海水水槽の比重・塩分濃度換算ツール

比重計の読みを水温と校正温度で補正して塩分に換算。人工海水の素の量・足し水・入れ替え量まで出す

比重計の読みを水温と比重計の校正温度で補正して塩分(psu≒‰)に直し、3つの基準の比重で並べて出す。 目標にするための人工海水の素の量・足し水・入れ替え量まで計算する。

よくある場面から選ぶ

今の水を入れる

説明書か本体に書かれた温度(25℃・77°F・60°F など)を選ぶ。分からなければ 25℃ を選び、結果の注記を読む。測った水温が校正温度と同じなら、その校正温度を選んでも「補正済み」を選んでも同じ結果になる

目標と水量

新しく作るときは真水の量、調整するときは水槽の水量を入れる

人工海水の素

公式表示: 10ℓ(360g): 水温24℃で比重約1.023の海水が約10L

結果

塩分濃度30.5 psu
塩を足す

比重 60/60°F

1.0234

比重 20/20℃

1.0232

比重 25/25℃

1.0230

密度(25℃)

1,020.0 kg/m³

目標

35.00 psu

比重 25/25 = 1.0264

新しく作るときの素の量

2.48 kg

真水1Lあたり 41.3 g

追加する素の量

316 g

別の容器で溶かしてから少しずつ

同じ読みでも、比重計の校正温度(25℃・20℃・60°F)で塩分が変わる。説明書か本体の表記で確かめてほしい。屈折計なら ‰ の目盛りを読んで「塩分」に入れる
素の量はメーカー表示(水温24℃で比重約1.023)を、その水温どうしの比重とみなして出している。表示は「約」なので、溶かしたあと比重計で確かめて微調整してほしい
素を水槽に直接入れない。別の容器で水槽の水か真水に溶かし、少しずつ足してほしい

素の基準の塩分 30.50 psu(インスタントオーシャン(10ℓ(360g): 水温24℃で比重約1.023の海水が約10L))。密度は国際海水状態方程式 EOS-80、比重は同じ温度どうしの比。

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📘 海水水槽の比重計と人工海水

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比重計が 1.023 を指したとき、その海水は何 psu なのか

水換えの前に、比重計をそっと水槽へ沈める。揺れが収まり、水面の線が 1.023 のあたりで止まる。「いつもどおりだ」と安心してフタを閉める。海水水槽をやっていれば、毎週のように繰り返す場面だよね。

ところが、その 1.023 が何 psu(≒‰)の海水なのかは、目盛りの数字だけでは決まらない。比重計が何℃で校正されているか、そして測ったときの水温が何℃だったかで答えが変わる。25℃ の水を 25℃校正の比重計で読んだ 1.023 は 30.5 psu。同じ水温・同じ 1.023 でも、比重計が 20℃校正なら 32.1 psu、60°F(15.56℃)校正なら 33.2 psu になる。天然海水の 35 psu に対して、足りない塩の量が倍以上違ってくる。

このツールは、比重計の読みを水温と校正温度で補正して塩分濃度に換算し、逆に塩分から3つの基準の比重を並べて出す。そのうえで、目標の塩分にするための人工海水の素の量、濃すぎるときの足し水と入れ替えの量までを一度に計算する。比重計を買い替えなくても、いま読んだ数字の意味を正しく知ることはできる。

早見表の「比重 1.023」には温度が書いていなかった

人工海水の作り方を調べると、「比重 1.020〜1.025 が目安」といった記述や、比重と塩分を並べた早見表・計算機がたくさん見つかる。困ったのは、そのどれにも、何℃どうしの比重なのかが書いていないことだった。比重は温度で変わる量なので、温度の条件を抜いた「1.023 = ◯‰」という対応は、本来は成り立たない。

手元の比重計の説明書を読み返すと、隅に小さく校正温度が書いてある。25℃(77°F)のものもあれば、60°F のものもある。浮き型の比重計は、その校正温度の水でしか目盛りどおりに読めない道具だ。同じ 25℃ の水で同じ 1.023 を読んでも、25℃校正なら 30.5 psu、60°F 校正なら 33.2 psu で、差は約 2.7 psu。天然海水との差でいえば、片方は 4.5 psu 足りず、もう片方は 1.8 psu しか足りていない。早見表のどれを信じるかで、次に足す塩の量が大きく変わってしまう。

人工海水の素のメーカー表示も、同じところで引っかかる。インスタントオーシャンの日本代理店の表示は「水温 24℃ で比重約 1.023」。温度は書いてあるが、何℃の純水と比べた比重かは書いていない。これを「24℃ の海水と 24℃ の純水の比」と読むと、表示どおりに溶かした水は 30.5 psu で、天然海水の 35 psu よりかなり薄い。表示の量で作って「規定どおり」と思っていた水が、実は薄めの水だった、ということがありうる。

もう一つ、蒸発で濃くなった水槽を戻すときの量も、ぱっと答えられなかった。60L の水槽が 37 psu まで濃くなったとき、真水を足して水位ごと戻すなら 3.5 L、満水の水槽から抜いて同じ量の真水で戻すなら 3.3 L と、やり方によって量が違う。足し水の量だけを出す計算では、満水の水槽では実行できない。

比重計の校正温度、メーカー表示の温度、水槽の状態。この3つを入れれば、塩分と必要な量が一度に出る計算機がほしかった。それがこのツールを作った理由だ。

比重と塩分の関係を、水の重さ比べから組み立てる

比重計の読みから塩分を出すには、「塩分とは何か」「比重とは何か」「比重計はなぜ温度に弱いのか」を順にたどる必要がある。ここでは前提知識なしで、換算の式が決まるところまでを組み立てる。

塩分 psu は「1kg の海水に溶けている塩のグラム数」

海水の塩分濃度は、ざっくり言えば海水 1kg に溶けている塩類のグラム数だ。単位は ‰(パーミル、千分率)や g/kg。天然の外洋の海水はおよそ 35 で、1kg の海水に約 35g の塩類が溶けている。

海洋学では、塩分を導電率から決める「実用塩分」で表し、psu と書くことが多い。厳密には g/kg とは定義が違うが、数値はほぼ同じなので、水槽の用途では psu ≒ ‰ ≒ g/kg を同じ数として扱ってよい。このツールも同じ数として扱う。

人工海水 比重 とは — 同じ体積の重さ比べ

比重は「海水の密度 ÷ 純水の密度」で、同じ体積どうしの重さ比べだ。コップ1杯の海水とコップ1杯の純水を天秤に載せ、海水が何倍重いかを数字にしたものと思えばいい。塩が溶けているぶん海水は重く、比重は 1 より大きくなる。

たとえ話を続けると、この重さ比べには落とし穴がある。水は温めると膨らんで、同じコップ1杯でも軽くなる。純水 1L の重さは 4℃ で 999.97g、20℃ で 998.21g、25℃ で 997.05g と、温度でわずかに変わる。海水も同じように変わる。つまり比重は、「何℃の海水」を「何℃の純水」と比べたかという2つの温度を持つ量で、正式には「25/25℃」「60/60°F」のように両方を書く。アクアリウムでは同じ温度どうし(t/t)で比べるのが普通だ。

同じ温度どうしでも、基準の温度が違えば値は変わる。天然海水(35 psu)の比重は、60/60°F で 1.0269、20/20℃ で 1.0266、25/25℃ で 1.0264 になる(Holmes-Farley『Temperature Corrections for Hydrometers』)。4桁目が違うだけに見えるが、60/60°F の 1.0269 を 25/25℃ の比重と取り違えると、塩分では 0.7 psu 近くずれる。

比重計 水温 補正 — 浮きは校正温度の純水を基準に目盛られている

浮き型の比重計(浮秤)は、液に浮かべると、押しのけた液の重さが自分の重さと釣り合うところまで沈む。重い液ほど少ししか沈まずに釣り合うので、どこまで沈んだかで液の密度が分かる。

問題は目盛りの刻み方だ。目盛りは「校正温度 Tb の純水と比べた比重」になるように刻まれている。浮きそのものが感じているのはいま浮かんでいる液の密度だけなので、水温 Tm で読んだ値 R は、次の比を指していることになる。

R = ρ_sw(S, Tm) / ρ_w(Tb)
    ρ_sw(S, Tm) : 塩分 S・水温 Tm の海水の密度
    ρ_w(Tb)     : 校正温度 Tb の純水の密度

Tm と Tb が同じなら、R はそのまま t/t の比重だ。違うと、分母と分子で温度が食い違う。たとえば 60°F 校正の比重計を 25℃ の純水に浮かべると、25℃ の純水は 60°F の純水より軽いので、目盛りは 1.000 に届かず 0.998 あたりを指す。35 psu の海水を 25℃ で測れば、25℃校正の比重計は 1.0264 を指すのに、60°F 校正の比重計は 1.0243 を指す。同じ水なのに読みが 0.002 も低い。冒頭で同じ 1.023 が 60°F 校正のほうで濃い塩分になったのは、この裏返しだ。

比重 塩分濃度 換算 — 国際海水状態方程式 EOS-80

最後に必要なのは、塩分 S と水温 t から海水の密度を出す式だ。海洋学には国際海水状態方程式(EOS-80)があり、1気圧では次の形になる。

ρ_w(t)     = 999.842594 + 6.793952e-2·t − 9.095290e-3·t² + 1.001685e-4·t³
             − 1.120083e-6·t⁴ + 6.536332e-9·t⁵
ρ_sw(S, t) = ρ_w(t) + A(t)·S + B(t)·S^1.5 + C·S²
  A(t) = 8.24493e-1 − 4.0899e-3·t + 7.6438e-5·t² − 8.2467e-7·t³ + 5.3875e-9·t⁴
  B(t) = −5.72466e-3 + 1.0227e-4·t − 1.6546e-6·t²
  C    = 4.8314e-4
  ※ t は IPTS-68 の温度目盛り。いまの温度計の値から t68 = 1.00024 × t で直す

ρ_w は純水の密度、A・B・C の項が「塩が溶けたぶん重くなる量」だ。塩分が増えるほど密度は単調に増えるので、比重計の読みから塩分を出すには、R × ρ_w(Tb) と等しくなる ρ_sw(S, Tm) の S を探せばよい。逆に塩分が分かれば、どの基準の比重も ρ_sw(S, t) ÷ ρ_w(t) で出せる。

足し水と入れ替えの量は塩の重さで決まる

蒸発で逃げるのは水だけで、塩は水槽に残る。だから濃くなった水を戻す量は、塩の重さが変わらないという条件から決まる。水量 V、今の塩分 S₁・密度 ρ₁、目標の塩分 S₂ とすると、塩の重さは S₁/1000 × ρ₁ × V だ(ρ を g/L で書けば g で出る)。

足す真水 W  : S₁·ρ₁·V = S₂·(ρ₁·V + ρ_w·W)
            → W = (S₁·ρ₁·V / S₂ − ρ₁·V) / ρ_w
入れ替え X  : 抜いた X には塩も入っている
              S₁·ρ₁·(V − X) = S₂·(ρ₁·(V − X) + ρ_w·X)
            → X = V·ρ₁·(S₁ − S₂) / (ρ₁·(S₁ − S₂) + S₂·ρ_w)

入れ替えは抜く水と一緒に塩も出ていくので、足し水より少ない量で済む。

塩分を読み違えると、水槽で何が起きるか

比重計の読みは毎日の管理の起点になる。ここで読み違えると、その後の調整がすべて同じ方向にずれていく。

校正温度の取り違えは、足す塩の量をそのまま狂わせる。 25℃ の水で 1.023 と読んだとき、比重計が 25℃校正なら 30.5 psu、20℃校正なら 32.1 psu、60°F 校正なら 33.2 psu だ。60L の水槽を 35 psu に戻すのにインスタントオーシャンを足すなら、25℃校正の読みとしては 316 g、60°F 校正の読みとしては 126 g で、差は 190 g。実は 60°F 校正の比重計だったのに 25℃校正のつもりで 316 g 入れると、35 psu を狙ったはずの水が 37.7 psu 前後まで濃くなる計算になる。比重計の読み自体はどちらも正しいので、間違いに気づくきっかけがない。

蒸発した分を海水で足すと、塩分は戻らない。 蒸発で減るのは水だけだ。60L・35 psu の水槽から 3 L 蒸発すれば、塩分は 36.8 psu まで上がる。水位が下がったのを見て、補充に真水ではなく作り置きの 35 psu の海水を使うと、37 psu の水槽に 3.5 L 足しても 36.9 psu までしか下がらない。次に蒸発すればまた上がり、足すたびに塩が積み増されていく。補充は真水、が原則になるのはこのためだ。

塩分の急な変化は、生き物の負担になりうる。 海の生き物は、塩分がほとんど変わらない環境に適応していると考えられている。読み違いに気づいて一度に大きく戻すと、その変化自体が負担になるおそれがある。とくにサンゴや無脊椎動物は塩分の変化に敏感だと言われることが多く、調整は何回かに分けるのが無難だ。

メーカー表示の「約」も、数 psu のずれになる。 インスタントオーシャンには公式の表示が2つある。10L用は「36 g/L で比重約 1.023(24℃)」、大袋は「33 g/L で比重約 1.020(24℃)」。どちらも温度どうしの比重とみなして 35 psu 用の量に直すと、前者は 41.3 g/L、後者は 43.5 g/L で、約 5.4% ずれる。60L 分なら 2.48 kg と 2.61 kg だ。大袋の表示が正しいのに 10L用の表示から出した 41.3 g/L で作ると、仕上がりは 33.2 psu 前後になる。表示をうのみにせず、溶かしたあとに比重計で確かめる必要がある。

この換算が効いてくる4つの場面

新しく人工海水を作るとき。 立ち上げや水換え用の水を作るとき、真水の量と目標の塩分から人工海水の素の量が出る。袋の表示は「◯L 用」が基本なので、半端な水量や、表示より濃い・薄い塩分で作りたいときに計算の手間が省ける。

水換えの前に、新しい水と水槽の水を揃えるとき。 水換えで塩分が急に変わらないよう、作った水と水槽の水を同じ塩分に合わせたい場面。買い替えた比重計が 60°F 校正だったり、海外の説明書に 60°F 基準の比重しか書いていなかったりしても、校正温度を選べば同じ物差しの塩分に揃えて比べられる。

蒸発で濃くなった水槽を戻すとき。 旅行から帰ったら水位が下がっていた、夏場に蒸発が早い、という場面。今の塩分と目標から、真水を何リットル足せばいいか、満水なら何リットル入れ替えればいいかが分かる。

汽水魚の水槽を作るとき。 ミドリフグのように、海水より薄い汽水で飼う魚の水槽。汽水は比重が 1.00 台の前半に収まり、比重計の目盛りでは差が読みにくいので、塩分で決めて素の量を計算するほうが確実だ。

3ステップで塩分と素の量を出す

ステップ1: 今の水を入れる。 何を測ったかを「比重計の読み」か「塩分(‰・psu)」から選ぶ。比重計なら、読んだ値と測ったときの水温、比重計の校正温度(25℃・20℃・15.56℃(60°F)・補正済み)を入れる。校正温度が分からないときは 25℃ を選んで、結果の注記を読む。屈折計を使っているなら、比重の目盛りではなく ‰ の目盛りを読んで「塩分」に入れる。

ステップ2: 目標と水量、人工海水の素を選ぶ。 目標は塩分 psu でも比重(25/25℃)でも入れられる。水量は、新しく作るなら真水の量、調整するなら水槽の水量だ。人工海水の素はインスタントオーシャンの2つの表示から選ぶか、ほかの銘柄ならラベルに書かれた使用量(g/L)と、そのときの比重・水温を入れる。

ステップ3: 結果を読む。 今の塩分と、目標に対して「塩を足す」「薄める」「調整不要」のどれに当たるかが出る。あわせて、60/60°F・20/20℃・25/25℃ の3つの基準の比重と 25℃ の密度、新しく作るときの素の量、足りないときの追加量、濃いときの足し水と入れ替えの量が表示される。

入力に迷ったら、「25℃校正の比重計」「60°F校正の比重計」「蒸発して濃い(37psu)」「汽水(12psu)」の4つのシナリオから選ぶと、それぞれの場面の値が一度に入る。

使用例7ケース — 同じ 1.023 から汽水まで

どのケースも、ツールに同じ値を入れて出た結果をそのまま載せている。人工海水の素は、特に書かない限りインスタントオーシャン(10L用の表示)だ。

ケース1: 25℃校正の比重計・25℃ の水で 1.023(60L・目標 35 psu)

  • 入力: 比重計の読み 1.023、水温 25℃、校正温度 25℃、水量 60L、目標 35 psu
  • 結果: 塩分 30.5 psu。比重は 60/60°F 1.0234、20/20℃ 1.0232、25/25℃ 1.0230、密度(25℃)1020.0 kg/m³。判定は「塩を足す」で、追加する素は 316 g。新しく 60L 作るなら 2.48 kg(真水1Lあたり 41.3 g)
  • 解釈: 校正温度と水温が一致しているので、読みがそのまま 25/25℃ の比重になる基本形。1.023 は天然海水より 4.5 psu ほど薄い。注記に出る素の基準の塩分は 30.5 psu で、「水温 24℃ で比重約 1.023」の表示はこの読みとほぼ同じ濃さを指していることも分かる

ケース2: 同じ 1.023 を 60°F 校正と 20℃校正で読む

  • 入力: ケース1と同じで、校正温度だけを 15.56℃(60°F)、次に 20℃ に変える
  • 結果: 60°F 校正なら塩分 33.2 psu・追加する素 126 g。20℃校正なら 32.1 psu・追加 204 g
  • 解釈: 読みも水温も同じなのに、校正温度を変えただけでケース1の 316 g が 204 g、126 g と減っていく。校正温度が低い比重計ほど、暖かい水では読みが低く出るので、同じ 1.023 でも実際の塩分は濃い。比重計を買い替えたら、まず説明書で校正温度を確かめたい

ケース3: 校正温度と違う水温で読む(冷たい水・暖かい水)

  • 入力A: 60°F 校正の比重計、水温 18℃ で 1.025、60L・目標 35 psu
  • 結果A: 塩分 33.3 psu、追加する素 119 g
  • 入力B: 25℃校正の比重計、水温 30℃ で 1.022、60L・目標 35 psu
  • 結果B: 塩分 31.3 psu、追加する素 260 g
  • 解釈: 1.025 は「海水らしい」数字に見えるが、60°F 校正を 18℃ で読むと 35 psu には届いていない。反対に、夏場に 30℃ の水を 25℃校正で読むと、水が膨らんで軽くなったぶん読みが低く出る。1.022 をそのまま 25/25℃ の比重とみなすと約 29.2 psu だが、実際は 31.3 psu ある。どちらも、水温を一緒に入れれば校正温度の水で読んだときの塩分に戻せる

ケース4: 蒸発して 37 psu になった 60L 水槽を 35 psu に戻す

  • 入力: 塩分 37 psu、水量 60L、目標 35 psu
  • 結果: 判定は「薄める」。足す真水 3.5 L、満水なら入れ替え 3.3 L。今の比重は 25/25℃ で 1.0279
  • 解釈: 水位が下がっているなら、真水を 3.5 L 足せば水位も塩分も戻る。満水の水槽なら 3.3 L 抜いて同じ量の真水を入れる。入れ替えのほうが少ないのは、抜く水に塩も入っているからだ。どちらの場合も一度に入れず、何回かに分けて確かめながら戻す

ケース5: 目標を比重で決めて、大袋の素で 90L を調整する

  • 入力: 塩分 30 psu、水量 90L、目標は比重(25/25℃)1.0264、素はインスタントオーシャン大袋(33 g/L・比重約 1.020)
  • 結果: 目標は 35.04 psu に換算される。追加する素 564 g、新しく 90L 作るなら 3.92 kg(真水1Lあたり 43.6 g)
  • 解釈: 「比重 1.0264 に合わせたい」という目標も、25/25℃ の比重として塩分に直して計算できる。大袋の表示から出した係数は 10L用の表示より濃い側に出るので、同じ 35 psu でも1Lあたりの量が 2 g ほど多い

ケース6: ほかの銘柄のラベル値で、新しく 20L 作る

  • 入力: 素は「ほかの銘柄」で、ラベルの使用量 38 g/L・比重 1.025・水温 25℃。水量 20L、目標 35 psu
  • 結果: 新しく作るときの素の量 801 g(真水1Lあたり 40.1 g)。素の基準の塩分は 33.2 psu
  • 解釈: ラベルに「1L あたり何 g で比重いくつ」と書いてあれば、どの銘柄でも同じ手順で量を出せる。このラベル値は 33.2 psu 相当なので、35 psu にするにはラベルより 1Lあたり約 2 g 多く溶かす計算になる

ケース7: 汽水魚の水槽(12 psu・30L)

  • 入力: 塩分 12 psu、水量 30L、目標 12 psu
  • 結果: 判定は「調整不要」。比重は 25/25℃ 1.0090、60/60°F 1.0092。新しく作るときの素の量 425 g(真水1Lあたり 14.2 g)。汽水の範囲である注記も出る
  • 解釈: 汽水の比重は 1.009 前後で、比重計の目盛りでは細かい差が読み取りにくい。塩分で目標を決めてグラム数で作れば、作るたびの濃さのばらつきを抑えられる

換算の仕組みと、定数の選び方

早見表を持たず、密度式から毎回逆算する

比重から塩分を出す方法は大きく2つある。1つは、比重と塩分の対応表(早見表)を内蔵して引く方法。もう1つは、密度の式から毎回逆算する方法だ。

早見表方式は実装が軽いが、表を作った時点で温度の基準が1つに固定される。25/25℃ の表なら、60°F 校正の比重計や、校正温度と違う水温で読んだ値には使えない。校正温度4通り × 水温 0〜35℃ の組合せに対応しようとすると、表が組合せの数だけ要る。

密度式から逆算する方式なら、校正温度と水温がどう組み合わさっても、前半で組み立てた「R × ρ_w(Tb) と等しくなる ρ_sw(S, Tm) の S を探す」という同じ手順で塩分に戻せる。このツールは後者を採った。

計算フロー

1. 今の塩分 S₁
   比重モード: Tb = 校正温度(補正済みなら Tb = Tm)
              ρ_sw(S, Tm) = R × ρ_w(Tb) を S = 0〜42.05 の二分法で解く
   塩分モード: S₁ = 入力値(屈折計の ‰ 目盛りの読み)
2. 3つの基準の比重  SG(t) = ρ_sw(S₁, t) / ρ_w(t)   t = 15.56 / 20 / 25℃
3. 目標の塩分 S₂  (比重で入れたら ρ_sw(S, 25) = 目標 × ρ_w(25) を解く)
4. 素の係数  k = 表示の使用量 [g/L] ÷ S_ref [psu]
             S_ref は ρ_sw(S, 表示水温) = 表示比重 × ρ_w(表示水温) の解
5. 新しく作る量 = V × k × S₂
   判定: |S₂ − S₁| < 0.05 → 調整不要
         S₁ > S₂ → 足し水・入れ替え(塩の質量保存、ρ は 25℃ の値)
         S₁ < S₂ → 追加する素 = V × k × (S₂ − S₁)

塩分が増えれば密度は必ず増えるので、二分法は解を取りこぼさない。区間を100回半分にするので、精度は浮動小数点の限界まで詰まる。

ケース1(25℃校正・25℃ で 1.023・60L・目標 35 psu)で追うと、次のようになる。

① 目標の密度  1.023 × ρ_w(25℃) = 1.023 × 997.046 = 1019.978 kg/m³
② 二分法で    ρ_sw(S, 25℃) = 1019.978 → S₁ = 30.545 psu
③ 素の基準    1.023 × ρ_w(24℃) = 1.023 × 997.298 = 1020.236 → S_ref = 30.4962 psu
④ 係数        k = 36 ÷ 30.4962 = 1.18048 g/(L·psu)
⑤ 1Lあたり    1.18048 × 35 = 41.3166 g/L → 60L で 2479.0 g
⑥ 追加する素  60 × 1.18048 × (35 − 30.545) = 315.543 g

EOS-80 は独立した実装と照合した

密度の式は、1気圧の EOS-80(UNESCO 1981)をそのまま使っている。係数の打ち間違いを防ぐため、オーストラリアの研究機関 CSIRO が公開している EOS-80 の実装(seawater ライブラリ)の密度関数と突き合わせた。35 psu・25℃ で本ツール 1023.343 kg/m³ に対してライブラリ 1023.341 kg/m³、純水(0 psu)・25℃ で 997.047 と 997.046 で、差は 0.002 kg/m³ 以内。比重の4桁目には影響しない。前半で引いた Holmes-Farley の 35 psu の比重3つも、4桁で再現している。

海洋学の標準は、いまは後継の TEOS-10 に移っている。ただ TEOS-10 は絶対塩分を基本にしていて、実用塩分から換算するには採水した海域による補正が絡む。人工海水にはその前提が当てはまらず、水槽の精度では EOS-80 で十分なので、式の単純な EOS-80 を選んだ。

メーカー表示を「表示水温どうしの比重」とみなす

インスタントオーシャンの日本代理店の表示は「水温 24℃ で比重約 1.023」のように温度付きだが、比べた純水の温度は書いていない。ここは Holmes-Farley の定義(比重は液の密度 ÷ 純水の密度で、基準温度は計器ごと)に従い、表示水温どうしの比重(24/24℃)と仮定した。仮定であることは結果の注記にも出す。

素の量は「溶かす量に比例して塩分が上がる」直線で扱う。係数 k を表示から作るので、素に含まれる結晶水や、溶かしたときの体積の変化は k の中に畳み込まれ、別に補正する必要がない。

悩んだのは、公式の2つの表示が互いに合わないことだった。10L用(36 g/L・約 1.023)と大袋(33 g/L・約 1.020)から 35 psu 用の量を出すと 41.3 g/L と 43.5 g/L で、約 5.4% ずれる。どちらも「約」付きの表示で、どちらが正しいとは決められない。だから片方に寄せず、2つとも選択肢として残し、その幅をそのまま見せることにした。ほかの銘柄は、1L あたりの量と比重を公式に確認できたものが無かったため、ラベルの値を直接入れる形にしている。

屈折計の比重目盛りとガラスの膨張を扱わない理由

屈折計の多くは、‰ の目盛りと比重の目盛りを並べて持っている。比重の目盛りがどの温度基準で振られているかは、一次資料で確かめられなかった。基準の分からない比重を換算に通すと、この記事で問題にしてきたずれをそのまま持ち込むことになる。そこで屈折計は比重モードに入れず、‰ の目盛りを塩分モードに入れる案内にした。

比重計のガラス自体も温度で膨らむが、Holmes-Farley によればガラスの密度の温度変化は水溶液の 1/8〜1/25 と小さい。校正温度と水温の差による読みのずれの大部分は、液の側の密度変化で説明できるので、ガラスの膨張は無視している。

細かい判定の定数も書いておく。目標との差が 0.05 psu 未満なら「調整不要」とする。35 psu 付近では比重の 0.001 が塩分の約 1.3 psu に当たり、0.05 psu は比重計で読み分けられない差なので、調整の対象にしない。足し水と入れ替えの計算は水温 25℃ の密度で固定しているが、水温による差は 0.1% 未満で、表示の桁には現れない。汽水の注記は、塩分による水域の分類(ヴェネツィア分類)の汽水の範囲 0.5〜30 psu で出している。

比重と塩分の換算ツールとして、ほかと何が違うか

前半で触れたとおり、日本語で見つかる計算機は「比重⇔ppt の換算と、混ぜる素の量」までで止まっていることが多い。このツールが足したのは次の3つだ。

  1. 比重計の校正温度を選べる。25℃(77°F)・20℃・60°F(15.56℃)・補正済み(測った温度どうし)の4つから選び、そのうえで測った水温を入れる。読みを「その比重計の目盛りが意味する量」として逆算するので、海外製の比重計や 60°F 表記の説明書もそのまま扱える。結果の比重は 60/60°F・20/20℃・25/25℃ の3基準で並ぶから、別の基準で書かれた飼育書の値とも突き合わせられる
  2. 濃すぎるときの戻し方を2通り出す。水位が下がった水槽に真水を足す「足し水」と、満水の水槽から抜いて同じ量の真水で戻す「入れ替え」は、同じ目標でも必要な量が違う。どちらの状況でも使えるように両方を並べ、薄いときは追加する素の量を出す
  3. 銘柄のラベル値から係数を作れる。プリセットは、使用量と比重をメーカーが公式に出しているインスタントオーシャンの2表示だけにした。ほかの銘柄は、ラベルの使用量(g/L)・そのときの比重・水温を入れれば同じ計算に乗る

関連ツールとは役割を分けている。水槽の実水量は「水槽の水量・水換え計算」で出し、その値をこのツールの水量欄に入れる流れがいちばん速い。「水草水槽のCO2濃度計算ツール(KH・pH・水温)」は淡水の水草水槽が前提で、海水の塩分は扱わない。比重の温度基準そのもの(15/4℃ と 60/60°F の違いなど)を一般の液体で確かめたいなら「ボーメ度・比重・密度の相互換算ツール」の担当になる。

塩分に単位がない理由と、海ごとの塩辛さ

実用塩分(PSS-78)は導電率の「比」で決まっている

海洋学での塩分の測り方は、時代とともに変わってきた。1980年代より前は硝酸銀による滴定で塩素イオンの量(塩素量)を求め、それに係数を掛けて塩分を出していた。このときの単位は ‰ だ(Wikipedia: Salinity)。

いま標準になっている実用塩分スケール(PSS-78)は、滴定の代わりに電気の通しやすさで塩分を決める。15℃・1気圧で、海水の導電率を「1kg あたり塩化カリウム 32.4356 g を含む溶液」の導電率で割った比 K15 を使い、K15 がちょうど 1 になる海水を塩分 35 と定義した(salinometry.com: Practical Salinity Scale 1978)。塩分 35 の海水は、15℃ で約 42.9 mS/cm の導電率を持つ。アクアリウム用の導電率式の塩分計がこの値を目安にできるのは、この定義があるからだ。

比から決めた量なので、PSS-78 の塩分には単位がない。数値の後ろに付ける「psu」は慣用の表記で、厳密には正しくないとして推奨されていない。このツールが psu と書き、‰ とほぼ同じと添えているのは、比重計や屈折計の ‰ 目盛りと読み比べやすくするための便宜だ。

60°F という半端な基準温度

華氏では切りのいい 60°F も、摂氏に直すと 15.56℃ という半端な数字になる。比重計の選択肢に 15.56℃ が並ぶのはこのためだ。石油の比重を表す API 度も 60°F(15.6℃)を標準温度にしていて、ほかの温度で測ったときは 60°F の値に補正する(Wikipedia: API gravity)。液体の比重を扱う道具では、いまも身近な基準温度だ。

海の塩分は場所によって10倍以上違う

外洋の平均はおよそ 35 だが、閉じた海では大きく外れる。紅海は雨が少なく大きな川も流れ込まないため、世界でも有数の塩辛い海だ。南部の約 36‰ から北部のスエズ湾付近の 41‰ まであり、平均は 40‰ ほどになる(Wikipedia: Red Sea)。

反対にバルト海は、周りから大量の川の水が入るうえに浅い。表層の塩分は 0.3〜0.9%(3〜9‰)で、北のボスニア湾では約 0.3% まで下がる(Wikipedia: Baltic Sea)。紅海はこのツールの入力上限 42 psu の内側に収まり、バルト海の表層は汽水の範囲に入る。

比重計・屈折計で測るときの小技

  • 比重計は気泡を払ってから読む: 浮ひょう型もスイングアーム型も、表面に付いた小さな泡の浮力で持ち上がり、読みが高く(濃く)出る。沈めたら軽く指で弾くか揺すって泡を落とし、落ち着いてから読む。使い終わったら真水ですすぎ、塩の結晶を残さない。結晶が付いたままだと重さが変わる
  • 目線を水面の高さに合わせる: 浮ひょうの目盛りは、斜め上から見ると1目盛りくらいは簡単に外れる。液面が茎に沿って盛り上がった縁ではなく、平らな水面の延長線で読む
  • 水温は同じ水で続けて測る: 汲み出したカップの水は、数分で室温に近づいていく。水温計を先に入れておき、比重を読んだ直後にその水温を読むと、入力する2つの値が同じ瞬間のものになる
  • 屈折計は純水でゼロ合わせ: 測る前に精製水(RO 水や蒸留水)を1〜2滴のせて 0 に合わせる。試料をのせたらプリズムと温度がなじむまで少し待ってから覗く。使ったあとは真水で拭き取っておく
  • 水位線に印を付けておく: 満水の位置に水槽の外からテープを貼っておくと、蒸発で下がった量が一目で分かり、「足し水」と「入れ替え」のどちらの数字を使うかも迷わない。足し水に水道水を使うならカルキ抜きを忘れずに

海水の比重計算でよく出る疑問

比重計の校正温度がどこにも書いていない

まず説明書と本体(目盛りの端や外箱)を探してほしい。「77°F」「25℃」「60°F」「15.6℃」のような表記があるはずだ。見つからなければ 25℃ を選び、結果に出る注記を読む。手元で見当をつけるなら精製水を測るとよい。水温が校正温度と同じなら 1.000 を指し、校正温度より温かい水なら 1.000 をわずかに下回る。25℃ 前後の精製水でぴったり 1.000 なら 25℃ 校正と考えてよいが、目盛りの細かさによっては差を読み取れないこともある。

屈折計の比重目盛りを読んで入れてもいい?

比重の欄には入れず、‰(ppt)の目盛りを読んで「塩分」に入れてほしい。比重目盛りを比重計の選択肢に入れなかった理由は仕組みの節で書いたとおりで、‰ の目盛りなら校正温度を選ぶ必要がない。自動温度補正(ATC)付きの屈折計なら、表示された ‰ をそのまま入れればよい。塩分で入れても3基準の比重が並ぶので、比重で書かれた飼育書の値と見比べることもできる。

インスタントオーシャン以外の人工海水の素はどう入れる?

素の選択で「ほかの銘柄」を選び、ラベルの使用量(g/L)・そのときの比重・水温の3つを入れる。ラベルが「1袋で◯L分」としか書いていなければ、袋の重さを水量で割れば g/L になる。水温の記載が無ければ 25℃ を入れる。比重が書かれていない銘柄は、一度ラベルどおりに溶かして自分の比重計で測り、比重モードで塩分に換算してほしい。出てきた 25/25 の比重と水温 25℃ を直接入力に入れれば、その銘柄の係数として使える。

ラベルどおりの量より多めに出るのはなぜ?

目標の初期値が天然海水並みの 35 psu で、メーカー表示の比重はそれより薄めだからだ(理由は前半で扱ったとおり)。ラベルと同じ濃さで作りたいなら、目標を比重で入れる設定にしてラベルの比重をそのまま入れればよい。目標の比重は 25/25 として扱うので、表示水温が 24℃ のラベルなら、ほぼラベルどおりの使用量が出る。どちらの濃さにするかは、飼っている生体といま水槽に入っている水に合わせて決めてほしい。

入力した比重や水量はどこかに送られる?

送られない。計算はすべて開いているブラウザの中で行っていて、比重・水温・水量・銘柄の値をサーバーに送ったり保存したりする仕組みは持っていない。水換えの記録として残したいときは、結果をコピーして飼育ノートやメモアプリに貼っておくとよい。水槽ごとの塩分と水量を控えておけば、次に蒸発で濃くなったときに前回の足し水の量と見比べられる。

まとめ

比重計の読みは、校正温度と水温をそろえて初めて塩分になる。このツールはその換算から、素の量・足し水・入れ替えまでを一度に出す。水量や、水換えのペースごとの硝酸塩の推移は水槽の水量・水換え計算で、保温は水槽ヒーター容量・CO2計算機で出せる。淡水の水草水槽なら水草水槽のCO2濃度計算ツール(KH・pH・水温)が向いている。比重の温度基準はボーメ度・比重・密度の相互換算ツールや鉛バッテリー 比重・充電率(SOC)診断ツールでも同じ考え方を使っているし、薄める量の計算だけなら汎用希釈計算ツールで足りる。

気になる点や追加してほしい銘柄があれば、お問い合わせページから気軽に送ってほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。海水水槽で比重計を買い替えたとき、同じ水が前の比重計より 0.002 低く読めて塩を足しかけたことがある。説明書の隅の「60°F」に気づいてから、比重を見るときは校正温度と水温を必ず一緒に控えるようにしている。

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