板金曲げ展開長カリキュレーター

板厚・曲げ角度・内Rから展開長と伸び量を自動算出

板厚・曲げ角度・内R・中立軸係数λから展開長と伸び量を自動算出。L曲げ・Z曲げ・コの字曲げ・ハット曲げの4パターンに対応し、SVGプレビューで直感的に寸法確認。

曲げパターン

曲げ後の断面形状

材質・板厚

一般的な鉄板。λ=0.38が標準

材質で自動設定。通常0.3〜0.5

寸法・角度

全曲げ箇所共通

外寸法

外寸法

展開図プレビュー

L曲げ(曲げ1箇所)46.80AR126.80B展開長 77.07 mm直線部曲げ伸び

計算結果

展開長77.07mm
直線部合計73.60mm
曲げ伸び合計3.47mm

内訳

直線A46.80mm
直線B26.80mm
曲げ伸び13.47mm
本ツールは中立面基準法による理論値を算出するものであり、実際の展開長は金型・プレス条件・材料ロットにより異なる場合がある。試し曲げによる補正を推奨する。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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📘 板金加工に役立つ書籍・工具

「展開図、3 mm 短かった」——材料を無駄にする前に

板金部品の試作で図面を引き、プレスブレーキで曲げた瞬間に気づく。「フランジが足りない」「穴位置がズレてる」——原因の大半は展開長の計算ミスだ。CADで自動展開できる環境ならいいが、現場で手計算している工場や、見積もり段階でサッと検算したい設計者には、ブラウザでポンと叩けるツールがほしい。

板金曲げ展開長カリキュレーターは、板厚・曲げ角度・内R・中立軸係数λを入力するだけで、L曲げ・Z曲げ・コの字曲げ・ハット曲げの4パターンの展開長をリアルタイムで算出する。SVGプレビューで展開図を視覚的に確認でき、結果はワンタップでクリップボードにコピーできる。

なぜ板金展開長カリキュレーターを作ったのか

開発のきっかけ

前作の「プレス曲げ力カリキュレーター」で加圧力の計算はできるようになったが、そもそも「ブランク材を何 mm で切り出すか」——つまり展開長——を間違えると、金型のトン数が合っていても仕上がりはNG。展開長の計算は板金加工の最初の一歩であり、ここを外すとすべてが狂う。

既存のWebツールを5つほど調べたが、L曲げしか対応していないもの、中立軸係数λを入力できないもの、結果しか表示されず内訳(直線部と曲げ伸び)が見えないものばかり。CADTOOL のような有料ソフトは高機能だが、現場でスマホから使いたい場面には重すぎる。

こだわった設計判断

  • 4パターン対応: L曲げだけでなく、Z曲げ・コの字・ハットまでカバー。試作板金で頻出する形状を網羅
  • 材質プリセット: SPCC/SUS304/A5052/SECCを選ぶだけでλが自動設定される。「λっていくつ?」と迷う時間をゼロに
  • 内訳表示: 展開長の合計だけでなく、直線部と曲げ伸び量を個別に表示。どこで何 mm 伸びているかが一目瞭然
  • SVG展開図プレビュー: 直線部(青)と曲げ伸び部(オレンジ)を色分けしたバーで展開図を視覚化

板金の展開長とは何か — 中立面と曲げ係数λの基礎

展開長 とは

板金を曲げると、外側は引き伸ばされ、内側は圧縮される。この「伸びも縮みもしない面」を中立面(ニュートラルプレーン)と呼ぶ。展開長とは、この中立面に沿った全長のこと。ブランク材(曲げる前の平板)をこの長さで切り出せば、曲げた後に設計通りの寸法になる。

日常の例で言えば、段ボール箱を開いて平らにしたときの長さが「展開長」だ。段ボールは厚みがあるから、折り目の部分は単純な直線の足し算にならない。金属板でもまったく同じ原理が働く。

中立軸係数 λ(ラムダ)とは

中立面の位置は板厚方向のちょうど真ん中(λ=0.5)ではなく、内側にオフセットしている。この比率を表すのが中立軸係数λだ。

中立面の位置 = 内R + λ × t
  内R: 曲げ内側の半径
  t  : 板厚
  λ  : 中立軸係数(0.3〜0.5程度)

λの値は材質・板厚・内R/t比によって変わる。一般に内R/tが小さい(きつい曲げ)ほどλは小さくなり、ゆるい曲げではλ≒0.5に近づく。実務では以下の値がよく使われる:

材質λ(推奨値)備考
SPCC(冷間圧延鋼板)0.38最も一般的
SUS304(ステンレス)0.40やや硬い
A5052(アルミ)0.35柔らかい
SECC(電気亜鉛めっき)0.38SPCCと同等

参考: 板金加工の基礎 — Wikipedia

曲げ伸び量 の計算式

曲げ部分の弧長(曲げ伸び量)は、中立面の半径と曲げ角度から求まる:

曲げ伸び量 = (内R + λ × t) × 2π × θ / 360
  θ: 曲げ角度(°)

90°曲げの場合、θ=90なので × π/2 になる。この弧長が「曲げた分だけ材料が消費される長さ」だ。

直線部 の計算(外寸基準法)

辺の外寸から板厚と内Rを控除して直線部を求める。端辺と中間辺で控除量が異なる:

端辺の直線部   = 外寸 − t − 内R
中間辺の直線部 = 外寸 − 2 × (t + 内R)

中間辺は両端に曲げがあるため、控除が2倍になる点がポイントだ。

展開長ミスが招くコスト増 — 実務で「あと1 mm」が致命傷になる理由

材料ロスと再加工コスト

展開長を間違えると、ブランク材の切り出し寸法がずれる。短く切りすぎればフランジ長不足で使い物にならない。長すぎれば追加トリミングが必要になり、工数が増える。量産品ならブランク材×数百枚がすべて不良になる可能性もある。

穴位置ズレ

展開長がずれると、曲げ後の穴位置もずれる。板金部品はボルト穴やタップ穴で他の部品と組み合わせることが多く、1 mm のズレが組立不良の原因になる。

JIS B 0408(板金プレス加工品の普通寸法公差)

JIS B 0408では、板金プレス部品の寸法公差として曲げ寸法0.5〜1.0 mm程度のばらつきを許容しているが、展開長の計算誤差がこの公差帯を超えてしまえば不良品になる。理論計算で公差内に収め、試し曲げで微調整する——このワークフローが基本だ。

こんな場面で使える板金展開長カリキュレーター

  • 試作見積もり: 図面を受け取ったらまず展開長を出して、材料寸法と歩留まりを概算。ブランク材のコストを素早く見積もる
  • 現場での検算: 3D CADの展開値が正しいか、中立面基準法で手計算的にクロスチェック。「CADのλ設定が違っていた」事故を防ぐ
  • 教育・研修: 板金加工の新人教育で「なぜこの長さになるか」を説明するとき、SVGプレビューで直線部と曲げ伸びの内訳を見せると理解が早い
  • プレスブレーキのセットアップ: 曲げ順序を考える前に、展開長と各辺の直線部を確認。金型配置の計画が立てやすい

基本の使い方 — 3ステップで展開長を算出

  1. パターンを選ぶ — L曲げ・Z曲げ・コの字・ハットから形状を選択。断面プレビューで形状を確認
  2. 材質と板厚を入力 — 材質を選ぶとλが自動設定される。板厚は小数点OK(例: 1.6, 2.3)
  3. 辺の外寸と曲げ条件を入力 — 各辺の外寸法(mm)、曲げ角度(°)、内R(mm)を入力すると、展開長・伸び量・SVGプレビューがリアルタイムで表示される

具体的な使用例 — 6ケースで検証

ケース1: SPCC t1.6 L曲げ 90°

  • 条件: A=50 mm, B=30 mm, 内R=1.6 mm, λ=0.38, θ=90°
  • 直線A: 50 − 1.6 − 1.6 = 46.80 mm
  • 直線B: 30 − 1.6 − 1.6 = 26.80 mm
  • 曲げ伸び: (1.6 + 0.38 × 1.6) × π/2 = (1.6 + 0.608) × 1.5708 = 3.47 mm
  • 展開長: 46.80 + 3.47 + 26.80 = 77.07 mm

ケース2: SUS304 t2.0 L曲げ 90°

  • 条件: A=100 mm, B=50 mm, 内R=2.0 mm, λ=0.40, θ=90°
  • 直線A: 100 − 2.0 − 2.0 = 96.00 mm
  • 直線B: 50 − 2.0 − 2.0 = 46.00 mm
  • 曲げ伸び: (2.0 + 0.40 × 2.0) × π/2 = 2.80 × 1.5708 = 4.40 mm
  • 展開長: 96.00 + 4.40 + 46.00 = 146.40 mm

ケース3: A5052 t1.0 Z曲げ 90°

  • 条件: A=40 mm, B=20 mm, C=40 mm, 内R=1.0 mm, λ=0.35, θ=90°
  • 直線A: 40 − 1.0 − 1.0 = 38.00 mm
  • 直線B: 20 − 2×(1.0 + 1.0) = 16.00 mm
  • 直線C: 40 − 1.0 − 1.0 = 38.00 mm
  • 曲げ伸び×2: (1.0 + 0.35 × 1.0) × π/2 × 2 = 1.35 × 1.5708 × 2 = 4.24 mm
  • 展開長: 38.00 + 16.00 + 38.00 + 4.24 = 96.24 mm

ケース4: SPCC t1.6 コの字曲げ 90°

  • 条件: A=25 mm, B=50 mm, C=25 mm, 内R=1.6 mm, λ=0.38, θ=90°
  • 直線A: 25 − 1.6 − 1.6 = 21.80 mm
  • 直線B: 50 − 2×(1.6 + 1.6) = 43.60 mm
  • 直線C: 25 − 1.6 − 1.6 = 21.80 mm
  • 曲げ伸び×2: (1.6 + 0.608) × π/2 × 2 = 6.94 mm
  • 展開長: 21.80 + 43.60 + 21.80 + 6.94 = 94.14 mm

ケース5: SECC t1.2 ハット曲げ 90°

  • 条件: A=20 mm, B=30 mm, C=60 mm, D=30 mm, E=20 mm, 内R=1.2 mm, λ=0.38, θ=90°
  • 直線A: 20 − 1.2 − 1.2 = 17.60 mm
  • 直線B: 30 − 2×(1.2 + 1.2) = 25.20 mm
  • 直線C: 60 − 2×(1.2 + 1.2) = 55.20 mm
  • 直線D: 30 − 2×(1.2 + 1.2) = 25.20 mm
  • 直線E: 20 − 1.2 − 1.2 = 17.60 mm
  • 曲げ伸び×4: (1.2 + 0.456) × π/2 × 4 = 1.656 × 1.5708 × 4 = 10.41 mm
  • 展開長: 140.80 + 10.41 = 151.21 mm

ケース6: SPCC t3.2 L曲げ 60°(鋭角曲げ)

  • 条件: A=80 mm, B=40 mm, 内R=3.2 mm, λ=0.38, θ=60°
  • 直線A: 80 − 3.2 − 3.2 = 73.60 mm
  • 直線B: 40 − 3.2 − 3.2 = 33.60 mm
  • 曲げ伸び: (3.2 + 1.216) × 2π × 60/360 = 4.416 × 1.0472 = 4.62 mm
  • 展開長: 73.60 + 4.62 + 33.60 = 111.82 mm

仕組みとアルゴリズム — 外寸加算法 vs 中立面基準法

2つの手法の比較

板金の展開長を求める方法は大きく2つある:

① 外寸加算法(簡易法)

各辺の外寸をそのまま足し、曲げ部分を経験的な「曲げ補正値」で調整する方法。現場のベテランが「SPCC t1.6 の90°曲げなら伸び=3.5 mm」と覚えている値を使う。手軽だが、板厚や内Rが変わると補正値も変わるため汎用性が低い。

② 中立面基準法(本ツールの採用手法)

中立面の位置を 内R + λ × t で求め、その弧長を計算する方法。板厚・内R・λの3パラメータから理論的に展開長を算出するため、条件が変わっても計算式が同一。再現性と汎用性に優れる。

本ツールでは②を採用した。理由は:

  • 板厚・角度・内Rの任意の組み合わせに対応できる
  • 材質ごとのλ値を変えるだけで異種材にも適用可能
  • 計算過程が透明で、検算しやすい

計算フロー

1. 入力: パターン, 辺の外寸[], 板厚t, 内R, λ, θ
2. 直線部の算出:
   端辺: L_straight = 外寸 − t − 内R
   中間辺: L_straight = 外寸 − 2(t + 内R)
3. 曲げ伸び量の算出:
   L_bend = (内R + λ × t) × 2π × θ / 360
4. 合計:
   展開長 = Σ直線部 + Σ曲げ伸び量

計算例(SPCC t1.6 L曲げ 90°)

t = 1.6, 内R = 1.6, λ = 0.38, θ = 90°
中立面R = 1.6 + 0.38 × 1.6 = 2.208
曲げ伸び = 2.208 × 2π × 90/360 = 2.208 × π/2 = 3.468 mm
直線A = 50 − 1.6 − 1.6 = 46.8
直線B = 30 − 1.6 − 1.6 = 26.8
展開長 = 46.8 + 3.468 + 26.8 = 77.07 mm

他のツールとの違い

比較項目本ツールCADTOOLExcel自作他のWebツール
曲げパターン4種多数自作次第L曲げのみが多い
λ値の入力○(材質プリセット+手動)△(自作次第)✕(固定値が多い)
内訳表示○(各辺+各曲げ)
SVGプレビュー○(3D)
費用無料有料無料無料
スマホ対応

本ツールの強みは「無料でスマホ対応、4パターン+λ入力+内訳表示」が揃っている点。CADTOOLほどの高機能はないが、展開長の検算や見積もり用途なら十分実用的だ。

豆知識 — 知っておくと曲げ加工が楽になる

スプリングバック

材料の弾性回復により、曲げた後に角度がわずかに開く現象。SUS304はスプリングバックが大きく、90°に曲げたいなら金型を88°程度にセットすることが多い。展開長には直接影響しないが、最終寸法の精度に関わるため要注意。

最小曲げ半径

材質ごとに「これ以下の内Rで曲げると割れる」限界がある。SPCCならR≧1t(板厚と同等以上)、SUS304ならR≧1.5t程度が目安。本ツールでは内R/t比が1未満の場合に警告を表示する。

参考: 曲げ加工の基礎知識 — 日本塑性加工学会

板目方向(ロール目)の影響

圧延された板金には方向性がある。板目に対して直角方向に曲げるのが原則で、平行に曲げると割れやすい。展開長の計算値は板目に依存しないが、加工の可否に影響するので図面指示で方向を指定する。

Tips — 展開長を精度よく出すためのコツ

  • λ値は試し曲げで補正する: プリセット値はあくまで標準値。量産前に試し曲げして実測値とのズレからλを逆算すると、精度が格段に上がる
  • 内R=板厚に合わせる: 特に指定がなければ内R=t(板厚)にしておくと、金型選定がシンプルになり、展開長の予測精度も安定する
  • 外寸 vs 内寸に注意: 本ツールは外寸法基準で計算する。図面が内寸法で記載されている場合は 外寸 = 内寸 + t に換算してから入力する
  • ハット曲げは対称チェック: ハット形状はA=E、B=Dの対称形が多い。対称でない場合はケガキ方向の確認を忘れずに

FAQ

曲げ角度は「外角」と「内角」のどちらを入力する?

本ツールの曲げ角度は「曲げた分の角度」つまり外角基準。90°のL曲げなら90と入力する。180°の場合は完全な折り返し(ヘミング曲げ)になる。

中立軸係数λはどうやって決めればいい?

まずは材質プリセットの推奨値を使い、試し曲げで実測値と比較する。ズレがあれば「展開長の実測値」から逆算してλを調整する。内R/t比が小さいほどλは小さくなる傾向がある。

Z曲げとコの字曲げの違いは?

Z曲げは2つの曲げが逆方向(S字型の断面)、コの字曲げは同方向(U字型の断面)。展開長の計算式は同じだが、プレスブレーキの金型配置や曲げ順序が異なる。

入力したデータはサーバーに送信される?

いいえ。すべての計算はブラウザ内(JavaScript)で完結しており、入力データは一切外部に送信されない。安心して社内寸法データを入力できる。

まとめ

板金曲げ展開長カリキュレーターは、中立面基準法による展開長計算をブラウザだけで完結させるツールだ。L曲げ・Z曲げ・コの字・ハットの4パターンに対応し、直線部と曲げ伸びの内訳も明確に表示する。試作見積もり・CAD検算・教育用途で活用してほしい。

板金加工に関連するツールとして、プレスブレーキの加圧力を計算する「プレス曲げ力カリキュレーター」も合わせてどうぞ。


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