地盤支持力・接地圧計算ツール

N値と基礎寸法からテルツァギ/マイヤーホフ/ハンセン式で極限支持力・許容支持力を算定

使い方: 地盤と基礎を入力すると、N値→φ・c→支持力係数→qu→qaまで自動算定。載荷重Pを入れれば接地圧と安全比も判定する。

シナリオプリセット

地盤条件

砂質はDunham式、粘性は5N換算

基礎諸元

設計条件

地盤パラメータ

φ (°)

35.0

c (kN/m²)

0.0

Nc

46.12

Nq

33.30

37.15

形状係数 α=1.30 / β=0.40

支持力

極限支持力 qu

1,134.3

kN/m²

許容支持力 qa

378.1

kN/m² (Fs=3)

接地圧検定

接地圧 σ

200.0 kN/m²

受圧面積 4.00

安全比 qa/σ

1.89

判定1.89qa/σ
免責: 建築基礎構造設計指針の一般式に基づく概算。地下水位・偏心荷重・液状化判定・傾斜地盤の補正は含まない。実設計では地盤調査結果と専門書に基づき有資格者が判断すること。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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地盤の強さを、N値から数式まで遡って確かめる

地盤調査報告書を開くと、まず目に飛び込んでくるのが「N値」の縦並び。その数字を眺めて「この土地、支えられるのかな」と不安になった経験があれば、このツールが役に立つ。標準貫入試験のN値をひとつ入れるだけで、内部摩擦角 φ と粘着力 c が自動換算され、テルツァギの一般支持力式に渡されて極限支持力 qu と許容支持力 qa が弾き出される。

画面には Nc Nq という3つの支持力係数、それから qu = α·c·Nc + β·γ·B·Nγ + γ·Df·Nq の各項がどう積み上がるかが一目で追える構成にしてある。載荷重を入れれば接地圧 σ と安全比 qa / σ まで自動判定。長期・短期の切替、3公式(テルツァギ/マイヤーホフ/ハンセン)の切替、帯状・矩形・正方形・円形の形状係数も全部スイッチ一発。ブラウザだけで完結するので、現場でiPadを開きながら基礎幅を試行錯誤できる。

なぜ作ったのか

杭基礎側の 杭基礎支持力計算 は公開済みだった。けれど「直接基礎版がない」という声が何度かあった。実際、直接基礎の地耐力計算は有料の構造計算ソフトに同梱されていることが多く、「ちょっとベタ基礎の幅を試算したい」「擁壁の底版が支持層に届くか概算したい」というカジュアルな用途に対してツールが重すぎる。

既存の無料Webツールも探した。PDFの電卓アプリや、海外のUnit Conversion付きの支持力計算サイトはある。でも日本の建築基礎構造設計指針に沿った長期Fs=3・短期Fs=1.5の切替や、砂質土のDunham式・粘性土の5N換算を内蔵したものは見つからなかった。海外のテルツァギ計算機に内部摩擦角を手入力し、単位をkPaからkN/m²へ頭で読み替え、形状係数の定義違いに戸惑う…そんな作業を何度か繰り返して、自前で作った方が早いと判断した。

もうひとつの動機は「公式ごとの結果差を可視化したい」こと。テルツァギとハンセンでは Nγ の式が違い、同じ地盤でも qu が1割以上ズレることがある。どちらが正解かではなく、「公式を切り替えたら結果がこう変わる」という感覚値を持てると、設計判断に厚みが出る。3公式ワンクリック切替はそのための仕様だ。

地盤支持力とは何か — テルツァギの支持力式を第一原理から

地盤支持力と地耐力の違い

「地盤支持力」は地盤が壊れる限界の圧力、「地耐力」はそれを安全率で割って設計に使える値、というざっくりの区別がある。建築基礎構造設計指針では前者を極限支持力 qu、後者を許容支持力 qa と呼ぶ。関係はシンプルで、qa = qu / Fs。長期荷重(建物の自重・積載)には Fs=3、短期荷重(地震・風)には Fs=1.5 が標準だ。

たとえば豆腐の上に直径5cmの硬貨を置いてみる。ゆっくり押していくと、ある荷重で表面がプスッと凹んで硬貨が沈む。このときの荷重 ÷ 硬貨の底面積が豆腐の「極限支持力」。実用上は「凹む直前の1/3くらいまでなら安全に置ける」という経験則で割り引く。これが豆腐の「地耐力」。建築の地盤も原理は同じで、極限を測って3で割る。

詳しくは Wikipedia: 支持力 を参照。

テルツァギの一般支持力式

カール・テルツァギ(Karl Terzaghi)が1943年に定式化した式が現代支持力理論の原点だ。

qu = α·c·Nc + β·γ·B·Nγ + γ·Df·Nq

3つの項にそれぞれ意味がある。

  • 第1項 α·c·Nc: 粘着力による抵抗。粘性土が「べたつき」で耐える部分
  • 第2項 β·γ·B·Nγ: 自重による抵抗。基礎直下の土が自分の重みで滑り面を押さえる部分。基礎幅 B が大きいほど効く
  • 第3項 γ·Df·Nq: 根入れによる抵抗。基礎を深く埋めるほど上載土の重さが滑り面を押さえる

Nc Nq は「支持力係数」と呼ばれ、内部摩擦角 φ の関数で決まる。 α β は形状係数で、帯状(無限長)・矩形・正方形・円形で値が変わる。

N値から φ と c への換算

現場で得られるのは標準貫入試験のN値であって、直接 φc ではない。N値を土質定数に換算する経験式がいくつかある。

  • 砂質土(Dunham式): φ = √(20N) + 15 (下限15°)
  • 粘性土: c = 5N kN/m²(φ=0とみなす)

Dunham式は粒子形状が角張っている・丸いで係数が変わる流派もあるが、本ツールは最も一般的な「粒径が揃った砂」の係数を採用している。粘性土の5N換算は一軸圧縮強度 qu ≒ 10N kN/m²(Terzaghi-Peck)から粘着力 c = qu/2 を導いたもの。いずれも「ボーリング調査以外の詳細試験を行わない段階での経験則」として使うのが前提だ。

実務での重要性

地耐力不足は「不同沈下」で暴発する

地耐力が足りない地盤に基礎を載せると、ゆっくり沈下していく。均等に沈むだけなら建物は傾かないが、地盤が場所によって硬さが違うと「不同沈下」が起きる。住宅地盤品質協会のデータでは、傾斜が1/500を超えるとドアが閉まらず、1/100になると居住者がめまいを訴えるという。木造住宅の瑕疵保険クレームで最も多いのがこの地盤沈下起因だ。

法的には建築基準法施行令第38条で「建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え」なければならないと定め、告示1113号が地盤調査法と許容応力度の算定方法を細かく指定する。地耐力30kN/m²未満は基礎ぐい(杭基礎)が必要になるなど、N値・地耐力が法令上の線引きとして直結する。

設計上の感覚値

同じN=10でも砂質土と粘性土では支持力が桁違い。砂質N=10なら φ ≒ 29° でNq≒16、粘性N=10は c=50でNc=5.14止まり。結果として粘性土の方が許容支持力は1/3程度に落ちる。逆に根入れ Df を1m深くするだけで、γ=18 kN/m³の砂地盤ならNq×γ×Df ≒ 16×18×1 = 288 kN/m² も上乗せできる。「基礎幅を広げるより根入れを深くする方がコスパがいい」というセオリーは、この第3項を見れば腑に落ちる。

また「長期Fs=3・短期Fs=1.5」の使い分けは、地震時荷重を短期として扱うことで実質的に支持力を2倍に評価する論理になっている。構造計算ルート2以上では両者を別々に検定するのが普通だ。

こんな場面で使える

  • 小規模建築物のベタ基礎計画: 住宅・倉庫・車庫など、構造計算が任意な規模でも地耐力の把握は必須。設計初期に「この敷地、必要な基礎幅はどのくらい?」を即答できる
  • 擁壁の底版設計: 擁壁は 土圧・擁壁安定計算ツール で転倒・滑動を検定するが、地盤支持力の検定は本ツールが担当。二つを並べて使うのが想定フロー
  • 農業施設・物置のべた基礎: 土間コンクリート程度でも、農機の走行荷重や収穫物の積載を考えると地耐力チェックは欠かせない
  • 既存不適格の診断: 古い住宅のリフォーム時に「当時の地耐力想定で現在の積載に耐えるか」を逆算する
  • 構造一級建築士・建築士試験の勉強: 支持力係数の式を手で追うのは面倒だが、ツールで入力→結果→式を往復すると記憶に残る

基本の使い方(3ステップ)

  1. 地盤条件: 砂質土/粘性土を選び、N値と単位体積重量 γ を入力。プリセット(沖積粘土/洪積砂/密な砂礫など)から選ぶと代表値が自動入力される
  2. 基礎諸元: 帯状・矩形・正方形・円形から形状を選び、幅 B・長さ L(矩形時)・根入れ深さ Df を入力
  3. 設計条件: 公式(テルツァギ/マイヤーホフ/ハンセン)と安全率(長期Fs=3 / 短期Fs=1.5)を選ぶ。載荷重 P を入力すれば接地圧と安全比が自動判定

結果はすべてリアルタイム更新。パラメータをスライドしながら「この条件ならOK、これだとNG」を見比べられる。

具体的な使用例(6ケース)

ケース1: 戸建住宅のベタ基礎(砂質土・正方形)

  • 条件: 砂質土 N=20、γ=18 kN/m³、正方形 B=2m × 2m、Df=1m、テルツァギ長期、載荷重 P=800 kN
  • 結果: φ=35.0°、Nc=46.12、Nq=33.30、Nγ=37.15、qu=1134.3 kN/m²、qa=378.1 kN/m²、σ=200.0 kN/m²、安全比=1.89
  • 解釈: 洪積砂層レベルの地盤に一般的な木造戸建ての集中荷重を載せるケース。安全比1.89で「適」判定。基礎幅を1.5mに縮めても成立しそうなほど余裕がある

ケース2: 擁壁の帯状底版(粘性土・帯状)

  • 条件: 粘性土 N=8、γ=16 kN/m³、帯状 B=1.5m、Df=1.5m、テルツァギ長期、載荷重なし
  • 結果: φ=0°、c=40 kN/m²、Nc=5.14、Nq=1、Nγ=0、qu=229.6 kN/m²、qa=76.5 kN/m²
  • 解釈: 洪積粘土の典型値。許容支持力は76 kN/m² と控えめ。擁壁の底版反力がこの範囲に収まるかを 土圧・擁壁安定計算ツール とセットで確認する想定

ケース3: 柱状基礎(砂礫・円形・ハンセン式)

  • 条件: 砂質土 N=30、γ=19 kN/m³、円形 B=1.5m、Df=1.2m、ハンセン長期、載荷重 P=500 kN
  • 結果: φ=39.49°、Nc=71.43、Nq=59.87、Nγ=72.78、qu=1987.3 kN/m²、qa=662.4 kN/m²、σ=282.9 kN/m²、安全比=2.34
  • 解釈: 密な砂礫層の円形基礎(集中荷重を受ける独立フーチング)。ハンセン式のNγは1.5×(Nq-1)×tanφで、テルツァギより大きくなる傾向。安全比2.34で「安全」レベル

ケース4: 矩形フーチング(砂質土・短期・マイヤーホフ)

  • 条件: 砂質土 N=15、γ=17 kN/m³、矩形 B=2m × L=4m、Df=1.5m、マイヤーホフ短期、載荷重なし
  • 結果: φ=32.32°、Nc=36.46、Nq=24.07、Nγ=23.27、qu=969.8 kN/m²、qa=646.5 kN/m²
  • 解釈: 矩形の形状係数は α=1+0.3×B/Lβ=0.5-0.1×B/L で計算される(ここでは α=1.15、β=0.45)。短期Fs=1.5なので許容支持力が長期の2倍近くになる。地震時検定を想定

ケース5: 大型ベタ基礎(軟弱粘土・マイヤーホフ長期)

  • 条件: 粘性土 N=10、γ=17 kN/m³、正方形 B=3m × 3m、Df=2m、マイヤーホフ長期、載荷重 P=1000 kN
  • 結果: φ=0°、c=50 kN/m²、Nc=5.14、Nq=1、Nγ=0、qu=368.1 kN/m²、qa=122.7 kN/m²、σ=111.1 kN/m²、安全比=1.10
  • 解釈: 軟らかい粘性土に大型基礎を載せたケース。安全比1.10で「適」の下限。余裕がほぼないので、実務では基礎幅をさらに拡大するか 杭基礎支持力計算 で杭基礎に切り替える判断になる

ケース6: 擁壁帯状基礎(砂礫・テルツァギ長期)

  • 条件: 砂質土 N=25、γ=19 kN/m³、帯状 B=1.8m、Df=1.5m、テルツァギ長期、載荷重 P=600 kN
  • 結果: φ=37.36°、Nc=57.81、Nq=45.10、Nγ=57.05、qu=2260.9 kN/m²、qa=753.6 kN/m²、σ=333.3 kN/m²、安全比=2.26
  • 解釈: 砂礫層の上に設置する大型擁壁の帯状底版。Strip(帯状)は壁延長方向に無限と仮定するため形状係数が α=1.0、β=0.5 とシンプル。安全比2.26で「安全」レベル、基礎幅の最適化余地あり

仕組み・アルゴリズム

なぜ3公式すべてを実装したのか

支持力係数(特に )は研究者によって提案式が異なる。代表的な3式を比べると以下のような違いがある。

公式NqNc特徴
テルツァギ (1943)exp(π tan φ)·tan²(45+φ/2)(Nq-1)/tan φ(Nq-1)·tan(1.4φ)古典・日本の指針で広く採用
マイヤーホフ (1951)同上同上(Nq-1)·tan(1.4φ)形状/深さ/傾斜補正を別係数で表現
ハンセン (1970)同上同上1.5·(Nq-1)·tan φ欧州の設計コード(Eurocode)寄り

NcNq は3公式でほぼ同じだが、 の定義が違う。テルツァギ/マイヤーホフは tan(1.4φ) を使うのに対し、ハンセンは 1.5×tan φ。高 φ 領域でテルツァギ>ハンセンの傾向があり、同じ地盤でも1割以上の差が出る。本ツールでは3式を切り替えて「どの流派でいくらか」を即座に見比べられる設計にした。マイヤーホフの形状・深さ補正係数はUIの複雑化を避けるため、形状係数に統合する近似を採用している(厳密な補正係数分離版は将来検討)。

実装フロー

// 1. N値から土質定数へ換算
if (soilType === "Sandy") {
  phi_deg = Math.max(Math.sqrt(20 * N) + 15, 15);
  c = 0;
} else {
  phi_deg = 0;
  c = 5 * N; // kN/m²
}
const phi_rad = phi_deg * Math.PI / 180;

// 2. 支持力係数を算出(公式ごとに分岐)
const Nq = Math.exp(Math.PI * Math.tan(phi_rad)) *
           Math.pow(Math.tan(Math.PI / 4 + phi_rad / 2), 2);
const Nc = phi_deg === 0 ? 5.14 : (Nq - 1) / Math.tan(phi_rad);
const Ngamma = formula === "Hansen"
  ? 1.5 * (Nq - 1) * Math.tan(phi_rad)
  : (Nq - 1) * Math.tan(1.4 * phi_rad);

// 3. 形状係数
const { alpha, beta } = shapeFactors(foundationShape, B, L);

// 4. 一般支持力式
const qu = alpha * c * Nc + beta * gamma * B * Ngamma + gamma * Df * Nq;
const qa = qu / (mode === "long" ? 3 : 1.5);

計算例:ケース1を手で追う

砂質土 N=20、γ=18、正方形 B=2m、Df=1m、テルツァギ長期。

  1. N値換算: φ = √(20×20) + 15 = 20 + 15 = 35°c = 0
  2. 支持力係数:
    • Nq = exp(π·tan35°) × tan²(62.5°) = exp(2.200) × 3.689 = 9.025 × 3.689 ≒ 33.30
    • Nc = (33.30 - 1) / tan35° = 32.30 / 0.7002 ≒ 46.12
    • Nγ = (33.30 - 1) × tan(49°) = 32.30 × 1.1504 ≒ 37.15
  3. 形状係数(正方形): α = 1.3β = 0.4
  4. 極限支持力:
    • 第1項 = 1.3 × 0 × 46.12 = 0
    • 第2項 = 0.4 × 18 × 2 × 37.15 = 534.96
    • 第3項 = 18 × 1 × 33.30 = 599.40
    • qu = 0 + 534.96 + 599.40 ≒ 1134.36 kN/m²
  5. 許容支持力: qa = 1134.36 / 3 ≒ 378.12 kN/m²

ツールが返した値(qu=1134.32, qa=378.11)と一致する。手計算で追える透明さを残しながら、UIはワンタップで完結するのが狙いだ。

他ツールとの違い(地盤支持力 計算ツール 比較)

直接基礎の支持力計算は、フリーソフトや有料CADの一機能として組み込まれていることが多いが、Web上で「N値を入れるだけで即答、しかも3公式を切り替えられる」ツールは少ない。このツールは次の4点で競合と差別化している。

  • N値からφ・cを自動換算: 多くのシートではφcを別で計算してから入れる必要がある。このツールは砂質土ならDunham式(φ=√(20N)+15、下限15°)、粘性土ならc=5Nを自動適用するので、ボーリング柱状図のN値をそのまま打ち込めばよい。
  • 3公式を1タップ切替: テルツァギ・マイヤーホフ・ハンセンを同じ画面で切り替えられる。特には公式ごとに1.5〜2倍の差が出るため、比較の手間がなくなるのは大きい。
  • 接地圧検定まで一気通貫: 載荷重Pを入れれば接地圧σと安全比qa/σを判定。StatusCardで「適/注意/不適」が色分け表示されるので、パラメータを変えて基準クリアを探る作業が速い。
  • 杭基礎版と役割分担: 同じサイトの杭基礎支持力計算は深層地盤に杭を打つ想定、このツールは浅層でのベタ基礎・独立基礎が対象。基礎形式の比較検討もリンクひとつで行える。

既存の有料ソフトは「計算書出力まで完結」が強みだが、「N値だけ分かっている状態で今すぐ当たりをつけたい」というニーズには過剰。数分で何パターンも試せる手軽さが、このツールの立ち位置だ。

豆知識・読み物(テルツァギと支持力理論の歴史)

支持力理論の父といえば、オーストリア生まれの土質力学者 カール・テルツァギ(Karl Terzaghi, 1883-1963)。1925年に『Erdbaumechanik』を出版し、それまで経験則に頼っていた地盤工学を科学の土俵に乗せた人物だ。彼がいなければ現代の基礎設計は成り立たないといっても過言ではない。

理論の誕生

テルツァギが1943年に『Theoretical Soil Mechanics』で発表した一般支持力式 qu = c·Nc + q·Nq + 0.5·γ·B·Nγ は、Prandtl(1921年)の塑性流動理論をベースにしている。Prandtlは金属切削の研究で「くさび形の塑性領域」の解析解を導いたが、テルツァギはこれを地盤に応用し、「基礎下で三つのゾーン(主働くさび・放射せん断・受働領域)が形成される」というモデルを作った。支持力係数 Nc Nq はこの塑性領域の形状から導かれる無次元数だ。

日本と海外の違い

同じ一般支持力式でも、係数の扱いが国ごとに微妙に違う。

  • 日本: 建築基礎構造設計指針(日本建築学会)が採用するはテルツァギ式に近い保守的な値。長期Fs=3、短期Fs=1.5(告示1113号)。
  • 欧州(Eurocode 7): Hansen-Vesic系が主流。Nγ=1.5(Nq-1)tanφなど小さめの値を採用し、部分係数法で安全余裕を配分する。
  • 米国(AASHTO): Meyerhof式を標準採用。形状係数・深さ係数・傾斜係数を明示的に掛ける方式で、係数分解が細かい。

同じN=30の砂で計算しても、国や指針を変えるとquが20〜30%違うことがある。だから「この公式が唯一正解」ではなく、指針ごとの哲学を理解したうえで使うのが正しい姿勢だ。

教科書の参考

テルツァギ - Wikipediaでは彼がウィーンからイスタンブール、ハーバードへと渡り歩いた経歴が紹介されている。学問体系を一人で作り上げる熱量を感じられる読み物だ。

Tips(地盤支持力 計算 実務のコツ)

  • N値の信頼区間を意識する: 標準貫入試験のN値は±20%程度のばらつきがあると言われている。N=15N=18の違いで設計を変えるのは神経質すぎ。同じ層で3点以上測って平均を使い、極端に小さいN値の層は別途注意するのが実務的。
  • 地下水位が高いときはγ'を使う: 水位以下の土は浮力で実質重量が半分以下になる。γ' = γsat - γw ≈ 10 kN/m³を用いて再計算するとquが30〜40%落ちることも。水位が基礎底より上なら、このツールのγ欄に水中重量を手入力して簡易対応する。
  • 粘性土は一軸圧縮でcuを測る: N値からc=5Nに換算する方法は簡便だが誤差が大きい。高N値の硬質粘土では過大評価になりがちなので、粘性土でN≥15なら一軸圧縮試験のcu(非排水せん断強さ)を入力するのが安全。
  • 長期と短期を両方確認: 長期Fs=3で当たりをつけても、地震時の短期Fs=1.5で破綻するケースがある。特に液状化リスクがある砂質地盤は短期検討を必ず通す。
  • 基礎幅を変えて感度を見る: quには0.5·γ·B·Nγの項がある。幅を倍にすると支持力も増える一方、接地圧は面積に反比例。このツールでBを0.5刻みで振ると最適値が見える。

FAQ(地盤支持力 計算 よくある質問)

粘性土でN=0と表示された場合、どう解釈すればよい?

標準貫入試験でN値が0(自沈状態)というのは、サンプラーが自重だけで沈下してしまうほど地盤が柔らかいことを意味する。換算式c=5Nに当てはめれば粘着力もゼロ、つまりほぼ液体に近い軟弱層だ。このツールではqu ≒ γ·Df·Nq(根入れの押さえ分のみ)となり、実質的に支持力ゼロ相当。直接基礎での対応は困難なので、杭基礎支持力計算で良質層まで杭を打つ検討へ切り替えるのが現実的だ。地盤改良(セメント柱状改良・深層混合処理)も選択肢になる。

テルツァギ・マイヤーホフ・ハンセンの3公式はどれを使えばよい?

簡便に当たりをつけるならテルツァギで十分。日本の建築基礎構造設計指針もテルツァギ式をベースにしている。ただし、基礎幅が大きい(B>3m)場合や、深い根入れ(Df>Bの1倍以上)を採用する場合は、形状・深さ補正が体系化されているマイヤーホフ/ハンセンのほうが妥当な値を返す。このツールは3つを同じ入力で比較できるので、「公式を変えても差が±10%以内なら設計条件は健全、20%以上違うなら入力見直し」という使い方をすると判断がブレない。

地下水位が基礎底より上にあるとき、計算はどう補正すればよい?

本ツールは地下水位の自動補正は未実装。ただし簡易対応は可能で、土の単位体積重量γを水中重量γ'(≈10 kN/m³)に置き換えるのが定石だ。例えばγ=18γ=10にして再計算すれば、0.5·γ·B·Nγγ·Df·Nqの項が減り、現実的な支持力になる。もっと厳密にやるなら、水位以浅は湿潤重量、水位以深は水中重量で加重平均を取る。いずれも精度は粗いので、地下水が設計に効くケースでは専門ソフトや有資格者の判断を仰ぐべきだ。

柱が基礎の中心からずれている(偏心荷重)場合はどう扱う?

偏心距離eが生じると、接地圧は台形分布になり最大値σmax = P/A·(1+6e/B)が設計値になる。このツールは中心荷重前提なので、簡易対応としては**有効幅法(Meyerhof提案)**がおすすめだ。有効幅B' = B - 2eを基礎幅B欄に入力し直すと、偏心を吸収した安全側のquが得られる。ただしe > B/6になると接地圧の一部がマイナス(基礎が浮く)になるので、別途浮き上がり検討が必要。本格的な偏心解析は設計図書の計算例を参照してほしい。

安全率が1.0を超えていても「注意」表示になるのはなぜ?

このツールはqa/σが1.0〜2.0のとき「適」、0.8〜1.0のとき「注意」と判定している。これは「許容値に対してギリギリ」な状態は、N値のばらつきや施工誤差を考えると危険側だからだ。実務でも安全比は1.2〜1.5以上を狙うのが通例。1.0前後でOKを出すと、ボーリング本数を増やしたときに崩れる可能性が高い。基礎幅を広げるか、根入れを深くするかで余裕を持たせておくと、施工段階の変更指示を減らせる。

まとめ(地盤支持力 計算の次のステップ)

直接基礎の支持力検討は、N値・基礎形状・公式選択さえ揃えば数分で当たりがつく。このツールで qu qa σ qa/σ を一気に出し、パラメータを振って最適解を探すのがおすすめだ。深層地盤まで考慮した杭基礎の検討は杭基礎支持力計算へ、擁壁や土留めの安定検討は土圧・擁壁安定計算へ進むと、基礎・地盤まわりの設計を一通りカバーできる。質問や改善要望があれば、お問い合わせから気軽に連絡してほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。ベタ基礎の幅を1.5mと2.0mで何度も書き直した経験から、N値→qu→qaを一画面で追える透明さにこだわって作った。

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