バスレフポート設計計算機

箱容積と狙いのfbからポート長を一発計算。逆算・風切り音チェックつき

箱の内容積と狙いの共振周波数fbからバスレフポート(ダクト)の長さを計算。逆算モードでは手持ちポートの寸法からfbを求める。ユニット口径を選ぶと風切り音リスクもチェック。

箱とポートの条件

吸音材・ユニット排除体積を除いた実効容積

目安はユニットf0の0.8〜1.0倍

塩ビ管VP50なら内径約51mm

同径ポートの合計本数

計算結果

ポート長 Lp

75.2 mm

共振周波数 fb

50.0 Hz

目標値(入力)

ポート合計断面積

19.6 cm²

内径50mm × 1本

ポート気柱共鳴(参考)

1,461 Hz

この帯域の中音がポートから漏れやすい

fbの目安はユニットf0(最低共振周波数)の0.8〜1.0倍程度。f0より大きく上げると低域が持ち上がった後に急落するピーキーな特性になりやすい。

本ツールは無損失のヘルムホルツ共鳴式による理論値です。実際の共振周波数は吸音材の量・ポートの取付位置・箱の形状・板の剛性で数Hz程度変わります。ポートが箱に物理的に収まるか、ユニット背面と干渉しないかは別途確認してください。追い込むならインピーダンス測定での実測をおすすめします。

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箱は組めた。あとはポートを何mmで切るか

板を切り出し、箱を接着し、ユニットの取り付け穴も開けた。自作スピーカーの工程は9割終わっている。残るはバスレフポート。塩ビ管を手に持ったまま「で、これを何mmで切ればいいんだ?」——ここで手が止まる。この場面、経験ないだろうか。

ヘルムホルツ共鳴の式自体は検索すれば出てくる。ところが資料によって単位系がcmだったりインチだったり、開口端補正の係数が0.61だったり0.73だったり0.85だったりで、どれを信じていいか分からない。電卓を叩いて出した数字が本当に合っているのか、確信が持てないまま管を切るのは怖い。

このバスレフポート設計計算機は、箱の内容積・目標の共振周波数fb・ポート内径と本数を入れるだけで、必要なポート長を一発で返す。逆に「手持ちのポートだとfbはいくつになるか」の逆算モードもある。ユニット口径を選べば風切り音のリスク判定つき。管を切る前の30秒で、切り直しのリスクを潰せる。

なぜ作ったのか

きっかけは自分の検索体験だ。「バスレフ ポート 計算」で検索すると、上位に出てくるのは英語圏の計算ツールか、2000年代から更新が止まっている個人サイトばかり。英語ツールは単位がインチ混じりでスマホだと表が崩れ、日本の古いサイトは開口端補正をどの流儀で扱っているのか明記がない。同じ入力でもツールごとに答えが10mm以上ズレることがあり、どれが正しいのか判断できなかった。

もうひとつの不満は、ほとんどのツールが順算専用だったこと。自作派の現実は「ホームセンターでVP50の塩ビ管を買ってきた。これを使うとfbはいくつになる?」という逆算の場面のほうがむしろ多い。設計値から入るのではなく、手持ちの材料から入る。この向きに答えてくれるツールが見当たらなかった。

そして風切り音の失敗。以前、小さめの箱に細いポートで組んだら、静かな音量では問題ないのに、音量を上げるとポートから「シュボシュボ」というノイズが出た。ポート断面積が振動板に対して小さすぎて、ポート内の空気の流速が上がりすぎたのが原因だ。結局、接着済みの箱を開けてポートを交換する羽目になった。ポート長の計算だけなら他のツールでもできるが、「計算は合っていたのに鳴らしたら失敗」を防ぐには面積比のチェックが要る。だからこのツールには、ポート断面積/振動板面積の比が1/9未満なら警告を出す判定と、中音漏れの目安になる気柱共鳴周波数の表示を最初から組み込んだ。

バスレフとヘルムホルツ共鳴の基礎

バスレフ型エンクロージャーは、密閉箱に「ポート(ダクト)」と呼ばれる筒を追加した構造だ。ユニットの背面から出る音を捨てずに、特定の周波数帯だけ位相を反転させて前に放出し、低音を増強する。この「特定の周波数」を決めているのがヘルムホルツ共鳴である。

ヘルムホルツ共鳴 スピーカーの低音が伸びる仕組み

空き瓶の口に息を吹きかけると「ボーッ」と鳴る。あれがヘルムホルツ共鳴だ。瓶の中の空気は押されると押し返す「バネ」として働き、瓶の首に詰まった空気は行き来する「おもり」として働く。バネとおもりの組み合わせは必ず固有の周波数で振動する——ブランコが決まったリズムでしか揺れないのと同じだ。

バスレフ箱では、箱の中の空気がバネ、ポート内の空気柱がおもりに相当する。ウーファーが箱内の空気を揺らすと、共振周波数fb付近ではポート内の空気柱が大きく動き、ユニット背面の音が位相反転して前に出てくる。fbより上ではユニットとポートの音が足し合わされて低音が増強され、fbより下では逆に急激に音圧が落ちる。つまりfbは「低音がどこまで伸びるか」と「どこから落ちるか」を同時に決める、バスレフ設計の心臓部の数値だ。原理の詳細はヘルムホルツ共鳴(Wikipedia)も参照してほしい。

バスレフ ポート 計算の基本式

共振周波数fbは次の式で決まる。

fb = (c / 2π) × √( S / (V × Leff) )

  c    : 音速 344 m/s(20°C)
  S    : ポートの合計断面積(複数本なら n × π(d/2)² の合計)
  V    : 箱の実効内容積
  Leff : ポートの実効長(開口端補正込み)

式の形を眺めると設計の勘所が読み取れる。箱Vを大きくするとfbは下がる。ポートを太く(S大)するとfbは上がる。ポートを長く(Leff大)するとfbは下がる。だから「箱とポート径が決まっているなら、長さでfbを合わせる」のがバスレフ設計の基本手順になる。ポートを2本にすれば合計断面積Sが2倍になるので、同じfbを狙うならそのぶんポートは長くなる。

開口端補正とは——ポートは見た目より長く振る舞う

式に出てくるLeffは、実際に切った管の長さLpそのものではない。ポート内の空気柱が振動するとき、管の開口の外側にある空気も一緒に引きずられて動く。このぶん空気柱は実質的に長くなり、管は物理長より長い管として振る舞う。この上乗せ分が開口端補正だ。

本ツールでは Leff = Lp + 0.85 × d(dはポート内径)を使う。バスレフポートは箱の内側では箱の壁に、外側ではバッフル板の面に接続されており、両端とも「フランジ付きの端」に相当する。フランジ端の補正は理論値で半径の約0.85倍(8a/3π ≈ 0.849a)、これが両端で効くので合計 0.85 × 直径になる。日本語のスピーカー自作解説で慣用されている標準値と同じ扱いだ。開口端補正という現象自体の解説は気柱の共鳴(Wikipedia)が分かりやすい。

補正量は意外と大きい。内径50mmのポートなら補正は42.5mm。ポート長75mmの設計なら実効長は117.5mmで、物理長の1.5倍以上として振る舞う計算になる。開口端補正を無視した計算がどれだけfbを外すか、想像がつくはずだ。

ポート長を勘で切ると何が起きるか

ポート長のズレはそのままfbのズレになる。本ツールの計算例で言うと、20Lの箱に内径50mmのポートを1本つける場合、ポート長75.2mmでfb=50Hz、100mmでfb=45.4Hz。たった25mmの差でfbが約4.6Hz動く。ベース音の基音がひしめく40〜60Hz帯での4.6Hzは、聴感上はっきり分かる差だ。

fbの狙いを外すと症状は2方向に出る。fbが狙いより高すぎると、低音のある帯域だけが持ち上がってその下が急落する「ボンつく」特性になる。逆に低すぎると増強帯域がユニットの実力より下に行ってしまい、低音がスカスカに感じる。定石は「fbをユニットのf0(最低共振周波数)の0.8〜1.0倍程度に置く」こと。f0より大きく上げると、持ち上がった直後に急落するピーキーな特性になりやすいからだ。

寸法以外の落とし穴もある。ひとつは風切り音。ポートが細すぎるとポート内の空気の流速が上がり、大音量時に「シュボシュボ」というノイズ(chuffing)が出る。目安として、ポート合計断面積は振動板面積Sdの1/9以上(できれば1/3〜1/6)を確保したい。もうひとつは気柱共鳴。ポートはヘルムホルツ共鳴の首であると同時にただの筒でもあるので、筒としての共鳴周波数(中音域に出ることが多い)付近の音が箱の中から漏れてくる。

怖いのは、これらの失敗が「組み上げて鳴らすまで分からない」ことだ。バスレフ箱は接着で組むのが普通なので、ポートを直すには箱を開けるか、バッフルごと作り直すことになる。木材代よりも工数の手戻りが痛い。逆に言えば、切る前に30秒計算するだけでこの手戻りは全部避けられる。ホームセンターで手に入るVP50(内径約51mm)やVU65のような塩ビ管を前提に、「この管ならfbいくつ」と逆算しながら材料を選ぶのが、失敗しない自作の実務感覚だ。

出番が来る4つのシーン

初めてのバスレフ自作。市販の設計例をなぞるだけでなく、自分の箱・自分のユニットに合わせてポートを決めたいとき。fbの目安(f0の0.8〜1.0倍)も画面内に表示されるので、fbをいくつにすべきかから迷わない。

手持ちの塩ビ管・紙管からの逆算。「VP50が余っているから使いたい。100mmで切ったらfbは?」に逆算モードが即答する。設計から入るのではなく材料から入る、自作派のリアルな順序に対応。

市販キット・中古スピーカーの確認と改造。キットの指定ポート長が自分の狙いと合っているかの検算や、中古スピーカーのポートを差し替えたらfbがどう動くかの見積もりに使える。

サブウーファー箱の設計。大容積・低fbの領域では、ポートが長くなりすぎたり風切り音が出やすかったりと制約がきつい。長すぎ警告と面積比チェックが同時に出るので、成立する設計かどうかがすぐ分かる。

基本の使い方(3ステップ)

ステップ1: 計算モードを選ぶ。目標fbからポート長を求めるなら「fb → ポート長」、手持ちポートの寸法からfbを確認するなら「ポート寸法 → fb」を選ぶ。

ステップ2: 箱とポートの条件を入力する。箱の実効内容積(L)——吸音材やユニットの排除体積を除いた値——、ポート内径(mm)、本数を入れる。順算なら目標fb、逆算ならポート長を追加で入力。ユニット口径(8〜20cm)を選ぶと風切り音チェックも有効になる。

ステップ3: 結果を確認する。ポート長またはfbのほか、ポート合計断面積、気柱共鳴の目安が並ぶ。ポート長が0以下なら赤エラー、500mm超なら黄警告、面積比がSdの1/9未満なら風切り音リスクの警告が出るので、径や本数を変えて再計算すればいい。結果はワンタップでコピーできる。

使用例8ケース——入力・結果・解釈

以下の8ケースはすべて実装と同じ式で検証済みの数値だ。順算・逆算・警告系まで一通り網羅している。

ケース1: 20L箱をfb 50Hzに(標準的なブックシェルフ)

  • 入力: 内容積20L、目標fb 50Hz、ポート内径50mm×1本
  • 結果: ポート長 75.2mm、合計断面積19.6cm²、気柱共鳴1461Hz
  • 解釈: 13〜16cmユニットの2way箱でよくある構成。VP50塩ビ管(内径約51mmなので誤差は僅少)を約75mmで切ればfb=50Hzが狙える。気柱共鳴1461Hzは中音域なので、ポートは背面配置か吸音材で対策しておくと安心。

ケース2: 8L小型箱・10cmフルレンジ・fb 70Hz

  • 入力: 内容積8L、目標fb 70Hz、ポート内径40mm×1本、ユニット口径10cm
  • 結果: ポート長 62.1mm、面積比 25.1% でリスク低(OK)
  • 解釈: デスクトップ向け小型フルレンジの定番構成。面積比はSd(約50cm²)の25.1%で、目安の11.1%を大きく上回り風切り音の心配は薄い。62mmならポートが箱の中で背面に干渉することもない。

ケース3: 30L箱でfb 100Hz・太いポート——成立しない設計

  • 入力: 内容積30L、目標fb 100Hz、ポート内径100mm×1本
  • 結果: ポート長 −6.5mm → 赤エラー「この条件では計算上ポートが不要(長さ0以下)」
  • 解釈: 必要な実効長が78.5mmしかないのに、開口端補正だけで0.85×100=85mmある。つまり板に素通しの穴を開けただけでもfbは100Hzより低くなる。ポート径を細くするかfbを下げるしかない。この「そもそも成立しない領域」を黙って数値だけ返さないのがツールの役目だ。

ケース4: 15L箱でfb 40Hz・太めポート——長すぎ警告

  • 入力: 内容積15L、目標fb 40Hz、ポート内径80mm×1本
  • 結果: ポート長 559.8mm → 黄警告「500mm超・箱に収まらない可能性」
  • 解釈: 小さい箱で低いfbを太いポートで狙うと、必要長が爆発する典型例。選択肢は3つ——ポートをL字に曲げて稼ぐ、径を細くして必要長を縮める(Sに比例して短くなる)、fbを見直す。小型箱の低fb化には物理的な限界があることが数字で見える。

ケース5: 逆算——手持ちのVP50を100mmで切ったら?

  • 入力: 逆算モード、内容積20L、ポート内径50mm×1本、ポート長100mm
  • 結果: fb = 45.4Hz
  • 解釈: ケース1と同じ箱・同じ管で、長さだけ75→100mmにするとfbは50→45.4Hzに下がる。「余っている管をとりあえず100mmで切る」前に、その寸法が自分の狙いに合うか確認できる。長めに切って試聴しながら詰めていく際の見当づけにも便利。

ケース6: 逆算・ダブルポート——60Lトールボーイ

  • 入力: 逆算モード、内容積60L、ポート内径65mm×2本、ポート長150mm、ユニット口径16cm
  • 結果: fb = 40.2Hz、合計断面積66.4cm²、面積比 49.9% でリスク低
  • 解釈: ポート2本は合計断面積S=2×33.2cm²で計算する。面積比はSdの約半分と余裕たっぷりで、大音量でも風切り音の心配がない。同じfbを1本で狙うより配置の自由度が高いのがダブルポートの利点だ。

ケース7: 40L箱・細ポート——計算は成立するが風切り音リスク

  • 入力: 内容積40L、目標fb 45Hz、ポート内径40mm×1本、ユニット口径20cm
  • 結果: ポート長 12.5mm、面積比 6.1% → 風切り音リスク警告
  • 解釈: ポート長としては成立するが、20cmユニットのSd(約206cm²)に対して断面積12.6cm²は6.1%しかなく、目安の1/9(11.1%)を割る。大音量でchuffingが出やすい構成だ。径を太くするか2本に増やして面積比を稼ぎ、そのぶん伸びるポート長で再設計するのが正解。「ポート長だけ計算できても失敗する」の典型例と言える。

ケース8: 逆算・大型箱——100Lサブウーファー級

  • 入力: 逆算モード、内容積100L、ポート内径100mm×1本、ポート長300mm
  • 結果: fb = 24.7Hz
  • 解釈: 100L箱に100mm径×300mmのポートでfbは25Hz近辺、映画の重低音まで狙えるサブウーファー級の設計になる。この規模では100mm径でも風切り音が問題になりうるので、ユニット口径を指定して面積比も併せて確認したい。

仕組み・アルゴリズム——式の中身と開口端補正の選び方

手法の比較: アライメント設計かヘルムホルツ直接計算か

バスレフ設計の計算手法は大きく2系統ある。ひとつはユニットのT/Sパラメータ(f0・Qts・Vas)から箱容積とfbを同時に最適化するアライメント設計(QB3など)。理論的には強力だが、T/Sパラメータの正確な値が必要で入力項目が多く、「箱はもう決まっている(あるいは作ってしまった)」人には過剰だ。もうひとつはヘルムホルツ共鳴式の直接計算で、箱とfbが決まった後のポート寸法決定に特化する。本ツールは後者を採用した。自作の現場で詰まるのは「最適な箱はどれか」より「この箱でポートを何mmにするか」だからだ。

実装詳細: SI単位系での計算フロー

入力はL・mm単位だが、内部計算はすべてSI単位(m³・m²・m)に揃えてから行い、表示の段階でL・mm・cm²に戻す。単位混在の掛け違いは自作計算の事故の筆頭なので、変換を入口と出口に集約している。

// 共通: SI換算と合計断面積
const V = vbL * 1e-3;                   // L → m³
const d = dMm * 1e-3;                   // mm → m
const S = n * Math.PI * (d / 2) ** 2;   // 合計断面積 m²(n = 本数)

// 順算: fb → ポート長
const leff = (c / (2 * Math.PI * fb)) ** 2 * S / V; // 実効長 m
const lpMm = (leff - 0.85 * d) * 1000;  // 開口端補正を引いて実長 mm
// lpMm <= 0 → 「ポート不要」赤エラー / lpMm > 500 → 長すぎ黄警告

// 逆算: ポート寸法 → fb
const leffR = lpMm * 1e-3 + 0.85 * d;
const fb = (c / (2 * Math.PI)) * Math.sqrt(S / (V * leffR));

// 参考: ポートの気柱共鳴(半波長共鳴)
const pipeResonanceHz = c / (2 * leff);

開口端補正はなぜ0.85dか——3つの流儀

開口端補正には流儀がある。管端が何もない空間に開く「自由端」なら半径の約0.61倍(Levine–Schwingerの理論値)、片側だけ板に接続された「片側フランジ」なら約0.73×直径、両端とも板面に接続なら約0.85×直径。バスレフポートは箱の内側では箱の壁に、外側ではバッフル面に接続されているので、実装形状としては両端フランジがもっとも近い。そこで本ツールは0.85dを採用した。どの係数を使っているか明記していないツール同士で答えがズレるのは、たいていここが原因だ。

計算例: 20L・fb 50Hz・内径50mmを手で追う

  1. 断面積: S = π × (50mm/2)² = 19.635cm²
  2. 必要実効長: Leff = (344 / (2π×50))² × S / V = 117.7mm
  3. 開口端補正を引く: Lp = 117.7 − 0.85×50 = 117.7 − 42.5 = 75.2mm

ツールの表示(ケース1)と一致する。逆算はこの手順を逆にたどるだけで、Lp=100mmならLeff=100+42.5=142.5mmとなり、fb=45.4Hz(ケース5)が出てくる。

気柱共鳴——ポートは「ただの筒」としても鳴る

ポートはヘルムホルツ共鳴のおもりであると同時に、両端が開いた1本の筒でもある。筒は実効長の半波長に相当する周波数 c / (2 × Leff) で共鳴し、この帯域の音が箱の中からポート経由で漏れてくる。ケース1なら1461Hz——ボーカル帯域のすぐ上だ。数値が可聴域のど真ん中に来る場合は、ポートを背面に配置する、ポート開口の近くに吸音材を置くといった対策の判断材料になる。

なお、この式は無損失のヘルムホルツ共鳴の理想値だ。実際のfbは吸音材の量・ポートの取付位置・箱の形状で数Hz程度動く。追い込みたい場合はインピーダンス測定での実測をおすすめしたい——とはいえ、その出発点となる寸法をここまで根拠つきで決められれば、切り直しの回数は確実に減る。

他のバスレフポート計算ツールとの違い

既存の計算ページとの差は、まず開口端補正の透明性にある。補正係数が0.61なのか0.73なのか0.85なのか明記されていないツールが多く、同じ条件を入れてもサイトごとに答えが数mm〜十数mm違う。本ツールは「両端フランジ相当の0.85d」と係数と根拠を明示しているので、結果がなぜその値になるのかを追跡できるし、他ツールとの差分の原因も特定できる。

もう一つの違いが逆算モードだ。既存ツールの多くは「fb→ポート長」の順算のみで、「手持ちのVP50を100mmで切ったらfbはいくつ?」という自作派の実際の疑問に答えられない。本ツールは順算・逆算をワンタップで切り替えられる。

そして単機能の計算機との最大の差が、風切り音の面積比チェックと気柱共鳴の目安を同時に表示すること。fbとポート長だけ合わせても、断面積が振動板の1/9未満なら大音量でシュボシュボと鳴く。「計算はできたが鳴らしたら失敗」を計算の段階で潰すのがこのツールの役目だ。成立しない設計(ポート長0以下・500mm超)も黙って数値を出さず、赤エラー・黄警告ではっきり知らせる。

豆知識: 瓶の口から車の窓まで——ヘルムホルツ共鳴のはなし

ヘルムホルツ共鳴器は「音を分解する道具」だった

名前の由来は19世紀ドイツの物理学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ。彼は大きさの異なる真鍮やガラスの共鳴球をいくつも用意し、耳に当てて複雑な音の中から特定の周波数成分だけを聴き分けた。楽器の音色がなぜ違うのかを倍音構成から解き明かした著書『音感覚論』(1863年)の実験道具だ。今ならFFTアナライザが一瞬でやる周波数分析を、金属の球と自分の耳でやっていたわけだ。詳しくは ヘルムホルツ共鳴 - Wikipedia を参照。

瓶の口と車の窓——身近なヘルムホルツ共鳴

瓶の口に息を吹きかけると「ボーッ」と鳴るのは、胴の中の空気がバネ、口の部分の空気栓がおもりになった共振で、バスレフとまったく同じ物理現象だ。飲みかけの瓶ほど音が低くなるのは、空気の体積V(=箱の容積)が大きいほどfbが下がる関係そのもの。

もっと大掛かりな例が、高速道路で後席の窓だけ少し開けたときの「ボコボコ」という圧迫感のある低周波音(ウインドスロッブ)だ。車室が箱、窓の隙間がポートの巨大なバスレフになっていて、共振周波数は20Hz前後まで下がる。別の窓も開けると音が消えるのは、開口条件が変わって共振が崩れるからだ。

バスレフの発明は1930年代

バスレフ型エンクロージャー自体の発明は意外と古く、ベル研究所のA.L.スーラスが1930年に出願した特許にさかのぼる。90年以上前の技術が、いまだに市販スピーカーの主流形式であり続けているのだから、よくできた仕組みだ。形式の解説は バスレフ - Wikipedia が詳しい。

Tips: ポートは「長めに切って詰める」が鉄則

  • 長めに切って試聴しながら詰める: ポートを短くするとfbは上がる。計算値より1〜2割長めで仮組みし、試聴・実測しながら少しずつ切り詰めるのが安全だ。切りすぎたポートの継ぎ足しはまず無理なので、短くする方向にだけ余地を残しておく。
  • 複数ポートは同径・等長にする: 長さの違うポートが混ざると共振点が割れて特性が濁る。2本使うなら完全に同じ寸法で。
  • 内側の開口まわりを空ける: ポートの箱内側の開口が背板や吸音材のすぐそばにあると、実効的に塞がれてfbが計算からズレる。最低でも内径ぶんの空間を確保する。
  • フレア付き既製ポートは実測で追い込む: 本ツールの想定はストレート管。フレア(ラッパ状の広がり)が付くと実効長が変わるため、計算値は出発点として実測fbで調整する。
  • 吸音材を増やすとfbは下がる方向: 吸音材は実効容積を増やす働きがあるため、詰めるほどfbはわずかに下がる。詰めすぎはバスレフ動作自体を弱めるので、背面と側面に薄く貼るところから始めるとよい。

よくある質問(FAQ)

角形(スリット)ポートでも使えるか

目安としては使える。スリットの断面積(幅×高さ)と同じ面積になる円形ポートの内径に換算して入力すれば、fbのおおよその見当はつく。ただし開口端補正は開口形状に依存し、細長いスリットや箱の壁を利用したスリットでは0.85dからずれるため、数Hz程度の誤差は見込んでおくこと。追い込みは実測が前提だ。

目標fbはいくつにすればいいか

定石はユニットの最低共振周波数f0の0.8〜1.0倍。たとえばf0が60Hzのユニットなら48〜60Hzあたりが出発点になる。f0より大きく上に設定すると、低域が一度持ち上がったあと急落するピーキーな特性になりやすい。逆に下げすぎるとポートの働く帯域とユニットの受け持ちが離れて、狙った増強が得られない。迷ったらf0の0.9倍前後から試すとよい。

太いポート1本と細いポート2本、どちらがいいか

合計断面積が同じでも結果は同一にならない。開口端補正はポート1本ごとの内径に効くため、同じ断面積を細い2本に分けると補正量が減り、必要なポート長はやや長くなる。たとえば20L・fb50Hzで内径50mm×1本ならLp75.2mm、同断面積の内径35.4mm×2本なら約88mmだ。2本方式の利点は、バッフル上の配置の自由度と、1本あたりの径を市販の塩ビ管サイズに合わせやすいこと。風切り音対策として合計断面積を稼ぎたいときにも有効だ。

計算通りに作ったのに実測fbがズレるのはなぜか

本ツールの式は損失のない理想的なヘルムホルツ共鳴の理論値で、実物では吸音材の量、ポートの取付位置、箱の形状、板の剛性がそれぞれ数Hzレベルで効いてくる。特に吸音材はfbを下げる方向に働きやすい。ズレるのが正常であって、計算値は「狙いを定めるための照準」と考えてほしい。正確に確認したければインピーダンス測定で、双峰特性の谷の周波数を読むのが確実だ。

入力したデータはどこかに保存されるか

保存されない。計算はすべてブラウザ内のJavaScriptで完結しており、入力した箱の容積やポート寸法がサーバーに送信されることは一切ない。ページを閉じれば入力値は消える。設計値を残したいときは「結果をコピー」ボタンでクリップボードに書き出し、メモアプリ等に貼り付けておくとよい。

まとめ

バスレフのポート長は勘で切る部品ではなく、fb = (c/2π)×√(S/(V×Leff)) から一意に決まる設計値だ。本ツールなら順算・逆算の両方向に加えて、風切り音リスクと気柱共鳴の目安まで一度に確認できる。箱の設計が済んだら、次はスピーカーを鳴らす部屋にも目を向けてみてほしい。部屋の響きの長さは 残響時間計算ツール で、複数の音源やスピーカーの音圧レベル合成は dB加算計算機 で見積もれる。ツールへの要望や「この条件で合わない」という報告は お問い合わせページ から気軽にどうぞ。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。自作スピーカーのポートを勘で切って風切り音に泣いた経験から、切る前の30秒計算を習慣にしている。

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