水槽ガラス厚計算

幅×水深から側面ガラスの水圧曲げ応力を計算。板厚の安全率判定と必要板厚の逆算に対応(ガラス・アクリル両対応)

水槽の幅と水深を入れるだけで、側面ガラスにかかる水圧曲げ応力から板厚の安全率を判定。必要板厚の逆算にも切替できる(ガラス・アクリル対応)

規格水槽プリセット

プリセットの水深は満水(水面=ガラス上端)想定。実際の水面の高さに直すと精度が上がる

水槽の寸法と材質

判定するガラス面の横幅(10〜300)

水面までの実際の深さ(5〜100)

材質

フロート板ガラス。持続荷重下の曲げ破壊応力の下限側代表値 19.2 N/mm² で安全側に評価

判定条件

計算モード

安全率

手持ち・購入予定の板厚を入れて安全率を確認。標準=海外定番計算の慣行値、余裕重視=大型・長期運用向け

計算結果

安全率5.40σ 3.56 / 破壊応力 19.2 N/mm²・β=0.280
安全(安全率3.8以上)

最大曲げ応力

3.56 N/mm²

σ = β·ρg·H³/t²・β=0.280(L/H=1.67)

安全率

5.40

基準: 3.8以上で安全

底部最大水圧

3.53 kPa

水深36cmの最下部

近い規格水槽

60cm規格(幅60×水深36cm)の標準板厚は5mm前後

側面ガラス一枚板の曲げ応力の概算です。シリコン接合部の強度・底面ガラス・フランジ等の補強効果・地震時の動水圧は考慮していません。強化ガラスは破損時に全面が粉砕するため水槽には通常使用しません。大型水槽・営業用途は最終判断の前に水槽メーカー・専門業者へ相談してください

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「60cm水槽なら5mm」——その定型表、幅が70cmになった瞬間に使えなくなる

規格水槽なら悩まなくていい。60cm規格は5mm、90cm規格は8mm。メーカーが決めてくれた板厚をそのまま信じればいい。でも、オーバーフロー水槽を自作しようとした瞬間、オーダー水槽の見積もりを眺めた瞬間、この定型表は沈黙する。幅70cm・水深40cmならガラスは何mm? 水深を55cmに上げたら? アクリルなら?——検索して出てくるのは規格サイズの対応表ばかりで、「自分の寸法」に答えてくれる日本語の情報がほとんど無い。

水槽ガラス厚計算は、水槽の幅と水深を入れるだけで側面ガラスにかかる水圧曲げ応力を計算し、手持ちの板厚の安全率判定と、安全率を満たす必要板厚の逆算をワンタップで切り替えられるツール。ガラスとアクリルの両方に対応し、30〜120cmの規格水槽プリセットと標準板厚の比較付き。ガラス発注の前に、数値で答え合わせをしてから注文できる。

なぜ作ったのか——アクアリウム計算の「一番怖い部分」が空白だった

このサイトではアクアリウム系の計算ツールとして水槽の水量・重量計算ヒーター容量計算を作ってきた。水量は床の耐荷重に、ヒーターは電気代と生体の安全に直結する。でも自作勢・オーダー勢と話していて一番よく出てくる不安は、実はどちらでもない。「このガラス厚で本当に大丈夫なのか」だ。

水量計算を間違えても水が少し多いか少ないかで済む。ヒーターの容量不足は買い足せばいい。でもガラス厚の見積もりミスは、破損=全損に直結する。にもかかわらず、日本語で手に入る情報はメーカーの規格表の丸写しが中心で、「幅と水深からどう計算するのか」という工学的な中身に踏み込んだものがほとんど見当たらない。

一方、海外にはFNZAS(ニュージーランド水槽愛好家連盟)の解説を起点にした glass thickness calculator が定番として複数存在し、自作アクアリストの共通言語になっている。矩形平板の曲げ応力係数を使った、素性のはっきりした計算だ。この「日本語の空白」を埋めたかった。規格表の暗記ではなく、任意の寸法×任意の安全率で判定できる工学計算として。しかも日本の規格水槽プリセットを載せて、市販品との比較までできる形で。

水槽 ガラス厚 計算の基礎——ガラスにかかる力を第一原理から

水槽の水圧は深さに比例する——底で最大・水面でゼロの三角形分布

水の圧力(静水圧)は深さに比例する。感覚的にはこうだ——1cm²の小さな正方形の上に、水面までの水柱がまるごと乗っている。水は1cm³あたり約1gだから、水深36cmの地点では1cm²あたり約36g重。60cm規格水槽(水深36cm)の底部水圧は3.53kPaで、これがちょうど「1cm²に36g」に相当する。

ポイントは、この圧力が深さに比例して増えること。水面ではゼロ、底で最大。側面ガラスには、上が尖って下が広がった「三角形分布」の荷重がかかる。ガラスの下のほうほど強く押されている。水槽の破損事例で下部のシリコン近傍からの割れが多いのは、この分布の必然だ。

板の曲げ応力とは——プールの底に沈めた下敷きのたとえ

プールの底に下敷きを沈めて、縁だけ持って水平に支えると、真ん中がたわむ。板が曲がると、凸側の表面は引き伸ばされ、凹側は圧縮される。この「引き伸ばす力の密度」が曲げ応力だ(詳しくは曲げモーメントを参照)。

ガラスは圧縮には非常に強いが、引張には弱い。しかも表面の微小な傷を起点に割れるため、破壊強度のばらつきが大きい。水槽の側面ガラスは水圧で外側にたわみ、外側の表面に引張応力が生じる。この引張応力がガラスの破壊応力を超えたとき——正確には、傷や経年劣化で低下した実力値を超えたとき——ガラスは割れる。だから水槽の板厚設計は「発生する曲げ応力を、破壊応力より十分小さく抑える」計算に帰着する。

応力は水深の3乗で効く——「幅より水深」の理由

側面ガラスの最大曲げ応力は、次の式で計算できる。

σ_max = β(L/H) × ρg × H³ / t²

// σ_max: 最大曲げ応力 [N/mm²]
// β: アスペクト比 L/H で決まる係数(0.085〜0.37)
// ρg: 水圧勾配 9.80665e-6 [N/mm² per mm水深]
// L: 幅 [mm]、H: 水深 [mm]、t: 板厚 [mm]

注目すべきは 。水深は3乗で効く。理由は積み上げで分かる——水圧そのものが水深に比例(H¹)、それをガラス面全体で合計した力は三角形の面積だからH²、さらにその合力が板を曲げる「てこの腕」の長さもHに比例する。掛け合わせてH³。水深を1.26倍にすると応力は約2倍、2倍にすると8倍。「幅を10cm広げる」より「水深を10cm上げる」ほうが、ガラスにとってははるかに過酷だ。

一方、板厚tは2乗で応力を下げる。5mm→6mmのたった1mmで応力は約31%減る。板厚の1ランクアップが効くのはこのt²のおかげ。

三辺支持・上辺自由——水槽特有の境界条件

水槽の側面ガラスは、左右の側辺と底辺の三辺がシリコンで隣の板に接合され、上辺だけが自由(フレームレス水槽の場合)。この「三辺支持・上辺自由の矩形板に三角形分布荷重」という条件の応力係数βが、Roark's Formulas 系の平板理論で表として整備されている。βは幅と水深の比 L/H で決まり、正方形に近いほど小さく(周囲の辺が助けてくれる)、横長になるほど大きくなって0.37で頭打ちになる(横に長すぎると両側辺の支持が効かず、帯板と同じ挙動に漸近する)。本ツールはこのβ表を線形補間して使っている。

板厚不足の実害——ガラス1枚の失敗が「全損+賠償」になる

水槽ガラスの破損は、他のDIY失敗と質が違う。60cm規格水槽の水量は約65L=約65kg。破損すれば、この水が数秒で床に広がる。生体は全損、床材・家財は水浸し、そして集合住宅なら階下への漏水被害が続く。階下の天井・壁・家電への損害は過失による賠償の対象になり、修理費が数十万円規模になった事例も珍しくない。個人賠償責任保険でカバーできるとしても、生体は戻らない。

アクリルにはガラスと別種の怖さがある。クリープ破壊——応力が一定でも、時間とともに材料の実力が低下していき、ある日突然壊れる現象だ。プラスチック工学コンサルのMadison Groupによるアクリル水槽の破損解析では、キャスト板の設計応力は10年寿命で1500psi(約10.3 N/mm²)、20年では650psi(約4.5 N/mm²)まで下げる必要があるとされる。短期の曲げ強さが110 N/mm²もあるのに、連続荷重ではその5〜10%しか使えない。設置直後に問題がなくても、数年後に予兆なく割れるのがクリープの恐ろしさで、アクリルの安全率が10〜20という一見過大な値になっているのはこのためだ。

逆方向の失敗もある。怖いからと闇雲に厚くすると、コストと重量が跳ね上がる。ガラスは12mmを超えるあたりから価格が急伸し、重量は水槽の運搬・設置を一人作業の限界を超えたものにする。「必要な安全率を満たす最小の板厚」を数値で知ることは、安全のためでもあり、財布のためでもある。海外で標準とされる安全率3.8は、破壊応力19.2 N/mm²に対し許容約5 N/mm²——ガラスのばらつき・傷・経年を織り込んだ、数十年の運用実績に裏打ちされた落とし所だ。

ガラス発注の前に開くべき4つの場面

自作オーバーフロー水槽のガラス発注。サンプ込みのカスタム寸法はまず規格表に載っていない。ガラス店に「幅75cm・高さ45cm・厚み□mmで」と発注する前に、□を数値で決められる。結果コピー機能でそのまま相談メモにできる。

オーダー水槽の見積もり妥当性チェック。業者の提示した板厚が妥当なのか、過剰マージンで価格を吊り上げていないか。第三者の数字を持って打ち合わせに臨める。

中古・譲渡水槽の板厚確認。ノギスで測った板厚と寸法を入れれば、その水槽が現代の安全率基準でどの位置にいるか分かる。「先代は問題なく使っていた」は安全の証明にならない。

規格外サイズの検討。ロータイプ・ハイタイプ・キューブなど、同じ60cm幅でも水深が違えば応力は3乗で変わる。アクリル自作のキャスト板選定にも、強度面の下限目安として使える。

基本の使い方——3ステップ

  1. 幅と水深を入れる。判定したいガラス面の横幅(10〜300cm)と、水面までの実際の深さ(5〜100cm)。30〜120cmの規格水槽はプリセットチップのワンタップで寸法と標準板厚が入る。プリセットの水深は満水(水面=ガラス上端)想定なので、実際の水面に直すと判定の精度が上がる。
  2. 材質とモードを選ぶ。ガラスかアクリルを選び、手持ち・購入予定の板厚を確かめるなら「板厚判定」、板厚をこれから決めるなら「必要厚逆算」。安全率は迷ったら標準(ガラス3.8/アクリル10)でいい。大型・フレームレス・長期運用なら余裕重視(5.0/20)。
  3. 結果を見る。板厚判定なら最大曲げ応力と安全率が計算され、安全・注意・危険の3段階で判定される。必要厚逆算なら0.5mm単位に切り上げた必要板厚が出る。近い規格水槽の標準板厚も並ぶので、市販品と答え合わせしながら判断できる。

具体的な使用例——8ケースで検証

実装したツールに実際の値を入れて検証した8ケース。市販の規格水槽がなぜその板厚なのか、計算が現実とどこまで一致するかも確かめていく。

ケース1: 60cm水槽をガラス6mmで——標準の一段上の余裕

幅60cm×水深36cm・ガラス6mm・安全率3.8 → β=0.28・最大曲げ応力3.56 N/mm²・安全率5.40で「安全」。底部水圧は3.53kPa。安全率5.40は余裕重視基準の5.0すら超える。ハイグレード帯の60cm水槽に6mm厚の製品があるのは、この「満水でも余裕」を買っている構図だ。

ケース2: 60cm規格の5mmを満水判定——「注意」が出る理由

同じ60×36cmでガラス5mm・安全率3.8 → 応力5.12 N/mm²・安全率3.75で「注意」。市販60cm規格の標準板厚5mmが基準3.8をわずかに割る——これはツールの誤りではなく「満水想定」の意味を教えてくれる結果だ。水深36cmは水面がガラス上端に達する最悪ケースで、実運用の水面(上端から3cm下の33cm程度)で再計算すると安全率は約4.9まで回復して「安全」になる。市販の5mmは「満水では割り、実水面なら満たす」ぎりぎりの経済設計。プリセット水深を実水面に直す一手間の価値がよく分かる。

ケース3: 90cm規格の8mm——市販板厚の答え合わせ

幅90cm×水深45cm・ガラス8mm・安全率3.8 → β=0.32・応力4.47 N/mm²・安全率4.30で「安全」。底部水圧4.41kPa。満水想定でも基準をクリアしており、90cmオールガラス水槽の8mmは妥当な設計だと数値で確認できる。

ケース4: 90cmの必要厚を逆算——計算値7.52mm→8.0mm

同じ90×45cmで「必要厚逆算」・安全率3.8 → 計算値7.52mmを0.5mm単位に切り上げて必要板厚8.0mm。市販90cm水槽の標準板厚8mmと一致した。規格水槽の板厚体系を計算モデルが再現できている——このツールの計算を信頼していい根拠のひとつだ。

ケース5: 120cm水槽に5mmを流用——「危険」判定

幅120cm×水深45cm・ガラス5mm・安全率3.8 → 応力12.75 N/mm²・安全率1.51で「危険」。破壊応力の2倍を切っており、傷や経年、水位変動といった現実の変動要因で破損が現実的になる水準。「60cmで使えた5mmガラスが余っているから」という流用は絶対にNGだ。幅が2倍になるとβが0.28→0.36に増え、同じ板厚では応力が3.6倍に跳ねる。

ケース6: アクリル90cm・10mm——強度は余裕、本題はたわみ

幅90cm×水深45cm・アクリル10mm・安全率10 → 応力2.86 N/mm²・安全率38.47で「安全」。安全率38は一見過剰だが、アクリルの本当の制約は強度ではない。ヤング率がガラスの約1/20しかないため、強度より先に「たわみ」で板厚が決まる。ツールがアクリル選択時に常時表示する注記のとおり、この結果は強度面の下限目安として読むのが正しい。

ケース7: アクリル60cmの逆算——3.5mmで足りるのに市販は6〜8mmの理由

幅60cm×水深36cm・アクリル・安全率10で逆算 → 計算値3.41mm→必要板厚3.5mm。ところが市販のアクリル60cm水槽は6〜8mm。この差がまさに「たわみ支配」の実例だ。強度だけなら3.5mmで安全率10を満たすが、その薄さでは水圧で板が目に見えて膨らみ、シリコンや接着部に想定外の力がかかる。アクリルの板厚はたわみとクリープで決まる——強度計算は下限チェックとして使う。

ケース8: 幅3m×水深1mの逆算——一枚板の限界を知る

幅300cm×水深100cm・ガラス・余裕重視5.0で逆算 → 計算値30.74mm→必要板厚31.0mm。同時に「必要板厚が30mmを超えました。一枚板では重量・コスト的に非現実的」の警告が出る。水族館クラスの寸法では、板を厚くする発想自体が破綻する。上部フランジ・センターフランジによる補強、水槽の分割、アクリルの重合接着といった「構造で解決する」領域だ。ツールはその境界線を数値で教えてくれる。

仕組み・アルゴリズム——有限要素法ではなくβ係数法を選んだ理由

手法の比較

任意形状の板の応力を精密に解くなら有限要素法(FEM)が王道だ。だが水槽の側面ガラスは「矩形」「三辺支持・上辺自由」「三角形分布荷重」という完全に定型化された条件で、この組み合わせはRoark's Formulas for Stress and Strain系の平板理論で係数表としてすでに整備されている。定型問題に対しては、係数法はFEMと実用上同等の答えをブラウザ上で即座に返せる。海外の定番水槽計算機(FNZAS の解説記事が原典)も同じβ係数法で、数十年の自作実績に裏打ちされた方式だ。

β係数表と補間の実装

const BETA_TABLE = [
  { ratio: 0.5, beta: 0.085 },
  { ratio: 1.0, beta: 0.16 },
  { ratio: 1.5, beta: 0.26 },
  { ratio: 2.0, beta: 0.32 },
  { ratio: 2.5, beta: 0.35 },
  { ratio: 3.0, beta: 0.37 },
];
// 表点間は線形補間。L/H < 0.5 は 0.085、> 3.0 は 0.37 に
// クランプして「概算」注記を表示(横長側はβが頭打ちで誤差小)

βは横長になるほど増えるが上に凸で漸増するため、線形補間は数%の過小側。安全率3.8の余裕の中に収まる誤差で、表点上(L/H=1.5、2.0など)は厳密に一致する。

水圧勾配は ρg = 9.80665e-6 N/mm²/mm。水の密度1000kg/m³×重力加速度9.80665m/s²をmm単位系に換算した物理値で、海外計算機が使うg≈10の丸め値(1e-5)より約2%小さい正確な値を採用した。底部水圧はこのρgに水深[mm]を掛けるだけで求まる。

ステップバイステップ計算例

// 幅60cm × 水深36cm・ガラス6mm・安全率3.8
L = 600 mm, H = 360 mm, t = 6 mm
r = L / H = 1.667
β = 0.26 + (1.667 − 1.5) / (2.0 − 1.5) × (0.32 − 0.26) = 0.28
ρg × H³ = 9.80665e-6 × 46,656,000 = 457.54
σ_max = 0.28 × 457.54 / 6² = 128.11 / 36 = 3.56 N/mm²
SF = 19.2 / 3.56 = 5.40 ≥ 3.8 → 安全

必要厚逆算はこの式を板厚tについて解くだけだ。σ_ult / SF = β·ρg·H³ / t² とおいて変形すると:

t_req = √(β × ρg × H³ × SF / σ_ult)

// 90×45cm・ガラス・SF3.8:
// t_req = √(285.96 × 3.8 / 19.2) = 7.52 mm → 8.0 mm(0.5mm単位切り上げ)

切り上げの0.5mm刻みは、市販のガラス・アクリル板の流通厚に合わせた実務的な丸めだ。

材料定数と安全率の出典

ガラスの破壊応力19.2 N/mm²は、FNZAS記事が示す持続荷重下の曲げ破壊応力19.3〜28.4 MPaの下限側を採用した安全側の代表値。海外計算機が許容応力を19.2÷3.8≈5.05 N/mm²とする慣行と同値だ。安全率は標準3.8(海外で最も使われる値)と余裕重視5.0(大型・フレームレス向け)の2択。

アクリルの110 N/mm²はキャスト板の短期曲げ強さの代表値(押出板はこれより低く、連続荷重に弱いため水槽には使えない)。安全率10は Madison Group の示す10年寿命の設計応力1500psi≈10.3 N/mm²に、20は20年設計応力650psi≈4.5 N/mm²の近傍にそれぞれ対応し、クリープ破壊を織り込んだ体系になっている。判定バンドは「選択安全率以上で安全、その半分以上で注意、未満で危険」——ガラス標準なら危険の境界は安全率1.9で、破壊応力の2倍を切る水準を「運用を避けるべきライン」としている。

規格表でも海外計算機でもない——「水槽 ガラス厚 計算」の空白を埋める

比較対象は大きく2つ——日本語の規格表系記事と、海外の glass thickness calculator だ。規格表系は規格サイズにしか答えられない。幅70cmのオーダー水槽、水深55cmのハイタイプ、譲り受けた素性不明の中古と、一歩外れた瞬間に頼れなくなる。

海外には glass thickness calculator という定番ジャンルがあり、本ツールと同じ三辺支持×三角形水圧のβ係数法を使っている。ただし英語でインチ併記、日本の規格水槽プリセットは当然なく、重力加速度を g≈10 と丸める実装が多い(本ツールは 9.80665 の物理値・差は約2%)。

本ツールはこの間を埋める。任意寸法×安全率の工学計算をベースに、30〜120cmの規格水槽プリセット、入力した幅に最も近い規格の標準板厚を並べる比較表示、ガラス(安全率3.8/5.0)とアクリル(クリープ考慮の10/20)の両対応を一体化した。板厚判定と必要厚逆算のワンタップ切替も、規格表には真似できない部分だ。

姉妹ツールとの役割分担も明確で、本ツールは「ガラスが水圧に耐えるか」だけを見る。水を何リットル入れて総重量が何kgになるかは 水槽の水量・重量計算、その水を保温するヒーター容量は 水槽ヒーター容量計算 の担当。寸法→強度→重量→設備の順に渡り歩けば、自作水槽の設計が一本につながる。

水槽ガラスの豆知識——強化ガラス・緑色の正体・水族館のアクリル

強化ガラスを水槽に使わない理由

自動車やスマホでおなじみの強化ガラスは、同じ厚みのフロートガラスより3〜4倍強い。なら水槽も強化ガラスにすれば薄くできそうなものだが、水槽メーカーはまず使わない。理由は割れ方だ。強化ガラスは表面に圧縮応力を封じ込めているため、限界を超えた瞬間に全面が細粒状に粉砕する。「ヒビが入って水が滲む」という予兆の段階が存在せず、破損=満水の全量が一瞬で床にぶちまけられる全損事故になる。ごく稀に硫化ニッケル介在物が原因で無荷重でも自然破損する現象も知られている。フロートガラスなら多くの場合ヒビ→滲みの順に猶予がある。「強いが割れたら終わり」より「弱いが予兆がある」を選ぶのが水槽の設計思想だ。加工面の問題もある。強化後のガラスは切断・穴あけができず、背面に穴を開けるオーバーフロー水槽とは根本的に相性が悪い。

ガラスの小口が緑色に見えるのは鉄分

フロートガラスの断面をのぞくと緑色。正体は原料に含まれる鉄分(酸化鉄)だ。ハイグレード水槽で使われる「高透過ガラス(低鉄ガラス)」は、この鉄分を減らして緑を消した上位素材。強度はほぼ同等なので、本ツールの計算は高透過ガラスにもそのまま使える。

水族館の巨大水槽がアクリルな理由

大型水族館の観覧パネルはガラスではなく厚さ数十cmのアクリル積層板だ。アクリルは重合接着で板同士を分子レベルで一体化でき、継ぎ目のない巨大パネルが作れる。比重はガラスの半分以下、割れても貫通クラックが走りにくい。一方、家庭サイズでガラスが主流なのは、傷への強さ・コスト・透明度の経年安定で勝るから。サイズによって素材の勝者が入れ替わるのが面白いところ。

「満水試験」という儀式

ガラスの強度は個体差が大きく、微小傷やシリコン施工の初期欠陥は最初の満水でほぼ顕在化する。メーカーが出荷前に満水試験をするのはこのためで、新品・中古を問わず設置前に風呂場やベランダで数日の満水放置をするのはアマチュアにも有効な儀式だ。本ツールで数字を確かめ、満水試験で実物を確かめる。二段構えが安心につながる。

板厚選びで失敗しないための5つのコツ

  1. プリセットの水深は満水想定——実水面に直すと判定が変わる。60cm規格×5mmは満水36cmで安全率3.75の「注意」だが、実際の水面(上端−3cm=33cm)なら約4.9で「安全」。応力は水深の3乗で効くから、水面3cmの差が判定を分ける。
  2. 迷ったら1ランク厚く。応力は板厚の2乗に反比例し、5mm→6mmで応力は約3割減る。板の価格差より安心の差の方が大きい。
  3. 幅より水深を疑え。幅60→90cm(1.5倍)では応力約25%増にとどまるが、水深36→45cm(1.25倍)は約58%増。 の暴力だ。ロータイプ水槽が構造的に有利な理由でもある。
  4. アクリルはキャスト板一択。押出板は安いが連続荷重とクラックに弱く、水槽には不適。購入時に必ず「キャスト」表記を確認する。
  5. エッジ処理は見た目以上に強度。ガラス破壊の起点は多くが小口の微小傷。面取り・研磨済みの板を選ぶと安全率の実力値が上がる。

FAQ——水槽のガラス厚でよくある疑問

底面ガラスの厚みも計算できる?

対象は側面(正面・背面・横面)の一枚板のみ。底面はマットやキャビネット天板で全面支持されるかどうかで条件が激変し、四辺支持×等分布荷重という別の係数表が必要になる。ウレタンマット等で全面を受ける一般的な設置なら底面の曲げ応力は側面より小さく、市販水槽でも底面は側面と同厚〜1ランク厚が普通。枠だけで受ける浮かせ設置の場合は別途検討してほしい。

フレーム付き水槽なら薄いガラスでも大丈夫?

上部フレームは「自由端だった上辺」を拘束するため、応力は素板より確実に下がる。ただし下がり幅はフレーム剛性次第で定量化が難しく、本ツールは補強なしの三辺支持で判定する安全側の設計だ。フレーム付き30cm規格が3mmで成立するのはこの補強のおかげ。市販フレーム付きが「注意」判定でも直ちに危険ではないが、自作のフレームレス(オールガラス)水槽は本ツールの判定をそのまま守るのを勧める。

強化ガラスを使えば薄くできる?

強度3〜4倍という数字だけ見れば薄くできそうだが、水槽には通常使わない。予兆なしに全面粉砕する割れ方が満水の全損に直結し、強化後の切断・穴あけ加工もできないからだ(豆知識の節を参照)。本ツールの破壊応力19.2 N/mm²はフロート板ガラス前提の値で、強化ガラスの判定には使えない。

入力した水槽の寸法は外部に送信される?

送信されない。計算はすべてブラウザ内のJavaScriptで完結し、サーバーへの送信・保存は一切ない。ページを閉じれば入力値は消える。オーダー水槽の見積もり寸法のような、外に出したくない数字も気兼ねなく試せる。

まとめ——板厚が決まれば、水槽設計は次の段階へ

「60cmなら5mm」の丸暗記から、σ = β·ρg·H³/t² で任意寸法を判定・逆算できる工学計算へ。板厚判定なら安全率の3段階判定、必要厚逆算なら0.5mm単位の板厚が数秒で出る。板厚が決まったら、水槽の水量・重量計算 で床にかかる総重量を、水槽ヒーター容量計算 で保温設備を確認して、水槽の設計を一本の線でつなげてほしい。ツールへの要望・不具合の報告は お問い合わせページ から。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。自作オーバーフロー水槽の相談で「ガラス厚の根拠が規格表しかない」ことに気づき、海外定番のβ係数法を日本の規格水槽プリセット付きでツール化した。

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