配管の保有水量計算

管種・呼び径・長さから配管の容積を合計し、水張り時間・不凍液の量・窒素置換のガス量まで出す

管種・呼び径・長さを区間ごとに入れると、内径を引いて配管の中の水の量を合計する。そこから水張り時間・不凍液・窒素置換の量も出す。

よくある使い方(プリセット)

配管の区間

管種呼び径長さ m削除

区間1:内径 67.9 mm・3.621 L/m・144.8 L(31.7%)

区間2:内径 41.6 mm・1.359 L/m・81.6 L(17.9%)

区間3:内径 27.6 mm・0.5983 L/m・29.9 L(6.6%)

ボイラー・チラー・熱交換器・膨張タンク・ヘッダーなどの容量の合計。銘板や仕様書の値。空欄=0

用途

1〜70 vol%。目標の凍結温度から濃度を決めるときは不凍液(LLC)濃度・凍結温度・入替量 計算ツールで

結果

保有水量456.3 L
3区間

同じ量を m³ で

0.46 m³

配管

256.3 L

総延長 150.0 m

機器

200.0 L

容積が最も大きいのは区間1(SGP(白管・黒管) 65A)で、全体の31.7%

不凍液の原液

136.9 L

濃度 30 vol%

水

319.4 L

合計は密閉配管 膨張タンク容量計算の系統水量にそのまま使える。1本ずつの内径・内断面積は配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径)で確かめられる。

内径はJISの寸法表の公称値(外径−2×肉厚)から出した目安で、継手・弁・ストレーナの容積や製造時の寸法の幅は含まない。窒素置換の回数と量は、配管の中で窒素と空気がよく混ざると仮定した理論値。加圧する圧力は配管・弁・機器のうち最も低い最高使用圧力を超えないようにし、作業後は末端で酸素濃度を測って確かめる。

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試運転の前日、「この系統、水は何リットル入る?」と聞かれたら

試運転を明日に控えた現場で、こう聞かれることがある。「この冷温水の系統、水は何リットル入る?」「不凍液は何缶頼めばいい?」。図面を広げて配管を1本ずつ拾い、管種と呼び径を確かめ、寸法表から内径を引いて断面積を出し、長さを掛けて足し上げる。3区間ならまだいい。10区間を超えると、どこかで桁を落としていないか不安になって、もう一度最初からやり直すことになる。

たとえば SGP の 65A を40m、40A を60m、25A を50m。これにチラーなどの機器の保有水量200Lを足すと、系統全体で456.3Lになる。30vol%の不凍液にするなら、原液は136.9L、水は319.4Lだ。数字だけ見れば単純な掛け算と足し算なのに、内径を寸法表から引く手間と、区間をまたいで足し上げる手間が、地味に時間を食う。

このツールは、区間ごとに管種・呼び径・長さを入れるだけで、JIS の寸法表から内径を引いて配管の容積を合計する。機器の保有水量を足したあとは、水張りにかかる時間、不凍液の原液と水の量、窒素置換の回数とガスの量、47Lボンベの本数まで一続きで出す。段取りの数字を前日のうちに固めておきたい人のための計算機だ。

なぜ作ったのか — 容積の「その先」まで一度に出したかった

配管の計算ツールを探すと、探した範囲では、流量から管径を決めるものや圧力損失を出すものばかりが並んでいた。管種と呼び径を選んで内径を引き、区間をいくつも足し上げて系統の水量を出す、という道具は日本語ではなかなか見つからない。1本の管の内断面積なら寸法表で引ける。けれど、知りたいのは系統全体の量だ。

しかも、容積を出すこと自体が目的になる場面は少ない。容積を出したあとに本当に要るのは、水張りに何分かかるか、不凍液の原液を何リットル発注するか、窒素ボンベを何本手配するか、という段取りの数字のほうだ。容積を電卓で出してから、別の計算機に移して、また別の式を引っ張り出す。この往復をなくしたかった。

もう一つ気になっていたのが、呼び径の数字をそのまま内径として計算してしまう誤りだ。「25A なんだから内径25mm」と置くと、SGP の 25A は実際の内径が27.6mmなので、1mあたりの容積が約18%少なく出る。同じ呼び径でも、SGP・STPG・ステンレス・銅管・塩ビで肉厚が違うから内径も違う。呼び径はあくまで「サイズの名前」で、寸法そのものではない。

そこで、JIS の外径と肉厚から内径を出す寸法表を持たせ、区間を並べて足し上げ、機器の水量を加え、用途に応じて時間・原液・ガスの量までつなげることにした。寸法表は、既存の 配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径) と同じものを使っている。一般配管用ステンレス鋼管(Su)の寸法は新たに加えた。表に無い樹脂管やホースは、内径を直接入れれば同じ流れで計算できる。

配管の保有水量とは — 管の中の体積を区間ごとに足し上げる

配管 容積 計算 — 内断面積×長さが基本

配管の中に入る水の量は、管の中の空洞の体積そのものだ。管は円筒なので、内側の円の面積(内断面積)に長さを掛ければ求まる。

内断面積 [mm²] = π/4 × 内径² 
1mあたりの容積 [L/m] = π/4 × 内径[mm]² ÷ 1000
区間の容積 [L] = 1mあたりの容積 × 長さ[m]

mm² に長さ1m(1,000mm)を掛けると mm³ になり、1L は 1,000,000mm³ なので、最後に1000で割ればリットルになる。

たとえるなら、ストローに入ったジュースの量だ。内径6mm・長さ20cmのストローなら、中に入るのは約5.7mL。同じ長さで内径を倍の12mmにすると、入る量は2倍ではなく4倍になる。容積は内径の2乗で効く。配管でも、内径がわずかに違うだけで容積はその2乗の比で変わる。呼び径の数字と実際の内径の数mmの差を軽く見られないのはこのためだ。

内径は呼び径の数字ではない

管の寸法表に載っているのは外径と肉厚だ。内径はそこから計算する。

内径 = 外径 − 2 × 肉厚

鋼管の継手やねじは外径に合わせて作られているので、同じ呼び径なら外径はそろっている。違うのは肉厚のほうで、圧力の高い用途ほど厚い管を使う。外径がそろって肉厚が厚くなれば、そのぶん内径は狭くなる。SGP(配管用炭素鋼鋼管)の 50A は外径60.5mm・肉厚3.8mmで、内径は52.9mm。呼び径の「50」とも外径の「60.5」とも違う数字になる。規格の数値は JIS 検索(日本産業標準調査会) で JIS G 3452 などの規格番号から閲覧できる。配管全般の用語は 配管 - Wikipedia にもまとまっている。

SGP 内容積 — 1mあたりのリットル数を覚えると暗算できる

よく使う SGP の内径と1mあたりの容積を並べると、次のようになる(外径と肉厚は JIS G 3452 の値)。

呼び径外径 [mm]肉厚 [mm]内径 [mm]1mあたり [L/m]
15A21.72.816.10.2036
20A27.22.821.60.3664
25A34.03.227.60.5983
32A42.73.535.71.001
40A48.63.541.61.359
50A60.53.852.92.198
65A76.34.267.93.621
80A89.14.280.75.115
100A114.34.5105.38.709

覚えやすい目印は「32Aでほぼ1L/m」だ。25A は約0.6L/m、50A は約2.2L/m、100A は約8.7L/m。この4つを押さえておくと、図面を見ながらおおよその水量を頭の中で見積もれる。ただし、これは SGP の値だ。同じ呼び径でも STPG の Sch80 なら肉厚が厚いぶん少なく、ステンレスの Sch10S なら薄いぶん多くなる。管種の違いでどれだけ変わるかは、使用例で数字を並べている。

配管 保有水量 計算 — 系統全体は「配管+機器」

ここまでの計算で出るのは配管の中の水だけだ。冷温水や暖房の系統には、ボイラー・チラー・熱交換器・膨張タンク・ヘッダーといった機器がつながっていて、それぞれが水を抱えている。系統全体の保有水量は、次の足し算になる。

保有水量 [L] = Σ(区間ごとの配管の容積) + 機器の保有水量

機器の保有水量は、銘板やメーカーの仕様書で確かめる。使用例の冷温水の系統(配管256.3L+機器200L)では、機器が合計の4割強を占める。どちらを忘れても、合計は大きくずれる。

なぜ保有水量が大事か — 膨張タンク・不凍液・窒素ボンベの3つに効く

保有水量は、それ自体を報告書に書くための数字ではない。この数字を入口にして決まるものが、少なくとも3つある。

(a) 膨張タンクの容量は保有水量に比例する。 密閉された冷温水や暖房の系統では、水温が上がると水が膨らむ。その膨らんだぶんを受け止めるのが膨張タンクで、膨張する量は「保有水量×膨張率」で決まる。保有水量を2割少なく見積もれば、膨張量も2割少なく見積もることになり、タンクが小さすぎて逃し弁から水を吹く原因になる。タンクの選定は 密閉配管 膨張タンク容量計算 で行えるが、そこに入れる系統水量の精度は、配管と機器をどれだけ漏れなく数えたかで決まる。

(b) 不凍液の発注は原液の量で決まる。 不凍液は「系統全体の何vol%」で濃度を決めて、原液をその割合ぶん入れる。機器の保有水量を数え忘れると、原液が足りなくなる。冒頭の例では、系統456.3Lのうち200Lが機器だった。配管256.3Lだけを数えて30%ぶんの原液76.9Lを用意し、それを系統全体に入れると、実際の濃度は約16.9%にしかならない。狙った凍結温度まで下がらず、寒波の夜に凍結する。濃度と凍結温度の関係は 不凍液(LLC)濃度・凍結温度・入替量 計算ツール で確かめられるが、その濃度を実現するのは原液の量であり、原液の量は保有水量で決まる。

(c) 窒素置換と気密試験は、ボンベの手配が段取りを左右する。 冷媒配管やガスを流す配管では、中の空気を窒素で追い出す窒素置換や、窒素で圧力をかけて漏れを調べる気密試験を行う。必要な窒素の量は配管の容積と加圧する圧力で決まり、それがボンベ何本ぶんかで手配が変わる。現場で1本足りないと、作業はそこで止まる。

もう一つ、ガスで圧力をかける作業には、管の材質という落とし穴がある。塩ビ管だ。積水化学工業の『エスロン 硬質ポリ塩化ビニル管 施工ハンドブック』(第6版改訂 2022年6月)は、「漏れ試験を行う場合には、水圧によって実施してください。空気圧で行った場合、管が飛散することがあります」「空気圧での試験は、管・継手が飛散して怪我をするおそれがあるので、絶対に行わないでください」と書いている。気体は圧縮されてエネルギーを蓄えるので、管が割れたときに破片を飛ばす。窒素も気体である以上、同じ危険があると考えるべきだ。このツールは、窒素置換を選んだときに塩ビ管の区間が含まれていれば警告を出す。

こんな場面で使う — 試運転・発注・段取り・選定

試運転前の水張り計画。 給水の流量が分かれば、系統を満たすのにかかる時間が出る。空気抜きの段取りや、作業員をいつまで張り付けておくかを決める材料になる。水張りの途中で給水が止まっているのか、まだ入り続けているのかを判断する目安にもなる。

不凍液やブラインの発注。 寒冷地の冷温水系統、屋外にある熱交換器、休止期間に凍結のおそれがある系統など、不凍液を入れる現場では、原液を何リットル頼むかが最初の問題になる。缶の単位で発注するので、少し余裕を見て切り上げるにしても、元になる量がずれていては意味がない。

窒素置換・気密試験の段取り。 加圧する圧力と目標の酸素濃度を決めると、加圧と放出を何回繰り返すか、窒素がどれだけ要るか、47Lボンベが何本要るかが出る。配管を流しっぱなしにして置換した場合の量も並ぶので、どちらのやり方で段取りするかを比べられる。

膨張タンクを選ぶ前の系統水量の確認。 改修で配管を延ばした、熱交換器を増設した、といったときに、既存の膨張タンクで足りるかを見直す。増えた区間と機器を足すだけで、新しい系統水量が出る。鏡板付きの円筒タンクのように、銘板に容量が無い機器は タンク容量計算シミュレーター で容量を出してから足せばいい。

使い方 — 区間を並べて、機器を足して、用途を選ぶ

① 配管の区間を入れる。 区間ごとに管種・呼び径・長さを入れる。管種は SGP・STPG(Sch40・Sch80)・ステンレス(Sch10S・Sch20S・Sch40・一般配管用 Su)・銅管(K・L・M)・塩ビ(VP・VU)から選び、呼び径はその管種にあるものだけが選べる。架橋ポリエチレン管・ポリブテン管・冷媒用の銅管・ホースのように表に無い管は、管種で「内径を直接入力」を選んで、メーカーの寸法表の内径を入れる。区間は20行まで足せる。長さが空の区間は合計に入れないので、行を足してから長さを埋めていけばいい。最初は「冷温水+チラー」「給水の水張り」「窒素置換」のプリセットから始めて、区間を書き換えるのが早い。

② 機器の保有水量を足す。 ボイラー・チラー・熱交換器・膨張タンク・ヘッダーなどの保有水量を合計して入れる。銘板や仕様書の値を使う。配管だけの容積を知りたいなら空欄でいい。

③ 用途を選んで読む。 「水張り時間」「不凍液の量」「窒素置換」から選ぶ。水張り時間なら給水の流量、不凍液の量なら濃度、窒素置換なら加圧する圧力と目標の酸素濃度を入れる。保有水量の合計はどの用途でも同じものが出て、各区間の下には内径・1mあたりの容積・容積・全体に占める割合が並ぶ。容積が最も大きい区間も示されるので、どこが水量を支配しているかが一目で分かる。

使用例 — 7つのケースで数字を確かめる

以下はすべて、ツールと同じ式で計算した値だ。

ケース1:冷温水の系統に不凍液を入れる(プリセット「冷温水+チラー」)

入力: SGP 65A×40m、40A×60m、25A×50m、機器200L、用途「不凍液の量」・濃度30vol%

結果: 65A は内径67.9mm・3.621L/m で144.8L、40A は41.6mm・1.359L/m で81.55L、25A は27.6mm・0.5983L/m で29.91L。配管の合計は256.3L、機器を足して保有水量は456.3L。原液は136.9L、水は319.4L。容積が最も大きいのは65Aの区間で、全体の31.74%。

解釈: 長さでは40Aの60mが最長なのに、容積では40mの65Aが最大になる。容積は内径の2乗で効くからだ。そして、どの配管区間よりも機器の200Lが大きい。配管だけを拾って原液を手配すると、ここが丸ごと抜け落ちる。

ケース2:給水管の水張りにかかる時間(プリセット「給水の水張り」)

入力: 一般配管用ステンレス鋼管 Su 40×20m、25×40m、20×30m、13×25m、機器なし、用途「水張り時間」・給水20L/min

結果: 内径はそれぞれ40.3mm・26.58mm・20.22mm・14.28mmで、容積は25.51L・22.2L・9.633L・4.004L。合計61.34Lを20L/minで満たすと、約3.1分。

解釈: 総延長115mの給水管でも、水量は60L余りにすぎない。水張りの時間は3分ほどで、むしろ時間を食うのは末端からの空気抜きのほうだと分かる。最も大きい区間は 40Su の20mで、全体の41.59%を占める。

ケース3:窒素置換の回数とボンベ本数(プリセット「窒素置換」)

入力: STPG Sch40 50A×60m、25A×20m、機器なし、用途「窒素置換」・加圧0.3MPaG・目標の酸素濃度1%

結果: 内径は52.7mm と27.2mm、保有水量は142.5L(0.1425m³)。0.3MPaG まで加圧して大気圧まで抜く操作を3回繰り返すと、残る酸素は0.337%。1回に使う窒素は約0.42m³、3回で約1.27m³。ボンベ1本で使える量は6.857m³なので、1本で足りる。流しっぱなしで置換した場合は約0.43m³。

解釈: 2回では1%に届かず、3回目で一気に0.337%まで下がる。回数は切り上げなので、目標をわずかに超えるだけで1回増える。流して置換するほうがガスは少ないが、加圧置換には枝管の奥まで窒素を押し込めるという利点がある(両者の関係は仕組みの節で扱う)。

ケース4:同じ20Aでも銅管のLとMで容積が違う

入力: 銅管L 20A×30m、銅管M 20A×30m、用途「水張り時間」・給水20L/min

結果: どちらも外径は22.22mm。L は肉厚1.14mm で内径19.94mm・0.3123L/m・9.368L、M は肉厚0.81mm で内径20.60mm・0.3333L/m・9.999L。合計19.37L、水張り時間は約0.97分。

解釈: 肉厚の差はわずか0.33mmだが、M のほうが容積は6.7%多い。内径の差は0.66mmでも、2乗で効くとこの差になる。図面に「Cu 20A」としか書かれていないとき、L と M のどちらで拾うかで結果が変わることは覚えておきたい。

ケース5:加圧が低いと回数が増える

入力: ケース3と同じ配管(142.5L)、用途「窒素置換」・加圧0.03MPaG・目標0.5%

結果: 15回の加圧と放出で、残る酸素は0.428%。1回に使う窒素は約0.042m³、15回の合計は約0.63m³。流して置換した場合は約0.53m³。

解釈: 圧力が低いと1回で薄まる割合が小さく、回数が15回に増える。10回を超えると注意が出る。1回あたりの窒素は少ないので合計はケース3の半分ほどだが、作業の手間は5倍になる。流して置換との差はケース3より縮まるものの、それでも流すほうが少ない。圧力を上げられないなら、流して置換のほうが現実的な選択肢になる。

ケース6:気密試験なみの高い圧力では1本で足りない

入力: ケース3と同じ配管、用途「窒素置換」・加圧4.0MPaG・目標1%

結果: 1回の加圧と放出で、残る酸素は0.518%。窒素は約5.63m³。ボンベ1本で使える量は5.095m³に減るので、2本要る。流して置換なら約0.43m³で1本。

解釈: 圧力が高いと1回で目標に届くが、その1回に配管容積の約40倍の窒素を押し込む。しかもボンベは配管の圧力より高い間しか送れないので、4.0MPaG まで上げると1本あたり使える量は7m³から5.095m³に目減りする。窒素の量はケース3の約4.4倍、本数は1本から2本になる。気密試験の段取りでは、このずれが現場の手待ちに直結する。

ケース7:同じ50Aでも管種で内径が違う

入力: SUS Sch10S 50A×20m、STPG Sch80 50A×20m、塩ビVP 50×20m、用途「水張り時間」・給水20L/min

結果: SUS Sch10S は内径54.9mm・2.367L/m で47.34L、STPG Sch80 は49.5mm・1.924L/m で38.49L、塩ビVP は51.0mm・2.043L/m で40.86L。合計126.7L、水張り時間は約6.3分。

解釈: 同じ「50」でも、最も容積の大きい SUS Sch10S は最も小さい STPG Sch80 より約23%多い。肉厚の薄いステンレス管と厚い高圧配管の差が、そのまま水量の差になる。なお、この配管で用途を「窒素置換」に切り替えると、塩ビの区間が含まれているので警告が出る。

仕組み — 寸法表から内径を引き、2通りの置換の式を並べる

内径の出し方:呼び径を内径とみなすか、JIS の寸法から出すか

候補は2つあった。

(a) 呼び径の数字を内径とみなす簡便法。 25A なら25mm、65A なら65mm として計算する。表が要らないので手軽だ。ただ、ケース1の SGP 3区間をこの方法で計算すると配管は232.7Lになり、正しい256.3Lより23.6L(9.2%)少ない。しかもずれ方は呼び径ごとにまちまちで、SGP の 32A では1mあたり19.7%少なく出るのに、80A では1.7%しか違わない。一律の係数で補正することもできない。

(b) JIS の外径と肉厚から内径を出す方法(採用)。 管種ごとの寸法表を持ち、内径 = 外径 − 2×肉厚 で計算する。SGP(JIS G 3452)・STPG(JIS G 3454)・ステンレス鋼管(JIS G 3459)・銅管(JIS H 3300)・塩ビ管(JIS K 6741)の値は、配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径) と同じ表で、2系統以上の公表表と照合したもの。一般配管用ステンレス鋼管(JIS G 3448、呼び方 Su)の17サイズは、日本製鉄の建設用資材ハンドブックとステンレス協会のステンレス鋼管ガイド2024の両方で値が一致することを確かめて加えた。寸法は公称値なので、製造時の寸法の幅や、継手・弁の中の容積は含まない。

窒素置換:加圧置換と流して置換

窒素置換のやり方も2通りある。どちらも、配管の中で窒素と空気がよく混ざると仮定した理論式で、D. A. Crowl と J. F. Louvar の『Chemical Process Safety』第7章にある加圧パージとスイープパージの式と同じ形だ。

【加圧置換】
  PH = Pg + Patm(加圧したときの絶対圧)、Patm = 0.101325 MPa
  1回で酸素濃度は Patm / PH 倍になる
  n回後の酸素濃度  y_n = 20.95 × (Patm / PH)^n
  必要な回数       n = ceil( ln(目標 / 20.95) / ln(Patm / PH) )
  1回の窒素 [m³]   = V[m³] × Pg / Patm
  窒素の合計       = n × 1回の窒素

【流して置換(片側から流して反対側から逃がす)】
  窒素の量 [m³]    = V[m³] × ln(20.95 / 目標)

この式は、Crowl & Louvar の Example 7-6(150ft³ の容器を140psia まで加圧して大気圧まで抜き、酸素21%を1%にする)を再現できる。回数は ln(1/21) ÷ ln(14.7/140) = 1.35 で、切り上げて2回。窒素は 2 × 150 × 125.3 / 14.7 = 2,557ft³ で、例題の答えの2,550ft³ と一致する。

両方を並べたのには理由がある。加圧の比 x = Pg/Patm に対して、x は ln(1+x) より常に大きい。式を整理すると、加圧置換の窒素は流して置換の窒素の x ÷ ln(1+x) 倍以上になるので、よく混ざるという同じ仮定の上では、流して置換のほうが窒素は必ず少なくて済む。使用例でも、0.03MPaG のケース5で差は約1.19倍に縮まるが、0.3MPaG のケース3では約2.9倍、4.0MPaG のケース6では約13倍に開いていた。それでも加圧置換が使われるのは、出口を設けにくい行き止まりの枝管や機器の奥にも、圧力をかければ窒素が押し込まれるからだ。どちらを選ぶかは配管の形で決まるので、量だけを比べられるよう両方を出している。

ガスの量を大気圧換算の m³ で出す理由

窒素の量は、0℃基準の Nm³ ではなく、温度補正をしない「大気圧に戻したときの体積」で出している。ボンベの数え方にそろえるためだ。47L容器・充填圧力14.7MPa の窒素ボンベは「7m³」として扱われる(国土交通省 関東地方整備局の資料 の表記)。これは 0.047 × (14.7 + 0.101) ÷ 0.101325 = 6.87m³ を丸めた値で、圧力の比だけで数えた量だ。消費量も同じ数え方で出せば、割り算でそのまま本数になる。

ボンベ1本で使える量は 7 × (14.7 − Pg) ÷ 14.7 とした。ボンベは配管の圧力より高い間しか窒素を送れず、配管と同じ圧力まで下がったぶんは中に残るからだ。流して置換は大気圧近くで流すので、7m³ を使い切れるものとして数える。

回数の切り上げに許容誤差を入れる理由

回数は ceil(切り上げ)で出すが、その前に 1e-9 だけ引いている。加圧する圧力を 0.4053MPaG にすると絶対圧は 0.506625MPa で大気圧のちょうど5倍、Patm/PH は1/5になる。目標を 20.95/125 = 0.1676% にすると、数学的にはちょうど3回で届く。ところが浮動小数点で回数の式を計算すると 3.0000000000000004 になり、そのまま切り上げると4回と数えてしまう。ちょうど届く回数を1回多く数えないよう、許容誤差を入れた。

計算例

ケース1(SGP 3区間+機器、不凍液30vol%)を順に追う。

65A: 内径 = 76.3 − 2×4.2 = 67.9 mm → 3.621 L/m × 40 m = 144.8 L
40A: 内径 = 48.6 − 2×3.5 = 41.6 mm → 1.359 L/m × 60 m = 81.55 L
25A: 内径 = 34.0 − 2×3.2 = 27.6 mm → 0.5983 L/m × 50 m = 29.91 L
配管 = 256.3 L、機器 200 L → 保有水量 456.3 L
原液 = 456.3 × 30/100 = 136.9 L、水 = 456.3 − 136.9 = 319.4 L

ケース3(STPG Sch40 2区間、0.3MPaG・目標1%)の窒素置換。

V = 142.5 L = 0.1425 m³
Patm / PH = 0.101325 / 0.401325 = 0.2525
回数 = ln(1/20.95) / ln(0.2525) = 2.21 → 切り上げて 3 回
残る酸素 = 20.95 × 0.2525³ = 0.337 %
1回の窒素 = 0.1425 × 0.3 / 0.101325 = 0.4219 m³ → 3回で 1.266 m³
ボンベ1本で使える量 = 7 × (14.7 − 0.3) / 14.7 = 6.857 m³ → 1 本
流して置換 = 0.1425 × ln(20.95) = 0.1425 × 3.042 = 0.4335 m³

配管の内容積を計算するツールは、ほかの計算機とどう分担しているか

配管の計算機と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、流速や圧力損失を出すタイプだと思う。あちらが答えるのは「水がどう流れるか」で、このツールが答えるのは「水が何リットル入っているか」。同じ配管を相手にしていても、問いがまったく違う。日本語の計算ツールが前者に偏っている事情は「なぜ作ったのか」の節で触れたとおりなので、ここでは同じサイトの関連ツールとの役割分担を整理しておく。

  • 配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径) は、1本の管について外径・肉厚・内径・内断面積・満水質量を引くための道具。このツールは同じ寸法表を使い、区間をいくつも並べて長さを掛け、系統全体の合計まで足し上げる。1本の素性を確かめたいならあちら、系統の合計が欲しいならこちらになる
  • 密閉配管 膨張タンク容量計算 は、系統水量を自分で入力してタンクの容量を選ぶ作りになっている。その「系統水量」の欄に入れる数字を作るのがこのツールの役目。配管と機器を足した合計をそのまま持っていけばいい
  • 不凍液(LLC)濃度・凍結温度・入替量 計算ツール は、目標の凍結温度から濃度を決めたり、いま入っている液を抜いて足すときの量を出したりする。濃度が決まったあと、系統全体に何リットルの原液が要るかを出すのはこちらで、二つは前後に並べて使う
  • タンク容量計算シミュレーター は、縦型・横型のタンクを鏡板の形まで含めて容量を出し、液面の高さごとの量も見られる。系統の途中に蓄熱槽や開放タンクがあるなら、あちらで容量を出して、このツールの機器の保有水量に足すとつながる

豆知識:呼び径の「A」「B」、ガス管、ボンベの「14.7」はどこから来たか

「A」と「B」は同じ管の二つの呼び方

配管用炭素鋼鋼管の規格(JIS G 3452)には、「呼び径は,A又はBのいずれかを用いる」という注記がある。数字の後ろにAかBの符号を付けて区別し、規格の中ではAで代表する、という決まりだ。B の欄には 1/2・3/4・1・1-1/4 のようにインチの分数が並び、下で触れるアメリカの呼び径(NPS)と同じ数字になっている。A の欄は 15・20・25・32 とミリの丸い数で、規格どおりなら「25A」と「1B」は同じ管を指す。

インチの番号は、もとは内径をそろえるためのものだった

アメリカのパイプ寸法(Nominal Pipe Size)の解説によると、番号はもともと当時の標準的な肉厚で内径がそろうように決められていた。その後、1927年に寸法の標準化の委員会が動き出し、肉厚の種類が増えていく。外径を固定して肉厚で強さを変える方式になったため、番号は内径とも外径とも直接は結びつかない「呼び名」になった。

「ガス管」という呼び名と、規格が書く用途

JIS G 3452 の適用範囲は「使用圧力の比較的低い蒸気,水(上水道用を除く。),油,ガス,空気などの配管」。ガスは並んだ用途の一つにすぎず、水も蒸気も空気も同じ管で通す。「ガス管」という通称だけを見て、ガス専用の管だと思わないほうがいい。

ステンレス管には独自の呼び方がある

建物の給水・給湯でよく見る一般配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3448)は、適用範囲に「給水,給湯,排水,冷温水,消火用水」を挙げる規格で、呼び方は「30Su」のように数字の後ろに Su を付ける。鋼管の15A・20A・25A・32Aとは別の系列だ。面白いのは細いサイズの外径で、13Su・20Su・25Su の外径 15.88・22.22・28.58mm は、銅管の15A・20A・25Aの外径と同じ数字になっている。ただし肉厚が違うので内径は別物で、20Su の内径 20.22mm は、使用例で並べた銅管LとMの20Aのちょうど間に入る。

窒素ボンベの「47L・14.7MPa・7m³」

窒素ボンベは、内容積47L・充填圧力14.7MPaの容器を「7m³」と呼んで手配するのが一般的で、国土交通省の資料にも「47㍑容器=7m³」と書かれている。14.7MPaという半端な数字は、圧力を kgf/cm² で表していた時代の 150 kgf/cm² を SI に直した値だ。ボンベの数え方とこのツールのガス量の数え方をそろえた理由は、上の「計算の仕組み」の節で説明している。

Tips:段取りで効く小さなコツ

  • 給水の流量は、実際に水を入れる口で測る。 10Lのバケツが満ちるまでの秒数を測れば、600 ÷ 秒数 で L/min になる。30秒なら20L/min。1回だと手元のもたつきが乗るので、3回測って真ん中の値を使うと安定する。散水栓と系統の給水口では出方が違うことがあるので、ホースをつないだ状態の先端で測るのがいい
  • 機器の保有水量は、銘板と仕様書の両方を探す。 チラーやボイラー、熱交換器の容量は、機器によって載っている場所も呼び名も違う。見つからなければ型番でメーカーに問い合わせるのが確実で、推測で埋めるよりずっと早い
  • 行き止まりの枝管は、末端の弁から抜く。 水張りでも窒素置換でも、流れが通り抜けない枝管には空気が残りやすい。計算上の回数を終えたら、枝管の末端で酸素濃度計を当てて確かめる。数字が下がらない枝があれば、その末端を開けて追加で抜く
  • 不凍液は缶の単位で1つ上に切り上げる。 計算に継手や弁の中の量は入っていないので、原液の量がちょうど缶の容量の倍数に収まっても、1缶多く手配しておく。余った分は補充用として現場に残せる

FAQ:配管の保有水量計算でよく聞かれること

架橋ポリエチレン管や冷媒配管の銅管は選べる?

寸法表には入れていない。架橋ポリエチレン管(JIS K 6769)は種類(XM・XE)と使用圧力(PN10・PN15)の組み合わせで寸法が分かれ、床暖房用にはメーカー独自の寸法も多いからだ。冷媒用の細い銅管も同じ扱いにしている。こうした管は管種で「内径を直接入力」を選び、メーカーのカタログの内径を入れてほしい。内径が載っていなければ、外径と肉厚から出す(求め方は「保有水量の求め方」の節のとおり)。たとえば内径16.0mmで100mなら、20.11L になる。

継手やバルブ、ストレーナの中の水は入っている?

入っていない。計算に使うのは直管の内径と長さだけだ。継手や弁の容積を一律の割合で上乗せする方法もあるが、根拠のある一律の値が見つからなかったので、勝手な割増はかけていない。足したいときは二つの方法がある。弁やストレーナの内容積がカタログに載っていれば、機器の保有水量の欄にその合計を加える。載っていなければ、継手の多い区間の長さを少し長めに入れて余裕を持たせる。どちらで足したかは、コピーした結果に一言書き添えておくと後で困らない。

窒素の量を Nm³ で知りたいときは?

このツールのガス量は、大気圧に戻したときの体積(m³)で出している。理由は「計算の仕組み」の節で書いたとおり、ボンベの7m³と同じ数え方にそろえるためだ。0℃基準の Nm³ が必要なら、ガスの温度で換算する。20℃のガスなら 273.15 ÷ (273.15 + 20) = 0.9318 を掛ければよく、約6.8%少ない値になる。夏場の屋外のように温度が高ければ差はもう少し開くので、報告書に Nm³ で書くときは何℃で換算したかを添えておくといい。

区間の長さを空のままにしたら、どう扱われる?

その区間は合計に入らない。たとえば SGP 50A を20m入れて、もう1行に SGP 25A を選んだまま長さを空にしておくと、合計は50Aの分だけの 43.96L になり、空の行は合計に入れていないことが分かるように示される。内径を直接入力する行で内径が空のときも同じ扱いだ。

不凍液の濃度に80 vol%と入れたら結果が消えた?

消えるのは不凍液の原液と水の量だけで、保有水量の合計はそのまま残る。濃度の入力は70 vol%までにしていて、範囲外のときは濃度の欄についての説明が出る。60 vol%を超えると凍結温度はほとんど下がらず、比熱と熱伝導率が落ちるので、濃くすれば安心というものでもない。濃度そのものは、不凍液のツールで目標の凍結温度から決めてから入れるのが順番だ。窒素置換の目標酸素濃度が空のときも、同じように窒素の結果だけが止まる。

入力した管の種類や長さは、どこかに送られる?

送られない。計算はすべて開いているブラウザの中で行っていて、入力した管種・呼び径・長さ・機器の水量・圧力などをサーバーに送る仕組みは持っていない。図面から拾った系統の構成が外に出る心配はない。結果を残したいときはコピー機能でテキストにして、施工計画書や試運転の記録に貼り付けてほしい。

まとめ:系統の水量から、段取りの数字まで

配管の保有水量は、区間ごとの内径と長さを足し上げ、機器の水量を加えれば決まる。その合計があれば、水張りの時間・不凍液の発注量・窒素ボンベの本数まで続けて出せる。1本の管の寸法を確かめるなら配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径)、出した系統水量でタンクを選ぶなら密閉配管 膨張タンク容量計算、濃度を凍結温度から決めるなら不凍液(LLC)濃度・凍結温度・入替量 計算ツール、蓄熱槽などの容量はタンク容量計算シミュレーターが受け持つ。

欲しい管種や機能があれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。冷温水の系統を拾ったとき、機器の保有水量が配管全部より大きかったことがある。原液を配管の分だけで頼んでいたら、濃度が半分近くまで薄まっていた。

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