大地震の夜、冷蔵庫の中身だけで何日しのげる?
深夜3時、突然の強い揺れで飛び起きる。停電で真っ暗な部屋、スマホの画面だけが頼り。キッチンに向かうと冷蔵庫はすでに温まり始めている。「水…ペットボトルは何本あったっけ?」と焦る。コンビニは長蛇の列で、棚はもう空っぽ。
そんなとき、今の備蓄で足りるのか?何がどれだけ必要なのか? がすぐにわかるのが、この防災備蓄シミュレーターだ。家族の人数と日数を入れるだけで、水・食料・トイレ・電池…品目ごとの必要量と過不足がひと目で確認できる。
なぜ防災備蓄シミュレーターを作ったのか
開発のきっかけ
2024年の能登半島地震を見て、備蓄を真剣に見直そうと思った。自治体の防災ページにはチェックリストがあったが、「大人2人・子供1人・犬1匹で7日分だと水は何リットル?」という問いには答えてくれなかった。
東京都が公開している「東京備蓄ナビ」も使ってみた。質問形式で進むUIは丁寧だが、家族構成を変えて再計算するのに毎回最初からやり直し。「もし親を呼び寄せたら?」「ペットが増えたら?」というシミュレーションが面倒だった。
自分が欲しかったのは、数字を変えた瞬間に結果が変わる電卓型のツール。入力を変えるたびにリアルタイムで再計算され、今の備蓄量を入れれば「あと何が足りないか」まで一覧で出してくれるもの。だから作った。
こだわった設計判断
内閣府の「防災の手引き」が推奨する1人1日3Lの水を基準にしつつ、乳幼児・高齢者・ペットそれぞれに異なる係数を設定した。電池やカセットボンベは人数ではなく世帯単位で計算するのが現実的なので、品目ごとに計算ロジックを分けている。
「現在の備蓄量」の入力は任意にした。初めて備蓄を考える人は必要量だけ知りたいし、定期点検する人は過不足を確認したい。両方のニーズに応えられるようにした。
防災備蓄の基礎知識 — 3日分と7日分、どちらが正解?
備蓄量 計算の大前提
防災備蓄とは、災害発生から救援物資が届くまでの間、自力で生活するための準備のこと。内閣府の「防災の手引き」では最低3日分、できれば1週間分の備蓄を推奨している。
なぜ3日なのか。過去の災害では、発生から72時間(3日間)は救助活動が優先され、物資の配給が本格化するまでに時間がかかるためだ。ただし、南海トラフ巨大地震のような広域災害では、物流の復旧に1週間以上かかる想定もある。
防災 水 何リットル必要か
人間が生存に必要な水分量は1日あたり約2〜2.5L。ここに調理用の水を加え、内閣府は1人1日3Lを目安としている。2人家族で3日分なら18L、7日分なら42L。2Lペットボトルに換算すると9本〜21本だ。
たとえば冷蔵庫の横に2Lペットボトルを並べるイメージで考えてみて。21本を縦に2列並べると、幅約50cm×奥行30cm×高さ65cmほどのスペースが必要になる。「意外と場所を取る」と感じるのが正直なところだが、これが命をつなぐ量だ。
備蓄 チェックリストの品目
水と食料以外に見落としがちなのが簡易トイレ。断水時にはトイレが使えなくなるため、1人1日7回分が目安。4人家族7日分だと196回分。このほか、懐中電灯用の乾電池、調理用のカセットボンベ、衛生用品(マスク、ラップ、トイレットペーパー)が基本品目になる。
東京都防災ホームページでは、乳幼児がいる家庭には粉ミルク・おむつ・おしりふき、高齢者がいる家庭には常備薬・おかゆ・入れ歯洗浄剤の備蓄も呼びかけている。
なぜ備蓄量の計算が重要か — 「足りると思っていた」が一番危険
感覚と現実のギャップ
「うちは水もあるし食料もある」と思っている人は多い。しかし実際に数えてみると、2Lペットボトルが3本(=6L)しかなかった…というのはよくある話。2人家族でも3日分で18L必要なので、実は1日分にも満たない。
過去の災害に学ぶ
2018年の北海道胆振東部地震では、全道停電(ブラックアウト)が約2日間続いた。コンビニの飲料水は数時間で売り切れ、給水車に長時間並ぶ人が続出した。2024年の能登半島地震では、断水が1ヶ月以上続いた地域もあった。
内閣府の「大規模地震の被害想定」によると、南海トラフ巨大地震では最大約3,440万人が断水の影響を受けると試算されている。これほどの規模では、自治体の物資供給が全員に行き渡るまでに相当の日数がかかる。
「計算しておく」ことの価値
備蓄量を事前に計算しておけば、買い物リスト化できる。「水あと12L、簡易トイレあと50回分、カセットボンベ2本」と具体的にわかれば、ドラッグストアやホームセンターで一度にまとめ買いできる。漠然と「防災グッズを買わなきゃ」より、はるかに行動しやすい。
防災備蓄が活きる3つの場面
新居への引っ越し時
引っ越しは備蓄をゼロからやり直すタイミング。新しい家の収納スペースに合わせて、必要量を把握してから買い揃えれば無駄がない。特にマンションの高層階は、エレベーター停止時に水を運び上げるのが困難なので、多めに備蓄しておきたい。
家族構成が変わったとき
子供が生まれた、高齢の親と同居を始めた、ペットを飼い始めた — いずれも必要備蓄量が大きく変わる。このツールなら人数を変えるだけで即再計算。ライフイベントごとに備蓄を見直す習慣をつけやすい。
防災の日(9月1日)の定期点検
年に1回は備蓄の棚卸しをしたい。「現在の備蓄状況」に実際の在庫を入力すれば、不足品目が赤字で一覧表示される。過不足リストをコピーして買い物メモにすれば、そのまま買い出しに行ける。
基本の使い方
家族構成を入れて、日数を選んで、結果を確認。たった3ステップで完了する。
Step 1: 家族構成を入力する
大人・子供・乳幼児・高齢者の人数をそれぞれ入力してみて。ペットがいる場合はトグルをONにして頭数も入力すればOK。
Step 2: 備蓄日数を選ぶ
「3日分(最低限)」か「7日分(推奨)」をタップ。初めて備蓄を考えるならまず3日分から。余裕ができたら7日分に切り替えてみて。
Step 3: 結果を確認する
品目ごとの必要量が自動計算される。すでに備蓄がある場合は「現在の備蓄状況」に入力すると、過不足が一目でわかる。「結果をコピー」で買い物リストとして使えるよ。
具体的な使用例 — 4つの家族パターンで検証
ケース1: 夫婦2人世帯・3日分
入力値:
- 大人: 2人
- 備蓄日数: 3日分
計算結果:
- 飲料水: 18L(2L×9本相当)
- 非常食: 18食
- 簡易トイレ: 42回分
- 単3電池: 6本
- カセットボンベ: 2本
→ 解釈: 最小限の備蓄量。2Lペットボトル9本と3日分の非常食があれば基準クリア。簡易トイレの42回分は見落としがちなポイント。
ケース2: 4人家族(大人2+子供2)・7日分
入力値:
- 大人: 2人、子供: 2人
- 備蓄日数: 7日分
計算結果:
- 飲料水: 84L(2L×42本相当)
- 非常食: 84食
- 簡易トイレ: 196回分
- カセットボンベ: 4本
→ 解釈: 7日分となると水だけで84L。2Lペットボトル42本は相当な量。分散収納(クローゼット・ベッド下・玄関脇)を検討すべき規模だ。
ケース3: 高齢者夫婦+乳幼児1人
入力値:
- 高齢者: 2人、乳幼児: 1人
- 備蓄日数: 7日分
計算結果:
- 飲料水: 52.5L(高齢者3L×2 + 乳幼児1.5L×1 × 7日)
- 簡易トイレ: 168回分(高齢者8回×2 + 乳幼児8回×1 × 7日)
→ 解釈: 高齢者と乳幼児はトイレ回数が多めに設定されている。加えて粉ミルク・おむつ・常備薬などツール外の品目も警告表示で案内される。
ケース4: 2人世帯+ペット1頭・7日分
入力値:
- 大人: 2人、ペット: 1頭
- 備蓄日数: 7日分
計算結果:
- 飲料水: 45.5L(大人3L×2 + ペット0.5L × 7日)
- 非常食: 42食(ペットのフードは別管理)
→ 解釈: ペットの水は0.5L/日で加算される。ペットフードは種類や体格で大きく異なるため、このツールでは水のみ自動計算し、フードは個別に準備することを推奨している。
ケース5: 1人暮らし・3日分(最小構成)
入力値:
- 大人: 1人
- 備蓄日数: 3日分
計算結果:
- 飲料水: 9L
- 非常食: 9食
- 簡易トイレ: 21回分
- マスク: 3枚
→ 解釈: 1人暮らしの最小構成。2Lペットボトル5本とレトルト食品9個で基準クリア。ワンルームでも収納しやすい量だ。
ケース6: 大家族6人(大人2+子供2+高齢者2)・7日分
入力値:
- 大人: 2人、子供: 2人、高齢者: 2人
- 備蓄日数: 7日分
計算結果:
- 飲料水: 126L(2L×63本)
- 非常食: 126食
- 簡易トイレ: 308回分
→ 解釈: 6人で7日分は圧巻の物量。水だけで126L。ローリングストック法で日常的に消費しながら補充する運用が不可欠になる。
仕組み・アルゴリズム — 品目別係数 × 人数 × 日数
採用しているアルゴリズム
計算の基本式はシンプルだ:
必要量 = (大人+子供) × 大人係数 × 日数
+ 乳幼児 × 乳幼児係数 × 日数
+ 高齢者 × 高齢者係数 × 日数
+ ペット × ペット係数 × 日数(ペットONの場合のみ)
ただし電池とカセットボンベは人数に比例しない。懐中電灯やラジオは家庭に1〜2台あれば足りるので、世帯単位の固定値を使う:
単3電池 = 2本/日 × 日数(世帯固定)
カセットボンベ = 0.5本/日 × 日数(世帯固定)
なぜ「人数比例」と「世帯固定」を使い分けるのか
候補として「全品目を人数比例で計算する方式」と「品目ごとに計算方式を分ける方式」を検討した。
前者はシンプルだが、「5人家族だから電池が1日10本必要」のような非現実的な結果になる。後者は品目ごとの設定が必要だが、実態に即した結果が出る。日常感覚と一致する方を選んだ。
具体的な計算例
4人家族(大人2+子供2)× 7日分の飲料水:
必要量 = (2+2) × 3L × 7日
= 4 × 3 × 7
= 84L
→ 2Lペットボトル換算: ceil(84 / 2) = 42本
各品目の係数は内閣府「防災の手引き」および東京備蓄ナビの推奨値を参考に設定した。乳幼児の飲料水を1.5L/日としているのは、母乳やミルクの水分量を考慮した値だ。
東京備蓄ナビとの違い — リアルタイム計算の電卓型ツール
即座に再計算できる
東京備蓄ナビは質問に答えていく対話形式。丁寧だが、「子供が1人増えたら?」と条件を変えたいときに最初からやり直す必要がある。このツールは入力を変えた瞬間に結果が更新される。
過不足が品目別にわかる
多くの備蓄チェックリストは「必要量」を教えてくれるだけ。このツールは「現在の備蓄量」を入力すると、品目ごとに「あと何がどれだけ足りない」を赤字で表示する。結果をコピーすればそのまま買い物リストになる。
スマホ1台で完結する
アプリのインストールも会員登録も不要。ブラウザでアクセスするだけ。データはデバイス上で完結し、サーバーには送信されない。
知って得する防災備蓄の豆知識
ローリングストック法で「期限切れ」を防ぐ
非常食を買い込んで棚の奥にしまい込み、気づいたら賞味期限切れ…というのは防災あるある。農林水産省が推奨する「ローリングストック法」は、日常的に消費しながら使った分だけ買い足す方法。レトルトカレーやカップ麺、缶詰を普段の食事に組み込めば、自然と備蓄が回転する。
防災の日はなぜ9月1日なのか
1923年9月1日に発生した関東大震災にちなんで制定された。毎年この日に合わせて全国で防災訓練が行われている。備蓄の棚卸しもこのタイミングに合わせると忘れにくい。ちなみに1月17日は阪神・淡路大震災(1995年)、3月11日は東日本大震災(2011年)の発生日で、いずれも防災意識を高める節目として活用されている。
備蓄のプロが教える3つのコツ
水は「分散収納」が鉄則
大量のペットボトルを1箇所にまとめると、その部屋が被害を受けたときに全滅する。クローゼット、ベッド下、玄関脇、車のトランクなど複数箇所に分けて置こう。
100均で揃う防災グッズは意外と多い
簡易トイレ、ポリ袋、マスク、ウェットティッシュ、ライターなど、100円ショップで手に入る防災グッズは多い。高価な防災セットを一式買う前に、まず100均で基本品目を揃えるのも賢い選択。
「3月・9月」の半年サイクルで見直す
防災の日(9月1日)だけでなく、3月にも棚卸しをすると半年サイクルで回せる。ローリングストック法と組み合わせれば、賞味期限切れをほぼゼロにできる。
備蓄計算でよくある疑問
Q: 子供と大人で必要量はどう違う?
このツールでは、4〜15歳の子供は大人と同じ係数で計算している。体格差はあるが、子供は水をこぼしたり食べ残したりするロスを考慮すると、大人と同量を確保しておくのが安全側の判断だ。0〜3歳の乳幼児のみ、飲料水を1.5L/日、トイレ回数を8回/日と別係数を適用している。
Q: カセットボンベの「0.5本/日」はどう算出した?
岩谷産業の公表データでは、カセットボンベ1本で約60分の連続使用が可能。1日3回の調理で各10〜15分使用すると仮定すると、1日あたり約0.5本の消費になる。7日分で3.5本 → 繰り上げて4本が目安だ。
Q: 入力したデータはサーバーに送信される?
一切送信されない。すべての計算はブラウザ上(あなたのデバイス内)で完結している。入力データはページを閉じると消える。個人情報の入力も不要。
Q: マンション高層階で特に注意すべきことは?
停電時はエレベーターが止まるため、水の運搬が極めて困難になる。高層階ほど多めの備蓄を推奨する。また、タンク式のトイレは断水で流せなくなるため、簡易トイレの備蓄が特に重要だ。
まとめ
防災備蓄は「なんとなく」ではなく「具体的な数字」で準備するのが最も確実。家族構成と日数を入力するだけで、品目別の必要量と過不足が一覧で出る。
不足リストをコピーして、次の買い物で揃えるところから始めてみて。
アウトドアの持ち物管理が気になった人はキャンプ持ち物チェックリストも試してみて。
不具合や要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に教えて。