊下): 床面 2 lx 以上
階段室                   : 床面 10 lx 以上

LED・蛍光灯が2lxと「厳しく」なっているのは誤読されがちだが、これは演色性と視認性の補正。白熱灯の連続スペクトルに比べ、蛍光灯・LEDは青白く見えやすく、同じ照度でも被写体認識に不利とされたため、安全側に倍率を取った経緯がある。階段10lxは踏面の段差認識に必要な値で、転倒事故を防ぐ観点から一段と厳しい。

「避難上必要な部分」とは

告示と技術的助言で明確化されているが、居室から屋外・避難階段までの経路、廊下、階段、そしてその出入口直下が対象になる。便所や機械室は対象外だが、これらを経由する避難経路になっている場合は必要。このあたりは建築主事の判断が入るので、計画段階で意匠・設備・審査の三者で握っておくのが無難だ。

なぜ「床面」なのか

天井から1.8m下の人の目線ではなく、床面で測る理由は明確だ。避難時は姿勢が低くなる(煙から逃れるため屈む)、足元の段差・障害物を認識する必要がある、倒れた人を発見する——いずれも床面の明るさが鍵になる。一般照明が机上面0.85mを基準にするのとは、前提がまったく違う。

実務での重要性 ― 確認申請と避難安全

指摘される典型パターン

確認申請で非常用照明の計算書に入る典型的な指摘は三つある。

  1. 「平均照度ではなく、最低点の直下照度を示してください」 — 一般照明ソフトで平均を出しても通らない。避難経路のもっとも暗い点で1lx(または2lx)を確保している根拠が要る
  2. 「光源種別と要求照度の整合を示してください」 — LED器具なのに1lxで計算していると即アウト
  3. 「器具間隔の根拠は?」 — 単に「カタログ通り」ではなく、配光と取付高さから d_max を計算した書類が求められる

これらを満たさないと確認が下りず、工期に直撃する。施工後に指摘されれば器具追加・盤増設まで波及し、簡単に数十万〜数百万円のロスになる。

避難安全検証法との関係

避難安全検証法ルートB・Cを採用する場合、非常照明の照度確保は煙降下時間・避難完了時間の前提条件にもなる。照度不足は「避難者が経路を見失う」リスクを直接的に押し上げるため、検証法の計算結果そのものを揺るがす。法令違反で済まず、事故時の責任問題に発展し得る領域だ。

改修時の盲点

既存建物の改修で一番危ないのが「白熱灯→LED」への置換。旧設計は1lx基準で成立していても、光源をLEDに変えた瞬間に要求が2lxになり、既存間隔では不足することがある。更新工事の段階で気づかず、次の定期調査報告で指摘されるケースが散見される。光源種別を変えるときは必ず再計算してほしい。

活躍する場面

  • 店舗・テナント改装の確認申請前チェック — 既存器具の光度と高さを入れ、LED 2lx基準で直下と間隔を素早く確認
  • 事務所新築の実施設計 — 配光データが揃う前の一次レイアウトで、おおまかな必要台数を見積もる
  • 階段リニューアル — 10lx基準で踏面を照らせるか、既存間隔がそのまま使えるかを判定
  • 地下駐車場の電気設備更新 — 高天井(h=4m以上)の非常照明で、光度アップが必要か下げ位置調整が必要かを切り分ける
  • 検査・定期調査報告のセルフチェック — 施設管理者が現況をざっと検算し、是正計画の優先度を決める
  • 電気設備設計の教育現場 — 若手設計者が逐点法と法令区分を手を動かして理解する

基本の使い方

  1. 器具カタログから直下光度 I₀ (cd) を拾う — 配光データの鉛直下方向(0°)の値を入れる。「非常用」と明記された器具のカタログには必ず載っている
  2. 取付高さ h (m) を入れる — 天井高さではなく「床から器具発光面まで」の距離。吊り下げ取付の場合は補正
  3. 要求照度を選ぶ — 白熱1lx/LED・蛍光灯2lx/階段10lxのいずれか。器具光源と設置場所で決まる

これだけで、直下照度 E₀・最大離隔距離 d_max・推奨器具間隔(2·d_max)・判定バッジが同時に出る。直下で不足しているときは赤バナーで即座に警告する。

使用例 ― 6ケースで感覚をつかむ

ケース1: 事務所天井 h=2.5m、LED 200cd

避難廊下の標準的な設定。I₀=200cd、h=2.5m、LED(2lx)を入力する。

  • E₀ = 200 / 2.5² = 32.0 lx
  • d_max = √((200·2.5/2)^(2/3) − 2.5²) = √(250^(2/3) − 6.25) = √(39.685 − 6.25) = 5.78 m
  • 推奨間隔 = 11.56 m → OK

直下が要求の16倍あるので余裕たっぷり。11.56m間隔で並べれば中間点でも2lxを確保する。

ケース2: 同条件で白熱灯1lx基準(旧式)

I₀=200cd、h=2.5m、白熱(1lx)。

  • E₀ = 32.0 lx
  • d_max = √(500^(2/3) − 6.25) = √(62.996 − 6.25) = 7.53 m
  • 推奨間隔 = 15.07 m → OK

要求が半分になったぶん、許容間隔は約1.3倍に伸びる。既存建物を白熱基準で評価する際の目安になる。

ケース3: 低光度器具 I₀=100cd、LED 2lx

I₀=100cd、h=2.5m、LED。小型器具を使った最低限構成だ。

  • E₀ = 100 / 6.25 = 16.0 lx
  • d_max = √(125^(2/3) − 6.25) = √(25 − 6.25) = 4.33 m
  • 推奨間隔 = 8.66 m → OK

直下はまだ余裕だが、間隔は大幅に狭まる。小光度で広い廊下をカバーしたい場合、台数増が避けられないことが数字で見える。

ケース4: 倉庫 h=3.0m、白熱1lx相当 300cd

I₀=300cd、h=3.0m、白熱(1lx)。天井が高い施設での旧基準評価。

  • E₀ = 300 / 9 = 33.33 lx
  • d_max = √(900^(2/3) − 9) = √(93.217 − 9) = 9.18 m
  • 推奨間隔 = 18.35 m → OK

高い天井ほど床面に落ちる光の「裾野」が広がる性質があり、間隔を大きく取れる。ただし後述するとおり h²+d² の効き方は非線形なので、油断は禁物。

ケース5: 高天井工場 h=4.0m、LED 500cd

I₀=500cd、h=4.0m、LED(2lx)。

  • E₀ = 500 / 16 = 31.25 lx
  • d_max = √(1000^(2/3) − 16) = √(100 − 16) = 9.17 m
  • 推奨間隔 = 18.33 m → OK

光度を上げても、取付高さが増えると直下照度は h² に反比例して落ちる。500cdでも4mに付ければ31.25lxしか出ないのはそのため。判定はOKだが、高天井では保守率低下の補正が別途必要になる(後述Tips)。

ケース6: 階段室 I₀=400cd、h=3.0m、10lx基準

I₀=400cd、h=3.0m、階段(10lx)。階段は要求照度10lxと跳ね上がる。

  • E₀ = 400 / 9 = 44.44 lx
  • d_max = √((400·3/10)^(2/3) − 9) = √(120^(2/3) − 9) = √(24.266 − 9) = 3.91 m
  • 推奨間隔 = 7.82 m → OK

要求が5倍になると、同じ光度・高さでも間隔は一気に半分以下になる。階段が「器具の数でコストが効く場所」だと実感できる例だ。

仕組み・アルゴリズム ― 逐点法の解析解

候補手法の比較

床面照度を求める手法はいくつかある。

  1. 逐点法(Point-by-Point) ― 器具を点光源とみなし、床面任意点の照度を配光と距離から直接計算する。直下・最遠点の評価に向く
  2. ルーメン法(平均照度法) ― 室指数と利用率・保守率で平均照度を出す。作業面全体の見通しに向くが、最低点の把握には弱い
  3. レイトレーシング(Radiance等) ― 反射・間接光まで精密に解く。確認申請書類としてはオーバースペック

非常照明は「最低点で基準値を満たすか」が問われるので、迷わず逐点法一択だ。このツールはさらに「光度を鉛直軸対称の単一値(直下光度 I₀)で代表する」という近似を入れて、解析解で d_max を閉形式で求めている。

逐点法の基本式を第一原理から導く

点光源から距離 r 離れた点の照度は、逆二乗則で

E_sphere = I / r²

これは球面上の照度。床面は水平なので、光線の入射角 θ(法線と光線のなす角)に応じて cosθ の補正が入る(ランベルトの余弦則)。

E_floor = I(θ) · cosθ / r²

ここで幾何関係は次のとおり。器具を天井、直下を真下、水平距離を d とすると、

r = √(h² + d²)
cosθ = h / r = h / √(h² + d²)

さらに、このツールでは配光を鉛直軸対称・直下光度 I₀ で代表し「広配光クラス」を近似する。すると角度方向の光度もほぼ I₀ とみなせて、

E(d) = I₀ · cosθ / r²
     = I₀ · (h/r) / r²
     = I₀ · h / r³
     = I₀ · h / (h² + d²)^(3/2)

これが床面照度の閉形式だ。よく「E = I·cos³θ / h²」と書かれるのは、r = h/cosθ を代入して h のみで表した等価形。どちらも同じ式を指している。

d_max の解析解

要求照度 E_req と等しくなる水平距離を求める。

I₀ · h / (h² + d²)^(3/2) = E_req
(h² + d²)^(3/2) = I₀ · h / E_req
h² + d² = (I₀ · h / E_req)^(2/3)
d_max = √((I₀ · h / E_req)^(2/3) - h²)

ルート内が負になる条件は (I₀·h/E_req)^(2/3) < h²、整理すると I₀ < E_req · h²。これは「直下照度 E₀ = I₀/h² < E_req」と同値で、つまり直下ですら要求に達しないケース。このときツールは d_max を計算せず、赤バナーで「要求照度を満たす離隔距離が存在しません」と警告する。

計算例 ― ケース1をステップで追う

I₀=200、h=2.5、E_req=2 を入れてみる。

(I₀ · h / E_req)     = 200 · 2.5 / 2 = 250
(250)^(2/3)          = 250^0.6667 ≈ 39.685
h²                   = 6.25
d²                   = 39.685 - 6.25 = 33.435
d_max                = √33.435 ≈ 5.782 m
推奨間隔             = 2 · 5.782 ≈ 11.56 m

「2·d_max」を間隔の目安にしているのは、隣接器具の配光重なりで中間点が補強される前提に立っている。厳密には中間点が最暗になるので、2·d_max よりやや詰めるのが安全側。迷ったら 1.6×d_max 程度まで詰めると実務的に無難だ。

他ツールとの違い

一般的な照度計算ツールは、オフィスや店舗の「通常使用時の作業面照度(JIS Z 9110)」を対象にしている。机上面750mm、推奨500〜750lxといった快適性のための数値だ。対してこのチェッカーは、電源が落ちて真っ暗になった瞬間の「避難のための床面照度」を扱う。対象が違えば計算の着地点も違う。

まず判定基準が違う。作業面照度は設計者が任意に決めるが、非常照明は建築基準法施行令126条の5と告示1830号で床面1lx/2lx/10lxが法的要件として定まっている。満たさなければ確認申請が通らない。だからこのツールは入力した光度と高さに対して「OK/NG」のバッジを即座に出す。設計判断ではなく合否判定だ。

次に計算対象が違う。一般照明ツールは「部屋全体の平均照度」を光束法(総光束÷面積×保守率×照明率)で出すことが多い。非常照明は平均値ではなく**最悪点(器具と器具の中間床面)**が基準値を下回らないことが求められる。このツールは逐点法 E=I₀·cos³θ/h² を解析的に逆算し、床面照度がちょうど要求値 E_req に一致する水平距離 d_max を直接求める。ここから隣接器具間隔 2·d_max が決まる。

さらに光源情報の扱いが違う。一般ツールは光束 lm で入力するが、非常照明の配光は直下光度 cd(メーカーカタログの鉛直下方向値)がそのまま支配的だ。このツールはその慣行に合わせてある。lux-calc や room-lighting が作業面照度の設計に特化しているのに対し、このツールは法令判定に特化した棲み分けだ。

豆知識

1lx/2lx区分の歴史

非常照明の1lx基準は、1970年の建築基準法施行令改正で導入された。当時の光源は白熱電球が主流で、フィラメントの赤みがかった光(色温度2800K程度)は人間の暗所視で輝度感度が低い。そのため「最低1lxあれば床の段差は識別できる」という研究に基づき白熱灯1lxがスタンダードになった。

時代が進み蛍光灯が普及すると、色温度の高い光(4200K〜5000K)は同じ照度でも明るく感じることから1lxで足りるという議論もあったが、蛍光灯は点灯直後の立ち上がりが遅く初期光束が低いため、保守も含めて2lx相当を確保する方向で運用されてきた。

LED告示の経緯

LEDが実用化されると、その立ち上がり時間は極めて短く(数十ミリ秒)、初期光束の安定も早い。ところがLED非常照明には長らく明確な告示がなく、白熱灯・蛍光灯と同じ枠で運用されていた。2016年の告示1830号改正でLED非常用照明器具の基準が明文化され、床面照度2lx以上が正式に位置付けられた。これにより白熱灯(1lx)とLED・蛍光灯(2lx)という二層構造が現在の運用基準になっている。

避難経路指定の範囲

非常照明の設置義務範囲は建築基準法施行令126条の4で定められており、特殊建築物・3階以上で延床500m²超の建築物・無窓居室などが対象だ。対象になるのは「居室」「避難経路となる廊下・階段・通路・屋内通路」「これらに通じる出入口付近」で、共用トイレや機械室は原則対象外だ。ただし出口から道路までの動線上にあれば照度確保を求められる場合がある。階段室は告示1830号で10lxと他より高い基準が課されている。踏面の視認が安全に直結するためだ。

参考: 建築基準法施行令126条の4・5(e-Gov法令検索)告示1830号 非常用の照明装置の構造方法

Tips

  1. 配光データの入手: 直下光度I₀はメーカーの公式カタログPDFに「鉛直下方光度 〇〇cd」「配光曲線 0°方向」として必ず記載されている。型番検索で配光曲線図(極座標)を入手し、0°(真下)の値を読む。一部メーカーはIES/LDTファイルを公開しており、照明計算ソフトに取り込めば精密設計が可能だ。

  2. 保守率を織り込む: このツールは初期光度を前提にした理論計算だ。実務では保守率M(LED非常用で通常0.7〜0.8、蛍光灯0.6〜0.7)を掛けて「I₀·M」として入力するのが安全側だ。高天井や粉塵の多い環境ではさらに下げる。

  3. 器具間隔は d_max×2 より少し詰める: 計算上の 2·d_max は「要求照度ちょうど」の限界値だ。施工誤差・器具姿勢のばらつき・経年劣化を考慮し、実配置は1.7〜1.8·d_maxあたりに抑えると安心。このツールが出した spacing 値の85〜90%を目安にするとよい。

  4. 廊下幅方向の均斉度にも注意: ツールは器具直下と中間点の1次元評価だ。幅のある通路では片寄せ配置すると通路反対側が暗くなる。通路中央配置か、2列千鳥配置を検討する。

  5. 高天井では光度より配光角を優先: 4m超の天井では光度を上げるより、配光角の広い器具(広角タイプ)を選ぶほうが床面の広がりで有利になる場合が多い。高さhの増加は d_max に対して劣線形(2/3乗)でしか効かないためだ。

FAQ

白熱灯が現実に使われなくなった今でも1lx基準は有効なの?

有効だ。施行令第126条の5第1号は光源種別ではなく「床面1lx以上」を要件としているため、LED非常用照明であっても白熱灯相当扱いで設計することは法的に可能だ。ただし告示1830号でLED・蛍光灯は2lx基準が示されているため、実務上はLED器具なら2lxで申請するのが一般的だ。1lxと2lxで必要器具数が変わるので、コスト面の検討で1lx運用を選ぶ場合は特定行政庁との事前協議を推奨する。

既設の白熱灯非常照明をLEDに更新する改修では、2lx基準を満たさないとダメ?

ケースバイケースだ。既存遡及の原則から、改修範囲・申請区分・遡及要件によって判断が分かれる。同種機器の更新(1対1リプレース)かつ照度が従前以上であれば1lx維持でよいとされることが多いが、器具配置変更を伴う場合や増築を伴う場合は現行法に合わせて2lxが求められる。判断に迷ったら所轄建築主事または指定確認検査機関に事前相談するのが確実だ。本ツールで両基準の d_max を比較しておくと協議がスムーズになる。

階段10lxは踏面照度?床面照度?

告示1830号の文言は「階段にあっては、その踏面において水平面照度で10lx以上」だ。つまり踏面(ステップの上面)での値になる。このツールのhには「器具から踏面までの距離」を入力する。踊り場で器具を取り付ける場合は、最下段踏面までの距離をhとすれば最も厳しい点で評価できる。なお階段は踏面影の影響で計算より暗くなりがちなので、算出された spacing より1〜2割短く配置する運用が望ましい。

建築確認申請にはこのツールの結果だけで足りる?

足りない。本ツールは点光源・直射成分のみを扱う概算器で、確認申請の添付計算書には使えない。申請には配光データ(IES/LDT)・反射率・保守率・器具間光の相互影響を含めた照明計算ソフト(DIALux、AGi32、CG計算ツール等)の出力と一級建築士または電気設備士の記名押印が必要になる。本ツールの位置づけは「仮配置検討」「既設チェック」「発注前の概算見積」だ。本格計算の前段として使ってほしい。

d_max が出ない(NG表示)ときは何を変えればいい?

base 値(I₀·h/E_req)^(2/3) が h² を下回ると数学的に解が存在しない。この状態は「真下ですら要求照度に届かない」ことを意味する。対処は3つだ。(1) 器具光度I₀を上げる(より高光度の器具に変更)、(2) 取付高さhを下げる(ペンダント吊りや階段中段設置)、(3) 器具数を増やして1台あたりの負担を下げる。実務では(1)で配光角の広い高光度器具への変更が最も効果的だ。

通路幅が広い場合、d_max のまま片側列配置でいい?

ツールの d_max は通路方向(器具の列方向)の最大離隔だ。通路幅方向は別途評価が必要になる。幅3m以上の通路では中央配置が理想だが、既設天井の梁位置で片側配置せざるを得ない場合、反対側壁面までの水平距離を d として E(d) を計算し1lx/2lx を満たすか確認する。足りなければ2列千鳥配置か、広配光器具への変更を検討する。

まとめ

非常照明の照度計算は建築基準法の要件判定という性質上、「設計判断」ではなく「合否判定」に近い。器具カタログの直下光度と取付高さを入れるだけで、床面1lx/2lx/10lxを満たす最大離隔距離と推奨器具間隔が即座に出る。確認申請前の仮配置検討、既設改修の事前チェック、発注前の台数見積——こうした場面で威力を発揮する。

作業面照度の設計には /lux-calc/room-lighting を、グレア評価には /ugr-glare-calc を併用すると、通常時と非常時の両方をカバーした照明計画が組める。不明点や追加機能のリクエストは お問い合わせ から気軽に送ってほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。テナント改装の確認申請で「非常照明の直下1lxの根拠を出せ」と差し戻され、深夜にExcelで (h²+d²)^(3/2) と格闘した苦い記憶から生まれたツールだ。

運営者情報を見る

© 2026 非常用照明 離隔距離・照度チェッカー