ボーメ度・比重・密度の相互換算ツール

日本式(JIS 144.3)と米国式(145/140)を必ず併記。比重の水の基準温度まで持ち回る

手元のボーメ度・比重・密度のどれか1つを入れると、残りと日本式(JIS 144.3)・米国式(145/140)の両方のボーメ度が出る。比重は「水を何℃のものと比べたか」で値が変わるので、その基準も一緒に持ち回る。

プリセット

入力する量

日本で買った浮ひょうは通常こちら(JIS Z 8804)。結果は常に両式を併記する。

測定条件

日本式(JIS)15.00 °Bé
重ボーメ度 Bh
米国式15.20 °Bé
比重60/60°F 基準

同じ液について、米国式は日本式より +0.20 °Bé ずれる。どちらが正しいかではなく、どちらの目盛を読んだかの違い。

手元の換算表が米国式だった場合、同じ「15.00」という数字は比重 1.1143 を指す(日本式の 1.1160 に対して 0.152 % の差)。 目盛が高い側ほどこの差は開く。

比重と密度

比重 15/4℃

1.1160

JIS の各スケールの引数

比重 15/15℃

1.1170

同一温度・厳密

比重 60/60°F 相当

1.1171

試料温度差は未補正

密度(15℃)

1.1160 g/cm³

密度(SI)

1,116.0 kg/m³

液の区分

重液

比重 > 1

4つのボーメ度

重ボーメ度(日本式)

15.00 Bh

軽ボーメ度(日本式)

-5.00 Bl

重ボーメ度(米国式)

15.20 °Bé

軽ボーメ度(米国式)

-4.67 °Bé

日本式は重+軽が必ず10になる(係数がどちらも144.3のため)。米国式は145と140で係数が違うので一定にならない。

同じ条が定める他のスケール

日本酒度

-150.0

用途域外(日本酒用・比重1.00前後)

API度

-4.83

用途域外(石油用・比重1未満)

トワッデル度

23.2

比重15/4℃ 基準

牛乳度

116.0

用途域外(牛乳用・比重1.00〜1.10)

4つとも JIS Z 8804:2012 の箇条3 がボーメ度と同じ条で定義している同族の指標。用途の比重域を外れても数値そのものは計算できるが意味は無いので、その旨を各セルに添えている。

比重とボーメ度の対応

比重1.000日本式(JIS 144.3)010204060721020406080100上=重ボーメ / 下=軽ボーメ0.60.81.01.21.41.61.82.0比重 t/4℃米国式(145 / 140)010204060721020406080100
日本式(JIS 144.3)米国式(145 / 140)いまの液の位置橙の破線 = 同じ数字を米国式で読んだときに飛ぶ比重
純水がちょうど0にならない理由:JIS のボーメ度は比重15/4℃(水は4℃のときの密度を1とする)で定義されているので、15℃の純水は −0.13 重ボーメ度になる。米国式は60/60°F(水も同じ温度)基準なので純水がちょうど0になる。目盛の0の位置が日米で違うのはこのため。
米国式ボーメ度とAPI度は比重60/60°F 基準。このツールは水の基準温度だけを換算していて、試料そのものの温度差(測定温度と15.56℃の差)は補正していない。液の熱膨張率が分からないと補正できないため。
浮ひょうの目盛紙を先に見てほしい。JIS B 7525-3 は目盛紙に「重ボーメ度」「15/4℃」「水平面視定」を表示するよう定めているので、入力欄で迷ったら現物に書いてある。示度はメニスカスの読み方と器差でも変わる。
重ボーメ度は計量単位規則 別表第一に定義があるが、計量法の法定計量単位ではない。取引または証明に使う数値は比重または密度で示すのが本筋で、ボーメ度は現場の作業指標として使われている。軽ボーメ度は計量単位規則には無く、定義は JIS Z 8804:2012 3.9 による。濃度[wt%]に換算できるのは今のところ食塩水だけ。硫酸・水酸化ナトリウム・塩酸・めっき液は比重と濃度の対応表を一次資料で確かめられていないので出していない。「66ボーメ硫酸」のような呼び名の液も、比重までは上の換算で出せる。

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同じ「66ボーメ」なのに、比重が0.5%合わない

液面に浮かべた浮ひょうの目盛を読む。66.0。手元の換算表を引くと比重1.8354。ところが前任者が残したノートには、同じ66ボーメの行に1.8429と書いてある。比重で0.5%前後の開き。

浮ひょうを読み違えたわけでも、どちらかの表が刷り間違えているわけでもない。ボーメ度から比重に直す式が、日本と米国で違う——理由はそれだけだ。日本のJISが使う係数は144.3、米国式は145。この係数は分子にも分母にも効くので、目盛の数字が大きくなるほど差が開いていく。15ボーメなら比重の差は0.15%、66ボーメでは0.50%。

厄介なのは、換算表にも解説ページにも「これはどちらの式で作った表か」がたいてい書かれていないこと。数字だけが独り歩きして、管理値としてそのまま次の担当者に引き継がれていく。

このツールは、ボーメ度・比重・密度のうちどれを入れても残りの2つを返す。そのうえで日本式と米国式のボーメ度を必ず並べて出す。さらに「その数字を相手の式で読んだら比重はいくつになるか」まで出すので、手元の表がどちらで作られていても差の大きさがその場で分かる。

なぜ作ったのか——片方の式しか載っていない解説ページ

きっかけは、めっき液のボーメ度を換算表で引いたら前任者のノートと合わなかったことだった。調べ始めて最初に困ったのは、日本語で読める解説ページの多くが片方の式しか載せておらず、しかもそれが日本式か米国式かを書いていない点だ。計測器メーカーの製品ページも同じで、「ボーメ度と比重の対応表」は出てくるのに、その表の出自が書かれていない。読者は自分が見ている表がどちらの系統なのか判別できない。

英語圏には換算サイトがいくつもあるが、そちらは145の米国式しか持っていない。日本で買った浮ひょうで読んだ値をそのまま入れると、静かに0.5%ずれた比重が返ってくる。ずれていることに気づく手がかりが画面上に何もないのが一番こわい。

定義そのものは規格に全部書いてある。JIS Z 8804:2012 の箇条3に、重ボーメ度も軽ボーメ度も、日本酒度もAPI度もトワッデル度も牛乳度も並んでいる。ただし規格票は有償で、手元に置いている人は限られる。無料で読める形で、しかも実際に数字を入れて確かめられるものが見当たらなかった。

そこで独自性を3点に置いた。

(a) 日本式と米国式を必ず並べ、差を数値で出す。 片方だけを表示して「これが答え」と見せる設計にしない。同じ液について両方の目盛の読みを出し、さらに「日本式で読んだこの数字を米国式の表で引いたら比重はいくつになるか」と、その乖離率[%]まで出す。

(b) 比重の「水の基準温度」を入力欄として表に出した。 比重には必ず「どの温度の水と比べたか」が付く。多くの換算サイトはこれを持っておらず、比重と密度を同じものとして扱っている。ここを選ばせることで、同じ1.116という数字が場合によって別の量を指すことが画面上で見える。

(c) 同じJISの条に載っている親戚も一緒に出す。 日本酒度・API度・トワッデル度・牛乳度は、ボーメ度と同じ箇条3で、同じ「比重をずらして掛ける」形で定義されている。別々のサイトを渡り歩く理由がないので、まとめて出すことにした。

ボーメ度とは何か——比重・密度との関係を第一原理から

比重 密度 違い——「何倍か」には必ず相手がいる

密度は、その物質の1立方センチメートルが何グラムかという絶対量だ。単位が付く(g/cm³、あるいはSIならkg/m³)。温度を書けば、それ以上の但し書きは要らない。

比重は「同じ体積の水の何倍か」という比なので、単位が付かない。そのかわり比べる相手の水の温度を決めないと値が確定しない。水は4℃のときいちばん重く、そこから温度が上がるとわずかに軽くなるからだ。15℃の水は4℃の水より約0.087%軽い。この0.087%が、後で効いてくる。

だから比重には「15/4℃」「20/20℃」「60/60°F」のような表記が付く。スラッシュの前が試料の温度、後ろが基準にした水の温度。「比重15/4℃」は、15℃の試料を4℃の水と比べた値という意味になる。JIS B 7525-3:2018 の箇条15は、浮ひょうの目盛紙にこの表記を出すことを定めているので、手元に現物があるなら必ずどこかに書いてある。

たとえるなら「うちの子の身長は平均の1.05倍」という言い方に近い。学年の平均なのか全校平均なのかを言わないと、1.05という数字だけでは何も決まらない。比重の後ろ半分は、その「どの平均か」にあたる。

ボーメ度 とは——目盛を等間隔にするための一次分数変換

浮ひょうは、液が重いほど浅く沈む。沈む深さは押しのけた液の体積で決まるので、棒に等間隔の目盛を刻んだとき、その目盛が等間隔に対応するのは比重そのものではなく比重の逆数の側になる。ボーメ度に割り算が入っているのはこのためだ。

日本式の重ボーメ度 Bh は次の形をしている。

Bh = 144.3 − 144.3 / s = 144.3 (1 − 1/s)

  s : 比重 15/4℃

逆に解けば、目盛の読みから比重が出る。

s = 144.3 / (144.3 − Bh)

比重が1のとき Bh は0、比重が大きくなるほど Bh も大きくなる。分母に s があるので目盛と比重の関係は直線ではなく、上のほうほど1目盛あたりの比重の増え方が大きい。

重ボーメ 軽ボーメ——足すと必ず10になる

水より軽い液に重ボーメ度の目盛を当てると値が負になるので、軽液には別の目盛を使う。軽ボーメ度 Bl の定義はこうだ。

Bl = 144.3 / s − 134.3

切片が134.3、つまり144.3から10を引いた値になっている。この構造のおかげで、任意の比重について次が恒等的に成り立つ。

Bh + Bl = (144.3 − 144.3/s) + (144.3/s − 134.3)
        = 144.3 − 134.3
        = 10

たとえば重ボーメ度の目盛で −5.00 と読んだ液は、比重15/4℃ が0.9665の軽液で、軽ボーメ度の目盛なら15.00と読める。−5と15を足すとちょうど10。手元の浮ひょうがどちらの目盛か分からなくなったときは、この関係で当たりが付けられる。

なお米国式は重液の係数が145、軽液が140(切片130)と係数がそろっていないので、この足して10の関係は成り立たない。同じ「ボーメ度」という呼び名でも中身の設計が違う。

定義はどこに書いてあるか

日本式の144.3は、JIS Z 8804:2012『液体の密度及び比重の測定方法』の3.8(重ボーメ度)・3.9(軽ボーメ度)にそのまま載っている。同じ条に日本酒度・API度・トワッデル度・牛乳度も並ぶ。

さらに法令側にも定義がある。計量単位規則 別表第一は重ボーメ度を「一から〔4℃の同体積の水の質量に対する比〕の逆数を減じた値の百四十四・三倍」と定め、単位記号を Bh としている。JISと法令と、浮ひょうの規格であるJIS B 7525-3の三者が、そろって144.3を指している。一方で軽ボーメ度は計量単位規則には無く、JIS Z 8804 3.9 の定義による。

この0.5%が実務で何を壊すか

(a) 呼び名がそのまま数字として使われる。 「66ボーメ硫酸」は濃硫酸の通称としてほぼ固有名詞化しているが、この66を比重に直すと日本式では1.8429になる。米国式の表に載っているのは1.8354で、こちらは比重60/60°F での表記なので、水の基準をそろえて比べ直すと1.8337。同じ66という数字が、0.50%違う比重を指している。 仕様書に「66°Bé」とだけ書いてあれば、受け取った側がどちらの式で読むかは運任せになる。

(b) 管理幅と同じ大きさの系統誤差が乗る。 めっき液・エッチング液の濃度管理は、前任者が作った換算表と「±0.5ボーメで管理」のような幅で回っていることが多い。ところが同じ液を日本式で66.00と読んだとすると、米国式の目盛では66.40。式を取り違えるだけで管理幅の大半を食い潰す。しかも系統誤差なので、測定を何回繰り返しても消えない。表の出所が分からないまま管理値だけ引き継ぐと、この誤差は誰にも見えないまま固定される。

(c) 法令が水の基準温度を書いていない場合がある。 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令は、生乳・牛乳の比重(15℃)を1.028以上と定めている。牛乳度でいえば28が下限だ。ところが省令には水の基準温度が書かれていない。JIS Z 8804 の牛乳度は比重15/4℃ が引数なので、同じ測定値1.032でも「15/15℃ のつもり」で読むか「15/4℃ のつもり」で読むかで牛乳度が31.10と32.03に分かれる。下限28に対して0.9牛乳度の差は無視できる大きさではない(§7の牛乳のケースを見てほしい)。

(d) 温度補正の係数は液種ごとに違う。 JISのボーメ度は比重15/4℃、つまり試料15℃が前提だ。現場でぴったり15℃で測れるとは限らない。JIS K 1408『けい酸ナトリウム』は、15℃以外で測ったときの補正を「A = a − (15 − t) × 0.04」と定めている。1℃あたり0.04ボーメ度、5℃ずれれば0.2ボーメ度動く計算になる。重要なのはこの0.04がけい酸ソーダについての値であって、他の液に流用できないことだ。液の熱膨張率は溶質と濃度で変わる。「温度補正しておいたから大丈夫」と言うとき、どの液の係数を使ったのかを言えないなら、補正した気になっているだけになる。

手が止まるのはこの4つの場面

めっき・表面処理の液管理。 浮ひょうで読んだ値を日報に比重で記録する運用は多い。読みは°Bé、記録は比重、管理表は前任者作成、という三重の翻訳が発生するので、どこかで式の系統が入れ替わっても気づけない。両式を並べて記録に残しておけば、あとから追える。

海外から来た仕様書に°Béと書いてある。 装置メーカーや薬品サプライヤーの資料が米国式で書かれていて、日本の浮ひょうで読んだ値と突き合わせる場面。数字が近いので一致していると思い込みやすく、濃度域が高いほど実際の差は開く。

食塩水の濃度を比重から知りたい。 漬物の塩分、塩水選の比重合わせ、融雪剤の濃度確認。食塩水を選べば0〜23 wt%・0〜40℃の範囲で濃度[wt%]も一緒に出る。

業界固有の目盛と比重を行き来する。 日本酒度、牛乳度、API度、トワッデル度。どれも比重の言い換えでしかないのに、業界ごとに別々の表を引くことになりがちだ。同じJISの条から出ている以上、まとめて出したほうが早い。

基本の使い方——3ステップ

1. 手元にある量を選ぶ。 ボーメ度・比重・密度の3つから、いま持っている値の種類を選ぶ。どれを入れても残り2つが出るので、逆算の向きを気にしなくていい。

2. 値と、その値の前提を入れる。 ボーメ度なら、重ボーメか軽ボーメか、読んだ目盛が日本式か米国式かを選ぶ。比重なら、水の基準を「4℃の水」と「試料と同じ温度の水」から選ぶ。ここで迷ったら現物の目盛紙を見てほしい。JIS B 7525-3 が「重ボーメ度」「15/4℃」「水平面視定」の表示を義務づけているので、必要な情報はたいてい刷り込まれている。密度を入れる場合は絶対量なので水の基準は要らない。

3. 測定温度を入れて結果を読む。 日本式・米国式のボーメ度が並んで表示され、比重が3通りの表記(t/4℃・t/t℃・60/60°F相当)、密度がg/cm³とkg/m³で出る。日本酒度・API度・トワッデル度・牛乳度も同時に出る。液種で食塩水を選べば濃度[wt%]も加わる。比重の軸に日本式と米国式のボーメ目盛を二段に重ねた図も出るので、同じ数字が違う比重の位置に来る様子がそのまま見える。

実際に換算してみる——8ケース

以下はすべてツールに同じ値を入れて得た出力を、そのまま書いている。

ケース1: 重ボーメ15度(日本式・15℃) 入力は「ボーメ度15・重ボーメ・日本式・15℃」。結果は比重15/4℃ が1.1160、密度が1.1160 g/cm³。米国式で読めば15.20度で、差は+0.20度。同じ「15」という数字を米国式の表で引くと比重1.1143になり、乖離は0.15%。低い目盛では差はまだ小さい。

ケース2: 66ボーメ(日本式・15℃) 入力は「ボーメ度66・重ボーメ・日本式・15℃」。比重15/4℃ が1.8429、密度1.8429 g/cm³。同じ66を米国式で読むと比重1.8337で、乖離は0.50%。ケース1の0.15%と比べると3倍以上に開いている。目盛が高い側ほど式の違いが効くのがこのツールでいちばん見せたい挙動だ。ちなみに米国式の目盛で66.00と読める液は、比重60/60°F が1.8354・比重15.56/4℃ が1.8337・密度1.8336 g/cm³。公表されている濃硫酸の密度1.83とよく合う。

ケース3: 日本式の軽ボーメ30度(15℃) 入力は「ボーメ度30・軽ボーメ・日本式・15℃」。比重15/4℃ が0.8783、密度0.8782 g/cm³、API度は29.46。米国式の目盛なら29.25度で、差は−0.75度。重液側と違って符号が逆になる。

ケース4: 米国式の軽ボーメ30度(15.56℃) 入力は「ボーメ度30・軽ボーメ・米国式・15.5556℃」。比重60/60°F が0.8750、比重15.56/4℃ が0.8742。日本式なら30.77度で、差は−0.77度。ケース3と並べると、軽液側では日米差が0.75〜0.77度あることが分かる。重ボーメ15度での0.20度と比べて桁が違う。軽ボーメの目盛は、どちらの式で刻まれたかを重ボーメ以上に確かめる必要がある。

ケース5: 同じ「1.116」でも水の基準が違うと別の量 (a)「比重1.116・水4℃基準・15℃」で入れると、比重15/4℃ はそのまま1.116、重ボーメ度は15.00(正確には14.999)、トワッデル度23.2。 (b)「比重1.116・水も同温度・20℃」で入れると、内部の比重20/4℃ は1.1140に落ちて、重ボーメ度は14.77になる。 数字も単位も同じ「1.116」なのに、目盛の読みが0.23度動く。前任者のノートに「比重1.116」とだけ書いてあったとき、この0.23度をどう扱うかは書いた人にしか分からない。

ケース6: 純水を測っても0にならない 「比重0.999128・水4℃基準・15℃」(15℃の純水)を入れると、日本式は重ボーメ −0.13度/軽ボーメ 10.13度、米国式は重ボーメ +0.01度になる。 一方「比重1.0・水も同温度・15.5556℃」(60/60°F の純水)なら、米国式は重ボーメ 0.00度・軽ボーメ 10.00度、API度はちょうど10.0。 日本式で純水が0にならないのは故障ではない。 JISのボーメ度が比重15/4℃、つまり4℃の水を1とする定義だからで、15℃の水は4℃の水よりわずかに軽い。米国式は水も同じ60°Fで比べるので、純水がぴったり0になる。目盛の0の位置が日米で違う、という言い方もできる。

ケース7: 食塩水の濃度も出す 「密度1.0706 g/cm³・20℃・液種=食塩水」を入れると、比重20/4℃ が1.0706、重ボーメ度9.52、濃度10.00 wt%。同じ入力で液種を「指定しない」にすると、濃度のセルだけが空になり、ボーメ度・比重・密度は変わらない。液種を選ばなくても換算そのものは全部出る設計にしてある。

ケース8: 牛乳の1.032——§4で触れた0.9牛乳度の中身 (a)「比重1.032・水4℃基準・15℃」→ 比重15/4℃ が1.0320、牛乳度32.03、トワッデル度6.41、重ボーメ度4.48。 (b)「比重1.032・水も同温度・15℃」→ 比重15/4℃ が1.0311に下がり、牛乳度31.10、トワッデル度6.22。 省令の下限は牛乳度でいえば28。32.03と31.10なら合否は変わらないが、境界に近い試料で同じ0.9のずれが出れば結論が反転しうる。測定値を人に渡すときに基準温度を書き添える理由がここにある。

仕組み——なぜ正準値を「比重 t/4℃」に固定したか

3つの候補から「常時併記」を選んだ

ボーメ度と比重の対応は、係数(modulus)をいくつにするかだけで決まる。設計の選択肢は3つあった。

① 日本式144.3だけを実装する。国内で買った浮ひょうならこれで合うが、海外資料の°Béを読み違える。 ② 米国式145だけを実装する。英語圏の換算サイトがこれで、日本の浮ひょうの値を入れると静かに0.5%ずれる。 ③ 両方を常に併記し、差を数値で出す。

①②は要するに「読者が自分の表の系統を知っている」ことを前提にしている。前半で書いたとおり、その前提が現場で成り立たないところから始まったツールなので③を採った。片方をたたむUIにもしていない。

効いてくる差が2種類あるので、正準値を1つに決めた

やっかいなのは、日米で違うのが係数だけではないことだ。日本式は比重15/4℃、米国式は比重60/60°F を引数にしている。 係数の違いと水の基準温度の違いが同時に効くので、片方ずつ分離できる形にしないと検算もできない。

そこで内部の正準値を s4(比重 t/4℃)1つに固定した。入口では3種類の入力をすべて s4 に畳み、出口では s4 から全スケールを出す。水の基準温度の違いは、入口と出口で水の密度比を掛け割りするだけで吸収する。

水の密度(JIS Z 8804:2012 式(7)・SMOW と同じ同位体組成の純水)
rhoW(t) = 999.97495 × [ 1 − (t − 3.983035)²(t + 301.797) / (522528.9 (t + 69.34881)) ]   [kg/m³]

入口:どの入力も s4(比重 t/4℃)に畳む
  ボーメ度・日本式   s4   = 144.3 / (144.3 − Bh)   もしくは  144.3 / (134.3 + Bl)
  ボーメ度・米国式   sg60 = 145 / (145 − Be)       もしくは  140 / (130 + Be)
                     s4   = sg60 × rhoW(15.5556) / rhoW(4)
  比重 t/4℃         s4   = 入力値(そのまま)
  比重 t/t℃         s4   = 入力値 × rhoW(t) / rhoW(4)
  密度 [g/cm³]      s4   = 入力値 × 1000 / rhoW(4)

出口:s4 から全部出す
  密度 rho    = s4 × rhoW(4)                [kg/m³]
  比重 t/t℃   = rho / rhoW(t)
  比重 60/60F = rho / rhoW(15.5556)

この掛け割りは JIS Z 8804 3.2 の注記「比重 t/t0℃ を 比重 t/4℃ に換算するには t0℃ の水の比重 t0/4℃ を乗じる」そのものだ。試料の温度 t が両辺で同じなので、液の熱膨張率がいっさい要らず厳密に成立する。

水の密度は式1本にまとめた

4℃・15℃・15.5556℃(60°F)・任意の測定温度と、水の密度は何度も要る。個別の定数として持たず、上の式(7)だけで全部計算している。この式が信用できるかは、独立した3つの規格の値を再現するかで確かめた。

  • ρ(15) = 999.1026 kg/m³(文献値と一致)
  • ρ(20) = 998.2067 kg/m³ = JIS K 0061:2001 7.1.4 が使う 0.99820 g/cm³ と一致
  • ρ(15.5556) = 999.0170 kg/m³ = ASTM D1250(2008) の60°F水密度 999.016 kg/m³ と一致

3つの規格が別々に載せている数字を1本の式が同時に再現するので、水の密度についてはこれ以上の定数を持たない判断にした。

「試料温度そのものが違う値どうし」の換算はやらない

一方で、15℃で測った値を20℃の値に直す、といった換算はあえて実装していない。これには液の熱膨張率が要るが、その値は液種と濃度で変わるからだ。§4で触れたけい酸ソーダの0.04ボーメ度/℃ を他の液に流用できないのと同じ話になる。

JIS K 0061 7.1.4 に「密度(20℃) = 0.99984 ×〔比重15/4℃目盛の示度〕」という式があり、一見これが使えそうに見える。しかし0.99984は浮ひょうのガラス自体が温度で膨らむぶんの補正であって、液の温度換算ではない。流用すると、していない補正をしたことにしてしまう。

そこで測定温度が15℃から2℃以上ずれている場合は、補正せずにズレの向きと幅だけを出すことにした。水溶液の比重はおおむね1℃あたり0.0003〜0.0007下がるので、その幅を比重とボーメ度の両方に直して警告に添えている。液温が高い側で読んだなら値は低めに出ている、という向きも一緒に書く。単一の係数で補正して1つの数字を出すより、幅で示したほうが誠実だと考えた。

定数の出どころ

  • 144.3 / 134.3(日本式): JIS Z 8804:2012 3.8・3.9、JIS B 7525-3:2018 箇条4、計量単位規則 別表第一の3つが一致している。JIS B 7525-3 は逆式 s = 144.3/(144.3 − Bh) も持っており、これがそのままツールのボーメ度→比重変換になっている。
  • 145 / 140・130(米国式): NIST の2008年版ハンドブック由来の記述として整理されている値を採った。1949年版に載る144/134系(NIST が old / Holland と呼ぶ旧スケール)は扱っていない。
  • 1443(日本酒度)/141.5・131.5(API度)/200(トワッデル度)/1000(牛乳度): すべて JIS Z 8804:2012 の同じ箇条3から。**API度だけ引数が比重15.56/15.56℃**で、他は比重15/4℃ なので、内部でも sg60s4 を使い分けている。
  • 食塩水の密度: CoolProp の Melinder 相関(NaCl水溶液)から 0〜23 wt% × 0〜40℃ のグリッドを機械生成し、双一次補間している。20℃で文献値と最大0.013%差、補間そのものの誤差は最大0.0034%(wt%に直して0.005 wt%)。適用上限が23 wt% なので、飽和食塩水(20℃で約26.4 wt%)には届かない。範囲を出たら濃度のセルだけ空にして理由を出し、ボーメ度・比重・密度は出し続ける。

計算例:比重20/20℃ = 1.280 を重ボーメ度にする

鉛バッテリーの電解液は比重20/20℃ で管理されることが多い。満充電付近の代表値1.280を入れると、内部ではこう進む。

入力: 比重 20/20℃ = 1.280 / 測定温度 20℃

1) 水の密度   rhoW(20) = 998.2067 kg/m³ , rhoW(4) = 999.9749 kg/m³
2) 正準値へ   s4  = 1.280 × 998.2067 / 999.9749 = 1.277737   (比重 20/4℃)
3) 密度       rho = 1.277737 × 999.9749 = 1277.705 kg/m³ = 1.2777 g/cm³
4) 日本式     Bh  = 144.3 × (1 − 1 / 1.277737) = 31.37 重ボーメ度
5) 米国式     sg60 = rho / rhoW(15.5556) を 145 の式に入れて 31.63 重ボーメ度
6) トワッデル度 TW = 200 × (1.277737 − 1) = 55.55

1.280をそのまま比重15/4℃ の式に放り込むと、ステップ2の掛け算が丸ごと抜ける。ずれは小さいので、出てくるのは明らかにおかしい値ではなくそれらしい値だ。間違いが「それっぽい値」に化けるのがこの手の換算のこわいところで、ステップ2を飛ばさせないために、水の基準は入力欄として画面の表に出してある。

換算表・海外コンバータと、このツールの立ち位置

既存の解説ページが片方の式しか載せていない事情は前半で触れたとおり。ここでは、その状況に対してこのツールが実際に何をしているかだけを書く。

1つ目、日本式と米国式を常に並べて出す。 片方を選ばせて片方を隠す設計にしていない。66という同じ読みが、日本式なら比重1.8429、米国式なら1.8337を指す(乖離0.50%)。この2つを同時に見せないと、そもそも自分がどちらの世界にいるのかに気づけない。気づけなければ、換算表を替えた瞬間に管理値が黙って0.5%動く。

2つ目、比重の「水の基準温度」を入力項目として表に出した。 汎用の単位変換サイトは比重と密度をほぼ同一視していて、15/4℃ と 20/20℃ の区別を持たない。だが同じ「1.116」という数字でも、4℃の水を基準に読むか測定と同じ温度の水を基準に読むかで、出てくるボーメ度は変わる(使用例の該当ケースで数値を確かめてほしい)。

3つ目、同じ JIS Z 8804 の条に載っている同族の目盛をまとめて出す。 日本酒度・API度・トワッデル度・牛乳度は、ボーメ度と同じ箇条で定義されている兄弟だ。業界ごとに別々の解説ページを渡り歩かなくていい。

一方で、出せないものは出さない方針も取っている。硫酸・水酸化ナトリウム・めっき浴の濃度[wt%]は、比重と濃度の対応表を一次資料で確かめられていないので出していない。液温のズレも補正せず、ズレの向きと幅を示すに留めてある。

関連ツールとの役割分担も切ってある。このツールの仕事は比重の表記を揃えるところまでで、その先の判断は専用のページに渡す。鉛バッテリーの電解液なら充電率の判定と液温補正、不凍液なら濃度と凍結温度、濃度が決まったあとの薄める量、めっき液を読んだあとの析出膜厚、比重から浮くか沈むかの判定——どれも別のページが担当している。リンクは末尾のまとめに置いた。

ボーメの目盛はどこから来たのか

食塩水で刻んだ目盛が、式に置き換わるまで

ボーメ度を作ったのはアントワーヌ・ボーメ。18世紀フランスの薬剤師で、1768年に比重計の目盛として考案した(Baumé scale(英語版Wikipedia))。刻み方は素朴で、純水を0、15%の食塩水を15として、その間を15等分しただけ。軽ボーメ度のほうは純水を10、10%食塩水を0とし、間を10等分している(ボーメ度(日本語版Wikipedia))。

面白いのは、現行の定義がもう食塩水を見ていないこと。定義は式のほうに移っていて、食塩水で目盛を作り直しても元の刻みには戻らない。実際、15℃の15wt%食塩水をこのツールに入れると 14.37 度になる。「15%食塩水で15度」という出発点から、0.6度ぶん離れたところに現行の目盛はある。

145・144.3・144 が並んだまま残った理由

係数が国ごとに割れているのは、誰かが間違えたからではない。各国が独立に規格化した結果、米国は145(重)と140-130(軽)、日本は144.3、NIST が old や Holland と呼ぶ 144/134 系も文献に残った。どれかが淘汰されなかったのは、規格そのものよりその規格で作られた浮ひょうの実物が現場に残り続けたためだ。目盛はガラスに刻まれていて、規格が改まっても手元の比重計は改まらない。

API度が140ではなく141.5になったわけ

石油業界のAPI度は、もともとボーメ軽液の係数140で作られるはずだった。ところが係数を141.5にした比重計が大量に製造されて流通してしまい、規格のほうを実物に合わせて141.5で追認したAPI gravity(英語版Wikipedia))。間違いがそのまま標準になった珍しい例で、いまも世界中の原油はこの取り違えの子孫にあたる目盛で取引されている。ボーメの目盛が現場に根を張りすぎて動かせなかった、という点では上の話と同じ構図だ。

日本酒度はボーメ度の10倍拡大版

日本酒度の係数は1443。ボーメ度の144.3のちょうど10倍だ。つまり日本酒度は、比重1.00前後の狭い範囲を読むために軽ボーメ度の目盛を10倍に引き伸ばした親戚にあたる。日本酒度でいう5の刻みは、ボーメ度に直せば10分の1の幅にしかならない。清酒の甘辛をボーメ度の目盛で語ろうとすると刻みが粗すぎて使い物にならず、10倍に拡大するしかなかった——業界ごとに別の目盛が生まれた理由が、係数の数字だけで透けて見える。

読み取りのコツ

  • 目盛紙の表示を先に見る — JIS B 7525-3 は浮ひょうの目盛紙に「重ボーメ度」「15/4℃」「水平面視定」を表示するよう定めている。入力欄でどれを選べばいいか迷ったら、答えは現物の目盛紙に書いてある。仕様書やメールの数字より、手に持っているガラスのほうが確実な一次情報だ。
  • メニスカスの読み方を目盛紙の指定に合わせる — 液面は管の周りで持ち上がるので、盛り上がった上縁を読むか液面本体を読むかで示度が変わる。目盛紙が「水平面視定」なら、縁ではなく液面の高さを読む。ここを揃えないと、式の違いより先に読み方の違いで数字が合わなくなる。
  • 温度は合わせるのが最善、無理ならメモ — 標準温度に液を合わせてから読むのが一番確実。合わせられないときは温度を記録しておく。このツールは補正しない代わりに、たとえば比重1.116の液を15℃から10℃ずれた温度で読んだ場合に重ボーメ度で0.35〜0.81度ぶん動きうる、という幅を示す(幅は比重によって変わるので、実際の値は画面に出るものを見てほしい)。1つの値ではなく幅で出るのは、正しい補正係数が液種ごとに違うため。
  • 人に渡す数値には必ず基準温度を添える — 「比重1.116」だけでは、受け取った側が読み替えられない。コピー機能は、使った式と水の基準温度と測定温度を数値より先に書き出すようにしてある。基準が違うと同じ数字が別の量になる例は、使用例の水の基準を切り替えたケースを見てほしい。

よくある質問

手元の浮ひょうが日本式か米国式か、どうやって見分ける?

まず目盛紙を見る。単位記号が Bh で「重ボーメ度」「15/4℃」と併記してあれば日本式(JIS)だ。それでも決め手が欲しければ純水を測るといい。日本式の目盛は15℃の純水で −0.13 付近を指し、0をわずかに下回る。米国式の目盛は60°F(15.56℃)の純水でぴったり 0.0 を指す。ゼロ点の外れ方そのものが、どちらの式で刻まれた目盛かを教えてくれる。表やサイトの出所を確かめたいときは「66ボーメ」の行を引くのが早い。比重が1.83台なら米国式、1.84台なら日本式で作られている(実際の数値は使用例の66ボーメのケースにある)。

純水を測ったのに0にならない。壊れている?

壊れていない。日本式のボーメ度が比重15/4℃で定義されている以上、15℃の純水は0からわずかに外れる——理由は前半の解説の節で説明したとおりだ。実用上は、これを不具合として追いかける必要はないし、目盛の校正がずれた証拠でもない。むしろ上の質問のとおり、目盛がどちらの式で刻まれているかを見分ける手掛かりとして使える。過去の管理値を引き継ぐときも、ゼロ点の位置が同じ式どうしで比べられているかだけ確認すればいい。

入力した比重や測定温度は、どこかに送信される?

送信していない。換算はすべてブラウザの中で完結していて、入力値も結果もサーバーには渡らない。結果のコピー機能も、端末のクリップボードに文字列を入れるだけだ。社外に出せない液の管理値や、工程の実測値をそのまま打ち込んでも構わない。

濃度[wt%]が食塩水でしか出ないのはなぜ? 硫酸は出ない?

使える対応表の範囲がそこまでだから、というのが答えで、その選定の経緯は前半の仕組みの節に書いた。実務上どう使えるかだけ書くと、硫酸・水酸化ナトリウム・塩酸・めっき浴でも比重・密度・日米両式のボーメ度までは普通に出る。「66ボーメ硫酸」のような呼び名の液も、比重までなら換算できる。濃度が必要なときは、そこで出た比重を手元の液の管理表や滴定の結果と突き合わせてほしい。出所の分からない換算表で濃度まで出してしまうより、そのほうが確実だ。

飽和食塩水を入れたら濃度だけ出なかった

濃度換算に使っている密度表の上限が23 wt%で、飽和食塩水(20℃で約26.4 wt%)はそこから外れている。範囲外でもボーメ度・比重・密度・同族スケールは通常どおり出る。出なくなるのは濃度の欄だけだ。測定温度も0〜40℃が表の範囲なので、50℃で測った食塩水は同じ扱いになる。比重1.20 の液も濃度域の外で、こちらは「食塩水としては表の外」という扱いになる。

重ボーメを選んだのに、マイナスの値や軽ボーメ度が出てきた

正常な動作。重ボーメの目盛で水より軽い液を読めば、示度は0を下回る。たとえば重ボーメ度で −5 と読んだ液は比重0.96651の軽液で、軽ボーメ度に直せば 15.0 になる。日本式は重ボーメ度と軽ボーメ度を足すと必ず10になる関係なので、片方から他方はいつでも出せる。この場合ツールは重液・軽液の判定を切り替えて、実際に意味のあるほうの目盛を主表示にする。エラーとして止めないのは、負の重ボーメ度が目盛の読みとしては正当だからだ。

まとめ

持ち帰ってほしいのは2点だけ。ボーメ度は日本式と米国式で別の数字になるので、両方を並べて自分がどちらの目盛を読んだのかを確かめること。そして比重には「どの温度の水と比べたか」が必ず付いていて、それを書いていない比重の値は人に渡せないということ。この2つを押さえておけば、換算表の出所が分からなくても事故は防げる。

換算したあとの判断は、それぞれ専用のページに置いてある。

換算したい液種や、対応してほしい目盛の要望があればお問い合わせページから教えてほしい。比重と濃度の対応表が一次資料で確かめられたものから、順に足していく。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。めっき液のボーメ度を換算表で引いたら前任者のノートと0.5%合わず、表がどちらの式で作られたのか半日探したことがある

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