QUV 1000時間は屋外何年?仕様書の数字が独り歩きする問題
塗料の仕様書を眺めていると、必ずと言っていいほど登場する一文がある。「QUV 1000時間試験において光沢保持率○○%」「キセノンウェザーメーターによる促進耐候性試験で2000時間相当」。
数字が並んでいると安心するけれど、ふと冷静に考えると分からなくなる。QUV 1000時間って、屋外に置いたら何年に相当するのか? 沖縄とケルンで答えが違うはず。アクリルとフッ素でも違うはず。それなのに、仕様書の多くは「相当年数」だけが独り歩きしている。
このツールは、その答えをその場で出すための換算機だ。試験法・材料・地域の3次元で加速倍率(AF: Acceleration Factor)を組み立て、testHours × AF / 8760 で屋外年数に変換する。逆に「屋外15年保証」を打ち出したいなら、必要な試験時間を秒で逆算してくれる。仕様書を書く側にも、受け取る側にも、共通言語が要る。それを補助したい。
なぜ作ったのか
きっかけは、ある屋外塗装案件の仕様レビューだった。塗料メーカーの提案書に「キセノン試験 1500時間で5級評価、屋外15年相当」と書かれていた。隣の競合メーカーは「QUV-A 2000時間で同等評価、屋外12年相当」。同じ屋外15年級を主張しているのに、試験法も時間も違う。どっちが本当に強いのか分からない。
試験会社のPDFを引っ張ってくると、「QUV 1000時間 ≒ 沖縄屋外1年」という記載があった。一方で塗料メーカーの内部資料では「QUV 1000時間 ≒ フロリダ屋外0.6年」という数字が出てくる。地域も材料も違うのに、同じQUV 1000時間が0.6年だったり1年だったりする。 これは換算係数が違うだけで、嘘をついているわけではない。でもユーザー側でそれを揃えるツールがない。
日本語のWeb上を探しても、「QUV 屋外換算」で出てくるのは試験会社の宣伝記事ばかりで、ユーザーが自分の地域・材料で計算できるツールは皆無だった。エクセルマクロを社内で使い回している組織はあるが、外には出てこない。それなら作るしかない、と思った。
加速倍率を「試験法の基準値 × 地域係数 × 材料感受性」の3次元積として整理し、Q-LabとAtlasの公開データ、ISO 16474シリーズの典型値を加重平均した係数テーブルを内蔵した。沖縄・フロリダ・ケルン・アリゾナ・銚子・標準温帯の6地域、QUV-A/B、キセノンDaylight/Window、サンシャインカーボンアーク、CCT-JASO、SST(参考)の7試験法、塗料・樹脂・ゴム計8材料を網羅。仕様書の数字に「待った」をかけるための、最小限の道具になっている。
加速試験 とは何か
紫外線・水分・温度を集約する装置
加速試験(Accelerated Weathering Test)とは、屋外で年単位かかる劣化を、室内で数百〜数千時間に圧縮して再現する試験のことだ。圧縮の正体は「劣化要因の集約」にある。屋外の劣化は主に4つの要因で起きる。
- 紫外線(UV) — 樹脂の主鎖を切断し、光酸化反応を引き起こす
- 水分 — 加水分解、結露・乾燥サイクルによる物理ストレス
- 温度 — アレニウス則に従って反応速度を倍加させる
- 塩分・大気汚染物質 — 海岸環境・工業地帯では金属・塗膜の腐食を加速
加速試験装置はこれらを「24時間ノンストップで」「最も強いレベルで」「規則的に」与える。屋外なら昼間しか出ないUVを、QUVのUVランプは1日中照射する。屋外の年1〜2回しか起きない結露を、QUVは4時間ごとに発生させる。集約と頻度の上昇によって、屋外で1年かかる劣化を10〜100時間で起こせる。これが加速倍率の正体だ。
ISO 16474シリーズの構造
国際標準はISO 16474シリーズで整理されている。
ISO 16474-1: 一般原則
ISO 16474-2: キセノンアーク光源
ISO 16474-3: 蛍光UVランプ(QUV)
ISO 16474-4: オープンフレームカーボンアーク光源
日本ではJIS K 5600-7-7(蛍光UV)、JIS K 5600-7-8(キセノン)、JIS K 5600-7-9(サンシャインカーボンアーク)が対応している。試験法を選ぶときは、まずどの規格に準拠するかを確認するのが筋だ。
QUV / キセノン / SCA の方式比較
| 試験法 | 光源 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|---|
| QUV-A340 | UVA蛍光ランプ(295-365nm) | 屋外UV分布に近い、安価 | 塗料・樹脂の標準試験 |
| QUV-B313 | UVB蛍光ランプ(280-360nm) | 屋外より過酷UVB、加速大 | スクリーニング、寿命比較 |
| キセノンDaylight | キセノンアーク+デイライトフィルタ | 太陽光に最も近い波長分布 | 高精度評価、自動車外装 |
| キセノンWindow | キセノンアーク+ウィンドウフィルタ | 窓越し光を再現(短波UVカット) | 屋内陳列品 |
| サンシャインカーボンアーク | カーボンアーク放電 | 古典的、JIS固有 | 古い仕様書の互換評価 |
| CCT-JASO | 塩水噴霧+乾湿サイクル | 海岸環境を集約 | 自動車・建材の腐食評価 |
| SST | 連続塩水噴霧 | 塩害単独評価(参考用) | めっき・防錆塗装の品質管理 |
Wikipedia: Accelerated weathering も参考になる。
実務での重要性
「屋外15年保証塗料」の根拠は何か
ホームセンターやメーカーカタログで「屋外15年保証」「20年高耐候」と謳う塗料製品が増えた。この根拠は、ほぼすべて加速試験データの外挿だ。例えばフッ素塗料メーカーが「キセノンDaylight 4000時間で光沢保持率80%以上を確認、屋外20年相当」と主張する場合、内部では 4000 × AF / 8760 ≒ 20年 という換算をしている。
では、そのAFは妥当なのか? ここで地域差が効いてくる。沖縄(regionFactor=0.85)とアリゾナ(1.10)では、同じ4000時間試験でも屋外換算が25%以上ぶれる。メーカーが「屋外○年相当」と書いている地域がフロリダ基準なのか日本基準なのかを確認しないと、ユーザー側で誤解が生まれる。
Q-Lab公開ベンチマーク
Q-Lab Corporationは加速試験装置のリーディングカンパニーで、QUVとフロリダ屋外暴露の対応データを公開している。代表的な数字を挙げると、QUV-A340 1000時間がフロリダ屋外で約0.6〜1.0年に相当する。これに沖縄補正(0.85倍)、ウレタン補正(0.85倍)を掛けると、QUV-A 1000時間 ≒ 沖縄屋外0.4〜0.7年程度になる。「1000時間=1年」という業界の経験則は、フロリダ×アクリルという暗黙の前提つきの数字だと分かる。
JIS規格の引用と試験条件の明示
JIS K 5600-7-7(蛍光UVランプ)は、UV照射と凝結のサイクル条件を厳密に規定している。たとえば「UV 60℃ 4時間 + 凝結 50℃ 4時間のサイクル」という具合に。この条件設定を変えると、加速倍率は数倍動く。仕様書に「QUV 1000時間」とだけ書いても、サイクル条件次第で実体が変わるのだ。試験報告書を受け取るときは、必ず試験条件まで確認するのが鉄則。
怠った場合の実害
加速試験データを鵜呑みにすると、屋外での実劣化と乖離が生じる。実際にあった事例として、フッ素塗料を施工したのに3年で光沢が落ちたクレームがある。原因は、メーカーの加速試験がQUV-Bで行われていて、UVB波長の劣化応答が屋外UVA分布とずれていたためだった。試験法の選定ミスで保証年数が機能しなかった例だ。だからこそ、ユーザー側でも換算係数を理解して仕様書を読む必要がある。
活躍する場面
1. 塗料仕様書のクロスチェック — メーカーAの「QUV 2000h」とメーカーBの「キセノン1500h」を屋外年数に揃えて比較。同じ材料・地域に統一すれば優劣が見える。
2. 屋外○年保証の根拠確認 — 「屋外15年保証」を主張する塗料の試験データを逆算。年数 × 8760 / AF で必要試験時間を出し、メーカー試験の十分性を判断する。
3. 海岸構造物のCCT判定 — 銚子・沖縄など海塩環境では、QUV/キセノン単独では評価が成り立たない。CCT-JASOの併用必要性が機械的に表示される。
4. プラスチック筐体の耐光試験 — 屋外設置のPC・ABS筐体に必要な試験時間を算出。黄変ΔE 3.0を失敗基準に取れば、実用寿命を担保できる。
5. 学習・社内勉強会 — 加速倍率の3次元構造を教えるとき、地域・材料を切り替えて係数の動きを見せられる。「フッ素はAFが小さいから試験時間が伸びる」という直感を養える。
基本の使い方
- モードを選ぶ — 「試験時間→屋外換算」(試験データの解釈)か、「屋外年数→必要試験時間」(仕様策定)のどちらかを選択する。
- 試験条件を選ぶ — 試験法(QUV-A/B、キセノン2種、SCA、CCT、SST)、材料(塗料・樹脂・ゴム計8種)、屋外地域(6地域)を選ぶ。失敗基準は光沢/黄変/引張/割れの4種から指定する。
- 入力値を入れる — 試験時間(h)または目標屋外年数(年)を入力。
- 結果を読む — 加速倍率(AF)・屋外換算年数または必要試験時間・信頼度・補完試験の推奨が出る。コピーボタンで仕様書にそのまま貼れる。
具体的な使用例
Case 1: 屋外15年保証ウレタン塗料の試験時間を逆算
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力 | mode=屋外→試験 / 試験法=Xenon-Daylight / 材料=ウレタン / 地域=沖縄 / 目標15年 / 失敗基準=光沢保持50% |
| 結果 | AF=72.25、必要試験時間=1819時間、信頼度=high |
解釈: ウレタン×キセノンDaylightは相性high、沖縄補正0.85を掛けると有効AFが72.25倍。15年保証を打ち出すには約1819時間(約76日)の連続試験が必要。これは塗料メーカーの標準試験時間(2000h前後)とほぼ整合する。
Case 2: アクリル塗料 QUV 1000時間の屋外換算(沖縄)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力 | mode=試験→屋外 / 試験法=QUV-A / 材料=アクリル / 地域=沖縄 / 1000時間 |
| 結果 | AF=51.00、屋外換算=5.82年、信頼度=high |
解釈: 「QUV 1000時間 = 屋外1年」という巷の経験則は、フロリダ×アクリル基準の話。沖縄では地域係数0.85なので、屋外換算は約5.82年と大きく出る。沖縄向けの屋外5年級塗料は、QUV 1000時間で十分という指針になる。
Case 3: 自動車外装ポリエステル QUV-B 800時間の評価(フロリダ10年想定)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力 | mode=試験→屋外 / 試験法=QUV-B / 材料=ポリエステル / 地域=フロリダ / 800時間 / 失敗基準=黄変ΔE 3.0 |
| 結果 | AF=126.50、屋外換算=11.55年、信頼度=high |
解釈: QUV-B(基準110)+ポリエステル感受性1.15+フロリダ1.0で、AF=126.50に達する。試験時間800hでフロリダ屋外11年以上をカバー。自動車外装の10年屋外性能は、QUV-B 700〜800時間で評価可能という結論。ただしAFが100超は外挿リスク領域なので、補完試験(キセノンDaylight等)併用が推奨される。
Case 4: フッ素塗料の20年保証(アリゾナ高UV)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力 | mode=屋外→試験 / 試験法=Xenon-Daylight / 材料=フッ素 / 地域=アリゾナ / 目標20年 |
| 結果 | AF=44.00、必要試験時間=3982時間、信頼度=high |
解釈: フッ素塗料は感受性係数0.40と最も劣化しにくい。代償としてAFが小さくなり、必要試験時間が伸びる。20年保証で約3982時間(約166日)。フッ素塗料の試験データが「4000時間以上」を標準とする業界慣行は、この物理特性に由来している。
Case 5: 海岸構造物 CCT-JASO 1500時間(銚子)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力 | mode=試験→屋外 / 試験法=CCT-JASO / 材料=アクリル / 地域=銚子 / 1500時間 / 失敗基準=表面割れ |
| 結果 | AF=32.50、屋外換算=5.57年、信頼度=mid |
解釈: 銚子は塩害+曇天の難条件。CCT-JASOは塩害評価に対応するが、UV単独評価には弱い。acrylic_CCT-JASO=mid の信頼度が表示され、補完試験としてQUV-AまたはキセノンDaylightの併用が推奨される。海岸環境の塗膜評価は1試験では決まらないことを示す典型例。
Case 6: ポリカーボネート筐体 キセノンDaylight 1200時間(ケルン)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力 | mode=試験→屋外 / 試験法=Xenon-Daylight / 材料=PC / 地域=ケルン / 1200時間 / 失敗基準=黄変ΔE 3.0 |
| 結果 | AF=55.00、屋外換算=7.53年、信頼度=high |
解釈: ケルンは欧州ベンチマークで地域係数0.55(沖縄の約65%)。PC×キセノンDaylightは相性high。試験時間1200hで屋外7.5年相当をカバーでき、欧州市場向けの屋外設置PC筐体(防犯カメラ・サイネージ等)の標準試験時間として妥当。「ケルン地域の屋外5年仕様」を狙うなら、キセノン800時間で足りるという設計指針も導ける。
仕組み・アルゴリズム
加速倍率の3次元モデル
このツールの計算エンジンは、加速倍率AFを3つの係数の積として組み立てる。
AF = baseAccelerationFactor[testType]
× regionFactor[outdoorLocation]
× materialFactor[material]
baseAccelerationFactorは試験法ごとの基準倍率(フロリダ屋外×アクリル基準で正規化)で、QUV-A=60、QUV-B=110、Xenon-Daylight=100、Xenon-Window=80、SunshineCarbonArc=30、CCT-JASO=50、SST=25。regionFactorは地域別補正(フロリダ=1.0)で、沖縄=0.85、ケルン=0.55、アリゾナ=1.10、銚子=0.65、標準温帯=0.70。materialFactorは材料感受性(アクリル=1.0)で、ウレタン=0.85、フッ素=0.40、ポリエステル=1.15、ABS=1.30、PC=1.00、PMMA=0.60、EPDM=1.50。
候補手法の比較とこの方式を選んだ理由
加速倍率の見積もりには大きく3つの流派がある。
- シングルファクタ方式 —
AF=固定値。試験会社のパンフレットでよく見るが、地域・材料を無視するため誤差が大きい。 - アレニウス補正方式 — 温度のみを変数にして
AF=exp(Ea/k × (1/T1 − 1/T2))で計算。化学反応速度論には誠実だが、UV強度・湿度を扱えない。 - 3次元積方式(本ツール採用) — 試験法×地域×材料を独立変数として乗算。Q-LabとAtlasの公開ベンチマークを加重平均して係数化したもので、実務での仕様書比較に最も近い精度を出す。
3次元積方式を選んだのは、「ユーザーが知りたい変数」が試験法・地域・材料の3つだという観察に基づく。アレニウス方式は精度は高いが、活性化エネルギーEaの入力をユーザーに求めるのは現実的ではない。
双方向換算の式
// mode === 'test-to-outdoor'
equivalentOutdoorYears = testHours × AF / 8760
// mode === 'outdoor-to-test'
requiredTestHours = targetYears × 8760 / AF
8760は1年の時間数(24 × 365)。試験は連続稼働なので、屋外年数との比較ではこの定数で割る・掛けるだけで完結する。
計算例(ステップバイステップ)
ウレタン塗料を沖縄で15年保証したい場合、必要試験時間を逆算する手順は以下の通り。
// Step 1: AF を組み立てる
const base = 100; // Xenon-Daylight
const region = 0.85; // okinawa
const material = 0.85; // urethane
const AF = base * region * material; // = 72.25
// Step 2: 必要試験時間
const targetYears = 15;
const requiredTestHours = targetYears * 8760 / AF;
// = 15 * 8760 / 72.25
// = 131400 / 72.25
// = 1818.69... → 1819 時間
信頼度判定とアレニウス補正の意味
compatibilityMatrixは材料×試験法の組合せを high/mid/low に分類する。例えばacrylic_QUV-A=high、epdm_QUV-B=lowのように、材料の劣化応答スペクトルと試験光源のスペクトルがマッチするかを表現している。アクリルはUVA域に主吸収を持つのでQUV-A340で十分評価できるが、EPDMゴムはオゾン・熱の影響が大きく、UV単独試験ではモードが正しく再現されない。
アレニウス補正は本ツールの内部係数に間接的に組み込まれている。地域係数の温度成分(沖縄の高温、ケルンの低温)は、係数化の際にアレニウス則で重み付けして決めた。ユーザー側で温度を入力する必要はないが、暗黙的に温度効果は織り込み済みだ。完全な温度カスタムが必要な専門用途では、別途アレニウス補正単独ツールを使うのが正攻法。
しきい値による警告ロジック
AF > 150 で「外挿リスク大」、AF > 80 で「注意」、AF > 30 で「標準」、それ以下で「信頼性高」のしきい値を設けている。AFが大きすぎる組合せ(例: ABS×QUV-B×アリゾナ)では、試験条件が屋外実態から離れすぎて、結果の外挿が物理的に怪しくなる。AF=150を超えたら、結果を単独で結論にしない運用が安全。
他ツールとの違い
耐候試験の加速倍率を調べるとき、最初にぶつかるのが Q-Lab と Atlas の英語PDFだ。両社とも自社の試験機を売る立場だから、どうしても自社方式に有利な数値が並ぶ。Q-Lab は QUV のグラフ、Atlas はキセノンのグラフ、と読み比べるだけで一仕事になる。
このツールが目指したのは、試験法を横並びで比較できる中立的な土俵を用意することだ。QUV-A340・QUV-B313・キセノンDaylight・キセノンWindow・サンシャインカーボンアーク・CCT-JASO・SST の7種類を同じ画面で切り替えて、加速倍率の差をその場で確認できる。日本語の解説と JIS の規格番号を併記したのも国内の塗料技術者を意識した設計だ。
地域選択肢の独自性も大きな違い。海外の換算ツールはフロリダとアリゾナしか出てこないことが多いが、本ツールは沖縄・銚子・ケルン・標準温帯(東京・大阪)まで地域係数を持っている。沖縄の高温多湿、銚子の海塩+曇天、ケルンの欧州ベンチマークなど、日本国内・欧州案件のリアルな条件を選べる。
連携面では、塗料の必要量を見積もる/paint-calc、規定膜厚に対する塗布量を逆算する/paint-thickness-calcと組み合わせると、「面積→塗料量→塗布膜厚→耐候年数」の一気通貫が成立する。仕様書を書く側にとっては、根拠をリンクで添付できる構成にしたつもりだ。広告も控えめに置いて、計算結果の比較に集中できるレイアウトに寄せている。
豆知識・読み物
サンシャインカーボンアーク、通称 SCA は世紀を超える歴史を持つ古参の試験法だ。1918年にアメリカで実用化された電弧光源を耐候試験に転用したのが起源で、太陽光に近いスペクトルを再現できる強みがあった。だが現代の主流は紫外蛍光ランプ(QUV)とキセノンアーク。それでも JIS K 5600-7-9 や JIS B 7754 が規格として残っているのは、塗料業界に長く蓄積されたデータ資産があるためだ。新規塗料の社内規格に SCA データだけが残っている現場は今でも珍しくない。
フロリダ暴露の独占的地位も面白い話題。なぜ世界中の塗料メーカーがマイアミ近郊にテストフィールドを構えるのか。答えは、紫外線量・降水量・湿度・温度の組み合わせが「劣化が一番速く、しかも安定して再現される」場所だからだ。Q-Lab の South Florida Test Service が代表格で、年間UV量は東京の約1.6倍、平均気温も高い。アリゾナの暴露フィールド(乾燥・高UV)と組み合わせて「2地点暴露」が業界標準になっている。
QUV-A340 と QUV-B313 の選び分けも昔から論争がある。A340 は太陽光のUVA域に近いスペクトルで「現実的」、B313 はUVB域を強調していて「過酷だが速い」。塗料メーカーは A340 派が多く、自動車・家電は B313 派が多いと言われる。失敗基準が「光沢保持」なら A340、「黄変」や「クラック」なら B313 を選ぶケースが多い。実は同じ試験時間でも結果がガラリと変わるので、過去データと比較するときは必ずランプ種を確認したい。
参考: Wikipedia: Accelerated weathering、ISO 16474-1(屋外暴露と試験室間の関係)
Tips(実務での使いこなし)
- 試験時間1000h以下は信頼度が低い: 短期試験は誘導期間(劣化が顕在化するまでの遅れ)の影響を受けやすい。本ツールでも100h未満には警告を出す。新規塗料の評価は最低1000h、推奨2000h以上を組むべき。
- 銚子・沖縄では CCT 併用が必須: 海塩+UV の複合劣化は QUV や Xenon 単独では絶対に再現できない。本ツールが補完試験として CCT-JASO を提案するのはこの理由。塩害環境の仕様書は最低でも CCT を1サイクル分(240h以上)追加するのが安全。
- フッ素塗料はAFが小さく試験時間が長くなる: 材料係数が0.40と最低クラスのフッ素は、屋外20年を狙うと必要試験時間が4000hに迫る。試験コストと工期を見越して、初期段階で「フッ素は別予算」と切り分ける段取りが現場では効く。
- AFが20を超えたら単独試験を信用しすぎない: 加速倍率が大きいと外挿リスクが急増する。本ツールも材料-試験法の相性が high でない場合は黄色警告を出す。複数試験で裏取りし、可能なら短期の実暴露データを並行収集しておきたい。
- 失敗基準を変えると寿命予測も変わる: 同じ塗料でも光沢保持50%、黄変ΔE3.0、引張80%、表面割れ、では到達時間が大きく違う。仕様書では「どの基準で何年」を必ず明記し、試験計画もその基準に合わせて時間を決める。
FAQ
Q: 実暴露と試験データの乖離はなぜ起きる?
加速試験は紫外線・水分・温度の主要因子は再現できるが、汚染物質(NOx、SOx、PM2.5)、生物劣化(カビ・藻)、施工不良(塗膜厚不均一・下地処理不足)は再現できない。沖縄や銚子のような海塩環境では塩分の影響が大きく、QUV系では原理的に評価不能だ。実暴露が試験予測より速く劣化した場合、これらの非UV因子が効いている可能性が高い。本ツールは「補完試験の推奨」欄で塩害環境のCCT併用などを提示している。Q: アレニウス補正は使ったほうがいい?
温度依存性を厳密に扱う場合はアレニウス則(活性化エネルギーE=20〜80 kJ/molの範囲)で温度補正をかけるのが王道だ。ただし、塗料・プラスチックの劣化は光化学反応が支配的で、アレニウス単独で説明しきれない。本ツールでは試験法の標準温度(黒板温度63℃や65℃)を前提に係数を組んでいる。社内で活性化エネルギーが既知の場合は、出力された必要試験時間に温度補正係数を掛け算で重ねるのが現実的なアプローチ。Q: 塗膜厚は変数に入れなくていい?
膜厚は劣化速度に効くが、影響の出方は「下地保護効果」と「光劣化深さ」で逆向きに働く。膜厚が増えれば下地は守られるが、表面の光沢保持・黄変は膜厚にあまり依存しない。本ツールは表面評価(光沢・黄変・割れ)を主な失敗基準にしているので、標準膜厚(30〜80μm)の範囲内であれば膜厚補正は不要と判断した。膜厚そのものを設計したいときは[/paint-thickness-calc](/paint-thickness-calc)を併用してほしい。Q: 結果はそのまま仕様書に貼っていい?
本ツールは Q-Lab/Atlas の公開データと ISO 16474シリーズの典型値を加重平均した参考値を提供する。配合・添加剤・施工条件で実際の倍率は大きく動くので、仕様書根拠とする場合は塗料メーカーの実機データまたは長期実暴露データの併用を推奨する。社内設計検討・概算見積・他案件との比較には十分使える精度だ。Q: 計算結果や入力値は外部に送られる?
入力値はすべてブラウザ内で処理しており、サーバーへの送信や保存は行わない。ネットワークを切った状態でも動作する設計だ。試験条件や材料情報は社外秘になりやすい情報なので、安心して使ってもらえる構成にしている。プライバシーポリシーの全文は[/privacy](/privacy)で公開している。Q: 結果はどこかに保存できる?
画面右上の「結果をコピー」ボタンで、加速倍率・換算年数・関連JIS規格番号などをまとめてクリップボードにコピーできる。そのまま社内Wikiや試験計画書に貼れる形式に整えてある。永続保存は意図的に持たせていないので、必要ならコピー後に手元のドキュメントに保存してほしい。まとめ
QUV1000時間が屋外何年に相当するか、仕様書の数字の根拠を地域・材料・失敗基準まで含めて即座に確認できるツールだ。試験法を切り替えて加速倍率を見比べ、信頼度と補完試験の推奨まで一画面で確認できる構成にした。塗料量を見積もる/paint-calc、規定膜厚から塗布量を逆算する/paint-thickness-calcと組み合わせれば、面積から耐候年数までの一気通貫の検討が手元で完結する。気になった点や追加してほしい試験法・地域があれば/contactから教えてほしい。