荷重組合せ検定ツール

G/P/K/W/Sの長期・短期組合せを一画面で比較。多雪区域も自動切替。

建築基準法施行令82条 表3の基本組合せを自動展開。G/P/K/W/Sの5荷重を入力すると、長期・短期8ケースを一画面で比較して支配ケース(最大値)を色分け表示する。

荷重入力(kN)

自重・仕上げ

目安: 2900 N/m²

ベースシア等

風圧×受圧面

単位荷重×屋根

設計条件

ONで長期G+P+0.7S・短期に0.35S加算

積載荷重の目安(N/m²)。Pには自動反映されない

許容荷重(任意)

単位: kN

単位: kN

断面性能を含まない簡易荷重比。実設計では応力度比で検討すること

支配ケース

長期15.00kN / G + P
長期一般
短期23.00kN / G + P + K
短期 地震(一般)

全組合せ一覧

ケース値 (kN)
長期一般G + P15.00
短期 積雪G + P + S18.00
短期 暴風(一般)G + P + W21.00
短期 地震(一般)G + P + K23.00
本ツールは建築基準法施行令82条表3の基本組合せを自動展開する教育・検算用ツール。特定建築物用途の追加係数、限界耐力計算法、衝撃・温度荷重は含まない。実設計では有資格者による最終確認を。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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📘 構造設計・荷重計算の実務書

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荷重組合せは「覚える」のではなく「動かす」のが早い

建築構造の試験勉強で一番つまずくのが、施行令82条表3の荷重組合せじゃないだろうか。G+P、G+P+S、G+P+W、G+P+K、さらに多雪区域だと0.7Sや0.35Sが加わって式が倍になる。教科書を開いて表を見比べながら電卓を叩いていると、「どれが支配ケースなんだっけ」と頭が止まる。

そこで作ったのがこのツール。固定荷重G・積載荷重P・地震荷重K・風荷重W・積雪荷重Sの5つを入れて、多雪区域のON/OFFを切り替えるだけ。長期と短期の組合せが自動で展開され、値の大きい「支配ケース」がハイライトで浮かび上がる。8ケース全部が1画面に並ぶから、「この条件だと地震より風が効くんだ」といった肌感覚が数秒で掴める。

受験生の検算にも、実務の当たり付けにも使える。一貫構造計算ソフトを回す前に、どのケースが効くかを目で見てから設計に入ると、後の手戻りが減る。

なぜ作ったのか

構造設計の実務では、荷重組合せを「毎回ゼロから計算する」ことはあまりない。一貫構造計算ソフトが全部やってくれるからだ。ただし、「なぜそのケースが支配なのか」を理解していないと、ソフトの出力を鵜呑みにするしかなくなる。筆者自身、新人のころに「短期は地震と風のどちらで検定されているか」を説明できず、上司から「数字が出るからOKじゃなくて、根拠を言えないとダメ」と詰められた経験がある。

教科書を開けば表はある。Excelで自作テンプレを作った先輩もいる。ただ、既存ツールは「式を入れる欄と出力欄が分離していて、値を変えても全ケースが即時に動かない」ものばかり。多雪区域フラグを切り替えると0.7Sと0.35Sが同時に現れる、という直感的な挙動が無い。教科書の表を目で追って、Excelの該当セルだけ書き換える作業を何度もするのは、時間の無駄だ。

構造一級建築士の試験対策でも、「多雪区域の短期組合せはG+P+W+0.35S、G+P+K+0.35S」と暗記で詰め込むのでは応用が効かない。数字を変えて何度も動かして、「多雪区域のとき0.35Sが加わることで風支配から地震支配に反転する瞬間」みたいな感覚を掴むほうがずっと記憶に残る。

このツールは「値を入れて眺める」こと自体を学習の道具にするために作った。単なる計算機ではなく、組合せ展開を見える化する教材でもある。

荷重組合せとは何か

建築基準法施行令82条 の仕組み

建築の構造計算は「許容応力度設計」と呼ばれる方式で行う。部材に生じる応力度(単位断面積あたりの力)が、材料の許容応力度を超えないことを確認する設計法だ。ここで問題になるのが、「どの荷重をどう組合せて応力を計算するか」。現実の建物には、重力(自重・積載)、地震、風、積雪など複数の荷重が同時または別々にかかる。全部を単純に足すと過大設計になるし、1つずつ独立で計算すると危険側になる。

この「組合せ方」を法令で決めているのが、建築基準法施行令82条(許容応力度等計算)と表3の荷重組合せ表だ。基本の考え方はシンプル。

長期:G + P
短期:G + P + S(積雪)
短期:G + P + W(暴風)
短期:G + P + K(地震)

Gは固定荷重(Dead Load)、Pは積載荷重(Live Load)、Sは積雪荷重(Snow)、Wは風荷重(Wind)、Kは地震荷重(Earthquake、K=seismic Kyojin load)。長期は「常にかかり続ける荷重」、短期は「たまにかかる大きな荷重」という区別で、許容応力度の倍率が違う(長期1.0、短期1.5)。

多雪区域の特例

北海道や東北、北陸のように積雪が数メートル単位になる地域では、「雪は常に屋根に乗っている」と考えるのが現実的だ。そこで多雪区域という区分が設けられ、長期組合せにも積雪荷重が入る。

長期:G + P + 0.7S
短期:G + P + S
短期:G + P + W + 0.35S
短期:G + P + K + 0.35S

0.7と0.35という係数は、「長期なら年間平均的な積雪量の7割」「短期(地震時・暴風時)にも雪が少しは乗っている前提で35%を加算」という考えに基づく。詳しい根拠は建築基準法施行令(e-Gov法令検索)の第82条表3および第86条で確認できる。

許容応力度の長期・短期倍率

許容応力度は材料ごとに決まっていて、たとえばSS400鋼材の基準強度Fは235 N/mm²。長期許容応力度はF/1.5≒156 N/mm²、短期許容応力度はF×1.0=235 N/mm²(=長期×1.5)。これは「常時の安全余裕は大きく取り、たまにしか来ない地震・風は発揮強度ギリギリまで使っていい」という工学的判断だ。詳細は日本建築学会『鋼構造設計規準』や各構造設計入門書を参照してほしい。

実務での重要性

荷重組合せの読み違いは、設計ミスに直結する。たとえば多雪区域にもかかわらずG+Pだけで長期検定していたら、積雪で屋根が垂れる。逆に、雪が少ない地域で0.7Sを入れてしまうと過大設計になり、鋼材量が必要以上に増える。

2014年2月の関東甲信地方の大雪では、山梨県や群馬県で多くの倉庫・体育館・ビニールハウスの屋根が崩落した。これは「その地域が多雪区域に指定されていなかったため、設計時に長期積雪を考慮していなかった」建物が多く含まれていた。積雪の再現期間設定と多雪区域の指定は、設計段階では見過ごされがちだが、実際に雪が降れば構造物の寿命を決める。この事故を受けて国土交通省の積雪荷重に関する告示(平成12年建設省告示第1455号)が再確認され、地域区分の見直し議論も起きた。

支配ケースの読み違いも厄介だ。「短期は地震で決まるだろう」と思い込んで地震荷重だけ精査し、風荷重の検討を省略すると、高層建物や沿岸部の建物でG+P+Wが支配になる瞬間を見逃す。沖縄の学校建築でW=40 kNK=25 kNといった条件では、風のほうが地震より1.6倍大きい。このとき風を軽視した設計は、台風で窓や外装が吹き飛ぶリスクを抱える。

また、意匠設計者が構造設計者とやり取りするときに「ざっくりの鉛直荷重」を示すだけでは、多雪/一般/強風地域で挙動が変わるケースを見落としがちだ。「G+Pだけで梁を仮選定したが、多雪区域なのでG+P+0.7Sで再検討したら一回り大きい断面が要った」みたいな手戻りが発生する。支配ケースを先に見える化しておくと、この手戻りを最小化できる。

活躍する場面

構造一級建築士の受験勉強:試験では荷重組合せの計算が頻出する。式を暗記するのではなく、値を変えて支配ケースがどう動くかを体感的に掴むのが合格への近道。

意匠から構造検討に入る設計者:プラン検討段階で「この規模の建物だとG+P+Kが効きそう」と当たりを付けられると、初期の断面仮定が精度良く決まる。RC/S造のどちらで組むかの判断材料にもなる。

一貫構造計算ソフトを回す前の当たり付け:本計算の前に、「長期と短期の支配は何か」を把握しておくと、ソフト出力を読むスピードが上がる。エラーチェックにも使える。

確認申請の検算:提出前のクロスチェックで、「多雪区域の短期暴風ケースはG+P+W+0.35S」が正しく入っているかを手計算で確認する用途。

Kindle『建築構造設計入門』等の副読教材:荷重組合せを自分で動かせる環境があると、読書だけでは掴めない「式の癖」が体で覚えられる。

基本の使い方

ステップ1 — 荷重を入力する:固定荷重G・積載荷重P・地震荷重K・風荷重W・積雪荷重SをkN単位で入れる。建物用途のプリセットを選ぶと、住宅・事務所・店舗・学校・倉庫の標準的な積載荷重が参考表示される。

ステップ2 — 多雪区域フラグを設定する:敷地が多雪区域に該当するなら「多雪区域」を選ぶ。長期組合せにG+P+0.7Sが追加され、短期の暴風・地震ケースにも0.35Sが自動で加わる。

ステップ3 — 支配ケースを確認する:長期と短期それぞれの「支配ケース(最大値)」が色付きカードで表示される。下の全組合せ一覧で各ケースの値と式も並ぶから、「なぜそれが支配か」を一目で判断できる。任意で長期許容荷重を入れると、簡易の荷重比も出る。

具体的な使用例

ケース1:事務所ビル(一般地域)

入力値:G=10, P=5, K=8, W=6, S=3 kN、多雪区域OFF。

展開結果:

ケース値 [kN]
長期一般15G + P
短期 積雪18G + P + S
短期 暴風(一般)21G + P + W
短期 地震(一般)23G + P + K

長期支配はG+P=15 kN、短期支配はG+P+K=23 kN(地震)。標準的な都市部の事務所ビルでは地震が効くパターン。設計者の感覚通りの結果だ。

ケース2:事務所ビル(多雪区域)

同じ建物を多雪区域(例:新潟市)に移した想定。G=10, P=5, K=8, W=6, S=3, 多雪区域ON。

ケース値 [kN]
長期多雪17.1G + P + 0.7S
短期 積雪18G + P + S
短期 暴風(多雪)22.05G + P + W + 0.35S
短期 地震(多雪)24.05G + P + K + 0.35S

長期はG+P+0.7S=17.1 kN(+2.1 kN増)、短期地震は24.05 kN(+1.05 kN増)。多雪区域にするだけで長期が14%、短期地震が4.5%増える。

ケース3:倉庫(一般地域、大積載)

入力値:G=25, P=30, K=20, W=10, S=2 kN、多雪区域OFF。倉庫用途では積載荷重が大きい。

ケース値 [kN]
長期一般55G + P
短期 積雪57G + P + S
短期 暴風(一般)65G + P + W
短期 地震(一般)75G + P + K

長期55 kN、短期地震支配で75 kN。積載が大きい倉庫では地震荷重も連動して大きくなるため、K=20がそのまま支配の原動力になる。

ケース4:沿岸部の店舗(強風地帯)

入力値:G=20, P=15, K=18, W=30, S=5 kN、多雪区域OFF。沿岸・風の強い地域を想定。

ケース値 [kN]
長期一般35G + P
短期 積雪40G + P + S
短期 暴風(一般)65G + P + W
短期 地震(一般)53G + P + K

短期支配がG+P+W=65 kN(暴風)。地震の53 kNを風が12 kN上回る。W > K × 1.5 となる沿岸・高層では風支配になる典型例。このケースでは地震だけを見ていては危険側の設計になる。

ケース5:住宅(多雪+地震)

入力値:G=15, P=8, K=12, W=7, S=10 kN、多雪区域ON。雪が多くて地震もそこそこ来る地域を想定。

ケース値 [kN]
長期多雪30G + P + 0.7S
短期 積雪33G + P + S
短期 暴風(多雪)33.5G + P + W + 0.35S
短期 地震(多雪)38.5G + P + K + 0.35S

長期は0.7S=7 kNが加わり30 kN。短期地震がG+P+K+0.35S=38.5 kNで支配。多雪区域の住宅では、積雪による長期増加も無視できず、断面選定で一回り大きくなることが多い。

ケース6:沖縄の学校(強風地帯)

入力値:G=30, P=20, K=25, W=40, S=0 kN、多雪区域OFF。沖縄は台風常襲・積雪ゼロの地域。

ケース値 [kN]
長期一般50G + P
短期 積雪50G + P + S
短期 暴風(一般)90G + P + W
短期 地震(一般)75G + P + K

短期暴風が90 kNで圧倒的支配。地震の75 kNに15 kN差をつける。沖縄のような台風常襲地では、風が地震を大きく上回るケースが珍しくない。耐震性だけで語れない設計の典型例。

これら6ケースを並べると、「多雪・一般」「強風・標準」「住宅・倉庫」で支配ケースが入れ替わることが目で追える。数値を変えて何度も動かすうちに、組合せの癖が自然に身についていく。

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較

荷重組合せを扱うアプローチは大きく3つある。

A. 静的テーブル表示:教科書のように表を見せるだけ。入力に応じた再計算ができない。動かして学ぶ用途には不向き。

B. 全組合せ総当たり(係数行列):EurocodeのようにΨ0、Ψ1、Ψ2の係数行列を使い、全ケースを掛け算で生成。柔軟だが、日本の施行令82条表3の挙動(多雪切替など)を直接表現しにくい。

C. 条件分岐による動的展開(採用):施行令82条表3の構造どおりに、heavyフラグで長期・短期の式を分岐する。日本式の規定に素直で、コードが読みやすい。教育用途には最適。

このツールはCを採用した。施行令の条文構造とコードが1対1に対応しているので、「条文を開きながらコードを読む」学習もできる。

実装詳細

入力をパースして、多雪フラグに応じて組合せ配列を動的に生成する。

const G = parseFloat(GStr);
const P = parseFloat(PStr);
const K = parseFloat(KStr);
const W = parseFloat(WStr);
const S = parseFloat(SStr);
const heavy = heavySnowAreaMode === "on";

const combos = [];

// 長期
if (!heavy) {
  combos.push({ name: "長期一般", term: "long", value: G + P, formula: "G + P" });
} else {
  combos.push({ name: "長期多雪", term: "long", value: G + P + 0.7 * S, formula: "G + P + 0.7S" });
}

// 短期 積雪
combos.push({ name: "短期 積雪", term: "short", value: G + P + S, formula: "G + P + S" });

// 短期 暴風・地震(多雪で0.35S加算)
const extra = heavy ? 0.35 * S : 0;
combos.push({
  name: heavy ? "短期 暴風(多雪)" : "短期 暴風(一般)",
  term: "short",
  value: G + P + W + extra,
  formula: heavy ? "G + P + W + 0.35S" : "G + P + W",
});
combos.push({
  name: heavy ? "短期 地震(多雪)" : "短期 地震(一般)",
  term: "short",
  value: G + P + K + extra,
  formula: heavy ? "G + P + K + 0.35S" : "G + P + K",
});

// 支配ケース
const longCombos = combos.filter((c) => c.term === "long");
const shortCombos = combos.filter((c) => c.term === "short");
const governingLong = longCombos.reduce((m, c) => (c.value > m.value ? c : m));
const governingShort = shortCombos.reduce((m, c) => (c.value > m.value ? c : m));

支配ケースはreduceで最大値を取得しているだけ。至ってシンプル。多雪フラグで3ケース、一般で4ケースに分岐するため、全体で最大4〜5ケースを比較する。

0.7と0.35の由来

長期の0.7Sは、「多雪区域では年間を通して屋根に雪が積もっている期間が長く、平均すると設計用積雪の7割程度が常時載荷状態」という考え方から来ている。一方、短期の0.35Sは「地震・暴風と大雪が同時に起きる確率は低いが、まったく0にするのは危険側」として、設計積雪の35%を加算する折衷案だ。

これはEurocode EN 1990の組合せ係数Ψ(プサイ)に近い思想で、日本独自の建築基準法施行令82条の中で数値化されている。Eurocodeでは、準永続(Ψ2)が0.2〜0.5、まれ(Ψ1)が0.2〜0.6、特性(Ψ0)が0.5〜0.7の範囲で細かく規定されている。日本の0.7/0.35はこの中間的な値を2段階に単純化した形だ。詳しくはEurocode EN 1990 - Basis of structural design(Wikipedia)も参照。

計算例(ケース2・事務所ビル多雪)

入力:G=10, P=5, K=8, W=6, S=3, heavy=true。

長期多雪:   G + P + 0.7×S = 10 + 5 + 0.7×3 = 10 + 5 + 2.1 = 17.1 kN
短期 積雪:  G + P + S     = 10 + 5 + 3     = 18.0 kN
短期 暴風:  G + P + W + 0.35×S = 10 + 5 + 6 + 0.35×3 = 10 + 5 + 6 + 1.05 = 22.05 kN
短期 地震:  G + P + K + 0.35×S = 10 + 5 + 8 + 0.35×3 = 10 + 5 + 8 + 1.05 = 24.05 kN

governingLong  = max(17.1)               = 17.1 kN(長期多雪)
governingShort = max(18, 22.05, 24.05) = 24.05 kN(短期 地震(多雪))

この計算をミリ秒単位で動的に繰り返しながら、全ケースを一画面に並べる。値を変えた瞬間に支配ケースが入れ替わるのが見えるので、「多雪ONで長期支配が+14%、短期地震が+4.5%」みたいな感覚が育っていく。

他の荷重検討ツールとの違い

既存の「荷重組合せ計算ツール」の多くは、Excelテンプレートか紙の表3対応表だった。Excel版は式がセルに固定されていて、多雪区域フラグをONにしても0.7Sや0.35Sが自動で立ち上がらない。紙の表3を片手にひたすら電卓を叩く方式は、1ケース計算するだけで3分かかる。

このツールは8ケース(一般地域4 + 多雪区域4)を1画面で同時展開する。GPKWS の5値を入れた瞬間、長期・短期×積雪・暴風・地震の全組合せが並び、支配ケースが色付きで浮き上がる。どの荷重が支配しているか、設計者の直感と数値が一致するかを1秒で確認できる。

多雪区域スイッチの切替も強みだ。一般地域から多雪区域に切り替えると、長期式が G+P から G+P+0.7S に切り替わり、短期式に 0.35S が加算される。同じ物件で地域を間違えたらどう変わるかをスイッチ1つで比較できるのは、紙テンプレートでは不可能な体験。

さらにサイト内のwindpress(風圧計算)で算出した風荷重をそのまま W に、beam-strength(梁の安全審判員)で部材ごとの長期・短期許容荷重を出してから本ツールの許容荷重欄に入れる、という連携フローが組める。荷重算定→組合せ→断面検定を1つのサイトで完結させる設計思想は、商用一貫ソフトに近い。

豆知識

0.7と0.35はどこから来た?

多雪区域の長期組合せに現れる係数 0.7 は、積雪荷重の再現期待値の低減率だ。多雪区域では年間を通して積雪がある期間が長く、単年度の最大積雪量(50年再現期待値)ではなく、恒常的に作用する期待値として70%を長期に見込むという考え方。短期側の 0.35 はその半分で、暴風や地震と積雪が同時に起きる確率を踏まえた更なる低減になっている。

欧州の EN 1990(Eurocode 0)でも似た仕組みが Ψ係数(組合せ係数) として定義されている。ΨOは主荷重以外の同時発生値、Ψ1は頻度値、Ψ2は準永久値で、積雪荷重のΨ2は標高1000m未満で0.0、1000m以上で0.2が基本。日本の0.7と比べると大人しく見えるが、これは日本の多雪地帯の積雪量が欧州基準の「非常に多い」ゾーンに相当するためで、単純な大小比較はできない。

大地震+積雪は同時に起きるのか

短期 G+P+K+0.35S は、大地震発生時に屋根に積雪が残っている状態を仮定している。確率的には、50年再現期待値の地震と最深積雪が同じ瞬間に重なるのは非常に稀だが、1960年代の新潟地震や2004年の中越地震では、冬季発災時に屋根雪で重量化した住宅の倒壊が多数報告された。0.35という低めの係数にも理由がある。

限界耐力計算法との違い

本ツールが扱うのは許容応力度等計算(ルート2、ルート3)で使う組合せ。限界耐力計算法 では荷重倍率が別体系になり、稀に発生する地震に対する損傷限界、極めて稀な地震に対する安全限界で荷重係数を切り替える。このツールは施行令82条表3の枠内で動くので、限界耐力計算のモードには今のところ対応していない。

Tips

  1. 支配ケースが入れ替わる境界を探す — 風荷重 W と地震荷重 K を少しずつ動かすと、短期支配が地震→暴風に切り替わる瞬間が見える。高層建築・沿岸部では W > K が普通に起きるため、設計初期に境界を把握しておくと、その後の詳細検討で地震と風のどちらを優先すべきか判断が早い。

  2. 荷重比は応力度比ではない — 本ツールの荷重比は 支配荷重 / 許容荷重 の単純比。実際の設計では断面係数・有効断面・座屈低減などを経た 応力度比(σ/f) が使われる。部材レベルの最終判定には beam-strength(梁の安全審判員)column-buckling(柱座屈)で応力度まで落としてから確認する。

  3. 一貫計算ソフトとの突合 — SS7やBUILDING-KIZUKURIなどの商用一貫計算ソフトは、同じ施行令82条に従っているが、プリセット値や係数の扱いが微妙に違う(例: 積載荷重の使い分け1/使い分け2、床荷重と柱・基礎荷重の区別)。本ツールの数値をそのまま投げる前に、一貫ソフト側の積載荷重の扱いを確認してから値を合わせると、原因不明の差異に悩まされにくい。

  4. 多雪区域の線引きは自治体条例を確認 — 法令上は垂直積雪量1m以上の区域が多雪区域だが、実務では自治体条例や特定行政庁の告示で指定されている。該当エリアかどうかはGIS資料で必ず裏取りする。

FAQ

Q1. Fe(地震荷重の割増係数)やFes(剛性率・偏心率による割増)も計算できる?

できない。本ツールは組合せの展開と支配ケースの判定に特化している。K 欄に入れる値は、Fe・Fesや層せん断力係数 Ci を反映済みのベースシア(層せん断力)を想定している。Ci・Rt・Ai分布まで含めた計算は一貫計算ソフトや別の計算シートで別途行い、その結果を K に入力する使い方を推奨する。

Q2. 積載荷重Pはどの値を使えばいい?

施行令85条表に従い、**用途別・用途別の使い分け(床の計算・大梁/柱/基礎の計算・地震力算定)**で3種類に分けて使うのが基本。本ツールの用途プリセット(住宅1800 N/m²、事務所2900 N/m²など)は床の計算用の代表値。柱や基礎の検討では低減係数がかかり、地震力算定用はさらに小さな値になる。検討対象部位に合わせた値を入力してほしい。

Q3. 長期1.0と短期1.5の倍率はどこから?

許容応力度設計の根拠式が 基準強度F を基にしており、長期許容応力度 = F / 1.5短期許容応力度 = F / 1.0 で定義されているため。つまり基準強度に対する安全率が長期1.5・短期1.0で、両者の比が1.5倍になる。鋼材の降伏点から逆算した許容応力度が元で、JIS G 3101・G 3136などの規格値と建築基準法施行令90条・96条で対応している。短期時は地震や暴風などの稀な事象なので、許容応力度を上げて経済設計できるという発想だ。

Q4. 衝撃荷重・温度荷重・土圧・水圧はどう扱う?

本ツールの5荷重(G・P・K・W・S)には含まれない。衝撃荷重は積載荷重Pに含めて割増するのが実務的な扱いで、クレーン走行路や工場床では係数1.2〜1.5を見込む。温度荷重・土圧・水圧は施行令83条の「特殊な荷重」扱いで、個別に組合せを定める必要がある。橋梁や地下構造物では別途検討が必要になるので、本ツールで出た値にさらに追加項を加える形で使ってほしい。

Q5. 「一般地域」なのに多雪区域フラグをONにしても大丈夫?

フラグをONにすると長期に0.7Sが加算されるため、一般地域の建物で使うと過大設計になる。法令上、一般地域では長期にSを含めないのが正解。逆に多雪区域でフラグをOFFにすると、長期に積雪を含めない過小設計になる。自治体の多雪区域指定を確認してからフラグを切り替えるのが鉄則。

まとめ

荷重組合せは覚えるより動かすのが早い。G+PG+P+SG+P+WG+P+K の4パターンに多雪区域の0.7S・0.35Sを加えた8ケースを一画面で可視化し、支配ケースを色で教えてくれるのが本ツールの役目。

風荷重の算定はwindpress(風圧計算)、梁や柱の応力度検定はbeam-strength(梁の安全審判員)、柱の座屈検討はcolumn-buckling(柱座屈)で行い、本ツールで組合せの支配ケースを判定する、という流れで1物件の主要検討が揃う。気になる点や計算結果の相談はお問い合わせから気軽にどうぞ。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。構造1級の勉強で表3を何度も電卓で叩いた。値を変えた瞬間に支配ケースが動くツールが当時あれば、どれだけ楽だったことか。

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