PDFの許容電流表をめくる時代は終わった
「CV 38sqの管路布設、周囲温度45℃で3条並べたときの許容電流、いくつだっけ?」——幹線設計の最中にこんな問いが浮かぶと、メーカーのPDFカタログを開いて表を探し、温度補正係数をかけて、さらに多条減少係数を掛け算する……という3段階の手計算が待っている。
電卓を叩くたびに「補正係数を間違えていないか」が不安になる。しかも条件を変えて再検討するたびに同じ作業をもう一回。
ケーブル許容電流 早見・計算ツールは、ケーブル種類・布設方法・温度・多条数を選ぶだけで、JCS 0168に基づく許容電流を即表示するツール。逆引きモードで「この電流に耐えられるサイズは?」という問いにもワンタップで回答する。
なぜケーブル許容電流ツールを開発したのか
メーカーPDFとの格闘
電気設備の設計では、ケーブルの許容電流を頻繁に確認する。CV、CVT、IVなど種類ごとに別のPDF表があり、布設方法によってまた別のページを参照する。周囲温度が基準値と違えば補正テーブルも別ページ。これを1回の幹線選定で3〜5回繰り返すのが当たり前だった。
あるとき、工場の動力回路設計で「CV 60sq、管路、周囲50℃、4条」の許容電流を求めようとして、温度補正と多条減少の掛け算を間違えた。幸い図面チェックで気づいたが、もし施工後に過電流が流れていたら——と思うとぞっとする。
既存ツールへの不満
Excel表は共有しにくいし、バージョン管理が面倒。Web上の許容電流ツールも探したが、ほとんどがCVの気中布設だけ対応で、管路・直埋を網羅していない。温度補正を自動計算してくれるものはさらに少ない。逆引き(必要電流→サイズ)に対応したものは見つからなかった。
こだわった設計判断
- 7種類のケーブル対応: CV(単心・2心・3心)・CVD・CVT・IV・HIVをカバー。CV系は JCS 0168-2 の表の値を、心数と布設方法ごとにそのまま持っている。XLPE系とPVC系で温度補正計算を自動切替
- 布設方法の自動フィルタ: IV・HIVは地中布設と、ケーブルラック・ピットへの直置きが不可(絶縁電線はがいし引きか管・ダクトに収める)。選択不能にすることで設計ミスを防止
- 逆引き機能: 「この負荷電流に耐えられる最小サイズは?」——実務で最も多い問いにダイレクトに回答
- 基準温度の自動切替: CV系の気中布設は40℃、地中布設は25℃、IV・HIV(内線規程の表)は30℃を基準に自動セット。ケーブル種類や布設方法を変えるだけで温度補正も再計算される
ケーブルの許容電流とは何か — 許容電流 基本原理
ケーブル 許容電流 とは
ケーブルの許容電流とは、ケーブルに連続して流しても絶縁体が熱的に損傷しない最大の電流値のこと。
電流が導体を流れると、電気抵抗によってジュール熱(I²R)が発生する。この熱はケーブルの絶縁体を通って外部に放散されるが、電流が大きすぎると絶縁体の温度が許容上限を超えてしまう。
身近な例でたとえると、冬に使う電気毛布を思い浮かべてほしい。設定温度を上げすぎると毛布自体が熱くなりすぎて、中の電熱線を覆う被覆が劣化するリスクがある。ケーブルも同じで、「流していい電流の上限」が物理的に決まっている。
絶縁体の耐熱温度 — CV と IV で何が違うか
ケーブルの許容電流を左右する最大の要素は、絶縁体の種類と最高許容温度だ:
| 絶縁種別 | 対象ケーブル | 最高許容温度 |
|---|---|---|
| 架橋ポリエチレン(XLPE) | CV, CVT, CVD | 90℃ |
| ビニル(PVC) | IV | 60℃ |
| 耐熱ビニル(二種ビニル) | HIV | 75℃ |
XLPE系は90℃まで耐えられるため、同じ導体断面積でもPVC系より大きな電流を流せる。もう1つ注意したいのは、表の基準周囲温度が違うことだ。CV系の表(JCS 0168)は気中40℃が基準だが、IV・HIVの表(内線規程)は30℃が基準になっている。IV 14sqのがいし引き88Aは30℃の値で、40℃では補正係数0.82を掛けて約72Aになる。逆にPVC系は価格が安く、低圧の分岐回路によく使われる。
許容電流を決める3つの条件
- 導体断面積: 太いほど抵抗が小さく、発熱が少ない → 許容電流が大きい
- 布設方法: 気中自由空間なら放熱しやすく許容電流が大きい。管路内や密閉空間では放熱が悪化する
- 周囲温度: 気温が高いほど放熱能力が下がり、許容電流は小さくなる
許容電流の基本式:
I = I_base × K_temp × K_bundle
I_base : 基準条件の許容電流(JCS 0168テーブル値)
K_temp : 温度補正係数
K_bundle: 多条布設の電流減少係数
布設方法 許容電流 違い — 放熱条件の比較
布設方法によって許容電流は大きく異なる。同じCVT 38sqで比較するとその差がよくわかる:
| 布設方法 | 許容電流 (CVT 38sq) | 基準の周囲温度 | 放熱条件 |
|---|---|---|---|
| 気中・暗きょ | 155 A | 40℃ | 最良(まわりの空気へ放熱) |
| 電線管(気中) | 110 A | 40℃ | 管の中の空気がこもる |
| 直埋 | 180 A | 25℃ | 土へ放熱。地温が低いぶん大きい |
| 管路(2孔1条) | 145 A | 25℃ | 管の中の空気と土の二重の壁 |
電線管に入れるだけで、気中の約7割に下がる。地中の値は基準温度が25℃なので、そのまま気中の値と比べられない点にも注意したい。電線管の中のケーブルに気中の許容電流を当ててしまうのは、実務でよくある設計ミスの一つだ。
ケーブル 許容電流 規格 — JCS 0168とは
JCS 0168は日本電線工業会(JCMA)が制定する「電力ケーブルの許容電流」に関する規格だ。1960年代に初版が制定され、ケーブルの絶縁材料や布設方法の変化に合わせて改訂を重ねてきた。
JCS 0168の特徴は、IEC 60287(国際規格)をベースにしつつ、日本の気候条件(基準気温40℃)に合わせた温度補正体系を採用している点。一方、絶縁電線のIV・HIVは内線規程の表(周囲温度30℃基準)が使われるので、同じツールの中でも基準温度が2通りある。
CV・CVT・CVD 許容電流 早見表(JCS 0168-2)
600V CV系ケーブルの許容電流を、JCS 0168-2(日本電線工業会規格)の布設方法ごとの表でまとめた。数値はこのツールが計算に使っている値そのもので、電線メーカー2社(昭和電線・フジクラ・ダイヤ)の技術資料・カタログと1行ずつ照合してある。どれも**1回線(1条)・導体最高許容温度90℃**の値だ。
CV・CVT 許容電流(気中・暗きょ・周囲40℃)
ケーブルラックの上やピット(暗きょ)の中も、この表を使う。ラックに何本も並べるなら、後半で説明する多条布設の減少係数を掛ける。
| 公称断面積 | CV 単心(3本1回線) | CV 2心 | CV 3心 | CVD | CVT |
|---|---|---|---|---|---|
| 2sq | 31A | 28A | 23A | — | — |
| 3.5sq | 44A | 39A | 33A | — | — |
| 5.5sq | 58A | 52A | 44A | — | — |
| 8sq | 72A | 65A | 54A | 66A | 62A |
| 14sq | 100A | 91A | 76A | 91A | 86A |
| 22sq | 130A | 120A | 100A | 120A | 110A |
| 38sq | 190A | 170A | 140A | 165A | 155A |
| 60sq | 255A | 225A | 190A | 225A | 210A |
| 100sq | 355A | 310A | 260A | 310A | 290A |
| 150sq | 455A | 400A | 340A | 400A | 380A |
| 200sq | 545A | 485A | 410A | 490A | 465A |
| 250sq | 620A | 560A | 470A | 565A | 535A |
| 325sq | 725A | 660A | 555A | 670A | 635A |
| 400sq | 815A | — | — | 765A | 725A |
| 500sq | 920A | — | — | 880A | 835A |
CV単心は3本を平らに並べて1回線(中心間隔 S=2d)とした値だ。単心3本を撚り合わせたCVTは、同じ太さのCV単心3本より1〜2割小さく、一括シースのCV 3心より1割強大きい。
CV・CVT 許容電流(電線管・気中・周囲40℃)
電線管1本にケーブルを1条だけ通した値。気中に置いたときの7割前後になる(CVT 38sqで155A → 110A)。
| 公称断面積 | CV 2心 | CV 3心 | CVD | CVT |
|---|---|---|---|---|
| 2sq | 23A | 19A | — | — |
| 3.5sq | 31A | 26A | — | — |
| 5.5sq | 41A | 35A | — | — |
| 8sq | 51A | 43A | 48A | 45A |
| 14sq | 70A | 59A | 69A | 63A |
| 22sq | 93A | 77A | 92A | 82A |
| 38sq | 135A | 110A | 125A | 110A |
| 60sq | 175A | 150A | 165A | 150A |
| 100sq | 245A | 210A | 230A | 215A |
| 150sq | 320A | 265A | 310A | 275A |
| 200sq | 390A | 335A | 370A | 340A |
| 250sq | 455A | 380A | 435A | 395A |
| 325sq | 540A | 450A | 505A | 475A |
| 400sq | — | — | 580A | 535A |
| 500sq | — | — | 675A | 615A |
CV・CVT 許容電流(直埋・周囲25℃)
| 公称断面積 | CV 単心(3本1回線) | CV 2心 | CV 3心 | CVD | CVT |
|---|---|---|---|---|---|
| 2sq | 38A | 39A | 32A | — | — |
| 3.5sq | 52A | 54A | 45A | — | — |
| 5.5sq | 66A | 69A | 58A | — | — |
| 8sq | 81A | 85A | 71A | 87A | 79A |
| 14sq | 110A | 115A | 97A | 120A | 100A |
| 22sq | 140A | 150A | 125A | 155A | 130A |
| 38sq | 190A | 205A | 170A | 210A | 180A |
| 60sq | 245A | 260A | 215A | 270A | 230A |
| 100sq | 325A | 345A | 285A | 360A | 305A |
| 150sq | 405A | 435A | 360A | 450A | 380A |
| 200sq | 470A | 505A | 420A | 525A | 445A |
| 250sq | 525A | 570A | 470A | 590A | 500A |
| 325sq | 605A | 650A | 540A | 675A | 570A |
| 400sq | 670A | — | — | 750A | 635A |
| 500sq | 745A | — | — | 830A | 705A |
CV・CVT 許容電流(管路・周囲25℃)
CV単心は4孔の管路に3条(1回線)、それ以外は2孔の管路に1条を入れた値。CV単心の管路は100sq以上しか表にない。
| 公称断面積 | CV 単心(4孔3条) | CV 2心 | CV 3心 | CVD | CVT |
|---|---|---|---|---|---|
| 2sq | — | 28A | 24A | — | — |
| 3.5sq | — | 40A | 33A | — | — |
| 5.5sq | — | 52A | 43A | — | — |
| 8sq | — | 64A | 53A | 65A | 59A |
| 14sq | — | 88A | 74A | 90A | 81A |
| 22sq | — | 115A | 97A | 115A | 105A |
| 38sq | — | 160A | 130A | 160A | 145A |
| 60sq | — | 210A | 170A | 210A | 185A |
| 100sq | 310A | 280A | 230A | 285A | 250A |
| 150sq | 390A | 355A | 295A | 360A | 320A |
| 200sq | 460A | 420A | 350A | 430A | 380A |
| 250sq | 520A | 475A | 395A | 490A | 430A |
| 325sq | 600A | 550A | 455A | 570A | 500A |
| 400sq | 670A | — | — | 635A | 560A |
| 500sq | 750A | — | — | 715A | 645A |
周囲温度が違うときの補正係数
表の値は、気中・電線管が周囲40℃、直埋・管路が25℃のものだ。周囲温度が違うときは次の係数を掛ける(JCS 0168-2)。このツールは同じ係数を後半の式で連続的に計算している。
| 周囲温度 | 20℃ | 25℃ | 30℃ | 35℃ | 40℃ | 45℃ | 50℃ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 気中・電線管(基準40℃) | 1.18 | 1.14 | 1.10 | 1.05 | 1.00 | 0.95 | 0.89 |
| 直埋・管路(基準25℃) | 1.04 | 1.00 | 0.96 | 0.92 | 0.88 | 0.83 | 0.78 |
地中の値を夏の気温(40℃前後)で読むと、0.88を掛けることになる。表の数字をそのまま使うと1割あまり大きく見積もるので注意したい。
なぜ許容電流が設計で重要か — ケーブル 許容電流 設計基準
過電流が引き起こす事故
ケーブルの許容電流を超えた電流が流れ続けると、絶縁体の温度が許容上限を超える。XLPE絶縁は90℃を超えると軟化・変形が始まり、最悪の場合は絶縁破壊による短絡(ショート)が発生する。これが電気火災の原因になる。
電気設備に関する技術基準を定める省令第57条では、低圧電路に地絡が生じた場合の遮断規定を定めており、ケーブルの許容電流を正しく把握することは遮断器の選定にも直結する。
内線規程とJCS 0168の関係
実務で参照する許容電流値は、日本電線工業会規格 JCS 0168(電力ケーブルの許容電流)がベースになっている。内線規程もこの値を引用しており、ブレーカーの定格電流がケーブルの許容電流を超えないように設計する必要がある。
たとえば、CV 3心 14sq の気中(周囲40℃)での許容電流は76A。ここに20A定格のブレーカーを付けるなら余裕があるが、60A定格にするなら温度補正と多条減少を考慮した補正後許容電流が60A以上であることを確認しなければならない。
設計に影響する比較例
| 条件 | CVT 38sq 気中 | CVT 38sq 電線管 | 差 |
|---|---|---|---|
| 基本許容電流(40℃) | 155 A | 110 A | ▲45 A |
| +45℃補正 | 147 A | 104 A | ▲43 A |
| +3条減少 | 103 A | 73 A | ▲30 A |
同じ38sqでも、布設方法と条件が変わると許容電流は半分近くまで下がりうる。この感覚を数字で持っておくことが、安全なケーブル選定の第一歩だ。
📘 第二種電気工事士の技能試験対策に(PR)
許容電流の感覚は数値表で覚えるより、実際にIV・VVF・VVRを切って圧着してみる方が早い。第二種電気工事士の技能試験ではこれら基本ケーブルを実際に扱うので、独学なら電光石火ブランド 電気工事士技能試験セット(電池屋)のような対策キットで一通り結線を経験しておくと、現場で許容電流を見たときの判断に厚みが出る。
ケーブル許容電流ツールが活躍する場面
幹線設計時のケーブルサイズ選定
ビルや工場の幹線設計で、負荷電流からケーブルサイズを決める場面。逆引きモードで必要電流を入力すれば、条件を加味した推奨サイズが即座に分かる。
既設ケーブルの増設余裕確認
既に敷設済みのケーブルに負荷を追加したい場面。正引きモードで現在のケーブル仕様と布設条件を入力し、補正後の許容電流と増設後の負荷電流を比較すればよい。
高温環境下のケーブル選定
ボイラー室や機械室など、周囲温度が50℃を超える特殊環境。温度を変更するだけで補正後の値が再計算され、必要な1サイズアップの判断が即座にできる。
ブレーカー定格との整合チェック
ブレーカーの定格電流がケーブルの補正後許容電流以下であることを確認する場面。このツールとブレーカー・電線サイズ一括選定を併用すると、ブレーカー↔ケーブルの整合が取れる。
基本の使い方 — 3ステップで許容電流を確認
ステップ1: モードを選ぶ
「正引き」はサイズから許容電流を調べたいとき。「逆引き」は必要電流からサイズを決めたいとき。
ステップ2: ケーブル条件を選択
ケーブル種類(CV 単心・2心・3心、CVD、CVT、IV、HIV)と布設方法を選ぶ。正引きならサイズも選択、逆引きなら必要電流を入力する。
ステップ3: 結果を確認
補正条件(温度・多条数)を必要に応じて変更すると、結果がリアルタイムで更新される。コピーボタンで結果をクリップボードに取り込める。
具体的な使用例と検証データ — ケーブル 許容電流 計算例
ケース1: オフィスビルの幹線(CV 3心 60sq・管路・40℃・1条)
- 入力: CV 3心, 60sq, 地中(管路), 40℃, 1条
- 結果: 基本170A(周囲25℃の値)→ 温度補正 sqrt((90-40)/(90-25)) = 0.877 → 補正後 149.1 A
- 解釈: 地中の表は25℃が基準なので、夏の地温を40℃と見ると1割あまり下がる。表の170Aをそのまま使うと、150Aの負荷で余裕があるように見えてしまう
ケース2: 工場動力回路(CVT 38sq・ラック・50℃・4条)
- 入力: CVT, 38sq, ケーブルラック, 50℃, 4条
- 結果: 基本155A(気中の値)→ 温度補正0.894 → 多条減少0.65 → 補正後 90.1 A
- 解釈: 高温 + 多条の二重補正で基本値の約58%まで低下。90A以上の負荷ならサイズアップが必要
ケース3: 地中埋設(CVT 100sq・直埋・25℃・1条)
- 入力: CVT, 100sq, 地中(直埋), 25℃, 1条
- 結果: 基本305A → 温度補正1.000 → 補正後 305.0 A
- 解釈: 地中の基準温度は25℃なので補正なし。同じ100sqでもCV単心3本(1回線)を平らに並べれば325Aで、CVTは6%ほど小さい
ケース4: 逆引き — 負荷150Aに耐えるCVT(気中・45℃・2条)
- 入力: 逆引き, CVT, 気中(自由空間), 150A, 45℃, 2条
- 結果: 温度補正0.949 → 多条減少0.80 → 必要な基本許容電流 197.6A → 推奨サイズ 60sq(基本210A → 補正後159.4A)
- 解釈: 同じ条件でCV 3心を選ぶと、60sqは190Aで足りず 100sq まで上がる。一括シースの3心は放熱が悪いぶん、同じ電流に1サイズ太いケーブルが要る
ケース5: ボイラー室の高温環境(IV 5.5sq・気中・55℃・1条)
- 入力: IV, 5.5sq, 気中, 55℃, 1条
- 結果: 基本49A(内線規程・周囲30℃の値)→ 温度補正 sqrt((60-55)/(60-30)) = sqrt(0.167) = 0.408 → 補正後 20.0 A
- 解釈: IVは最高許容温度60℃と低いため、高温環境での影響が極めて大きい。55℃で許容電流は基本値の4割まで落ちる。表の49Aは周囲30℃の値なので、40℃基準のつもりで補正すると0.500と出て、24.5Aと2割以上大きく見積もってしまう。注意点として、ボイラー室のように55℃を超える環境ではIVの使用自体を避け、HIVやCV(耐熱90℃)への変更を検討すべきだ。よくある間違いは、温度補正を忘れてIVの基本許容電流だけで設計してしまうこと。
ケース6: 冷房完備の電気室(CV 単心 100sq・気中・30℃・1条)
- 入力: CV 単心(3本で1回線), 100sq, 気中(自由空間), 30℃, 1条
- 結果: 基本355A → 温度補正 sqrt((90-30)/(90-40)) = sqrt(1.2) = 1.095 → 補正後 388.9 A
- 解釈: 基準温度40℃より10℃低い環境では、温度補正が1.0を超えて許容電流が約10%増加する。冷房管理された電気室ではこの有利な条件を活かしてケーブルサイズを1ランク落とせる可能性がある。ただし、停電時に冷房が停止して室温が上昇する可能性を考慮し、非常用回路では40℃で計算するのが安全側だ。
仕組み・アルゴリズム — 許容電流 温度補正 計算の詳細
候補手法の比較
許容電流の温度補正には2つのアプローチがある:
- テーブル補間方式: あらかじめ温度ごとの補正係数テーブルを用意し、中間値は線形補間。JCS 0168の公式テーブルに忠実だが、テーブルにない温度では誤差が生じる
- 理論式(sqrt式): 物理原理に基づく連続関数で、任意の温度に対して正確な値を計算可能
本ツールは 理論式(sqrt式) を採用した。理由は以下の通り:
- 任意の周囲温度に対応可能(テーブルにない33℃や47℃も正確に計算)
- JCS 0168のテーブル値と理論式の差は±1%以内
- 実装がシンプルで検証が容易
温度補正係数の計算式
K_temp = sqrt((θ_max - θ_a) / (θ_max - θ_0))
θ_max : 最高許容導体温度(XLPE=90℃, IV=60℃, HIV=75℃)
θ_a : 実際の周囲温度
θ_0 : 基準周囲温度(CV系: 気中=40℃, 地中=25℃ / IV・HIV: 30℃)
計算例: CV・気中・45℃の場合
θ_max = 90℃(XLPE)
θ_0 = 40℃(気中基準)
θ_a = 45℃
K_temp = sqrt((90 - 45) / (90 - 40))
= sqrt(45 / 50)
= sqrt(0.9)
= 0.949
基準温度(40℃)より5℃高いだけで、許容電流は約5%低下する。温度の影響は直感以上に大きい。
多条布設の電流減少係数
複数のケーブルが近接して布設されると、互いの発熱で放熱が悪化する。本ツールは条数ごとに次の減少係数を掛ける。ケーブルを束ねたり密着させたりした場合を想定した、安全側の値だ:
| 条数 | 減少係数 |
|---|---|
| 1条 | 1.00 |
| 2条 | 0.80 |
| 3条 | 0.70 |
| 4条 | 0.65 |
| 5条 | 0.60 |
| 6条 | 0.57 |
6条を超える場合、本ツールでは6条時の0.57を適用し、概算値である旨の警告を表示する。
ケーブルラックの上に1段で並べる場合は、並べる間隔しだいでこの係数より緩くなる。JCS 0168-1(日本電線工業会規格)の気中・水平1段の低減率は、ケーブルの中心間隔Sが外径dと同じ(隙間なし)なら2条0.85・3条0.80・4〜6条0.70、S=2dなら2〜3条0.95・4〜6条0.90だ。7〜20条を1段に並べる場合も表があり、S=dで0.70・S=2dで0.80になる(昭和電線の技術資料に JCS の表として載っている)。ラック幅の算定式はケーブル間に10mmの隙間を見込んでいるので、太いケーブルほどS=dに近く、細いケーブルほどS=2dに近づく。本ツールの係数で足りれば安全側、足りないときはこの低減率で見直す余地がある。
最終的な補正後許容電流
I_corrected = I_base × K_temp × K_bundle
例: CVT 38sq、ラック、50℃、4条
I_base = 155 A(気中の値)
K_temp = sqrt((90-50)/(90-40)) = 0.894
K_bundle = 0.65
I_corrected = 155 × 0.894 × 0.65 = 90.1 A
他のツールとの違い — ケーブル許容電流ツール 比較
メーカーPDFとの違い
メーカーPDFは正確だが、条件を変えて再検討するたびにページを探し直す手間がある。本ツールはプルダウンを変えるだけで即再計算。温度補正・多条減少も自動適用される。
Excel許容電流表との違い
Excelは柔軟だがファイル管理が煩雑。スマホでは使いにくいし、共有時にマクロが壊れることもある。本ツールはブラウザだけで動き、外部通信もなし。
逆引き機能の独自性
「150Aの負荷に対して何sqが必要?」——この逆引きに対応したWebツールはほとんどない。ブレーカー定格からケーブルサイズを決める実務フローに直結する機能だ。
豆知識 — CVケーブルの歴史と架橋ポリエチレン
CVケーブルが主流になった理由
1960年代まで、電力ケーブルの主流はOFケーブル(油浸絶縁紙ケーブル)だった。絶縁にオイルを使うため、接続部からの油漏れや環境問題が課題だった。
架橋ポリエチレン(XLPE)は、ポリエチレンの分子鎖を化学的に架橋(クロスリンク)することで耐熱性を飛躍的に向上させた素材。最高許容温度が90℃とPVCの60℃を大きく上回り、同じ断面積でより大きな電流を流せるようになった。
1970年代以降、CVケーブルは急速に普及し、現在では低圧から高圧までの電力ケーブルの標準仕様になっている。
CVT(トリプレックス)の使い分け
CVTは3本の単心CVケーブルを撚り合わせた構造。単心3本を並べて敷設する工法に比べて省スペースで施工性が良い。ただし互いの発熱の影響で許容電流はCV単心3本(平積)より1〜2割小さい。一方、3心を1本のシースにまとめたCV 3心よりは1割強大きく、端末処理も楽なので、幹線ではCVTがよく選ばれる。
IVとHIVの棲み分け
IV(ビニル絶縁電線)は最も安価な電線で、分電盤内の渡り線や小規模な分岐回路によく使われる。HIV(二種ビニル絶縁電線)は耐熱PVCを使い、IVより約20%高い許容電流を持つ。ボイラー室など高温環境での配線にはHIVを選ぶケースが多い。
Tips — ケーブルサイズ選定の実務ポイント
1サイズアップの判断基準
補正後の許容電流が負荷電流ギリギリ(余裕10%未満)の場合、将来の負荷増設を考慮して1サイズアップを検討するのが安全策。ケーブルのコスト差は工事費全体の数%に過ぎないことが多い。
温度測定のコツ
周囲温度は「ケーブルが布設される場所の最高温度」を使うのが原則。屋内の天井裏は夏場50℃を超えることもある。設備メンテナンス時に温度ロガーで実測しておくと設計精度が上がる。
多条布設を減らす工夫
同一ルートに多条のケーブルを布設すると減少係数で大幅に許容電流が下がる。ルートを分散できないか、ラックの段数を増やせないかを先に検討すると、ケーブルのサイズダウンにつながりコスト削減になる場合がある。
電圧降下との両立
許容電流だけ満たしても、長距離の回路では電圧降下が問題になる。電圧降下・配線太さチェッカーと併用して、両方の基準を満たすサイズを選定するのが実務の鉄則だ。
FAQ — ケーブル許容電流に関するよくある質問
CV単心・CVT・CV 3心で許容電流が違うのはなぜ?
放熱のしやすさが違うからだ。CV単心3本を間隔を空けて並べると、それぞれが四方へ熱を逃がせるので最も大きい。CVTは3本が撚り合わされて密着するぶん1〜2割小さく、CV 3心は3本を1本のシースに収めるのでさらに1割ほど小さい。気中・周囲40℃の38sqなら、単心190A・CVT 155A・3心140Aだ。ツールでは3つを別の種類として選べる。
温度補正係数が1.0を超える場合があるのはなぜ?
基準周囲温度(CV系は気中40℃・地中25℃、IV・HIVは30℃)より実際の温度が低い場合、温度補正係数は1.0を超える。たとえばCVの気中で30℃なら約1.10になり、許容電流は基本値より10%増える。冷房が効いた電気室などでは有利に働く。IV・HIVは表そのものが30℃の値なので、30℃では補正は1.0のままだ。
本ツールのデータはどの規格に基づいている?
CV系(CV単心・2心・3心、CVD、CVT)は JCS 0168-2 の表の値で、気中・暗きょと電線管は周囲40℃、直埋と管路は25℃が基準だ。前半の早見表と同じ数字を使っている。ケーブルラックとピットは JCS に別の表がないので気中の値を使い、ラックに並べる本数は多条布設の減少係数で見る。IV・HIVは内線規程の表(周囲30℃)の値だ。最終的な設計判断にはメーカーの技術資料を必ず確認してほしい。
入力データは外部に送信される?
一切送信しない。すべての計算はブラウザ内のJavaScriptで完結しており、サーバーとの通信は発生しない。オフライン環境でも動作する。
6条を超える多条布設の場合はどうすれば?
本ツールでは6条超は6条時の減少係数(0.57)を概算値として適用する。7条以上の正確な減少係数はケーブルメーカーの技術資料に記載があるので、そちらを参照してほしい。並列ケーブルの本数を減らす(ルートの分散)も有効な対策だ。
まとめ
ケーブルの許容電流は、電気設備設計の安全を担保する最も基本的な数値。温度補正と多条減少を含む補正計算を手作業で行うのはミスの温床になる。
このツールで条件入力→即結果確認のサイクルを回せば、設計の精度とスピードが両立する。ブレーカー選定にはブレーカー・電線サイズ一括選定、電圧降下の確認には電圧降下・配線太さチェッカーもあわせて活用してほしい。
ケーブルの許容電流について分からないことがあれば、お問い合わせページから連絡してほしい。