カタログを見てもトルクが書いてない問題
「このギアポンプを回すのに、モーターは何kWあればいいんだろう?」——油圧ユニットの設計を始めると、必ずこの壁にぶつかる。ポンプのカタログには吐出量や押しのけ量、最高圧力は載っているのに、軸トルクの値がそのまま書いてあることは少ない。トルクがわからないとモーターの容量が決められない。結局、手計算で T = Pq/2πη を電卓で叩くことになるが、単位換算でミスしたり、効率を入れ忘れたりして「あれ、さっきと違う値になった……」となりがちだ。
ギアポンプトルク計算機は、カタログ値をそのまま入力するだけで軸トルクを即算出する。吐出量ベースでも押しのけ量ベースでも計算でき、さらにリリーフ圧での検証やJIS標準モーター容量の推奨まで一気通貫で出してくれるから、「トルク計算→モーター選定」の流れがこのツールだけで完結する。
なぜギアポンプトルク計算機を作ったのか
きっかけは単位換算のミス
油圧設備の改修で既設ポンプのモーターを交換する案件があった。カタログから吐出量12 L/min、回転数1800 rpmを拾って手計算でトルクを求めたのだが、L/minからcc/revへの換算で1000を掛け忘れて桁が1つずれた値を出してしまった。幸い先輩のダブルチェックで気づけたが、あのまま進んでいたら容量不足のモーターを発注するところだった。
「カタログの値を入れるだけで、単位換算も効率も全部込みでトルクを出してくれるツールがあれば……」と探したが、見つかるのはExcelの計算シートや、PDFの技術資料に埋まった計算例ばかり。スマホでサッと確認できるWebツールがなかったから、自分で作ることにした。
設計で意識した点
- 2モード対応: メーカーによってカタログに吐出量(L/min)で記載する場合と押しのけ量(cc/rev)で記載する場合がある。両方に対応し、吐出量ベースでは換算後の押しのけ量も表示する
- 脈動トルク計算: 歯数を入力すると、ギアの噛み合いによる流量脈動率とピークトルクを自動算出。モーター選定で見落としがちな変動荷重を考慮できる
- モーター選定まで一気通貫: トルク計算だけで終わらず、リリーフ圧でのトルク検証→安全率込みの必要出力→JIS標準モーター容量の推奨まで自動で出す。「トルクは出たけど、結局モーター何kW?」で手が止まらない
- 効率デフォルト値: ギアポンプの全効率は通常0.80〜0.90。初期値を0.85に設定しておくことで、効率がわからない初学者でも「だいたいこのくらい」の概算がすぐ出せる
ギアポンプとは何か — 容積式ポンプの基本
外接ギアポンプの動作原理
ギアポンプは、ケーシング内で2つの歯車が噛み合いながら回転することで流体を搬送する容積式ポンプの一種だ。歯車が噛み合いを解く側(吸入側)では歯と歯の間に空間ができ、流体が吸い込まれる。その流体は歯車の外周とケーシングの隙間に閉じ込められたまま吐出側へ運ばれ、歯車が再び噛み合う側で押し出される。
身近なたとえで言えば、水車と逆の原理だ。水車は水流でホイールを回すが、ギアポンプはモーターでホイール(歯車)を回して水(油)を押し出す。回転数が一定なら吐出量もほぼ一定になるのが容積式ポンプの大きな特徴で、油圧回路のように安定した流量が必要な用途に向いている。
押しのけ量(理論吐出量)とは
押しのけ量 q [cc/rev] は、ポンプが1回転あたりに理論的に送り出す流体の体積だ。歯車のモジュール、歯数、歯幅で決まる固有の値で、カタログのスペック表に記載されている。実際の吐出量 Q [L/min] は以下の関係になる:
Q [L/min] = q [cc/rev] × n [rpm] / 1000
逆に、カタログが吐出量と回転数しか載せていない場合は:
q [cc/rev] = Q [L/min] × 1000 / n [rpm]
で押しのけ量に換算できる。このツールの「吐出量ベース」モードは、まさにこの換算を自動で行ってからトルクを計算している。
ギアポンプの効率
ポンプの全効率 η は、容積効率(内部漏れによるロス)と機械効率(摩擦によるロス)の積だ。新品のギアポンプなら全効率 0.85〜0.90 程度。使い込んで歯車やケーシングが摩耗すると効率は下がる。効率が低いほど同じ吐出量を得るために大きなトルク(=大きなモーター)が必要になるので、モーター選定では効率を適切に見積もることが重要だ。
なぜトルク計算がモーター選定で重要なのか
モーター過負荷のリスク
ポンプを駆動するモーターの容量が足りないと、過電流で巻線が焼損する。最悪の場合、ポンプ側にも軸やカップリングの破損が波及し、設備が長期間停止する。逆に過大なモーターを選べばコストと設置スペースの無駄になる。
モーター出力 P_m [kW] と軸トルク T [N·m] の関係は:
P_m [kW] = T [N·m] × 2π × n [rpm] / 60000
つまり、トルクがわからなければモーター出力も決められない。トルク計算はモーター選定の第一歩だ。
安全率の実務感覚
実務では、計算トルクに対して1.2〜1.5倍程度の安全率をかけてモーター容量を選定するのが一般的だ。理由は:
- 起動トルクは定常トルクの2〜3倍になることがある
- 油温が低い始動時は粘度が高く、実質的な負荷が増える
- 配管損失やフィルタの目詰まりで圧力が上昇する可能性がある
JIS B 8312(油圧ポンプ通則)では、ポンプの性能試験条件が規定されているが、実機の設計条件は試験条件と異なることが多い。計算値はあくまで出発点として使い、実際の選定ではメーカーの推奨モーターサイズも参照すべきだ。
こんな場面で活躍する
油圧ユニットの新規設計
ポンプ・モーター・タンクを一体にした油圧パワーユニットを設計するとき、最初に必要になるのがポンプ軸トルクだ。カタログから吐出量と圧力をピックアップし、このツールでトルクを出せば、モーターの型番選定にすぐ移れる。
既設ポンプの交換・モーター更新
設備更新でポンプだけ交換する場合や、省エネ目的でモーターをインバーター化する場合に、現行のトルク条件を素早く確認できる。カタログが手元になくても、銘板の吐出量と回転数さえわかれば計算可能だ。
教育・学習用途
機械工学の学生やポンプの基礎を学ぶ新人エンジニアが、数値を変えながらトルクの変化を体感できる。「圧力を2倍にしたらトルクも2倍になる」「効率が下がるとトルクが上がる」といった関係を直感的に理解できる。
基本の使い方 — 3ステップ
ステップ1: 入力モードを選ぶ
ポンプカタログの記載形式に合わせて「吐出量ベース」か「押しのけ量ベース」を選択する。吐出量 Q [L/min] と回転数 n [rpm] が載っていれば吐出量ベース、押しのけ量 q [cc/rev] が直接載っていれば押しのけ量ベースを選ぶ。
ステップ2: パラメータを入力する
常用圧力 P [MPa] と全効率 η を入力する。効率がわからない場合はデフォルトの 0.85 のままでOK。モードに応じて吐出量+回転数、または押しのけ量+回転数を入力する。歯数がわかれば入力すると脈動トルクも算出される。
ステップ3: 結果を確認する
平均トルク T [N·m] と、モーター選定に必要な情報がリアルタイムで表示される。リリーフ圧時のトルク、必要モーター出力(安全率込み)、JIS標準容量からの推奨モーターサイズまで一画面で確認できる。「結果をコピー」ボタンで計算条件ごとクリップボードに保存できるので、報告書や社内チャットへの貼り付けもスムーズだ。
具体的な使用例 — 6ケースで検証
ケース1: 小型ギアポンプ(低圧・小流量)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モード | 吐出量ベース |
| 吐出量 Q | 5 L/min |
| 回転数 n | 1500 rpm |
| 常用圧力 P | 7 MPa |
| 全効率 η | 0.85 |
結果: 押しのけ量 q = 3.33 cc/rev、平均トルク T ≈ 4.37 N·m。リリーフ圧 7.7 MPa(+10%)でのトルクは 4.80 N·m、必要出力 = 4.80×2π×1500/60000×1.25 ≈ 0.94 kW → 推奨モーター 1.5 kW。
ケース2: 中型ギアポンプ(標準条件)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モード | 押しのけ量ベース |
| 押しのけ量 q | 8.0 cc/rev |
| 常用圧力 P | 14 MPa |
| 全効率 η | 0.85 |
結果: 平均トルク T ≈ 20.97 N·m。1800 rpmで回すなら常用出力 3.95 kW。リリーフ圧 15.4 MPa(+10%)時のトルクは 23.07 N·m、必要出力 = 23.07×2π×1800/60000×1.25 ≈ 5.43 kW → 推奨モーター 5.5 kW。ツールが自動でJIS標準容量から最小適合サイズを提示してくれる。
ケース3: 大型ギアポンプ(高圧条件)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モード | 吐出量ベース |
| 吐出量 Q | 30 L/min |
| 回転数 n | 1800 rpm |
| 常用圧力 P | 21 MPa |
| 全効率 η | 0.82 |
結果: q = 16.67 cc/rev、平均トルク T ≈ 67.94 N·m。リリーフ圧 23.1 MPa(+10%)時のトルクは 74.73 N·m、必要出力 = 74.73×2π×1800/60000×1.25 ≈ 17.60 kW → 推奨モーター 18.5 kW。高圧条件では効率の影響も大きく、η=0.85なら64.69 N·m、η=0.82だと67.94 N·mと約5%の差が出る。
ケース4: 押しのけ量ベース(カタログ直読み)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モード | 押しのけ量ベース |
| 押しのけ量 q | 12.5 cc/rev |
| 常用圧力 P | 10 MPa |
| 全効率 η | 0.88 |
結果: 平均トルク T ≈ 22.60 N·m。1500 rpmの場合、リリーフ圧 11 MPa(+10%)時の必要出力 = 3.91×1.25 ≈ 4.89 kW → 推奨モーター 5.5 kW。カタログに押しのけ量が記載されている場合はこちらのモードのほうが簡潔で、換算ミスの入る余地がない。
ケース5: 高粘度流体を扱うギアポンプ(効率低下の影響)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モード | 押しのけ量ベース |
| 押しのけ量 q | 20.0 cc/rev |
| 回転数 n | 900 rpm |
| 常用圧力 P | 10 MPa |
| 全効率 η | 0.75 |
結果: 平均トルク T ≈ 42.44 N·m。リリーフ圧 11 MPa(+10%)時のトルクは 46.69 N·m、必要出力 = 46.69×2π×900/60000×1.25 ≈ 5.50 kW → 推奨モーター 5.5 kW。
高粘度の作動油(ISO VG 150以上)や樹脂・接着剤などを搬送するケースでは、流体の内部抵抗が大きくなり機械効率が著しく低下する。同じ押しのけ量・圧力でも、η=0.85(標準油)なら T ≈ 37.44 N·m で済むところが、η=0.75 では約13%増の 42.44 N·m まで跳ね上がる。回転数を 900 rpm に落としているのも高粘度対応の実務的な工夫で、高回転ではキャビテーションが発生しやすくなるためだ。高粘度流体を扱う場合は、効率を低めに見積もるだけでなく、起動時(油温が低くさらに粘度が上がる状態)のトルクも別途検証しておきたい。
ケース6: 遠心ポンプとの比較 — 容積式が有利な高圧・低流量域
| 項目 | 値(ギアポンプ) | 参考値(遠心ポンプ) |
|---|---|---|
| モード | 吐出量ベース | — |
| 吐出量 Q | 8 L/min | 8 L/min |
| 回転数 n | 1500 rpm | 2900 rpm |
| 常用圧力 P | 20 MPa | 0.5 MPa(揚程約50 m) |
| 全効率 η | 0.82 | 0.50〜0.60(小型の場合) |
ギアポンプ結果: q = 5.33 cc/rev、平均トルク T ≈ 20.67 N·m。リリーフ圧 22 MPa(+10%)時のトルクは 22.74 N·m、必要出力 = 22.74×2π×1500/60000×1.25 ≈ 4.47 kW → 推奨モーター 5.5 kW。
このケースは「なぜギアポンプ(容積式)を選ぶのか」を数値で理解するための比較だ。遠心ポンプは高流量・低圧の用途に強いが、20 MPa クラスの高圧は構造的に苦手で、多段化してもコスト・サイズが膨れ上がる。一方ギアポンプは、低流量 8 L/min・高圧 20 MPa という条件をコンパクトな筐体と 5.5 kW のモーターで実現できる。また、遠心ポンプは流量が圧力に依存して変動するのに対し、ギアポンプは圧力が変わっても吐出量がほぼ一定という容積式ならではの特性がある。油圧シリンダの速度制御や定量供給が求められるラインでは、この「圧力に左右されない安定流量」が決定的なアドバンテージになる。
仕組み・計算式の詳細
候補手法の比較
ギアポンプのトルク計算にはいくつかのアプローチがある:
- 理論式 T = Pq/(2πη): 押しのけ量と圧力から直接トルクを算出する王道の方法。シンプルで汎用性が高い
- 出力換算法 P_m = pQ/(60η): モーター出力を先に求め、そこからトルクに逆算する方法。結局は同じ計算だが、出力kWを先に知りたいケースで使われる
- メーカー固有の効率カーブ: 圧力・回転数ごとの効率マップからトルクを読み取る方法。最も正確だが、個別カタログが必要
本ツールでは方法1を採用した。理由は、カタログの基本スペック(吐出量 or 押しのけ量、圧力)だけで計算でき、メーカーを問わず使える汎用性があるため。
計算フロー
吐出量ベース(flow-rate モード):
入力: Q [L/min], n [rpm], P [MPa], η
Step 1: 押しのけ量に換算
q [cc/rev] = Q [L/min] × 1000 / n [rpm]
Step 2: 軸トルクを算出
T [N·m] = P [MPa] × q [cc/rev] / (2π × η)
押しのけ量ベース(displacement モード):
入力: q [cc/rev], P [MPa], η
Step 1: 軸トルクを算出
T [N·m] = P [MPa] × q [cc/rev] / (2π × η)
単位換算の仕組み
「MPa × cc/rev がなぜ N·m になるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれない。次元解析で確認しよう:
P [MPa] = P × 10^6 [Pa] = P × 10^6 [N/m²]
q [cc/rev] = q × 10^-6 [m³/rev]
P × q = (P × 10^6) × (q × 10^-6) = P × q [N·m/rev]
T = P × q / (2π × η) [N·m]
10^6 と 10^-6 が相殺されるため、MPa と cc/rev をそのまま掛けた値を 2πη で割ればトルク [N·m] が得られる。この「単位が綺麗に消える」性質のおかげで、換算係数を覚える必要がない。
脈動トルクの計算
ギアポンプは歯車の噛み合いにより、1回転の中で吐出量が周期的に変動する。この脈動の大きさは歯数 z と圧力角 α で決まる:
脈動率 δ = π / (z × cos²α)
ピークトルク T_peak = T × (1 + δ/2)
圧力角 α = 20°(標準インボリュート歯車)の場合、歯数ごとの脈動率は:
- z = 8: δ ≈ 44.5% → ピークは平均の約1.22倍
- z = 12: δ ≈ 29.6% → ピークは平均の約1.15倍
- z = 16: δ ≈ 22.2% → ピークは平均の約1.11倍
- z = 20: δ ≈ 17.8% → ピークは平均の約1.09倍
歯数が少ないほど脈動が大きく、モーターへの変動負荷も大きくなる。振動・騒音の観点からも、実務では歯数12以上のポンプが多い。
モーター選定の自動計算
本ツールでは、トルク算出後に以下のフローでモーター容量を自動推奨する:
Step 1: リリーフ圧の算出
P_relief = P × (1 + margin%)
Step 2: リリーフ圧時トルク
T_relief = P_relief × q / (2π × η)
Step 3: リリーフ圧時モーター出力
P_m_relief = T_relief × 2π × n / 60000
Step 4: 安全率を乗算
P_required = P_m_relief × SF
Step 5: JIS標準モーター容量から最小適合サイズを選定
0.2, 0.4, 0.75, 1.5, 2.2, 3.7, 5.5, 7.5, 11, 15, 18.5, 22, 30, 37, 45, 55, 75 kW
常用圧力ではなくリリーフ圧でモーター出力を計算するのがポイント。実機ではリリーフ弁が開くまでモーターは回り続けるため、リリーフ圧時の負荷に耐えられるモーターが必要だ。
計算例(ステップバイステップ)
Q = 10 L/min、n = 1500 rpm、P = 14 MPa、η = 0.85、リリーフマージン 10%、安全率 1.25 の場合:
Step 1: q = 10 × 1000 / 1500 = 6.667 cc/rev
Step 2: T = 14 × 6.667 / (2 × 3.14159 × 0.85)
= 93.333 / 5.341
= 17.48 N·m
Step 3: リリーフ圧 = 14 × 1.10 = 15.4 MPa
Step 4: T_relief = 15.4 × 6.667 / (2π × 0.85) = 19.23 N·m
Step 5: P_m_relief = 19.23 × 2π × 1500 / 60000 = 3.02 kW
Step 6: P_required = 3.02 × 1.25 = 3.77 kW
Step 7: → JIS標準 3.7 kW モーターを推奨
他のツールとの違い
Excel手計算との比較
Excelで同じ計算はもちろんできるが、ファイルを探して開いて数式セルに値を入れて……という手間がかかる。このツールならスマホでもPCでもブラウザを開いた瞬間に使える。現場で銘板を見ながらサッと確認したいときに差が出る。
メーカー選定ソフトとの比較
ダイキン、不二越、KYBなどのポンプメーカーが提供する選定ソフトは、効率カーブや温度補正まで含んだ精密な計算ができる。一方で、そのメーカーの製品にしか使えない。このツールはメーカーを問わない汎用計算ができるので、概算段階で複数メーカーの製品を横並び比較したいときに便利だ。
教科書・技術資料との比較
技術資料にある計算例は固定された条件での計算結果しか示していない。このツールでは値を自由に変えてリアルタイムで結果が変わるので、「圧力を上げたらどうなるか」「効率が下がったらどうなるか」を直感的に体験できる。
豆知識 — ギアポンプの歴史と実務トリビア
ギアポンプの起源
ギアポンプの原理は17世紀にヨハネス・ケプラーが考案したとされている。天体の運動を研究していたケプラーが、歯車の噛み合いで流体を搬送するアイデアを思いついたのは興味深い。現在の外接ギアポンプの基本構造は19世紀に確立され、産業革命以降の油圧技術の発展とともに広く普及した。
効率に影響する要因
ギアポンプの効率を左右する主な要因は以下の通り:
- 油温: 温度が上がると粘度が下がり、内部漏れが増えて容積効率が低下する。逆に低温すぎると粘度が高くなり、摩擦ロスが増えて機械効率が下がる
- 圧力: 高圧になるほど内部漏れが増加し、容積効率が低下する。同時に歯車の変形やベアリング負荷も増える
- 回転数: 高回転では遠心力で流体の充填が追いつかず、キャビテーションが発生する。低回転では漏れの比率が相対的に大きくなる
- 摩耗: 長期使用による歯面やケーシング内面の摩耗は容積効率を徐々に低下させる
Tips — 実務で役立つ3つのポイント
1. 効率がわからないときの見積もり方
カタログに効率の記載がない場合は、以下を目安にする:
- 新品ギアポンプ(低〜中圧 7〜14 MPa): η ≈ 0.85〜0.90
- 新品ギアポンプ(高圧 21 MPa以上): η ≈ 0.80〜0.85
- 経年劣化品: η ≈ 0.70〜0.80
迷ったら低めの値(0.80〜0.82)を使うと安全側の設計になる。
2. 起動トルクに注意
ポンプの起動時は定常時の2〜3倍のトルクが必要になることがある。特に冬場の始動時は油温が低く、粘度が高いため起動トルクが跳ね上がる。モーター選定では、このツールで計算した定常トルクの1.5〜2.0倍を見込んでおくと安心だ。
3. リリーフ圧でのモーター検証を忘れずに
「常用圧力」はシステムの定格圧力だが、リリーフ弁の設定圧力はそれより10〜20%高いのが一般的。モーターの連続定格はリリーフ圧力時のトルクでも過負荷にならないように選定すべきだ。本ツールでは「リリーフ圧マージン」を入力するだけで、リリーフ圧時のトルクと必要モーター出力を自動算出してくれるので、手計算の手間が省ける。
よくある質問
吐出量ベースと押しのけ量ベース、どちらを使えばいい?
ポンプカタログの記載形式に合わせて選ぶのが確実。押しのけ量 q [cc/rev] が直接記載されていればそちらを使うほうが換算ミスがなくて安全。吐出量 Q [L/min] と回転数 n [rpm] しか載っていない場合は吐出量ベースを使う。
全効率の値はどこで調べられる?
ポンプメーカーのカタログや技術資料に記載されている。記載がない場合は、ギアポンプなら 0.80〜0.90(圧力・回転数・油種による)を目安にする。初期概算ではデフォルトの 0.85 で問題ない。
入力したデータはサーバーに送信される?
いいえ。すべての計算はブラウザ内で完了する。入力データがサーバーに送信されることは一切ない。インターネット接続が切れた状態でも動作する。
推奨モーター容量はそのまま採用してよい?
あくまで理論計算に基づく目安だ。実際の選定では、起動トルク(冷間始動時は定常の2〜3倍)、周囲温度、設置環境(高地・密閉空間)、連続/断続運転の区分なども考慮する必要がある。推奨値を出発点として、メーカーのモーター選定表や技術相談も活用してほしい。
脈動トルクの歯数はどこで確認できる?
ポンプのカタログや銘板に歯数の記載がある場合はそれを使う。記載がない場合、一般的な外接ギアポンプは歯数10〜16程度が多い。歯数がわからなければ入力を空欄にすれば平均トルクのみで計算できる。
ギアポンプ以外のポンプにもこの計算式は使える?
T = Pq/(2πη) の式自体は、ベーンポンプやピストンポンプなど他の容積式ポンプにも適用可能だ。ただし効率の値はポンプの種類ごとに異なる(ピストンポンプは 0.90〜0.95 と高めなど)。本ツールのデフォルト効率はギアポンプ向けに設定しているので、他種のポンプに使う場合は効率値を適宜変更して使おう。
まとめ
ギアポンプトルク計算機は、カタログ値を入力するだけで軸トルクからモーター選定まで一気通貫で完結するツールだ。平均トルク・脈動ピークトルク・リリーフ圧検証・JIS標準モーター推奨まで、実務で必要な情報をワンストップで算出できる。
関連ツールとして、梁の強度計算なら「梁の安全審判員」、ボルトの安全率診断なら「ボルト強度・破断モード診断」、ばねの設計計算なら「ばね定数・応力計算ツール」もぜひ活用してみて。
不具合や改善要望があれば、X (@MahiroMemo)からぜひフィードバックを送ってほしい。