「F6」を注文しようとして、それが何センチか分からず手が止まった
画材店の通販ページで「F6 キャンバス」をカートに入れかけて、指が止まったことがある。商品ページのどこにも実寸が書いていない。別ページのサイズ一覧表を開くと、縦に0号から500号、横にF・P・M・Sが並んだ表が出てくる。6号の行を横に読むと、410×318、410×273、410×242、410×410——数字が4組も並んでいる。
ここで初めて気づく。長辺はどれも410mmで同じなのだ。号数は長辺だけを決める番号で、短辺を決めているのはF/P/M/Sのほう。この2階建ての構造を知らないまま表を眺めると、なぜ1つの号数に4つの寸法がぶら下がっているのかが読み取れない。読み取れないから、結局スマホで「F6 サイズ 何センチ」と検索し直すことになる。
しかも本当に知りたいのは、たいてい作品の寸法ではない。額に入れたら外寸が何mmになるのか、その額が壁のこの位置に収まるのか、マットを挟むなら窓は何mmで抜けばいいのか——サイズ表はそこまで面倒を見てくれない。
このツールは号数と実寸mmを双方向に換算したうえで、作品 → マット窓抜き → マット外寸 → 額縁外寸 → 必要壁面幅までを一続きで出す。手持ちの作品を測って号数を逆に引くこともできる。
号数一覧表が「表として」止まってしまう3つの場所
画材店のサイズ表は数値そのものは正確だ。それでも、実際に使おうとすると3か所で止まる。
ひとつめは逆が引けないこと。表は号数から実寸を引く向きにしか作られていない。描き上がった作品を測って「305×254mmだった、これは何号だ」と調べたいとき、25行×4列を目でスキャンして近い数字を探すしかない。しかも近いものが見つかっても、それが本当に最寄りなのか、他にもっと近い形式があるのかは分からない。
ふたつめは同じ号数の4形式が比べにくいこと。F10とP10とM10は長辺が全部530mmで、短辺だけが455/410/333と変わる。この「長辺共通・短辺だけ違う」という構造は、表の形からは驚くほど読み取りにくい。P10とM8のどちらが自分の構図に合うか、といった比較を表の上でやると必ず1行ずれる。
みっつめは額縁の外寸が載っていないこと。額装は作品寸法から4段階も先へ進む。マットを作品より少し小さく抜き、その外側に台紙の余白を取り、さらに額の枠が外へ張り出す。壁に掛けるなら左右のクリアランスも要る。この連鎖を通しで出しているページが見当たらなかった。
作るにあたって画材店4社のサイズ表を突き合わせたところ、思わぬ副産物もあった。5号だけ、出典によって350×270・350×273・352×273の3通りが流通していたのだ。他の号数は4社とも1mmの狂いもなく一致したのに、5号だけが揃わない。どれかを選んで載せれば「間違った値を配る」ことになるので、このツールでは5号を扱っていない。表を眺めているだけでは絶対に気づかなかった話だ。
キャンバス 号数 とは——長辺を決める番号と、短辺を決める記号
号数は長辺の目盛りにすぎない
号数はキャンバスの大きさを表す通し番号で、日本の画材店ではこの番号だけで注文が通る。0号の長辺は180mm、1号が220mm、2号240mm、3号273mm、4号333mm、6号410mm……と上がっていく。等間隔ではないし、比例もしない。JISのような法定規格ではなく、メーカー各社が慣用的に共有している規格だからだ。
だから「12号は6号の2倍」ではない。6号の長辺410mmに対して12号は606mmで、倍にはならない。号数の数字は面積でも辺長でもなく、単なる並び順に近い。
F P M S 違い——変わるのは短辺だけ
F・P・M・Sはフランス語の頭文字で、F=Figure(人物)、P=Paysage(風景)、M=Marine(海景)、S=Square(正方形)を表す。人物画は正方形に近い画面、風景は横長、海景はさらに横長——という描く対象からの発想だ。
ここが号数体系の核心なのだが、同じ号数なら長辺は4形式とも完全に共通で、変わるのは短辺だけである。10号で並べると一目で分かる。
| 形式 | 10号の実寸 | 性格 |
|---|---|---|
| F10 | 530 × 455 mm | 最も正方形に近い |
| P10 | 530 × 410 mm | 横長 |
| M10 | 530 × 333 mm | さらに横長 |
| S10 | 530 × 530 mm | 正方形 |
同じ丈のシャツで身幅だけが違う、と考えると掴みやすい。着丈(長辺)は号数というサイズ表記で決まっていて、F・P・M・Sは身幅(短辺)のバリエーションにあたる。
短辺の大小関係は号数によらず一定で、常に S > F > P > M になる。Sは正方形なので短辺=長辺で最も広く、Mが最も細い。この順序さえ覚えておけば、表を見なくても「M6はF6より縦が狭い」と即断できる。
SM(サムホール)だけは形式の区別がない
25ある号数のうち、SMだけが例外だ。サムホール(thumb hole=パレットの親指穴)に由来する小品サイズで、227×158mmの1種類しかない。F・P・M・Sの区別が存在しないので、「SMのP形式」というものは無い。長辺227mmは1号の220mmと2号の240mmの間に収まるため、サイズ順の一覧では0号と1号のあいだに置かれることが多い。
もうひとつ、130号にはF形式(1940×1620mm)しか設定されていない。「130号のP」を探しても存在しない。号数×形式の格子は完全に埋まっているわけではない、という点は覚えておくと無駄な検索が減る。
号数の由来や標準サイズの一覧は、武蔵野美術大学 造形ファイル『絵画標準サイズ』にも整理されている。
寸法を1つ取り違えると、搬入口で止まる
号数の誤認は、そのまま金銭と時間の損失になる。
最も痛いのが公募展・コンクールの出品規定だ。多くの公募展は「◯号以上◯号以下」という形で号数の上下限を定めている。号数表記で出品票を書くので、自分の作品をF形式だと思い込んでいたら実はPだった、という取り違えは搬入当日に発覚する。搬入時点で規定外と判定されれば、その場で受付されない。運搬費も額装費も回収できない。
次に額が入らない問題。既製額縁は号数表記で売られている。「F6用」の額は410×318mmの作品を前提に窓が開いているので、そこにP6(410×273mm)を入れれば上下に45mmの隙間が空く。逆にM6用の額にF6は物理的に入らない。長辺が同じだけに、実際に合わせるまで気づきにくい。
そして紙作品と号数体系は最初から噛み合っていない。これが意外に知られていない。写真の四つ切は305×254mm、A4は297×210mmだが、どちらもキャンバスの号数のどれにも一致しない。四つ切に最も近い号数はF4(333×242mm)で、それでも長辺が28mmずれる。A4に最も近いのはF3(273×220mm)で24mmのずれ。紙の作品を号数系の額縁に入れようとすると、原理的に必ず合わないのだ。写真・ポスターには写真規格・A/B判の既製額があるので、そちらを探すのが正しい。
ここを取り違えたまま「規格外だからオーダーフレームを」と判断すると、既製品なら数千円で済む額装が別注扱いになり、費用が大きく膨らむ。逆に本当に規格外な寸法(後述の800×500mmのようなケース)で既製品を買えば、届いてから入らないことに気づく。
最後に壁のスペース。F10(530×455mm)に枠幅20mmの額を付ければ外寸570×495mmだが、隣の額や壁の端との干渉を考えると、掛けるには左右にクリアランスが要る。このツールは片側50mmを見込んで必要壁面幅を出す。F10なら670mm——柱間や飾り棚の上に入るかどうかは、作品寸法ではなくこの数字で判断することになる。
画材店のカートの前、カッターを入れる前、搬入票を書く前
画材店でキャンバスを注文する前。 号数だけ決まっているが実寸のイメージが湧かない、というときに形式と号数を選べば、mm・cm・面積・対角長まで出る。同じ号数の他形式が横に並ぶので、「P6のほうが構図に合うかも」という判断もその場でできる。
描き上がった作品に合う既製額縁を探すとき。 定規で測った2辺を入れれば、最寄りの号数を候補3件まで出す。号数に乗らなければ写真・A/B判・画用紙の32規格からも最寄りを探すので、「号数はダメだがA3の額なら入る」といった逃げ道が見つかる。
自分でマットを切って額装するとき。 作品より何mm小さく窓を抜くか、外側の余白を何mm取るかを入れると、切るべき窓の寸法と仕上がりのマット外寸が同時に出る。カッターを入れる前の検算に使える。
公募展の出品規定に収まるか確認するとき。 手持ちの作品が何号相当かを逆引きして、規定の号数レンジに入るかを確かめる。額装後の外寸も出るので、搬入時のサイズ制限にも当てられる。
基本の使い方
1. 換算の向きを選ぶ。 号数が分かっていて実寸を知りたいなら「号数→実寸」、手持ちの作品を測って号数を割り出したいなら「実寸→号数」。初期状態は前者になっている。
2. 作品サイズを指定する。 号数→実寸なら形式(F 人物/P 風景/M 海景/S 正方形)と号数を選ぶ。実寸→号数なら長辺と短辺をmmで入れる。縦位置で測って長短を入れ違えても、内部で自動的に入れ替えるので気にしなくていい。
3. 額装の条件を決めて外寸まで読む。 マットの有無を選び、重なり代・マット幅・額縁の枠幅を指定すると、窓抜き寸法からマット外寸、額縁外寸、必要壁面幅までが順に並ぶ。マットの有無は迷わなくていい——油彩・アクリルのキャンバスは額に直接入れるのでマットなし、水彩・版画・写真・ポスターなど紙の作品はマットありが通例だ。初期値はマットなしにしてある。
実際に8ケース通して確かめた
ケース1: F6 油彩・マットなし(初期状態)
形式F/6号/マットなし/枠幅20mm → 作品410×318mm、額縁外寸450×358mm、必要壁面幅550mm。アスペクト比1.29:1、面積0.1304m²、対角518.87mm(20.43インチ)。同号数の他形式はF=318/P=273/M=242/S=410(長辺410mmは4形式共通)。
枠幅20mmの額を付けるだけで、外寸は片側20mm×2=40mm大きくなる。壁面には550mm——およそ55cmの幅を空ける前提になる。
ケース2: 同じF6にマットを挟む
F6/マットあり/重なり代5mm・マット幅60mm・枠幅20mm → 窓抜き400×308mm、マット外寸520×428mm、額縁外寸560×468mm、必要壁面幅660mm。
連鎖はこう進む。作品410×318 →(片側5mm重ねる)→ 窓400×308 →(片側60mm余白)→ マット外520×428 →(片側20mm枠)→ 額縁外560×468。マットを1枚挟むだけで額縁外寸が450×358から560×468へ、必要壁面幅は550から660mmへ膨らむ。マットの有無は見え方の問題であると同時に、壁のスペース設計の問題でもあることが数字で分かる。
ケース3: F10 油彩・マットなし
形式F/10号/マットなし/枠幅20mm → 作品530×455mm、額縁外寸570×495mm、必要壁面幅670mm。同号数はF=455/P=410/M=333/S=530。個展でよく使われる中判で、F10とM10では短辺が122mmも違う。
ケース4: SMを選ぶと形式の選択が消える
形式F/SM/マットなし/枠幅20mm → 作品227×158mm、額縁外寸267×198mm。アスペクト比1.44:1で、F6の1.29:1よりはっきり横長になる。
このとき形式セグメントは無効化される。試しにP形式に切り替えても、結果は227×158mmのまま1mmも動かない。SMは形式の区別が無い規格なので、選べてしまうと「Pを選んだ結果が反映された」と誤解させる。だから選ばせない。
ケース5: 130号でPを選ぶと案内に切り替わる
形式P/130号 → 寸法は出ず、「この号数はF形式のみ」という案内に変わる。130号はF(1940×1620mm)だけが設定された号数で、P・M・Sは存在しない。0mmという数字を出さず、利用できる形式へのボタンを出すようにしてある。
ケース6: 写真四つ切305×254を逆引き
実寸→号数/305×254mm → 最寄りの号数はF4(333×242mm)だが長辺−28mm・短辺+12mmのずれがあり、号数には一致しない。候補上位3件はF4(−28/+12)、S3(273×273mm・+32/−19)、P4(333×220mm・−28/+34)。
一方で紙規格側を見ると、四切(写真)の305×254mmに差0mmで一致する。よって判定は「オーダーフレーム不要、写真用の既製額が使える」。号数の物差しだけで測っていたら「28mmもずれる=規格外」と誤判定していたケースだ。
ケース7: A4ポスター297×210を逆引き(と自動スワップ)
297×210mm → 最寄り号数はF3(273×220mm)で長辺+24mm・短辺−10mm、号数には不一致。候補はF3、P3(273×190mm・+24/+20)、P4(333×220mm・−36/−10)。紙規格ではA4に差0mmで一致するのでオーダーは不要。
同じ値を210×297と長短逆に入れても、全項目がまったく同じ結果になる。縦位置で測っても横位置で測っても答えが変わらない。
ケース8: 800×500は本当に規格外
800×500mm → 最寄り号数はM25(803×530mm)で最大差30mm、最寄り紙規格はB2(728×515mm)で差72mm。号数にも紙規格にも乗らないので、オーダーフレームが必要という判定になる。候補はM25(−3/−30)、M20(727×500mm・+73/0)、P20(727×530mm・+73/−30)。
M20は短辺がぴったり一致しているのに長辺が73mmも足りない、という状況が3件リストから読み取れる。1件だけ出すツールでは、この「惜しい候補の外し方」が見えない。
参考までに、F6の実寸410×318mmをそのまま逆引きすると当然F6に差0mmで一致する。このとき最寄りの紙規格はA3(420×297mm)で21mm差——わずか1mm超えるだけでA3の額には収まらないことも同時に分かる。
仕組み・アルゴリズム
画像の一覧表を貼るか、2次元テーブルとして持つか
既存の解説ページの多くは、サイズ表を画像かHTMLの表として貼っている。作るのは簡単で、正確でもある。だが表として貼った瞬間、そのデータは検索も比較も逆引きもできない死んだ数字になる。
本ツールは同じ数字を2本のテーブルに分けて持つ方式を採った。分け方が号数体系の構造そのものと一致しているのがポイントだ。
// 長辺は号数だけで決まる(形式に依存しない)
const LONG_SIDE = { "0": 180, "SM": 227, "1": 220, /* … */ "6": 410, "130": 1940 };
// 短辺は 号数 × 形式。存在しない組合せはキーごと持たない
const SHORT_SIDE = {
"6": { F: 318, P: 273, M: 242, S: 410 },
"SM": { F: 158 }, // 形式の区別が無い
"130": { F: 1620 }, // P/M/S のキーが無い=存在しない
};
LONG_SIDE[号数] と SHORT_SIDE[号数][形式] に分けると、130号のP/M/Sやサムホールの非対応形式を「キーが存在しない」という形で自然に表現できる。1本の2次元配列に押し込んで空欄を0やnullで埋めると、その0が計算式へ流れ込んで「0×0mmの額縁外寸40×40mm」のような無意味な数字を生む。キーの有無で判定すれば、存在チェックがそのままデータ構造の性質になる。
逆引きは最寄り3件を返す最近傍探索
実寸→号数では、号数×形式の全組合せに対して最近傍探索のスコアを1回走査で計算する。
score = |作品長辺 − 候補長辺| + |作品短辺 − 候補短辺|
maxDelta = max(|Δ長辺|, |Δ短辺|)
スコア昇順に並べて上位3件を返す。1件だけ出す設計にしなかったのは、ケース8のM20のように「片方だけ一致していて片方が大きく外れる」候補が2位以下に潜むことがあるからだ。順位だけでなく長辺・短辺それぞれの符号付きの差を出しているのも同じ理由で、+が付いていれば作品のほうが大きい=その額には収まらない、と一目で判断できる。
一致判定を号数側と紙規格側に分けた理由
ここが実装上いちばん重要な設計判断だった。当初の構想は「最寄りでも差が20mmを超えたら規格外=オーダーフレームが必要」という単独判定だった。しかしこれをそのまま実装すると、A4(最寄りF3で24mm差)も写真四つ切(最寄りF4で28mm差)も「規格外」と表示されてしまう。どちらも既製額縁が量販店で普通に売られているサイズなので、完全な誤誘導になる。
そこで判定を2系統に分け、booleanフィールド3つに集約した。
isStandardMatch = 号数側の maxDelta ≦ 20mm
isPaperMatch = 紙・写真規格側の maxDelta ≦ 20mm
needsCustomFrame = !isStandardMatch && !isPaperMatch
20mmという閾値の比較はこの3行でしか書かない。ステータスカードの色も、警告文も、コピー用テキストも、すべてこの3つのbooleanを参照する。閾値の式を各所に書き直すと、片方だけ直して挙動が食い違う事故が起きるからだ。
判定の流れを305×254mmで追うと、score(F4) = |305−333| + |254−242| = 28 + 12 = 40 が号数側の最小。maxDelta = max(28, 12) = 28 > 20 なので isStandardMatch = false。紙規格側は四切(写真)がスコア0で isPaperMatch = true。両方falseではないので needsCustomFrame = false——「号数には合わないが写真用の既製額が使える」という3分岐目の結論になる。
マット→額縁の連鎖はモード非依存の共通処理
換算の向きに関係なく、作品寸法が確定したあとの積み上げは同じ式で通す。
// マットあり
窓抜き = 作品 − 重なり代 × 2
マット外寸 = 窓抜き + マット幅 × 2
額縁外寸 = マット外寸 + 枠幅 × 2
// マットなし(マット段を飛ばす)
額縁外寸 = 作品 + 枠幅 × 2
必要壁面幅 = 額縁外寸の長辺 + 50 × 2
重なり代の既定5mmは「窓抜きは用紙より上下左右それぞれ5mm以上小さく」という額装の定石から、マット幅の既定60mmは「一般的なマット幅は40〜70mm」という額縁店の目安から取っている(額縁専門店 安井商店のマット解説)。40mm未満・70mm超を入れると計算は通しつつ情報注記を出す。
4社のサイズ表を機械突合し、5号を落とした
定数テーブルはcad-red.com『キャンバスのサイズ一覧』、ゆめ画材『サイズ表』、ギャラリーシーズ『サイズ一覧表』、e-画材.com『キャンバスサイズ一覧表』の4ソースを生HTMLで取得し、号数×形式の全セルをスクリプトで突き合わせた。結果は数値の不一致0件。慣用規格とはいえ、流通しているサイズ表は事実上完全に揃っている。
唯一揃わなかったのが5号で、冒頭で触れたとおり3通りの値が流通している。号数セレクトに5号が無いのは実装漏れではなく、突合できなかった数値は載せないという方針を通した結果だ。紙・写真規格32件も同様に3ソースずつ突合しており、画用紙系のインチ・太子・三々だけは±1mm程度のばらつきがあるため免責に明記してある。A/B判はJIS P 0138/ISO 216準拠の値を使っている。
静的なサイズ一覧表と、このツールの守備範囲の違い
画材店・額縁店のサイズ解説ページが「目で追う表」で止まっている点は前半で触れたとおり。ここでは、そこに何を足したのかだけを4点に絞る。
(a) 双方向に引ける。号数から実寸を出すだけでなく、手元の作品をメジャーで測った数字から号数を逆に引ける。一覧表は上から下に読む一方通行だが、実際の困りごとは「この作品、何号扱いになるのか」という逆向きで発生する。
(b) 同じ号数の4形式を横並びで比べられる。F・P・M・Sの短辺を1行に並べ、長辺は4形式とも共通であることを結果の中に明示する。縦に長い一覧表だとF列とM列のあいだで目が往復することになり、行を1つ読み違えたまま注文してしまう。
(c) 額装の寸法連鎖を通しで出す。作品 → マット窓抜き → マット外寸(=額縁の窓) → 額縁外寸 → 必要壁面幅、という4段階を一度に計算する。最後の必要壁面幅まで出るので、掛ける場所を先に決めたい人はここだけ読めばいい。
(d) 紙・写真規格32件を同時に逆引きする。キャンバスの号数体系に乗らない寸法でも、写真プリント・A/B判・画用紙の呼称サイズのどれに近いかを併記する。号数に合わないことと、既製額縁が存在しないことは別の話だからだ。
関連ツールとの役割分担
このツールが答えるのは「額装まわりの寸法」だけで、その前後は別のツールに分けてある。縮尺そのものの換算——図面や模型で実寸がいくつになるか——は模型スケール換算計算機の担当。額縁を自作したり裏板を切り出したりするときの、板材1枚からの割り付けは材料切り出し最適化。そして外寸が決まったあとの「その壁に本当に掛けられるか」、つまり下地と耐荷重の判断は壁掛け耐荷重チェックが受け持つ。本ツールで額縁外寸と必要壁面幅を出し、そのまま次の判断へ渡す流れを想定している。
号数まわりの雑学——フランス語の頭文字と、紛らわしい紙の呼称
号数の数字は、なぜ半端なのか
F・P・M がフランス語の頭文字だという話は前半で触れたとおりだが、面白いのはその先だ。S だけは Square で、ここだけ英語読みが定着している。
キャンバスの規格自体はフランスで使われていた画布のサイズ体系を下敷きにしており、日本の画材メーカーがそれをミリ単位で整理し直したものだとされる。号数の数字がメートル法できれいな値にならず、410mm・530mm・910mm といった半端な数字で並んでいるのは、輸入した比率と日本の材料寸法を突き合わせた結果の名残りだ。1号の長辺だけが220mmときりのいい値なのに、そこから上が素直な等差にならないのもここに理由がある(キャンバス - Wikipedia)。
「半切」「全紙」「四つ切」は写真と画用紙で別物
額装で一番ややこしいのが、この呼称の衝突だ。写真の世界の半切は 432×356mm、画用紙の世界の半切は 545×424mm。全紙も、写真は 560×457mm なのに画用紙は 727×545mm。四切に至っては写真 305×254mm に対して画用紙 424×348mm で、面積が倍近く違う。
同じ「半切」という言葉で写真店と画材店が別の紙を指しているので、電話で「半切で」と伝えると相手の業界によって届く物が変わる。本ツールが逆引き結果のラベルを「半切(写真)」「半切(画)」と書き分けているのはこのためだ。呼称ではなくミリの数字で会話するのが結局いちばん早い。ちなみにA判・B判のほうは JIS と ISO で寸法が決まっている数少ない例で、こちらは呼称のブレがない(紙の寸法 - Wikipedia)。
120号と130号は長辺が同じ
号数が上がれば長辺も伸びる——という素直な期待が崩れる場所が1つある。120号と130号はどちらも長辺 1940mm で、違うのは短辺だけ(1303mm と 1620mm)。しかも130号は F 形式しか存在しない。号数の数字を大きさの通し番号だと思って読むと、この2つは同じ大きさに見えてしまう。ツール上で130号に P を選ぶと案内パネルに切り替わるのは、この変則を数字ゼロで押し通さないためだ。
額装で失敗しないための小さなコツ
- 額縁は号数表記で買えるが、窓寸法はメーカー差がある。 通販で買うなら「F6用」という表記だけで判断せず、商品ページの窓寸法(内寸)のミリ表記を必ず見る。同じ号数向けでも数mmの差がある。
- マットは作品より上下左右5mm以上小さく抜く。 窓を作品と同寸で抜くと、作品を保持するものが何も無くなって窓から落ちる。ツールの重なり代の既定値が5mmなのはこの目安に合わせてある。
- マット幅は40〜70mmが一般的。迷ったら広めにする。 狭いと作品が窮屈に見え、広いと余白が効いて作品が締まって見える。ただし広げた分だけ額縁外寸と必要壁面幅も増えるので、掛ける壁の幅から逆算するほうが確実だ。
- 公募展は出品規定で号数の上下限が決まっていることが多い。 描き始める前に規定を確認し、規定内の号数の実寸をツールで出してからキャンバスを買う。描き上がってから号数を測り直すのは順番が逆だ。
- 紙作品は「窓に入る部分」で測る。 水彩紙の耳や余白を含めるかどうかで数mm変わり、その数mmが既製額縁に入るかどうかを分けることがある。
よくある質問
5号が選べないのはなぜ?
実装漏れではなく、意図的に外している。理由は前半で詳しく書いたとおりで、5号だけ出典によって実寸が食い違い、どれが正しいと決められなかったためだ。誤った数字を配るより「扱っていない」と明示するほうが安全だと判断して、号数テーブル(SHORT_SIDE)から行ごと落としてある。
実用上の対処としては、5号のキャンバスや額縁自体は普通に売られているので、購入先が公表している実寸をそのまま使ってほしい。そのうえで額装の寸法だけ知りたいなら、「実寸→号数」モードにその実寸を直接入力すれば、マット窓抜きから額縁外寸までの計算はそのまま使える。号数が選べないことと、額装の計算ができないことは別だ。
同じ号数なのに、買った額縁に作品が入らないことがあるのはなぜ?
理由は2つある。1つは「咬み代(かみしろ)」。額縁の縁は作品の外周に数mm被るように作られていて、そうしないと作品が前に抜け落ちる。つまり額縁の窓寸法は作品の実寸よりわずかに小さい。本ツールの枠幅は「作品またはマットの外周から外側に張り出す幅」として定義しているので、外寸の計算には使えるが、窓が作品を何mm咬むかは表現していない。もう1つはメーカー差で、同じ号数表記の既製額縁でも窓寸法は各社で数mm異なる。号数表記が合っているのに入らない場合は、額縁側の窓寸法と作品の実寸を両方測って比べるのが早い。
マットあり/なしはどう使い分ければいい?
作品の種類で決まる。油彩・アクリルのキャンバスはマットを使わず、額縁に直接落とし込むのが通例だ。厚みのある木枠をそのまま縁で咬ませる構造なので、あいだに台紙を挟む余地がない。一方、水彩・版画・写真・ポスターのような紙の作品はマットを挟むのが一般的で、これには作品面がガラスに直接触れるのを防ぐ、紙の波打ちを窓の縁で隠す、という実利がある。ツールの既定が「マットなし」なのは、初期表示がキャンバスの号数換算だからで、紙作品を扱うときは「マットあり」に切り替えれば窓抜き寸法から順に出る。
逆引きの候補が3件も出るのはなぜ? 1件でいいのでは?
最寄り1件だけだと、それが「ぎりぎり合う」のか「他に選択肢が無いだけ」なのかが分からないからだ。長辺が近い候補と短辺が近い候補は一致しないことが多く、順位が1つ違うだけで縦横の余り方がまったく変わる。候補リストの差は符号付きで出していて、プラスは作品のほうが大きい=その号数の額には収まらないことを意味する。3件を見比べれば「長辺を優先して少し余らせる」「短辺を合わせて長辺をトリミングする」といった判断が自分でできる。
入力した寸法はどこかに送信される?
されない。号数テーブルも紙規格テーブルも計算処理もすべてブラウザ内で完結していて、入力した作品寸法やマット幅がサーバーへ送られることはないし、どこにも保存していない。「結果をコピー」を押したときだけ、テキストが端末のクリップボードに入る。未発表作品の寸法や、公募展に出す前のサイズ検討を入れても外に出ることはない。ページを閉じれば入力内容は消えるので、繰り返し使う数字は自分でメモしておいてほしい。
まとめ
号数は長辺を、F/P/M/S は短辺を決める——この2階建ての構造さえ掴めば、あとは実寸とマット幅と枠幅を積み上げるだけで、注文に必要な数字はすべて揃う。作品や模型を縮尺で検討するときは模型スケール換算計算機、額縁や裏板を自作するときの板取りは材料切り出し最適化、掛ける壁の下地と耐荷重は壁掛け耐荷重チェック、マットや壁の色を数値で管理したいときはマンセル値⇔HEX変換が使える。追加してほしい規格や気づいた点があれば、お問い合わせページから教えてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。画材店で F6 のキャンバスを注文するたびにサイズ表を開き直していた。4社の表を機械で突き合わせて5号だけ値が揃わないと分かった日から、この手の数字は自分の手元に持っておくことにしている。
運営者情報を見る