全熱交換器(HRV/ERV)選定ツール

延床面積・在室人数から必要換気量と機種クラス・熱回収量を一括算出

💡 延床面積・在室人数・温湿度から、建築基準法に準拠した必要換気量と 全熱交換器(HRV/ERV)の推奨機種クラス・熱回収量を一括算出するツール。

シナリオプリセット

建物条件

温度条件

冬季最低または夏季最高の設計外気温を入力する。

算出結果

必要換気量

120 m³/h

CO2濃度基準

推奨機種クラス

150クラス

150 m³/h

熱回収量

0.63 kW

ΔT=20.0K

換気回数基準

100 m³/h

在室人数基準

120 m³/h

温度効率

78%

定格消費電力

55 W

余裕度×1.25機種150 / 必要120
適正
計算値は設計初期検討の目安。実際の機種選定はメーカー選定ソフトと建築基準法施行令第20条の8・シックハウス省令に従って。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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高気密住宅で「ロスナイ、何畳用を選べばいい?」と検索した人向けの話

新築の打ち合わせで工務店から「24時間換気は全熱交換器のロスナイ250タイプで」と言われて、それが妥当なのかどうか判断できずにモヤッとした経験がある人は多いはず。カタログを開くと150、250、500、800と風量別のクラスが並び、温度効率78%、消費電力55W、有効換気量…と数字がずらり。でも自宅の延床80m²、家族4人に対してどのクラスが「ちょうどいい」のかは、一枚の表からでは読み取れない。

このツールは、延床面積・天井高・在室人数・設計外気温という4つの入力だけで、建築基準法が求める必要換気量と、熱回収でどれだけ空調負荷が減るかを同時に見せる。メーカー選定ソフトより軽く、でも電卓より賢く、「このクラスで合ってる?」の最終確認に使える道具を目指した。

なぜ作ったのか - カタログ横断の煩雑さ

きっかけは、知人の家づくりに付き合ってメーカー3社のカタログを並べたときの徒労だ。パナソニック、三菱電機、マックス。それぞれ品番体系が違い、150m³/hクラスのつもりが実効風量は120m³/hだったり、温度効率のカタログ値が「最大定格風量時」と「低速運転時」で10ポイント違ったりする。

そこに建築基準法施行令第20条の8(シックハウス対策)の「床面積×天井高×0.5回/h」という縛りが入る。さらに在室人数が多い事務所や会議室では、厚生労働省の建築物衛生法に基づく「1人あたり30m³/h」のCO2濃度基準が支配的になる。どちらが効くかは部屋ごとに違い、机上で何度も電卓を叩き直すことになった。

既存のメーカー選定ソフトはExcelマクロやWindows専用アプリが多く、iPadで施主に見せられない。一方でネット上の「○畳用換気扇 早見表」は局所換気(キッチン・浴室)向けで、24時間換気の熱交換クラスには対応していない。必要なのは「法規で決まる必要風量」と「選定クラスで回収できる熱量」を1画面で見せる中間ツールだった。だから自分で作った。

全熱交換器とは - 顕熱・潜熱を同時に回収する換気装置

顕熱交換と潜熱交換の違い

全熱交換器(HRV/ERV)は、室内から捨てる汚れた空気と、外から取り入れる新鮮な空気を、熱交換素子を挟んですれ違わせる装置だ。冬、22度の室内空気を2度の外気と直接入れ替えれば室温はガタ落ちするが、全熱交換器を通すと外気は素子内で暖められ、18度程度まで予熱された状態で室内に入る。エアコンの加熱負荷は(22-2)=20K分ではなく、(22-18)=4K分だけで済む。

熱には「顕熱(温度差)」と「潜熱(水蒸気量の差)」があり、これを両方回収するのが「全熱」交換器、温度だけ回収するのが「顕熱」交換器(HRV)、温度+湿度を回収するのが全熱型のERV(Energy Recovery Ventilator)だ。紙素子を使ったロスナイ式は湿気を透過させるため全熱型、アルミプレート式は水蒸気を透過しないため顕熱型になる。寒冷地で室内加湿を逃がしたくない、あるいは梅雨時に外の湿気を入れたくない地域ではERVが有利、一方でトイレや厨房からの臭気混入を避けたい場合は顕熱型HRVが選ばれる。

熱交換効率の定義

温度効率は以下の式で定義される。

温度効率η = (給気温度 - 外気温度) / (室内温度 - 外気温度)

たとえば室内22度、外気2度、素子通過後の給気が17.6度なら、η = (17.6-2)/(22-2) = 0.78、つまり78%だ。JIS B 8628 が試験方法を規定している(JIS B 8628 - 全熱交換器)。カタログ値は定格風量時のものが多く、低速運転時は効率が上がる(ゆっくり通すほどしっかり熱交換される)。本ツールでは定格風量時の代表値を採用し、安全側に振っている。

実務での重要性 - 換気不足とエネルギー損失の二正面

シックハウス省令が義務化した0.5回/h

2003年に改正された建築基準法施行令第20条の8により、居室には換気回数0.5回/h以上の機械換気設備が義務付けられた。これを怠るとホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)が室内に滞留し、頭痛・目の痛み・倦怠感といったシックハウス症候群を引き起こす。厚労省の室内濃度指針値ではホルムアルデヒド0.08ppm以下が目安だが、新築時の建材から放散される量を考えると0.5回/h未満では指針値を超えるリスクがある。

換気と熱負荷のトレードオフ

一方で、換気はエネルギーを捨てる行為でもある。床面積120m²の住宅で換気回数0.5回/h(=約150m³/h)を冬の外気温0度、室内22度で行うと、熱損失は Q·ρ·Cp·ΔT/3600 = 150×1.2×1.006×22/3600 ≈ 1.11kW。日本の住宅の暖房負荷が5-8kWクラスであることを考えると、換気だけで負荷の15-20%を占める計算になる。全熱交換器で効率80%回収すれば、この1.11kWのうち0.88kWを取り戻せる。年間電気代にして数万円、断熱仕様によっては10万円近い差になることもある。

数値選定のミスが招く実害

必要風量より小さいクラスを選ぶと、設計風量に届かずシックハウス省令違反の可能性がある(完了検査時に指摘されれば是正工事)。逆に大きすぎるクラスを選ぶと、消費電力が増え、過換気で冬場の乾燥が悪化する。住宅性能評価や長期優良住宅の認定でも換気設備の確認は項目に含まれており、初期計算を正確にやる意味は大きい。

活躍する場面

新築住宅の機種選定 - 延床と家族構成から「250クラスでOK」「150では足りない」を即断。工務店と施主の合意形成の土台に。

リフォーム・リノベ時の後付け検討 - 既存住宅にダクト式HRVを入れる際の風量要件を短時間で試算。「築25年40坪、夫婦2人ならこのクラス」のような即答ができる。

小規模事務所・クリニック・美容室 - 在室人数が支配的になるケース。10人規模のオフィスで「人数×30」が効いてくる境界を把握する。

店舗・会議室のプレゼン用 - 飲食店や塾など、CO2濃度が高くなりやすい用途で、換気回数基準を超える風量が必要かを視覚的に説明できる。

基本の使い方 - 3ステップで完了

  1. 建物条件を入力 - 延床面積(m²)、天井高(m)、在室人数(人)、建物用途を入れる。デフォルトは30坪住宅4人を想定。
  2. 温度条件を入力 - 室内設定温度と設計外気温を入れる。冬季評価なら室内22度・外気2度、夏季なら室内26度・外気36度など、地域の極値を使う。
  3. 結果を読み取る - 必要換気量、推奨機種クラス、熱回収量(kW)、余裕度のステータスが一度に表示される。換気回数基準と在室人数基準のどちらが支配的かも内訳で確認できる。

結果をコピーして設計メモに貼り付け、あるいはリセットして別条件を試す、という使い方を想定している。

具体的な使用例

ケース1: 30坪住宅 4人家族 冬季(典型的な戸建て)

入力: 延床80m²、天井高2.5m、4人、室内22℃、外気2℃(ΔT=20K)。 計算: 換気回数基準 80×2.5×0.5 = 100m³/h、在室人数基準 4×30 = 120m³/h。支配するのは人数基準で requiredQ=120m³/h。150クラス(tempEff=0.78、55W)を選定。熱回収量 = 120×1.2×1.006×20×0.78/3600 ≈ 0.63kW。 解釈: 家族4人なら最小クラスの150で十分。冬場に約0.63kWの暖房負荷を削減できる。24時間連続運転でも消費電力は55Wと軽く、電気代は月300円程度。

ケース2: 100m²事務所 6人 夏季(非住宅の代表例)

入力: 100m²、2.7m、6人、26℃、36℃(ΔT=10K)。 計算: 容積基準 100×2.7×0.5 = 135m³/h、人数基準 6×30 = 180m³/h。人数支配で requiredQ=180。250クラス(eff=0.80、90W)を選定。熱回収 = 180×1.2×1.006×10×0.80/3600 ≈ 0.48kW。 解釈: オフィスは在室人数密度が高いため人数基準が支配的になりやすい。ΔTが小さい夏季は回収量も控えめ。ピークカットで空調コンプレッサーの負担を軽減する役割。

ケース3: 広間150m² 2人 換気回数基準支配(大きな家)

入力: 150m²、2.8m、2人、22℃、2℃(ΔT=20K)。 計算: 容積基準 150×2.8×0.5 = 210、人数基準 2×30 = 60。容積支配で requiredQ=210。250クラス(eff=0.80)を選定。熱回収 = 210×1.2×1.006×20×0.80/3600 ≈ 1.10kW。 解釈: 延床が広く在室が少ない住宅では容積基準が効く。法規上は2人でも150クラスではNG、250クラスが必要。熱回収量1.1kWはエアコン1台分の軽減効果に相当する。

ケース4: コンパクト住宅60m² 3人 中間期(小世帯マンション)

入力: 60m²、2.4m、3人、20℃、10℃(ΔT=10K)。 計算: 容積 60×2.4×0.5 = 72、人数 3×30 = 90。人数支配で requiredQ=90。150クラス(eff=0.78、55W)を選定。熱回収 = 90×1.2×1.006×10×0.78/3600 ≈ 0.24kW。 解釈: マンション3LDKなら最小クラスで余裕十分。余裕度は150/90 ≈ 1.67で「適正」判定。

ケース5: 飲食店120m² 25人ピーク(店舗)

入力: 120m²、2.8m、25人、24℃、34℃(ΔT=10K)。 計算: 容積 120×2.8×0.5 = 168、人数 25×30 = 750。人数基準が圧倒的支配で requiredQ=750。800クラス(eff=0.76、280W)を選定。熱回収 = 750×1.2×1.006×10×0.76/3600 ≈ 1.91kW。 解釈: 飲食店や塾は人数密度が高く、住宅の6倍以上の風量が必要になる。800クラスでも余裕度1.07で「ぎりぎり」。厨房排気は別系統で計画する必要があるため、このツールの結果は居室分として扱う。

ケース6: 大型店舗300m² 60人(複数台構成ライン)

入力: 300m²、3.0m、60人、26℃、36℃(ΔT=10K)。 計算: 容積 300×3×0.5 = 450、人数 60×30 = 1800。人数支配で requiredQ=1800。1000クラスを超えるため警告フラグが立ち、最上位1000クラス(eff=0.75、360W)が提示される。 解釈: 単機では容量不足。2台並列または業務用大型機への切替を検討するサインになる。このツールは小中規模向けの初期検討用であり、1000m³/hを超える案件はメーカー専用ソフトへ送り出す役割を持たせている。

ケース7: 高天井リビング 35m² 2人(成層化注意ケース)

入力: 35m²、4.5m(吹き抜け)、2人、22℃、0℃(ΔT=22K)。 計算: 容積 35×4.5×0.5 ≈ 79、人数 2×30 = 60。容積支配で requiredQ≈79。150クラス(eff=0.78、55W)を選定。熱回収 = 79×1.2×1.006×22×0.78/3600 ≈ 0.45kW。 解釈: 天井高4m超なので「成層化注意」の警告が出る。空気は暖かいほど上に溜まるため、給気・排気の位置を工夫しないと床付近の換気が不足する。CO2センサー連動制御の検討を促すケース。

仕組み・アルゴリズム

支配式の選定 - max取りの妥当性

必要換気量の計算には大きく2系統ある。(A)建築基準法施行令第20条の8が求める「居室の気積×0.5回/h」、(B)建築物衛生法のCO2濃度基準から導かれる「在室1人あたり30m³/h」。本ツールは両方を計算し、大きい方を採用する。

const volumeBasedQ = floorArea * ceilingHeight * 0.5;  // 換気回数基準
const occupantBasedQ = occupants * 30;                  // CO2濃度基準
const requiredQ = Math.max(volumeBasedQ, occupantBasedQ);

「最大値を取る」理由は、両者が異なる物理的制約を表すからだ。容積基準は建材からのVOC放散を希釈するための要求、人数基準は呼気CO2を除去するための要求。片方を満たしても他方が不足すれば室内空気質は悪化する。単純平均や重み付け平均では安全側に倒れないため、max取りが標準的な実務慣行になっている。

候補として「加算(A+B)」も検討したが、容積基準は既に在室を含む居室全体の前提で設定されており、加算すると二重計上になる。国土交通省の技術基準解説書でも「いずれか大きい値」を採用している(シックハウス対策の規制導入について)。

機種クラスの選定ロジック

機種クラスは150、250、500、800、1000m³/hの5段階。requiredQを満たす最小クラスを線形探索する。

const modelClasses = [
  { id: "150",  capacity: 150,  tempEff: 0.78, powerW:  55 },
  { id: "250",  capacity: 250,  tempEff: 0.80, powerW:  90 },
  { id: "500",  capacity: 500,  tempEff: 0.78, powerW: 180 },
  { id: "800",  capacity: 800,  tempEff: 0.76, powerW: 280 },
  { id: "1000", capacity: 1000, tempEff: 0.75, powerW: 360 },
];
const selected = modelClasses.find(m => m.capacity >= requiredQ) ?? modelClasses.at(-1);

効率値は国内主要メーカー(三菱ロスナイ、パナソニック気調、マックスなど)のカタログ平均を使っている。大型機になるほどプレート面積あたりの風速が上がるため効率はわずかに下がる(78%→75%)。消費電力は定格風量時の代表値。

熱回収量の計算例

冬季ケース1(80m²住宅、4人、ΔT=20K、150クラスeff=0.78)で手計算を追ってみる。

// Q = 120 m³/h, ρ = 1.2 kg/m³, Cp = 1.006 kJ/kgK, ΔT = 20 K, η = 0.78
// heatRecovery [kW] = Q × ρ × Cp × ΔT × η / 3600
//                   = 120 × 1.2 × 1.006 × 20 × 0.78 / 3600
//                   = 120 × 1.2 × 1.006 × 15.6 / 3600
//                   = 2260.6 / 3600
//                   ≈ 0.628 kW → 表示 0.63 kW

3600で割るのは m³/h → m³/s への単位換算のため。ρ×Cp×ΔT はkJ/m³の体積比エンタルピー差、これに風量[m³/s]を掛けるとkW(=kJ/s)になる。顕熱のみの式であり、潜熱(水蒸気)は含まない。ERV型で加湿回収を狙う場合は潜熱効率(湿度効率)を別途評価する必要があるが、本ツールはわかりやすさ重視で顕熱回収量に絞って表示している。

余裕度ステータスの判定

selectedModel.capacity / requiredQ を余裕度として、2.0以上=機種過大(消費電力の無駄)、1.1-2.0=適正、1.0-1.1=ぎりぎり、1.0未満=容量不足、の4段階で判定する。ぎりぎり判定は「定格運転必須で低速運転の余裕がない」状態を示し、フィルター汚れや経年劣化で簡単に容量割れする警告の意味を持つ。

他ツールとの違い

全熱交換器の選定は本来、各メーカーの専用選定ソフトを使うのが王道だ。三菱電機のロスナイ選定システム、ダイキンのベンティエール選定ソフト、パナソニックの気調システム設計ツールなど、どれも機種コードまで絞り込める高精度な代物。ただし、どれもメーカー縛りで、しかも「この建物ならどのメーカーのどのクラスが妥当なのか」という横断比較には向かない。施主や工務店から「ざっくり容量と熱回収の目安だけ先に知りたい」と言われた時、選定ソフトを3本立ち上げて入力し直すのは明らかに過剰だ。

このツールはそこを割り切った。メーカー依存の型番は出さず、150/250/500/800/1000 m³/h の5クラスに正規化し、代表的な温度効率・湿度効率・消費電力だけで熱回収量を弾く。建築基準法0.5回/hとCO2基準30 m³/h/人の「どちらが効くか」も一目で分かるので、設計初期の方針決めには十分だ。最終的な型番決定はメーカー選定ソフトに渡す、という使い分けを想定している。

一方で、ダクト圧損計算・複数室分配・外気処理空調機との連携検討などは扱わない。ここは /duct-sizing/ventilation-calc と組み合わせて使う想定だ。「ざっくり把握するためのフロントエンド、詰めは専門ソフト」というポジションでツールを分けている。

豆知識・読み物

第一種換気と第三種換気、そして全熱交換器の立ち位置

建築基準法のシックハウス対策で2003年から義務化された24時間換気は、大きく第一種・第二種・第三種の3方式に分かれる。住宅で主に使われるのは第一種(給気・排気とも機械)と第三種(給気は自然・排気のみ機械)の2つだ。

第三種換気は安価でメンテが楽、トイレや浴室の排気ファンを常時運転するだけで済む。ただし給気は壁のスリーブから冷たい外気がそのまま入ってくるので、冬は足元がスースーする。高気密住宅ほど引っ張る力が強くなるので、給気口直下は体感温度が数度落ちることもある。

第一種換気に全熱交換エレメントを組み込んだのが、いわゆるHRV(Heat Recovery Ventilator)・ERV(Energy Recovery Ventilator)だ。排気と給気を同じ機械内で交差させ、紙素子やプレートを介して熱を移す。温度効率70〜85%、湿度効率50〜70%程度を稼げるので、真冬に外気2℃を吸い込んでも16〜18℃まで予熱されて室内に入る。高気密高断熱住宅で採用率が高いのはこのためだ。

全熱型(ERV)と顕熱型(HRV)の選定指針

「全熱」と「顕熱」の違いは、湿気を回収するかどうかに尽きる。全熱型は温度+湿度の両方を交換する紙製または樹脂製の素子を使い、顕熱型は金属プレートで温度だけを移す。

選定の勘所はシンプルだ。冬の乾燥と夏の除湿を両立したい温帯地域(本州の大半)では全熱型が有利。暖房時に室内の湿気を捨てずに済むので、加湿器の負担が減る。一方、寒冷地(北海道・東北北部)で室内湿度が高くなりがちな場合は顕熱型を選ぶ。全熱型は湿気も戻すので、窓面や壁内結露のリスクが上がるからだ。

また厨房・浴室付近の換気や、塩素臭・化学物質が気になる実験室・医療施設では、臭気の戻りを避けるために顕熱型が推奨される。参考までに日本冷凍空調工業会(JRAIA)の資料にも選定基準がまとまっている。

Tips

  • フィルター清掃は3〜6ヶ月に1回が目安。都市部の幹線道路沿いなら2ヶ月に1回に短縮したほうが良い。目詰まりが進むと風量が落ち、必要換気量を下回ってCO2濃度が上がる。本ツールで算出した必要換気量を「フィルター新品時の値」と考え、余裕度1.2倍以上を狙うと安心だ。
  • 冬季の結露対策。全熱型でも外気温が極端に低い(-5℃以下)と素子内で結露する場合がある。寒冷地向け機種はプレヒーター内蔵だが、温帯地域の標準機種でも玄関や階段室から冷気が流入する間取りだと素子温度が下がりやすい。本体設置場所は暖気が回る天井裏・パイプスペース内を優先する。
  • 騒音配慮。150〜250クラスは静音だが、500クラス以上は運転音30〜35dB程度になる。寝室直上に設置する場合はアイソレーター(防振ゴム)と消音ボックスを追加し、ダクトは硬質PVCではなくアルミフレキ+グラスウール巻きで吸音する。
  • ダクトは短く太く。圧損が増えると実効風量がカタログ値の60〜70%まで落ちることがある。曲がりは最小限に、主管はφ150以上を確保。圧損計算は /duct-sizing で先に詰めておく。
  • CO2センサー併用。延床が広く在室人数の変動が大きい事務所・店舗では、CO2濃度でファン回転数を可変する制御が省エネ効果大。定格消費電力を本ツールで確認し、デマンド制御時の省エネ幅を試算する参考値にする。

FAQ

本ツールの温度効率(78%など)はどこから来た数値?

主要メーカー(三菱電機ロスナイ、パナソニック気調システム、ダイキンベンティエール)の住宅用〜小規模業務用機種カタログから、各風量クラスの代表値を抽出した平均値だ。実機ではJIS B 8628-1に基づく温度交換効率として65〜85%のレンジに収まる。設計初期段階の目安としては十分だが、最終選定では必ず該当機種のカタログ値を使ってほしい。

必要換気量が1000 m³/hを超えた場合はどう選べばいい?

本ツールでは最上位クラス(1000 m³/h)を選定したうえで警告を表示している。実務では500クラスを2台並列、または800+500の組み合わせなど複数台構成を検討する。大型業務用の一体機(2000〜5000 m³/h級)もあるが、メンテナンススペース・点検口・ダクト配線の制約で住宅・小規模店舗では採用例は少ない。分配ゾーニングと合わせて /ventilation-calc で詰めると良い。

熱回収量(kW)は電気代でいうと月いくらくらいの節約?

例えば必要換気量120 m³/h・ΔT20K・温度効率78%で熱回収量は約0.63 kWだ。暖房を1日18時間稼働させる前提で、エアコン(COP4.0)との比較では月間約70 kWh分の暖房負荷削減に相当する。電気料金32円/kWhなら月2200円ほど。寒冷地で稼働時間が長ければ月4000〜5000円の差になる。初期投資40〜60万円の回収は10〜15年が目安と言われる理由はここにある。

ΔT(温度差)の入力値は冬と夏どちらを使うべき?

設計用途によって使い分ける。暖房負荷削減効果を見たいなら冬季(室内22℃・外気2℃など)、冷房負荷削減なら夏季(室内26℃・外気35℃など)を入れる。一般に温度差が大きい冬の方が熱回収量は大きく出る。年間効果を概算したい場合は、冬季と夏季それぞれで計算して稼働時間按分すると精度が上がる。詳細な年間負荷計算は /cooling-load-calc を併用してほしい。

既存住宅にも後付けできる?

天井裏にダクトを這わせるスペースがあれば後付け可能だが、実務上は壁掛け型ダクトレス機(ロスナイ壁掛けタイプなど)を各部屋に分散配置するほうが現実的だ。本ツールのクラス選定はダクト型・ダクトレス型を問わず必要換気量ベースで使えるが、ダクトレス機は1台あたり60〜150 m³/h程度なので台数換算して読むこと。リノベ案件での採用事例は工務店向け技術資料に多く載っている。

まとめ

全熱交換器の選定は、法規上の必要換気量・CO2基準・熱負荷・機種容量という4つの軸を同時に見る必要がある。このツールは設計初期に「この建物なら150クラスで足りるのか、500クラスが要るのか」を30秒で把握するためのフロントエンドだ。熱回収量まで一目で出るので、施主説明の叩き台にも使える。

冷房・暖房の詳細負荷を詰めるなら /cooling-load-calc、全体の換気設計は /ventilation-calc、温湿度の状態変化を追うなら /psychrometric-calc、ダクト径と圧損は /duct-sizing と組み合わせて使ってほしい。気になる点や改善要望があればお問い合わせから気軽に連絡を。現場の声がツールを育てる。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。高気密高断熱住宅のセルフビルドを経験し、換気設備の選定で何度もカタログと睨めっこした結果、この「ざっくり選定」を作った。最終確認は必ずメーカー選定ソフトで。

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