機械設計公開 2026-04-01更新 2026-09-27

揚重・吊り荷計算まとめ|吊り角度・ワイヤー選定・吊り天秤・接地圧

吊り荷が落ちてからでは遅い——揚重計画の全体像

建設現場や工場で重量物を吊り上げる作業は、段取りを間違えれば一瞬で重大事故になる。ワイヤーが切れる、クレーンが転倒する、吊り金具が破断する——どれも「計算を省いた」「経験だけで判断した」ことが原因だ。

揚重計画で押さえるべき計算は大きく5つ。クレーン能力の確認・吊り角度と張力の関係・ワイヤーロープの安全荷重・吊り金具の強度・荷の重心と転倒角度だ。どれか1つでも見落とすと、現場で「吊れない」「危ない」「やり直し」が発生する。

この記事では揚重計画の全体像を体系的に整理し、各計算の勘どころと無料ツールへのリンクをまとめた。玉掛け作業者・現場監督・設計者が「揚重周りの検討、全部やったか?」とセルフチェックできる構成にしている。

なぜこの記事を書いたのか

揚重・吊り荷の計算情報はネット上に散在しているが、断片的なのが問題だ。「ワイヤーロープ 安全荷重」で検索すればロープの話だけ、「クレーン 揚重計画」で調べればクレーン選定の話だけ。5つの計算領域を横断して「自分は何を見落としているか」を確認できるページがなかった。

実務で怖いのは、計算項目同士の依存関係を見落とすこと。ワイヤーロープの安全荷重はOKだったが、吊り角度を考慮した張力増分を見ていなかった。クレーン能力は足りていたが、吊り金具の溶接部がボトルネックだった——こういう事故は、計算を個別にやっているから起きる。

この記事は、揚重計画で必要な計算を漏れなく一覧化し、依存関係を明示した上で、それぞれの計算を手軽に回せるツールと紐づけた。現場に出る前のチェックリストとして使ってほしい。

揚重計画の全体像|7つの計算領域

クレーン 揚重計画 とは

揚重計画とは、重量物をクレーンで吊り上げる際に必要な機材・手順・安全対策を事前に決めること。労働安全衛生規則第66条の2では、一定重量以上の揚重作業に対して作業計画の策定が義務付けられている。

計算すべき7領域の全体像は以下のとおり。

#計算領域主な検討内容対応ツール
1クレーン能力総吊荷重・作業半径・揚程から必要定格荷重を逆算クレーン揚重計画チェッカー
2吊り角度・張力吊り角度による張力倍率と危険角度の判定ワイヤーロープ安全荷重計算
3ワイヤーロープロープ径・種別・吊り本数から安全荷重を算出ワイヤーロープ安全荷重計算
4吊り金具引張・せん断・支圧・溶接部の安全率を一括判定吊り金具設計シミュレーター/溶接強度計算シミュレーター
5重心・転倒合成重心位置と転倒限界角度を算出重心計算&転倒角度計算
6吊り天秤・スプレッダー天秤自体の曲げ・せん断・座屈・たわみを検定吊り天秤・リフティングビーム強度計算
7地盤・アウトリガーアウトリガー反力と敷鉄板の接地圧を許容地耐力と照合敷鉄板・アウトリガー接地圧計算

計算の順序と依存関係

これらの計算は独立していない。正しい順序で進めないと、手戻りが発生する。

荷の重量確定 ──→ ①重心計算(吊り点の配置決定)
                  ↓
              ②吊り角度・張力(吊り点間距離→角度→張力倍率)
                  ↓
              ③ワイヤーロープ選定(張力を受けるロープ径決定)
                  ↓
              ④吊り金具設計(ロープ張力が作用する金具の強度確認)
                  ↓
              ⑤クレーン能力確認(総吊荷重=荷+玉掛器具+フック重量)
                  ↓
              ⑥アウトリガー反力 → 敷鉄板サイズ → 接地圧の照合

特に注意すべき依存関係:

  • 吊り角度(②)が大きいほど → ワイヤー張力が増大 → ③のロープ径が太くなる → 玉掛器具重量が増える → ⑤のクレーン必要能力が上がる
  • 重心位置(①)が偏っていると → 吊り点配置が非対称 → ②の各ロープ張力がバラつく
  • 吊り金具(④)の設計は → ②の張力と③のロープ径(シャックルサイズ)の両方に依存
  • 吊り角度が取れないとき → 天秤(スプレッダービーム)を入れる → 天秤の自重が総吊荷重に乗り、⑤のクレーン能力に跳ね返る
  • クレーンの能力が足りているのに → 地盤が反力を受けきれなければ機体が沈下・転倒する。⑤の次に地盤側の確認が要る

だから「ワイヤーだけ計算した」「クレーンだけ確認した」では不十分。領域をセットで回す習慣が、安全な揚重作業の基盤になる。

揚重計算をサボると何が起きるか

吊り角度 張力 の見落としが最も多い

揚重事故の原因で非常に多いのが、吊り角度と張力の関係を軽視すること。吊り角度が60°になると、各ワイヤーにかかる張力は荷重の1.155倍になる。90°では1.414倍、120°では2.0倍だ。

つまり、1トンの荷を吊り角度120°で吊ると、各ワイヤーには2トンの張力がかかる。「1トンの荷だから1トン用のワイヤーでいい」という判断が、どれほど危険かがわかるだろう。

クレーン事故の統計

厚生労働省の労働災害統計によると、クレーン等による死亡事故は毎年発生している。主な原因は:

  • 過負荷:定格荷重を超えた吊り上げ(クレーン能力の計算不足)
  • 玉掛け不良:ワイヤーの選定ミス、吊り角度の無視
  • 転倒:地盤の支持力不足、作業半径の超過
  • 吊り金具の破損:溶接部の強度不足、繰返し使用による劣化

これらはすべて、事前の計算で防げるものだ。

法令上の要件

クレーン等安全規則では以下が義務付けられている:

  • 定格荷重の遵守(第23条)
  • 玉掛け用ワイヤーロープの安全係数6以上(第213条)
  • 吊り角度60°以内の推奨(玉掛け技能講習テキスト)

計算を省くことは、法令違反のリスクも伴う。

こんな場面で5つの計算が活きる

建設現場の鉄骨建方

鉄骨柱や梁をクレーンで吊り上げて据え付ける作業。重量物が多く、吊り金具(吊りピース)の設計から玉掛け方法まで、5領域すべての計算が必要になる。特に吊りピースの溶接強度は、繰返し使用で劣化するため毎回チェックが必要。

プラント据付・重量機器の搬入

ボイラー、タンク、大型ポンプなどの据付では、機器の重心位置が偏っていることが多い。重心計算で吊り点を適切に配置しないと、吊り上げた瞬間に荷が傾いて周囲に衝突する。

製缶品・架台の反転作業

溶接構造物を裏返す「反転」作業は、吊り上げ中に重心が移動する。反転前後の重心位置を両方計算し、最も不利な姿勢でのワイヤー張力を確認する必要がある。

日常的な玉掛け作業のセルフチェック

日々の作業でも「このワイヤーで大丈夫か」「角度は何度まで許容か」を即座に確認したい場面は多い。スマホから各ツールにアクセスすれば、現場で数値を入れて即判定できる。

①クレーン揚重計画チェッカー|必要定格荷重の逆算

クレーン能力 計算 の基本

クレーンの定格荷重は、作業半径(ブームの先端から旋回中心までの水平距離)によって大きく変わる。作業半径が1m増えるだけで、定格荷重が数トン下がることもある。

クレーン揚重計画チェッカーでは、以下を入力するだけで必要なクレーン能力を逆算できる:

  • 揚重物の重量(本体重量)
  • 玉掛器具の重量(ワイヤー・シャックル・フック)
  • 作業半径
  • 揚程(地上から吊り点までの高さ)

総吊荷重の考え方

総吊荷重は「荷の重量+玉掛器具の重量+フックブロック重量」の合計だ。よくある間違いは、荷の重量だけでクレーンを選定してしまうこと。25トンの機器を吊るのに、玉掛器具とフックで3トン加算されれば、28トン吊れるクレーンが必要になる。

総吊荷重 = 荷の重量 + 玉掛器具重量 + フックブロック重量
必要定格荷重 ≧ 総吊荷重 / 0.9(安全率90%以内)

クレーンの定格荷重表で、作業半径に対応する値が必要定格荷重以上であることを確認する。

②吊り角度 張力チェッカー|張力倍率の可視化

ワイヤーロープ 吊り角度 張力 の関係

2本吊りの場合、吊り角度θのときの各ロープにかかる張力Tは以下の式で求められる:

T = W / (2 × cos(θ/2))

W: 荷の重量
θ: 吊り角度(2本のワイヤーがなす角度)
吊り角度張力係数1t荷の片側張力
0°0.500500 kg
30°0.518518 kg
60°0.577577 kg
90°0.707707 kg
120°1.0001,000 kg

吊り角度60°を超えると張力の増加が急激になる。実務では60°以下が推奨され、90°以上は原則として避けるべきだ。

吊り角度は何度までかと聞かれたら、答えは「開き角60°以内が基本、120°が上限」だ。120°で片側の張力は荷の重さそのものになる。→ ワイヤーロープ安全荷重計算に吊荷重量・吊り本数・角度を入れると、必要なロープ径と1本あたりの張力が出て、その張力を受けるシャックル(JIS B 2801)とアイボルト(JIS B 1168)の呼びまで同じ画面で選べる。角度の入れ方は次の節の最後に書いた。

2点吊り・3点吊り・4点吊りで荷重はどう分かれるか

「4本で吊るのだから1本あたり1/4」と考えると危ない。荷が剛体で吊り点が4つある系は不静定——つまり静力学だけでは各本の張力が決まらない系になる。わずかなワイヤー長さの差、吊り点の高さの差、重心の偏りで、実際の分担は簡単に偏る。

吊り本数幾何学的な分担設計で使う分担理由
2本W/2W/2静定。式どおり
3本W/3W/3〜W/2重心が偏れば2本に寄る
4本W/4W/3 または W/2不静定。対角2本に寄りやすい

玉掛けの実務では「4本吊りでも3本で持っている」と見なすのが一般的で、JIS B 8817(ワイヤロープスリング)も4本4点吊りの安全荷重を3本として出す。より安全側に振るなら対角2本=W/2 で選定する。均等分担を保証したいなら、天秤やイコライザ(チェーンブロック等)を入れて系を静定にする——これが⑥で扱う天秤の役割のひとつだ。

そのうえで、吊り角度による張力倍率を掛ける。4本吊り・吊り角度60°を「W/4 × 1.155」で計算するか「W/2 × 1.155」で計算するかで、必要なロープ径は2ランク変わる。

→ ワイヤーロープ安全荷重計算は吊り本数と吊り角度の両方を入力して安全荷重を出せる。4本を選ぶと3本で数える。W/2 で見たいときは2本で計算し、差を見てから決めるのが現実的だ。角度は1本ごとの鉛直からの角度(上の表の吊り角度の半分)で入れる点に注意してほしい

③ワイヤーロープ安全荷重計算|径と種別の選定

ワイヤーロープ 安全荷重 の求め方

ワイヤーロープの安全荷重は「破断荷重 ÷ 安全係数」で求められる。クレーン等安全規則では、玉掛け用ワイヤーロープの安全係数は6以上と定められている。

安全荷重 = 破断荷重 / 安全係数(≧6)
破断荷重 = ロープ径² × 種別係数

種別による破断力の違い:

種別構成特徴
6×246ストランド24本汎用、やや硬い
6×376ストランド37本柔軟性が高い、玉掛けに最適
IWRC芯がワイヤー破断荷重が高い

玉掛けワイヤーの選定手順

「このワイヤーで吊れるか」ではなく「何mmを持っていけばいいか」を出す順序は次のとおり。

Step 1  荷重を確定       W [kg](荷 + 治具 + 養生)
Step 2  分担本数を決める   2本 / 3本相当 / 4本(上の表の前提で)
Step 3  吊り角度の倍率     1 / cos(θ/2) を掛ける → 1本あたりの張力 T
Step 4  安全係数を掛ける   必要破断荷重 = T × 6
Step 5  破断力表から径を選ぶ(種別ごとに値が違う)

Step 4 まではただの掛け算なので現場でも暗算できる。詰まるのはStep 5で、ロープ種別(6×24/6×37/シール型/フィラー型)ごとに同じ径でも破断力が違うため、表を持ち歩かないと決められない。

ワイヤーロープ安全荷重計算では、ロープ径・種別・吊り本数・吊り角度を入力すると安全荷重を自動算出する。逆引き機能(吊荷重量 → 必要ロープ径)もあるので、Step 5 をその場で片付けられる。

④吊り金具設計シミュレーター|4つの破壊モード

吊り金具 強度計算 の4つのチェックポイント

吊り金具(吊りピース・ラグ)は、荷重を受ける部分の強度がボトルネックになりやすい。チェックすべき破壊モードは4つ:

  1. 引張:ピン穴上部の板断面が引張荷重で破断
  2. せん断:ピン穴周辺の板がせん断で抜ける
  3. 支圧:ピンとピン穴の接触面が圧壊
  4. 溶接部:吊り金具を母材に取り付けるすみ肉溶接が破断

特に溶接部は、製作時の品質と使用による劣化の両方が影響するため、安全率を高めに取る必要がある(通常3.0以上)。

吊り金具設計シミュレーターでは、吊荷重・吊角度・板厚・材質・溶接脚長を入力すると、4つの破壊モードの安全率を一括判定する。スリングが斜めなら、張力の水平分力が付け根を曲げる。その曲げも溶接と付け根の断面に入れて判定する。吊角度は水平から測る(ワイヤーロープのツールは鉛直から)。「どこが最も弱いか」が一目でわかるので、板厚を増やすべきか溶接脚長を増やすべきかの判断が即座にできる。

吊りピースの溶接をもう一段掘るなら

4モードのうち、実際の事故で効いてくるのは溶接部だ。ピース本体は板厚を上げれば素直に強くなるが、溶接は脚長・のど厚・溶接長さ・施工姿勢・母材の板厚といった複数の要因が絡む。とくに「片側だけすみ肉を回した」「立向きで無理に盛った」といった施工のばらつきが、計算どおりの強度が出ない主因になる。

吊りピースの溶接そのものを設計荷重から検定したいなら、溶接強度計算シミュレーターでのど厚と許容荷重を確認するとよい。溶接まわりの計算を体系的に押さえたい場合は溶接強度計算まとめにすべての領域を整理してある。

⑤重心計算&転倒角度計算|荷の安定性評価

重心位置 が揚重に与える影響

重心が幾何中心からずれている荷を吊ると、吊り上げた瞬間に荷が傾く。これが「回転モーメント」として各ワイヤーに不均等な張力を生む。最悪の場合、片側のワイヤーに荷重が集中して破断に至る。

重心計算の基本式:

合成重心 Xg = Σ(Wi × Xi) / Σ(Wi)
合成重心 Yg = Σ(Wi × Yi) / Σ(Wi)
合成重心 Zg = Σ(Wi × Zi) / Σ(Wi)

Wi: 各パーツの重量
Xi, Yi, Zi: 各パーツの重心座標

重心計算&転倒角度計算では、複数パーツの重量と重心座標を入力すると合成重心位置を算出し、転倒限界角度まで可視化する。荷の吊り点をどこに配置すれば水平に吊れるかの判断材料になる。

⑥吊り天秤・リフティングビーム|角度が取れないときの主役

なぜ天秤を使うのか

吊り点の間隔が広く、フックまでの高さが取れない現場では、吊り角度が90°を超えてしまう。角度を無理に取ればワイヤー張力が跳ね上がり、同時に荷そのものを内側へ押し潰す水平分力が発生する。薄板の箱物や長尺の架台は、この水平分力で先に変形する。

天秤(スプレッダービーム/リフティングビーム)は、荷の直上でワイヤーを垂直に落とすための梁だ。使う理由は3つある。

  • 吊り角度をゼロにできる — 張力倍率が1.0になり、水平分力も消える
  • 上部クリアランスを稼げる — 高さ制限のある屋内や既設設備の下でも吊れる
  • 吊り点の分担を決められる — 荷側の吊り点位置を天秤側で決められるので、不静定になりやすい4点吊りを実質2点に整理できる

天秤そのものが構造部材だという落とし穴

ここで抜けやすいのが、天秤自体の強度検定だ。市販の定格品なら銘板の定格荷重で済むが、現場で製作する天秤(H形鋼や角パイプに吊りピースを溶接したもの)は、設計者が自分で検定するしかない。

見るべき項目は4つ。

  1. 曲げ — 吊り点間のスパンと荷重から曲げ応力
  2. せん断 — 吊り点直近のウェブせん断
  3. 軸圧縮による座屈 — 天秤には吊りワイヤーからの圧縮軸力が入る。ここを見落とすと細長い梁で座屈する
  4. たわみ — 強度が持っても、たわみで吊り点が内側に寄ると荷が振れる

3番目の軸圧縮は、天秤を「単純梁」とだけ考えていると完全に落ちる。天秤上部のワイヤーが斜めなら、その水平分力が天秤を軸方向に押す。

→ 吊り天秤・リフティングビーム強度計算は曲げ・せん断・軸圧縮座屈・たわみを検定比で一括判定する。自作天秤の可否を数字で示せるので、「経験上これで持つ」を根拠に置き換えられる

⑦アウトリガー反力と敷鉄板|クレーンは地盤で転ぶ

定格荷重を満たしていても転倒する

クレーンの転倒事故は、能力不足よりも地盤側で起きることが多い。定格荷重表を満たしていても、アウトリガーの下の地盤が反力を受けきれなければ、その脚が沈み込んで機体が傾き、作業半径が実質的に伸びて一気に転倒側へ入る。

アウトリガー1脚あたりの最大反力は、機体重量と吊荷重量が旋回位置に応じて配分されたもので、吊荷側の脚に集中する。総荷重の半分近くが1脚に乗ることもある。

接地圧と許容地耐力の比較

計算そのものは単純で、脚の反力を敷鉄板の接地面積で割った接地圧が、地盤の許容地耐力を下回っていればよい。

接地圧 [kN/m²] = アウトリガー最大反力 [kN] / 敷鉄板の有効接地面積 [m²]
必要面積 [m²]  = アウトリガー最大反力 [kN] / 許容地耐力 [kN/m²]

許容地耐力の目安は建築基準法施行令第93条に地盤種別ごとの値がある。埋戻し地・盛土・雨後の路盤は、見た目が同じでも数字が大きく違う。

実務でよくある誤解が「敷鉄板を敷いたから大丈夫」というもの。敷鉄板は荷重を面に分散する部材であって、分散できる範囲は板の剛性で決まる。反力に対して板が小さければ、板の直下だけで支えることになり接地圧はほとんど下がらない。

→ 敷鉄板・アウトリガー接地圧計算でアウトリガー最大反力を概算し、敷鉄板サイズ別の接地圧を令93条の許容地耐力と照合できる。必要支持面積の逆算もできるので、「何mm×何mの敷鉄板を何枚持っていくか」を事前に決められる

通し例題|ポンプユニット2.5tを4点吊りで据え付ける

ここまでは7つの領域を1つずつ見てきた。この節では、1つの荷を最初から最後まで通しで計画する。数値はすべて、このサイトの各ツールに実際に入れて返ってきた値だ。

通しで組んでみると、ツールの受け渡しで3つの食い違いが出た。「吊り角度」の測り方がツールごとに違う、4本吊りを何本で数えるかが違う、安全率の意味が違うの3つだ。

例題の設定と工程ごとの受け渡し

吊り荷    : ポンプユニット(共通ベース 2,400 × 1,000 mm)
            共通ベース 0.5 t(中央)
            ポンプ     0.7 t(中央から −500 mm)
            モーター   1.3 t(中央から +700 mm)
            合計       2.5 t
吊りピース: ベースの4隅(長手 2,200 mm × 短手 900 mm)
スリング  : 6×24 を4本、1つのフックに集める
クレーン  : ラフテレーンクレーン、作業半径 14 m
地盤      : 未舗装の造成地(砂質)に敷鉄板
工程使うツール入れるもの次へ渡すもの
① 重心重心計算&転倒角度計算部品の質量と位置吊り点の列ごとの負担 1.505 t / 0.995 t
② 吊り角度(幾何の計算)吊り点とフックの位置1本ごとの角度と張力
③ ロープワイヤーロープ安全荷重計算2.5 t・4本・鉛直から30°径 12 mm
④ 吊りピース吊り金具設計シミュレーター24.5 kN・4点・水平から60°PL12 × 幅100 × 高さ60
⑤ 溶接溶接強度計算シミュレーター溶接の応力を力に換えた値長期の安全率 2.39
⑥ クレーンクレーン揚重計画チェッカー2.5 t(玉掛け具・フックは自動)25t 級、使用率 73%
⑦ 地盤敷鉄板・アウトリガー接地圧計算機体 26 t + 吊り荷 2.675 t接地圧 45.4 kN/m²

①重心|車両用のツールを吊り荷に読み替える

重心計算&転倒角度計算は、車両の積載を想定したツールだ。「車両重量」「前軸と後軸の位置」を入れる形になっている。これを吊り荷に読み替える。

  • 共通ベースを「車両」にする(車両重量 500 kg、前後配分 0.5)
  • 吊りピースの2列を「前軸」「後軸」にする(x = +1.1 m と −1.1 m、トレッド 0.9 m)
  • ポンプ(700 kg、x = −0.5 m)とモーター(1,300 kg、x = +0.7 m)を「パーツ」として入れる
合成重心 X = (0.7 × (−0.5) + 1.3 × 0.7) / 2.5 = +0.224 m(モーター側)
前軸荷重(モーター側の2点)= 1,505 kg
後軸荷重(ポンプ側の2点)  =   995 kg

軸重の欄が、そのまま吊り点の列ごとの負担になる。モーター側の列が全体の60.2%を持つ。4点に均等なら1点あたり 0.625 t だが、モーター側の1点は鉛直分だけで 0.752 t になる。転倒角の欄は、置いた車両が傾く角度なので、ここでは使わない。

②吊り角度|同じ「60°」が3通りの意味を持つ

重心がずれたまま長さのそろったスリングで吊ると、荷はモーター側に傾いてからフックの下で止まる。そこでモーター側の2本にレバーブロックを入れ、約18 cm詰めて、フックを重心の真上に置く。吊り点からフックまでの高さは 2.42 m とした。

ポンプ側 : 水平距離 1.398 m → 鉛直からの角度 β = 30.0°
モーター側: 水平距離 0.985 m → 鉛直からの角度 β = 22.1°

1本の張力 = 鉛直分 ÷ cos β
ポンプ側  : 0.498 ÷ cos30.0° = 0.575 t
モーター側: 0.752 ÷ cos22.1° = 0.812 t

ここで1つ目の食い違いが出る。「吊り角度」の測り方が、ツールごとに違うのだ。

呼び方どこから測るかこの例題(ポンプ側)使っている場所
開き角向かい合う2本の間β の2倍=60°現場の「吊り角度60°以内」、この記事の②の表
β1本と鉛直線の間30°ワイヤーロープ安全荷重計算
α1本と水平面の間60°吊り金具設計シミュレーター、吊り天秤の上部角度

開き角60°のときは、β=30°・α=60° になる。開き角とαがたまたま同じ60°になるので、推奨の上限ちょうどでは取り違えに気づけない。開き角を80°まで広げた現場で、その80°を吊り金具のツールに入れたとする。ツールは水平から80°、つまりほぼ垂直に引かれたものとして計算する。実際は水平から50°なので、付け根を曲げる水平分力は4.8倍もある。この取り違えは危険側に出る。

③ワイヤーロープ|4本で数えると、重いほうの1本が安全係数6を割る

ワイヤーロープ安全荷重計算に、逆引き・6×24・2.5 t・4本・β=30° を入れる。

有効本数 = 3(4本吊りは3本で持つとみなす)
張力係数 = 3 × cos30° = 2.598
必要破断荷重 = 2.5 × 9.807 × 6 ÷ 2.598 = 56.6 kN
→ 6×24 A種 12 mm(破断荷重 71.0 kN)、安全荷重 3.14 t

いちばん張るモーター側の1本(0.812 t)で見ても、12 mm の安全係数は 71.0 ÷ (0.812 × 9.807) = 8.9 ある。

2つ目の食い違いが、4本の数え方だ。4本4点吊りは4本が均等に張らないので、JIS B 8817(ワイヤロープスリング)は3本で持つものとして安全荷重を出す。この例題の偏りでは、実際にいちばん張る1本(0.812 t)が、3本で割った値(0.962 t)の内側に収まる。ただし、重心の偏りで片側の列が全体の2/3を超えると、3本で数えても足りなくなる。

4本で数えて径を細くすると危ない。たとえば 9 mm の 6×24 A種は破断荷重が 39.9 kN しかなく、モーター側の1本(0.812 t)に対する安全係数は 39.9 ÷ (0.812 × 9.807) = 5.0 で、法定の6を割る。破断荷重はロープの構成でも変わり、6×S(19) B種は 6×24 A種より約18%大きい。表を引くときは、使うロープの構成と種別の列を確かめる。

なお、②の節で紹介した「対角の2本で持つとみなす(W/2)」置き方にすると、必要な径は 14 mm になる。3本扱いより一回り太く、安全側の置き方だ。

④吊りピース|kN に換え、水平から測った角度で入れる

吊り金具設計シミュレーターは、荷重を kN で受け取る。2.5 t × 9.807 = 24.5 kN、4点吊り、吊角度は水平から測るので α = 60° を入れる(ポンプ側の寝ているほうの角度)。

設計荷重 = 24.5 ÷ 4 ÷ sin60° × 1.25(衝撃)× 4/3(4点は3点で持つ)= 11.80 kN
鉛直分 10.22 kN、水平分 5.90 kN

最初の案は、PL12・幅80・高さ(穴中心〜溶接面)100・縁端距離40・穴φ22・脚長6 だった。結果は次のとおり。

  • 溶接 SF=1.68(目標3に届かない)。応力 80.7 MPa のうち、65.2 MPa は水平分力の曲げ
  • 引張(付け根)SF=4.07 / せん断 SF=8.32 / 支圧 SF=7.89

水平分力 5.90 kN が、高さ 100 mm を腕にして付け根を曲げる。これが溶接を支配する。そこで、高さを 60 mm に下げ、幅を 100 mm に広げた。溶接の安全率は 3.60 まで上がり、合格する。

溶接を張力 ÷ のど断面積だけで見ると、この曲げが抜ける。最初の案でその計算をすると溶接 SF は 10.52 になり、溶接の余裕を実際の6倍に見積もることになる。斜め吊りでは、水平分力 × 高さの曲げを必ず入れる。

もう1つ、ピースの向きに注意がいる。4点吊りのスリングは、フックに向かって斜めに集まる。ピースの板がスリングの向きとずれていると、板を面外に曲げることになり、同じ力でも桁違いに弱い。ピースはフックの方向に向けて溶接する。

⑤溶接|同じ応力で、安全率が 3.60 と 2.39 になる

溶接強度計算シミュレーターで、同じ溶接を検算する。このツールにはモーメントの入力欄がないので、溶接の端に出る応力を力に換えて入れる。

のど断面積 A = 6 × 0.707 × 100 × 2 = 848.5 mm²
溶接の端の垂直応力 = 鉛直 12.04 + 曲げ 25.02 = 37.06 MPa
→ 引張として 37.06 × 848.5 = 31.5 kN、せん断として水平分力 5.90 kN
すみ肉・脚長6・長さ100・両側・SS400・組合せ
→ 合応力 37.7 MPa、許容 90 MPa、安全率 2.39

吊り金具のツールでは、同じ 37.7 MPa の溶接が安全率 3.60 だった。これが3つ目の食い違いだ。応力は同じで、割る側の許容応力が違う。吊り金具のツールは、せん断降伏 σy/√3 = 135.7 MPa で割っている。溶接強度のツールは、そこに安全率1.5を入れた長期許容応力 90 MPa で割っている。比はちょうど1.5になる。

吊り金具のツールの目標「3」は、溶接強度のツールでいえば「2」に当たる。溶接強度のツールでも3を求めると、安全率を二重に掛けることになる。逆に、吊り金具のツールの 3.60 を「許容応力の3.6倍の余裕」と読むと、余裕を1.5倍に見誤る。

⑥クレーン|2.5 t の荷に 25t 級

クレーン揚重計画チェッカーに、揚重物 2.5 t・作業半径 14 m・揚程 8 m・アウトリガー最大張り出しを入れる。玉掛け具の重量を空欄にすると、揚重物の3%(0.075 t)が自動で入る。フックブロックの 0.1 t も自動で足される。

総吊荷重   = 2.5 + 0.075 + 0.1 = 2.675 t
必要定格荷重 = 2.675 ÷ 0.9 = 2.97 t
→ 25t 級(半径14 mで定格 3.66 t)、使用率 73.1%

2.5 t の荷に 25t 級が要るのは、作業半径 14 m で定格が 1/7 まで落ちるからだ。現場が狭くてアウトリガーを中間までしか張り出せないと、定格が 0.8 倍になり、35t 級に上がる。ここで出す総吊荷重 2.675 t が、次の地盤の工程に渡る値になる。

⑦地盤|反力を決めるのは、吊り荷より機体の重さ

敷鉄板・アウトリガー接地圧計算に、機体総重量 26 t(25t 級ラフターの目安)、吊り荷 2.675 t、反力分配率 0.75、敷鉄板 5×10 を1枚、地盤は砂質(令93条の長期 50 kN/m²)で入れる。

アウトリガー最大反力 = (26 + 2.675) × 0.75 = 21.5 t = 210.9 kN
接地圧 = 210.9 ÷ 4.645 m² = 45.4 kN/m²
安全率 = 50 ÷ 45.4 = 1.10 → 注意(許容内・余裕小)

吊り荷を 0 にしても、接地圧は 41.2 kN/m² にしかならない。反力の9割は機体の重さで、吊り荷を軽くしても地盤の余裕はほとんど増えない。効くのは敷鉄板の面積と地盤そのものだ。敷鉄板を 5×20 にすれば接地圧は半分になる。路盤を砕石で締め固めて密実な砂質地盤(200 kN/m²)の扱いにできれば、安全率は 4.40 になる。

通しでやって分かったこと

工程つなぎ目取り違えるとどうなるか
② → ③④吊り角度の測り方が3通り(開き角・鉛直から・水平から)開き角が60°を超える現場で開き角を吊り金具に入れると、曲げを数分の1に見積もる(危険側)
③4本吊りを何本で数えるか4本で数えると、偏った荷の重いほうの1本が安全係数6を割る
④ → ⑤安全率の分母(降伏か、長期許容応力か)同じ応力で 3.60 と 2.39。目標を両方に掛けると二重掛け
⑥ → ⑦総吊荷重に対して機体の重さが支配的吊り荷だけ見ていると地盤の余裕を見誤る

この例題では、吊りピースの寸法を決めたのは荷の重さではなく、スリングの角度と高さだった。そしてクレーンを決めたのは作業半径、地盤を決めたのは機体だった。どれも、工程を1つずつ別々に見ていたら見落とすところだ。

揚重計算の仕組み|手法比較と計算フロー

張力計算の2つの手法

吊り荷の張力計算には、力の釣り合い法と張力係数法がある。

力の釣り合い法は、各ロープの張力をベクトル分解して求める厳密な手法。3次元の多点吊りにも対応できるが、手計算では非常に煩雑になる。

張力係数法(=モード係数法)は、吊り角度から張力倍率を表引きで求める簡易法。労働省方式の張力係数表が広く使われ、現場での即時判断に適している。

本サイトのツール群は張力係数法をベースにしつつ、三角関数による厳密計算を実装している。表引きよりも任意の角度に対応でき、結果の精度が高い。

計算例:5トンの機器を4本吊りする場合

条件:

  • 荷の重量:5,000 kg
  • 吊り角度:60°(4本吊り)
  • ワイヤーロープ:6×37 O/O
Step 1: 張力倍率の算出
  張力係数 = 1 / cos(60°/2) = 1 / cos(30°) = 1.155

Step 2: 1本あたりの張力(分担本数の置き方で変わる)
  均等分担とみなす場合   T = (5,000 / 4) × 1.155 = 1,444 kg
  3本で持つとみなす      T = (5,000 / 3) × 1.155 = 1,925 kg ← JIS B 8817
  対角2本で持つとみなす  T = (5,000 / 2) × 1.155 = 2,888 kg ← 安全側

Step 3: 必要破断荷重(安全係数6)
  均等分担   1,444 × 6 =  8,664 kg
  3本分担    1,925 × 6 = 11,550 kg
  2本分担    2,888 × 6 = 17,328 kg
  → この値を上回る破断力の径を、ロープ種別ごとの表から選ぶ

Step 4: 玉掛器具重量の加算
  ワイヤー4本 + シャックル4個 ≒ 約120 kg

Step 5: クレーン必要定格荷重
  総吊荷重 = 5,000 + 120 = 5,120 kg
  必要定格荷重 ≧ 5,120 / 0.9 = 5,689 kg → 約5.7t以上

このように、計算は連鎖的につながっている。1つの数値が変われば、後続のすべてに影響が波及する。とくにStep 2の前提(何本で持つとみなすか)は必要破断荷重を2倍動かす。ここを曖昧にしたまま径だけ決めるのが、最も危ない進め方だ。

他のツール・資料との違い

既存の揚重計算ツールとの比較

揚重計算ができるツールは、Excelのマクロや有料ソフト(クレーン選定ソフトなど)がある。しかし以下の点で差がある:

  • ブラウザ完結:インストール不要、スマホからも使える。現場でスマホを取り出して即計算できるのは大きい
  • 7領域を一箇所で:クレーン・吊り角度・ワイヤー・吊り金具・重心・天秤・接地圧を個別のツールで計算し、結果を横断的に確認できる
  • 地盤側まで見る:クレーンの能力表で止まらず、アウトリガー反力と敷鉄板の接地圧まで同じ導線で確認できるツール群は少ない
  • 逆引き対応:ワイヤーロープは「この荷重を吊るのに必要な径は?」という逆引きが可能
  • SVG可視化:吊り角度チェッカーはグラフで危険ゾーンを視覚的に表示

一方、3次元の複雑なリギング計画(多点吊り・傾斜地・合吊り)は専用ソフトの領域。本ツール群は日常的な揚重作業の安全確認にフォーカスしている。

揚重の豆知識

「安全係数6」の由来

ワイヤーロープの安全係数が6と定められている理由は、ロープの劣化・疲労・曲げによる強度低下を見込んでいるから。新品のロープでも、シーブ(滑車)を通る際に繰返し曲げを受け、内部の素線が徐々に断裂する。安全係数6は、この経年劣化を含めた「使用期間全体での安全」を担保する数値だ。

ちなみに、エレベーター用ワイヤーロープの安全係数は10以上(建築基準法施行令第129条の4)。人命に直結する用途ほど、安全係数は高くなる。

玉掛け技能講習の合格率

玉掛け技能講習は学科と実技の2日間で、合格率は95%以上と言われている。しかし講習で習う内容は基礎中の基礎。実際の現場では、荷の形状や吊り点の制約で教科書通りにいかない場面が多い。だからこそ、計算ツールで数値を確認する習慣が重要になる。

風速と揚重作業の中止基準

クレーン等安全規則第31条の2では、10分間の平均風速が10m/s以上のとき、クレーン作業を中止しなければならない。風速が上がると荷が揺れて制御不能になり、周囲との衝突や落下のリスクが急増する。揚重計画には気象条件の確認も組み込んでおくべきだ。

揚重計算のTips

  • 吊り角度は60°以内が鉄則:60°を超えると張力が急増し、90°で1.41倍、120°で2.0倍になる。角度が取れない場合は天秤(スプレッダー)の使用を検討する
  • ワイヤーの廃棄基準を確認:1よりの間で素線が10%以上切れている、直径が公称径の7%以上減少している場合は廃棄。目視点検を怠らない
  • クレーンの定格荷重表は作業半径で引く:ブーム長さだけで判断しない。同じブーム長でも、作業半径が1m違えば定格荷重が大きく変わる
  • 吊り金具は使い回しに注意:溶接部は繰返し荷重で疲労する。恒久的に使う吊りピースは定期的な磁粉探傷検査(MT)を実施する
  • 重心がずれた荷はあて物で調整しない:重心のずれは吊り点の配置で対処する。あて物(パッド)はワイヤーの養生用であって、重心調整には使えない
  • 自作の天秤は必ず検定する:市販の定格品と違い、現場製作の天秤は誰も強度を保証していない。曲げだけでなく軸圧縮座屈まで見る
  • 敷鉄板は「敷けば安心」ではない:反力に対して板が小さければ接地圧はほとんど下がらない。必要な支持面積から逆算して枚数を決める

よくある質問

吊り角度が90°を超えても作業できる? 法令上の明確な禁止規定はないが、90°で張力が1.41倍、120°で2.0倍になるため、実務上は60°以内が強く推奨されている。やむを得ず大きな角度で吊る場合は、張力に見合ったワイヤーロープと吊り金具を選定し、作業主任者の承認を得ること。
ワイヤーロープの安全係数はなぜ6なのか? クレーン等安全規則第213条で定められた値。ロープの経年劣化・曲げ疲労・腐食による強度低下を見込んだ安全マージンだ。新品時の破断荷重を6で割った値が、使用可能な安全荷重の上限となる。
4本吊りと2本吊り、どちらが安全? 安定するのは4本吊りだが、4本すべてに均等に荷重がかかる保証はない(理由と分担の置き方は本文②で表にまとめた)。JIS B 8817 も4本4点吊りの安全荷重を3本として出すので、4本にしても安全荷重は3本吊りと同じだ。荷を水平に保ちやすいのは4本、張力の見積りが確実なのは2本、という使い分けになる。均等分担を確実にしたいなら天秤やイコライザで系を静定にするのが答えだ。
計算結果はサーバーに保存される? すべての計算はブラウザ内で完結しており、入力データや計算結果がサーバーに送信されることはない。現場で機密性のある荷重データを入力しても、外部に漏れる心配はない。
クレーンの定格荷重表はどこで入手できる? クレーンメーカーのカタログまたはWebサイトで公開されていることが多い。レンタルクレーンの場合は、レンタル会社に機種名を伝えて定格荷重表を入手する。本ツールの「クレーン揚重計画チェッカー」は、定格荷重表と照合して使う設計になっている。

まとめ|揚重計画は7つの計算をセットで回す

揚重計画で確認すべき7領域を改めて整理する:

これらは連鎖的に依存しているから、1つだけやっても意味がない。1つの荷で7工程を最後まで通した例は、本文の「通し例題」の節にまとめた。セットで回して初めて「安全な揚重計画」が完成する。荷が持ち上がるかどうかは①〜⑥で決まり、クレーンが立っていられるかは⑦で決まる——この2つは別の問題だ。

ボルト設計の全体像を知りたい方はボルト設計で必要な計算まとめも参考にしてほしい。溶接構造物の揚重なら溶接強度計算まとめと合わせて確認するとよい。

ツールの改善要望やバグ報告はお問い合わせページからどうぞ。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。揚重計画の手計算で吊り角度を甘く見て、先輩に「そのワイヤーじゃ持たないぞ」と叱られた経験あり

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