丸ピン2本の治具に、入るワークと入らないワークが混ざる
新しく起こした治具に、ワークの2つの基準穴と同じピッチで位置決めピンを2本立てた。最初の数枚はすっと落ちる。ところがロットが変わると、片方の穴がピンの肩に乗ったまま下りないワークが出てくる。穴径を測っても図面どおり、ピンも図面どおり。原因は穴ピッチのばらつきで、2本の丸ピンの間隔とワークの穴の間隔がわずかに食い違うと、どちらかの穴がピンに当たる。
定石どおり、片方をひし形ピン(ダイヤピン)に替えた。ピッチ方向を逃がしたのでもう大丈夫——のはずが、それでも引っかかるワークがときどき混ざる。カタログで選んだ市販品の形のまま付けただけで、ランド幅(円筒部が残っている幅)がこの公差で許される幅に収まっているかは、誰も計算していなかった。治具を設計していると、こういう場面に一度は出くわすよね。
このツールは、丸ピン1本+ひし形ピン1本の2穴位置決めで、穴とピンの公差(H7・g6 などの記号か直接入力)と、ワークの穴ピッチ公差・治具のピンピッチ公差から、最悪の組合せでも必ず入るひし形ピンの最大ランド幅を厳密式で出す。手元のピンのランド幅を入れれば、入るかどうかを判定し、入れるのに要るピン径と、そのランド幅で吸収できるピッチずれを逆算する。ワークの最大回転角と、2本とも丸ピンにした場合との比較もあわせて出る。
ランド幅を「カタログの形のまま」で決めていた ― 計算ツールを作った理由
ひし形ピンの幅をどう決めるか。調べ始めて最初に困ったのは、計算の手順を最後まで書いた日本語のページが見当たらないことだった。メーカーのページは形状と寸法、頭部の公差の表が中心で、「このランド幅なら何mmのピッチずれまで入るか」は書かれていない。たとえばミスミの位置決めピン(球面小頭)のカタログでは、ひし形の (W) が軸径 φ6 で1.5mm、φ8 で1.8mm、φ10 で2.2mm、φ20 で5.0mm と載っている。径のおよそ1/4 だ。頭部の公差は g6・h7 などから選べる。
では穴 H7・ピン g6 のまま、この形のひし形ピンを使えば入るのか。φ6 の穴を100mmピッチ・±0.05mm で開けたワークを、ピンピッチ ±0.01mm の治具に載せる条件で計算すると、最悪の組合せで許される最大ランド幅はわずか0.149mm。市販品の1.5mm の約10分の1 しかない。φ6 の H7/g6 はすき間の最小値が4µm で、これで0.06mm のピッチずれを吸収するには、ランドをほとんど線にするしかない。「よく見る組合せ」のままひし形にしても入らない、という組合せが普通にある。
もう一つ引っかかったのが、解説でよく見かける近似式 b ≦ D·c2/(2s) だ(D は穴径、c2 はひし形ピン側のすき間、s は吸収すべきずれ)。形がすっきりしていて手計算向きだが、H 穴(下の許容差が0の穴)なら、厳密に解いた値より必ず大きく出る。「この幅なら入る」と答えた幅で、実は入らないことがある危険側の近似だ。差は s が大きいほど開き、上の φ6 の例では近似が0.207mm、厳密式が0.149mm で、近似のほうが39% 大きい。
古い文献の選定表や「ランド幅はピン径の1/3」といった経験則もあるにはある。ただ、どれもピッチ公差を入力にしていない。公差が詰まった図面にも粗い図面にも同じ幅を返すので、最悪値で入る保証にはならない。
そこで、公差記号からすき間を出し、ランドの角が穴の内側に収まる条件をそのまま解いて最大ランド幅を出すことにした。逆向きに、手元のピンのランド幅から「入れるのに要るピン径」と「吸収できるピッチずれ」も出せるようにしてある。治具の図面を描く段階で、ピンの公差を1段変えるか、ワーク図面のピッチ公差を詰めてもらうか——その判断を数字でしたかった。
2ピン位置決めの基礎 ― 丸ピンとひし形ピンは何を止めているか
平面+2穴で位置が決まる理屈
板状のワークを治具に載せると、下の面で上下方向の位置と2方向の傾きが決まる。残る自由度は、面の上での前後・左右の移動と、面内の回転の3つ。これを2つの穴で止めるのが2ピン位置決めだ。
1本目の丸ピンは穴1に入って、前後・左右の2方向を止める。ワークはこのピンを軸にまだ回れるので、離れた穴2にもう1本ピンを入れて回転を止める。回転を止めるだけなら、2本目のピンが押さえるべきは「2穴を結ぶ線に直角な方向」だけでいい。ピッチ方向まで押さえると、1本目と役割が重なってしまう。
たとえるなら、地面に打った2本の杭に、穴を2つ開けた板を同時にはめる作業だ。杭の間隔と穴の間隔がぴったり同じなら、どちらの穴もすっと落ちる。間隔が0.05mm 違えば、片方の穴が杭の肩に乗る。穴を大きくすれば入るが、今度は板がぐらつく。そこで2本目の杭の、間隔方向の両脇だけを削り落とす。間隔のずれは逃がしつつ、板の回転は止められる。この「両脇を削った杭」がひし形ピンだ。
位置決めピン 公差 ― すき間の最小と最大
穴もピンも公差の範囲でばらつくので、すき間 c は1つの値ではなく幅を持つ。
c_min = 穴の最小径 − ピンの最大径 // いちばんきつい組合せ
c_max = 穴の最大径 − ピンの最小径 // いちばん緩い組合せ
穴とピンの径は、呼び径に JIS B 0401-1 の許容差を足して決まる。H 穴は下の許容差が0で、上が IT(基本公差)。f・g・h の軸は上の許容差が基本偏差で、下はそこから IT を引いた値になる。φ8 なら H7 の穴は φ8.000〜8.015、g6 のピンは φ7.986〜7.995 で、すき間は0.005〜0.029mm。考え方ははめあいの「すきまばめ」そのもので、位置決めピンでは c_min が負になる(しまりばめ)組合せは使わない。
c_min は「入るかどうか」の判定に、c_max は「入ったあとどれだけがたつか」の評価に使う。同じすき間の両端が、別々の問いに効く。
丸ピン2本が干渉する理由と、吸収すべきずれ s
ワークの穴ピッチが ±ΔLh、治具のピンピッチが ±ΔLp でばらつくと、最悪の場合、穴の間隔とピンの間隔は ΔLh + ΔLp だけ食い違う。ワークが長め、治具が短めに振れた組合せだ。
このうち一部は、丸ピン側のすき間で吸収できる。穴1の中でワークは最小でも c1_min/2 だけ動けるので、ひし形ピン側が受け持つずれは次のようになる。
s = (ΔLh + ΔLp) − c1_min / 2
穴2のピンも丸ピンだとすると、ピンの円が穴の円の内側に収まる条件は、中心のずれ s とピン半径 r の和が穴半径 R 以下であること。
s + r ≦ R ⇔ s ≦ c2_min / 2
// R = 穴2の最小径 / 2、r = ピンの最大径 / 2
これが丸ピン2本で入る条件で、Mohan(1967)が干渉条件として示した式(2)と同じ内容になる。ピッチ公差は数十µm、H7/g6 のすき間の最小値は数µm なので、この条件はたいてい満たせない。満たそうとして穴2のすき間を広げると、今度は回転のがたが増える。2本とも丸ピンにするのが過拘束と呼ばれるのはこのためだ。
ひし形ピン 計算 ― ランドの角を三平方の定理で穴に収める
ひし形ピンは、ピッチ方向の両脇を逃がし、ピッチに直角な方向にだけ円筒部(ランド)を残したピンだ。上から見ると、半径 r の円から左右を削り、上下に円弧が残った形になる。ランド幅 b は、この円弧の弦の長さを指す。
穴2の中心を原点、ピッチ方向を x 軸にとり、ピンの中心が x 方向に s ずれているとする。ランドの円弧のうち穴の縁にいちばん近づくのは、ずれた側の角だ。その座標は
角の座標 = ( s + b/2 , √(r² − b²/4) )
この点が半径 R の穴の内側にあれば、ピンは穴に入る。原点からの距離を三平方の定理で書くと、
(s + b/2)² + (r² − b²/4) ≦ R²
s² + b·s + r² ≦ R²
b ≦ (R² − r² − s²) / s // 最大ランド幅(厳密式)
b²/4 の項が打ち消し合って、b について1次の式になるのがこの問題のうまいところだ。円弧上の点の原点からの距離は、ピッチ方向に張り出しているほど大きいので、角だけ見れば足りる。
検算として b = 2r(ランド幅=ピン径、つまり削らない丸ピン)を入れると、s² + 2rs + r² = (r + s)² ≦ R²、すなわち s ≦ R − r = c2_min/2 に戻る。厳密式は丸ピンの条件を特別な場合として含んでいるわけだ。
ダイヤピン 逃がし の効き方と、近似式との関係
右辺の R² − r² は (R − r)(R + r) と分けられる。R − r は c2_min/2、R + r はほぼ穴径 D なので、R² − r² ≒ D·c2/2。さらに s² を小さいとして落とすと、よく見る近似式になる。
b ≦ D·c2 / (2s) // 近似式
H 穴なら穴の最小径がちょうど D なので、R² − r² = D·c2/2 − c2²/4 と正確に書ける。これを厳密式に入れて近似式と比べると、
近似 − 厳密 = c2²/(4s) + s (常に正)
で、近似は必ず大きく出る。差の主成分は s そのものなので、ランド幅に比べて s が大きいほど、相対的な差が開く。
式の形から、逃がしの効き方も読める。最大ランド幅は R² − r² にほぼ比例し、s にほぼ反比例する。すき間 c2 を2倍にすれば許される幅はほぼ2倍、ずれ s が2倍になればほぼ半分。そして c2_min = 0 の組合せ(H7/h6・H7/h7 など)では R² − r² = 0 になり、s > 0 である限りランド幅0でも入らない。ひし形ピンに要るのは「逃がし」だけではなく、ピッチに直角な方向にすき間が最低限残っていることだ。
入ったあとのがた ― 中心ずれと回転角
入ったワークは、穴1の中で中心が c1_max/2 までずれ、穴2の中ではピッチに直角な方向に c2_max/2 までずれる。ランドはピッチに直角な方向に残っているので、その方向のすき間は丸ピンと変わらない。2つのずれが逆向きに振れると、ワークはピッチ L を腕にして回る。
θ = atan( (c1_max + c2_max) / (2L) )
ランド幅はこの式に入らない。L を長くすれば回転は小さくなるが、入るかどうかには効かない。
位置決めピン ピッチ 公差 で何が変わるか ― 実務での重要性
ひし形ピンのランド幅を広く取りすぎた治具では、最悪の組合せのワークが入らない。作業者はワークを傾けたり、樹脂ハンマーで叩いたりして押し込む。穴の縁がかじり、ランドの角が摩耗し、ワークにも打痕が残る。量産が始まってから気づけば、ピンの作り直しと治具の再調整で段取りがやり直しになる。
逆に、狭くすれば入りやすくはなる。ただMohan(1967)は、ランド幅を細くすると円筒部の摩耗が早くなり、ピンの交換が増えると指摘している。ランド幅は「入る限界の内側で、なるべく広く」が基本で、だから限界を正しく出すことに意味がある。
治具側のピンピッチ公差を足し忘れない
ずれ s には、ワークの穴ピッチ公差だけでなく治具のピンピッチ公差も入る。φ8 の H7 穴に丸ピン g6・ひし形ピン f7、ピッチ100±0.02mm、治具±0.01mm の条件では、最大ランド幅は1.862mm。ここで治具側の ±0.01mm を足し忘れると s が0.0175mm と小さく見積もられ、最大ランド幅は2.952mm と出てしまう。本当の値の約1.6倍だ。ワーク図面だけを見て計算すると、この取りこぼしが起きる。
ひし形ピンの公差を1段変えるだけで、許される幅が2.7倍変わる
同じ条件で、ひし形ピンを f7 から丸ピンと同じ g6 に変えると、上の許容差が −0.013mm から −0.005mm に上がり、すき間の最小値は13µm から5µm に減る。それだけで許される幅は約2.7分の1 に縮む(数値は使用例のケース3)。逆に h6 や h7 にするとすき間の最小値が0になり、ランド幅0の極限でも吸収できるピッチずれは ±0.0025mm(丸ピン側のすき間の分)しか残らない。JIS B 0401-1 の記号を1つ選び間違えるだけで、ひし形ピンが機能しなくなる。丸ピンと同じ記号にそろえず、ひし形ピンだけ1段すき間側に振るのが効く。
回転のがたは丸ピン2本より小さい
同じ φ8 の条件で、2本とも丸ピンにして入れようとすると、穴2のすき間の最小値を 2s = 0.055mm 以上に広げなければならない。そのときの最大回転角は1.960′で、ひし形ピンの1.238′の1.583倍。ひし形ピンは「入りやすさ」と「回転の精度」を両立させるための形だと分かる。
ピッチを伸ばすと、回転だけが小さくなる
同じ条件でピッチを1000mm にすると、最大回転角は0.124′と10分の1 になる。一方で最大ランド幅は1.862mm のまま変わらない。ランド幅を決めるのはすき間とピッチ公差で、ピッチの長さは回転角にしか効かない。2穴をワークのできるだけ離れた位置に取るのは回転精度のためで、入りやすさのためではない。ピッチを伸ばしたぶんピッチ公差も大きく指定されるなら、そちらで s が増えてランド幅は狭くなる。
治具設計の現場で出番になる4つの場面
治具を新しく設計するとき。 ワーク図面の穴径・穴ピッチ公差が決まった段階で、ピンの公差記号とランド幅を決める。丸ピンを g6、ひし形ピンを f7 にしたら最大ランド幅がいくつになるか、市販品の形で足りるかを、図面を描く前に確かめられる。
ワーク図面のピッチ公差を見直してもらうとき。 治具側から「穴ピッチを ±0.05 から ±0.03 に詰めてほしい」と頼むには根拠が要る。手元のピンのランド幅で吸収できるピッチずれが逆算で出るので、「このピンなら ±◯◯mm まで入る」という数字で話ができる。
市販のひし形ピンがそのまま使えるか確かめるとき。 ランド幅を空欄にしておくと、同じ径の市販品(ミスミ球面小頭ピン)のランド幅が計算した最大ランド幅を超えている場合に注意が添えられる。そのランド幅を入れれば、ひし形ピンの最大径をいくつ以下にすれば入るかも出るので、特注で径だけ細くするか、公差記号を変えるかの判断に使える。
板金の抜き穴ワークを載せるとき。 プレスで抜いた穴は +0.1/0 のように記号で書けない公差になりやすく、穴ピッチの公差も粗い。穴とピンの許容差を直接入力すれば、記号で書けない組合せでも同じ計算ができる。
計算の流れは3ステップ
ステップ1: 穴とピンの径と公差を選ぶ。 穴1(丸ピン側)と穴2(ひし形ピン側)それぞれの呼び径を入れ、穴の公差を H6・H7・H8 から、ピンの公差を f7・g6・h6・h7 から選ぶ。抜き穴のように記号で書けない公差は「直接入力」にして、上と下の許容差を mm で入れる。記号から直接入力に切り替えると、その時点の記号の許容差が引き継がれる。選んだ記号に対応する穴とピンの実際の寸法範囲も表示される。
ステップ2: ピッチ公差を入れる。 ワークの穴ピッチ L と公差 ±ΔLh、治具のピンピッチ公差 ±ΔLp を入れる。公差は ± の片側の値で、2つは自動で足し合わされる。L は回転角にだけ使われる。
ステップ3: ランド幅を入れて判定を読む。 結果には、最大ランド幅と、近似式の値・厳密式との差(%)、吸収すべきずれ s、すき間 c1・c2 の範囲、最大回転角が並ぶ。使うひし形ピンのランド幅を入れると、「入る」か「干渉の恐れ」かの判定と、そのランド幅で吸収できるピッチずれ、入れるのに要るひし形ピンの最大径が表示される。ランド幅を空欄にすれば、最大ランド幅の逆算だけが出る。平面図では、すき間とずれを誇張して、ひし形ピンが穴2の中で s だけずれた状態とランド幅 b が描かれる。
8つの設定で見る ひし形ピン 幅 の計算例
数値はすべて、穴とピンが最悪の組合せ(穴が最小・ピンが最大・ピッチずれが最大)になった場合の値だ。
ケース1: φ8 の標準構成で、市販品のランド幅が入るか
- 入力: 穴 φ8 H7×2、丸ピン g6、ひし形ピン f7、ピッチ100±0.02mm、治具±0.01mm、ランド幅1.8mm(ミスミ φ8 相当)
- 結果: c1 = 0.005〜0.029mm、c2 = 0.013〜0.043mm、s = 0.0275mm。最大ランド幅は1.862mm(近似式は1.891mm、+1.56%)。ランド幅1.8mm は「入る」。このランド幅で吸収できるピッチずれは ±0.0309mm、入れるのに要るひし形ピンの最大径は φ7.9874 以下。最大回転角は1.238′(74.3″)
- 解釈: f7 のひし形ピンの最大径は φ7.987 なので、要る径 φ7.9874 にわずかに収まっている。余裕はピッチずれに直して ±0.0309 − ±0.030 で約1µm。市販品の形がぎりぎり成り立つ、という条件だ。
ケース2: ワークのピッチ公差を ±0.03mm に広げる
- 入力: ケース1のワーク穴ピッチ公差だけ ±0.03mm
- 結果: s = 0.0375mm、最大ランド幅は1.348mm(近似式は1.387mm、+2.87%)。ランド幅1.8mm は「干渉の恐れ」。吸収できるピッチずれは ±0.0309mm のまま、入れるのに要るひし形ピンの最大径は φ7.9828 以下(すき間 c2 ≧ 0.0172mm)
- 解釈: 吸収できるずれはランド幅とすき間だけで決まるので、ケース1と同じ ±0.0309mm。合計 ±0.04mm には届かない。f7 の最大径 φ7.987 から、ひし形ピンだけ特注でさらに細くするか、ワーク側の公差を ±0.02mm に戻してもらうか、の二択になる。
ケース3: ひし形ピンを丸ピンと同じ g6 にする
- 入力: ケース1のひし形ピンを g6
- 結果: c2 = 0.005〜0.029mm、最大ランド幅は0.700mm(近似式は0.727mm、+3.96%)。ランド幅1.8mm は「干渉の恐れ」。吸収できるピッチずれは ±0.0135mm、入れるのに要るひし形ピンの最大径は φ7.9874 以下(すき間 c2 ≧ 0.0126mm)
- 解釈: 要るピン径はケース1と同じ φ7.9874。ランド幅と s が同じなら要る径は同じで、g6 の最大径 φ7.995 はそれを超えている。ランド幅1.8mm を残したいなら、ひし形ピンは f7 にするしかない。
ケース4: φ6 の H7/g6 同士にミスミ φ6 相当を当てる
- 入力: 穴 φ6 H7×2、ピン g6×2、ピッチ100±0.05mm、治具±0.01mm、ランド幅1.5mm
- 結果: c1・c2 とも0.004〜0.024mm、s = 0.0580mm。最大ランド幅は0.149mm(近似式は0.207mm、+39.02%)。ランド幅1.5mm は「干渉の恐れ」。吸収できるピッチずれは ±0.0100mm、入れるのに要るひし形ピンの最大径は φ5.9698 以下(すき間 c2 ≧ 0.0302mm)。丸ピン2本なら穴2に要るすき間は0.116mm で、回転角は2.750′(ひし形の0.825′の3.333倍)
- 解釈: すき間の最小値が4µm しかないところに58µm のずれを吸収させようとしている。近似式の誤差も39% と大きく、近似で「0.2mm なら入る」と判断すると外れる。このランド幅のままピッチ公差で解決するなら、ずれの合計を ±0.0100mm 以内に収める必要があり、治具の ±0.01mm だけでそれを使い切ってしまう。市販品の形を使うなら、ひし形ピンを φ5.97 以下に細くするのが現実的な手だ。
ケース5: さらにピッチ公差が粗く、ランド幅0でも入らない
- 入力: 穴 φ6 H7×2、ピン g6×2、ピッチ100±0.1mm、治具±0.02mm、ランド幅は空欄
- 結果: s = 0.1180mm。s² = 0.013924 が R² − r² = 0.011996 を超えるので、ランド幅0でも入らない。ランド幅0の極限で吸収できるのは ±0.1115mm まで。丸ピン2本なら穴2に要るすき間は0.236mm、回転角は4.813′
- 解釈: ランドを削る方向では解決しない。ピッチずれの合計 ±0.12mm が限界の ±0.1115mm を超えているので、ひし形ピンの公差を1段すき間側にずらしてすき間そのものを増やすか、ピッチ公差を詰める。
ケース6: すき間の大きい H8/f7 で、丸ピン2本で足りる
- 入力: 穴 φ8 H8×2、ピン f7×2、ピッチ100±0.008mm、治具±0.002mm、ランド幅は空欄
- 結果: c1・c2 とも0.013〜0.050mm、s = 0.0035mm。s が c2_min/2 = 0.0065mm 以下なので「丸ピン2本で可」。最大回転角は1.719′(103.1″)、穴1の中心ずれは最大0.025mm
- 解釈: ピッチが精密に管理されたワークなら、ひし形ピンは要らない。そのかわりすき間が大きいぶん、回転角はケース1の1.238′より大きい。入りやすさを取るか、がたの小ささを取るかのトレードオフが数字で見える。
ケース7: 板金の抜き穴ワーク
- 入力: 穴 φ10 +0.1/0 ×2(直接入力)、丸ピン g6、ひし形ピン −0.05/−0.059(直接入力)、ピッチ300±0.1mm、治具±0.02mm、ランド幅は空欄
- 結果: c1 = 0.005〜0.114mm、c2 = 0.050〜0.159mm、s = 0.1175mm。最大ランド幅は2.005mm(近似式は2.128mm、+6.13%)。同じ径の市販品(ミスミ φ10)のランド幅2.2mm はこれを超える、という注意が添えられる。最大回転角は1.564′(93.9″)、穴1の中心ずれは最大0.057mm、穴2の横ずれは最大0.0795mm
- 解釈: ひし形ピンを −0.05mm まで細くしても、±0.12mm のずれを吸収するには2.0mm が限界。市販品の2.2mm はわずかに広い。抜き穴は上の許容差が大きいので、入ったあとのがたも大きく出る。
ケース8: φ20 で市販品の形が合わない
- 入力: 穴 φ20 H7×2、丸ピン g6、ひし形ピン f7、ピッチ400±0.05mm、治具±0.01mm、ランド幅5mm(ミスミ φ20 相当)
- 結果: c1 = 0.007〜0.041mm、c2 = 0.020〜0.062mm、s = 0.0565mm。最大ランド幅は3.482mm(近似式は3.540mm、+1.67%)。ランド幅5mm は「干渉の恐れ」。吸収できるピッチずれは ±0.0432mm、入れるのに要るひし形ピンの最大径は φ19.9714 以下(すき間 c2 ≧ 0.0286mm)。最大回転角は0.443′(26.6″)
- 解釈: f7 にしてもなお、ピッチ公差 ±0.05mm の大物ワークには市販品の5mm は広すぎる。径が大きくても、ランド幅の比率(径の約1/4)が同じなら、ピッチ公差が大きいぶん苦しくなる。
8ケースのうち、ひし形ピンが要る6ケースで市販品の形がそのまま入ったのは φ8 の標準構成(ケース1)だけで、それもピッチずれに直して約1µm の余裕しかなかった。ランド幅は「径の何分の1」ではなく、すき間とピッチ公差から決まる量だ。
最大ランド幅を厳密式で出す仕組み
3つの候補と、厳密式を選んだ理由
ランド幅の決め方には、大きく3つの候補がある。
- 近似式 b ≦ D·c2/(2s)。 解説で広く使われている。手計算は楽だが、基礎の節で導いたとおり H 穴なら厳密式より c2²/(4s) + s だけ必ず大きく出る。ケース4のように s がランド幅に比べて大きい条件では、差が39% に達する
- 厳密式 b ≦ (R² − r² − s²)/s。 近似と同じ入力で計算でき、b = 2r で丸ピン2本の条件にそのまま戻るので、「丸ピンで足りる」「ひし形が要る」「ランド幅0でも入らない」の境界を同じ式で扱える
- 確率的な方法(Mohan 1967)。 各寸法を正規分布とみて、装着できないワークの割合を出す。分布の仮定と入力(各寸法のばらつき)が増え、「最悪値でも必ず入るか」という問いには答えない
このツールは2を主に出し、1は手元の資料と照合できるよう参考値として並べている。3は、最悪値で入ることを保証するという立場と別物なので採っていない。
計算フロー
// 1. 公差の解決(記号なら JIS B 0401-1 の表、直接入力なら入力値)
穴: 最小径 = 呼び径 + 下の許容差、最大径 = 呼び径 + 上の許容差
ピン: 同上
// 2. すき間
c_min = 穴の最小径 − ピンの最大径、c_max = 穴の最大径 − ピンの最小径
// 3. 判定
s = (ΔLh + ΔLp) − c1_min/2
R = 穴2の最小径/2、r = ひし形ピンの最大径/2、K = R² − r²
s ≦ c2_min/2 → 丸ピン2本で可
b_max = (K − s²)/s > 0 → ひし形ピンが必要(b_max が最大ランド幅)
b_max ≦ 0 → ランド幅0でも入らない
// 4. ランド幅 b を入れたときの逆算
吸収できるずれ s_A = (−b + √(b² + 4K)) / 2 // b·s + s² = K を s について解く
吸収できるピッチずれ = s_A + c1_min/2
要るピン最大径 = 2·√(R² − (b·s + s²)) // 同じ式を r について解く
// 5. がた
θ = atan((c1_max + c2_max)/(2L))
丸ピン2本: c2_max を 2s + (c2_max − c2_min) に置き換えて同じ式
逆算の2本は、厳密式の不等号を等号にして、それぞれ s と r について解き直しただけだ。判定と逆算が同じ式から出ているので、「入る」と判定された境界と逆算の値が食い違わない。境界の比較には1×10⁻⁹mm の許容誤差を入れ、ちょうど限界の値が浮動小数点の誤差で「干渉」に倒れないようにしている。
計算例: φ8 の標準構成(ケース1)
- 公差: φ8 は JIS B 0401-1 の「6を超え10以下」の区分。H7 は IT7 = 15µm で φ8.000〜8.015、g6 は φ7.986〜7.995、f7 は φ7.972〜7.987
- すき間: c1 = 8.000 − 7.995 〜 8.015 − 7.986 = 0.005〜0.029mm、c2 = 8.000 − 7.987 〜 8.015 − 7.972 = 0.013〜0.043mm
- ずれ: s = 0.030 − 0.005/2 = 0.0275mm。c2_min/2 = 0.0065mm より大きいので、ひし形ピンが要る
- 最大ランド幅: R = 4.0000、r = 3.9935、K = 0.051958mm²、s² = 0.000756mm²。b_max = (0.051958 − 0.000756)/0.0275 = 1.8619mm。近似式は 8 × 0.013/(2 × 0.0275) = 1.8909mm で、差0.0290mm は c2²/(4s) + s = 0.0015 + 0.0275 に一致する
- 逆算(b = 1.8): s_A = (−1.8 + √(1.8² + 4 × 0.051958))/2 = 0.02842mm、吸収できるピッチずれは 0.02842 + 0.0025 = ±0.0309mm。要るピン最大径は b·s + s² = 0.050256 から 2·√(16 − 0.050256) = φ7.9874
- がた: (0.029 + 0.043)/(2 × 100) = 0.00036 から θ = 1.238′(74.3″)。丸ピン2本なら c2_max が 0.055 + 0.030 = 0.085mm になり、(0.029 + 0.085)/200 = 0.00057 から 1.960′、比は1.583倍
Mohan の例題を最悪値で解き直すと
Mohan(1967)の例題1は、インチ寸法のワーク(穴 0.997±0.002in、ピッチ 5.0±0.005in)で、Rolotin & Kostromin(1959)の選定表から b = 8mm を選び、確率計算で装着できないワークの割合を0.684% と出している。これをメートルに換算し(穴 φ25.3238±0.0508、ピン −0.0665±0.0030、L = 127±0.127mm、治具±0.0030mm)、最悪値で計算すると、s = 0.1236mm、最大ランド幅は1.174mm(近似式は1.300mm、+10.78%)になる。表の8mm の約7分の1 だ。b = 8mm で最悪値でも入れるには、ひし形ピンの最大径を φ25.1934 以下にする必要がある。
確率で見れば1000個に7個程度の不良でも、最悪値で見れば「入らない組合せが残っている」。どちらが正しいかではなく、問いが違う。量産の歩留まりで判断するなら確率、1個も入らないワークを出したくない治具なら最悪値。このツールは後者の問いに答えるものだ。
公差表の出どころ
公差記号の表(IT6〜IT8、基本偏差 H・f・g・h、120mm までの8区分)は JIS B 0401-1:2016 の値で、このサイトのJIS はめあい検索ツールと同じ値を持っている。呼び径が区分の上端ちょうど(φ3・φ6・φ10 など)のときは、規格の「を超え〜以下」に従って下の区分を使う。あわせて、ミスミの位置決めピンの公差表とも5点で照合した。g6 の φ5・φ8・φ20 が −0.004/−0.012、−0.005/−0.014、−0.007/−0.020、h7 の φ2・φ12 が 0/−0.010、0/−0.018 で、いずれも一致している。
治具の位置決めピン設計で、ほかの調べ方と何が違うか
ひし形ピンの幅を調べたときに見つかる情報の偏りは、冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおりだ。ここでは、このツールが実際にどこからどこまでを引き受けるのかを整理しておく。
公差記号から最悪値の判定まで一続き。 穴とピンを H7・g6 のような記号で選ぶと、呼び径の寸法区分から許容差を引き、最小の穴と最大のピンの組合せでランドの角が穴に収まるかを厳密式で確かめる。公差表を引いて、半径を2乗して、電卓を叩いて……という往復がいらない。記号に無い公差は直接入力で入れられるので、板金の抜き穴のような公差の粗いワークにもそのまま使える。
判定と逆算の両方向。 ランド幅を空欄にすれば「どこまで太くしてよいか」を、入れれば「入るか」に加えて「そのランド幅のまま入れるには、ひし形ピンの最大径をどこまで細くすればよいか」「ピッチ公差の合計をどこまで詰めればよいか」を返す。手持ちの市販ピンを生かす方向でも、ワーク図面の公差を見直してもらう方向でも、話の材料になる数字が出る。
入るかどうかと、がたの大きさを同じ画面で。 穴1の中心ずれ・穴2の横ずれ・最大回転角と、2本とも丸ピンにした場合の回転角を並べて出すので、ひし形にした効果を数字で確かめられる。
関連ツールとの役割分担。 1組の穴と軸のすきまを確かめるだけなら JIS はめあい検索ツール、ピンを治具プレートに固定する側のはめあいを用途から決めるならはめあいグレード選定アシスタントが向いている。どの面と穴を基準にするか、3平面データムの優先順位と残る自由度を考えるのはデータム設定アシスタントの仕事だ。ワークの穴ピッチそのものが部品の寸法の積み重ねで決まるなら、公差積み上げシミュレーターでワーストケースや RSS のばらつきを先に出しておく。このツールは「2穴×2ピンの組合せが、最悪でも入るか」の1点に絞っている。
ダイヤピン・菱形ピン・逃がしピン — 呼び名とランド幅の目安の移り変わり
呼び名がやたらと多い部品
同じ部品なのに、現場では「ひし形ピン」「菱形ピン」「ダイヤピン」「ダイヤモンドピン」と呼び名が揃わない。ピッチ方向のずれを逃がす役目から「逃がしピン」と呼ぶ人もいる。上から見ると、向かい合う2つの円弧(ランド)と、それをつなぐ逃げの直線で囲まれた輪郭になり、これがトランプのダイヤに似ている。英語でも事情は同じで、1967年に R. Mohan が書いた論文の題名はそのまま Diamond-Pin Location だ。この論文が載っているのが機械の雑誌ではなく、統計学の学術誌 Technometrics というのも少し意外な点だろう。
60年前の選定表と、いまのカタログの (W)
Mohan の論文には、Rolotin と Kostromin が1959年にまとめたランド幅の選定表が引用されている。ピン径の範囲ごとにランド幅を段階的に割り当てる表で、たとえば径 10〜18mm には 5mm、18〜30mm には 8mm を当てている。
一方、ミスミの位置決めピン(球面小頭)のカタログに載っているひし形の (W) は、φ10 で 2.2mm、φ16 で 4.0mm、φ20 で 5.0mm。同じ「ランド幅」という言葉でも、古い選定表のほうがかなり広い。Mohan は経験則として「ランド幅はピン径の3分の1(b = d/3)」も紹介しているが、ミスミの (W) は径のおよそ4分の1で、経験則よりもさらに細い側に寄っている。目安が出典によってこれだけ違うので、どれか1つを正解として丸暗記するより、自分のワークの公差で確かめるほうが確実だ。
カタログ図の「60°」
ミスミのカタログ図では、ひし形の逃げは60°の角度で描かれている。ランドの外側を大きく削り落とした形で、ピッチ方向にワークがずれても、逃げの部分は穴の内壁に当たらない。このツールもその形状を前提に、ランドの角だけが穴に当たるとして計算している。
2本ともひし形にしない、もう1つの理由
自由度の数え方とは別に、Mohan は両方のピンをひし形にしない理由として、ワーク上のほかの寸法のばらつきが増えることを挙げている。基準の穴を丸ピンで1点に決めておかないと、その穴から測る寸法がそろって揺れてしまう、という現場目線の指摘だ。
位置決めピンのピッチ公差と実寸を入れるときのコツ
- ピッチ公差は片側の値を入れる。 ±0.02 なら 0.02 を入れる。+0.03/−0.01 のように片寄った公差なら、大きいほうの 0.03 を入れる。治具のピンピッチを公差域の中央に寄せて作れるなら、入れる値は公差幅の半分で済み、そのぶん最大ランド幅に余裕が出る
- ピッチに公差が書いていない図面は普通公差で埋める。 公差の無い寸法は図面の普通公差の等級に従うので、等級とピッチから許容差を引いて、その値をワークの穴ピッチ公差に入れる
- 試作で引っかかったら実寸で入れ直す。 穴はピンゲージで「通る最大の1本」を探せば、実際の最小径に近い値が分かる。ひし形ピンはランドが向かい合っているので、マイクロメータでランドどうしを挟めば最大径を測れる。公差クラスを直接入力に切り替え、上下の許容差に同じ実測の偏差を入れれば、その1組の寸法で判定できる
- 治具のピンピッチは出来上がりの実測で。 座標測定機で測ったピン間距離と設計値の差に、測定の不確かさを足して治具の公差欄に入れ直す。図面公差で見積もったときと比べて、どれだけ余裕が残っているかが分かる
- 最大回転角は暗算でも当たりがつく。 1 rad は約 3438′ なので、最大回転角はおおよそ「(c1 の最大 + c2 の最大)÷ ピッチ × 1719」分になる。使用例の φ20 のケースの値を入れてみると、ツールの回転角とほぼ一致する。回転角の許容値が決まっている治具なら、図面の段階でこの暗算をして、すき間をどこまで許せるかの見当をつけておける
ひし形ピンの計算でよく聞かれること
市販品のカタログにあるランド幅 (W) を、そのまま入れてよいか
入れてよい。Mohan の論文によると、ランド幅は円筒部の弦の長さで、実物はひし形の両角を丸めるため、実効の幅は設計値よりわずかに小さくなる。カタログ値をそのまま入れると、判定は実物よりわずかに厳しい側、つまり安全側に出る。なお穴2の呼び径がミスミ球面小頭の軸径(φ3・4・5・6・8・10・12・13・16・20)と一致すると、その (W) が参考として表示される。間の径は補間しないので出ない。ランド幅を空欄にしていて、その (W) が最大ランド幅を超えるときは、そのままでは入らない旨の注意も添えられる。
ひし形ピンを h6・h7 にすると、ランド幅をいくら細くしても「入らない」になるのはなぜか
理由は上の基礎の節のとおりで、H 穴と h ピンの組合せでは穴2側の最小すき間が0になり、丸ピン側で吸収しきれないずれが少しでも残ると、ランドをどれだけ細くしても入らない。ツールはこのとき「入らない」と判定し、ランド幅0の極限で吸収できるピッチずれの量を表示する。その値がいまのピッチ公差の合計に届かなければ、ひし形ピンを g6・f7 にするか、直接入力ですき間を作るか、ピッチ公差を詰める。
一覧に無い公差記号(e7 など)や、メーカー独自の公差のピンを使いたい
公差クラスを「直接入力」にして、上下の許容差を mm で入れる(−1〜+1mm の範囲)。記号を選んでいた状態から切り替えると、その記号の許容差が欄に引き継がれるので、変えたい側だけ書き換えればよい。H6〜H8 や f7・g6・h6 の実寸を先に確かめたいなら、JIS はめあい検索ツールで上限・下限寸法が引ける。ただし js・k・m・p のような中間ばめ・しまりばめの値を入れて最小すき間が負になると、位置決めピンはすきまばめが前提なので計算は行わず、その理由が表示される。
穴の位置度(幾何公差)は計算に入っているか
入っていない。寸法公差とピッチ公差だけで最悪の組合せを見ている。足し込むなら、2つの穴が同じデータム系に対して位置度 φt で指示されている場合、2穴が逆向きに t/2 ずつ動くと中心間距離は最大で t 変わるので、その t をワークの穴ピッチ公差に加えて入れる。Ⓜ(最大実体公差方式)付きでも、穴が大きくなって増える位置度の分だけすき間も増えるので、最小の穴径と指示値 t の組合せで見ておけば足りる。ボーナス公差の量そのものを確かめたいときは、最大実体公差/ボーナス公差計算機を使ってほしい。
「2本とも丸ピンにした場合」の回転角は、どんな丸ピンを想定しているのか
穴2側のピンを丸のまま、最悪の組合せでも入るところまで細くしたピンを想定している。そのとき穴2に要る最小すき間は、吸収すべきずれ s の2倍になる。公差の幅(最大すき間と最小すき間の差)はひし形ピンと同じに置き、そのピンで出る最大回転角と、ひし形ピンの回転角に対する倍率を並べている。もともと2本とも丸ピンで入る条件では比べる意味がないので、この比較は表示されない。
入力したワーク図面の寸法は、どこかに送られるか
送られない。公差表の参照から最大ランド幅・回転角の計算まで、すべて開いているブラウザの中で完結していて、入力値をサーバーに送ったり保存したりはしない。取引先のワーク図面の寸法をそのまま入れても外に出ないので、見積もり段階の検討にも使える。結果はテキストでコピーできるので、治具の設計書や打ち合わせメモに貼っておくと、どの公差の組合せで判断したかの記録になる。
まとめ — 2ピン位置決めの検討をつなぐ
丸ピン+ひし形ピンの位置決めは、穴とピンの公差、ワークの穴ピッチ公差、治具のピンピッチ公差が最悪に重なっても入るかどうかで決まる。最大ランド幅とがたを確かめたら、前後の検討は次のツールにつなげてほしい。
- 穴とピンのすきまを1組ずつ確かめる → JIS はめあい検索ツール
- ピンを固定する側のはめあいを用途から選ぶ → はめあいグレード選定アシスタント
- どの面と穴を基準にするかを決める → データム設定アシスタント
- 穴ピッチのばらつきを部品の積み重ねから出す → 公差積み上げシミュレーター
- 位置度Ⓜのボーナス公差を確かめる → 最大実体公差/ボーナス公差計算機
- 公差の書いていないピッチの許容差を引く → 普通公差の一括計算ツール
追加してほしい公差クラスや市販品の寸法、計算の前提で気になる点があれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。ひし形ピンの角を三平方の定理で解き直したら、穴 H7・ピン g6 のままでは市販品の形が入らない組合せが思ったより多かった。治具の図面を描く前に、ピンの公差とランド幅をここで一度通してほしい。
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