積雪荷重計算ツール

垂直積雪量・屋根勾配・地域から長期/短期の設計積雪荷重を即算定

地域・勾配・屋根形状を入れるだけで、施行令86条+告示1455号に沿った長期/短期の設計積雪荷重をその場で算定。結果は荷重組合せツールへ直接連携できる。

シナリオプリセット

地域・積雪量

選択すると垂直積雪量と区分を自動入力。条例値があれば手入力で上書きできる

屋根条件

一般的な勾配屋根

20°

60°以上では雪が滑り落ちる前提でμb=0になる

設計積雪荷重

設計積雪荷重 S558.4 N/m²= S0 × μb = 600.0 × 0.931
軽(一般地域標準)

基本積雪荷重 S0

600.0 N/m²

30 cm × 20 N/m²·cm

屋根形状係数 μb

0.931

√cos(1.5×20°)

短期用積雪

558.4 N/m²

= S

長期用積雪

一般地域は考慮不要

本ツールは建築基準法施行令86条+告示1455号に基づく一般的な積雪荷重を算定する。地域指定の垂直積雪量は自治体条例で個別指定される場合があり、その場合は条例値を優先すること。非対称勾配・ドリフト積雪・偏荷重は本ツールの対象外。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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雪国の設計、まず「屋根に何kg雪が載るか」から決まる

1月の北陸、朝起きたら一晩で50cm積もっていた。そんな朝、家の屋根はどのくらいの重さに耐えている?——これ、感覚だとまったくつかめない。乾いた新雪1m³で約100kg、圧雪だと300kg、屋根の投影面積が80m²なら重い日は屋根上に2〜3tの雪が載っていることになる。

建築基準法施行令86条と平成12年建設省告示1455号は、この「屋根に載る雪の重さ」を設計段階で数値化するルールを定めている。垂直積雪量d(cm)に単位荷重(一般地域20、多雪区域30 N/m²·cm)を掛けて基本積雪荷重S0を出し、屋根勾配βから形状係数μbを出し、S = S0 × μb で設計積雪荷重が決まる。このツールは、地域プリセットを選んで勾配スライダーを動かすだけで、長期用と短期用を同時に出してくれる。

新潟・北海道・東北の戸建て設計、カーポートの耐雪検討、農業ハウスの柱サイズ決め——雪が絡む案件の「一次検討」をこの1画面で済ませるのが目的だ。手計算でも3分で出せる内容だけど、3分×案件数×見直し回数が積み上がると、思った以上に時間を食う。

なぜ作ったのか

雪国の設計実務を肌感として振り返ると、積雪荷重の計算そのものは難しくない。難しいのは「いま自分がやっている地域と屋根と条件で、適切な数値に手が届くまでに何ステップあるか」のほう。

既存の情報源を振り返ると、大きく3系統あった。1つ目は自治体の条例集——PDFを開いて市町村ごとの垂直積雪量表を探す。2つ目はメーカーや事務所が配布するExcelテンプレート(juno-e.com等)——ダウンロード、マクロ警告、セル保護解除、と前段が長い。3つ目は過去案件の類似ファイルを開いてコピペ——これが一番早いけど、勾配や屋根形状が違うとμbの再計算でミスが出やすい。

「地域を1クリックで選んで、勾配スライダーを動かしたら形状係数と荷重値が同時に更新される」——この当たり前の動きをする無料Webツールが、検索した限り見つからなかった。有料構造計算ソフトの一機能としてはあるけど、一次検討のために毎回ソフトを立ち上げるのは大げさ。スマホで現場から確認したい、という場面もカバーできない。

だから作った。多雪区域フラグは地域プリセットと連動して自動で切り替わるし、手動上書きもできる。β≧60°では「雪が滑り落ちる前提でμb=0」の判定が勝手に入る。結果は長期用(多雪のみ0.7S)と短期用(S)を同時に表示する。複雑な条件分岐を画面に晒さず、設計者が欲しい「Sの値」にまっすぐ辿り着けるようにした。

エクスポートボタンでブラウザに値を保存しておくと、次に荷重組合せツールを開いたときにSと多雪区域フラグをそのまま読み込める設計だ。G+P+Sの組合せを次の画面で検討するとき、Sを手打ちしなくて済む。

積雪荷重とは何か

積雪荷重 とは(施行令86条の考え方)

積雪荷重は、建築基準法施行令86条が「屋根に降り積もった雪による鉛直方向の荷重」として規定している設計荷重だ。計算式は次の一本にまとまる。

S = d × unit × μb

  • S: 設計積雪荷重(N/m²)
  • d: 垂直積雪量(cm)——地域ごとに条例で定められる
  • unit: 単位荷重(N/m²·cm)——一般地域20、多雪区域30
  • μb: 屋根形状係数——告示1455号でβの関数として規定

垂直積雪量は「平らな地表面に積もったと仮定したときの厚み」で、屋根上の実際の雪厚とは違う。屋根が傾いていると雪は滑り落ちたり偏ったりするので、形状係数μbで補正する——この二段構えが施行令86条の骨組みだ。

垂直積雪量 とは(地域ごとに条例で決まる)

垂直積雪量d(cm)は国土交通大臣が地域の区分を定め、特定行政庁が個別の数値を指定する。たとえば東京都区部はd=30cm前後、新潟県上越市は250cm超、北海道旭川は140cm、岐阜高山は90cm、といった具合に日本国内だけで10倍以上の開きがある。

日常のたとえで言うと、垂直積雪量は「その地域で設計上想定すべき最悪の積雪の深さ」だ。1日の大雪で決まるのではなく、過去の観測記録から50年再現期待値のような確率論的な枠組みで定められる。だからカレンダーで今日の積雪量を測るのとは次元が違う。

屋根形状係数 μb の求め方

告示1455号は屋根形状係数μbを以下のように定める。

μb = √cos(1.5 × β × π/180)   (β < 60°)
μb = 0                       (β ≧ 60°)

βは屋根勾配(度)。β=0°の陸屋根でμb=1(雪が満載)、β=30°でμb=0.841、β=45°でμb=0.619、β=60°以上は「雪がすべて滑り落ちる」想定でμb=0になる。平方根とcos関数が組み合わさっているのは、勾配によって「滑落する分」と「載ったまま残る分」のバランスを実験データに合わせ込んだ結果だ(詳細は§8)。

詳しくは建築基準法施行令86条(e-Gov法令検索)建設省告示1455号を参照。

単位荷重(一般地域20・多雪区域30)の根拠

単位荷重は「積雪1cmあたりの重さ」を表す係数で、一般地域は20 N/m²·cm、多雪区域は30 N/m²·cmが告示で定められている。多雪区域は「北海道、青森、秋田、山形、新潟、富山、石川、福井、鳥取、島根、京都、兵庫、滋賀、岐阜、長野、群馬、栃木、福島、宮城、岩手の一部地域」で、単位荷重が1.5倍に跳ね上がる。

一般地域と多雪区域の差は「雪が圧密して密度が上がるか」にある。積もっても数日で溶ける地域の雪は軽いまま、冬中屋根に載り続ける地域の雪は下層が圧雪化して重くなる。単位荷重はこの密度差を簡便に表現している。

実務での重要性

雪の重さを見誤ると何が起きるか

2014年2月、山梨県を中心に関東甲信地方で観測史上最深の積雪を記録した。甲府で114cm、前橋で73cm。このとき木造住宅・カーポート・ビニールハウスの倒壊事例が多発した。山梨県は多雪区域指定がない一般地域だったため、設計時の垂直積雪量d=30cm前後で検討されていた建物が、実際に100cm超の積雪を受けて設計荷重を大幅に超過した。

設計積雪荷重を過小評価すると、屋根梁の曲げ・せん断、柱の座屈、基礎の反力、壁の水平抵抗——すべての構造計算が連鎖的に甘くなる。特に怖いのが長期積雪荷重。多雪区域では雪が1〜3ヶ月屋根に載り続けるので、長期用荷重(S×0.7)がクリープ変形や接合部疲労の判定で効いてくる。短期(瞬時)の検討だけだと、冬の終わりに梁がたわんで戻らない、というトラブルが起きる。

設計段階でこの数値が効く場面

積雪荷重Sは、荷重組合せ式に必ず登場する。一般地域なら「G+P+0.35S+K(地震時)」、多雪区域なら「G+P+S(長期)」「G+P+0.35S+K(短期・地震時)」のように組合せ係数が変わる。ここでSの大小が間違っていると、全組合せの結果がずれる。

同じ戸建て住宅でも、東京のd=30cmと新潟のd=250cmでは、屋根に載る雪の重量が10倍近く違う。梁せいは1.5倍、柱断面は1.3倍、基礎の配筋は増し、屋根材も耐雪グレードに。積雪荷重の一次検討を外すと、後段の見積もりと実施設計が大ハズレになる。

条例値を見落とすと検査で指摘される

垂直積雪量は特定行政庁が個別に定めるため、自治体条例で国の指定より高い値が決まっていることがある。たとえば長野県の山間部は一律d=80cmではなく、市町村ごとに100cm・150cm・200cmと段階的に指定されている。確認申請時にこの条例値で再チェックされるので、一次検討で標準値のみ使っていると修正が入る。

このツールは標準値で概算を出したあとに「d」を手入力で上書きできるので、条例値を入れ直せば即座に再計算される。

活躍する場面

雪国の戸建て住宅設計——新潟・北海道・東北で木造2〜3階を設計するとき、一次検討でS値を確定し、梁断面を仮決めする。工務店との意匠調整で勾配を変えるたびにスライダーを動かして荷重変動を即確認できる。

カーポート・ガレージの耐雪検討——市販カーポートの耐雪性能は「積雪○cm相当」と表示されている。この「○cm」が設計積雪量dなのか屋根上雪厚なのかメーカーによって曖昧なので、Sに戻して比較する。柱の本数・アンカー径を決めるときに効く。

農業ハウス・温室の設計——園芸施設の安全対策強化指針は、ハウス構造部材の曲げ耐力を積雪荷重で検討することを求めている。パイプハウスの太さと本数を決めるとき、積雪荷重の一次値が出発点。

既存建物のリフォーム時の耐雪確認——屋根リフォームで雪止めを追加したり勾配を変えたりするときに、改修後のSを再計算する。告示1455号は「雪止め金具があってもμbは下げられない」と明示しているので、ここでの誤解を防ぐ意味でも使える。

基本の使い方

3ステップで設計積雪荷重が出る。

Step 1: 地域プリセットを選ぶ——「新潟県 上越」「東京都区部」など11種類から選択。垂直積雪量dと多雪区域フラグが自動で入る。条例で違う値が指定されている場合はdを手入力で上書き。

Step 2: 屋根の条件を入れる——屋根形状(切妻・陸屋根・片流れ・寄棟)と勾配β(スライダー0〜60°)を設定。60°を超える急勾配は「雪が滑る」前提でμb=0になる。

Step 3: 結果を確認——設計積雪荷重S(N/m²)が上段に、基本積雪荷重S0・形状係数μb・長期用(多雪のみ)・短期用・適用単位荷重が下段に表示される。「Sを荷重組合せツールへ送る」ボタンでSをブラウザに保存し、次画面に連携できる。

具体的な使用例・検証データ

実務で頻出する7ケースを計算した。入力値 → 結果 → 解釈の3点セットで確認してほしい(数値はツールの実装と一致する)。

ケース1: 東京都区部・一般地域・切妻屋根20°(d=30cm)

  • 入力: d=30, β=20°, 屋根形状=切妻, 一般地域
  • 結果: S0=600, μb=0.931, S=558 N/m², 短期=558 N/m²(長期は一般地域のため考慮不要)
  • 解釈: 東京で一般的な木造戸建ての勾配20°切妻屋根。S=558 N/m²は荷重組合せで0.35倍されるので実効195 N/m²程度。屋根重量そのもの(瓦屋根で600〜900 N/m²)より小さい寄与だが、地震時の組合せで効く。

ケース2: 新潟県上越・多雪区域・切妻屋根30°(d=200cm)

  • 入力: d=200, β=30°, 屋根形状=切妻, 多雪区域
  • 結果: S0=6000, μb=0.841, S=5045 N/m², 長期=3532 N/m², 短期=5045 N/m²
  • 解釈: 積雪2m想定の上越地域。屋根1m²あたり約500kg相当の雪が載る。長期荷重3532 N/m²は半年近く屋根に載り続けるので、木造梁のクリープたわみチェックが必須。柱脚の長期曲げにも効く。

ケース3: 急勾配60°(μb=0で雪が滑る)

  • 入力: d=100, β=60°, 屋根形状=切妻, 多雪区域
  • 結果: S0=3000, μb=0, S=0 N/m², 長期=0, 短期=0
  • 解釈: 60°の急勾配では雪が滑り落ちるのでS=0として扱う。ただし下に落ちた雪の処理(隣地への雪庇、通行人への危険)は別問題。構造計算ゼロでも実務運用は注意が必要。

ケース4: 北海道札幌・陸屋根0°(d=100cm・多雪区域)

  • 入力: d=100, β=0°, 屋根形状=陸屋根, 多雪区域
  • 結果: S0=3000, μb=1.000, S=3000 N/m², 長期=2100 N/m², 短期=3000 N/m²
  • 解釈: β=0°の陸屋根はμb=1で雪の減衰なし、屋根全面が設計積雪の満載を受ける。札幌のd=100cmで屋根1m²あたり約300kg。長期荷重2100 N/m²は鋼構造のフラット屋根で梁たわみの主因になる。ドレン詰まりによる水荷重加算も要注意。

ケース5: 北海道旭川・片流れ15°(d=140cm・多雪区域)

  • 入力: d=140, β=15°, 屋根形状=片流れ, 多雪区域
  • 結果: S0=4200, μb=0.961, S=4037 N/m², 長期=2826 N/m², 短期=4037 N/m²
  • 解釈: 旭川の片流れ15°は雪が落ちにくい緩勾配。屋根1m²あたり約400kg。片流れは棟側に雪が偏る傾向があり(ドリフト荷重)、本ツールでは均等分布前提なので偏荷重は別途加算検討。

ケース6: 長野県長野市・寄棟25°(d=80cm・多雪区域)

  • 入力: d=80, β=25°, 屋根形状=寄棟, 多雪区域
  • 結果: S0=2400, μb=0.891, S=2138 N/m², 長期=1497 N/m², 短期=2138 N/m²
  • 解釈: 長野市標準の寄棟屋根。4方勾配で雪の溜まりが分散するが、μb計算上は切妻と同じ(告示の形状係数は屋根形状名によらずβで決まる)。軒先の雪庇と樋の変形にも注意が必要な領域。

ケース7: 岐阜県高山・切妻45°(d=90cm・多雪区域)

  • 入力: d=90, β=45°, 屋根形状=切妻, 多雪区域
  • 結果: S0=2700, μb=0.619, S=1670 N/m², 長期=1169 N/m², 短期=1670 N/m²
  • 解釈: 高山の急勾配切妻。勾配が効いてμbが0.619まで減り、緩勾配の札幌ケース4(S=3000)の約半分。急勾配設計は構造的には有利だが、軒先からの落雪対策(雪庇、融雪設備、敷地境界確保)が必要。

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較——なぜ告示1455号のμb=√cos(1.5β)を採用するか

屋根勾配による雪荷重の低減を表現する式は、世界的には複数の流派がある。

  1. 日本(告示1455号): μb = √cos(1.5β)(β < 60°)
  2. 欧州(Eurocode EN 1991-1-3): μ1 = 0.8(β≦30°)、線形逓減で60°以上は0
  3. 北米(ASCE 7): Cs = 1 − (β−30°)/40(30° < β≦70°の滑り屋根)

日本の告示1455号は、建築基準法体系の中で唯一の法的拘束力を持つ式なので、国内設計では迷わずこれを使う。式そのものは昭和55年版告示(旧告示)から現行の√cos形式に改訂された経緯がある。旧告示はμb = (1 − β/60)の線形式で、緩勾配側で雪の滑落を過大評価していた問題があった。実験データに合わせるとβ=20°付近で雪が滑らず満載に近い挙動を示すため、平方根とcosを組み合わせた非線形式に変わった。

実装詳細——計算フローとブランチ条件

このツールの計算は次の順序で進む。

// 入力パース
const d = parseFloat(verticalSnowDepthStr);  // 垂直積雪量(cm)
const beta = parseFloat(roofPitchStr);        // 屋根勾配(度)
const heavy = (heavySnowAreaMode === 'on');   // 多雪区域フラグ

// 単位荷重(告示で一般20・多雪30 N/m²·cm)
const unit = heavy ? 30 : 20;

// 基本積雪荷重 S0 = d × unit
const S0 = d * unit;

// 屋根形状係数 μb(告示1455号)
const mu_b = beta >= 60
  ? 0
  : Math.sqrt(Math.cos(1.5 * beta * Math.PI / 180));

// 設計積雪荷重 S = S0 × μb
const S = S0 * mu_b;

// 長期/短期(多雪区域のみ長期検討)
const longTerm = heavy ? S * 0.7 : null;
const shortTerm = S;

分岐条件は3つだけ。(1) heavy === true なら単位荷重30・長期係数0.7、(2) heavy === false なら単位荷重20・長期考慮なし、(3) β ≧ 60° なら μb = 0。シンプルな構造だが、手計算だと電卓で√cos(1.5β)を打ち間違えるミスが多い箇所を、JavaScriptのMath関数で機械的に処理する。

計算例——新潟上越d=200cm・β=30°のステップ計算

ケース2の計算を手順追いで示すと次のとおり。

Step 1: 単位荷重の決定
  heavy = true → unit = 30 N/m²·cm

Step 2: 基本積雪荷重 S0
  S0 = d × unit = 200 × 30 = 6000 N/m²

Step 3: 形状係数 μb
  β = 30° → 1.5β = 45°
  cos(45° × π/180) = cos(0.7854) = 0.7071
  √0.7071 = 0.8409
  ∴ μb = 0.841

Step 4: 設計積雪荷重 S
  S = S0 × μb = 6000 × 0.8409 = 5045.4 N/m²

Step 5: 長期/短期
  長期 = S × 0.7 = 5045.4 × 0.7 = 3531.8 N/m²
  短期 = S = 5045.4 N/m²

こうして5045 N/m²(屋根1m²あたり約500kg相当)という具体的な値が出て、この先の梁断面検討に引き継がれる。β=30°のときにμb=0.841、β=45°で0.619、β=60°で0——スライダーを動かすと勾配依存性がそのまま可視化されるので、屋根形状の意匠決定と構造安全の両立を検討しやすい。

他ツールとの違い

積雪荷重を計算できるものはExcelテンプレートを中心にいくつか存在する。juno-eのExcelや各ゼネコンの内製シートは定番だが、どれも共通の弱点を抱える。勾配を変えたときに荷重が瞬時に動かないこと、そして後続の荷重組み合わせ計算と切り離されていることだ。

このツールは勾配βをスライダーで動かすと、μb=√cos(1.5β)の曲線に沿って設計積雪荷重Sがリアルタイムで追従する。β=0°でS0=d×単位荷重、β=45°で約0.59倍、β=60°でゼロ。数値だけ見ても実感しにくい勾配の効き方が、指を動かすだけで体感できる。雪国の設計で「勾配を5°寝かせたら荷重がどれだけ増えるか」を検討する場面で強い。

もう一つの差別化は/load-combinationとの受け渡し。「Sを荷重組合せツールへ送る」ボタンひとつで、算定したSと多雪区域フラグがブラウザに保存される。Excelだと転記時に桁を間違えたり単位を取り違えたりしがちだが、ワンクリックでの受け渡しならそのリスクがない。多雪区域では長期用の0.7S、短期用のSが両方生成されるので、G+P+0.7S、G+P+S+K(地震時)の各ケースにそのまま投入できる。

都道府県プリセットで垂直積雪量が一発補完される点も、自治体サイトを毎回調べる手間を省ける。もちろん条例指定がある地域は手入力で上書きできるので、柔軟性も担保している。

豆知識・読み物

雪の重さは季節で7倍変わる

降ったばかりの新雪の比重は約0.05〜0.1。1m³あたり50〜100kg程度しかない。ところが積もって締まった圧雪は0.3〜0.5、さらに春先の湿雪は0.5〜0.7にまで上がる。同じ積雪深1mでも、1月の乾雪なら100kg/m²、3月の濡れ雪なら700kg/m²と7倍の差が出る。

告示1455号が採用している単位荷重「一般20・多雪30 N/m²·cm」は、この変動を包絡したやや安全側の値だ。N/m²·cmという見慣れない単位は「1cm積もるごとに何ニュートン増えるか」を意味し、積雪深dをcmで掛ければそのままN/m²の荷重になる。設計実務では「1cmで約3kg/m²(多雪)」とざっくり覚えておくと暗算が効く。

過去最深積雪記録

気象庁が公表している国内の最深積雪記録は、滋賀県伊吹山の1182cm(1927年2月14日)。ただしこれは山岳観測地点の値で、人が住む平地の記録としては新潟県湯沢町の463cm(1927年)、青森県酸ヶ湯の566cm(2013年)が有名だ。詳細は気象庁 歴代1〜10位の値で確認できる。

自治体条例で指定される垂直積雪量はこうした極端値ではなく、再現期間50年程度の期待値を基準にしているが、近年の気候変動で一部地域では条例改定の動きもある。

融雪装置は荷重低減できない

「電熱ヒーターで屋根雪を溶かすから積雪荷重は考えなくていい」という発想は法規上通らない。告示1455号では融雪装置の有無にかかわらずμbの低減は認めておらず、停電・故障で溶けなかった場合のリスクを想定している。実務では融雪装置は「落雪防止・安全対策」の位置づけで、構造計算上は規定通りのSで検討するのが原則だ。

Tips

1. 雪止め金具があっても荷重は減らない

雪止め金具は落雪事故を防ぐためのもので、構造計算上の積雪荷重を減らす効果はない。逆に雪止めを付けることで屋根上に雪が溜まり続けるので、設計時はμbをそのまま適用してS=S0×μbで検討する。

2. 陸屋根はドレン詰まりを想定する

β=0°の陸屋根はμb=1.0で荷重が最大になる。さらに融雪水が凍結してドレン(排水口)が詰まると、水が滞留して想定外の重量が加わる。陸屋根設計では積雪荷重に加えて「滞水荷重」も検討し、ドレンのオーバーフロー管を必ず設ける。

3. 多雪区域では長期検討を忘れない

多雪区域の構造設計で最も抜け漏れやすいのが、長期荷重組合せにS×0.7を入れること。G+P+0.7Sで長期たわみや長期応力を確認しないと、クリープ変形や地盤沈下の評価が甘くなる。このツールは多雪フラグONで長期用荷重を自動表示するので、組合せ計算の入力漏れを防げる。

4. 地域プリセットは目安、条例値を優先

ツールに登録した垂直積雪量は代表値で、実際には市町村単位で条例値が指定されている。新潟県長岡市は250cm、富山市は150cm、と同じ県でも自治体で変わる。設計物件の所在地の条例を必ず確認して、必要なら手入力で上書きする。

5. 勾配は「滑る屋根」に逃げる設計も

急勾配で雪を自然に落とす設計は荷重を減らせるが、落雪事故のリスクを別途設計する必要がある。敷地境界や玄関位置との関係で落雪許容範囲が取れない場合、多少荷重を背負ってでも緩勾配+雪止め案のほうが安全なこともある。

FAQ

Q1. 長期用と短期用で係数が違うのはなぜ?

多雪区域の積雪は数ヶ月にわたって屋根に乗り続ける長期荷重としての性格と、一時的なピーク値としての短期荷重の両面を持つ。告示では最大積雪深の期待値をSとし、長期用は0.7倍したS×0.7で検討するよう定めている。これは「年間平均的に乗っている雪の重さ」を長期とみなす工学的判断。一般地域は雪が数日で溶けるため長期扱いしない。

Q2. 垂直積雪量の条例値はどこで調べる?

各自治体の建築指導課が公開している「建築基準法施行細則」または「建築物の垂直積雪量に関する告示」を参照する。「○○市 垂直積雪量 告示」でWeb検索すると多くの自治体でPDFが見つかる。見つからない場合は建築指導課に直接問い合わせる。建築基準法施行令第86条により、条例値は本ツールのプリセット値より優先される。

Q3. 融雪装置があれば積雪荷重は低減できる?

できない。告示1455号には融雪装置による低減規定がなく、停電・故障で装置が働かなかった場合を想定して規定通りのSで設計する。融雪装置は落雪防止・居住性確保のための付帯設備という位置づけだ。ただし屋根面に「常時通電型融雪パネル」を設置する場合も、構造計算上は規定通りの積雪荷重を見込むのが原則。

Q4. ドリフト積雪(偏荷重)はこのツールで検討できる?

本ツールは一様分布の積雪荷重のみに対応しており、風によって屋根の片側に偏って溜まるドリフト積雪は対象外。ドリフトは主に高低差のある屋根や庇下で発生し、告示1455号第3項で偏分布の検討が求められる。多雪区域で高低差屋根を設計する場合は、別途AIJ「建築物荷重指針」第5章のドリフト分布式で検討する必要がある。

Q5. 勾配β=60°以上だとμb=0になるのはなぜ?

告示1455号ではβ≧60°で雪が自重により滑落することを前提にμb=0とする。ただしこれは「雪止め金具がないこと」が大前提。急勾配屋根でも雪止めを付けるとμb=0にはできない。また60°は境界値で、59°と60°で荷重が劇的に変わる(μb≒0.33→0)ため、勾配の申請値は図面と照合して慎重に決める。

まとめ

積雪荷重は「地域の垂直積雪量」と「屋根形状係数μb」の掛け算で決まる。都道府県プリセットから選んで勾配スライダーを動かせば、基本積雪荷重S0・形状係数μb・設計積雪荷重Sに加えて長期/短期用の値まで一度に揃う。

算定したSはそのまま/load-combinationに渡して、G+P+0.7Sや地震時組合せの検討に使える。仮設足場の雪荷重検討なら/scaffold-load、型枠の雪荷重を含む打設期の検討なら/formwork-pressureと連携させると、雪国の設計フローがWebブラウザだけで完結する。

条例値や偏分布など本ツールの対象外の項目は免責事項を確認のうえ、お問い合わせから要望を送ってもらえると追加検討の参考になる。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。北陸で冬の現場を見るたびに、屋根に載る雪の重さがうまく数字にならないモヤモヤがあった。このツールは勾配スライダーで荷重の変化を体感できるところに一番こだわった。

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