M8×30 を 500本、その段ボールは持てるか?
「M8×30 を 500本、明日までに送ってください」。発注書を受け取って真っ先に頭をよぎるのは強度でも値段でもなく、段ボール一つに収まるのか、宅配便で送れるのか、社内便の台車で運べるのかという物理的な重さ。M8×30 鋼ボルト 500本は約 9kg。100サイズの段ボールで運べる重さだが、これがM12×60 1000本なら 70kg になり、2人作業or台車案件になる。
ボルト1本の単重はJISの単重表に載っている。ただし紙のカタログを引っぱり出して、サイズ別の表を見て、本数を電卓で掛けて、材質補正をしてSUSなら1.01倍、アルミなら0.34倍。発注の度にこれをやっていると、本数のゼロを一つ見落とした瞬間に運送便がパンクする。サイズと本数と材質を入力したら総重量と梱包目安が一発で出る — それだけのツールが意外と無かったので作った。M3〜M30 の並目六角ボルト、鋼・SUS304・SUS316・真鍮・アルミ・チタンの6材質、誤差±10% の概算値。発注書の隅に「総重量 2.7kg」と書ければ、物流担当者は段違いに楽になる。
なぜ作ったのか
きっかけは、海外向けインボイスの NW欄(正味重量)を書く作業だった。輸出するボルトは数百〜数千本単位で、サイズもM4からM20までバラバラ。メーカーカタログPDFを開いて、サイズ別の単重表を見て、本数を掛けて、それを全アイテム分やって、最後に合算する。慣れていても1時間はかかる。途中で電話が入って計算がズレて、最初からやり直したことも何度もある。
ネットで「ボルト 単重」「M10 重量」と検索すると、メーカー各社の単重表がヒットする。これはこれで便利だが、表だけなのだ。「単重」が g/本 で書かれていて、本数を入れる欄がない。材質補正もない。鋼の表は鋼の表、SUSはSUSの表で分かれていて、互いに参照しづらい。さらに M22 や M27 のような中間サイズは載っていない表も多い。
工事現場や工場の購買担当者にも同じ不満があった。物流から「総重量を発注書に書いてくれ」と依頼されても、結局Excel関数で組むか手計算するしかない。単重×本数×材質補正を1画面で完結させる、それだけで現場の手間は劇的に減る。
加えて、ボルト単重を計算するロジック自体はJIS B 1180:2014 の寸法表と密度があれば中学校レベルの幾何計算で出る。頭部を正六角柱、軸部を円柱と近似するだけ。複雑な強度計算とは別物で、誰でも検算できる透明なアルゴリズム。それなら誰かが Web ツール化すべきで、誰もやっていないなら自分で作る — そんな動機で着手した。実装してみると JIS の寸法をハードコードするだけで、6材質×15サイズ×任意長さの全組合せに対応できた。
六角ボルトの重量は「頭」と「軸」の合計で決まる
ボルト重量 計算の基本構造
ボルトの重量は単純な足し算で求まる。頭部質量 + 軸部質量 = 1本の単重。それに本数を掛ければ総重量。学問的に難しい話は一切ない。
たとえばM8×30 の鋼ボルトを例に取ろう。頭部は二面幅 s=13mm の正六角柱で、高さ k=5.3mm。軸部は呼び径 d=8mm の円柱で、長さ L=30mm。それぞれの体積に鋼の密度 7.85 g/cm³ を掛ければ質量が出る。実際に計算すると頭部は 6.089g、軸部は 11.837g、合計で 17.927g。M8×30 のボルト1本は約 18g、つまり卵半分くらいの重さ。
JIS B 1180 と公称寸法
呼び径・二面幅・頭高さの値は規格で決まっている。日本では JIS B 1180:2014 「六角ボルト」、国際的には ISO 4014(並目ねじ用)と ISO 4017(全ねじ用)が同等規格。詳しくは JIS B 1180 - 日本産業標準調査会 を参照してほしい。
具体的な寸法表の一部を抜粋する(並目)。
| 呼び径 | d (mm) | s 二面幅 (mm) | k 頭高さ (mm) |
|---|---|---|---|
| M3 | 3 | 5.5 | 2.0 |
| M6 | 6 | 10 | 4.0 |
| M8 | 8 | 13 | 5.3 |
| M10 | 10 | 16 | 6.4 |
| M12 | 12 | 18 | 7.5 |
| M16 | 16 | 24 | 10.0 |
| M20 | 20 | 30 | 12.5 |
| M24 | 24 | 36 | 15.0 |
| M30 | 30 | 46 | 18.7 |
この表は規格で固定されているので、メーカー各社のカタログ単重値もほぼ同じになる。違いが出るのは主に面取りや不完全ねじ部といった細部の処理で、これが±10% の誤差要因になる。
軸部と頭部の体積式
円柱と正六角柱の体積は中学校で習う。
軸部(円柱)の体積は V_shaft = (π/4) · d² · L。鋼の密度 ρ = 7.85 g/cm³ を掛けると、軸部1mmあたりの質量は (π/4) · d² · 7.85e-3 = shaftPerMm g/mm。M8 なら shaftPerMm = 0.39458 g/mm、つまり L=30mm のとき 0.39458 × 30 = 11.837 g。
頭部(正六角柱)の体積は V_head = (√3/2) · s² · k。これは六角形の面積 (3√3/2) · (s/2)² ではなく、二面幅 s で表現した式として整理した形になっている。M8 なら (√3/2) · 13² · 5.3 · 7.85e-3 = 6.089 g。
合計式は次のとおり。
unitMassG = (√3/2)·s²·k·(ρ/1000) + (π/4)·d²·L·(ρ/1000)
totalMassG = unitMassG × quantity
材質による密度補正
ボルトは鋼が圧倒的シェアだが、SUS(ステンレス)・真鍮・アルミ・チタンも実用上必要になる。本ツールでは鋼 7.85 g/cm³ を基準に、各材質の密度比で補正する。
| 材質 | 密度 (g/cm³) | 鋼比 |
|---|---|---|
| 鋼(炭素鋼) | 7.85 | 1.000 |
| SUS304 | 7.93 | 1.010 |
| SUS316 | 7.98 | 1.017 |
| 真鍮 | 8.50 | 1.083 |
| アルミ(A2017等) | 2.70 | 0.344 |
| チタン(Ti-6Al-4V等) | 4.50 | 0.573 |
SUS304 は鋼とほぼ同じ(1%増し)、真鍮は約8%重い、アルミは3分の1、チタンは半分強。「ステンレスは重そう」というイメージは実は誤解で、密度差は1〜2% しかない。一方アルミは劇的に軽く、輸送コストやハンドリングで大きな違いを生む。
1g の誤算が運送便を止める
物流上限と分割梱包
日本郵便・ヤマト・佐川いずれも、宅配便1個あたりの重量上限はおおむね 25〜30kg。これを超えると個建てが効かず、複数口に分けるか、混載便・チャーター便を手配することになる。**「30kg を 1kg 超えただけで送料が倍になる」**ことは現場では珍しくない。
M12×60 鋼ボルトを発注する場合を考える。単重は約 70g なので、500本で 35kg。これは宅配単独便では送れず、2口分割か発泡梱包の調整が必要になる。発注段階で総重量が出ていれば「500本だと 35kg なので、400本+100本の2口に分けて送ってください」と物流に依頼できる。ツールが無いと現場での開梱時に初めて気づいて手戻り。
棚耐荷重と組立ライン
工場の中間棚は通常 50〜100kg/段が目安。M16×80 を 200本ストックすると約 32kg、これは大した話ではない。だが M20×100 を 500本まとめ買いすると 170kg を超え、棚1段では収まらない。棚の段数や強度を発注前に検討する必要が出てくる。
組立ラインでは作業者が手で運ぶ部材重量の上限が労働安全衛生法で定められている(成人男性で連続作業は約 20kg、間欠で 25kg、女性は約 15kg)。詳細は 厚生労働省 - 職場における腰痛予防対策指針 を参照。
構造設計の自重見積もり
大型機械や架構を設計する際、ボルト類の合計重量を自重として加算するケースがある。たとえば 1tクラスの架台で M16・M20 ボルトを 300本使うと、それだけで 15〜30kg。製品の重心位置や基礎の支持反力に効いてくる。設計初期に「ボルト類の自重 ≒ ○○kg」とアタリを付けておくだけで、後工程の手戻りが減る。
輸出インボイス NW欄
海外輸出する機械装置の場合、インボイス(送り状)には GW(総重量)と NW(正味重量)を記入する。NW は梱包材を除いた製品自体の重さで、構成部品のサブトータルを積み上げる。「ボルト類 一式」と書くだけでは通関で止まるケースがあり、サイズごとに本数×単重を計算したエビデンスを求められることがある。本ツールはそのエビデンス作成を 1分で終わらせる用途にも使える。
こんな場面で役に立つ
発注・棚卸し:購買担当が見積依頼書を作るとき、サイズ×本数×総重量を一覧化できる。物流が「総重量を書いてくれ」と要求してくる現場で特に強い。
物流伝票作成:宅配便の伝票やパレット明細に重量を記入する作業。電卓を叩く時間を 0 にする。
海外輸出:インボイス NW欄、Packing List のアイテム別重量計算。サイズ単位で材質が違うケースでも、本ツールで一つずつ計算しメモすればすぐ集計できる。
設計段階の自重見積もり:装置や架台の構造計算で、ボルト類の合計重量をアタリで入れたいときに便利。M16 を 100本くらい使う設計なら、それだけで 4kg 弱になる感覚が持てる。
DIY・個人購入:個人でM6 を 500本まとめ買いするときの段ボール選びや棚補強の検討にも使える。鋼でも 1.5kg 程度なので余裕、というアタリが付く。
3ステップで使う
ステップ1:サイズを選ぶ。M3〜M30 のセグメントボタンから呼び径を選ぶだけ。並目ねじを前提にしている。
ステップ2:全長と本数を入力。全長 L は 5〜500mm の範囲。本数は 1〜100,000本。たとえば M8×30 を 500本なら、L=30、本数=500 と入れる。
ステップ3:材質を選ぶ。鋼・SUS304・SUS316・真鍮・アルミ・チタンの 6 つから選択。
これだけで単重(g)、総重量(kg)、頭部・軸部の内訳、100本/1000本あたりの重量、運搬・梱包目安が表示される。結果はワンタップでクリップボードにコピーできるので、そのまま発注書やインボイスに貼り付けられる。
6ケースで検証する
ケース1:M8×30 鋼を1本 — 卵半分の重さ
汎用サイズの基準点として M8×30 鋼ボルト 1本を計算する。
入力:サイズ=M8、全長=30mm、本数=1、材質=鋼。
結果:頭部 6.089g + 軸部 11.837g = 単重 17.927g、総重量 0.018kg。封筒・レターパックOK。
解釈:M8×30 のボルト1本は約 18g、Mサイズ卵の約3分の1。100本詰めても 1.8kg なのでネコポスや小型宅配でいける。M8 は機械設計で最も使用頻度が高いサイズなので、この値は感覚として覚えておきたい。
ケース2:M10×50 鋼を100本 — 小箱で送れる
100本単位の発注を想定。
入力:サイズ=M10、全長=50mm、本数=100、材質=鋼。
結果:頭部 11.138g + 軸部 30.827g = 単重 41.965g、総重量 4.197kg。小箱・宅配コンパクトサイズ。
解釈:M10×50 は約 42g/本、100本で 4.2kg。ヤマトの宅配コンパクト(2kg まで)では収まらず、60サイズ通常宅配便になる。3桁発注時に「4kg 強」と覚えておくと棚の上段にも置きやすい。
ケース3:M6×20 SUS304 を50本 — ステンレス補正の検証
ステンレス補正の正しさを確認するケース。
入力:サイズ=M6、全長=20mm、本数=50、材質=SUS304。
結果:頭部 2.747g + 軸部 4.484g = 単重 7.231g、総重量 0.362kg。封筒・レターパックOK。
解釈:M6×20 SUS304 は約 7.2g/本。鋼比 1.010 倍で、見た目には鋼とほぼ同じ重さ。50本でも 360g 程度なので、A4 封筒で発送可能。SUS は耐食用途で頻出するため、感覚としてM6 SUS で「g単位」の重さと押さえておきたい。
ケース4:M12×60 鋼を1000本 — 2人作業案件
大量発注での重さ感覚を掴むケース。
入力:サイズ=M12、全長=60mm、本数=1000、材質=鋼。
結果:頭部 16.520g + 軸部 53.269g = 単重 69.789g、総重量 69.789kg。2人作業or台車・複数梱包推奨。
解釈:M12×60 は約 70g/本、1000本で 70kg。これは宅配便単独では送れず、3〜4口分割か混載便手配が必須。発注時点で「この本数は分割梱包になります」と物流と握っておかないと現場が混乱する。
ケース5:M20×80 鋼を10本 — 大径ボルトの密度
太いボルトの感覚値。
入力:サイズ=M20、全長=80mm、本数=10、材質=鋼。
結果:頭部 76.481g + 軸部 197.292g = 単重 273.773g、総重量 2.738kg。小箱・宅配コンパクト。
解釈:M20×80 は約 274g/本、10本で 2.7kg。1本だけでもズシリと重い手応えになる。10本程度なら宅配コンパクトで送れるが、これが100本になると 27kg で宅配上限ギリギリ。大径ボルトは「本数×0.3kg」がアタリとして暗算に使える。
ケース6:M3×10 アルミを1000本 — 軽合金の威力
アルミ補正の検証ケース。
入力:サイズ=M3、全長=10mm、本数=1000、材質=アルミ。
結果:頭部 0.141g + 軸部 0.191g = 単重 0.332g、総重量 0.332kg。封筒・レターパックOK。
解釈:M3×10 アルミは約 0.33g/本、鋼比 0.344 倍。1000本でも 330g、つまり通常の封筒に収まる。電子機器や航空・ドローン用途で**「同じ本数なら鋼の3分の1」**になることが、ここから直感的に分かる。アルミの軽さが機材重量に効く理由でもある。
仕組み・アルゴリズム
候補手法の比較
ボルト単重を求める方法は3つの選択肢があった。
手法A:メーカーカタログ単重値をハードコード。最も正確だが、メーカー間で微小に値が違い、サイズ×材質×長さの全組合せを表にすると 1万行を超える。更新もメーカー改訂のたびに必要。却下。
手法B:JIS規格寸法から幾何計算する(採用)。呼び径・二面幅・頭高さの 3 つは JIS B 1180:2014 で固定されているため、寸法表(15行)と材質密度(6行)を持つだけで全組合せに対応できる。誤差は不完全ねじ部・面取りで±10% だが、発注時の概算用途では十分。透明性が高く、誰でも検算できる。
手法C:3DCAD モデルから自動算出。理想だが Web ツールには重すぎる。却下。
手法Bを選んだ最大の理由は透明性で、計算根拠を全部開示できることだ。「カタログ値と違うじゃないか」という指摘に対して「JIS寸法と理論密度で出した近似値」と説明可能。
実装詳細
JIS B 1180:2014 寸法表をハードコードし、鋼基準の頭部質量と軸部単位長さ質量を事前計算して持つ。
const BOLT_SIZES = [
{ id: 'M8', diameter: 8, s: 13.0, k: 5.3,
shaftPerMm: 0.39458, // = (π/4)·d²·7.85e-3
headMassSteel: 6.0892 }, // = (√3/2)·s²·k·7.85e-3
// ... M3〜M30 まで 15行
];
const MATERIALS = [
{ id: 'steel', density: 7.85 },
{ id: 'sus304', density: 7.93 },
{ id: 'aluminum', density: 2.70 },
// ... 6行
];
function calculate(boltSize, lengthMm, quantity, material) {
const size = BOLT_SIZES.find(s => s.id === boltSize);
const mat = MATERIALS.find(m => m.id === material);
if (!size || !mat) return null;
if (lengthMm < 5 || lengthMm > 500) return null;
if (quantity < 1) return null;
const densityRatio = mat.density / 7.85;
const headMassG = size.headMassSteel * densityRatio;
const shaftMassG = size.shaftPerMm * lengthMm * densityRatio;
const unitMassG = headMassG + shaftMassG;
const totalMassG = unitMassG * quantity;
return { unitMassG, totalMassG, totalMassKg: totalMassG / 1000,
headMassG, shaftMassG };
}
計算例:M10×50 鋼の手計算
ステップ1:M10 の寸法 — d=10mm、s=16mm、k=6.4mm。
ステップ2:頭部質量 headMassG = (√3/2) · 16² · 6.4 · 7.85e-3 = 0.866 · 256 · 6.4 · 0.00785 ≈ 11.138 g。
ステップ3:軸部質量 shaftMassG = (π/4) · 10² · 50 · 7.85e-3 = 0.7854 · 100 · 50 · 0.00785 ≈ 30.827 g。
ステップ4:単重 unitMassG = 11.138 + 30.827 = 41.965 g。
ステップ5:100本で totalMassG = 41.965 × 100 = 4196.5 g = 4.197 kg。梱包バンド表から「小箱・宅配コンパクト」に該当。
誤差±10%の理由
実物との誤差はおおむね±10% で、原因は以下のとおり。
- 不完全ねじ部のテーパ:軸の根元と先端でねじ山が立ち上がる過渡領域があり、ここは円柱より細い。本ツールは円柱近似なのでわずかに過大評価する
- 頭の面取り:六角頭の角は微小に削れているため、正六角柱より体積が小さい。10% 弱の過大評価
- 座面のテーパ:頭部下面に座金が当たる部分にテーパが切られていて、その分も削れている
- メーカー間差:JIS寸法は公差範囲があり、メーカー実物は中央値〜公差上限に分布
これらは輸送・棚耐荷重判定では±10% 誤差で十分実用。精密な質量管理が必要な場合のみメーカー実測値を使ってほしい。
他ツールとの違い
ボルトの重さを知る手段は世の中にいくつかあるが、どれも使う場面で痒い所に手が届かない。
メーカーの紙カタログ単重表は寸法精度こそ高いが、サイズと長さの交点を指でたどって読むだけ。本数を掛けるのは自分の電卓任せだし、SUSや真鍮の数値は別ページに飛ばないと出てこない。500本発注のときに「鋼換算で何kg? SUS換算で何kg?」を切り替えるのが面倒だ。
汎用の重量計算機・密度計算サイトは「体積×密度」の素直なツールが多く、ボルトの幾何形状(六角頭+円柱軸)を自分で組み立てる必要がある。頭部体積に (√3/2)·s²·k を使うこと、軸長は L のまま使えること、座面のテーパや不完全ねじ部は無視してよいことを把握していないと、桁を間違える。
ExcelやGoogle Sheetsの自作シートは一度作れば便利だが、JIS B 1180 の二面幅・頭高さを15サイズぶん打ち込む手間がかかる。チームで共有しても材質追加のメンテで壊れがちだ。
このツールは「JIS B 1180:2014 の寸法を事前に焼き込み」「本数まで一気に掛ける」「材質補正をワンタップで切り替え」「総重量に応じた梱包バンドをStatusCardで返す」という4点で、上記の代替手段すべてを1つにまとめている。発注書の備考欄に総重量を書く前の最後の確認、現場での電話越しの即答、海外発送のインボイスNW欄に入れる数字——どれも紙の単重表より速い。
豆知識・読み物
JIS B 1180:2014 改訂の歴史
JIS B 1180 はISO 4014/4017(六角ボルト・全ねじ六角ボルト)との整合化を進めてきた規格で、2014年改訂では旧JISのままだった一部寸法がISO側に揃えられた。代表的なのがM10の二面幅だ。
旧JIS B 1180(1985年版以前)では M10 の二面幅は 17mm だったが、ISO 4014:1999 が 16mm を採用したため、JIS B 1180:2004 で16mmへ統一された。さらに M12 はISOの18mmに合わせ(旧JIS は19mm)、M14 は21mm(旧JIS 22mm)に変わった。
このため、古い設備や2000年以前の図面の流用品は、現行JISのスパナだとサイズが合わない場合がある。在庫の古いボルトを再発注するときは、二面幅も併記して購買すると現場が混乱しない。
ISO 4014 vs ISO 4017 vs JIS B 1180
ISO 4014 は「半ねじ六角ボルト」、ISO 4017 は「全ねじ六角ボルト」を指す。JIS B 1180:2014 はこの両方をカバーし、附属書で ISO Aクラス(精度高)/ Bクラス(汎用) の区別を残している。本ツールは普通精度のJIS B 1180を基準にしており、Aクラスの精密ボルトでも単重としては有意な差は出ない(±0.5%程度)ので同じ値で扱える。
「六角頭の体積式」が (√3/2)·s²·k になる理由
正六角形の面積は「二面幅 s」を一辺とした正三角形6個分ではなく、外接円半径 ではなく 対辺距離 s で定義される。1辺の長さは s/√3 で、面積は (√3/2)·s² になる。これに頭高さ k を掛けたものが正六角柱の体積。実物のボルト頭は上面に座面取りが入るため、計算値より実重は2-3%軽くなるのが普通だ。
Tips(実務で役立つ小ネタ)
- 材質別の重量比を覚えておく:鋼=1.000 / SUS304=1.010 / SUS316=1.017 / 真鍮=1.083 / アルミ=0.344 / チタン=0.573。「鋼で計算してSUSなら+1%、アルミなら÷3」と暗算できると現場で速い。
- 発注書には必ず総重量を載せる:購買→倉庫→運送のリレーで、ピッキング時の台車選定や送り状の重量欄に効く。M16以上を1000本オーダーするときは特に重要で、伝票記載がないと急ぎ便で個建てが分割されてコストが跳ね上がる。
- 「29.9kg」を狙う発注ロット:宅配便の上限は30kgが一般的(佐川急便フリーサイズ、ヤマトの場合は25kg)。29.9kgで止めれば1個口で送れるが、ギリギリは梱包の重さも含めて超える。実用上は28kg目安でロットを区切ると安全。
- 棚耐荷重の事前確認:M20×80鋼を1000本=約273kg。スチール棚の汎用品(耐荷重100kg/段)なら3段に分けないと棚板が変形する。本ツールで先に総重量を見てから発注ロットを決める癖をつけたい。
- 発注単位の感覚:本ツールは「100本あたり」「1000本あたり」を常に表示している。M8×30 鋼の100本は1.79kg、これはコンビニのペットボトル飲料1本分くらいの感覚。在庫棚を見たときの直感を養うのにも使える。
FAQ
メーカーカタログの単重表と微妙にズレるのはなぜ?
JIS B 1180 の公称寸法(呼び径 d、二面幅 s、頭高さ k)から幾何計算しているため、実物の不完全ねじ部・座面取り・頭部の角Rは無視している。具体的には(1) 軸部の谷径と呼び径の差ぶんわずかに軽い、(2) 頭部の上面・下面の面取りで2-3%軽い、(3) ねじ部の溝で1-2%軽い。トータルで実重はカタログ値より-3〜-7%程度になることが多い。精密な見積もりが必要な場合はメーカー単重表を併用してほしい(運送便の見積もりレベルなら本ツールの値で十分余裕がある)。
細目ねじ(M8×1.0 等)には対応していますか?
現バージョンは並目ねじ(JIS B 1180 main series)のみ対応している。細目ねじは谷径が大きく(=軸部体積が並目より若干大きく)なるが、単重への影響は1%未満で、本ツールの±10%誤差レンジに収まる。細目ねじでも並目の値をそのまま使って実用上問題ない。将来的に細目専用モードを追加検討中。
ナットや座金の重量も含めて計算したい
現バージョンはボルト単体のみ対応している。ナット(JIS B 1181)・平座金(JIS B 1256)・ばね座金(JIS B 1251)は別規格で寸法が独立しているため、合算計算は未実装。経験則として「ナットは同サイズボルト頭の約1.2倍質量、平座金は5-10%、ばね座金は3-5%」と覚えておくと概算できる。例:M8ボルト17.9g + ナット7.3g + 平座2.0g + ばね座0.8g ≒ 28.0g/組。
ステンレスとアルミでは強度が違いますよね?重量だけで選んでいい?
ダメ。本ツールは重量だけを返す。強度区分(鋼の4.8/8.8/10.9、SUSのA2-50/A2-70等)は引張・せん断・ねじ山破壊で大きく違う。アルミは鋼の約1/3の重量だが、引張強さも約1/3〜1/2。軽量化目的でアルミに置き換えると締結力が足りずすっぽ抜けるケースがある。重量で材質を絞り込んだら、必ず /bolt-failure(ボルト強度・破断モード診断)で安全率を確認してほしい。
運送便の30kg上限の根拠は?
宅配便各社の現行規定では、ヤマト運輸(ヤマト便/宅急便)が 25kg、佐川急便(飛脚宅配便)が 30kg、日本郵便(ゆうパック)が 25kg が1個口の上限。30kg超えは個建て輸送・チャーター便になり料金が跳ね上がる。本ツールでは保守的に「20-30kg=要分割検討」「30kg超=2人作業or台車・複数梱包推奨」とバンド設定している。佐川の30kg基準を上限とした実務的な目安だ。
計算結果のデータは保存されますか?
入力値も計算結果もすべてブラウザ内のみで処理しており、サーバーには送信していない。ページを閉じればすべて消える。社内の発注情報を扱う場面でも安心して使ってほしい。
まとめ
ボルト1本の重量はわずか数グラム、されど1000本オーダーでは何十kg。発注書のNW欄、運送便の上限判定、棚耐荷重の事前確認、すべてに効く数字だ。JIS B 1180 の寸法ベースで「単重 × 本数 × 材質補正」を一発で出せれば、紙のカタログを探す時間も電卓を叩く時間もゼロになる。
ボルトを選ぶ次のステップとして、強度面の確認には /bolt-failure(ボルト強度・破断モード診断)が便利だ。引張・せん断・ねじ山破壊の3モードで安全率を返してくれる。鋼材そのものの重量計算には /section-weight(鋼材断面のコンシェルジュ)、梁の自重を含めた応力・たわみ評価には /beam-strength(梁の安全審判員)も合わせて使ってみてほしい。
疑問・要望があればお問い合わせから気軽に連絡を。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。海外輸出のインボイス NW欄でM4からM20までの単重を電卓で叩いていた当時、1時間の手計算を1分に縮めるためだけに作った。本数のゼロを見落とした瞬間に運送便がパンクするので、桁数だけは慎重に確認してほしい。
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