脚の長さを足して切った電線管が、ボックスの手前で余る
天井から壁へ降ろす E19 の電線管。角の交点からボックスまでが 500mm、交点から天井側の端までが 300mm。だったら 800mm で切ればいい——そう考えてベンダーで90°に曲げ、壁に当ててみると、管が5cm余っている。切り直すか、もう1本無駄にするか。こういう場面、あるよね。
原因は単純で、管は角でカクッと折れていない。ベンダーの型に沿って、半径 R の円弧を描いて曲がる。角の交点まで行かずに手前から回り込むので、その分だけ管は要らなくなる。上の例を曲げ半径 R120 で計算すると、必要な長さは 748.5mm。脚の合計より 51.5mm 短い。この差がそのまま「余った5cm」の正体だ。
しかもこの差は、曲げ半径と角度で決まる。90°なら R の約0.43倍、30°なら R の約0.012倍。オフセットや3点サドルのように曲げを重ねると、角ごとに少しずつ効いてくる。
このページでは、1か所曲げ・オフセット・3点サドルの3つについて、曲げ半径を入れた切断長と、管のどこに印を付ければいいかを出す。電線管なら、その曲げ半径が規定を満たしているかもあわせて確かめられる。
「段差の2倍」で印を付けてきた人にこそ、半径を入れた数字を
電線管の曲げは、現場では早見で回ってきた。30°オフセットなら印の間隔は段差の2倍、45°なら1.414倍、縮みは段差の約0.27倍。覚えやすく、だいたい合う。ただ、自分で計算しようとすると引っかかる点が3つあった。
1つ目は、日本の管で引ける計算道具が見当たらないこと。「配管 曲げ 計算 アプリ」で探すと、出てくるのは英語のスマホアプリが中心で、米国の EMT(薄肉電線管)とインチが前提になっている。E19・C25・G28 のような日本の呼びを選んで外径が入る、という道具は見つからなかった。
2つ目は、早見の倍率がどれだけずれるのかを書いた資料が無いこと。倍率 1/sinθ は、角で折った多角形の値だ。実際の管は角を半径 R の円弧で回るので、1つの角あたり決まった量だけ短くなる。小さい角度なら誤差は1mm未満で済むが、45°・60° で R が大きいと十数mm〜数十mmになる。「だいたい合う」の「だいたい」が何mmなのか、手元で確かめる手段が欲しかった。
3つ目は、電線管には「曲げの内側半径は管内径の6倍以上」という決まりがあるのに、曲げ寸法の計算とは別々に扱われていること。R を小さくすれば脚は短く済むが、規定を割る。切断長を出すのと同じ画面で、その R が規定に収まっているかまで見られれば、手戻りが1つ減る。
というわけで、曲げ半径を入れた厳密な値と現場の早見を並べ、電線管の規定判定まで一度に出せるものを作った。
曲げると管が短くて済むしくみ(接線点法)
パイプ 曲げ 計算の出発点は「中心線の長さは変わらない」
管を曲げると、外側は引き伸ばされ、内側は押し縮められる。その間のどこかに、伸びも縮みもしない面がある。ベンダーで普通に曲げる範囲では、それは管の中心線にほぼ一致する。だから「曲げる前の管の長さ」=「曲げた後の中心線の長さ」と置いてよい。
ここから、計算は幾何の問題になる。曲げた管の中心線は「直線 → 半径 R の円弧 → 直線」のつながりだ。図面に描く寸法は、たいてい直線を延長して交わる点(角の交点)までの長さで決まっている。交点を結んだ多角形と、その角を円弧で丸めた実物の形。この2つの差を正しく数えれば、切断長が出る。
たとえ話をひとつ。車で交差点を左折するとき、交差点の中心まで直進してから90°向きを変える人はいない。手前からハンドルを切り、カーブを描いて曲がる。そのほうが走る距離は短い。管も同じで、ベンダーは交点の手前から「ハンドルを切り始め」、交点の先で「まっすぐに戻す」。この切り始めと戻す点が、円弧の両端の接線点だ。
接線長と円弧長 — 電線管 曲げ 縮みの正体
曲げ角を θ(まっすぐから何度曲げるか。L字なら90°)とする。交点から接線点までの長さ(接線長)と、円弧の長さは次のとおり。
T = R × tan(θ/2) // 接線長:角の交点 → 曲げ始め(曲げ終わり)
arc = R × θ // 円弧長:θ はラジアン
1か所曲げ(脚 A・B は管の中心線で、管端から角の交点まで)
切断長 = A + B − 2T + arc
縮み = (A + B) − 切断長 = 2T − arc
曲げ始め = A − T // 管端Aから測った位置
多角形では交点の手前と先に T ずつ、合計 2T の直線があった。実物ではそこが長さ arc の円弧に置き換わる。1つの角で中心線は 2T − R·θ だけ短くなる。これが「縮み」だ。R に比例するので、角度ごとの係数で覚えられる。90°なら 2·tan45° − π/2 = 0.4292 で、R の約0.43倍。R120 なら 51.5mm になり、冒頭の「余った5cm」と一致する。
脚を管の外側(曲がった先の管の背)で測っている場合は、もう1段の補正が要る。外側の線どうしの交点は、中心線の交点より各脚の方向に r·tan(θ/2)(r は管の半径=外径/2)だけ先にある。90°なら r そのもの。外側で測った脚から r·tan(θ/2) を引いて中心線の脚に直してから、上の式に入れる。
オフセット曲げ 計算 — 倍率 1/sinθ と縮み h·tan(θ/2)
オフセットは、同じ角度 θ の曲げを逆向きに2つ入れて、管を段差 h だけ平行にずらす曲げ方だ。角で折った多角形で考えると、2つの交点を結ぶ斜めの線の長さ D と、その水平方向の長さは
D = h / sinθ // 2つの交点の間(管に沿った長さ)
水平距離 = h / tanθ
早見の縮み = D − h/tanθ = h × tan(θ/2)
となる。D が「段差の何倍の間隔で印を付けるか」の早見で、h·tan(θ/2) が「まっすぐ置いたときより何mm余計に管が要るか」の早見。この2つが現場の倍率表の中身だ。
| オフセット角 θ | 間隔の倍率 1/sinθ | 縮みの係数 tan(θ/2) | 1つの角で中心線が短くなる量 |
|---|---|---|---|
| 10° | 5.759 | 0.0875 | 0.0004 × R |
| 22.5° | 2.613 | 0.1989 | 0.0051 × R |
| 30° | 2.000 | 0.2679 | 0.0123 × R |
| 45° | 1.414 | 0.4142 | 0.0430 × R |
| 60° | 1.155 | 0.5774 | 0.1075 × R |
実物は角が2つとも円弧になるので、切断長は多角形より 2 × (2T − R·θ) 短い。表の右端の列を2倍した分だけ、早見の切断長と縮みが大きめに出る。角度が小さいほど差は無視でき、45°・60°で効いてくる。
もう一つ、オフセットには作れる段差の下限がある。2つの曲げの間の直線 S = D − 2T が0を下回ると、円弧どうしが重なってしまう。この条件を段差に直すと h ≧ 2R(1 − cosθ)。R が大きく角度が大きいほど、小さな段差は越えられない。
3点サドルは、頂点が角の交点より下がる
3点サドルは、床を這う配管や梁の下端など、管の途中にある障害物をまたぐ曲げ方だ。端で α、中央で 2α(逆向き)、もう一方の端で α と、3つの曲げで山を作る。中央45°なら両端は22.5°、中央60°なら両端は30°。
ここで見落としやすいのが、中央の曲げも円弧だという点だ。角で折った山の頂点(交点)に対して、円弧の頂上はその内側を通る。下がる量は
頂点の下がり = R × (1/cosα − 1)
交点の高さ = h + R × (1/cosα − 1) // h:管の中心線を上げたい高さ
α=22.5°(中央45°)なら R の約0.082倍、α=30°(中央60°)なら約0.155倍。早見どおり交点の高さを h に置いて曲げると、管の頂上は h に届かない。障害物の高さを確実に越えるには、交点を h より上に置いて計算し直す必要がある。早見の縮み(両側合わせて 2h·tan(α/2))と中央の印の位置(L1 + h·tan(α/2))も、この補正の分だけ実物とずれる。
曲げ半径は中心線で、規定は内側で測る
最後に「R はどこの半径か」。上の式の R は、すべて管の中心線の曲げ半径だ。ベンダーの型(シュー)なら、溝の底までの半径に管の半径を足した値になる。一方、電線管の規定が言う曲げ半径は内側半径で、内側半径 = R − 外径/2。同じ「曲げ半径」という言葉で、測る場所が管の半径1本分違う。管の呼び方と寸法の関係は 電線管(Wikipedia) が概要をまとめている。
曲げ半径と切断長を外すと、何が無駄になるか
電線管 曲げ半径の規定は「内径の6倍」
電線管の曲げには、公共工事の仕様書に明文の決まりがある。公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 第2編 2.2.3 は、金属管について次のように定めている。
- 管の曲げ半径(内側半径)は、管内径の6倍以上とする
- 1か所の曲げ角度は90°を超えてはならない
- 分岐回路の配管1区間の屈曲箇所は4か所以下、曲げ角度の合計は270°以下
ただし書きとして、管の太さが25mm以下で施工上やむを得ない場合は、管内断面が著しく変形せず、ひび割れが生じない程度まで曲げ半径を小さくできる。
この決まりは見た目の問題ではない。電線管は、施工後に電線を引き入れ、何年か後には引き替える通り道だ。急な曲がりは電線との摩擦と側圧を増やし、引き入れの途中で被覆を傷める。曲がりの数と合計角度を制限しているのも同じ理由で、曲がりを重ねるほど引く力は大きくなる。オフセットは1回で2か所・サドルは3か所を使うので、ボックス間の1区間に3点サドルを1つ入れると、残りは1か所しかない。
R を小さくしすぎた E19 の例
E19 は外径19.1mm、内径16.7mm。規定の内側半径は 6×16.7 = 100.2mm で、中心線の R に直すと 109.75mm 以上が必要になる。中心線 R100 で曲げると内側半径は 90.45mm で、管内径の5.42倍。規定に約10mm届かない。R120 なら内側半径 110.45mm(内径の6.61倍)で収まる。
厄介なのは、規定の R は管種で変わることだ。同じ「19」でも、ねじなしの E19 は厚さ1.2mmで内径16.7mm、薄鋼の C19 は厚さ1.6mmで内径15.9mm。C19 の規定の内側半径は 95.4mm、中心線の R では 104.95mm 以上になる。外径は同じでも、内径が違えば必要な R も違う。呼びの数字だけで判断すると取り違える。
切断長と印がずれたときの実害
切断長を脚の合計で切ると、上で見たとおり曲げ1か所で R の0.43倍(90°)が余る。余れば切り直しで済むが、逆に早見で短めに切ってしまうと、その管は使えない。E19 程度なら材料費は小さいが、ねじ切り済みの G 管や、太い管、冷媒用の銅管になると話が変わる。
オフセットやサドルでは、印のずれが致命的になる。2つ目・3つ目の曲げ位置がずれると、段差の先がボックスのノックアウトに合わない、サドルの山が障害物の真上に来ない、といった形でしわ寄せが出る。曲げ位置の誤りは、切り直しでは取り返せない。
このツールが出番になる現場
露出配管で天井から壁へ降ろす90°曲げ。 天井スラブに沿って走ってきた E 管を、壁のスイッチボックスへ向けて直角に降ろす。交点からボックスまでの寸法は図面や実測で決まっているので、脚 A・B と R を入れれば切断長と曲げ始めの位置が出る。脚を管の背で測る癖がある人は、測り方を切り替えるだけでいい。
梁やダクトをかわすオフセット。 壁を這う管が、柱の出っ張りや既設のダクトに当たる。段差 h を測り、30°か45°のどちらでかわすかを決める。角度を変えたときに印の間隔と切断長がどう変わるか、早見とどれだけ違うかを並べて比べられる。
床の配管や梁の下端を越える3点サドル。 管の途中に障害物が1つだけある場合、3つの曲げで山を作る。障害物の中心の位置を L1 で入れると、中央の曲げの中心の位置と、両端の印が出る。頂点の下がりを補正した交点の高さも表示されるので、山が低すぎて当たる失敗を防げる。
エアコンの冷媒用銅管や、手すり・フレームの丸棒。 電線管以外でも幾何は同じだ。冷媒用の銅管は外径(φ9.52 など)で選べ、丸棒は外径を直接入れる。電線管の規定は対象外になり、代わりに R が外径の何倍かが表示される。
使い方は3ステップ
① 曲げ方と管を選ぶ。 1か所曲げ・オフセット・3点サドルから選び、管種(ねじなし・薄鋼・厚鋼の電線管、SGP、ステンレス管、銅管、丸棒・直接入力)と呼びを選ぶ。外径と、電線管なら内径が自動で入る。
② 曲げ半径と寸法を入れる。 曲げ半径 R は管の中心線の値で入れる。電線管なら「規定の最小値を入れる」で、内径6倍を満たすぎりぎりの R をセットできる。1か所曲げは曲げ角と脚 A・B(中心で測るか外側で測るかも選ぶ)、オフセットは角度・段差 h・前後の長さ L1/L2、サドルは中央の角度・越える高さ h・L1/L2 を入れる。
③ 切断長で管を切り、印を写す。 切断長と縮み、曲げごとの角度・曲げ始め・曲げ終わり・印の位置が表に並ぶ。表はタブ区切りでコピーでき、曲げた管の形と印の位置も図で表示される。
ベンダーには機種ごとの癖がある。端材で1回試し曲げをして、脚が何mm長く(短く)出たかを「試し曲げのずれ」に入れると、すべての印がその分だけ手前(先)にずれて表示される。
使用例:9つの曲げを実際に計算する
数値はすべてこのツールの計算結果で、長さは小数1桁で示す。
ケース1:E19 の90°曲げ(脚を管の中心で測る)
- 入力:E19、R120、90°、脚 A 500mm/B 300mm(中心)
- 結果:切断長 748.5mm、縮み 51.5mm、曲げ始め 380.0mm、曲げ終わり 568.5mm、最後の直線 180.0mm。内側半径 110.45mm は管内径16.7mm の6.61倍で、規定を満たす
- 解釈:脚の合計 800mm で切ると 51.5mm 余る。曲げ始めは管端Aから 380.0mm、つまり交点の120mm(=接線長)手前だ。
ケース2:同じ寸法を管の外側(背)で測った場合
- 入力:ケース1と同じで、脚の測り方だけ「管の外側」
- 結果:切断長 729.4mm、縮み 70.6mm。中心線の脚は A・B とも管の半径 9.55mm ずつ短く扱われ、曲げ始めもケース1の 380.0mm から 9.55mm 手前になる
- 解釈:同じ「500と300」でも、背で測った寸法なら切断長は 19.1mm 短い。縮みの差 70.6 − 51.5 = 19.1mm は外径そのもの(90°では外径 × tan45°)。測り方を取り違えると、管1本分の外径だけ長さが狂う。
ケース3:試し曲げで脚が5mm長く出たベンダー
- 入力:ケース1と同じで、試し曲げのずれ +5mm
- 結果:切断長 748.5mm(変わらず)、曲げ始め 380.0mm、印 375.0mm
- 解釈:ベンダーの目印に合わせて曲げると脚が5mm長く出る癖なら、印を5mm手前に付ければよい。切断長は幾何で決まるので動かない。動くのは印だけだ。
ケース4:SGP 25A の90°曲げ
- 入力:配管用炭素鋼管 25A(外径34.0mm)、R140、90°、A 400mm/B 400mm
- 結果:切断長 739.9mm、縮み 60.1mm、曲げ始め 260.0mm、曲げ終わり 479.9mm。R は外径の4.12倍。電線管ではないので最小曲げ半径の判定は対象外
- 解釈:縮みは 0.4292 × 140 の 60.1mm。管が太くても、縮みを決めるのは外径ではなく R だ。
ケース5:銅管 φ9.52(冷媒3分)の90°曲げ
- 入力:銅管 外径9.52mm、R38、90°、A 200mm/B 150mm
- 結果:切断長 333.7mm、縮み 16.3mm、曲げ始め 162.0mm、曲げ終わり 221.7mm、最後の直線 112.0mm。R は外径の3.99倍
- 解釈:細い銅管は R が小さいので縮みも16mm程度。とはいえ室内機の接続口まで寸法がシビアな場面では、16mm は無視できない。
ケース6:E19 を R100 で曲げて規定を割る
- 入力:E19、R100、90°、A 500mm/B 300mm
- 結果:切断長 757.1mm、縮み 42.9mm、曲げ始め 400.0mm。内側半径 90.45mm は管内径の5.42倍で、規定の 100.2mm に届かず「R 不足」と判定。規定を満たす中心線の R は 109.75mm 以上と表示される
- 解釈:R を小さくすると縮みは 51.5mm → 42.9mm に減り、脚も短く済む。だが規定は割る。計算は止めずに結果を出し、そのうえで不足を知らせる。
ケース7:E25 の30°オフセット(段差100mm)
- 入力:E25、R160、30°、段差 h 100mm、L1 300mm/L2 300mm
- 結果:切断長 796.1mm(早見 800.0mm、差 3.9mm)、縮み 22.9mm(早見 26.8mm)、曲げの中心の間隔 198.0mm(早見 h×2.000 = 200.0mm)、1つ目の印 257.1mm、2つ目の印 455.2mm、曲げ間の直線 114.3mm。この R と角度で作れる最小の段差は 42.9mm。内側半径 147.3mm は内径23.0mm の6.40倍で規定内
- 解釈:30°は早見がよく効く角度で、印の間隔の差は2.0mm。切断長は早見で切っても 3.9mm 長いだけだ。
ケース8:E25 の45°オフセット(段差100mm)
- 入力:ケース7と同じで、角度だけ45°
- 結果:切断長 727.7mm(早見 741.4mm、差 13.8mm)、縮み 27.7mm(早見 41.4mm)、曲げの中心の間隔 134.5mm(早見 h×1.414 = 141.4mm)、1つ目の印 233.7mm、2つ目の印 368.3mm、曲げ間の直線 8.9mm。作れる最小の段差は 93.7mm
- 解釈:同じ段差でも45°にすると、早見との差は切断長で13.8mm、印の間隔で6.9mm に広がる。曲げ間の直線は 8.9mm しか残らず、段差100mm はこの R で作れるぎりぎりに近い。
ケース9:C31 の3点サドル(中央45°・障害物100mm)
- 入力:C31、R190、中央45°(両端22.5°)、越える高さ h 100mm、L1 600mm/L2 600mm
- 結果:切断長 1235.9mm(早見 1239.8mm)、縮み 35.9mm(早見 39.8mm)、中央の曲げの中心 617.9mm(早見 619.9mm)、角の交点の高さ 115.7mm、端と中央の曲げの中心の間隔 297.6mm(早見 h×2.613 = 261.3mm)。印は 283.0mm・543.3mm・878.3mm。内側半径 174.1mm は内径28.6mm の6.09倍で規定内
- 解釈:中央の印のずれは1.9mm と小さいが、曲げの中心の間隔は早見より 36.3mm 広い。頂点を100mm に上げるには交点を 115.7mm に置かねばならず、そのぶん両端の曲げを外へ離す必要があるからだ。早見の間隔で印を付けると、山の頂上が障害物の高さに届かない。
9ケースを並べると、早見との差は「90°の1か所曲げで R の0.43倍」「30°オフセットで数mm」「45°オフセットで十数mm」「サドルは間隔そのものが数十mm変わる」と、曲げ方と角度でまるで違うことが分かる。
計算の仕組み:接線点法を選んだ理由と検算
候補にした3つの手法
管の曲げ寸法の出し方は、大きく3つ考えられる。
- 多角形の早見:角で折った形のまま、倍率 1/sinθ と縮み h·tan(θ/2) で寸法を出す。暗算できるのが強みだが、曲げ半径を一切見ていない
- 接線点法:管の中心線を「直線+半径 R の円弧」のつながりとして扱い、各円弧の両端(接線点)を管端からの距離で求める
- 塑性加工の式:曲げで中立軸が内側へ移動する量や、管の伸びまで含める。理屈の上では最も精密だが、管種・肉厚・ベンダーごとの係数が要り、その公表値が見当たらない
採ったのは2の接線点法だ。ベンダーで曲げる範囲では中心線の長さがほぼ保たれるので、R を入れるだけで早見の弱点(半径の無視)が消える。3の補正は、係数を推定で置くと「精密そうに見えて根拠が無い数字」になる。それよりも、ベンダー固有の癖は試し曲げで実測して「試し曲げのずれ」として印に反映するほうが、現場では確実だ。曲げ戻り(スプリングバック)も同じ理由で、計算ではなく試し曲げの角度合わせに任せている。
計算フロー
// 1. 管の寸法:管種と呼び → 外径 OD(電線管は内径 ID = OD − 2×厚さ も)
// 2. 共通のガード:10 ≦ R ≦ 2000、R > OD/2(内側が潰れる R は不可)
// 3. 規定判定(電線管のみ):内側半径 R − OD/2 ≧ 6 × ID か
// 4. モード別:角で折った多角形を作り、角ごとに接線点を置く
// 1か所曲げ:外側測りなら脚を中心線に直す → 曲げ始め = A − T
// オフセット:S = D − 2T ≧ 0 を確認 → 曲げ1・曲げ2の始点と終点
// サドル :交点の高さを h + R(1/cosα − 1) に上げてから多角形を作る
// いずれも 曲げ始め < 0(管端より手前)ならエラーと必要な最小長さを返す
// 5. 印 = 曲げ始め − 試し曲げのずれ
式そのものは上の基礎の節で導いたとおりで、ここでは順序だけを持つ。工夫したのは、エラーを「計算できない」で終わらせないことだ。オフセットの段差が小さすぎて円弧が重なるなら、その R と角度で作れる最小の段差を一緒に返す。たとえば E25・R160・60° で段差100mm なら「作れる段差は 160.0mm から」、C31・R190・中央45° で障害物20mm なら「越えられる高さは 28.9mm から」と出る。脚が接線長より短いときも、必要な最小の脚を入力と同じ測り方で返す。
規定の判定は、逆に止めない。R が規定を割っていても切断長と印は出し、そのうえで不足を知らせる。ただし書き(25mm以下の管)が使える現場もあるからだ。
早見との差はどこから来るか
オフセットでは、差の出どころは角ごとの 2T − R·θ だけで、2つの角の分を足したものが切断長の差になる。同じ E25・R160・段差100mm で角度を変えると、切断長の差は10°で 0.1mm、30°で 3.9mm、45°で 13.8mm。段差を200mm にした60°では 34.4mm になる。表の「1つの角で中心線が短くなる量」が角度とともに急に増えるのが、そのまま効いている。
サドルは事情が違う。角ごとの差に加えて、頂点の下がりを補うために交点そのものを持ち上げている。C31・R190・中央45° の例では、切断長の差は 3.9mm と小さいのに、曲げの中心の間隔は早見より 36.3mm 広い。切断長だけ見て「早見で十分」と判断すると、印の位置で外す。
幾何で独立に検算した
式の取り違えを防ぐため、式とは別の方法で同じ形を作って突き合わせた。管の中心線を「直線 → 半径 R の円弧(2000分割)→ 直線…」として実際に座標でたどり、終点の位置と全長を求める方法だ。
- オフセット5ケース(10°・22.5°・30°・45°・60°)で、終点の高さが段差 h に、水平位置が管端どうしの水平距離に、たどった全長が切断長に一致した
- 3点サドル2ケース(中央45°・60°)で、中心線の最高点がちょうど 100.000mm、その位置が L1 に一致し、終点の高さは0に戻った
- 1か所曲げでは、2本の直線を延長した交点までの距離が、中心線の脚 A・B に一致した
差はいずれも表示桁未満だった。円弧の両端が直線に接する、という 接線 の性質だけを使った方法なので、式とは独立に結果を確かめられる。
印の補正は、すべての曲げで管端Aを同じ側にしてベンダーにかける前提で、曲げ始めから一律に「試し曲げのずれ」を引いている。
パイプ曲げ計算アプリ・オフセット倍率表との違いと、隣のツールとの役割分担
冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおり、日本の電線管の呼びで引ける曲げ計算は見当たらない。ここでは、実際に手に取られている道具と何が違うのかを事実ベースで並べておく。
**英語の iOS アプリ(QuickBend など)**は、曲げの種類が豊富で、ベンダーに合わせた印の出し方まで作り込まれている。ただし前提は米国の EMT(薄肉の電線管)とインチで、E19・C31・G28 のような日本の呼びは選べない。呼びを外径・内径に読み替え、インチに直して入れる手間がかかるうえ、「内側半径は管内径の6倍以上」という公共建築工事標準仕様書の判定も無い。このツールは呼びを選べば外径と内径が入り、電線管なら判定まで同じ画面に並ぶ。
オフセットの倍率表や、それを電卓にしたアプリ(Pipe Offset Calculator Pro など)は、段差に倍率を掛けるだけなので速い。代わりに曲げ半径は入らず、切断長も印も R を無視した値になる。このツールは早見の切断長を横に並べて出すので、早見を捨てるのではなく「手元の早見がどれだけずれるか」を確かめる使い方ができる。
サイト内の隣のツールとは、扱う対象が重ならないように分けている。
- 板金曲げ展開長カリキュレーターは、平板を L・Z・コの字・ハットに折るときの展開長を、板厚と中立軸係数から出す。板の曲げと管の曲げでは伸びない層の取り方が違うので、管の切断長はこちらで、板の展開長はあちらで出す
- **板金展開図メーカー(円錐・レデューサ・エビ曲げ・相貫)**は、管を曲げずに切って継ぐときの型紙を出す。ベンダーに掛からない太い管や、型の R より急に曲げたい箇所はエビ曲げになるので、切り口はそちらで描く
- 電線管サイズ判定シミュレーターは、入れる電線の占有率から管の太さを決める。太さが決まったら、その呼びをこちらに入れて曲げる
- ケーブル引込み張力・側圧計算は、曲がりを含む管路にケーブルを引き込むときの張力と側圧を出す。曲がり区間には角度と曲げ半径を入れるので、こちらで決めた曲げをそのまま渡せる(向こうの半径は m 単位)
- **配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径)**は、配管の呼び径から外径・肉厚・内径を引く。SGP と銅管の外径はこちらと同じ値だが、ステンレス管は向こうが Sch 系の JIS G 3459、こちらが給水・給湯で現場曲げする一般配管用の JIS G 3448 で、同じ「20」でも外径が違う
ヒッキー・定尺3,660mm・2分3分 ― 管曲げの現場の言葉
手曲げのベンダーを「ヒッキー」と呼ぶわけ
電線管を差し込んで、てこの要領で曲げる手動の道具を、日本の電気工事の現場では「ヒッキー」と呼ぶ。英語の hickey から来た呼び名で、英語の辞書にもちゃんと「電線管や管をなめらかな半円状に曲げる道具」という意味が載っている(Wiktionary: hickey)。面白いのは、同じ単語に「名前の思い出せない物」という俗語の意味もあることだ。「なんとかいうやつ」を指す doohickey はそこからの派生語で、語源そのものは辞書でも「不明」とされている。道具の名前が「あれ」「なんとかいうやつ」と同じ単語というのは、いかにも現場の言葉らしい。
電線管の長さが 3,660mm という半端な数字
JIS C 8305 は、鋼製電線管の長さを 3,660mm(許容差±5mm)と決めている(JIS C 8305:2019 8.2)。メートル法の規格なのに、4,000 でも 3,600 でもない。JIS は由来までは書いていないが、12フィートをメートルに直すと 3,657.6mm で、ほぼこの長さになる。なお同じ条文には「受渡当事者間の協定によって変更できる」とも書かれていて、定尺はあくまで標準だ。現場の「1本」は 3.66m なので、通しで曲げたい区間の切断長がこれを超えるなら、どこかでカップリングを入れて継ぐことになる。曲げを継ぎ目の前後どちらに置くかは、この長さを頭に置いて割り付ける。
「ねじなし」は、管の端にねじを切らないという意味
E 管の正式名は「ねじなし電線管」だ。JIS C 8305 は、厚鋼・薄鋼電線管を「両端におねじを切る管」、ねじなし電線管を「両端にねじが無い管」として定義している。だから接続はねじ込みではなく、カップリングやボックスコネクタの側面にある止めねじで管を締め付けて留める。「ねじを一切使わない」のではなく、「管にねじを切らない」という意味だ。ねじ山を刻む前提が無いぶん肉厚は薄鋼より薄く、切断や手曲げがしやすい。露出配管でよく見かけるのはこのためでもある。
呼びの数字は、厚鋼が内径・薄鋼とねじなしが外径
電線管の呼びは、種類によって基準が違う。厚鋼(G)は内径に近い偶数、薄鋼(C)とねじなし(E)は外径に近い奇数で呼ぶ。たとえば G28 は内径 28.3mm、C31 は外径 31.8mm だ。呼びの数字だけを見て「28 と 31 なら 31 のほうが中が広い」と考えると、比べている寸法そのものが違うことになる。
冷媒用銅管の「2分」「3分」
エアコンの冷媒配管では、銅管を「2分(にぶ)」「3分(さんぶ)」と呼ぶ。ここでの1分は1インチの8分の1で、2分は1/4インチ=外径 6.35mm、3分は3/8インチ=外径 9.52mm を指す。尺貫法の「分」(1寸の10分の1)とは割り方が違う。ややこしいのは水道用の銅管で、こちらは「3/8B」と呼ぶ管の外径が 12.70mm と、冷媒の3分とは別の管になる。同じ「3/8」が別の太さを指すので、このツールの銅管は呼びではなく外径の数字で並べている。
パイプベンダーで曲げるときの現場のコツ
1. 印は管の全周に回す。 点を1つ打つだけだと、管をベンダーに差し込んで回した拍子に印が下に隠れる。マーカーで1周ぐるりと線を引くか、テープを巻いてその縁を印にすると、どの向きからでも読める。テープなら曲げ終わったあと剥がせば跡も残らない。
2. 管の長手方向に、まっすぐな基準線を1本引いておく。 オフセットやサドルの2つ目以降は、管を軸まわりに180°回して同じ側から曲げる。このとき回し方がわずかでも狂うと、2つの曲げが同じ平面に乗らず、管が横にねじれて逃げる(英語圏の現場でいうドッグレッグ)。曲げる前に管の背へまっすぐ1本線を引き、毎回その線が真上か真下に来るように合わせると、回転角を目で確かめられる。
3. 試し曲げは端材で、ベンダーと管の組み合わせごとに1回。 端材に印を付けて90°に曲げ、床と壁の入隅に当てて、立ち上がった脚を差し金で測る。狙いとの差がそのベンダーの癖だ。値はベンダーの柄にテープで書いておくと、次の現場で測り直さずに済む。同じベンダーでも管径や管種が変わると癖も変わるので、組み合わせごとに控えておく。
4. 曲げすぎるより、浅めに止めて追い込む。 足りない角度は追い曲げで足せるが、曲げすぎを逆向きに戻すと、内側にしわが寄ったり断面が楕円につぶれたりしやすく、めっきも傷む。狙いの少し手前で止め、水準器や傾斜計で角度を見ながら足していくほうが、結局は早い。
パイプ・電線管の曲げ寸法計算のよくある質問
曲げ半径の欄には、ベンダーのどの寸法を入れればいい?
入れるのは管の中心線の半径だ。ベンダーの型(管を沿わせる円弧の部分)に刻まれた値や取扱説明書の値が、内側の半径なのか中心線の半径なのかは製品によって違うので、まずそこを確かめてほしい。資料が見当たらないときは、端材を90°に曲げて紙の上に置き、内側の円弧を写し取ってコンパスを合わせれば内側の半径が読める。中心線の半径への直し方は上の基礎の節のとおりだ。結果には内側の曲げ半径も出るので、ベンダーの内側の値と直接突き合わせられる。
1か所曲げの脚は、管の中心まで測る? 外側(背)まで測る?
どちらでも入れられる。寸法の測り方で「中心」か「外側」を選ぶだけだ。壁やボックスの面から巻尺を当てると、測れるのは管の背(外側)までになることが多いので、その場合は外側を選ぶ。図面の芯寸法から拾うなら中心を選ぶ。選び間違えると、管の太さに応じた分だけ脚がずれ、太い管ほど差が大きくなる。同じ脚の値で測り方だけを変えたときの差は、使用例の E19 の90°曲げを中心と外側で比べた2ケースを見てほしい。オフセットとサドルは段差と前後の長さで入れるので、この選択は無い。
オフセットやサドルの結果が、倍率の早見と数mm違うのはなぜ?
早見が曲げ半径を無視しているからで、差の出方は上の「計算の仕組み」の節で説明したとおりだ。このツールは早見の切断長も並べて出すので、手元の早見表で出した数字とのずれをその場で確かめられる。どちらで切るかは、ベンダーの曲げ半径が分かっているかで決めるとよい。R が分かっていて試し曲げのずれも合わせてあるなら、R を入れた値のほうが実物に近い。R が分からないうちは、曲げ半径を変えながら差がどれだけ動くかを見ておくと、早見のままで済むかの見当がつく。サドルの中央の印がどれだけ動くかは、使用例の C31 の3点サドルのケースを見てほしい。
合成樹脂管(VE管・PF管)の曲げにも使える?
対象外にしている。このツールの計算は、ベンダーの型に沿って一定の半径で曲がることが前提だ。VE管は温めて手で曲げるので曲がりの半径が一定にならず、PF管・CD管はもともと可とう性があり、印を付けて決まった寸法に曲げる使い方をしない。管種の一覧が電線管(E・C・G)、SGP、ステンレス管、銅管、丸棒・直接入力に限られているのはこのためだ。なお「内側半径は管内径の6倍以上」という決まりは、公共建築工事標準仕様書で合成樹脂管にも同じ倍率がかかる。VE管の曲げ半径を確かめたいだけなら、管内径の6倍を手計算で出してほしい。直接入力では電線管の判定は出ない。
90°を超える曲げや U 字、ローリングオフセットは計算できる?
1か所曲げは 1〜170°まで入れられる。180°の U 字は2本の脚が平行になって交点が決まらず、脚の測り方を別に決める必要があるので扱っていない。ローリングオフセット(上下と左右に同時にずらす段違い)と4点サドルも、いまは対象外だ。電線管で90°を超える角度を入れると、1か所の曲げを90°以下にする仕様書の決まりに触れる旨の注意が出る(鋼管・銅管・丸棒では出ない)。計算そのものは行うので、2か所に分けるかの判断材料に使ってほしい。曲げ戻り(スプリングバック)の補正も入れていないので、角度は実物で確かめながら追い込む。
入力した管の寸法や計算結果は、どこかに送られる?
送られない。計算はすべて開いているブラウザの中で行い、入力した管の種類や寸法、計算結果をサーバーへ送る処理は無い。現場の図面から拾った寸法をそのまま入れても外には出ない。曲げの表をコピーしたときも、内容は手元のクリップボードに入るだけだ。結果を残しておきたいときは、曲げの表をコピーして表計算ソフトやメモアプリに貼っておくと、角度・曲げ始め・曲げ終わり・印が列に分かれたまま残る。
まとめ:切断長と印はここで、管の太さと引き込みは隣のツールで
管の曲げ寸法は、曲げ半径を入れて初めて実物と合う。このツールは電線管・鋼管・ステンレス管・銅管・丸棒の1か所曲げ、オフセット、3点サドルについて、切断長と印の位置、早見との差、電線管の最小曲げ半径の判定までを1画面で出す。管の太さは電線管サイズ判定シミュレーター、曲げた管路に通すときの張力はケーブル引込み張力・側圧計算、配管の外径は配管サイズ換算ツール(呼び径A・B・外径・内径)で確かめられる。管を切って継ぐエビ曲げの型紙は板金展開図メーカー(円錐・レデューサ・エビ曲げ・相貫)、平板の曲げは板金曲げ展開長カリキュレーターが受け持つ。
使っていて実物と合わない寸法や、欲しい曲げ方があれば、お問い合わせページから知らせてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。早見の倍率で足りると思っていたが、曲げ半径160mmの45°オフセットで印の間隔が6.9mm、3点サドルでは曲げの間隔が36mm以上ずれると分かり、半径を入れた値と早見を並べて出すことにした。
運営者情報を見る