設備容量750kWのビル、契約電力は750kWではない
新築ビルの機器表を集計したら設備容量の合計が750kW。「じゃあ契約電力も750kWで申し込めばいい?」——受電計画の最初でつまずくのが、まさにこの問いだ。
答えはノー。照明も空調もポンプもエレベーターも、全部が同時にフル稼働する瞬間は現実にはほぼ来ない。実際のピーク電力(最大需要電力)は設備容量よりずっと小さく、その比率を表すのが「需要率」。事務所ビルなら建物全体で50〜70%程度に落ち着くことが多く、750kWのビルの契約電力の目安は500kW前後まで下がる。
この差を読み違えると、契約電力の基本料金を何年も払いすぎたり、逆に変圧器が過負荷でうなったりする。「需要率・契約電力計算ツール」は、設備容量と需要率から最大需要電力を計算し、契約電力の目安・受電方式(低圧/高圧/特別高圧)・JIS標準容量からの推奨変圧器容量・月間消費電力量までを1画面で一括算出する無料ツール。建物用途プリセット(事務所・工場・店舗・病院・学校)で需要率の代表値もワンタップでセットできる。
なぜ作ったのか — 需要率・負荷率・力率は「混同3兄弟」
電気設備の勉強を始めた頃、需要率・負荷率・力率の3つがしばらく頭の中でごちゃ混ぜだった。どれも「率」で、どれも受電計画に出てきて、どれもパーセントか小数。電験三種やエネルギー管理士の試験でも混同を狙った出題が定番だよね。
実務でも事情は同じで、受電計画の初期検討は「設備容量に需要率を掛けて最大需要電力を出す → 契約電力の目安を見る → 力率で割ってkVAに換算し変圧器容量を選ぶ → 負荷率を掛けて月間電力量を見積もる」という一本の流れなのに、この流れを1画面で通しで計算できるツールが見当たらなかった。需要率だけの解説記事、変圧器容量だけの計算表はあっても、契約電力の目安と受電方式の判定、月間電力量まで繋がらない。Excelで組むたびに需要率の代表値を調べ直し、JIS標準容量の表を引っ張り出す。この手戻りをゼロにしたかった。
当サイトにはすでに/panel-load-schedule(分電盤単位の回路集計)と/transformer-sizing(変圧器バンク単体の容量選定)があるが、その間を繋ぐ「建物単位の受電計画」が抜けていた。本ツールはその最上流を埋めるピースだ。なおこのテーマは、執筆中のKindle続編『mahiroAppsで学ぶ受変電・非常電源設計』(電気設備設計の続編)の受電計画章の中心テーマでもある。
需要率とは何か — 最大需要電力の求め方を第一原理から
需要率 とは:設備容量とピークの比率
需要率(demand factor)の定義はシンプルだ。
需要率(%) = 最大需要電力(kW) ÷ 設備容量の合計(kW) × 100
設備容量は建物に据え付けた電気機器の定格容量の合計。最大需要電力は、実際の運用で同時に使われる電力のピーク値。需要率はこの2つの比率で、「据え付けた設備のうち、ピーク時に何割が動いているか」を表す。
逆算すれば、最大需要電力の求め方はこうなる。
最大需要電力(kW) = 設備容量の合計(kW) × 需要率(%) ÷ 100
新築の受電計画では実測値が存在しないから、内線規程(JEAC 8001)や建築設備設計基準で紹介される用途別の代表値を使って最大需要電力を推定する。これが受電計画の出発点になる。
なぜ全機器は同時にフル稼働しないのか
自宅を思い浮かべてほしい。エアコン・電子レンジ・ドライヤー・炊飯器・洗濯乾燥機——全部の定格を足せば軽く6kWを超える家は珍しくない。でも契約アンペアは30〜40A(3〜4kW)で普通に暮らせている。家族全員が同じ瞬間に全家電のスイッチを入れることがないからだ。これがまさに需要率の考え方で、ビルや工場ではこの効果がもっと大きく効く。
- 照明は執務エリアが点いていても会議室・倉庫は消えている(事務所で需要率70%程度)
- コンセントは席数分の定格を見込むが、同時使用はごく一部(30〜50%)
- 空調は夏期ピークに一斉運転するため高め(80%前後)
- ポンプ・エレベーターなどの動力は交互運転・間欠運転が多い(50〜60%)
グループごとに「同時に動く割合」が違うので、精度を上げたいときは負荷を照明・コンセント・動力(空調)・動力(その他)に分けて需要率を掛け、合算する。本ツールのdetailモードがこの方式だ。
負荷率 需要率 違い — 不等率も含めて表で整理
需要率とセットで混同されやすいのが負荷率と不等率。3つを並べると役割の違いがはっきりする。
| 指標 | 定義 | 典型値の目安 | 何を決めるのに使うか |
|---|---|---|---|
| 需要率 | 最大需要電力 ÷ 設備容量 × 100 | 建物全体で50〜70% | 契約電力・変圧器容量(設備の大きさ) |
| 負荷率 | 平均需要電力 ÷ 最大需要電力 × 100 | 事務所50%・工場60%程度 | 月間消費電力量・電気代(使い方の平坦さ) |
| 不等率 | 各部分の最大需要の和 ÷ 全体の最大需要 | 1.1〜1.3程度 | 複数フィーダ・変電所間の容量圧縮 |
ひとことで言えば、需要率は「設備に対してピークがどれだけ低いか」、負荷率は「ピークに対して平均がどれだけ平坦か」。需要率が決めるのは受変電設備のサイズ、負荷率が決めるのは電力量(ランニングコスト)だ。不等率は複数の変電所やフィーダのピークがずれることを利用する係数で、本ツールでは扱わない(単一受電点の計画が対象)。
契約電力が50kW以上になると低圧供給の範囲を超えて高圧受電(6.6kV)となり、キュービクル式高圧受電設備の設置が必要になる。つまり需要率の見積もりひとつで、受電方式そのものが変わる。ここが需要率計算の面白さであり怖さでもある。
実務での重要性 — 契約電力 計算 方法を誤ると何が起きるか
需要率の読み違いは、そのまま金額になって跳ね返ってくる。
過大に見積もった場合。高圧受電の基本料金は契約電力に比例する(単価はおよそ1,700〜2,000円/kW・月)。実際のピークが400kWなのに契約500kWで走らせれば、差分100kW×単価×12ヶ月=年間200万円級の基本料金を何の対価もなく払い続けることになる。変圧器も過大なら、無負荷でも流れ続ける鉄損と、イニシャルコスト・設置スペースの無駄が積み上がる。
過小に見積もった場合はもっと痛い。高圧(500kW未満)の契約電力は実量制(30分デマンド値)で決まり、一度でもデマンドが契約を超えれば、その値が向こう1年間の契約電力に張り付く。変圧器が過小なら過負荷運転で絶縁物の寿命が縮み、最悪は焼損・停電事故に至る。
そして最大の分岐点が高圧受電 50kWの境界だ。契約電力が50kW以上になると低圧供給の範囲を超え、キュービクルの設置(数百万円規模)に加えて、電気事業法に基づく自家用電気工作物として電気主任技術者の選任(外部委託可)と年次点検が必要になる。需要率の見積もりが数%違うだけで、イニシャルもランニングも法的義務も変わる。だからこそ、初期検討の段階で「契約は何kWになりそうか」「受電方式はどちらか」を素早く概算できることに価値がある。
活躍する場面
新築・改修の受電計画の初期検討。基本設計段階で機器表がまだ粗くても、用途プリセットで契約電力と変圧器容量のオーダーを掴める。キュービクルの要否・設置スペースの当たりを早期につけられる。
テナント入居・設備増設時の容量確認。既存ビルに厨房や空調を増設するとき、増設後の最大需要電力が契約と変圧器に収まるかをその場で試算できる。
省エネ診断・契約電力の見直し。実績のデマンド値と本ツールの概算を突き合わせて、契約が実態より膨らんでいないかをチェック。負荷率を入れれば月間電力量の妥当性も確認できる。
電験三種・エネルギー管理士の学習。需要率・負荷率・力率を変えたときに契約電力・変圧器容量・電力量がどう動くかを、手を動かしながら体感できる。数式の暗記が「設計の感覚」に変わる。
基本の使い方 — 3ステップ
- 入力モードを選ぶ。設備容量の合計しか分からなければ「合計容量×一括需要率」、負荷の内訳が分かるなら「グループ別に集計」。建物用途プリセット(事務所・工場・店舗・病院・学校)をタップすれば、4グループの容量と需要率の代表値が一括セットされる。
- 容量・力率・余裕率を入力。設備容量と需要率に加えて、受電点の総合力率(標準0.9)と変圧器余裕率(標準20%)を入れる。負荷率(任意)を入力すると月間消費電力量も試算される。
- 契約電力と変圧器容量を確認。最大需要電力・契約電力の目安・受電方式(低圧/高圧/特別高圧)・必要変圧器容量とJIS標準容量からの推奨値が一括表示される。結果はワンタップでコピーできる。
具体的な使用例 — 7ケースで検証
実装した計算エンジンに実際の値を入れて確認した7ケース。入力→結果→解釈の3点セットで紹介する。
ケース1:中規模事務所ビル(プリセット・グループ別集計)
入力:照明200kW×70%+コンセント150kW×40%+空調300kW×80%+その他100kW×50%、力率0.9、負荷率50%、余裕率20% 結果:最大需要電力490.0kW(内訳140+60+240+50)、設備容量750kW・総合需要率65.3%、契約電力の目安490kW(高圧受電)、必要変圧器容量653.3kVA → 推奨750kVA、月間消費電力量178,850kWh 解釈:設備容量750kWに対して契約の目安は490kW。冒頭の「750kWのビル」の答えがこれだ。グループ別に集計すると総合需要率65.3%が自動算出され、一括方式で使う需要率の妥当性チェックにも使える。
ケース2:小規模店舗(低圧受電に収まるか)
入力:simpleモード、設備容量80kW×一括需要率50%、力率0.9、負荷率40%、余裕率20% 結果:最大需要電力40.0kW、契約電力の目安40kW(低圧受電域)、必要容量53.3kVA → 推奨75kVA、月間消費電力量11,680kWh 解釈:契約40kWなら50kW未満で低圧受電に収まり、キュービクル不要。ただし余裕が10kWしかないため、増設予定があるなら高圧化の分岐も視野に入れて計画したい。
ケース3:高圧境界ちょうどの50kW
入力:simpleモード、設備容量100kW×需要率50%、力率1.0、余裕率0%、負荷率60% 結果:最大需要電力50.0kW、契約電力の目安50kW=ちょうど高圧受電域、必要容量50.0kVA → 推奨50kVA、月間消費電力量21,900kWh 解釈:50kWは「以上」で高圧側に判定される境界値。ここに乗るか乗らないかでキュービクル数百万円と主任技術者選任が分かれるため、境界付近の物件では需要率の根拠を実態調査で固める価値が最も大きい。
ケース4:工場(動力主体・プリセット)
入力:照明100kW×80%+コンセント50kW×50%+空調200kW×70%+その他(生産設備)600kW×60%、力率0.85、負荷率60%、余裕率20% 結果:最大需要電力605.0kW(80+25+140+360)、設備容量950kW・総合需要率63.7%、契約電力の目安605kW、必要容量854.1kVA → 推奨1000kVA、月間消費電力量264,990kWh 解釈:動力主体の工場は「その他」グループが支配的。力率0.85と低めなので、同じ605kWでも事務所(力率0.9)よりkVAが膨らむ。力率改善で変圧器容量を圧縮できる典型パターンだ。
ケース5:学校(プリセット)
入力:照明120kW×75%+コンセント80kW×35%+空調200kW×65%+その他50kW×45%、力率0.9、余裕率20% 結果:最大需要電力270.5kW(90+28+130+22.5)、設備容量450kW・総合需要率60.1%、契約電力の目安271kW、必要容量360.7kVA → 推奨500kVA 解釈:学校は在室パターンが揃うため照明の需要率が高め、コンセントは低め。必要360.7kVAに対しひとつ下の標準容量300kVAでは足りないため、直近上位の500kVAが推奨される。
ケース6:特別高圧域の大規模工場
入力:simpleモード、設備容量5000kW×需要率70%、力率0.95、余裕率10% 結果:最大需要電力3500.0kW、契約電力の目安3500kW(特別高圧受電域)、必要容量4052.6kVA → 推奨なし(標準容量2000kVAを超過) 解釈:契約2000kW以上は特別高圧(20kV以上)の協議域。変圧器も単機では収まらず、電灯/動力別・系統別の複数バンク分割が前提になる。ツールはこの規模を検知して警告を出し、単機選定で突き進む事故を防ぐ。
ケース7:空調のみ・低力率(グループ除外の確認)
入力:detailモードで空調100kW×80%のみ入力(他グループは0または空欄)、力率0.8、余裕率20% 結果:最大需要電力80.0kW、契約電力の目安80kW(高圧受電域)、必要容量120.0kVA → 推奨150kVA、力率0.85未満のため力率改善の情報表示 解釈:容量0・空欄のグループは自動で集計から除外されるので、部分的な検討にも使える。力率0.8では80kWに対して120kVAと5割増のkVAが必要になる。進相コンデンサで力率を改善すれば必要kVAを圧縮できる——必要kvarは/power-factor-calcで試算できる。
7ケースを通して見ると、同じ「設備容量」でも需要率・力率・規模の組み合わせで、受電方式も変圧器も月間電力量もまるで違う結果になることが分かる。
仕組み・アルゴリズム — 契約電力と変圧器容量 選定の計算フロー
一括需要率方式 vs グループ別集計方式
最大需要電力の推定には大きく2つの流儀がある。
一括需要率方式は、設備容量の合計に建物全体の需要率(50〜70%)を一発で掛ける方法。入力が2つで済み、基本計画の初期段階や既存ビルの粗い検算に向く。弱点は、負荷構成(動力主体か照明主体か)の違いを吸収できないこと。
グループ別集計方式は、照明・コンセント・動力(空調)・動力(その他)に分け、内線規程等で紹介されるグループ別の代表需要率を掛けて合算する方法。同時使用のされ方がグループごとに全く違う(空調80%前後 vs コンセント30〜50%)という実態を反映でき、精度が一段上がる。代わりに入力が8つに増える。
どちらか一方に絞ると使える場面が狭くなるため、本ツールは両方をモード切替で搭載し、プリセットでグループ別方式の入力の手間を解消した。グループ別で計算すると総合需要率が逆算表示されるので、「この建物は一括で見ると何%相当か」という感覚も同時に養える。
計算フロー
// 1. 最大需要電力(detailは容量0・空欄のグループを除外して合算)
maxDemandKw = Σ(設備容量kW × 需要率% / 100)
// 2. 契約電力の目安と受電方式
contractPowerKw = Math.ceil(maxDemandKw) // 切り上げ
supplyClass = contractPowerKw >= 2000 ? "特別高圧"
: contractPowerKw >= 50 ? "高圧"
: "低圧"
// 3. 必要変圧器容量 → JIS C 4304標準容量から直近上位
requiredKva = maxDemandKw / 力率 × (1 + 余裕率% / 100)
// [50, 75, 100, 150, 200, 300, 500, 750, 1000, 1500, 2000] kVA
// のうち requiredKva 以上の最小値を推奨(2000超は複数バンク分割)
// 4. 月間消費電力量(負荷率が入力されたときのみ)
monthlyEnergyKwh = maxDemandKw × 負荷率% / 100 × 730
kWからkVAへの換算で力率で割るのは、変圧器の容量が皮相電力(kVA)で規定されるため。余裕率20%は将来増設・突入電流・過負荷回避のための一般的な値だ。
事務所プリセットのステップバイステップ計算
ケース1をエンジンの計算順に追ってみる。
- グループ別の需要電力:照明 200×0.70=140kW、コンセント 150×0.40=60kW、空調 300×0.80=240kW、その他 100×0.50=50kW
- 最大需要電力:140+60+240+50=490kW。設備容量合計は750kWなので総合需要率は 490÷750×100=65.3%
- 契約電力の目安:切り上げで490kW → 50kW以上2000kW未満なので高圧受電
- 必要変圧器容量:490÷0.9×1.2=653.3kVA → JIS標準容量の直近上位750kVAを推奨
- 月間消費電力量:490×0.50×730=178,850kWh
最後の「730h」は月平均の時間数で、8760h(1年)÷12ヶ月=730hに由来する。30日×24h=720hではなく年間ベースで割るのは、31日の月も2月も均した「平均月」で見積もるためだ。負荷率50%とは「ピーク490kWに対して、月を通した平均が半分の245kWで推移する」という意味で、245kW×730h=178,850kWhと読み替えることもできる。
なお、実際の契約電力は実量制(30分デマンド値の年間最大)や電力会社との協議で確定する。本ツールの値はあくまで受電計画の初期検討用の概算として使ってほしい。
受変電ツール4本の使い分け — 受電計画から盤の集計まで
当サイトには電気設備の容量計算ツールがいくつかあるので、立ち位置を整理しておく。結論から言うと、このツールは一番「上流」を受け持つ。
設計の流れで考えると分かりやすい。まず本ツールで建物全体の設備容量×需要率から最大需要電力を推定し、契約電力の目安・受電方式(低圧/高圧/特別高圧)・変圧器容量の当たり・月間電力量までを一括で掴む。ここで決まるのは「建物単位の受電計画」だ。
受電方式が固まったら、変圧器を電灯バンク・動力バンクに分割していく。バンク1台ずつの容量選定は /transformer-sizing の守備範囲だ。負荷kW・力率・余裕率からバンク単体のkVAを詰める。本ツールの推奨容量は全負荷を1バンクに合算した目安なので、分割後の個別検討はこちらに引き継ぐ。
さらに下流、分電盤1面ごとの回路集計と相バランスは /panel-load-schedule が担当する。回路ごとの負荷を積み上げて幹線容量と不平衡率をチェックする、盤単位のツールだ。
そして本ツールで力率0.85未満の警告が出たら、/power-factor-calc で進相コンデンサの必要kvarを試算する。力率を0.8→0.95に改善すれば必要kVAが約16%圧縮され、変圧器を1サイズ落とせることもある。受電形態が決まった後の短絡電流・遮断器選定は /short-circuit-calc へ。
つまり「建物→バンク→盤」の3階層それぞれに専用ツールがあり、本ツールはその最初の一手。契約電力・受電方式・電力量という「電力会社と向き合う数字」まで出すのはこのツールだけだ。
豆知識: 実量制デマンド・50kWの境界・力率割引
契約電力は「過去12ヶ月の最大デマンド」で決まる
高圧受電(契約電力500kW未満)の契約電力は、実は申請値ではなく実測で決まる。電力量計が30分ごとの平均電力(デマンド値)を記録し、当月を含む過去12ヶ月のデマンド最大値がそのまま契約電力になる。これが実量制だ。つまり真夏の午後にたった30分、空調と機械を同時フル稼働させただけで、その値が向こう1年間の基本料金に張り付く。デマンド監視装置で警報を出し、ピークの30分だけ負荷を間引く「デマンドコントロール」が省エネ以上に電気代に効くのはこのためだ。
なぜ50kWが低圧と高圧の境界なのか
電力会社の供給約款では、低圧供給は契約電力50kW未満が原則だ。50kW以上になると6.6kVの高圧受電となり、自前の受変電設備(キュービクル)を置いて自分で電圧を下げる必要がある。受電設備は電気事業法上の自家用電気工作物となり、電気主任技術者の選任(外部委託承認制度の利用可)と保安規程の届出が義務になる。キュービクル本体だけで数百万円、保安管理費が年数十万円。契約電力49kWと51kWの間には、単価差では説明できない設備投資の崖がある。
キュービクルの中身と力率割引
キュービクル式高圧受電設備の金属箱の中には、断路器・高圧交流負荷開閉器(LBS)・遮断器(VCB)・計量用のVCT・電灯/動力の変圧器・進相コンデンサ・避雷器が収まっている。このうち進相コンデンサには料金上のご褒美がある。多くの電力会社の高圧契約では力率85%を基準に、1%上回るごとに基本料金が1%割引、下回れば1%割増になる。力率95%なら基本料金10%引き。コンデンサは数年で元が取れる、受変電設備の中で最も投資回収が速い機器と言われる所以だ。
Tips — 受電計画の精度を上げるコツ
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需要率は用途より「運用」で決まる: 同じ事務所ビルでも、9時〜18時の設計事務所と24時間稼働のコールセンターでは需要率がまるで違う。プリセットは初期値と割り切り、可能なら類似物件の実績デマンド値から逆算した需要率に差し替えるのが実務の精度を上げる近道だ。
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負荷率を入れて電気代の当たりを付ける: 月間電力量が出れば電気代を概算できる。事務所プリセット(最大需要490kW・負荷率50%)なら月178,850kWh。電力量料金を仮に17円/kWhとすると約304万円/月、これに基本料金(契約電力×単価×力率割引)が乗る。受電計画の段階でランニングコストの規模感を施主に示せる。
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余裕率20%は「将来増設+過負荷回避」の合わせ技: 変圧器は定格ぎりぎりで運転すると増設余地がなく、負荷の突入電流にも弱い。かといって過大にすると鉄損(無負荷損)を常時垂れ流す。将来増設分と突入余裕を見て20%、増設計画が明確なら具体的なkWを積む方がよい。
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電灯バンクと動力バンクは分けるのが基本: 単相3線式100/200Vの電灯負荷と三相200Vの動力負荷は、実務では別バンクの変圧器に載せる。本ツールの推奨容量は合算1バンク相当の目安なので、バンク分割後はグループ別内訳のkWを電灯系・動力系に振り分け、各バンクを /transformer-sizing で個別に選定してほしい。
よくある質問(FAQ)
需要率と負荷率は何が違うのか
分子と分母が違う。需要率は「最大需要電力÷設備容量」で、持っている設備がピーク時にどれだけ同時稼働するかを表す。負荷率は「平均需要電力÷最大需要電力」で、ピークに対して普段の使い方がどれだけ平準的かを表す。需要率は設備計画(変圧器・契約電力)に、負荷率は電力量・電気代の見積もりに使う。ちなみに複数の変電所・フィーダ間のピークのずれを表す「不等率」という第3の指標もあるが、本ツールは単一受電点の計算なので扱っていない。
契約電力はこのツールの計算値でそのまま決まるのか
決まらない。本ツールの契約電力は受電計画の初期検討用の概算だ。実際の高圧契約(500kW未満)は実量制で、30分デマンド値の過去12ヶ月最大がそのまま契約電力になる。500kW以上や特別高圧は電力会社との協議で決まる。設計段階では本ツールの値で受電方式・幹線・変圧器の当たりを付け、竣工後の契約は実運用のデマンドで確定する、という二段構えで考えてほしい。
変圧器は推奨された1台にまとめてしまっていいのか
実務では推奨しない。電灯負荷(単相3線)と動力負荷(三相)は電気方式が違うため、別バンクに分けるのが標準的な構成だ。1台集中は故障時に全館停電になるリスクと、保守停電の融通が利かないデメリットもある。本ツールの推奨kVAは「建物全体でこの規模」という総量の目安として使い、バンク分割後の個別容量は /transformer-sizing で詰めるのが正しい使い方だ。
建物用途プリセットの需要率はそのまま設計に使っていいのか
初期検討ならそのまま、実施設計なら要調整だ。プリセット値は内線規程や建築設備設計基準等で紹介される代表値をベースにした目安で、実際の需要率は建物の使われ方(稼働時間・季節・テナント構成)で大きく振れる。特にデータセンター的な高稼働フロアや厨房を含む建物は代表値から外れやすい。類似物件の実績デマンドがあるなら、そこから逆算した需要率で上書きするのが確実だ。
入力した設備容量や計算結果はどこかに保存・送信されるのか
されない。計算はすべてブラウザ内のJavaScriptで完結しており、入力値も結果もサーバーには一切送信していない。ページを閉じれば消えるので、計画中の物件の負荷データを入力しても外部に残る心配はない。結果を残したいときは「結果をコピー」ボタンでクリップボードに書き出して、手元のメモや設計書に貼り付けてほしい。
まとめ
設備容量の合計と実際のピーク電力は別物で、その差を埋める係数が需要率だ。このツールは設備容量×需要率から最大需要電力を求め、契約電力の目安・受電方式・変圧器容量・月間電力量まで、受電計画の初期検討に必要な数字を1画面で出す。
建物全体の当たりが付いたら、バンクごとの変圧器選定は /transformer-sizing、分電盤単位の回路集計は /panel-load-schedule、力率改善のコンデンサ容量は /power-factor-calc へ。受電計画から盤の中身まで、上流から順に詰めていける。使ってみて気づいた点や欲しい機能があれば、お問い合わせから気軽に知らせてほしい。
不具合や要望があれば、お問い合わせページから気軽に教えて。