「6.6キリ 11深ザグリ深さ6.5」と書いたあと、また電卓を叩いている
治具のプレートに六角穴付きボルトを沈める。図面に穴指示を書く段になってJISの表を開き、M6の行を指でなぞって「6.6キリ 11深ザグリ深さ6.5」と書き込む。ここまでは数十秒で終わる。面倒なのはそのあとだ。部品表にボルトの長さを書こうとして、板厚12からざぐり深さ6.5を引き、めねじに9mm掛けるとして足して14.5、市販品なら16だな——と、さっき閉じた表とは別の表と電卓を行き来する。座金を1枚挟むと決めた瞬間、深さも長さも最初からやり直しになる。
穴の寸法とボルトの長さは、同じ1本の締結を上と下から見ているだけだ。なのに調べる場所が別々に分かれている。だから二度引きになり、二度目のほうで引き忘れが起きる。
このツールは、ボルトの種類と呼び径、締結する板厚、相手がめねじかナットかを入れると、通し穴径・ざぐり径・ざぐり深さと、市販の呼び長さに丸めたボルト長さを一度に出す。座金がざぐりに収まるか、止まり穴の底にボルトが当たらないかも同じ画面で判定し、図面の穴指示はそのままコピーできる。
座ぐり寸法とボルト長さを一画面にまとめた理由
ボルト穴の寸法表は世の中にいくらでもある。JIS B 1001の付表を写したもの、ねじ商社やボルトメーカーが配る早見表のPDF、設計便覧の見開き。どれも穴径とざぐり径とざぐり深さは丁寧に載っている。ところが「では何mmのボルトを買えばいいか」は、どの表にも書いていない。表が答えるのは穴の形までで、長さは読む人が自分で足し算する前提になっている。
その足し算が案外くせ者だ。板厚12mmのプレートを鋼のブロックにM6で留める図面で、「板厚+はめあい1.5d」と考えて12+9=21、切り上げて25mmと書きかけたことがある。ざぐりで頭を6.5mm沈めているのに、その深さを引き忘れていた。首下から板の裏までは実際には5.5mmしかないので、25mmのボルトはめねじに19.5mmも入る。通しのめねじなら長すぎるだけで済むが、止まり穴だったら底に当たって締まらないところだった。
座金も同じ罠を持っている。六角穴付きボルトの頭の下に平座金を入れると、座金の厚みぶんざぐりを深くしなければならない。そもそもJISの参考表のざぐり径には、並形の平座金が入らない(これは下で詳しく扱う)。表を一つずつ引いて手で足す方式だと、こうした「表と表のあいだ」で起きるずれを誰も拾ってくれない。
そこで、穴とざぐりと長さを、図面を描く段階で一度に決める道具にした。隣のツールとの役割分担ははっきりさせてある。
- タップを切る側の下穴径・ドリル径・下穴深さはタップ下穴径計算ツールの担当
- ボルトの強度区分と雌ねじの材質から、ねじ山がせん断しない深さを逆算するのはねじ込み深さ・ねじ山強度計算の担当
- このツールは、その手前の「穴をどう開け、何mmのボルトを買うか」を受け持つ
このツールのはめあい長さは設計の目安なので、強度で詰めたいときはねじ込み深さ側で出した値を「はめあい長さを直接入力」に入れればいい。目安で決めて、必要なところだけ強度で確かめる。その往復が一画面で済むようにした。
ボルト穴径とざぐり寸法の基礎 — JIS B 1001 の等級と H′・H″
キリ穴 とは — ボルトを「通すだけ」の穴
ボルトで2枚の部品を締めるとき、手前の部品にはねじを切らず、ボルトより少し大きい穴を開ける。これが通し穴(ボルト穴)で、図面では「6.6キリ」のようにドリル径で指示することが多い。ねじを切った穴(めねじ)と違って、この穴はボルトを支えない。ボルトの頭や座金で板を押さえつけ、その軸力と摩擦で部品をつなぐ。
ではなぜボルトより大きくするのか。穴の位置には必ず誤差があるからだ。相手側のめねじも手前の通し穴も、狙った位置から少しずつずれて開く。穴径とボルト径が同じなら、0.1mmずれただけでボルトが入らない。穴のすき間は、位置の誤差を吸収する「遊び」だ。ドアと枠のすき間を思い浮かべると近い。すき間がゼロなら建て付けが少し狂っただけで閉まらなくなるし、広すぎればガタつく。
めねじに固定されたボルトが通し穴を貫く場合、穴の中心がずれてよい量はすき間の半分になる。
許容できる位置ずれ(半径方向) = (通し穴径 − ボルトの呼び径) ÷ 2
M6・2級: (6.6 − 6) ÷ 2 = 0.3 mm
この0.3mmを、手前の穴の位置ずれと、めねじの位置ずれで分け合う。そう考えると、穴径の0.2mmの違いが組立の難しさを大きく左右することが分かる。
ボルト穴径 JIS — 1級・2級・3級の違い
通し穴径を決めているのがJIS B 1001:1985「ボルト穴径及びざぐり径」だ。ボルト穴径は1級から4級まであり、1・2・3級は国際規格 ISO 273 の fine・medium・coarse による。4級は主として鋳抜き穴に適用するもので、機械加工で開ける穴には1〜3級を使う。
等級の数字が大きいほど穴は大きくなる。M6なら1級6.4・2級6.6・3級7mm、M12なら13・13.5・14.5mm。穴を小さくすれば部品の位置は正確に決まるが、そのぶん穴位置の精度を厳しく管理しないとボルトが入らない。穴を大きくすれば組立は楽になるが、締める前の部品は穴のすき間の範囲で動き、座面の当たり幅も減る。どの等級を選ぶかは「穴位置をどこまで正確に開けられるか」と「組んだあとどこまで動いてよいか」の兼ね合いで決まる。穴径の許容差は、参考としてH12・H13・H14が示されている。
付表には穴の縁の面取り e も載っている。面取りは必要に応じて行い、角度は原則90度だ。M6なら0.4mm。ボルトの首下の丸みが穴の角に乗り上げ、座面が浮くのを防ぐためのものだ。
ざぐり 寸法 — 座面を整えるざぐりと、頭を沈めるざぐり
ざぐり(座ぐり)は、通し穴の入口を一段大きく削って平らな座面を作る加工だ。英語では counterbore と呼ぶ(Wikipedia: Counterbore)。目的は大きく2つある。
一つは座面を整えること。鋳物や熱間圧延材の表面は黒皮と呼ばれる酸化皮膜に覆われ、凹凸もある。そのままボルトを締めると頭の座面が片当たりし、軸力が安定しない。JIS B 1001はざぐり面を穴の中心線に直角とし、ざぐりの深さは一般に黒皮がとれる程度、としている。六角ボルトに対するざぐりはこの考え方で、深さはごく浅い。M6なら径15mmの円を薄く削る。
もう一つは頭を沈めること。六角穴付きボルトは頭が円筒形で、六角レンチを上から差して回すので、頭の周りに工具を入れるすき間がいらない。だから頭ごと部品の中に埋めて、表面を平らにできる。このとき使うのが六角穴付きボルト用のざぐり寸法で、ざぐり径 D′ と、深さの H′・H″ の2種類がある。
- H″(頭を沈める深さ): 頭部高さ k より少し深く、頭の上面が部品の表面より下に入る
- H′(ほぼ面一の深さ): 頭部高さ k より少し浅く、頭がわずかに表面から出る
六角穴付きボルトの頭部高さ k の最大値は、M3〜M24 で呼び径と同じだ(JIS B 1176:2014)。M6なら k は6mmで、H″ は6.5mm、H′ は5.5mm。ざぐり径 D′ は11mmで、頭の外径10mmに少し余裕を足した寸法になっている。
ここで一つ注意がある。六角穴付きボルト用のざぐり寸法は、現行のJIS B 1176:2014の本文には載っていない。旧版(1999・2000年版)にあった参考表が、ねじ商社の技術資料に抜粋されて今も使われている。このツールの D′・H′・H″ はミスミの技術データに抜粋された参考表から取り、D′ は加工メーカーの NIC(エヌアイシ・オートテック)の標準座グリ寸法表とも M4〜M8 で一致することを確かめてある。
ボルトの長さは首下から数える
最後に長さの数え方。六角ボルトも六角穴付きボルトも、呼び長さは頭の座面(首下)から先端までの長さで、頭の高さは含まない。M6×16 なら首下が16mm。だから必要な長さは「首下から板の裏まで」と「板の裏から先」の2つに分けて考えると決まる。
板の裏から先は、相手がめねじならはめあい長さ(ボルトのおねじがめねじに掛かっている長さ)、相手がナットなら座金とナットの厚みに、ナットからの突き出しを足した長さだ。ざぐりで頭を沈めれば首下〜板裏は短くなり、頭の下に座金を挟めば長くなる。穴の寸法と長さが切り離せないのは、この「首下〜板裏」がざぐり深さと座金で決まるからだ。
ボルト長さの選び方を誤ると何が起きるか
短すぎる — めねじの山が先に負ける
はめあい長さが足りないと、ボルトが切れる前にめねじの山がせん断して抜ける。いわゆる「ねじ山が舐める」状態だ。めねじ側の材料が柔らかいほど、同じ荷重でも長く掛ける必要がある。設計の目安としては「鋼1.0〜1.5d・鋳鉄1.5〜2.0d・アルミ2.0〜2.5d」の幅で引かれることが多い。これは単一の規格条文ではなく、設計解説で広く使われる経験的な幅だ。このツールは、短いほど危険側になることから、それぞれ上限の1.5d・2.0d・2.5dを採っている。
たとえば板厚12mmのプレートをM6で鋼のめねじに留めるとき、ざぐり込みの感覚がないまま12mmのボルトを選ぶと、首下〜板裏が5.5mmなので、めねじに掛かるのは6.5mmしかない。1.1d程度で、鋼の目安の上限1.5d(9mm)に届かない。アルミのめねじなら、なおさら足りない。
長すぎる — 止まり穴の底で「締めたつもり」になる
逆に長すぎると、止まり穴ではボルトの先端が底に当たる。厄介なのは、底に当たってもトルクレンチはちゃんとカチッと鳴ることだ。回転が止まるので締めた手応えはあるのに、軸力は穴の底を押しているだけで、肝心の板はほとんど押さえられていない。組んだ直後は問題なく見えても、振動を受けるとすぐに緩む。
M5のアルミブロックにタップ深さ16mmの止まり穴があり、板厚10mmのプレートを頭を沈めて留める場合、首下〜板裏は4.6mmになる。20mmのボルトなら先端までの掛かりは15.4mmで底に届かない。ところが「長めにしておけば安心」と25mmを選ぶと、板の裏から先が20.4mmになり、タップ深さを4.4mm超えて底突きする。長さは「足りるか」と「当たらないか」の両側から決める必要がある。
座金がざぐりに入らない — 並形の平座金は全サイズで入らない
六角穴付きボルトのざぐりに座金を入れようとすると、もう一つの落とし穴がある。JISの参考表のざぐり径 D′ と、座金の外径を並べるとこうなる。
| 呼び径 | ざぐり径 D′ | 頭部外径 dk | 平座金(並形)の外径 | ばね座金の外径 |
|---|---|---|---|---|
| M3 | 6.5 | 5.5 | 7(入らない) | 5.9(入る) |
| M4 | 8 | 7 | 9(入らない) | 7.6(入る) |
| M5 | 9.5 | 8.5 | 10(入らない) | 9.2(入る) |
| M6 | 11 | 10 | 12(入らない) | 12.2(入らない) |
| M8 | 14 | 13 | 16(入らない) | 15.4(入らない) |
| M10 | 17.5 | 16 | 20(入らない) | 18.4(入らない) |
| M12 | 20 | 18 | 24(入らない) | 21.5(入らない) |
| M16 | 26 | 24 | 30(入らない) | 28(入らない) |
| M20 | 32 | 30 | 37(入らない) | 33.8(入らない) |
| M24 | 39 | 36 | 44(入らない) | 40.3(入らない) |
(単位 mm。D′・dk は六角穴付きボルト用の参考表と JIS B 1176:2014、座金は JIS B 1256:2008 並形と JIS B 1251:2018 一般用の外径の最大)
並形の平座金は M3〜M24 のすべてで D′ より大きく、ばね座金も M6 以上は入らない。参考表のざぐり径は頭の外径に少し余裕を足した寸法で、座金を入れる前提になっていないからだ。図面に「11深ザグリ」と書いて部品表に平座金を載せると、組立の現場で座金がざぐりの縁に乗り、頭が浮く。入れるなら、ざぐり径を座金の外径以上に広げる。広げないなら座金を外す。どちらにするかは図面の段階で決めておくべきことだ。
等級は「穴位置をどう開けるか」で選ぶ
通し穴の等級は、穴位置の精度とセットで考える。相手のめねじと通し穴を同じ機械で同じ基準から加工できるなら、1級の小さい穴でも入るし、部品の位置も正確に決まる。現物合わせで穴を開ける、溶接構造物のように歪みが出る、といった条件では、3級の大きい穴にしておかないと組立で詰まる。迷ったら2級、というのがこのツールの既定だ。等級を変えても長さの計算は変わらず、通し穴径だけが変わる。
座ぐり寸法とボルト長さを決める4つの場面
治具・装置フレームのプレートに頭を沈める。 位置決めピンと六角穴付きボルトで留める治具プレートは、表面に頭が出ると上に載るワークや隣の部品と干渉する。H″ で沈め、相手のブロックに掛ける長さまで一度に決めたい場面だ。
アルミブロックにタップを切って留める。 アルミのめねじは鋼より長く掛ける必要があるうえ、ブロックの厚みが限られていて止まり穴になることが多い。必要なはめあいと、底に当たらない長さの両方を満たす呼び長さが市販品にあるかどうかが、いちばん知りたいところだ。タップ深さを入れれば、底突きしない長さだけに絞り込める。
ナットで締めるブラケット。 形鋼や板金のブラケットを六角ボルトとナットで留めるとき、頭側とナット側に平座金やばね座金を重ねると、長さの積み上げが一気に増える。ナットからの突き出しが足りているか、逆に余りすぎていないかを、山数で確かめられる。
既存図面の検図。 他人の図面で「11深ザグリ深さ6.5」と「M6×20」が並んでいたとき、その組合せでめねじに何mm掛かるのか、座金が部品表に載っているならざぐりに入るのか。条件を入れれば穴指示が再現され、はめあいの実長も出るので、図面の数字と突き合わせるだけで済む。
基本の使い方 — 3ステップで穴指示と呼び長さが出る
ステップ1: ボルトを選ぶ。 ボルトの種類(六角穴付きボルト/六角ボルト)、呼び径(M3〜M24)、通し穴の等級(1〜3級)、頭の下の座金(なし/平座金/ばね座金/平座金+ばね座金)を選ぶ。六角穴付きボルトのときだけ、ざぐり深さを「頭を沈める(H″)」か「ほぼ面一(H′)」から選ぶ。
ステップ2: 締結する相手を入れる。 締結する板厚をmmで入れ、相手側を「めねじ」か「ナット」から選ぶ。めねじなら材料(鋼・鋳鉄・アルミ合金)を選ぶか、はめあい長さを直接入力する。止まり穴なら、タップ深さ(有効ねじ部の深さ)も入れる。ナットなら、ナット側の座金を選ぶ。
ステップ3: 結果を読んでコピーする。 結果の先頭に推奨のボルト(例: 六角穴付きボルト M6×16)と、長さが決まったか要確認かの判定が出る。その下に通し穴径・面取り・ざぐり径・ざぐり深さ、必要長さ・推奨呼び長さ・はめあい実長(ナットなら突き出しと山数)・頭部高さが並ぶ。断面図には、ざぐり・板・めねじ部材またはナットと、選んだ長さのボルトが描かれ、止まり穴の底やナットからの突き出しも目で確かめられる。図面の穴指示(6.6キリ 11深ザグリ深さ6.5 の形式)はそのままコピーでき、結果全体も設計メモ用にコピーできる。
使用例 — 座ぐり寸法とボルト長さを12ケースで確かめる
特に断りがなければ、通し穴は2級、ざぐりは頭を沈める H″、座金なし、止まり穴のタップ深さは空欄として入力している。
ケース1: 既定の M6・板厚12・鋼のめねじ
- 入力: 六角穴付きボルト M6、板厚12mm、相手はめねじ(鋼)
- 結果: 通し穴6.6・ざぐりφ11×深さ6.5。首下〜板裏5.5mm、目標はめあい9.0mm、必要長さ14.5mm → 推奨 M6×16(はめあい実長10.5mm)
- 解釈: 板厚12mmのうち6.5mmはざぐりで頭が占めるので、ボルトが板の中を通るのは5.5mmだけ。16mmを選ぶと目標の9mmを1.5mm上回る。
ケース2: 同じ M6 に平座金(並形)を入れる
- 入力: ケース1に頭の下の平座金を追加
- 結果: ざぐり深さ8.1mm(6.5+座金の厚さ1.6)。首下〜板裏5.5mm、必要長さ14.5mm → M6×16(はめあい実長10.5mm)。座金がざぐりに入らない判定で、必要なざぐり径は12mm
- 解釈: 座金もざぐりの中に沈めるので、深さが座金の厚みだけ増え、首下〜板裏は変わらない。だから長さは座金なしと同じになる。問題は径のほうで、外径12mmの座金は φ11 のざぐりに入らない。ざぐりを φ12 以上に広げるか、座金を外すかを選ぶことになる。
ケース3: M3 にばね座金だけを入れる
- 入力: 六角穴付きボルト M3、ばね座金、板厚5mm、めねじ(鋼)
- 結果: 通し穴3.4・ざぐりφ6.5×深さ4.0。首下〜板裏1.7mm、目標はめあい4.5mm、必要長さ6.2mm → M3×8(はめあい実長6.3mm)
- 解釈: ばね座金の外径5.9mmは D′ 6.5mm に収まるので入る。小径では平座金は入らないがばね座金は入る、という差がこの組合せで分かる。
ケース4: アルミのめねじに M8 で板厚20
- 入力: 六角穴付きボルト M8、板厚20mm、めねじ(アルミ合金)
- 結果: 通し穴9・ざぐりφ14×深さ8.6。首下〜板裏11.4mm、目標はめあい20.0mm(2.5d)、必要長さ31.4mm → M8×35(はめあい実長23.6mm)
- 解釈: 鋼なら12mmで済むはめあいが、アルミでは20mmになる。板の裏から先が板厚と同じくらい要るのがアルミのめねじだ。
ケース5: 鋳鉄のめねじ・1級穴で M10・板厚25
- 入力: 六角穴付きボルト M10、通し穴1級、板厚25mm、めねじ(鋳鉄)
- 結果: 通し穴10.5・ざぐりφ17.5×深さ10.8。首下〜板裏14.2mm、目標はめあい20.0mm(2.0d)、必要長さ34.2mm → M10×35(はめあい実長20.8mm)
- 解釈: 必要長さが呼び長さの35に近いので、余りは0.8mmだけ。1級にしたのは位置決めを優先したからで、長さには影響しない。
ケース6: はめあい長さを直接入力する M4
- 入力: 六角穴付きボルト M4、板厚8mm、めねじ(はめあい長さを直接入力で6mm)
- 結果: 通し穴4.5・ざぐりφ8×深さ4.4。首下〜板裏3.6mm、必要長さ9.6mm → M4×10(はめあい実長6.4mm)
- 解釈: ねじ込み深さ・ねじ山強度計算で必要な深さを出したときや、社内基準で深さが決まっているときは、材料の目安の代わりにその値を入れる。
ケース7: 止まり穴で H′ と H″ を比べる(M5・アルミ・タップ深さ16)
- 入力: 六角穴付きボルト M5、板厚10mm、めねじ(アルミ合金)、タップ深さ16mm。ざぐり深さだけを H′ と H″ で切り替える
- 結果(H′・ほぼ面一): ざぐり深さ4.6mm、首下〜板裏5.4mm、目標はめあい12.5mm、必要長さ17.9mm → M5×20(はめあい実長14.6mm)
- 結果(H″・頭を沈める): ざぐり深さ5.4mm、首下〜板裏4.6mm、必要長さ17.1mm → M5×20(はめあい実長15.4mm)
- 解釈: 頭を沈めるとボルトは0.8mm奥へ入り、めねじへの掛かりもそのぶん長くなる。どちらもタップ深さ16mmには収まり、底には当たらない。
ケース8: タップが浅すぎる止まり穴
- 入力: ケース7(H″)のタップ深さを8mmに変える
- 結果: 通し穴・ざぐり・首下〜板裏はケース7と同じで、必要長さ17.1mm。推奨呼び長さは決まらず、タップが浅いという判定になる
- 解釈: アルミで目標とするはめあい12.5mmが、そもそもタップ深さ8mmに収まらない。穴とざぐりの寸法は出たままなので、図面を描き進めながら、タップを深くするか(ケース7のとおり16mmあれば M5×20 が入る)、ボルトを切って使うかを決められる。
ケース9: 六角ボルト・3級穴でめねじに留める
- 入力: 六角ボルト M8、通し穴3級、頭の下に平座金、板厚10mm、めねじ(鋼)
- 結果: 通し穴10・ざぐりφ20(黒皮除去)。首下〜板裏11.6mm、目標はめあい12.0mm、必要長さ23.6mm → M8×25(はめあい実長13.4mm)
- 解釈: 六角ボルトのざぐりは座面を整えるだけなので深さを0として扱い、座金の厚みはそのまま首下〜板裏に加わる。φ20 は平座金の外径16mmより大きく、座金は問題なく載る。
ケース10: 六角ボルト+ナットで M12・板厚16
- 入力: 六角ボルト M12、頭側に平座金+ばね座金、板厚16mm、相手はナット、ナット側に平座金
- 結果: 通し穴13.5・ざぐりφ28(黒皮除去)。首下〜板裏21.5mm(板16+頭側の座金2.5と3.0)、そこにナット側の座金2.5・ナット高さ10.8・2P(3.5)を足して必要長さ38.3mm → M12×40(ナットからの突き出し5.2mm、約3.0山)
- 解釈: 板厚16mmに対してボルトは40mm要る。座金3枚とナットで長さの半分近くを占めるので、板厚だけを見て長さを見積もると大きく外れる。
ケース11: 厚い部材を M20 のナットで締める
- 入力: 六角ボルト M20、頭側に平座金、板厚150mm、相手はナット、ナット側に平座金+ばね座金
- 結果: 通し穴22・ざぐりφ43。首下〜板裏153.0mm、必要長さ184.1mm → M20×200(突き出し20.9mm、8.36山)
- 解釈: 呼び長さの列は長くなるほど刻みが粗く、180の次は200になる。必要長さ184.1mmに対して180では足りないので、突き出しが8山以上になる。外観や干渉が気になるなら、板厚側か座金の構成を見直す材料になる。
ケース12: 流通範囲の上限ちょうどと、その先(M6・鋼)
- 入力: 六角穴付きボルト M6、めねじ(鋼)で、板厚を57mmと70mmにする
- 結果(板厚57): 首下〜板裏50.5mm、必要長さ59.5mm → M6×60(はめあい実長9.5mm)
- 結果(板厚70): 首下〜板裏63.5mm、必要長さ72.5mm。M6の六角穴付きボルトで一般に流通する上限60mmを超えるので、推奨呼び長さは決まらない
- 解釈: 上限を超えても、穴とざぐりの寸法は出たままになる。全ねじボルト・寸切りボルトにするか、呼び径を上げるかを検討する合図だ。
仕組み — 寸法表を1本の積み上げ式につなぐ
候補にした3つのやり方
ざぐり寸法とボルト長さを決める方法は、大きく3つ考えられる。
- 寸法表を個別に引いて手で足す。 JIS B 1001、六角穴付きボルト用の参考表、座金とナットの寸法表をそれぞれ開き、電卓で足す。表の数字は正確だが、座金の厚みをざぐり深さに足すのか首下に足すのか、といった「表と表のつなぎ目」は人の頭に任される。
- 3D CADのライブラリ部品を置いて干渉を見る。 ボルト・座金・ナットのモデルを並べれば底突きも座金の乗り上げも目で分かる。ただし部品モデルを揃える手間があり、図面の構想段階で何通りも試すには重い。
- 寸法を1本の積み上げ式にして、表引きを自動化する。 首下から先端までの長さを、板・ざぐり・座金・めねじ(またはナット)の順に足していく。表と表のつなぎ目は式の中で固定されるので、引き忘れが起きない。
このツールは3を採った。扱う量はすべて表引きと足し算で、強度計算のような不確かさはない。間違いが起きるのは計算ではなく「どの表の、どの数字を、どこに足すか」なので、そこを式に閉じ込めるのがいちばん効く。
計算フロー
// 1. 通し穴(JIS B 1001 付表)
holeDia = 付表[呼び径][等級] // 1級・2級・3級
chamfer = 付表[呼び径].e
// 2. ざぐり
六角穴付き: cbDia = 参考表.D′
cbDepth = (H″ または H′) + 頭の下の座金厚
六角ボルト: cbDia = JIS B 1001 の D′
cbDepth = 0 // 黒皮がとれる程度
// 3. 首下〜板裏
stack = 板厚 − cbDepth + 頭の下の座金厚
// 4. 必要長さ
めねじ: required = stack + 目標はめあい // 鋼1.5d・鋳鉄2.0d・アルミ2.5d・直接入力
ナット: required = stack + ナット側座金厚 + ナット高さ m + 2P
// 5. 呼び長さ(5, 6, 8, 10, 12, 16, 20, 25 … 180, 200)
nominal = 流通範囲内で required 以上の最小値
※止まり穴: nominal − stack ≦ タップ深さ を満たすものに限る
ざぐり深さに座金の厚みを足し、首下〜板裏でまた座金の厚みを足しているのは、六角穴付きボルトでは座金もざぐりの中に沈む前提だからだ。この2つが打ち消し合うので、六角穴付きでは座金を入れても必要長さは変わらない(使用例のケース2)。六角ボルトはざぐり深さが0なので、座金の厚みがそのまま長さに乗る。
計算例: 既定の M6・板厚12・鋼のめねじ
- 通し穴: JIS B 1001 の2級で 6.6mm、面取り 0.4mm
- ざぐり: 参考表の D′ 11mm、H″ 6.5mm。座金なしなので深さは 6.5mm
- 首下〜板裏: 12 − 6.5 + 0 = 5.5mm
- 必要長さ: 目標はめあい 1.5 × 6 = 9.0mm を足して 14.5mm
- 呼び長さ: 列のうち 14.5 以上の最小は 16。M6 六角穴付きの流通範囲(10〜60mm)に入るので M6×16
- はめあい実長: 16 − 5.5 = 10.5mm
ナットの場合も流れは同じだ。使用例のケース10(M12)なら、首下〜板裏 21.5mm にナット側の座金 2.5mm とナット高さ 10.8mm を足すと 34.8mm で、ここまでがナットの外端になる。さらに 2P = 3.5mm を足した 38.3mm が必要長さで、呼び長さは40。突き出しは 40 − 34.8 = 5.2mm、ピッチ1.75で割って約3.0山になる。
実装で決めたこと
通し穴径は JIS B 1001 から出す。 六角穴付きボルト用の参考表にも穴径 d′ の欄があるが、M12 で14mm・M16 で18mm と、JIS B 1001 の2級(13.5mm・17.5mm)と食い違う。参考表の d′ は等級の区別も持たないので、穴径は等級を選べる JIS B 1001 に一本化し、参考表からはざぐり径と深さだけを使う。
はめあいの目安は幅の上限を採る。 「鋼1.0〜1.5d」の下限を採ると、M6 の鋼で6mmになる。短いほど危険側なので上限に倒し、強度で詰めたい人には直接入力の欄を用意した。
ナットからの突き出しは最低 2P。 JIS B 1176 にはボルト先端の不完全ねじ部の長さを u≦2P とする注がある。先端の不完全ねじ部がナットの中に残るとナットの全山に掛からないので、その長さぶんをナットの外に出す設計値として 2P を採った。
ばね座金は締め付けて平らになった厚さで数える。 一般用ばね座金の厚さ t(最小)を使う。締め付け前はねじれて厚く見えるが、締結後の長さを決めるのは平らになった状態だ。ナットの高さは六角ナット(スタイル1)の m の最大値を使い、長さが足りなくなる側に寄せている。
呼び長さの候補は流通範囲で絞る。 呼び長さの列には5mmから200mmまであるが、呼び径ごとに一般に流通する範囲が違う。六角穴付きボルトは JIS B 1176:2014 の表で太い階段線に囲まれた枠を、六角ボルトは JIS B 1180:2014 の範囲を上限・下限にしている。必要長さが上限を超えたときや、止まり穴で底突きしない長さが見つからないときは、エラーで結果を消さずに「長さ要確認」として扱い、穴とざぐりの寸法は出したままにする。図面の穴指示は長さが決まらなくても書けるからだ。
座ぐり寸法の早見表やCADの穴機能と何が違うのか
穴とざぐりの寸法だけなら、メーカーの技術資料やJISの付表でいつでも引ける。それだけでは足りない事情は冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおりなので、ここでは早見表と並べたときに本ツールが余分に受け持っていることを4つに絞って書く。
1. 呼び長さまで出す。 ざぐりの深さを差し引いた首下〜板裏の長さを出し、めねじならはめあい長さ、ナットなら座金とナットの高さと2山ぶんを足して必要長さを求め、JISの呼び長さ列から切り上げる。呼び径ごとに一般に流通する長さの範囲も持っているので、計算上の長さがその範囲を超えるときは、無理に長さを出さずに理由を返す。
2. 座金がざぐりに入るかを判定する。 寸法表には座金のことが書いていないので、入るかどうかを知るには座金の規格表を別に開いて外径を比べるしかない。本ツールは頭の下に座金を選ぶと、座金の外径とざぐり径を比べ、入らなければ必要なざぐり径を出す。どのサイズで引っかかるかは、実務の節と使用例に書いたとおりだ。
3. 止まり穴の底突きを見る。 タップ深さを入れると、ボルトの先端が有効ねじ部の底を越えない長さだけを候補に残す。条件を満たす市販の長さが無ければ呼び長さを空欄にして、タップを深くするか、ボルトを切って使うかを促す。早見表は相手側のめねじの深さまでは面倒を見てくれない。
4. 図面の穴指示をそのまま写せる。 六角穴付きボルトなら「◯キリ ◯深ザグリ深さ◯」、六角ボルトなら「◯キリ ◯ザグリ(黒皮除去)」の1行を組み立ててコピーできる。表から数字を拾って書き写すときの、行の読み違いや桁の取り違えがなくなる。断面図ではボルトを選んだ呼び長さで描くので、止まり穴の底やナットからの突き出しも目で確かめられる。
3D CADのファスナー機能を使える環境なら、似たことができるものもある。ただ、検図や打合せ、購買への長さの連絡のようにCADを開かない場面は多く、そこではブラウザだけで済むことに意味がある。
関連ツールとの分担も流れで並べておく。本ツールが受け持つのは「図面の段で穴・ざぐり・長さを決める」ところまでだ。めねじの下穴径と下穴深さはタップ下穴径計算ツール、はめあい長さを目安ではなく材料強度から決めたいときはねじ込み深さ・ねじ山強度計算、締め付けるトルクと軸力はボルト締付トルク計算、偏心荷重を受けるボルト群の分担荷重はボルトパターン荷重解析ツール、決まった呼び径と長さで六角ボルトの本数ぶんの重さを出すのはボルト重量・単重計算機、という分け方になる。
豆知識:「キリ」と「ザグリ」、それに呼び長さの飛び方
「キリ」は錐を揉む動作の名残
図面の「6.6キリ」のキリは、現行の製図規格 JIS B 0001:2019 の表8「穴の加工方法の簡略表示」に載っている書き方だ。表8は加工方法と簡略表示を対にしていて、きりもみ→キリ、鋳放し→イヌキ、プレス抜き→打ヌキ、リーマ仕上げ→リーマ、と並ぶ。穴の寸法は工具の呼び寸法または基準寸法を書き、その後ろに加工方法を続ける決まり(同規格 11.7 a)なので、「6.6キリ」は「6.6のきりでもんだ穴」と読める。
「きりもみ」は、錐(きり)を両手のひらで挟み、揉むように回して穴をあける動作の名前だ。日本では両手で揉む揉錐(もみきり)が発展し、これは世界的には珍しい部類に入るという(錐 (工具) - Wikipedia)。工具がドリルに替わっても、動作の名前だけが図面に残った格好だ。ちなみに 11.7 a が区別の例に挙げる「鋳抜き穴」は、JIS B 1001 のボルト穴径でいえば4級が主として想定している穴にあたる。
「ざぐり」は寸法補助記号の読み方でもある
ざぐりは漢字で「座繰り」「座刳り」と書かれることがあり、ボルトの頭や座金が座る面(座)を刳る、という字面になっている。JIS B 0001:2019 では、ざぐりと深ざぐりは表7「寸法補助記号」の一つで、呼び方は「ざぐり」「ふかざぐり」と決められている。同じ表には皿ざぐり(さらざぐり)と穴深さ(あなふかさ)も並ぶ。図面に文字で書かれた「深ザグリ」と、記号の読み方「ふかざぐり」は同じ言葉を指しているので、記号で描かれた図面を受け取っても読み替えは要らない。
呼び長さの列はなぜ飛び飛びなのか
本ツールが使う呼び長さの列(JIS B 1176・B 1180 の呼び長さ欄から200mmまで)は、5, 6, 8, 10, 12, 16, 20, 25, 30, 35 … 70, 80, 90 … 160, 180, 200 と並ぶ。12の次は16、70の次は80、160の次は180と、長くなるほど刻みが粗くなる。
規格本文が並びの由来を書いているわけではないので、ここから先は数字を並べてみた観察だ。工業製品の寸法を等比数列でそろえる標準数(ISO 3・JIS Z 8601)の R10 系列は 5, 6.3, 8, 10, 12.5, 16, 20, 25, 31.5, 40, 50, 63, 80, 100, 125, 160, 200 と続く(標準数 - Wikipedia)。これを丸めると 6.3→6、12.5→12、31.5→30、63→60、125→120 となり、すべて呼び長さの列に入っている。間を埋める 35・45・55・70・90・110・140・180 も、一段細かい R20 系列の 35.5・45・56・71・90・112・140・180 とほぼ重なる。65・130・150 のように当てはまらない値もあるが、骨格は標準数でできているように見える。
等比で刻むと、長さに対する刻みの割合がおおむねそろう。8mmのボルトで2mm違うのは大きな差だが、150mmのボルトで2mm違ってもほとんど効かない。その感覚を数列にした形だと思うと、列の飛び方に納得がいく。
Tips:図面と現物を手早く突き合わせるコツ
- 六角穴付きボルトの頭は「高さ=呼び径」で暗算する。 頭部高さ k が呼び径と同じなのは基礎の節で触れたとおりで、参考表のざぐり深さはこの k を挟んで上下に同じだけずれている。頭を沈める H″ は k より δ だけ深く、ほぼ面一の H′ は k より δ だけ浅い。δ は M3 0.3、M4・M5 0.4、M6 0.5、M8 0.6、M10 0.8、M12 1.0、M16〜M24 1.5mm。検図でざぐり深さを見たら、呼び径との差の符号で、沈めたいのか面一にしたいのかが一目で分かる。
- 六角ボルトの頭は M12 以上なら呼び径の5/8。 JIS B 1180 の頭部高さ k は M12 7.5、M16 10、M20 12.5、M24 15mm で、どれも呼び径×0.625 ちょうどになる。M6〜M10 はそれより少し高く、呼び径の0.64〜0.67倍ほど。突き出した頭が隣の部品に当たらないかを見るときの目安になる。
- 既設ボルトの長さは首下で測る。 呼び長さは頭の座面からねじ先までの長さで、頭は含まない。ノギスの外側ジョウで挟むときは、本尺に近い根元側で座面とねじ先を挟むほど誤差が小さい。座金は外してから測り、読んだ値は呼び長さ列のいちばん近い値に読み替える。
- 既設の止まり穴は、ボルトをねじ込んで使える深さを測る。 デプスバーで測れるのは下穴の底までで、タップの先端側は不完全ねじなので全部は使えない。長さの分かっているボルトを、板を挟まずに手で回るところまでねじ込み、頭の座面と部材表面のすき間を測れば、「呼び長さ − すき間」がボルトの入る深さになる。工具で締め込むと底でねじ山を傷めるので、手で止まったところでやめる。
ボルト長さ・座ぐり寸法のFAQ
皿ボルトや低頭ボルトの寸法が出せないのはなぜ?
本ツールが扱うのは六角穴付きボルト(JIS B 1176)と六角ボルト(JIS B 1180)の2種類だけだ。皿ボルト(JIS B 1194)の皿もみ寸法は、執筆時点で規格本文を確認できていない。一次資料に当たれないまま寸法を出すと、図面にそのまま写されたときに取り返しがつかないので、あえて出していない。低頭の六角穴付きボルトも同じく未対応だ。どちらも、使う品番のメーカーカタログの寸法で穴と長さを決めてほしい。
M14 のような中間の呼び径が選べないのはなぜ?
JIS B 1176 は、M14 のように括弧を付けた呼びを「なるべく用いない」としている。設計の段で新しく選ぶなら括弧の付かない呼び径から選ぶのが筋なので、選択肢は M3〜M24 の括弧の付かない10サイズに絞った。加えて六角ボルトについては、括弧付きの呼びで一般に流通する長さの範囲を確認できておらず、呼び長さが流通範囲に入るかの判定ができない。既設品の交換などでどうしても M14 を使うときは、メーカーのカタログで穴と長さを確かめてほしい。
15mmや18mmのような中間の長さも売っているが、どう選べばいい?
本ツールは JIS の呼び長さ列のうち、その呼び径で一般に流通する範囲に入るものだけを候補にしている。メーカーによっては列に無い中間の長さもあるが、それは選ばない。中間の長さを使いたいときは、結果の「必要長さ」(計算値)を見て、それ以上で手に入るいちばん短いものを選べばよい。めねじなら、表示されたはめあい実長に「選んだ長さ − 推奨呼び長さ」を足せば、選んだ長さでの実長になる。止まり穴では、その実長がタップ深さを超えないかだけ自分で確かめてほしい。
はめあい長さの目安を社内基準や強度計算の値に変えたい
めねじ側の材料で「はめあい長さを直接入力」を選ぶと、0.5〜200mmの範囲で好きな長さを入れられる。材料ごとの既定値は目安の幅の上限で、強度計算から出した値ではない(上限を採った理由は上の「仕組み」の節に書いた)。荷重が大きい締結や、ヘリサートを使うかどうかまで決めたいときは、ねじ込み深さを材料強度から逆算するツールで必要な長さを出し、その値を直接入力に入れるとよい。穴・ざぐり・呼び長さが同じ画面でそろう。
六角ボルトのざぐり深さが0と出るが、実際に深めに削る場合は?
六角ボルト用のざぐりは座面の黒皮を取る程度の浅い加工なので、長さの計算では深さ0として扱っている(穴指示も「ザグリ(黒皮除去)」と書く)。実際に深めに削ると、その分だけボルトは奥へ入る。ナット締めなら突き出しが増えるだけで済むが、止まり穴では底までの余裕が削った量だけ減る。深く削る指示を出すなら、タップ深さにその余裕があるかを確かめるか、六角穴付きボルトに切り替えて、ざぐり深さを数値で扱うほうが安全だ。
入力した寸法や条件はどこかに送信される?
すべての計算はブラウザの中で完結し、入力した板厚・タップ深さ・選んだ条件はサーバーに送られない。穴指示や結果のコピーも、使っている端末のクリップボードに入るだけだ。客先の図面を見ながら社外秘の寸法を入れても外には出ないので、検図のついでに気軽に使ってほしい。
まとめ
ボルト穴・座ぐり寸法とボルト長さの選定ツールは、通し穴径・ざぐり寸法・呼び長さを図面の段で一度に決めるための道具だ。座金の入りと止まり穴の底突きを確かめ、穴指示を1行コピーしたら、続きはそれぞれのツールに渡してほしい。めねじの下穴はタップ下穴径計算ツール、はめあい長さを強度で詰めるならねじ込み深さ・ねじ山強度計算、締め付けはボルト締付トルク計算、ボルト群の荷重分担はボルトパターン荷重解析ツール、六角ボルトの重さの見積もりはボルト重量・単重計算機が受け持つ。
欲しい呼び径やボルトの種類、計算で気になる点があれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。JIS の参考表を並べたら、並形の平座金が六角穴付きボルトのざぐりに1サイズも入らないと分かった。部品表に座金を載せたまま図面を出していた身として、その判定を真っ先に入れた
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