ドロップCに落としたら、弦がベロベロになった
コピバンでドロップCの曲をやることになり、いつもの10-46のままチューニングだけ下げたら、6弦がベロベロ。ピッキングのたびに音程が揺れ、刻みはフレットに当たってビビりまくる。「ゲージを上げればいいのは分かってる。で、何番に上げたら"いつもの張り"に戻るの?」——この問いに数字で答えてくれる場所が、意外なほど無い。
先輩は「ドロップCなら10-52」と言い、掲示板は「11-54じゃないと無理」と言う。どちらも経験則で、根拠の数字は出てこない。でも実は、弦の張力は物理式で計算できる。スケール長・チューニング・ゲージの3つが決まれば、1弦ごとの張力はkg単位で確定する。
このギター弦テンション計算機は、スケール長×チューニング×弦ゲージの任意の組合せで各弦の張力(kg/lb)と合計テンションを計算し、「レギュラーチューニング×10-46と比べてゆるいのか、きついのか」をパーセントで判定するツール。メーカーのカタログに無い組合せも、変則チューニングも、1弦だけ太くする構成も、全部その場で計算できる。
なぜ作ったのか——メーカーのテンション表に「自分の条件」は載っていない
弦の張力データ自体は、D'Addarioが「String Tension Specifications」という資料で公開している。データの信頼性は申し分ない。ただしこの資料、基本は25.5インチ(648mm)スケール×決まった音程の組合せ表で、「628mmのレスポールでドロップC#にしたら」という自分の条件はどこにも載っていない。載っていない組合せは、式を自分で立てて電卓を叩くしかない。
海外にはString Tension Proのような計算サイトもある。ただ単位がlb(ポンド)とインチ。「6弦17.5lb」と言われて張りの強弱がピンとくる日本人は少数派だよね。日本語で、mmとkgで、ストラト/レスポール/PRS/ジャガーという定番スケールのプリセット付きで、しかも「レギュラー×10-46比で何%か」という誰でも分かる基準に落として判定してくれるツールが見当たらなかった。
もう1つの不満は、既存の表もツールも「セット単位」の発想が強いこと。ドロップ系チューニングの実用解は「6弦だけ太い」変則構成だったりするのに、1弦ずつ自由に組み替えて弦間バランス(最大張力−最小張力)まで数値で見られるものが少ない。それなら自分で作ろう、と。単位重量データはD'Addario公表チャートの39ゲージ分を転記し、チャート掲載の張力値との突合検証を通してから組み込んだ(検証の詳細は後述の仕組みセクションで)。
弦のテンション(張力)とは何か——メルセンヌの法則から理解する
弦 テンション とは——同じ音程なら「重い弦ほど・長い弦ほど」強く張る
弦楽器の音程は、弦の「長さ」「重さ」「張力」の3つで決まる。この関係を17世紀に整理したのがメルセンヌの法則(弦振動)。振動数fは f = (1/(2L)) × √(T/μ)(L: 弦長、T: 張力、μ: 単位長さあたりの質量)で表され、要点は3つ。
- 弦が長いほど音は低くなる
- 弦が重いほど音は低くなる
- 弦を強く張るほど音は高くなる
輪ゴムでイメージしてみて。細い輪ゴムと太い輪ゴムを同じ「ビーン」という高さの音まで張ろうとすると、太い輪ゴムのほうをずっと強く引っ張る必要がある。太い=単位長さあたりが重いから、同じ速さで振動させるには大きな張力が要る。ギターの弦が1弦(細い・高音)から6弦(太い・低音)へ段階的に太くなるのは、6本をだいたい同じ張力に揃えたまま約2オクターブの音域をカバーするための設計だ。
ギター弦 張力 計算式——D'Addario式 T = UW × (2LF)² / 386.4
メルセンヌの法則を張力Tについて解き、インチ・ポンド系の実用単位に整理したのが、弦メーカーD'Addarioが公表している計算式。本ツールもこの式をそのまま使っている。
T(lb) = UW × (2 × L × F)² / 386.4
UW : 弦の単位重量 [lb/inch](ゲージと構造で決まる実測値)
L : スケール長 [inch](mm入力は25.4で割る)
F : 弦の振動数 [Hz]
386.4 : 重力加速度 [inch/s²]
kg換算: T(kg) = T(lb) × 0.45359
式の意味を分解すると、2 × L × F は弦を伝わる波の速さに相当し、UW が弦の重さを表す。同じ音程・同じスケール長なら、張力は単位重量UWに正比例——つまり「太い弦ほど強く張る」がそのまま式になっている。ワウンド弦は芯線+巻線の複合構造で理論計算が難しいが、メーカー実測のUWを使うことで構造の影響を織り込んだ実用精度が出る。これがこの式が世界中のテンション計算で使われる理由だ。
周波数とスケール長は「2乗」で効く——半音下げで約11%ゆるくなる
この式で見逃せないのが (2LF)² の2乗。周波数もスケール長も、張力には2乗で効いてくる。
- 半音下げ: 周波数比は
2^(-1/12) ≒ 0.944。張力は2乗で0.891、つまり約11%減 - 全音下げ: 張力比
0.794、約21%減 - ドロップCの6弦(E2→C2・4半音): 張力比
0.630、約37%減 - スケール長648mm→628mm(ストラト→レスポール):
(628/648)² ≒ 0.939、同ゲージ・同チューニングで約6%減
チューニングを1音下げただけで弦が急にだらしなくなるのは、この2乗のせい。逆に言えば、周波数は平均律(A4=440Hz)で一意に確定するので、あとはゲージごとのUWさえ揃えば、どんな組合せでも張力は機械的に計算できる。
テンションを読み違えると、ギターに何が起きるか
ゆるすぎる側の実害。 ドロップCに10-46のまま突入すると、6弦の張力は7.93kg→5.00kg(▲37%)、6本合計でも47.0kg→36.0kg(基準比0.77)まで落ちる。結果はフレットビビり、ピッキングの強弱で音程が揺れるピッチ不安定、チョーキングの感覚も総崩れ。レコーディングなら「低音弦の音程が悪い」とリテイクの山になる。
きつすぎる側の実害。 逆に、下げチューニング前提のヘビーゲージをレギュラーピッチで張るとどうなるか。14-56相当のセットなら合計77.4kg——基準比+65%だ。ネックは恒常的に順反り方向へ引かれ、トラスロッドの調整代を使い切る個体も出てくる。細い溝に太い弦を無理に通せばナット溝の割れ、ビンテージならブリッジ浮きのリスクも現実味を帯びる。弦の張力は「6本で大人1人分」のオーダーの力で常時ネックを引いていることを忘れないでほしい。
セオリーは計算で裏が取れる。 昔から言われる「半音下げなら1ゲージ上げ」は、計算するとほぼ正確だと分かる。半音下げ×11-49は合計47.9kg・基準比1.02で、レギュラー×10-46にきれいに戻る。一方「全音下げは2ゲージ上げ」は粗い近似で、全音下げ×12-54は53.5kg・基準比1.14と、きつめ側にオーバーシュートする(11-49なら42.7kg・0.91でぎりぎり標準帯)。経験則の精度まで数値で見えるのが計算の強みだ。
なお、ゲージ変更=張力変更はネックの反り量が変わるということでもある。ゲージを上げ下げしたら、トラスロッド調整・ナット溝の適合確認・オクターブ調整の3点はセットで点検してほしい。
このツールが刺さる4つの場面
ドロップ/ダウンチューニングへの移行。 一番の主戦場。「ドロップCで基準比1.00に一番近いセットはどれか」を、ゲージセットを切り替えながら総当たりで探せる。
スケール長の違うギターの持ち替え。 レスポール(628mm)とストラト(648mm)を併用する人が、2本の張りを揃えるためのゲージ差を数値で決められる。
バリトン・ショートスケールのカスタムゲージ組み。 660mmや686mmといったメーカー表に無いスケール長も、カスタム入力(500〜750mm)で計算できる。ムスタング610mmのテンション不足をゲージで補う検討にも。
シグネチャーセッティングの追体験。 スティーヴィー・レイ・ヴォーンの13ゲージ半音下げのような伝説のセッティングが、実際どれほどの張力なのかをkgで確かめられる。真似する前に数字を見ておくと、指とネックへの覚悟が決まる。
基本の使い方——30秒で判定まで
- ギターの条件を選ぶ。 スケール長(648mm ストラト/テレ・628mm レスポール・635mm PRS・610mm ジャガー・カスタムmm入力)とチューニング(レギュラー/半音下げ/全音下げ/ドロップD/ドロップC#/ドロップC)をプルダウンで選択。
- 弦ゲージを選ぶ。 09-42〜12-54の定番6セットから選ぶと6弦分が一括入力される。1弦ずつ個別に変えれば(プレーン.008〜.026・ワウンド.017w〜.056w の39種)、ヘビーボトムや変則構成も組める。
- 結果を確認する。 各弦の張力(kg/lb・音名付き)、合計テンション、弦間バランス、基準比が並び、「ゆるめ/標準的/きつめ」が一目で分かる。気に入ったセッティングはコピーしてバンド仲間に共有。
使用例9ケース——入力→結果→解釈
実装済みのツールに実際に入力し、出力を確認した9ケース。自分の条件に近いものから読んでみて。
ケース1: 648mm・レギュラー・10-46(判定基準そのもの)
- 入力: ストラト系648mm、レギュラー、10-46
- 結果: 合計47.0kg・基準比1.00・標準的。各弦は1弦7.36kg〜6弦7.93kg(弦間バランス1.88kg)
- 解釈: 世界で最も流通するセッティングで、本ツールの判定基準(46.99kg)そのもの。1本あたり7〜9kgに揃うバランスの良さが、10-46が定番であり続ける理由。
ケース2: 半音下げ×10-46(648mm)
- 入力: ケース1からチューニングだけ半音下げに変更
- 結果: 合計41.9kg・基準比0.89・ゆるめ。各弦6.55/6.22/6.70/7.44/7.90/7.07kg
- 解釈: 同ゲージのまま半音下げると全弦一様に約11%減——理論値(0.891)どおりの結果。この「少しゆるい」を好んで半音下げ×10-46を常用するプレイヤーも多い。
ケース3: 半音下げ×11-49(648mm・追加計算)
- 入力: ケース2からゲージを1段階アップ
- 結果: 合計47.9kg・基準比1.02・標準的。弦間バランス1.51kg
- 解釈: 「半音下げなら1ゲージ上げ」セオリーの数値的裏付け。基準比1.02でレギュラーの張りにほぼ完全に戻り、バランスはむしろ改善する。
ケース4: ドロップD×10-46(648mm)
- 入力: チューニングをドロップDに
- 結果: 合計45.4kg・基準比0.97・標準的。ただし6弦のみ7.93→6.30kg(▲21%)、弦間バランスは1.88→2.57kgに悪化
- 解釈: 合計では標準帯でも、6弦だけが2割ゆるい。「ドロップDは6弦だけベロつく」という体感の正体がこの数字。6弦だけ太いヘビーボトムセットが合理的な理由でもある。
ケース5: ドロップC×10-52(648mm)
- 入力: ドロップC、ライトトップ・ヘビーボトム10-52
- 結果: 合計42.1kg・基準比0.90(内部値0.896)・ゆるめ。各弦5.84/5.54/5.97/9.01/9.47/6.29kg
- 解釈: ヘビーボトムに上げても、ドロップCではまだレギュラー×10-46に届かない。しかも4・5弦だけ9kg台と突出し弦間バランス3.94kg。レギュラー並みの張りが欲しいなら11-54クラスが要る、という判断の根拠になる。
ケース6: カスタム660mm×ドロップC×10-52
- 入力: ケース5のスケール長をカスタム660mm(26インチ)に延長
- 結果: 合計43.7kg・基準比0.93・標準的
- 解釈: スケール12mm延長で42.1→43.7kg(+3.7%)となり、648mmではゆるめだった構成が標準帯に入る。ダウンチューニング機がロングスケールを採用する理由の縮図。
ケース7: レスポール628mm×レギュラー×09-42
- 入力: 628mm、レギュラー、スーパーライト09-42
- 結果: 合計36.3kg・基準比0.77・ゆるめ。各弦5.60/4.69/6.25/6.72/6.72/6.29kg
- 解釈: ショートスケール×ライトゲージの極み。半音下げ×10-46(0.89)よりさらにゆるく、チョーキングは天国、代わりにピッチは暴れやすい。速弾き系がこの組合せを好む理由が数字で見える。
ケース8: 12-54×レギュラー(648mm)
- 入力: ヘビーセット12-54をレギュラーピッチで
- 結果: 合計67.4kg・基準比1.43・きつめ。各弦10.59/10.57/10.40/12.75/11.94/11.17kg
- 解釈: 全弦10kg超え、基準比+43%。ジャズや下げチューニング前提のセットをレギュラーで張るとこうなる。70kg警告こそ出ないが、トラスロッド調整はまず避けられない。
ケース9: 14-56相当ヘビー×レギュラー(648mm)
- 入力: 各弦個別指定で.014/.018/.020/.034w/.044w/.056wを構成
- 結果: 合計77.4kg・基準比1.65・きつめ+70kg超の黄警告が発火。1弦だけで14.42kg
- 解釈: ネックへの負担が大きく、トラスロッド調整前提と警告される領域。極太ゲージを試す前に、この画面を一度見てからでも遅くない。
仕組み・アルゴリズム——表引きではなく物理式+実測単位重量で計算する
手法の比較。 テンション計算ツールの作り方は大きく2つある。1つはメーカーPDF表の数値をデータベース化して表引きする方法(載っていない組合せは線形補間)。もう1つは物理式に単位重量テーブルを与えて毎回計算する方法。表引きは表に載った組合せしか正確に出せず、スケール長が連続値(本ツールはカスタム500〜750mm対応)になった時点で破綻する。本ツールは後者を採用した。式そのものがメルセンヌの法則由来の厳密な物理式なので補間誤差という概念が無く、精度を左右するのは単位重量データの品質だけになる。
データ品質。 単位重量UWは、D'Addario「String Tension Specifications」のプレーンスチール(PL)16種・XLニッケルワウンド(NW)23種、計39ゲージ分を転記。転記ミスを検出するため、同チャートに掲載されている張力値(各ゲージ2音ずつ・計78点)と式の出力を突合し、最大誤差0.052lb(約24g)で全点一致することを確認してから組み込んだ。チャートに無いゲージは選択肢に載せない方針で、テーブル外参照が起きない構造にしてある。
実装の中核。 各弦の計算はこれだけ。
const L = scaleMm / 25.4; // mm → inch
const f = TUNINGS[tuning].freqs[i]; // 平均律A4=440Hzの確定値 [Hz]
const uw = UW_TABLE[gauge].uw; // 単位重量 [lb/inch]
const tensionLb = (uw * (2 * L * f) ** 2) / 386.4;
const tensionKg = tensionLb * 0.45359;
const totalKg = tensions.reduce((sum, t) => sum + t.kg, 0);
const balanceKg = Math.max(...kgs) - Math.min(...kgs);
const ratio = totalKg / 46.99; // レギュラー×10-46×648mm = 1.00
// ratio < 0.90 → ゆるめ / 0.90〜1.10 → 標準的 / 1.10超 → きつめ
ステップバイステップ計算例(6弦・.046wニッケルワウンド・レギュラーE2=82.41Hz・648mm):
- スケール長をインチ化:
L = 648 / 25.4 = 25.512in - 波の速さ項:
2LF = 2 × 25.512 × 82.41 = 4204.9 - 張力(lb):
T = 0.00038216 × 4204.9² / 386.4 ≒ 17.49lb - kg換算:
17.49 × 0.45359 ≒ 7.93kg
ツールの6弦セルに表示される「7.93kg / 17.5lb」と一致する。
周波数と基準値は確定済み定数。 チューニングごとの周波数は実行のたびに 2^(-n/12) を計算せず、平均律A4=440Hzから確定した定数(レギュラーなら329.63/246.94/196.00/146.83/110.00/82.41Hz)を保持している。判定の分母になる基準値46.99kg(レギュラー×10-46×648mmの合計)も同じ式で事前に確定させた定数で、浮動小数の計算順序で判定が揺れることがない。だからこそ「ドロップC×10-52はレギュラー×10-46より約10%ゆるい」のような、表引きでは決して得られない定量比較が安心してできる。
メーカーのテンション表・海外ツールとの弦テンション比較
弦の張力を調べる手段は既にいくつかある。このツールの立ち位置をここで整理しておく。
まず弦メーカー公表のPDFテンション表。D'Addarioの「String Tension Specifications」が代表格で、データの信頼性は折り紙付きだ。ただし表に載っているのは25.5インチ(648mm)スケール・決まった音程での値だけで、スケール長や変則チューニングが1つ変わった瞬間に自力換算を迫られる。表引きのままでは実質使えない。このツールは同じD'Addario公表の単位重量39ゲージ分を内蔵し、物理式 T(lb) = UW × (2LF)² / 386.4 で任意のスケール長×チューニング×ゲージを総当たり計算する。表に無い組合せこそが本領だ。
海外にはString Tension Proのような計算ツールもある。ただ表記はポンドとインチ、UIは英語。「17.5lb」と言われて張りの強さが直感できる日本人は少ないよね。このツールはmm・kg・日本語で完結し、ストラト/テレ648mm・レスポール628mm・PRS635mm・ジャガー610mmという国内流通の定番スケールをプリセットで持つ。
もうひとつの違いが判定コメント。数値を出して終わりではなく、最も流通するレギュラー×10-46(合計46.99kg)を基準に「ゆるめ/標準的/きつめ」の帯で返すので、出た数字が強いのか弱いのかを迷わない。そして1弦にワウンド弦を張るような変則構成も拒否しない設計にした。メーカー表に絶対載らない組合せこそ、計算する価値がある。
豆知識: 20mmのスケール差と、テンションが刻んだ機材史
ストラトとレスポールを分ける「たった20mm」
フェンダー系648mmとギブソン系628mm。わずか20mmの差だが、張力はスケール長の2乗で効くため、同じゲージ・同じチューニングで約6.5%のテンション差が生まれる。10-46レギュラーで比べると、648mmの合計47.0kgに対して628mmは44.1kg(基準比0.94)。この差が「ストラトはパリッと張りのある音、レスポールはウォームで弾きやすい」という定説の一因とされる。もちろんピックアップや木材・構造の影響も大きいが、弦の張りという物理条件からして両者は最初から違うわけだ。レスポールの方が同じゲージでチョーキングが軽いのも、まったく同じ理由による。
SRVの剛腕、アイオミの発明
テンションの機材史で必ず名前が挙がるのが スティーヴィー・レイ・ヴォーン だ。13ゲージという極太セットを半音下げで張っていたことで知られる。このツール内蔵の最太セット12-54ですらレギュラーで67.4kg(基準比1.43)、半音下げに落としてもまだ約60kg。13スタートはさらにその上で、指先が裂けて瞬間接着剤で固めながら弾いたという逸話も残るほどの負荷だった。
対極にいるのが トニー・アイオミ。17歳のとき工場のプレス機で右手の指先を失い(左利きのため押弦する側の手だ)、押さえる痛みを減らすためにライトゲージと下げチューニングへ行き着いた。張力を落とすための苦肉の策が、結果としてヘヴィメタルのダウンチューニングサウンドの起源になった。テンションという物理量が、ジャンルの音像そのものを作った好例だ。
セッティングのTips
- 半音下げは1ゲージ上げでほぼ戻る: 10-46の半音下げは41.9kg(基準比0.89)だが、11-49に上げると47.9kg(1.02)でレギュラー×10-46とほぼ同じ張りに戻る。昔からの定番セオリーは計算でも裏付けられる。
- 全音下げは11-49と12-54の間で好みが分かれる: 全音下げ×11-49は42.7kg(0.91)でゆるめ寄り、12-54は53.5kg(1.14)できつめ寄り。「2ゲージ上げ」のセオリーを鵜呑みにせず、自分がどちらに振りたいかを数値で決められる。
- ドロップ系はヘビーボトムか6弦単独上げ: ドロップCで10-46のままだと6弦はわずか5.0kg。10-52なら6.3kg、個別selectで6弦だけ.054にすれば7.0kgまで戻り、レギュラー時の7.9kgに近づく。弦間バランスの値も併せて確認したい。
- ゲージを上げたらナット溝とオクターブ調整を点検: 太い弦がナット溝に収まらないとチューニングが狂いやすく、溝割れも招く。弦の質量が変わればオクターブピッチもずれるので、サドル調整までがゲージ変更のワンセットだ。
- バリトン化(スケール延長)は張りの比率を崩さない: スケール延長は全弦の張力を同じ比率で持ち上げる。カスタム660mm×ドロップC×10-52は43.7kg(0.93)で標準域に入り、特定の弦だけ張りが変わるゲージアップと違って6本のバランス感を保ったまま張りを稼げる。
よくある質問(FAQ)
D'Addario以外のメーカーの弦でも使えるのか
目安としては十分使える。計算に使う単位重量はD'Addarioのプレーンスチール・XLニッケルワウンドの公表値だが、他社のニッケルワウンド弦も構造がほぼ同じため、張力のズレは±数%程度に収まる。一方、フラットワウンドやコーティング弦は巻線構造や被膜のぶん単位重量が変わり、ズレが大きめになる。ただし「半音下げで何%ゆるむか」「ゲージを上げたら何kg戻るか」といった相対比較はメーカーを問わず有効なので、傾向を掴む用途なら弦を選ばない。
アコースティックギターの弦も計算できるのか
非対応だ。アコギ用のフォスファーブロンズや80/20ブロンズは巻線材の密度が異なり、単位重量の体系がエレキ用ニッケル弦とは別物になる。このツールが内蔵するのはエレキ用のプレーンスチール16種とXLニッケルワウンド23種のみ。アコギ弦のデータを流用すると実際より軽い張力が出てしまうので、エレキ専用と割り切って使ってほしい。
合計テンションが同じなら弾き心地も同じになるのか
ならない。張力は体感の主要因だが、すべてではない。ナットからペグまで・ブリッジからテールピースまでの「振動しない弦長」が長いほど、チョーキング時に弦が余分に伸びて柔らかく感じる。ストラトとジャズマスターで同じ張力でも感触が違うのはこのためだ。弦高やネックグリップ、ロックナットの有無も効いてくる。このツールの数値は「弦そのものの張り」の比較として使い、最後の微調整は実際に弾いて決めるのが正解だ。
入力したセッティングはどこかに保存されるのか
保存されない。計算はすべてブラウザ内で完結し、スケール長・チューニング・ゲージの入力値がサーバーへ送信されることは一切ない。ページを離れたりリロードしたりすると初期値に戻る。気に入ったセッティングを残したいときは「結果をコピー」ボタンでテキスト化して、メモアプリや掲示板・SNSに貼り付けておくのがおすすめだ。
まとめ
弦のゲージ選びは「なんとなく1つ太く」で済まされがちだが、張力は式一本で計算できる物理量だ。スケール長×チューニング×ゲージを数値にすれば、ドロップCに必要なゲージも、レスポールとストラトの張りの差も、勘ではなく根拠で決められる。音まわりのツールとしては、自作スピーカー設計の /bass-reflex-port、練習環境づくりに役立つ防音対策の /soundproofing、壁の遮音性能を試算する /sound-insulation も用意している。チューニングやゲージの追加要望・気づいた点があれば、お問い合わせページ から気軽に聞かせてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。ドロップC移行のたびに掲示板の経験則でゲージを選んで外してきたので、D'Addario公表の張力データ39ゲージを検算してから組み込んだ。自分のバンド用セッティングもこれで決めている。
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