減速機選定計算ツール

負荷トルク・回転数から減速比とサービスファクターを算出。メーカー非依存の汎用選定

負荷トルク・回転数・負荷特性・稼働クラスを入力するだけで、減速比・サービスファクター・必要モーター出力をリアルタイム算出。モーターからの逆算にも対応。

計算方向

負荷トルク・回転数から必要モーター出力を算出

負荷条件

出力軸に必要なトルク

出力軸の目標回転数

コンベヤ(重量物)、工作機械送り軸

SF倍率: ×1.1

モーター条件

減速機仕様

1〜5段

平歯車/はすば: 0.97-0.99、ウォーム: 0.4-0.9

1段で減速比7以上は効率・サイズの面で不利です。2段以上を検討してください。
サービスファクター大衝撃
1.65(範囲: 1.38〜1.65)

計算結果

減速比
60.00:1
全段伝達効率
97.0%
必要出力トルク(SF込み)
825.0N·m
必要モーター軸トルク
14.18N·m
必要モーター出力
2.672kW
推奨標準モーター(JIS標準出力系列)
3.7kW

本ツールの計算結果は選定の目安です。実際の減速機選定では熱容量・ラジアル荷重・アキシアル荷重・寿命等も考慮が必要です。最終選定はメーカーカタログで確認してください。JIS B 1741・AGMA 6010を参考にしたサービスファクターの考え方を採用しています。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

PR

📘 減速機・機械設計の参考書

モーターを回しても、軸が速すぎて使い物にならない——そんな経験はないだろうか

工場の搬送ラインを設計しているとき、手元に1800rpmのモーターがある。でもコンベヤの駆動軸は30rpm。60倍もの速度差をどう埋めるか。答えは「減速機」だ。

減速機は回転数を落とし、その分だけトルクを増幅する。ギヤの噛み合いという単純な原理だが、選定を間違えると破損事故やコスト超過に直結する。このツールは、負荷条件とモーター回転数を入力するだけで、減速比・サービスファクター・必要モーター出力をリアルタイムに算出する。メーカーのカタログを開く前に、まず必要仕様を把握するための道具だ。

なぜ「メーカー非依存の減速機計算ツール」を作ったのか

減速機メーカー各社は独自の選定ツールを提供している。しかし、あるメーカーのツールでは他社製品との比較ができない。しかも多くの場合、サービスファクター(SF)の設定根拠が不透明で、「とりあえず1.5で」と決めてしまう現場を何度も見てきた。

自分自身、設備の改造案件で既設減速機の容量を確認する際に困った経験がある。元のメーカーのカタログが廃版になっていて、型番から仕様を引けない。結局、基本式に立ち戻ってトルクと回転数から逆算した。この「基本式に立ち戻る」作業をブラウザ上で即座にできるようにしたのが、このツールの出発点だ。

サービスファクターの算出にはJIS B 1741とAGMA 6010の考え方を取り入れた。負荷特性(均一/中衝撃/大衝撃/極大衝撃)と稼働クラス(軽稼働〜連続運転)の組み合わせからSF範囲を提示する。安全側の値を自動採用しつつ、範囲も表示することで、設計者が自分の判断で調整できるようにした。

減速機選定の基礎——トルク・回転数・減速比の関係

減速比 とは

減速比は入力軸(モーター側)の回転数と出力軸(負荷側)の回転数の比だ。

減速比 i = モーター回転数 / 負荷回転数

たとえばモーターが1800rpmで、負荷軸を30rpmにしたいなら、減速比は60:1になる。自転車のギヤ比と同じ原理で、ペダル側(入力)を速く回して車輪側(出力)をゆっくり力強く回すのと同じだ。

トルクと出力の関係

減速機はエネルギー保存則に従う。回転数を1/iに落とすと、トルクはi倍に増幅される(ただし伝達効率ηの分だけ損失がある)。

出力軸トルク T_out = T_in × i × η
モーター出力 P [kW] = T [N·m] × 2π × n [rpm] / 60 / 1000

サービスファクター(SF)とは

サービスファクターは「安全の掛け率」だ。実際の負荷にはカタログ値では読み切れない変動がある。衝撃荷重、起動時の過負荷、温度変動——これらを吸収するためにSFを乗じて必要トルクを引き上げる。

JIS B 1741では、歯車装置のサービスファクターとして負荷の衝撃度(均一/中衝撃/大衝撃)と1日の運転時間から決定する表が規定されている。AGMAも同様の考え方を採用しており、AGMA 6010ではさらに起動頻度や環境条件を考慮する。

歯車の種類と効率

歯車タイプ1段効率特徴
平歯車97-99%最も一般的。騒音がやや大きい
はすば歯車97-99%平歯車より静粛。アキシアル荷重が発生
かさ歯車96-98%軸角度の変換に使用
ウォームギヤ40-90%大減速比を1段で実現。セルフロック性あり
遊星歯車95-97%コンパクトで大トルク。コスト高

なぜ正しい減速機選定が重要なのか——過小選定と過大選定のリスク

過小選定の危険

減速機の容量が不足していると、歯面の摩耗が加速し、最悪の場合は歯の折損に至る。コンベヤの減速機が運転中に破損すると、ラインが停止するだけでなく、周囲に破片が飛散する二次災害のリスクもある。

建築基準法施行令や労働安全衛生法が求める安全率の考え方は、「想定荷重の何倍まで耐えられるか」という余裕を確保することだ。JIS B 1741のサービスファクターは、この思想を歯車装置に適用したものと言える。

過大選定の問題

一方で、必要以上に大きな減速機を選ぶとコストが跳ね上がる。減速機本体の価格だけでなく、モーターサイズも大きくなり、基礎・配線・制御盤すべてがサイズアップする。ある搬送設備の見積もりで、SFを過剰に設定したために減速機が2サイズ上がり、装置全体のコストが20%増になった例を知っている。

適正なSFを設定し、必要十分な仕様を見極めることが、安全性とコストの両立につながる。

減速機選定ツールが活躍する場面

  • コンベヤ設計: 搬送物の重量・速度から必要トルクを算出し、モーター+減速機の組み合わせを決める初期検討に
  • 設備改造・更新: 既設減速機の容量が現在の負荷に適合しているかを確認。メーカー型番が不明でも基本式から検証できる
  • 機械系の学習: 減速比・トルク・出力の関係を数値で体感しながら理解。卒業設計の前段階に最適
  • 見積もり・提案: 客先に「この負荷条件ならSF込みで○kWのモーターが必要」と根拠付きで説明できる

基本の使い方——3ステップで減速機仕様を算出

ステップ1: 負荷条件を入力する 出力軸に必要なトルク(N·m)と回転数(rpm)を入力。負荷特性(均一/中衝撃/大衝撃/極大衝撃)と稼働クラス(軽稼働〜連続運転)を選択する。

ステップ2: モーター回転数を選択する 使用するモーターの極数に応じた回転数を選ぶ。50Hz地域と60Hz地域の両方に対応している。

ステップ3: 結果を確認する 減速比・サービスファクター(範囲付き)・必要モーター出力が自動算出される。JIS標準出力系列から推奨モーターサイズも提示する。「モーター→負荷」方向に切り替えれば、手持ちモーターで供給可能なトルクの逆算もできる。

具体的な使用例——6つのケースで減速機選定を検証

ケース1: ベルトコンベヤ(軽量物)

  • 入力: 負荷トルク 200 N·m、負荷回転数 60 rpm、モーター 1800 rpm、均一負荷、中稼働
  • 結果: 減速比 30:1、SF 1.375、必要出力 0.959 kW → 推奨モーター 1.5 kW
  • 解釈: 軽量物のコンベヤなので衝撃が少なく、1.5kWモーターで十分カバーできる

ケース2: 撹拌機(高粘度液)

  • 入力: 負荷トルク 800 N·m、負荷回転数 15 rpm、モーター 1800 rpm、中衝撃、重稼働
  • 結果: 減速比 120:1、SF 1.875、必要出力 1.342 kW → 推奨モーター 1.5 kW
  • 解釈: 減速比120:1は1段では非現実的。2〜3段減速が必要。警告表示で確認できる

ケース3: プレス機送り装置

  • 入力: 負荷トルク 1500 N·m、負荷回転数 20 rpm、モーター 1800 rpm、大衝撃、重稼働
  • 結果: 減速比 90:1、SF 2.1875、必要出力 3.859 kW → 推奨モーター 5.5 kW
  • 解釈: 大衝撃+重稼働でSFが2.0超。安全性を重視した選定が必要

ケース4: ターンテーブル(低速回転)

  • 入力: 負荷トルク 300 N·m、負荷回転数 5 rpm、モーター 1800 rpm、均一負荷、軽稼働
  • 結果: 減速比 360:1、SF 1.25、必要出力 0.222 kW → 推奨モーター 0.4 kW
  • 解釈: 減速比が極めて大きい。ウォームギヤの利用で1段でも実現可能だが効率に注意

ケース5: モーターからの逆算

  • 入力: モーター出力 3.7 kW、モーター 1800 rpm、負荷回転数 45 rpm、中衝撃、中稼働
  • 結果: 減速比 40:1、出力軸トルク 1455.1 N·m、供給可能トルク 881.9 N·m
  • 解釈: 既設の3.7kWモーターで約882 N·mまでの負荷に対応できる

ケース6: 50Hz地域の巻上機

  • 入力: 負荷トルク 2000 N·m、負荷回転数 10 rpm、モーター 1500 rpm(50Hz 4極)、大衝撃、連続運転
  • 結果: 減速比 150:1、SF 2.45、必要出力 3.547 kW → 推奨モーター 3.7 kW
  • 解釈: 巻上機は安全性が最重要。SF 2.45は妥当な範囲

仕組み・アルゴリズム——SF算出方法と効率計算

サービスファクター算出: AGMA方式 vs JIS方式

本ツールでは2つのアプローチを検討した。

AGMA 6010方式: 負荷特性(Uniform / Moderate Shock / Heavy Shock)と1日あたり運転時間からSFを表引き。起動頻度やピークトルクの倍率も加味する。 JIS B 1741方式: 原動機の種類と被動機の種類に基づく2次元マトリクスで基本SFを決定。運転時間で補正する。

本ツールはAGMA・JISの両方の思想を取り入れ、以下の式でSFを算出している:

SF = 負荷特性係数(sfMax) × 稼働クラス倍率

安全側の値(sfMax)を自動採用しつつ、sfMin〜sfMaxの範囲を併記する設計にした。

計算フロー(負荷→モーター方向)

1. 減速比 i = モーター回転数 / 負荷回転数
2. 全段効率 η_total = η_per_stage ^ 段数
3. SF = sfMax(負荷特性) × sfMultiplier(稼働クラス)
4. 必要出力トルク = 負荷トルク × SF
5. モーター軸トルク = 必要出力トルク / (i × η_total)
6. 必要出力 P = モーター軸トルク × 2π × n_motor / 60 / 1000 [kW]
7. 推奨モーター = JIS標準出力系列から必要出力以上の最小値

計算例

負荷トルク500 N·m、負荷30 rpm、モーター1800 rpm、中衝撃・中稼働、1段・効率0.97の場合:

i = 1800 / 30 = 60
η = 0.97^1 = 0.97
SF = 1.5 × 1.1 = 1.65
必要出力トルク = 500 × 1.65 = 825 N·m
モーター軸トルク = 825 / (60 × 0.97) = 14.18 N·m
P = 14.18 × 2π × 1800 / 60 / 1000 = 2.672 kW
→ JIS標準: 3.7 kW モーターを推奨

他ツールとの違い——メーカーツール・汎用計算サイトとの比較

メーカー選定ツール(住友、SEW等): 自社製品の型番を直接提案できるが、他社製品との比較は不可能。SFの設定根拠が見えにくいこともある。

汎用計算サイト: 単純なトルク・出力変換のみで、SFの考慮がないものが多い。負荷特性や稼働条件を反映できない。

本ツールの特徴: メーカー非依存で基本式に基づく計算。SF範囲を負荷特性×稼働クラスで自動算出し、JIS標準モーター系列から推奨サイズを提示する。双方向計算(負荷→モーター / モーター→負荷)に対応し、既設設備の容量確認にも使える。

歯車と減速機の豆知識

ウォームギヤのセルフロック: ウォームギヤは効率が約50%を下回ると、出力側から入力側への逆転ができなくなる。これを「セルフロック」と呼び、巻上機やエレベーターの安全機構として利用される。ただし振動が加わると完全なセルフロックは保証されないため、別途ブレーキを設けるのが原則だ。参考: ウォームギヤ - Wikipedia

遊星歯車(プラネタリギヤ)の利点: 同軸入出力・コンパクト・大トルクの三拍子が揃う。自動車のオートマチックトランスミッションにも使われている。ただし構造が複雑なため、平歯車列に比べてコストが高く、保守にも専門知識が必要。参考: 遊星歯車機構 - Wikipedia

減速機の歴史: 歯車そのものの歴史は紀元前に遡るが、近代的な工業用減速機が登場したのは19世紀の産業革命期。蒸気機関の回転数を工作機械に適した速度に落とすために発展した。現在では減速機市場は世界で数兆円規模に成長している。

Tips——減速機選定で押さえておきたいポイント

  • モーター標準出力は「1つ上」を選ぶ: 計算値が2.5kWなら3.7kWを選定する。余裕があればモーターの寿命が延び、起動時のトルク不足も回避できる
  • 減速比の分割配分: 多段減速では各段の減速比を均等にするのが効率的。ただしコスト面では1段目を大きくして2段目を小さくする「不均等配分」が有利な場合もある
  • 発熱に注意: 高SF・高減速比の条件では減速機の発熱が増加する。カタログの熱容量(サーマルレーティング)も必ず確認してほしい
  • ウォームギヤの効率入力: ウォームギヤを使う場合は効率を0.4〜0.9に設定すること。0.97のままだと必要出力を大幅に過小評価する

よくある質問

ウォームギヤとはすば歯車、どちらを選べばいい?

大きな減速比が1段で必要ならウォームギヤ、効率重視ならはすば歯車が基本。ウォームギヤは減速比30:1以上を1段で実現できるが効率は40〜90%と低い。はすば歯車は1段で通常7:1程度までだが効率97〜99%と高い。用途・スペース・コストのバランスで判断する。

サービスファクターの値がメーカーによって違うのはなぜ?

メーカーごとにSF表の刻みや考慮する因子(起動頻度、温度、ピークトルク倍率など)が異なるため。JIS B 1741やAGMA 6010は共通の枠組みを提供しているが、各メーカーはこれに自社の試験データや経験値を加味している。本ツールはJIS/AGMAベースの汎用値を使用しているため、最終選定時にはメーカーカタログのSF表と突き合わせることを推奨する。

逆転(出力→入力方向の回転)は可能?

歯車の種類による。平歯車・はすば歯車は効率が高いため逆転可能。ウォームギヤは効率が約50%以下の場合、セルフロック(出力側からの駆動不可)になる。逆転が必要な用途ではウォームギヤの使用を避けるか、進み角の大きいタイプを選定する必要がある。

計算結果のデータはサーバーに送信される?

すべての計算はブラウザ上(クライアントサイド)で実行される。入力値・計算結果がサーバーに送信されることは一切ない。機密性の高い設計データでも安心して利用できる。

まとめ

減速機の選定は、トルク・回転数・サービスファクターの3要素を正しく把握することから始まる。本ツールを使えば、負荷条件を入力するだけでSF込みの必要モーター出力が即座に分かる。メーカーカタログを開く前の「あたりをつける」作業を効率化してほしい。

関連ツールとして、歯車モジュール計算ツールで歯車の基本寸法を確認したり、軸径計算ツールで減速機出力軸の強度を検証することもできる。ベアリング寿命計算ツールと組み合わせれば、駆動系全体の設計をカバーできる。

不具合の報告や機能追加のリクエストはX (@MahiroMemo)から。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。

運営者情報を見る

© 2026 減速機選定計算ツール