溶接記号デコーダー

JIS Z 3021の溶接記号を選択すると断面図をSVGで描画し、意味を日本語で解説

JIS Z 3021の溶接記号を選択すると断面図をSVGでリアルタイム描画し、記号の意味を日本語で解説。

記号選択

T継手・重ね継手のすみ肉溶接

寸法

断面図

すみ肉6mm母材溶接金属

デコード結果

溶接記号

記号の意味

矢の側にすみ肉溶接

JIS参照

JIS Z 3021:2010 溶接記号

本ツールはJIS Z 3021:2010に基づく学習・確認用です。正式な図面作成には最新のJIS規格をご参照ください。

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図面の溶接記号、自信を持って読めるだろうか

製造図面を受け取って、溶接記号の欄をじっと見つめた経験はないだろうか。基線の上下に並ぶ記号と数字の羅列。V形なのかレ形なのか、矢の側なのか反矢の側なのか——パッと見で判断できる人は意外と少ない。

溶接記号はJIS Z 3021で体系的に定められているが、規格書をめくりながら一つひとつ照合するのは骨が折れる。しかも、記号を読み間違えれば施工ミスに直結する。開先角度が違えば溶接量が変わり、脚長を取り違えれば強度不足になる。

この「溶接記号デコーダー」は、基本記号を選んで寸法を入力するだけで、断面図をSVGで描画し、記号の意味を日本語で解説してくれるツールだ。JIS Z 3021の15種類の基本記号に対応し、補助記号・仕上げ方法まで含めた完全なデコードが可能。図面を前にして「この記号、何だっけ?」と迷う時間をゼロにする。

規格書のPDFと格闘した日々から生まれたツール

きっかけは、自分自身がJIS Z 3021の規格書と格闘していた経験だ。

PDFで配布される規格書は検索性が低く、目的の記号にたどり着くまでに何ページもめくる必要がある。しかも記号の一覧表を見ても、実際の断面形状がイメージしにくい。「V形突合せ」と文字で書かれても、開先角度60°でルート間隔2mmの断面がどんな形になるのか、頭の中で組み立てるのは初学者にはハードルが高い。

既存のWebサイトにも溶接記号の一覧表はある。だが、ほとんどが静的な画像の羅列で、寸法を変えたときの断面イメージが確認できない。「すみ肉の脚長を6mmから8mmに変えたら断面図はどう変わる?」——そんな素朴な疑問に答えてくれるツールがなかった。

さらに厄介なのが、補助記号と仕上げ方法の組み合わせだ。全周溶接にグラインダ仕上げを指定したとき、記号文字列はどう並ぶのか。現場溶接マークはどこに付くのか。組み合わせパターンが膨大で、一覧表だけではカバーしきれない。

だから作った。記号を選んで寸法を入れれば、断面図がリアルタイムで描かれ、JIS準拠の記号文字列と日本語の意味が同時に表示されるインタラクティブなデコーダーを。規格書のPDFをめくる必要はもうない。

溶接記号とは——JIS Z 3021が定める「溶接の言語」

溶接記号 読み方の基本構造

溶接記号は、図面上で溶接の種類・位置・寸法を伝えるための「共通言語」だ。日本ではJIS Z 3021(溶接記号)が規格を定めている。

日常生活でたとえるなら、料理のレシピに近い。「鶏もも肉を一口大に切って、中火で5分焼く」というレシピが、素材・切り方・火加減・時間をひとまとめに伝えるように、溶接記号は溶接の種類・位置・開先形状・寸法をひとつの記号体系で伝達する。

溶接記号の構成要素は大きく3つに分かれる。

1. 基線・矢・尾

溶接記号の骨格となるのが「基線」「矢」「尾」の3要素だ。基線は水平の実線で、ここに各種記号や寸法を配置する。矢は基線の端から溶接箇所を指し示す線。尾は基線の反対側の端で、特記事項を記入する場所になる。

2. 基本記号

基線の上下に配置される記号で、溶接の種類を表す。JIS Z 3021では15種類が定められている。

  • 突合せ溶接: I形、V形、U形、J形、レ形(ベベル)、フレアV形、フレアベベル形
  • すみ肉溶接: T継手や重ね継手に用いる三角形の記号
  • その他: プラグ・スロット、スポット、シーム、へり、肉盛り、裏波、溶落し

3. 寸法・補助記号・仕上げ方法

基本記号に付随して、脚長・開先角度・ルート間隔・溶込み深さなどの寸法情報が記入される。さらに「全周溶接」「現場溶接」「裏当て」といった補助記号や、グラインダ(G)・機械(M)・チッピング(C)などの仕上げ方法が付加される。

溶接記号 一覧——矢の側と反矢の側

溶接記号を読むうえで最も混乱しやすいのが「矢の側」と「反矢の側」の区別だ。

  • 矢の側(Arrow side): 矢が指す側の部材面。記号は基線の下側(実線側)に配置
  • 反矢の側(Other side): 矢が指す面の反対側。記号は基線の上側(破線側)に配置

つまり、基線の下に記号があれば「矢が指している側を溶接しろ」、上にあれば「反対側を溶接しろ」という意味になる。この上下の区別が溶接記号の読解で最初につまずくポイントだ。

参考: JIS Z 3021:2010 溶接記号(日本産業標準調査会)

JIS 溶接記号の寸法表記ルール

寸法の表記にも決まりがある。基本記号の左側に脚長やのど厚、右側に溶接長さを記入する。開先角度は基本記号の内側、ルート間隔は基本記号の下(または括弧内)に配置する。断続溶接の場合は「溶接長さ-ピッチ」の形式で表記する。

記号文字列の構成:
[補助記号] [基本記号] [角度] [ルート間隔] ([溶込み深さ]) [仕上げ] [溶接長さ-ピッチ]

例: ○ V 60° 2 (12) G
  ○ = 全周、V = V形突合せ、60° = 開先角度、2 = ルート間隔2mm、(12) = 溶込み深さ12mm、G = グラインダ仕上げ

この構成ルールを覚えてしまえば、どんな複雑な溶接記号でも分解して読める。

溶接記号の読み違いが招く現場の手戻り

なぜ溶接記号の正確な理解が設計・施工で重要なのか

溶接記号の読み間違いは、そのまま施工ミスにつながる。そして溶接の施工ミスは、手戻りコストが極めて大きい。

たとえば、すみ肉溶接の脚長を図面では6mmと指示しているのに、作業者が記号を読み違えて4mmで施工してしまったケース。溶接後に検査で脚長不足が発覚すると、既存ビードの上から肉盛りする補修溶接が必要になる。補修溶接は母材への入熱が増え、熱影響部の劣化リスクが高まるうえ、工期も延びる。

さらに深刻なのが、矢の側と反矢の側の取り違えだ。溶接する面自体が間違っている場合、施工済みの溶接をはつって(削り取って)やり直す必要がある。これは単なる手戻りではなく、母材の損傷を伴う可能性がある。

JIS Z 3021は日本溶接協会でも技能試験の出題範囲に含まれており、溶接技能者にとっては必須の知識だ。建築分野では建築基準法施行令第67条で溶接部の品質基準が定められており、図面の溶接記号どおりに施工されているかの検査が義務付けられている。

開先角度の指定も軽視できない。V形突合せで60°指定のところを45°で加工すると、溶接量は減るが溶込み不足のリスクが生じる。逆に75°で加工すれば溶接量が増えて工数・材料費が膨らむ。角度1つの違いが、品質とコストの両方に跳ね返る。

記号を「なんとなく」読むのではなく、正確にデコードする習慣が、こうした手戻りやリスクを未然に防ぐ。

設計者から学生まで——溶接記号デコーダーが力を発揮する場面

製造図面のレビュー時。設計者が作成した図面を別の担当者がレビューする場面で、記号の意味を即座に確認できる。断面図が自動生成されるので、開先形状が意図どおりかを視覚的にチェックできるのが強い。

溶接作業の事前確認。現場の溶接作業者が図面を受け取ったとき、記号の意味と断面形状をその場で確認できる。特に補助記号(全周・現場溶接・裏当て)の組み合わせは、一覧表だけでは把握しにくいパターンが多い。

溶接技能試験の学習。JIS溶接技能試験(WES資格)の受験勉強で、記号の読み取りは頻出分野だ。記号を選んで断面図を見ながら覚えるのは、一覧表の暗記より定着しやすい。

機械工学の授業・演習。大学や専門学校の製図授業で、学生が溶接記号の意味を調べる場面。教科書の一覧表を見るだけでなく、寸法を変えて断面図の変化を観察できるのは教育効果が高い。

溶接記号デコーダーの使い方——3ステップで完了

ステップ1: 基本記号を選択

15種類の基本記号(すみ肉、V形突合せ、レ形突合せなど)からドロップダウンで選択する。同時に矢の側・反矢の側をセグメントボタンで切り替え。選択した記号に応じて、入力可能な寸法フィールドが自動で切り替わる。

ステップ2: 寸法と補助記号を入力

脚長・開先角度・ルート間隔など、記号に必要な寸法をmm単位で入力。補助記号(全周・現場溶接・裏当て等)はボタンで選択し、仕上げ方法はドロップダウンで指定する。

ステップ3: 断面図と意味を確認

入力内容に応じてSVG断面図がリアルタイム描画される。同時に、JIS準拠の記号文字列と日本語での意味解説が表示される。「コピー」ボタンで記号文字列をクリップボードにコピーすることも可能だ。

溶接記号デコーダーの使用例——6つの実践ケース

ケース1: すみ肉溶接 矢の側 脚長6mm

最も基本的なパターン。T継手のすみ肉溶接を指示するケースだ。

  • 入力: 基本記号=すみ肉、溶接側=矢の側、仕上げ=なし、脚長=6mm
  • 結果: 記号文字列「△ 6」、意味「矢の側にすみ肉溶接、脚長6mm」
  • 解釈: 基線の下側にすみ肉記号と脚長6mmが表記される。断面図では三角形のビードが矢の側に描画され、6mmの寸法線が付く。

ケース2: V形突合せ 全周 グラインダ仕上げ

開先溶接に補助記号と仕上げ方法を組み合わせた複合パターン。

  • 入力: 基本記号=V形突合せ、溶接側=矢の側、補助記号=全周、仕上げ=グラインダ、開先角度=60°、ルート間隔=2mm、溶込み深さ=12mm
  • 結果: 記号文字列「○ V 60° 2 (12) G」、意味「矢の側にV形突合せ溶接、開先角度60°、ルート間隔2mm、溶込み深さ12mm、全周、グラインダ仕上げ」
  • 解釈: 全周を示す丸印「○」が先頭に付き、仕上げ記号「G」が末尾に配置される。断面図にはV形の開先形状が60°で描画され、ルート部に2mmの間隔が確認できる。

ケース3: レ形突合せ 反矢の側 45° ルート間隔3mm

片側開先の典型的なパターン。反矢の側指定がポイント。

  • 入力: 基本記号=レ形突合せ、溶接側=反矢の側、仕上げ=なし、開先角度=45°、ルート間隔=3mm
  • 結果: 記号文字列「レ 45° 3」(基線上側に配置)、意味「反矢の側にレ形突合せ溶接、開先角度45°、ルート間隔3mm」
  • 解釈: 反矢の側なので、記号は基線の上側(破線側)に配置される。断面図では矢の反対面にベベル開先が45°で描画される。レ形はV形の片側版で、一方の母材のみ開先加工する。

ケース4: I形突合せ ルート間隔2mm

開先なしの突合せ溶接。薄板向けのシンプルなパターン。

  • 入力: 基本記号=I形突合せ、溶接側=矢の側、仕上げ=なし、ルート間隔=2mm
  • 結果: 記号文字列「I 2」、意味「矢の側にI形突合せ溶接、ルート間隔2mm」
  • 解釈: I形は開先加工なしで母材同士を突き合わせる溶接。断面図では2枚の母材が2mmの隙間を空けて配置され、その隙間に溶接金属が充填される様子が描画される。板厚が薄い(一般に6mm以下)場合に多用される。

ケース5: すみ肉 現場溶接 脚長8mm

工場ではなく現場で施工することを示す補助記号付きパターン。

  • 入力: 基本記号=すみ肉、溶接側=矢の側、補助記号=現場溶接、仕上げ=なし、脚長=8mm
  • 結果: 記号文字列「△ 8」(現場溶接マーク付き)、意味「矢の側にすみ肉溶接、脚長8mm、現場溶接」
  • 解釈: 現場溶接の補助記号(旗印)が基線と矢の交点に付加される。工場で仮組みした後、建設現場で本溶接を行う指示だ。鉄骨建方工事でよく見かけるパターン。

ケース6: V形突合せ 断続 溶接長さ100mm ピッチ200mm

長い溶接線を断続的に施工する場合の指示。

  • 入力: 基本記号=V形突合せ、溶接側=矢の側、仕上げ=なし、開先角度=60°、ルート間隔=2mm、溶接長さ=100mm、ピッチ=200mm
  • 結果: 記号文字列「V 60° 2 100-200」、意味「矢の側にV形突合せ溶接、開先角度60°、ルート間隔2mm、溶接長さ100mm、ピッチ200mm(断続溶接)」
  • 解釈: 「100-200」は溶接長さ100mmを200mmピッチで繰り返す断続溶接を意味する。連続溶接に比べて入熱量と変形を抑えられるため、薄板構造や歪みを嫌う部位で指定される。全周溶接と断続溶接を同時に指定した場合は注意事項が表示される。

溶接記号デコーダーの仕組み——ルックアップ+SVGジオメトリ生成

候補手法の比較: パーサー方式 vs ルックアップ方式

溶接記号のデコードには大きく2つのアプローチがある。

パーサー方式は、記号文字列を入力としてパース(構文解析)し、基本記号・寸法・補助記号を分離する手法だ。OCRや手入力された記号文字列を解析する場合には有効だが、溶接記号には特殊文字(△、○など)が含まれるため、パーサーの実装が複雑になる。あいまいな入力への対応も難しい。

ルックアップ方式は、ユーザーがGUIで基本記号と寸法を選択・入力し、その組み合わせから記号文字列と意味を生成する手法だ。入力が構造化されているため、あいまいさが生じない。記号の読み方を「学ぶ」用途にも適している。

本ツールではルックアップ方式を採用した。理由は3つ。(1) 入力ミスの余地がない、(2) 記号選択と同時に断面図を描画できる、(3) JIS規格の体系を視覚的に理解できる。

実装詳細: デコードフローとSVG描画

デコードの処理フローは以下のとおり。

1. basicSymbols配列から選択IDでルックアップ → SymbolInfo取得
2. SymbolInfoのフラグ(hasAngle, hasRootGap, hasLegSize, hasDepth)で
   表示フィールドを決定
3. 入力値を収集し、JIS Z 3021の表記ルールに従って記号文字列を組み立て:
   [補助記号] + [基本記号] + [角度°] + [ルート間隔] + [(溶込み深さ)] + [仕上げ] + [長さ-ピッチ]
4. 意味テキストを日本語で生成(side + description + 寸法の自然言語化)
5. SVG断面図を生成(記号種別に応じたジオメトリ関数を呼び出し)

SVG断面図の生成は、基本記号ごとに異なるジオメトリ関数が担当する。たとえばV形突合せの場合:

viewBox: 0 0 400 300
母材A: rect(50, 80, 130, 140) — 左側の灰色矩形
母材B: rect(220, 80, 130, 140) — 右側の灰色矩形
開先ライン: 母材間の中央から上下にangle/2の角度で広がるV字
溶接金属: V字内部をアクセントカラー(#2E5FF5)で塗りつぶし
寸法線: 角度を示す弧線 + ルート間隔の水平線

計算例: V形突合せ 60° ルート間隔2mm の記号文字列生成

ステップバイステップで追ってみよう。

入力:
  basicSymbol = "butt-v"
  side = "arrow"
  supplementary = ["all-around"]
  finishMethod = "G"
  angleStr = "60"
  rootGapStr = "2"
  depthStr = "12"

Step 1: ルックアップ → label="V形突合せ", hasAngle=true, hasRootGap=true, hasDepth=true
Step 2: 補助記号 → "all-around" → 先頭に "○" を付加
Step 3: 基本記号 → "V"
Step 4: 角度 → "60°"
Step 5: ルート間隔 → "2"
Step 6: 溶込み深さ → "(12)"
Step 7: 仕上げ → "G"
Step 8: 連結 → "○ V 60° 2 (12) G"

意味テキスト生成:
  "矢の側にV形突合せ溶接、開先角度60°、ルート間隔2mm、溶込み深さ12mm、全周、グラインダ仕上げ"

参考: 溶接記号 - WikipediaJIS Z 3021:2010(日本産業標準調査会)

静的な一覧表では身につかない――インタラクティブ溶接記号ツールの強み

溶接記号の学習ツールといえば、PDF形式の一覧表やポスター型の早見表が定番だ。JIS Z 3021の記号をずらりと並べたものは検索すればすぐ見つかる。だが、それだけで記号を「読める」ようになるかというと、正直厳しい。

静的な一覧表の限界は、記号と断面形状の対応が頭の中でつながらない点にある。V形突合せの記号を見ても、実際の開先がどんな形状で、角度60°とルート間隔2mmがどう組み合わさるのかイメージが湧かない。特に補助記号(全周・現場溶接・仕上げ方法)が加わると、一覧表では情報が多すぎて混乱する。

このツールが狙ったのは「選んだ瞬間に断面図が変わる」体験だ。すみ肉溶接を選べば三角形のビード断面が描画され、脚長を6mmに変えれば寸法線がリアルタイムで更新される。V形に切り替えれば開先ラインが現れ、角度を変えると形状が追随する。この「触って覚える」感覚は、紙の一覧表やPDF規格書では得られない。

他の溶接記号アプリと比べても、15種の基本記号すべてにSVG断面図を用意し、矢の側/反矢の側の切替、補助記号の組み合わせ、仕上げ方法の指定まで一画面で完結するものは少ない。多くの既存ツールは突合せ溶接の数種類だけ対応で、プラグ溶接やシーム溶接はカバーしていなかったりする。JIS記号の意味を日本語で即座に解説する機能も、英語圏向けのAWS記号ツールにはない差別化ポイントだ。

JISとAWS――溶接記号の世界地図

溶接記号には「方言」がある。日本で標準のJIS Z 3021と、北米で主流のAWS A2.4では、同じ溶接を指示するのに記号の配置ルールが異なる。

矢の側と反矢の側の表記が逆?

最も有名な違いが「矢の側」の位置だ。JISでは矢の側の記号を基線の下側に書く。一方AWSでも基線の下側に書くのは同じだが、ISOとJISの旧版では上下が逆だった時期がある。2010年のJIS改定でAWS/ISOと統一されたものの、古い図面では逆配置が残っている。海外の図面を読む機会がある人は、まずどの規格で描かれているか確認する癖をつけておくと安心だ。

溶接記号の起源

溶接記号の標準化は1940年代のアメリカで始まった。第二次世界大戦中、造船・航空機製造で溶接が急速に普及し、図面指示の統一が急務になったのがきっかけだ。AWS(アメリカ溶接協会)が1947年にA2.0(現A2.4の前身)を発行し、その後ISOやJISが各国の事情に合わせて規格を整備した経緯がある。

参考: 溶接記号 - Wikipedia

仕上げ記号の豆知識

JIS Z 3021で規定される仕上げ方法の記号は、G(グラインダ)、M(機械)、C(チッピング)、H(はつり)、R(ローラ)の5種類。現場で最も多いのは圧倒的にG(グラインダ仕上げ)だ。建築鉄骨の完全溶込み溶接では、超音波探傷(UT)検査の前にグラインダで余盛りを削るのが一般的。一方、Rのローラ仕上げは疲労強度向上を狙ったピーニング処理に近い概念で、橋梁や圧力容器など繰返し荷重を受ける構造物で指定されることがある。

参考: JIS Z 3021:2010 溶接記号

溶接記号を正しく読むための5つのTips

  1. 基線の向きを最初に確認する --- 溶接記号を読むとき、まず水平の基線と矢を見つける。矢が指す側が「矢の側」、反対が「反矢の側」。ここを間違えると開先の方向を180°取り違える。特にT継手ですみ肉が片側指定の場合、致命的な施工ミスにつながる。

  2. 寸法の読み順を覚える --- 基本記号の左側が「溶接サイズ(脚長・のど厚)」、右側が「溶接長さ」。断続溶接の場合は「長さ-ピッチ」の順。例えば「6 △ 50-100」なら「脚長6mm、溶接長さ50mm、ピッチ100mmの断続すみ肉」という意味になる。

  3. 全周記号(○)と現場溶接記号(旗)を見落とさない --- 全周記号は基線と矢の交点に小さな丸、現場溶接は旗マーク。工場で仮組みして現場でボルト接合する鉄骨工事では、現場溶接記号の有無で施工計画がまったく変わる。

  4. 尾の注記を必ず読む --- 溶接記号の尾(矢と反対側の末端)には、溶接プロセスや検査方法の指定が書かれることがある。「SMAW」「GMAW」などのプロセス記号や「UT」「RT」の検査指定を見逃すと、施工条件の認識がずれる。

  5. 両側溶接の記号配置に注意 --- 矢の側と反矢の側の両方に記号がある場合、基線の上下両方に記号が並ぶ。このとき、上下で記号の種類や寸法が異なることもある(例: 矢の側はすみ肉6mm、反矢の側はすみ肉4mm)。片側だけ読んで満足しないこと。

よくある質問

JIS Z 3021の2010年版と旧版で何が変わった?

最大の変更点は「矢の側」記号の配置だ。旧版(1978年版)では矢の側の記号を基線の上側に書いていたが、2010年版でISO 2553と整合させるため基線の下側に変更された。古い教科書や図面では旧ルールのままのことがあるので、図面の発行年を確認するのが鉄則。このツールは2010年版(現行)の配置ルールに準拠している。

すみ肉溶接の「脚長」と「のど厚」はどう使い分ける?

JIS Z 3021では、すみ肉溶接の寸法は基本的に脚長(leg size)で指示する。のど厚(実効のど厚)は強度計算で使う値で、等脚すみ肉の場合「のど厚 = 脚長 × 0.7071(≒ 1/√2)」で換算できる。図面で「a6」と書かれていたら、のど厚6mmの指定(脚長換算で約8.5mm)。「6」と数字だけなら脚長6mmだ。このツールでは脚長入力を基本としつつ、ラベルに「脚長 / のど厚」と併記して混乱を防いでいる。のど厚ベースの強度計算は溶接強度計算ツールで行える。

補助記号を複数同時に指定できる?矛盾する組み合わせは?

全周記号と断続溶接(長さ-ピッチ指定)は矛盾する組み合わせだ。全周は「継手の全周にわたって連続溶接」の意味なので、断続と共存しない。一方、全周+現場溶接や、現場溶接+グラインダ仕上げなどは問題なく併用できる。このツールでは矛盾する組み合わせを選択した場合に注意事項として警告が表示される。

入力した寸法や記号の組み合わせはサーバーに送信される?

一切送信されない。すべての処理はブラウザ内(クライアントサイド)で完結しており、入力データがサーバーに送られることはない。図面に関わる機密情報を扱う場合でも安心して利用できる。通信が発生するのはページの初回読み込み時のみだ。

まとめ――溶接記号を「読める」から「使える」へ

溶接記号は覚えるものではなく、繰り返し触れて身体に馴染ませるものだ。このツールで記号を選んで断面図を眺める習慣をつければ、図面を開いたときに「ああ、これはレ形の60°開先で現場溶接だな」と自然に読み取れるようになる。

強度計算まで踏み込みたいなら溶接強度計算ツール、入熱管理が気になるなら溶接入熱量計算ツール、繰返し荷重を受ける継手の寿命評価には溶接疲労寿命ツールと併用してみてほしい。記号の理解が深まれば、これらの計算ツールで入力すべきパラメータも迷わなくなる。


不具合の報告や機能リクエストはX (@MahiroMemo)から気軽にどうぞ。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。JIS Z 3021と格闘した経験から、記号を選ぶだけで断面図が出てくるデコーダーを作った

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