塗装膜厚・塗料使用量計算

塗装面積・目標膜厚・体積固形分から理論使用量・実使用量・缶数・コスト概算を一括計算

目標乾燥膜厚(DFT)と体積固形分から湿潤膜厚(WFT)・理論塗布面積・実使用量・必要缶数・コスト概算を一括計算。塗装方法別ロス率プリセット対応。

塗料仕様

選択で体積固形分が自動セット。手動入力も可

塗装条件

ロス約30%。厚膜に有利

缶数・コスト

一般的: 1L, 4L, 16L

計算結果

必要WFT(湿潤膜厚)160 μmDFT 80μm ÷ VS 50%
標準膜厚

理論塗布面積

6.25 m²/L

理論使用量(1回塗り)

0.1600 L/m²

実使用量(1回塗り)

0.2286 L/m²

塗着効率 70%

合計必要量

45.7 L

必要缶数

3 缶

16L缶

塗料コスト概算

缶単価を入力すると表示

本ツールは理論計算に基づく概算だ。実際の使用量は下地の粗さ・形状の複雑さ・気温・湿度で変動する。塗料メーカーの技術データシートも併せて参照してほしい。

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「塗料、あと何缶いる?」——現場で毎回モヤる問題を数式で片づける

塗装工事の前日、缶数を確認しながら不安になった経験はないだろうか。足りなければ工期が止まる。余れば倉庫に塗料缶の山ができる。メーカーのカタログには「理論塗布量」が載っているけれど、ロス率や塗り回数を加味した実使用量までは自分で計算しなきゃいけない。

このツールは、乾燥膜厚(DFT)・体積固形分(VS)・塗装方法・面積・塗り回数を入力するだけで、理論使用量から実使用量・必要缶数・コスト概算まで一括で出す。現場監督が朝イチの打ち合わせで使える実用性を目指した。

塗料メーカーすら出していない「膜厚→缶数」直結ツールを作った理由

塗料の世界には不思議な空白がある。メーカーはSDSに体積固形分を載せ、カタログに理論塗布量を載せるが、「この面積をこの膜厚で塗るなら缶は何本?」という一番知りたい答えに直結するツールを出していない。

自分がこの問題にぶつかったのは、鉄骨塗装の数量積算を手伝ったとき。エポキシ系の下塗りと上塗りで体積固形分が違い、DFTの指定も別。さらにエアレスとローラーが混在する現場で、塗装方法ごとにロス率を変えて計算する必要があった。Excelで組んでみたが、塗料を変えるたびにセルの参照先を修正する羽目になり、1時間かけた積算に結局計算ミスが見つかった。

既存のオンラインツールを探しても、「面積を入れたら必要量がざっくり出る」タイプ(塗料・ペンキ必要量計算のようなDIY向け)か、膜厚管理を前提にしない簡易版ばかり。体積固形分から湿潤膜厚(WFT)を逆算し、塗装方法別のロスを反映して缶数まで出すツールが見当たらなかった。

だから作った。防食エンジニアが積算に使えるレベルの精度と、DIYユーザーでも迷わないUIの両立を狙っている。

塗装膜厚 計算の基礎——DFT・WFT・体積固形分を第一原理から理解する

「塗料を塗ると薄くなる」メカニズム

塗料を刷毛やスプレーで塗ると、まず**湿った状態のフィルム(ウェットフィルム)**ができる。これが乾燥する過程で溶剤(シンナーや水)が蒸発し、固形成分だけが残る。だから乾燥後の膜は必ず薄くなる。

たとえば、コップに牛乳を入れて放置すると水分が飛んで膜が残る——あれと原理は同じ。塗料の場合、蒸発せずに残る固形成分の体積割合が「体積固形分(Volume Solids, VS)」だ。

乾燥膜厚(DFT)と湿潤膜厚(WFT)

  • DFT(Dry Film Thickness): 乾燥後の膜の厚さ。設計図や仕様書で指定される「目標膜厚」はこれ
  • WFT(Wet Film Thickness): 塗った直後、溶剤が飛ぶ前の膜の厚さ。現場でウェットフィルムゲージを当てて測る

この2つの関係はシンプルな比例式で結ばれる:

WFT = DFT / (VS / 100)

体積固形分50%の塗料でDFT 80μmを得たいなら、WFT = 80 / 0.50 = 160μm 塗る必要がある。溶剤が半分飛ぶから、倍の厚さで塗らないと目標に届かないということだ。

体積固形分(Volume Solids)とは

体積固形分は、塗料の全体積に対して乾燥後に残る固形成分の体積比率をパーセントで示したもの。塗料メーカーのSDS(安全データシート)やTDS(技術データシート)に記載されている。

主な塗料タイプ別の目安:

塗料タイプ体積固形分(目安)
アクリル塗料30-40%
フッ素塗料35-45%
ウレタン塗料40-50%
エポキシ塗料45-60%
アルキド塗料45-55%
ジンクリッチプライマー50-65%

体積固形分が高い塗料ほど「固形分が多い=溶剤が少ない」ため、同じWFTでも厚いDFTが得られる。ハイソリッド塗料や無溶剤塗料はVSが80%以上に達するものもある。

理論塗布面積——1Lで何m²塗れるか

理論塗布面積 [m²/L] = (VS / 100) × 1000 / DFT

VS 50%、DFT 80μmなら: 0.50 × 1000 / 80 = 6.25 m²/L。つまり1Lの塗料で理論上6.25m²しか塗れない。

「1000」はμmからmmへの換算ではなく、1L = 1,000,000μm × 1m² の面積換算から導出される定数だ(1Lを1m²に広げると厚さ1,000μm = 1mmになる)。

塗着効率——実際に塗膜になるのは何割か

スプレーで塗ると、塗料の一部は空中に飛散する(オーバースプレー)。刷毛でも容器や養生シートに付着するロスがある。**塗着効率(Transfer Efficiency)**は、吐出した塗料のうち実際に被塗物に付着した割合を示す:

塗装方法塗着効率ロス率
刷毛塗り95%5%
ローラー塗り90%10%
静電塗装85%15%
エアレススプレー70%30%
エアスプレー50%50%

エアスプレーはロスが大きいが、仕上がりの美しさでは優れる。エアレスは厚膜塗装に向き、ロスも比較的少ない。現場では作業効率・仕上がり品質・コストのバランスで塗装方法を選ぶ。

参考: JIS K 5600-1-1:2020 塗料一般試験方法(日本産業規格)

なぜ膜厚管理が設計と施工の生命線になるのか

膜厚が足りないと何が起きるか

塗膜の防食性能は膜厚に直結する。DFTが仕様の80%を下回ると、塗膜のバリア性能が急激に低下し、数年で錆が浮く。鉄骨構造物の防食塗装で膜厚不足が発覚すると、足場を組み直して全面塗り替えになる——数百万円規模の手戻りコストだ。

膜厚が厚すぎても問題

逆に厚すぎると、溶剤の揮発が不十分になりピンホール(微小な穴)やタレが発生する。特にWFTが300μmを超える1回塗りは、乾燥不良のリスクが高い。厚膜が必要な場合は塗り回数を分けるのが鉄則だ。

JIS規格と膜厚検査

JIS K 5600シリーズは塗膜の試験方法を規定しており、膜厚測定はその中核をなす。建築基準法施行令や鋼道路橋塗装便覧(日本道路協会)でも、防食塗装の膜厚は明確に規定されている。

たとえば重防食塗装の場合、エポキシ系下塗り(DFT 60-120μm)+ポリウレタン系上塗り(DFT 25-40μm)といった層構成が標準。各層の膜厚がすべて仕様範囲に入っていることを膜厚計で確認するのが品質管理の基本だ。

数量の見積もりミスは直接的なコスト増

膜厚管理が甘い現場では、「塗料が途中で足りなくなって追加発注 → 工期遅延」「余った塗料が使用期限切れで廃棄」というパターンが繰り返される。体積固形分と膜厚から正確な使用量を事前に算出しておけば、こうした無駄は大幅に減らせる。

参考: 鋼道路橋塗装便覧(日本道路協会)

この計算ツールが活躍する場面

  • 防食塗装の数量積算: 鉄骨・鋼構造物の塗装仕様書から必要塗料量を算出。エポキシ下塗り・ウレタン上塗りなど層ごとに条件を変えて計算できる
  • 発注数量の最適化: 缶サイズと缶数が出るので、16L缶を何本発注するかそのまま購買に回せる。コスト概算も出るから予算取りにも使える
  • 現場での膜厚管理計画: WFTの目標値が分かるので、ウェットフィルムゲージの管理基準を即座に設定できる
  • DIYの塗装計画: フェンスやウッドデッキの塗り替えで「4L缶で足りるか、それとも16L缶が要るか」を事前に判断。買いすぎ・足りない問題を防ぐ

基本の使い方——3ステップで缶数が出る

ステップ1: 塗料仕様を入力 塗料タイプをプルダウンから選ぶと体積固形分が自動セットされる。SDSの値と異なる場合は手動で上書きできる。目標DFTと塗り回数を入力。

ステップ2: 塗装条件を設定 塗装方法(刷毛/ローラー/エアスプレー/エアレス/静電)をタップで選択。塗装面積をm²で入力する。

ステップ3: 結果を確認 WFT・理論塗布面積・実使用量・合計必要量・缶数が即座に表示される。缶単価を入れればコスト概算も出る。結果はワンタップでクリップボードにコピーできるので、そのまま積算書やチャットに貼り付け可能。

具体的な使用例——6つの現場シナリオで検証

ケース1: 鉄骨防錆塗装(エポキシ下塗り・エアレス)

鉄骨柱・梁の防錆下塗り。エポキシ塗料(VS 50%)でDFT 80μm、エアレススプレーで100m²を2回塗り。

項目結果
WFT160 μm
理論塗布面積6.25 m²/L
実使用量(1回塗り)0.2286 L/m²
合計必要量45.7 L
必要缶数(16L缶)3缶

WFT 160μmは標準範囲内。16L缶3本で48Lとなり、余裕は2.3L(約5%)。ぎりぎりだが、エアレスのロス率30%を織り込み済みなので現実的な数量だ。

ケース2: 外壁仕上げ塗装(ウレタン上塗り・ローラー)

マンション外壁のウレタン仕上げ塗装。VS 45%、DFT 40μm、ローラーで50m²を1回塗り。

項目結果
WFT89 μm
理論塗布面積11.25 m²/L
実使用量(1回塗り)0.0988 L/m²
合計必要量4.9 L
必要缶数(4L缶)2缶

4L缶2本で8L。余りが3.1L出るが、4L缶の次は1L缶しかない場合、4L+1Lの組み合わせも検討の余地あり。ローラーはロス10%と控えめなので、薄膜仕上げに向いている。

ケース3: DIY家具塗装(アクリル塗料・刷毛)

棚板や小家具のアクリル塗装。VS 35%、DFT 25μm、刷毛塗りで30m²を2回塗り。

項目結果
WFT71 μm
理論塗布面積14.00 m²/L
実使用量(1回塗り)0.0752 L/m²
合計必要量4.5 L
必要缶数(4L缶)2缶

刷毛塗りは塗着効率95%と最も効率が良い。DIYで少量を丁寧に塗るならロスは最小限に抑えられる。4L缶2本で余裕は3.5L——色違いの家具にも使い回せる量だ。

ケース4: タンク内面防食(ジンクリッチプライマー・エアスプレー)

貯水タンク内面のジンクリッチプライマー。VS 55%、DFT 75μm、エアスプレーで200m²を1回塗り。

項目結果
WFT136 μm
理論塗布面積7.33 m²/L
実使用量(1回塗り)0.2727 L/m²
合計必要量54.5 L
必要缶数(16L缶)4缶

エアスプレーはロス率50%と大きく、理論使用量の倍の塗料が必要になる。200m²の広面積ならエアレス(ロス30%)への切り替えで約23%の塗料削減が可能。ただしジンクリッチは粒子が粗いため、スプレーノズルの詰まりに注意が必要だ。

ケース5: 工場設備の耐候仕上げ(フッ素塗料・静電塗装)

屋外設置の制御盤・配管ラックにフッ素塗料で仕上げ。VS 40%、DFT 30μm、静電塗装で150m²を2回塗り。

項目結果
WFT75 μm
理論塗布面積13.33 m²/L
実使用量(1回塗り)0.0882 L/m²
合計必要量26.5 L
必要缶数(16L缶)2缶

静電塗装は金属部品との相性が良く、塗着効率85%を実現する。フッ素塗料は高価だが超耐候性で、ライフサイクルコストでは有利。16L缶2本(32L)で余裕は5.5L。

ケース6: 床塗装(アルキド塗料・ローラー・3回塗り)

工場床のアルキド塗装。VS 50%、DFT 50μm、ローラーで80m²を3回塗り。

項目結果
WFT100 μm
理論塗布面積10.00 m²/L
実使用量(1回塗り)0.1111 L/m²
合計必要量26.7 L
必要缶数(4L缶)7缶

3回塗りは耐摩耗性が求められる床塗装で一般的。4L缶7本で28L、余裕は1.3Lとかなりタイト。現場の下地状態(粗面はロスが増える)を考慮すると、8缶発注しておくのが安全だ。

仕組み・アルゴリズム——WFT = DFT / VS の導出と塗着効率の概念

候補手法の比較

塗料使用量の計算には大きく2つのアプローチがある:

  1. メーカーカタログ値ベース: カタログ記載の「理論塗布量 ○m²/L」をそのまま使う方法。簡単だが、膜厚指定が変わると対応できない
  2. 体積固形分ベース(本ツール採用): DFTとVSから理論値を算出し、塗着効率で補正する方法。膜厚・塗料・塗装方法の任意の組み合わせに対応できる

本ツールは後者を採用した。理由は、防食塗装では仕様書でDFTが明確に指定されるため、膜厚起点の計算が実務に直結するからだ。

計算フロー

` 入力: DFT [μm], VS [%], 塗着効率 eff, 面積 A [m²], 塗り回数 N, 缶サイズ C [L]

  1. WFT = DFT / (VS / 100) ... 湿潤膜厚
  2. 理論塗布面積 = (VS / 100) × 1000 / DFT ... 1Lで塗れる面積
  3. 理論使用量 = 1 / 理論塗布面積 ... 1m²あたりの理論量
  4. 実使用量 = 理論使用量 / eff ... ロス込みの実量
  5. 合計使用量 = 実使用量 × A × N ... 全面積・全回数の合計
  6. 必要缶数 = ceil(合計使用量 / C) ... 切り上げ `

計算例: ステップバイステップ

エポキシ塗料(VS 50%)、DFT 80μm、エアレス(効率 0.70)、100m²、2回塗り、16L缶の場合:

`

  1. WFT = 80 / (50/100) = 80 / 0.50 = 160 μm
  2. 理論塗布面積 = 0.50 × 1000 / 80 = 6.25 m²/L
  3. 理論使用量 = 1 / 6.25 = 0.1600 L/m²
  4. 実使用量 = 0.1600 / 0.70 = 0.2286 L/m²
  5. 合計使用量 = 0.2286 × 100 × 2 = 45.7 L
  6. 必要缶数 = ceil(45.7 / 16) = ceil(2.857) = 3缶 `

WFT = DFT / VS の導出

なぜこの式が成り立つのか。塗料を面積Aにウェット膜厚WFTで塗ると、その体積は:

V_wet = A × WFT

乾燥後、溶剤が蒸発して体積固形分VSの割合だけ残る:

V_dry = V_wet × VS = A × WFT × VS

乾燥膜の体積はDFTで表すと:

V_dry = A × DFT

両者を等置すると:

A × DFT = A × WFT × VS DFT = WFT × VS WFT = DFT / VS

面積Aが消えるため、膜厚の関係は面積に依存しない。これが塗装工学の最も基本的な公式だ。

塗着効率の扱い

塗着効率は「吐出量のうち被塗物に付着する割合」であり、ロス分を補正するために理論使用量を効率で割る。効率が低い(ロスが大きい)ほど、必要塗料量は増える。

実使用量 = 理論使用量 / 塗着効率

たとえばエアスプレー(効率50%)は理論量の2倍、刷毛(効率95%)は理論量の約1.05倍の塗料が必要になる。この差は面積が大きくなるほど顕著に効いてくる。

参考: SSPC(Society for Protective Coatings) — 防食塗装の国際的な技術基準を策定する団体

面積ベースの塗料計算ツールとの違い

同じサイト内に塗料計算ツール(paint-calc)がある。「どっちを使えばいいの?」と迷うかもしれないので、役割の違いを整理しておく。

paint-calc(面積ベース) は「壁を塗りたいけど、何リットル買えばいいか分からない」というDIYユーザー向け。部屋のサイズや面の寸法を入力して、塗料の種類(水性・油性・ステインなど)ごとの標準塗布量から必要量を算出する。膜厚の概念は登場しない。

一方、本ツール(膜厚ベース) は「DFT 80μm を確保するために、体積固形分50%の塗料をエアレスで吹いたら何リットル必要か」という問いに答える。塗装仕様書に書かれた膜厚・体積固形分・塗装方法をそのまま入力できるので、防食塗装や工業塗装の施工管理に直結する。

比較項目paint-calcpaint-thickness-calc
主な入力面の寸法・塗料タイプ膜厚(DFT)・体積固形分・塗装方法
想定ユーザーDIY・内装リフォーム施工管理者・防食エンジニア
ロス計算塗料タイプ別の標準塗布量に内包塗着効率(刷毛95%〜エアスプレー50%)で明示
WFT算出なしあり
コスト概算あり(缶の組み合わせ最適化)あり(缶単価ベース)

迷ったときの基準はシンプル。塗装仕様書に膜厚の指定があるなら本ツール、なければpaint-calc。両方使って結果をクロスチェックするのも有効な手段だ。

塗装膜厚にまつわる豆知識

膜厚計はどうやって測っている?

乾燥膜厚の測定には大きく2つの方式がある。磁気式(電磁誘導式) は鉄鋼など磁性体の上に塗った膜厚を測る方式で、磁石と素地の距離変化を検出する。渦電流式 はアルミなど非磁性金属向けで、コイルに流れるインピーダンス変化を利用する。最近の膜厚計は両方を自動判別するデュアルタイプが主流になっている。(参考: Wikipedia - 膜厚計

世界最古の「塗料」は4万年前

南アフリカのブロンボス洞窟から出土した赤い顔料(酸化鉄ベース)は、約10万年前のものとされる。これが「塗る」行為の最古の証拠だ。産業塗料としてはイギリスで18世紀に鉛白ペイントが量産され始め、ここから膜厚管理の歴史が始まった。(参考: Blombos Cave - Wikipedia

体積固形分100%の塗料がある

粉体塗装(パウダーコーティング)は溶剤を含まないため、体積固形分が実質100%。つまりWFT = DFTとなり、計算がきわめてシンプルになる。環境負荷が低いことから自動車部品や家電筐体で採用が広がっている。ただし現場施工には専用設備が必要で、大型構造物には使いにくい。

1μmのズレが寿命を変える

重防食塗装の分野では、DFTが規定値を10%下回ると耐用年数が数年単位で短縮するという報告がある。逆に厚塗りしすぎると内部応力で剥離リスクが上がる。「膜厚は厚ければ厚いほど良い」わけではないのが塗装の奥深いところ。

塗装膜厚計算を使いこなすTips

1. SDSの体積固形分を確認してから入力する

塗料缶のラベルには体積固形分が書いていないことが多い。塗料メーカーのWebサイトからSDS(安全データシート)またはTDS(技術データシート)をダウンロードし、「Volume Solids」や「体積固形分」の欄を探す。見つからなければメーカーに問い合わせるのが確実。プリセット値はあくまで代表値なので、実際の塗料と異なる可能性がある。

2. WFT 300μm超はタレの危険信号

計算結果のWFTが300μmを超えたら要注意。1回の塗りで厚すぎると、垂直面ではタレ(sagging)が発生し、膜厚にムラができる。塗り回数を増やしてDFTを分割するのが鉄則だ。たとえばDFT 200μmなら、1回100μm×2回に分けるほうが仕上がりが安定する。

3. 気温で塗料粘度が変わるので余裕を持つ

冬場は塗料の粘度が上がり、スプレーの霧化が悪くなる。結果としてロスが増え、塗着効率が下がる。本ツールの塗着効率はあくまで標準条件(20℃前後)での目安。5℃以下の低温環境では実使用量を10〜20%多めに見積もっておくのが安全だ。

4. 下地の粗さは「見えないロス」

ブラスト処理した鋼材はRz 50〜100μm程度の凹凸がある。この凹凸を埋める塗料は膜厚にカウントされない。粗い下地では理論値より10〜30%多い塗料が必要になる。見積もり段階で缶数にバッファを持たせておこう。

よくある質問

Q: 体積固形分と重量固形分の違いは?

体積固形分(Volume Solids)は塗料中の固形分が占める体積の割合。重量固形分(Weight Solids)は重量の割合だ。膜厚計算で使うのは体積固形分のほう。溶剤が揮発した後に残る膜の「厚み」を決めるのは体積だからだ。重量固形分しか分からない場合は、塗料と固形分の比重から換算する必要がある。SDSに両方記載されている場合は、必ず体積固形分のほうを入力してほしい。

Q: 塗り回数を増やすと使用量は単純に倍になる?

理論上は倍になる。本ツールでは「目標DFT × 塗り回数」で合計膜厚を算出している。つまり、DFT 80μmで2回塗りを指定すると、合計DFT 160μm分の塗料量が計算される。1回あたりのDFTを入力し、塗り回数で合計を制御する仕組みだ。仕様書の読み方に注意してほしい。

Q: エアスプレーの塗着効率50%って本当にそんなにロスが出る?

エアスプレー(従来型)はオーバースプレーが大きく、実際に50%前後のロスが出るのは珍しくない。特に複雑な形状や風のある屋外ではさらに悪化する。HVLP(High Volume Low Pressure)スプレーガンを使えば65%程度まで改善できるが、本ツールでは従来型の代表値を採用している。現場の条件に応じて、塗装方法の選択を変えて比較してみてほしい。

Q: 入力した数値はサーバーに送信される?

すべての計算はブラウザ内で完結しており、入力値がサーバーに送信されることは一切ない。塗料の仕様や面積などの情報が外部に漏れる心配は不要だ。安心して現場のデータをそのまま入力してほしい。

まとめ

塗装の膜厚管理は、防食性能とコストの両方を左右する重要な工程だ。本ツールではDFT・体積固形分・塗装方法を入力するだけで、WFT・理論使用量・実使用量・缶数・コスト概算までワンストップで把握できる。

面積だけで手軽に塗料量を出したい場合は塗料計算ツールも併用してみてほしい。膜厚ベースと面積ベース、2つのアプローチを使い分けることで、発注ミスや塗料不足のリスクを減らせるはずだ。


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Mahiro

Mahiro Appの開発者。鉄骨塗装の積算でExcelと格闘した経験から、膜厚→缶数を一発で出すツールを作った

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