植物育成ライトのPPFD・DLI計算

照度(lux)またはPPFDから、置く距離での光の強さと1日の光の総量DLIを出し、必要な点灯時間と距離を逆算する

育成ライトの照度(lux)か箱に書いてある PPFD から、置く距離での光の強さと1日の光の総量 DLI を出し、植物に足りるかを判定する。足りないときは「あと何時間・あと何cm」を逆算する。

シナリオプリセット

入力のしかた

スマホの照度アプリで測ったなら照度、ライトの箱や説明書に PPFD が書いてあれば PPFD を選ぶ

ライトの明るさ

スマホの照度アプリは製品差が大きいので目安として使う。『フルスペクトル』と書かれた白く見えるLEDは高演色を、紫やピンクに見えるものは赤青LEDを選ぶ

距離(任意)

両方空にすると距離の補正をしない(置く位置で測った場合)。距離が2倍になると光は1/4になる計算

育てる植物と点灯時間

セダム・エケベリア。フィカス・クロトンもこの帯:目安 12 以上 mol/m²/日(最低限 8)

電気代(任意)

消費電力を空にすると電気代は出さない

結果

DLI(mol/m²/日)9.66
やや不足

置く距離の PPFD

223.5 µmol/m²/s

測った位置 223.5(距離 ×1.00)

1時間あたり

0.805 mol/m²

点灯を1時間延ばすとこれだけ増える

この植物の目安

12 以上 mol/m²/日

最低限 8

目安に届く点灯時間

14.9 h/日

目標 12 mol/m²/日

目安に届く距離

26.9 cm

目標 PPFD 278

月の電気代

335 円

10.8 kWh(30日)

白色LEDの換算は ±7% 程度の幅がある(光源の色味による)。スマホの照度アプリは機種差がさらに大きいので、判定の境目にいるときは余裕を見てほしい

観葉植物と多肉の目安は温室で商品として育てるときの値。家で維持するだけなら最低限の値でも枯れにくい

白色LED(昼白色・昼光色) は 67.1 lx = 1 µmol/m²/s(係数 0.0149)で換算

このライトで育つ植物

耐陰性の観葉適正一般の観葉適正明るめの観葉やや不足多肉植物やや不足苗・挿し木適正レタス不足バジル不足トマト不足05101520253035いまのDLI 9.66
やや不足適正多すぎいまのDLI帯の左側(色なし)は不足。右端の判定は赤が不足・多すぎ。行をタップするとその植物で判定する

照度からの換算は光源ごとの代表値(白色LEDで ±7% 程度)で、距離の補正は逆二乗則の近似。植物の目安は温室生産の値で、品種や株の状態で変わる。正確に測るなら光量子計(PPFDメーター)を使ってほしい。

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📘 室内栽培の植物育成ライトと光の測り方

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照度アプリは「明るい」と言うのに、多肉がひょろりと伸びていく

冬が来る前に、ベランダのエケベリアを部屋に取り込む。窓から2mほど離れた棚に並べ、念のためスマホの照度アプリで測ってみると、数千 lx の数字が出る。照明を点けた部屋としては十分に明るい。安心して数週間が過ぎたころ、ロゼットの中心が上に伸び、葉と葉の間が空いてくる。いわゆる徒長だ。明るいはずの場所で、なぜ光が足りなくなるのか。

答えは、人の目が感じる明るさ(lux)と、植物が光合成に使う光(PPFD)が別の物差しだからだ。照度アプリは人の目の感度に合わせて光を数えるので、植物にとっての光の量をそのまま表してはいない。しかも植物に効くのは、ある瞬間の強さではなく、**1日に浴びた光の総量(DLI)**のほうだ。強い光でも短時間なら足りないし、そこそこの光でも長く当てれば足りることがある。

このページのツールは、照度アプリで測った lux か、育成ライトの箱に書かれた PPFD を入り口にして、置く距離での PPFD と1日の総量 DLI を出し、育てる植物の目安と比べる。足りなければ「あと何時間点ければいいか」「何cmまで近づければいいか」を逆算し、ライトの電気代も添える。

なぜ作ったのか — 箱の「PPFD 400」は置き方しだいで何倍にも変わる

植物育成ライトを買うと、箱や商品ページに「PPFD 400 µmol/m²/s(30cm)」のような数字が載っている。ところがこの数字は、決まった距離で、ある1点を測った瞬間の強さにすぎない。実際に植物を置く距離が違えば光の強さは大きく変わるし、1日に何時間点けるかで総量はさらに何倍にも開く。箱の数字だけを見て「400あるから十分」と考えると、置き方しだいで足りなかったり、逆に強すぎたりする。

次に困るのが、計算の道具が見当たらないことだ。PPFD や DLI を日本語で計算できるページを探しても、英語のツールを機械翻訳でまとめたような記事ばかりで、手元の数字を入れて答えが返ってくるものに行き当たらない。英語のツールにしても、照度から PPFD への換算だけ、あるいは PPFD から DLI だけと、どちらか片方で止まっているものが多い。

そして本当に知りたいのは、順方向の計算結果よりも、その先の打ち手のほうだ。「DLI が 9.66」と分かったあとに要るのは、「では何時間に延ばせば足りるのか」「何cm近づければ足りるのか」という逆向きの答えになる。

さらに、照度から PPFD への換算は光源ごとに係数が違う。白色LED・太陽光・高圧ナトリウムで同じ係数を使うと、それだけで2割以上ずれる。赤と青の素子を並べた紫色に光る育成ライトに至っては、照度計がほとんど反応しないので、照度から換算すること自体が成り立たない。こうした前提をまとめて引き受け、入力から逆算と電気代まで1画面で出せるようにしたかった。

PPFD・DLI・ルクスの関係 — 植物の光を数える3つの物差し

植物の光の話がややこしく見えるのは、似た言葉が3つ出てくるからだ。順に、何を数えているのかを分けて見ていく。

ルクスとは — 人の目の感度で重み付けした明るさ

ルクス(lx)は照度の単位で、面に届く光を人の目の感度で重み付けして足し合わせた量だ。人の目は緑色(波長555nm付近)を最も明るく感じ、赤や青には鈍い。そのため、同じエネルギーの光でも緑なら lux が大きく、赤や青なら小さく出る。照度アプリやデジタル照度計は、この重み付けを再現するように作られている。

PPFD とは — 光合成に使える光子の数

一方、植物が光合成に使うのは波長400〜700nmの光で、この範囲を光合成有効放射(PAR)と呼ぶ。植物にとって大事なのは光のエネルギーよりも光子(光の粒)の数で、その範囲の光子が1秒間に1m²へいくつ届くかを表したのが PPFD(光合成光量子束密度)だ。単位は µmol/m²/s(マイクロモル毎平方メートル毎秒)。人の目とは逆に、植物は赤と青の光をよく使い、緑の光の重みが特別に大きいわけではない。

ルクス PPFD 換算 — 光源ごとに係数が違う理由

lux は目の感度で、PPFD は光子の数で数えている。だから両者の比は、その光源がどの色の光をどれだけ含んでいるかで変わる。緑が多い光源は lux が大きめに出るので、同じ PPFD を得るのに必要な lux も大きくなる。換算は次の1行だ。

PPFD [µmol/m²/s] = 照度 [lx] × 係数 k(光源ごとに決まる)

係数を「1 µmol/m²/s あたり何 lx か」で並べると、光源の違いがよく分かる。

光源1 µmol/m²/s に相当する照度PPFD 100 を得るのに要る照度
太陽光54 lx5,400 lx
白色LED(昼白色)約67 lx約6,710 lx
白色LED(電球色)約69 lx約6,900 lx
メタルハライドランプ71 lx7,100 lx
蛍光灯(冷白色)74 lx7,400 lx
高圧ナトリウムランプ82 lx8,200 lx

太陽光は赤から青までまんべんなく含むので、少ない lux で多くの光子を届ける。高圧ナトリウムランプはオレンジ色の光、つまり人の目が明るく感じる黄〜橙に光が集中しているので、lux のわりに光子が少ない。照度アプリの「8,200 lx」と「5,400 lx」が、植物にとっては同じ量の光になるわけだ。係数の一次資料は Apogee Instruments の換算表にまとまっている。

DLI 計算 — 1秒あたりの強さを1日の総量に直す

PPFD は「1秒あたり」の強さなので、1日分に直すには点灯していた秒数を掛ければよい。1時間は3600秒、µmol を mol に直すには10⁶で割る。この2つをまとめると、DLI(日積算光量)の式が出てくる。

DLI [mol/m²/日] = PPFD [µmol/m²/s] × 3600 [s/h] × 点灯時間 [h] ÷ 1,000,000
               = PPFD × 点灯時間 × 0.0036

米パデュー大学の資料 Measuring Daily Light Integral in a Greenhouse(HO-238)は、DLI を雨量計にたとえている。PPFD が「いま降っている雨の強さ」なら、DLI は「1日にたまった雨量」だ。土砂降りが10分で止んだ日と、小雨が1日中降り続いた日とでは、どちらの雨量が多いかは強さだけでは決まらない。同じ資料の数値例、PPFD 52 を12時間当てたケースを式に入れると 52 × 12 × 0.0036 = 2.2464 mol/m²/日になり、資料に載っている 2.3 と丸めの範囲で一致する。DLI そのものの定義は Daily light integral(Wikipedia 英語版)も参考になる。

距離の効き方 — 逆二乗則

光源から離れると、同じ光がより広い面積に広がるので、1m²あたりの光子は減る。点に近い光源なら、強さは距離の2乗に反比例する(逆二乗の法則)。

置く距離の PPFD = 測った距離の PPFD × (測った距離 ÷ 置く距離)²

距離を2倍にすれば光は1/4、30cm を 45cm にするだけで (30/45)² = 0.444倍になる。たった15cmの違いで、半分以下に減るということだ。DLI は PPFD に比例するので、この減り方はそのまま1日の総量にも効く。

光が足りない・多すぎると植物に何が起きるか

足りないとき — 徒長と色の抜け

光が足りない植物は、光を求めて茎を伸ばし、葉と葉の間隔が空く。これが徒長だ。葉の色は薄くなり、多肉植物ではロゼットが開いて締まりがなくなる。エケベリアを使った大学の試験では、DLI が15を超える条件で株が締まって育ったという報告もある。一度伸びた茎は光を足しても元には戻らないので、伸び始めてから気づくのでは遅い。

多すぎるとき — 葉焼けとチップバーン

逆に、光が多すぎても困る。葉焼けで葉が白っぽく抜けたり、褐色の斑点が出たりする。水耕のレタスでは、DLI の推奨幅(12〜17)の上限を超えて光を当てると成長が速くなりすぎ、カルシウムが葉先まで届かずに葉先が茶色く枯れる「チップバーン」が出やすくなる。育成ライトを近づけすぎたり、長時間点けっぱなしにしたりすると、植物によっては上限を簡単に超える。

植物によって必要量は10倍違う

どれだけあれば足りるかは、植物の種類でまるで違う。温室生産の目安で比べると、耐陰性の観葉植物は最低限 2・良好 4 mol/m²/日でよいのに対し、トマトは 20 を下回ると足りない。最低限どうしで比べれば10倍だ。12時間点灯で良好の下限に届くのに要る PPFD に直すと、差がもっとはっきりする。

植物群良好の下限 DLI12時間点灯で要る PPFD
観葉植物(耐陰性)4約93
苗・挿し木5約116
観葉植物(一般)6約139
観葉植物(明るい場所向き)10約231
多肉植物・レタス12約278
ハーブ(バジル)15約347
果菜(トマト)20約463

耐陰性の観葉なら手ごろなライト1台で済むが、トマトを実らせようとすると同じライトでは桁が足りない。ライト選びの前に、育てたい植物がどの帯にいるのかを知っておく必要がある。なお、観葉植物と多肉の数字は温室で商品として出荷できる品質を基準にしたもので、家で枯らさずに維持するだけなら最低限の値でも持ちこたえることが多い。

窓辺は屋外の数分の1しか届かない

屋外の DLI は季節と天気で大きく動く。前述の Purdue の資料によれば、米国の月別の地図で 5〜60 mol/m²/日の幅があり、温室の中でもガラスや骨組みに遮られて 25 を超えることはまれだという。室内の窓辺になると、ガラス越しのうえ空の一部しか見えないので、屋外の数分の1しか届かない。冬に「日当たりのいい窓辺に置いたから大丈夫」と考えるのが危ういのはこのためだ。

植物育成ライトの計算が役に立つ場面

冬に多肉・塊根植物を室内へ取り込むとき。 屋外で浴びていた光を、窓辺とライトでどこまで補えるかを先に見積もれる。照度アプリで棚の位置を測り、ライトを足すなら何時間点ければよいかまで決めてから取り込めば、春に徒長した株を見て後悔せずに済む。

水耕栽培でレタスやバジルを育てるとき。 葉物とハーブは観葉植物より桁違いに光を食う。一方でレタスには上限もあるので、足りないか多すぎるかの両方を見る必要がある。ライトの高さと点灯時間の組み合わせを数字で詰められる。

窓のない部屋や廊下に観葉植物を置くとき。 洗面所や窓のないワークスペースでは、光源は天井照明と育成ライトだけになる。耐陰性の観葉なら手持ちのデスクライトで足りるのか、専用のライトが要るのかを判定できる。

種まきした苗を室内で育苗するとき。 春の種まきは、外がまだ寒い時期に室内で始めることが多い。苗は光が足りないとすぐに徒長するので、発芽直後から必要な光を確保しておきたい。種まきの時期は種まきカレンダーで決め、育苗中の光をこのツールで見積もる、という使い分けができる。

基本の使い方 — 3ステップで「あと何時間・あと何cm」まで

① 入力のしかたを選ぶ。 スマホの照度アプリやデジタル照度計で測ったなら「照度(lux)から」、ライトの箱や商品ページに PPFD が書いてあるなら「PPFDから」を選ぶ。照度から入れる場合は、光源の種類(白色LEDの色味・太陽光・蛍光灯など)も選ぶ。赤青の育成ライトは照度からは換算できないので、PPFD から入れる。

② 距離・点灯時間・植物を入れる。 距離は「測った距離(公表値の距離)」と「置く距離」の2つを入れると、逆二乗則で置く位置の強さに直す。置く位置で直接測ったなら、2つとも空欄にすれば距離の補正はかからない。あとは1日の点灯時間と、育てる植物の種類を選ぶ。目安が分かっている植物なら、目標の DLI を直接入れることもできる。消費電力を入れれば月の電気代も出る。

③ 判定と逆算を読む。 DLI と判定(不足・やや不足・適正・多すぎ)が表示され、その下に置く距離の PPFD、1時間あたりの DLI、この植物の目安、目安に届く点灯時間と距離が並ぶ。さらに、植物群ごとの必要 DLI の帯を横棒で並べ、いまの DLI を縦線で重ねたチャートで、同じライトのままほかの植物ならどうなるかを見比べられる。

具体的な使用例 — 8ケースで見る距離と点灯時間の効き方

ここからは、具体的な入力でツールが何を返すかを8ケース見ていく。数値はすべて計算式に入力値を与えて確かめた値だ。

ケース1:昼白色LEDの真下 30cm に多肉を置く

  • 入力:照度 15,000 lx(白色LED・昼白色)、測った距離 30cm・置く距離 30cm、点灯12時間、多肉植物、消費電力 30W・単価31円
  • 結果:PPFD 223.5、DLI 9.66 で「やや不足」。最低限の8は超えているが、良好の12に届かない。目安に届く点灯時間は14.9時間、距離なら26.9cm。電気代は月10.8kWh・334.8円
  • 解釈:枯れはしないが、締まった株を目指すには少し足りない。点灯を3時間ほど延ばすか、3cmほど近づけるかのどちらでも届く。

ケース2:同じライトを 45cm に離す

  • 入力:ケース1と同じで、置く距離だけ45cm
  • 結果:PPFD は (30/45)² = 0.444倍の99.3に落ち、DLI は4.29。最低限の8も割って「不足」。目安に届く点灯時間は33.6時間で、24時間点けても届かない。目安に届く距離は26.9cm
  • 解釈:15cm離しただけで、DLI は9.66から4.29へ半分以下になった。点灯時間では取り返せないので、距離を戻すしかない。棚の段を1つ上げた、鉢を奥にずらした、という何気ない変更がこれだけ効く。なお、目安に届く距離がケース1と同じ26.9cmになるのは、同じライトの同じ目標に対する答えだからだ。

ケース3:電球色LEDで、置く位置を直接測った観葉植物

  • 入力:照度 10,000 lx(白色LED・電球色)、距離は2つとも空欄、点灯14時間、観葉植物(一般)
  • 結果:PPFD 145、DLI 7.31 で「適正」(目安6〜14)。適正なので逆算は出ない
  • 解釈:葉の位置で照度を測った場合は距離の補正が要らない。ドラセナやアグラオネマなら、この明るさで14時間点ければ十分だ。

ケース4:「30cmで PPFD 400」のライトを 20cm に近づけてレタスを育てる

  • 入力:PPFD 400(公表値・30cm)、置く距離 20cm、点灯16時間、葉物野菜(レタス)、消費電力 45W・単価31円
  • 結果:PPFD は900に上がり、DLI 51.84 で上限17を大きく超えて「多すぎ」。上限17に収まる点灯時間は5.25時間、距離なら34.9cm。電気代は月21.6kWh・669.6円
  • 解釈:10cm近づけただけで PPFD は2.25倍になり、16時間点灯と重なって上限の3倍に達した。パネル型のライトを測った距離より近づけると、計算は実際より多めに出るので、本当の値はこれより低い。それでも上限を大きく超えていることに変わりはない。公表値の30cmに戻しても16時間点灯ではまだ上限を超えるので、34.9cm 以上に離すか、点灯時間を縮めるかを選ぶことになる。

ケース5:正午の窓辺で測った光で苗を育てる

  • 入力:照度 5,400 lx(太陽光・窓辺)、点灯8時間と見なす、苗・挿し木
  • 結果:PPFD 100、DLI 2.88 で「不足」(苗の目安5〜10)。目安に届く点灯時間は13.9時間
  • 解釈:正午の照度が8時間続くことはないので、実際の1日の量はこれよりさらに少ない。窓辺だけでは苗は徒長しやすく、ライトの補光が要る状況だ。

ケース6:塊根植物に目標 DLI 15 を直接入れる

  • 入力:PPFD 250、点灯14時間、目標 DLI を直接入力で15
  • 結果:DLI 12.6 で「不足」。15に届く点灯時間は16.7時間
  • 解釈:時間を延ばせば届くが、16時間を超える点灯は日の長さで花芽や休眠が決まる植物には影響が出ることがある。距離を詰めて時間を短く保つほうが無難だ。

ケース7:高圧ナトリウムランプでトマトを育てる

  • 入力:照度 8,200 lx(高圧ナトリウムランプ)、距離は空欄、点灯14時間、果菜(トマト)、消費電力 400W・単価31円
  • 結果:82 lx = 1 µmol/m²/s なので PPFD は100、DLI 5.04 で「不足」(目安20〜30)。目安に届く点灯時間は55.6時間で、24時間でも届かない。電気代は月168kWh・5,208円
  • 解釈:8,200 lx という数字は明るく見えるが、トマトには4分の1しか届いていない。400Wのランプで月5,000円以上かけてもこの量なので、ランプを増やすか近づけるかの判断になる。

ケース8:PPFD 300 を16時間当てたレタス

  • 入力:PPFD 300、点灯16時間、葉物野菜(レタス)、消費電力 45W・単価31円
  • 結果:DLI 17.28 で、上限17をわずかに超えて「多すぎ」。15.7時間に縮めれば収まる。電気代は月21.6kWh・669.6円
  • 解釈:上限との差は0.28しかないので、タイマーを15時間半に設定すれば済む。ケース4のように距離を動かすほどの話ではない。

8ケースを並べると、距離はわずかな変更で DLI を何倍にも動かし、点灯時間は細かい調整に向いていることが分かる。足りないときは距離から、少し多いときは時間から触るのが手早い。

計算の仕組み — 換算係数・逆二乗則・判定帯の決め方

照度から PPFD へ — 分光分布を積分するか、係数を掛けるか

照度から PPFD を出す方法は2つある。1つは光源の分光分布(波長ごとの強さ)を測り、lux の重み付けと光子数の数え方をそれぞれ積分して比を取る方法。もう1つは、光源の種類ごとに決まった換算係数を掛ける方法だ。前者は正確だが分光分布の測定器が要り、スマホの照度アプリしか持たない人には使えない。後者は係数の出典を複数突き合わせて確かめられ、どれくらいずれうるかの幅も明示できる。このツールは後者を採った。

係数の出所と突き合わせ

太陽光・蛍光灯・高圧ナトリウム・メタルハライドの4光源は、Apogee Instruments の換算表と、バージニア工科大学の資料 Calculating and Using Daily Light Integral(SPES-720)のフートカンデル表を lx に直した値とを突き合わせた。4光源とも0.2%以内で一致する。

白色LEDは、Sharakshane(2018)の論文 An easy estimate of the PFDD for a plant illuminated with white LEDs の値を使っている。205種類の白色LEDのスペクトルを解析したもので、電球色(3000K・Ra80)、昼白色(5000K・Ra80)、高演色(Ra98 の3000Kと5000Kの中間)をそれぞれ係数にした。論文が示す「1000 lx ≒ 15 µmol/m²/s」という簡易則は実測と7%以内に収まるので、白色LEDの換算には ±7% 程度の幅があると見ておく。LEDメーカーの資料どうしでも1割程度ずれることがあるので、判定の境目にいるときは余裕を見たい。

赤青LEDは、照度計がほとんど反応しない赤と青に光が集中しているので、係数そのものが定まらない。照度からは計算せず、PPFD モードでの入力を求める。また、照度モードで太陽光を選んだときは距離の補正をかけない。太陽は十分に遠く、部屋の中で数十cm動かしても届く光は弱まらないからだ。

計算フロー

上で導いた換算・逆二乗則・DLI の式を、次の順につなぐ。

1. PPFD₀ = 照度 × k(照度モード)/ 公表値の PPFD(PPFDモード)
2. 置く距離の PPFD = PPFD₀ × (測った距離 ÷ 置く距離)²   ※距離が2つとも空なら補正なし
3. DLI = PPFD × 点灯時間 × 0.0036
4. 判定: DLI < 最低限 → 不足 / < 良好 → やや不足 / > 上限 → 多すぎ / それ以外 → 適正
5. 逆算の目標: 不足・やや不足なら「良好」、多すぎなら「上限」
   必要な点灯時間 = 目標 ÷ (PPFD × 0.0036)
   必要な距離     = 置く距離 × √(PPFD ÷ 目標の PPFD)
       目標の PPFD = 目標 ÷ (点灯時間 × 0.0036)

判定の境界は「良好の下限ちょうど」「上限ちょうど」を適正に含める。距離の逆算は、距離を入れたときだけ出す。基準になる距離がないと、何cmと答えようがないからだ。

判定帯の作り方

観葉植物と多肉の帯は、Purdue の資料に転載されている Faust(Ball Red Book)の表から取った。この表は植物ごとに「最低限の品質」「良好」「高品質」の3色の帯で DLI を示していて、最低限の帯の始まりを「最低限」、良好の帯の始まりを「良好」、高品質の帯の終わりを「上限」とした。高品質の帯が表の右端まで続く植物は、上限を設けていない(多すぎの判定をしない)。

明るい場所向きの観葉はシェフレラの行(最低限6・良好10)を使っている。フィカス・ベンジャミナやクロトンは、同じ表で多肉のセダムと同じ行(最低限8・良好12)に載っているので、多肉植物の帯で見てほしい。苗・レタス・バジル・トマトは SPES-720 の推奨幅を使い、幅の下限を最低限と良好の両方に、上限をそのまま上限に当てた。どちらの表も温室生産での品質の目安で、家庭の維持栽培にそのまま当てはまるとは限らない。

逆二乗則の誤差の向き

逆二乗則は点光源の近似だ。幅の広いパネル型ライトを近距離で使うと、実際の減り方は逆二乗より緩い。そのため、測った距離より離すと計算結果は実際より少なめ、近づけると多めに出る。離す側で少なめに出るのは「光を足す」方向の助言になるので害は小さいが、近づける側では多すぎの判定がやや強めに出る。置く距離が測った距離の1/2〜2倍を外れたら注意を出し、1/5〜5倍を外れたら計算をせずに測り直しを促す。

計算例 — ケース1を手で追う

使用例のケース1(昼白色LED 15,000 lx・30cm・12時間・多肉)を、上のフローどおりに追ってみる。

1. PPFD₀ = 15,000 × 0.0149 = 223.5 µmol/m²/s
2. 距離比 30 ÷ 30 = 1.0 → 置く距離の PPFD = 223.5
3. 1時間あたり = 223.5 × 0.0036 = 0.8046 mol/m²
   DLI = 0.8046 × 12 = 9.6552 mol/m²/日
4. 多肉の帯(最低限 8・良好 12・上限なし)→ 8 ≦ 9.6552 < 12 → やや不足
5. 目標 = 12
   必要な点灯時間 = 12 ÷ 0.8046 = 14.9 h
   目標の PPFD = 12 ÷ (12 × 0.0036) = 277.78
   必要な距離 = 30 × √(223.5 ÷ 277.78) = 26.9 cm

電気代は 30W × 12時間 × 30日 ÷ 1000 = 10.8kWh に単価31円を掛けて334.8円になる。

英語の DLI 計算機と、このツールの立ち位置

日本語で PPFD と DLI をまとめて扱える計算ツールが見当たらないことは、冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおり。ここでは英語圏の道具と比べて何が違うのかを、事実ベースで並べておく。

英語圏でよく名前が挙がるのは、OmniCalculator の DLI 計算機、Trimleaf の PPFD→DLI 計算、それにスマホで光を測るアプリの Photone あたりだ。前の2つは「PPFD と点灯時間から DLI を出す」順方向の計算が中心で、Photone は測る側の道具になる。2026年10月時点で確かめた範囲では、次の4つを1画面で出すものは無かった。

  • 置く距離への補正: 箱に書かれた「30cmで◯◯」を、実際に吊るす高さでの値に直す
  • 逆算: 目安に届くまでの点灯時間と距離。多すぎるときは、上限まで下げる側の値を出す
  • 電気代: 消費電力と単価から、月の電力量と金額
  • 植物群の帯の比較: 8つの植物群の必要 DLI を横棒で並べ、いまの DLI がどの帯に落ちるかを1本の縦線で見せる。行を選べば、判定する植物もそれに切り替わる

Photone のような計測アプリや光量子計とは、競合というより「つなげて使う」関係だ。測った PPFD をそのまま「PPFDから」に入れれば、距離と時間の話に進める。

サイト内の照明系ツールとは、扱う光そのものが違う。照度計算シミュレーターや照度計算・照明台数算出ツールは、部屋全体の平均照度を人の目の lx で出す道具で、暮らしや作業に足りる明るさを決めるためにある。逐点法 照度計算は1点の照度を逆二乗則と余弦則で求めるので、複数のライトを重ねたときの光の広がりはそちらの領分だ。ベランダ植物診断は屋外の方角と日照時間から植物を選ぶもので、光の量は数値では出さない。電気代計算ツールは家電全体の電気代を見る道具で、このツールの単価の初期値 31 円/kWh はそちらと揃えてある。屋外の日当たりはベランダ植物診断、室内のライトはここ、という分担になる。

100年前の「平均的な人の目」と、光子を数えるという発想

lux の重み付けは1924年の取り決め

照度計は、波長ごとの「人の目の感じやすさ」の表で光を重み付けしている。この表、標準比視感度 V(λ) は1924年に国際照明委員会(CIE)が定めたもので、複数の研究機関が被験者に色の違う光を見比べさせた実験の平均から作られた。つまり「標準観察者」という架空の人物の目だ。

面白いのは、その後の実験で短い波長(青の側)の値が低すぎることが分かり、1951年に Judd、1978年に Vos が修正版を出しているのに、照度計や照明の世界で標準として使われ続けているのは今も1924年版だという点。日本でも計量単位規則に、この表の5nmごとの数値が載っている。スマホの照度アプリが示す数字は、ほぼ100年前に決まった「平均的な人の目」をなぞった値ということになる(分光視感効率(比視感度) - Wikipedia)。

光を「モル」で数える理由

光合成は、光子が1粒ずつ吸収されることで反応が進む。だから植物の光はエネルギー(W)ではなく粒の数で数えるのが筋になる。ただ数が桁外れに多いので、化学で分子を数えるのと同じく、アボガドロ数(約6.02×10²³個)を1束にした「モル」を使う。PPFD の µmol はその百万分の一の束、DLI の mol は1日に届いた束の数だ。

古い論文では、この「光子1モル」を einstein(記号 E)と呼び、光の強さを µE/m²/s と書いていた。物理学者アインシュタインにちなんだ名前だが、SI 単位ではないうえ、もともとは「光子1モル分のエネルギー」を指す単位だったという定義の揺れもあって使われなくなった。古い園芸書や論文で µE を見かけたら、µmol と同じ数字として読めばいい(Einstein (unit) - Wikipedia)。

植物工場が白色LEDに寄ってきたわけ

LED が植物工場に入り始めたころは、光合成によく効く赤と青だけを組み合わせた赤青LEDが主流だった。いまは白色LEDを土台にする施設が増えている。理由としてよく挙がるのは3つ。紫やピンクの光の下では葉色の変化や病気に気づきにくいこと、長時間の作業で目が疲れること、そして白色LEDが一般照明向けに大量生産され、安く効率も良くなったことだ。植物にとっての理想だけでなく、そこで働く人の見やすさとの折り合いで光の色が決まってきたわけだ(植物工場 - Wikipedia)。家の棚でも、葉の色つやを毎日目で確かめやすいのは白い光のほうだ。

自作の育成ライトは回路から

LEDテープやチップを買って棚に貼り付ける自作派もいる。LED は流す電流で明るさと寿命が決まるので、抵抗や定電流の電源で電流を抑えないと焼けてしまう。必要な抵抗値と消費電力は LED回路設計アシスタント で出せる。自作ライトには PPFD の公表値が無いので、白色LEDで組んだなら、葉の位置で照度を測って「照度(lux)から」に入れるのが近道になる。

測るとき・読むときの Tips

  • 照度アプリは葉の高さで、画面をライトに向けて水平に置く: スマホの照度センサーは画面上端の近く(前面カメラの横あたり)にあることが多い。鉢の縁ではなく葉の位置にスマホを寝かせ、自分の頭や手が影を落とさないよう体は横によける。パネルの真下と棚の端では値が変わるので、鉢を置く場所ごとに測る
  • 白色LEDの暗算は「1万 lx でおよそ PPFD 150」: 白色LEDには「1000 lx ≒ 15 µmol/m²/s」という簡易則があり、色味によらずほぼ通る(Sharakshane 2018)。照度アプリの数字を見たら、ゼロを2つ落として1.5倍すれば、だいたいの PPFD が頭の中で出る
  • 時間を延ばすか距離を詰めるかは「1時間あたり」で比べる: 結果に出る1時間あたりの DLI は、点灯を1時間延ばしたときに1日の量がどれだけ増えるかそのものだ。置く距離を少し縮めて入れ直し、この値がどれだけ増えるかと見比べれば、どちらが効くかが分かる
  • 窓辺の光は1日に何度か測る: 正午の1点だけだと1日の量を多めに見積もる。朝・昼・夕方の3回測って平均を入れると、実態に近づく。曇りの日の値も1回取っておくと、冬の最低ラインが読める
  • 点灯はタイマーで毎日同じ時間帯に: DLI は1日の合計なので、点け忘れた日はそのまま不足の日になる。コンセントタイマーやスマートプラグで点灯と消灯の時刻を固定しておけば、計算した時間が毎日守られる

よくある質問

スマホの照度アプリの数字をそのまま入れて大丈夫か

目安としては十分使える。ただ照度センサーの感度や補正は機種ごとに違い、同じ場所でも機種で値が揃わないことがあるし、強い光で頭打ちになる機種もある。そのうえ白色LEDの換算そのものにも ±7% 程度の幅がある。判定が「やや不足」と「適正」の境目にいるようなら、余裕を見て一段上を狙うといい。一方、同じスマホ・同じ位置・同じ向きで測り方を揃えれば、ライトの高さを変えたときの比較は十分信頼できる。確実な値が欲しいなら光量子計(PPFDメーター)で測って「PPFDから」に入れる。

箱に PPFD が書いていない。消費電力や PPF しか載っていないときは?

白色LEDなら、照度アプリで測って「照度(lux)から」で入れるのがいちばん手早い。仕様に PPF(単位 µmol/s)だけが載っている場合、それはライト全体が1秒に出す光子の総量なので、照らす面積(m²)で割ると平均 PPFD の目安になる。ただし光の一部は照射範囲の外へ逃げ、中心は濃く端は薄いので、割った値は平均としてはやや多めと見ておく。消費電力(W)だけからは PPFD を出していない。同じワット数でも光に変える効率が製品ごとに大きく違い、推定に根拠が持てないからだ。

赤青(紫)LEDを選ぶと、照度からは計算できないのはなぜか

理由は上の「計算の仕組み」の節で説明したとおりで、換算の係数そのものが決まらないためだ。数字を出すこと自体はできても根拠が無いので、計算せずに止めている。赤青LEDでも「PPFDから」に切り替えれば、箱や説明書の PPFD から距離の補正・DLI・判定・逆算まで普通に出る。公表値が無い製品なら、光量子計で測るしかない。「フルスペクトル」とだけ書かれた製品は、点けたときに白く見えるなら高演色の白色LED、紫やピンクに見えるなら赤青LEDとして選んでほしい。

育てたい植物が選択肢に無い(塊根植物など)

「目標DLIを直接入力」を選べば、1〜60 mol/m²/日の範囲で目安を自分で決められる。塊根植物はまとまった一次資料が見つからないのでプリセットにしていない。多肉の良好の値 12 を出発点にして、茎が間延びしてくるようなら目標を上げていくといい。直接入力のときは「その値に届いているか」で判定し、届いていなければ必要な点灯時間(距離を入れていれば距離も)を逆算する。帯チャートに直接入力の行は無いが、いまの DLI の縦線は見られるので、近い植物群の帯と照らし合わせる使い方ができる。

判定が「適正」なのに、目安に届く点灯時間や距離が出ない

適正のときは逆算しない。逆算は帯の外にいるときに「どこまで動かせば帯に入るか」を出すためのもので、すでに帯の中にいれば動かす先が無いからだ。また、距離欄を両方空にしているときと窓辺の太陽光を選んだときは、距離の逆算は出ない(点灯時間の逆算は出る。理由は仕組みの節のとおり)。距離の答えも欲しいときは、測った距離と置く距離を両方入れてほしい。

入力した照度や消費電力は、どこかに送られるのか

送られない。計算はすべて開いているブラウザの中で行っていて、照度・PPFD・距離・点灯時間・消費電力・単価といった入力をサーバーに送ったり、こちら側で保存したりはしていない。結果のコピーボタンで取ったテキストも、手元のクリップボードに入るだけだ。ライトの高さや点灯時間を変えた記録を残したいときは、コピーした結果を自分のメモや栽培ノートに貼っておくと、あとで見比べられる。

まとめ

置く距離と点灯時間を決めれば、育成ライトの光が1日にどれだけ植物に届いているかは数字で確かめられる。部屋の明るさを人の目の基準で考えるなら照度計算シミュレーターや照度計算・照明台数算出ツール、複数のライトを重ねたときの光の広がりは逐点法 照度計算、ライトの色味(K)を数字で比べるなら色温度⇄色度・RGB変換ツール、屋外の日当たりから育てる植物を選ぶならベランダ植物診断、ライト以外の家電も含めた電気代は電気代計算ツール、室内で苗を育て始める時期は種まきカレンダー、鉢に入れる土の量はプランター・鉢の土量計算が役に立つ。ライトを自作するなら回路はLED回路設計アシスタントから。

計算の結果や植物ごとの目安について気づいたことがあれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。部屋の奥に置いたエケベリアがひょろりと伸びて、照度アプリで測ると『明るい』のに足りていなかった。それ以来、植物の光は lux ではなく DLI で見るようにしている。

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