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水槽を立ち上げて、ろ過器も照明も底床も揃えた。いざ熱帯魚を入れようとしたそのとき、最後に手が止まるのがヒーター選びだ。「うちの60cm水槽、何ワットを買えばいいんだろう」。これ、アクアリウムを始めた人がほぼ全員つまずくポイントだよね。ショップの棚には50Wから300Wまで並んでいて、パッケージには「60cm水槽用」とだけ書いてある。でも同じ60cm水槽でも、暖房の効いたリビングに置くのと、夜は冷え込む玄関に置くのとでは、必要なワット数はまるで違う。
この計算機は、その素朴な疑問にズバリ数字で答える。水量(または水槽の寸法)と、冬の最低室温・目標水温・蓋の有無を入れるだけ。必要熱出力(W) を弾き出し、市販の50/100/150/200/300Wからちょうどいい1本を推奨する。さらに、室温から目標水温まで温めるのにかかる 昇温時間 の目安、水草水槽ならCO2の初期添加量まで出る。早見表を眺めて勘で選ぶのではなく、自分の部屋の条件で計算して選べる。それがこのツールだ。
なぜ作ったのか — 早見表は「自分の部屋」を知らない
きっかけは、冬に新しく立ち上げた60cm水槽でヒーターをケチった失敗だ。ショップの早見表に「60cm水槽=150W」とあったので、なんとなく1ランク下の100Wでいいだろうと選んだ。ところが置き場所が暖房を切ると10℃近くまで下がる北側の部屋。朝になると水温が22℃までしか上がらず、熱帯魚が白点病を出しかけた。早見表は水槽サイズしか見ていない。室温が何度まで下がるか、蓋をしているか、隙間風があるか——肝心な条件が一つも入っていなかったのだ。
ネットで「水槽 ヒーター 容量 計算」と調べても、出てくるのは結局どこも同じ早見表の焼き直しばかり。「水量×温度差で計算できます」と書いてあるサイトはあっても、係数の根拠が曖昧だったり、自分の数字を入れて計算してくれるツールはほとんど無かった。ワット数を「水槽サイズ」という1変数で決めるのは、服のサイズを身長だけで決めるようなもの。体型(室温・環境)を無視している。
だから作った。やることはシンプルだ。水量・室温差・設置環境の3つから必要熱出力を出し、市販ワット数に丸める。係数 k は、メーカーの選定チャート(60L→約100W、100L→約150W、200L→約300W)に一致するよう校正した。早見表が「答え」だけを載せるのに対し、このツールは「あなたの条件での答え」を出す。過小選定で生体を危険にさらさないよう、係数はやや安全側(高め)に振ってある。実際の消費電力はサーモスタットが自動で絞るので、少し大きめを選んでも電気代が跳ね上がる心配はない。これは§4で詳しく説明する。
アクアリウムのヒーター容量とは何か
水槽ヒーターの「容量」は熱の収支で決まる
ヒーターの「容量」とは、ざっくり言えば「1秒間にどれだけ熱を生み出せるか」という発熱の能力で、単位はワット(W)だ。ではなぜサイズの違う水槽で必要な容量が変わるのか。鍵は「熱の収支」にある。
水槽の水は、ガラス面・水面から絶えず外気へ熱を逃がしている。室温より水温が高ければ、放っておくと水はどんどん冷えていく。この逃げていく熱(熱損失)と、ヒーターが生み出す熱(発熱)がちょうどつり合ったところで、水温は一定に保たれる。お風呂の追い焚きを想像してほしい。湯船から逃げる熱と追い焚きで足す熱が同じなら、温度は変わらない。ヒーター選びとは、「逃げる熱を埋め合わせるのに十分な発熱能力をもつ機器を選ぶ」作業なのだ。
では逃げる熱はどれくらいか。これは主に3つで決まる。
逃げる熱(W) ≒ 水量(L) × 温度差ΔT(℃) × 環境係数 k
- 水量が多いほど、表面積も増えて逃げる熱は大きくなる
- 水温と室温の差
ΔTが大きいほど、熱は速く逃げる(冬ほど厳しい) - 蓋の有無や空気の流れ(環境係数
k)で逃げ方が変わる
このツールはこの 必要W = 水量 × ΔT × k というルールオブサム式を採用している。本来の伝熱は水槽の表面積と総括伝熱係数を使った U×A×ΔT で精密に求めるが、実務では水量に比例させた近似で十分実用的な精度が出る。実際、市販ヒーターの選定チャートもこの考え方に沿っている。
W/L(1リットルあたりのワット数)という目安
アクアリウム界には昔から「1リットルあたり1ワット」という経験則がある。60L水槽なら約60W、というざっくりした指標だ。ただしこれは「室温と水温の差が5〜6℃程度の標準的な冬」を暗黙の前提にしている。玄関のように室温差が10℃以上になる環境では、この目安では足りない。逆に暖房の効いた部屋なら過剰になる。だからこのツールでは「1W/L」を固定値にせず、室温差 ΔT を変数として明示的に計算に入れている。水温管理は熱帯魚飼育の生命線で、水温が安定しないと魚は免疫を落とし、白点病などの病気を招く。水温計と信頼できるヒーターは、ろ過と並んでアクアリウムの最重要機材だ。詳しくはアクアリウム(観賞魚飼育)の基礎も参照してほしい。
適正W数を外すと何が起きるか
容量不足は「冬に水温が上がらない」という致命傷になる
ヒーター選びで一番こわいのは容量不足(過小選定)だ。必要なワット数に足りないヒーターを入れると、最も冷える冬の夜間に、いくらヒーターがフル稼働しても発熱が熱損失に追いつかず、水温が目標まで上がらない。私の失敗例のように、26℃を狙ったのに22℃までしか上がらない、という事態が起きる。
熱帯魚にとって水温の低下は深刻だ。多くの熱帯魚は25〜28℃が適温で、20℃を下回ると活性が落ち、エサを食べなくなり、免疫力が低下する。そこに襲いかかるのが白点病——水温が下がると爆発的に増える寄生虫病で、放置すれば全滅もありうる。さらに水温が急に乱高下すると、魚はショック状態(pHショックならぬ温度ショック)で突然死することもある。「ちょっと小さめでも大丈夫だろう」という油断が、生体の命に直結するのだ。
過大選定は実はそれほど怖くない
では大きすぎるとどうなるか。意外かもしれないが、過大選定のデメリットは小さい。アクアリウムヒーターはサーモスタット(温度調節器)とセットで、設定水温に達すると自動で通電を止める。つまり300Wのヒーターを入れても、必要な発熱が100W分なら、サーモは1日のうち通電している時間を約3分の1に絞る。結果として消費電力(電気代)は必要な分しか食わない。大きいヒーターは「常に全力で電気を食う」わけではないのだ。だからこのツールは過小選定を避けるため、係数をやや高め(安全側)に校正している。迷ったら1ランク上で問題ない。
停電・故障に備える複数台分散
もう一つ実務で大事なのが「1本に頼りきらない」発想だ。大型水槽で必要熱出力が300Wを超える場合、このツールは1本の大容量ヒーターではなく300Wを複数台に分けて提案する。理由は、ヒーターが1本だと故障した瞬間に水温が一気に落ちて生体が危険にさらされるから。2本に分けておけば、1本が壊れてももう1本が時間を稼いでくれる。サーモスタットが別体のタイプを選べば、温度調節器の故障にも備えやすい。命を預かる機材だからこそ、冗長性を持たせる設計が効く。
活躍する場面
このツールが力を発揮するのは、まず水槽の立ち上げ前の機材選定だ。水槽・ろ過器と同時にヒーターを買い揃えるとき、自分の部屋の冬の室温を入れれば、勘に頼らず適正ワット数が決まる。次に引っ越しや模様替えで設置環境が変わったとき。同じ水槽でも、リビングから北側の部屋に移しただけで必要W数は跳ね上がる。「前は大丈夫だったのに今年は水温が上がらない」という場面で、いまの環境を入れ直して再チェックできる。
大型水槽の複数台構成を検討するときも便利だ。120cmクラスでは1本では足りないことが多く、何台に分けるべきかを数字で示してくれる。そして水草水槽でCO2添加を始めるとき。水草レイアウトは水温を25℃前後に保ちつつCO2を添加するが、このツールはヒーター選定とあわせてCO2初期添加量の目安まで一度に出すので、立ち上げ初日の設定がぐっと楽になる。
基本の使い方(3ステップ)
ステップ1:水量を入れる。 実水量がわかればそのまま入力。わからなければ「水槽寸法で入力」に切り替えて幅・奥行・水位を入れると自動で水量を計算する。「60cm規格(57L)」などの規格水槽プリセットからワンタップで選ぶこともできる。底床や流木の分を引いた実水量を使うとより正確だ。
ステップ2:室温・目標水温・環境を設定する。 室温は「冬の夜間・暖房OFF時の最低室温」を入れるのがコツ。一番冷える瞬間に合わせれば安全側になる。目標水温は飼育対象のプリセット(一般熱帯魚26℃・ベタ27℃など)から選べる。蓋の有無など設置環境を選び、水草水槽なら水槽タイプを「水草」に切り替える。
ステップ3:結果を読む。 必要熱出力・推奨ヒーター・昇温時間の目安 が即座に表示される。推奨ワット数のヒーターを買えばOK。水草モードなら CO2初期添加量 の目安も出る。結果はコピーボタンでメモに残せる。
具体的な使用例・検証データ(7ケース)
実際に7つのケースを計算してみる。どれも「入力 → 必要W → 推奨W → 昇温時間」の流れで読んでほしい。数値はツールの計算式そのままだ。
ケース1:60cm規格・冬のリビング(標準例)
- 入力:水量57L/室温20℃→目標26℃(ΔT6)/蓋あり/魚メイン
- 必要熱出力:
57 × 6 × 0.3= 102.6W - 推奨:102.6Wを超える最小の市販W数 → 150W
- 昇温時間:約2.7時間(20℃から26℃まで)
最も典型的な60cm熱帯魚水槽。早見表通り150Wに落ち着くが、もし室温が18℃まで下がる部屋なら必要Wはさらに増える。ここが早見表との分かれ目だ。
ケース2:60cm水草水槽・寸法入力(CO2あり)
- 入力:寸法60×30×36cm → 水量
60×30×36/1000=64.8L/室温22℃→目標25℃(ΔT3)/蓋あり/水草 - 必要熱出力:
64.8 × 3 × 0.3= 58.32W - 推奨:100W
- 昇温時間:約2.3時間/CO2初期添加量:
64.8/50= 約1.3滴/秒
水草レイアウトは目標水温が25℃と低めで、暖房の効くリビングなら必要Wは小さい。寸法入力でも実水量を自動計算してくれるのが便利。CO2はこの1.3滴/秒を出発点に、ドロップチェッカーで微調整する。
ケース3:90cm水草水槽・リビング
- 入力:水量162L/室温20℃→目標25℃(ΔT5)/蓋あり/水草
- 必要熱出力:
162 × 5 × 0.3= 243W - 推奨:300W
- 昇温時間:約3.1時間/CO2初期添加量:
162/50= 約3.2滴/秒
90cmクラスになると300Wが視野に入る。水量が増える分、CO2も3.2滴/秒とかなり多めの出発点になる。点灯後の溶存量を見ながら必ず調整を。
ケース4:45cmベタ水槽・寝室
- 入力:水量35L/室温19℃→目標27℃(ΔT8)/蓋あり/魚メイン
- 必要熱出力:
35 × 8 × 0.3= 84W - 推奨:100W
- 昇温時間:約3.3時間
ベタは27℃と高めの水温を好む。水量は少ないが目標水温が高くΔTが8℃と大きいため、小さい水槽でも100Wが必要になる。「小さい水槽=50Wでいい」と決めつけてはいけない好例だ。
ケース5:120L・蓋なし(複数台ライン)
- 入力:水量120L/室温16℃→目標26℃(ΔT10)/蓋なし(k=0.45)/魚メイン
- 必要熱出力:
120 × 10 × 0.45= 540W - 推奨:540Wは300Wを超えるため → 300W×2台(合計600W)
- 昇温時間:約2.3時間
蓋なしで室温も低いと一気に厳しくなる。540Wは市販単体ではまかなえないので、ツールは300Wを2台に分散提案する。1本故障時のリスク分散にもなる。
ケース6:120cm大型・寒い玄関(過酷な例)
- 入力:水量220L/室温14℃→目標26℃(ΔT12)/寒い場所(k=0.6)/魚メイン
- 必要熱出力:
220 × 12 × 0.6= 1584W - 推奨:300W×6台(合計1800W)が計算上必要
ここまで来ると現実的でない。ツールは「室温と目標水温の差が大きすぎる」と警告を出す。この場合は水槽側でワット数を増やすより、部屋の暖房や水槽の断熱(バックスクリーン・保温シート)で室温そのものを上げる方が、はるかに安全で省エネだ。計算が極端な値を返したら、それは「設置環境を見直せ」というサインだと読む。
ケース7:室温が目標以上(加温不要)
- 入力:水量57L/室温27℃→目標26℃(ΔT−1)/蓋あり/魚メイン
- 必要熱出力:0W(室温が目標を上回るため加温不要)
- 推奨:最小の50W
- 昇温時間:0時間
夏場や暖かい部屋では室温が目標水温を超えることもある。このとき常時加温は不要だが、急な冷え込みに備えた保温・水温安定の目的なら最小の50Wで十分。ツールはこの状態を検知して「加温は不要」と案内する。
仕組み・アルゴリズム
なぜ「水量×ΔT×k」を採用したか
熱損失を求める方法は大きく2つある。一つは表面積と総括伝熱係数を使う精密な U×A×ΔT モデル。もう一つが水量に比例させるルールオブサム式 必要W = 水量 × ΔT × k だ。前者は理論的に正確だが、ユーザーに水槽の表面積や断熱性能を入力させる必要があり、初心者には荷が重い。しかも水槽は形状が似通っているため、水量と表面積はほぼ比例する。だから実務では後者の近似で十分な精度が出る。このツールは「入力の手軽さ」と「実用精度」のバランスから、水量比例式を選んだ。
係数 k を市販チャートで校正する
肝になるのが環境係数 k の決め方だ。理屈だけで決めず、メーカーの実機選定チャートに一致するよう逆算して校正した。代表的なチャートは「60L→約100W、100L→約150W、200L→約300W(いずれもΔT5〜6℃想定)」。たとえば60L・ΔT6なら、100W = 60 × 6 × k から k ≒ 0.28。これを丸めて、標準的な蓋あり環境を k=0.3 とした。蓋なしは水面開放で蒸発・放熱が増えるため k=0.45、寒い場所・隙間風があると対流損失がさらに増えるため k=0.6 に設定している。蓋の有無だけで係数が1.5倍変わるのは、水面からの蒸発潜熱の影響が大きいからだ。
const k = installEnv === "lid" ? 0.3 : installEnv === "draft" ? 0.6 : 0.45;
const deltaT = target - room;
const requiredW = volumeL * Math.max(deltaT, 0) * k;
市販ワット数への丸めと複数台分散
求めた requiredW を、市販の[50, 100, 150, 200, 300]Wのうち「requiredW以上で最小の値」に丸める。これが推奨ヒーターだ。300Wでも足りない場合は、Math.ceil(requiredW / 300) 台の300Wヒーターに分散する。ケース5なら540W → 300W×2台(合計600W)。1本に集約せず分けるのは、故障時の全停止リスクを避けるためだ。
昇温時間は水の比熱から逆算
「何時間で温まるか」は、水を温めるのに必要なエネルギー量から計算する。水の比熱は4186 J/(kg·K)で、これは「1リットルの水を1℃上げるのに4186ジュール必要」という意味。所要熱量は Q = 4186 × 水量 × ΔT、これをヒーター出力(W=J/秒)で割れば秒数が出る。3600で割って時間に直す。
warmupHours = (4186 × volumeL × ΔT) / (heaterW × 3600)
ケース1で検算すると (4186 × 57 × 6) / (150 × 3600) ≒ 2.65時間。ただしこれは熱損失をゼロとした楽観値で、実際は温めている間も熱が逃げるため、これより長くかかる。立ち上げ初日の「だいたいの目安」として読んでほしい。
CO2初期添加量は50L=1滴/秒が基準
水草水槽のCO2は「約50Lにつき1滴/秒」を出発点とする経験則を採用し、水量比例で co2Bubbles = 水量 / 50 滴/秒を提示する。ケース2の64.8Lなら約1.3滴/秒。これはあくまでスタート地点で、点灯後の溶存量・水流・生体への影響を見ながら、ドロップチェッカー(pH/KH指示薬)が緑色になるよう微調整する前提だ。係数を全体に安全側(やや高め)へ振っているのは、過小選定で生体を危険にさらすより、サーモが絞る前提で少し余裕を持たせる方が安全だからである。
ショップの早見表・他の計算ツールと何が違うのか
水槽 ヒーター 容量 計算の情報源は、ほとんどがショップの「水量別おすすめW数 早見表」だ。「60cm水槽なら150W」「90cmなら200W」といった具合に、水量と推奨Wの対応表が載っているだけ。便利ではあるが、決定的な前提が抜けている。あなたの部屋の室温と、水槽の設置環境が反映されていないのだ。
同じ60cm・57Lでも、暖房の効いたリビング(室温20℃)と、暖房を切る寝室や寒い玄関(室温14℃)では、必要な熱出力はまるで違う。蓋があるかないかでも蒸発と放熱の量が変わる。早見表はこの差を「だいたい中間」で丸めているので、暖かい部屋なら過大、寒い部屋なら容量不足になりやすい。
このツールは式 requiredW = 水量L × ΔT × k の ΔT(目標水温 − 室温)と k(蓋あり0.3/蓋なし0.45/寒い場所0.6)をあなたが実際に入力する。だから「うちの部屋・うちの水槽」に合った必要W数が出る。早見表が「平均的な部屋」を仮定するのに対し、こちらは「あなたの部屋」を計算する点が根本的に違う。
役割分担もはっきりしている。水量がそもそも分からないなら、先に /aquarium-water-calc で底床・流木を差し引いた実水量を出してから、こちらでW数を計算する。早見表を一枚読むより、自分の数字を入れて確かめるほうが速いし、外さない。
豆知識:ヒーターまわりの「知っておくと得する」話
オートヒーターとサーモスタット別体、どっちを選ぶ
熱帯魚ヒーターには大きく2タイプある。オートヒーターは温度が固定(多くは26℃前後)で配線1本、安くて立ち上げが楽。一方サーモスタット別体タイプは、ヒーター本体と温度コントローラーが分かれていて、設定温度を自由に変えられる。ベタの27℃やディスカスの28℃のように対象ごとに水温を変えたいなら別体タイプ、一般的な熱帯魚を26℃で飼うだけならオートで十分だ。複数台構成にするときも、別体なら1つのサーモで複数ヒーターを束ねたり、逆に分散させたりと自由が利く。
カバーは「飾り」ではない
ヒーター本体に付いている樹脂カバーは、見た目のためではなくやけど・ヤケ防止の安全装置だ。生体(とくに底に張り付くプレコやコリドラス、低層を泳ぐ魚)がむき出しの発熱体に直接触れると、火傷や最悪の事故につながる。空焚き(水位低下でヒーターが空気中で発熱)を防ぐためにも、ヒーターは必ず水中で、横向きまたはメーカー指定の向きで使うこと。
冬だけじゃない、夏の「逆の悩み」
ヒーターは冬の道具だが、夏は逆に水温が上がりすぎる。日本の真夏は室温が30℃を超え、照明やフィルターの発熱も加わって、何もしないと水温が32℃以上に達して生体が危険になる。対策は水面に風を当てる冷却ファン(気化熱で1〜3℃下げる)か、本格的な水槽用クーラー。ファンは安いが水の蒸発が早まるので、足し水(カルキ抜き)の頻度が上がる点に注意。冷却の発熱量計算はこのツールの対象外だが、「夏はヒーターを切るのではなくサーモの下限設定に任せる」と覚えておくと管理が楽になる。外気温の年間変動については気象庁の統計も参考になる。
失敗しないためのTips
- 蓋ひとつで電気代が変わる — 蓋ありと蓋なしでは係数 k が 0.3 と 0.45、つまり同じ水槽でも必要熱出力が約1.5倍変わる。水面をガラス蓋やアクリル板で覆うだけで蒸発潜熱の損失が減り、冬場の消費電力が目に見えて下がる。レイアウト水槽で開放にしたいなら、その分W数を1ランク上げて見積もるのが安全。
- 室温は「冬の最低」で見積もる — 昼間の暖房ONの室温で計算すると、暖房を切る深夜・早朝に水温が下がる。ヒーターが最も働くのは一番寒い時間帯なので、暖房OFF時の最低室温を入れること。これでΔTが大きく取れ、容量不足を避けられる。
- 予備ヒーターを1本持っておく — ヒーターは消耗品で、ある日突然壊れる。冬に故障して気づいたときには水温が急落し、生体がショックを起こす。安価な小型ヒーターでいいので予備を1本ストックしておくと、いざという時に命を救える。大型水槽なら最初から複数台に分けておくと、1台故障しても全停止しない。
- 水草はCO2より先に「光と肥料」 — CO2初期添加量の目安が出るが、CO2は水草育成の最後のピース。まず十分な光量と底床・液肥が整っていないと、CO2を入れても水草は育たず、むしろコケが増えるだけになる。光・肥料・CO2の順で詰めていくのが王道だ。
よくある質問
結局、何ワットを選べばいいの?
水量・室温・目標水温・設置環境を入力すれば、必要熱出力(W)と、それを満たす市販ヒーターの推奨W数(50/100/150/200/300W)が自動で出る。基本は必要熱出力以上で最も近い市販W数を選べばよい。たとえば必要102.6Wなら100Wでは足りないので150Wが推奨になる。迷ったら推奨値どおりに選べば外さない。
推奨より大きめのヒーターを買ったら電気代は増える?
ほとんど増えない。ヒーターはサーモスタットが設定水温に達すると自動でOFFになり、必要なときだけ通電する。300Wでも100Wでも、維持に必要な熱量が同じなら消費電力量はほぼ同じだ。大きいヒーターは設定温度に早く到達してOFFになるだけ。むしろ過小選定(容量不足)のほうが、ずっと通電しっぱなしでも水温が上がらず危険なので、迷ったら大きめを選ぶほうが安全側になる。
昇温時間の目安より実際は遅い気がする。なぜ?
このツールの昇温時間は、水の比熱から所要熱量 Q = 4186 × 水量L × ΔT を計算し、ヒーター出力で割った熱損失を無視した楽観値だから。実際は水を温めている最中も水槽から熱が逃げ続けるので、表示より長くかかるのが普通だ。蓋なしや寒い場所ほど差が大きい。「最低でもこれくらい」という下限の目安として見てほしい。新規立ち上げで一気に温めたいときは、最初だけ室温を上げる(暖房を入れる)と早く目標に届く。
サーモスタットは別途必要?
ヒーターのタイプ次第。オートヒーターは温度コントローラーが内蔵されているので、それ単体でOK(配線も1本)。サーモスタット別体タイプのヒーター本体には温度制御機能がないので、別売りのサーモスタットが必須になる。別体は設定温度を自由に変えられ、複数台の制御もできるのが利点。このツールはW数の選定に特化していて、どちらのタイプを選ぶかは飼育対象(水温を変えたいか)で決めるとよい。
水草モードのCO2「滴/秒」はどう調整すればいい?
表示される値は約50Lにつき1滴/秒を基準にした出発点で、ゴールではない。CO2の適正量は照明の強さ・水流・生体の数で変わるため、必ず**ドロップチェッカー(pH/KH指示薬)**を併用してほしい。点灯後しばらくして指示薬が緑色なら適正、青なら少なすぎ、黄色なら多すぎ(生体に危険)。表示値で添加を始め、緑になるよう少しずつ滴数を増減して合わせていく。生体が水面で口をパクパクさせたら入れすぎなので、すぐ減らすこと。
入力したデータはどこかに保存される?
保存されない。すべての計算はブラウザ内(端末上)で完結し、入力した水量・室温・水温などのデータがサーバーに送られることはない。ページを閉じれば入力内容も消える。会員登録もログインも不要で、気軽に何度でも条件を変えて試せる。
まとめ
水槽のヒーター選びは「早見表の数字をそのまま買う」のではなく、自分の部屋の最低室温と設置環境を反映して必要W数を出すのが正解だ。このツールなら水量・室温・目標水温・蓋の有無を入れるだけで、必要熱出力・市販推奨W数・昇温時間の目安、水草水槽ならCO2初期添加量まで一度に分かる。
水量があやふやなら、先に /aquarium-water-calc で底床や流木を差し引いた実水量を出しておくと精度が上がる。ヒーターを決めたら、続いて /electricity-cost で冬場の電気代を見積もれば、ランニングコストまで把握できる。大切な生体のために、勘ではなく数字で機材を選んでほしい。
不具合や要望があれば、お問い合わせページから気軽に教えて。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。北側の冷える部屋で60cm水槽のヒーターを100Wにケチり、白点病を出しかけた失敗から、室温と設置環境を反映できる計算機を作った。早見表ではなく自分の部屋の数字で選んでほしい。
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