分圧・分流計算ツール(テブナン/ノートン等価)

抵抗分圧の出力電圧・負荷時の電圧降下・出力インピーダンス・テブナン/ノートン等価を計算

電源電圧と分圧抵抗 R1/R2 を入れると、無負荷出力電圧・テブナン/ノートン等価・出力インピーダンスを自動計算。負荷抵抗 Rload を入れれば「負荷を繋いだときどれだけ電圧が下がるか」を判定する。

回路定数を入力

Vout = Vin × R2 / (R1 + R2)。R1 は Vin–Vout 間、R2 は Vout–GND 間の抵抗。

計算結果

負荷時の電圧降下(負荷変動率)負荷を入力すると電圧降下を判定
無負荷
0VVin 5.00V
無負荷 2.500V

無負荷出力 Vout(=Vth)

2.500 V

負荷接続時の出力電圧

出力インピーダンス Rth

5.000 kΩ

R1∥R2

ブリーダ電流(無負荷)

0.250 mA

ノートン短絡電流 In

0.500 mA

抵抗の消費電力(無負荷)

1.25 mW

本ツールは理想抵抗・直流(DC)動作を前提とした計算。実際の回路では抵抗の許容差(±1〜5%)・温度係数・配線抵抗、電源の内部抵抗、負荷の非線形性で値がずれる。基準電圧やセンサ電圧を分圧で作る場合は、出力インピーダンス Rth と負荷電流から電圧降下を見積もり、必要に応じてオペアンプのボルテージフォロワでバッファすること。

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📘 電子回路・回路設計の参考書とブレッドボード工具

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5Vから2.5Vを作ったのに、負荷を繋いだら電圧が下がった

ブレッドボードの上で、抵抗を2本直列にして電源の真ん中の電圧を取り出す。10kΩを2本使って5Vの電源から2.5Vの基準電圧を作る。テスターを当てると、確かに2.50V。よし完璧だ、と思ってその先にセンサやマイコンの入力を繋いだ瞬間、電圧計の数字がスッと下がっていく。2.5Vだったはずが、1.6V台になっている。式は合っているのに、なぜ。

これは抵抗分圧を初めて触る人がほぼ全員ぶつかる壁だ。Vout = Vin × R2 / (R1 + R2) という分圧比の式は教科書の最初に出てくるが、その式が成り立つのは「出力に何も繋がっていないとき」だけ。負荷を繋いだ瞬間、回路は別物になる。

このツールは、無負荷の出力電圧だけでなく、負荷を繋いだときに実際に何ボルトまで下がるか、そしてその回路が持つ「出力インピーダンス」を一発で出す。分圧の式だけでは見えない、回路の本当の姿をテブナン等価で可視化する。

なぜ作ったのか

分圧抵抗の計算ツールは世の中に山ほどある。電圧を入れて抵抗を2つ入れれば出力電圧が出る。それだけなら電卓で十分だ。だが、そういうツールのほとんどが「無負荷の分圧比」しか教えてくれない。そして、それこそが初学者を一番ハマらせる落とし穴になっている。

自分も学生のころ、Arduinoのアナログ入力に温度センサの電圧を分圧で半分にして入れようとして、まったく違う値が読めて数時間悩んだことがある。原因は単純で、分圧抵抗にメガオーム級の大きな値を使っていたせいで出力インピーダンスが高くなり、ADCの入力に電流が吸われて電圧が崩れていた。式の上では正しいのに、現実では成立しない。「分圧比の式は覚えたが、出力インピーダンスという概念を完全に忘れていた」——この失敗が、このツールの出発点だ。

回路理論の授業ではテブナンの定理を習う。けれど、それが「分圧回路に負荷を繋いだときの電圧降下」と直結していると体感している人は意外と少ない。テブナン等価の内部抵抗Rthは、ただの試験問題の答えではなく、その分圧が負荷に対してどれだけ強いか弱いかを表す実用的な指標だ。

だからこのツールは、出力電圧という「結果」だけでなく、Rth・ブリーダ電流・負荷時の電圧降下率という「回路の体力」をまとめて出すことにした。バッファ(オペアンプのボルテージフォロワ)を入れるべきかどうかを、降下率から自動で判定する。式を覚えるためではなく、現場で「この分圧、そのまま使って大丈夫か?」を判断するためのツールにしたかった。

分圧・分流とテブナンの定理 とは何か

直列抵抗による分圧の原理

電源Vinに抵抗R1とR2を直列に繋ぐと、2本の抵抗には同じ電流が流れる。オームの法則から、抵抗が大きいほどその抵抗にかかる電圧(電圧降下)が大きくなる。だから2本の接続点の電圧は、全体の電圧を抵抗の比で分けた値になる。これが分圧だ。

下側抵抗R2(Vout端子とGNDの間)にかかる電圧が出力電圧になるので、

Vout = Vin × R2 / (R1 + R2)

たとえば水を流すホースを想像してほしい。太い管(小さい抵抗)と細い管(大きい抵抗)を直列に繋ぐと、流れにくい細い管のところで大きく圧力が落ちる。電気でいう「圧力」が電圧、流れが電流だ。抵抗の比がそのまま電圧の分け前を決める。

並列抵抗による分流

逆に、同じ2点間に抵抗を並列に繋ぐと、両者には同じ電圧がかかり、電流が抵抗の逆比で分かれる。これが分流。並列合成抵抗は

R1∥R2 = R1 × R2 / (R1 + R2)

分圧回路に負荷を繋ぐとき、この並列合成が効いてくる。負荷抵抗RloadはVout端子とGNDの間に入るので、下側のR2と並列になる。つまり負荷を繋ぐと「下側抵抗が実効的に小さくなる」。下側が小さくなれば分圧比が崩れ、出力電圧が下がる。これが冒頭の「2.5Vが1.6Vに落ちた」現象の正体だ。

テブナンの定理 ——回路を電池1個と抵抗1個に圧縮する

テブナンの定理は、2端子から見た任意の線形回路を「1つの電圧源Vth+1つの直列抵抗Rth」に置き換えられる、という強力な定理だ。分圧回路に当てはめると、

  • 開放電圧Vth=負荷を繋がないときの出力電圧=無負荷のVout
  • 内部抵抗Rth=電源を短絡(0Ωに)したとき出力端子から見える抵抗=R1∥R2

電源を短絡すると、R1の上端もGNDに落ちるので、出力端子から見るとR1とR2が並列に見える。だからRth = R1∥R2 になる。

このRthが出力インピーダンスだ。一度テブナン等価に圧縮してしまえば、負荷Rloadを繋いだときの出力は、VthとRthとRloadの単純な分圧で求まる。

Vout(負荷時) = Vth × Rload / (Rth + Rload)

RthがRloadに対して十分小さければ出力はほとんど下がらない。RthがRloadと同じくらい大きいと、出力は大きく削られる。分圧が「負荷に強いか弱いか」は、このRthとRloadの大小関係だけで決まる。

ノートン等価 ——双対表現

同じ回路を「電流源In+並列抵抗Rn」で表すのがノートン等価。In = Vth / Rth、Rn = Rth。テブナンとノートンは同じ回路の表と裏で、電流で考えたいとき(電流源駆動の解析)に便利だ。

実務での重要性

分圧比の式が正しくても、出力インピーダンスを無視すると現場では必ず痛い目に遭う。具体的に何が起きるかを挙げる。

基準電圧がずれる: ADCのリファレンスやコンパレータのしきい値を分圧で作ると、その先の回路に電流が流れた瞬間に基準電圧が動く。基準が動けば測定値そのものが狂う。温度補償回路でしきい値が0.1Vずれれば、判定温度が数℃ずれることもある。

センサの読みが狂う: アナログ出力センサの電圧を分圧してマイコンのADC範囲に収めるとき、分圧抵抗が大きすぎると出力インピーダンスが高くなる。多くのマイコンのADCは入力インピーダンスに上限(数十kΩ程度を推奨)があり、それを超えるとサンプリング時にコンデンサへの充電が間に合わず、変換値が真値より低く出る。データシートに「ソースインピーダンスは10kΩ以下」と書かれているのはこのためだ。

プルアップ/プルダウンが効かない: 信号ラインを分圧的に引っ張るとき、引っ張る抵抗が大きすぎると外来ノイズやリーク電流に負けて、意図した論理レベルにならない。逆に小さすぎると消費電流が無駄に増える。

これらはすべて「分圧の式」では見えず、「Rthと負荷電流」で初めて見える。実務では1/10ルール——負荷インピーダンスをRthの10倍以上に取れば降下率が約9%以下に収まる——という経験則がよく使われるが、その根拠も結局はテブナン等価の分圧式だ。このツールは降下率を実数で出すので、経験則に頼らず「この分圧は何%下がるか」を定量的に確認できる。

活躍する場面

マイコンADCの前段: 5Vや12Vのセンサ電圧を3.3VマイコンのADC範囲に分圧で落とすとき、降下率とRthを確認してADCのソースインピーダンス要件を満たすかチェックする。

基準電圧・しきい値の生成: コンパレータやADCリファレンス用の中間電圧を作るとき、負荷電流による降下が許容範囲か、ブリーダ電流が十分かを見る。

電圧レベル変換: 高い電圧の信号を低い電圧側の入力に合わせるための簡易レベルシフト。出力インピーダンスが信号速度に効くので、Rthの目安を掴む。

プルアップ/プルダウン設計: 引っ張り抵抗の値を決めるとき、消費電流(ブリーダ電流)と外乱耐性のバランスを数値で確認する。

基本の使い方(3ステップ)

  1. 電源電圧と抵抗値を入力: 電源電圧Vin、上側抵抗R1、下側抵抗R2を入れる。抵抗はkΩ単位。プリセットボタンから代表的な構成を呼び出すこともできる。

  2. 無負荷出力とテブナン等価を確認: 無負荷の出力電圧Vout、出力インピーダンスRth(R1∥R2)、ノートン短絡電流In、ブリーダ電流、抵抗の消費電力が自動で出る。まずここで「この分圧は何Vを、どれだけの内部抵抗で出すか」を掴む。

  3. 負荷を繋いで電圧降下を見る: 負荷抵抗Rloadを入れると、負荷接続時の実出力電圧と電圧降下率(負荷変動率)が計算され、StatusCardで「影響なし/軽微/無視できない/バッファ必須」が判定される。空欄のままなら無負荷のテブナン等価だけを表示する。

具体的な使用例・検証データ

ケース1: 5V→2.5V 基準・無負荷(テブナン等価の基本)

入力: Vin=5V、R1=10kΩ、R2=10kΩ、Rload=空欄(無負荷)。

結果: 無負荷出力 voutNoLoad=2.500V、出力インピーダンス Rth=5.000kΩ、ブリーダ電流 iBleeder=0.250mA、ノートン短絡電流 In=0.500mA

解釈: R1=R2なので出力はちょうど半分の2.5V。Rthは10kΩ∥10kΩ=5kΩ。これがこの分圧の「体力」を決める内部抵抗だ。ブリーダ電流は無負荷でも常時流れ続ける電流で、5V÷20kΩ=0.25mAしかない。この時点で「Rthが5kΩもある」という事実が、後で負荷を繋いだときの弱さを予告している。

ケース2: 同じ分圧に10kΩの負荷(大きな電圧降下)

入力: Vin=5V、R1=10kΩ、R2=10kΩ、Rload=10kΩ。

結果: voutNoLoad=2.500V、負荷時出力 voutLoaded=1.667V、電圧降下率 droopPercent=33.333%、Rth=5.000kΩ

解釈: まさに冒頭の「2.5Vが1.6Vに落ちた」現象。下側のR2=10kΩに負荷10kΩが並列に入り、実効的な下側抵抗が10∥10=5kΩに半減する。出力は 5×5/(10+5)=1.667V。降下率は33%で、StatusCardは「バッファ必須」のdanger判定になる。RloadがRth(5kΩ)の2倍しかないので、これだけ大きく削られる。1/10ルールから大きく外れている典型例だ。

ケース3: 12V→4V に100kΩの軽負荷(軽微な降下)

入力: Vin=12V、R1=8kΩ、R2=4kΩ、Rload=100kΩ。

結果: voutNoLoad=4.000V、voutLoaded=3.896V、droopPercent=2.597%、Rth=2.667kΩ

解釈: 無負荷では 12×4/(8+4)=4.000V。Rthは8∥4=2.667kΩと小さめ。負荷100kΩはRthの約37倍あるので、下側の4kΩに100kΩが並列に入っても実効下側は約3.846kΩとほとんど変わらず、出力は3.896Vにとどまる。降下率2.6%は「軽微な電圧降下(good)」判定。Rthが負荷に対して十分小さい=1/10ルールを余裕で満たしている好例だ。ケース2と比べると、Rthと負荷の比がいかに効くかがよく分かる。

ケース4: プルダウン抵抗の検討(入力値のみ)

入力例: Vin=3.3V、R1=10kΩ(信号源側)、R2=10kΩ(プルダウン)、Rload=入力の入力インピーダンス相当をkΩで入力。プルダウンが効くかどうか、降下率とRthで確認できる。具体的な数値はツールに入力して確かめてほしい。

ケース5: 9V入力を3.3Vマイコン向けに分圧するセンサ前段(入力値のみ)

入力例: Vin=9V、R1=4.7kΩ、R2=2.2kΩ、Rload=空欄(まず無負荷で出力とRthを確認)。出力がマイコンのADC範囲に収まるか、Rthがソースインピーダンス要件を満たすかを見る。実際の数値はツールに入力して確認してほしい。

ケース6: 基準電圧用の低抵抗分圧(入力値のみ)

入力例: Vin=5V、R1=1kΩ、R2=1kΩ、Rload=10kΩ。抵抗を小さくしてブリーダ電流を増やすと、同じ負荷でも降下率がどう改善するか比較できる。ケース2(10k/10k)と同じ分圧比のまま抵抗だけ下げた構成として入力し、降下率とブリーダ電流・消費電力のトレードオフを確かめてほしい。

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較

負荷時の出力電圧を求める方法は2通りある。(A) 負荷抵抗RloadをR2に並列合成して、その合成抵抗を下側とした分圧式で直接計算する方法。(B) 回路をいったんテブナン等価(Vth・Rth)に圧縮してから、VthとRth、Rloadの分圧で求める方法。

数学的には両者は完全に一致する。ただ、教育的価値と拡張性を考えてこのツールは両方を内部で持ち、表示はテブナン等価を主役にする設計にした。理由は、Rth(出力インピーダンス)という値そのものが、ユーザーが本当に知りたい「この分圧は負荷に強いか」を一目で表すからだ。出力電圧だけ出すツールにはこの視点がない。

実装フロー

入力はすべて文字列で受け取り、まず数値変換と妥当性チェックを行う。

const vin = parseFloat(vinStr);
const r1 = parseFloat(r1Str);
const r2 = parseFloat(r2Str);
if (!isFinite(vin) || vin <= 0 || !isFinite(r1) || r1 <= 0 || !isFinite(r2) || r2 <= 0) {
  return null; // 電圧・抵抗が不正なら計算しない
}

無負荷側(常時計算)の式は次の通り。抵抗をkΩ、電圧をVで扱うので、電流は自動的にmA、電力はmWになる(V÷kΩ=mA、V×mA=mW)。

const voutNoLoad = vin * r2 / (r1 + r2);   // 無負荷出力=テブナン電圧
const thevResistance = r1 * r2 / (r1 + r2); // Rth=R1∥R2=出力インピーダンス
const nortonCurrent = voutNoLoad / thevResistance; // ノートン短絡電流 In
const iBleeder = vin / (r1 + r2);           // ブリーダ電流(無負荷で常時流れる)[mA]
const totalPower = vin * iBleeder;          // 抵抗の総消費電力 [mW]

負荷が入力されている場合(Rload > 0)のみ、下側並列合成と負荷時出力・降下率を追加で求める。Rloadが空欄やNaN、0以下のときはvoutLoaded・iLoad・droopPercentをnullにして無負荷扱いにする。

const r2Parallel = r2 * rload / (r2 + rload);          // R2∥Rload
const voutLoaded = vin * r2Parallel / (r1 + r2Parallel);
const iLoad = voutLoaded / rload;                       // 負荷に流れる電流 [mA]
const droopPercent = (voutNoLoad - voutLoaded) / voutNoLoad * 100;

降下率は4段階で判定する: droop < 1 で「負荷の影響はほぼなし(safe)」、1 ≦ droop < 5 で「軽微な電圧降下(good)」、5 ≦ droop < 20 で「電圧降下が無視できない(caution)」、droop ≧ 20 で「出力電圧が大きく低下・バッファ必須(danger)」。

計算例(ケース2を手で追う)

Vin=5V、R1=10kΩ、R2=10kΩ、Rload=10kΩで、上の式を順に追うと:

  1. 無負荷出力 voutNoLoad = 5 × 10 /(10 + 10) = 2.500V
  2. 下側並列合成 r2Parallel = 10 × 10 /(10 + 10) = 5kΩ
  3. 負荷時出力 voutLoaded = 5 × 5 /(10 + 5) = 1.667V
  4. 降下率 droopPercent = (2.500 − 1.667)/2.500 × 100 = 33.333%

テブナン等価から検算すると、Rth=10∥10=5kΩなので voutLoaded = Vth × Rload/(Rth + Rload) = 2.5 × 10/(5 + 10) = 1.667V。直接分圧式とぴたり一致する。これがテブナン等価が「同じ回路の別表現」であることの証明だ。負荷電流 iLoad = 1.667 / 10 = 0.16667mA も同時に求まる。

抵抗カラーコードやオペアンプ計算との役割分担

世の中には電子回路向けの計算ツールが数多くあるが、それぞれ守備範囲が違う。分圧・分流計算ツールが担うのは「2本の抵抗で電圧をどう分けるか」「そこに負荷を繋いだとき出力がどれだけ下がるか」という一点に絞った計算だ。

/resistor-color-code は抵抗の色帯から抵抗値を読み取る逆引きツール。本ツールで「R1=8kΩ、R2=4kΩが欲しい」と決まったあと、手元のカーボン抵抗の帯を確認したり、E系列の標準値に丸めたりする工程を担当する。分圧計算は「いくらの抵抗が必要か」、カラーコードは「その抵抗をどう読むか」で、設計の前後関係でつながる。

/opamp-circuit-calc は本ツールと最も補完関係が強い。分圧回路の出力インピーダンス Rth が高くて負荷で電圧が落ちるとわかったとき、次に必要になるのがボルテージフォロワ(バッファ)だ。オペアンプで受ければ出力インピーダンスがほぼゼロになり、負荷が何であっても分圧比どおりの電圧が保たれる。本ツールが「バッファが要る/要らない」を判定し、オペアンプ計算ツールが「そのバッファをどう組むか」を担う。

/led-circuit-designer は同じ抵抗計算でも目的が真逆。LEDの電流制限抵抗は「電流をいくらに絞るか」を主役にした直列抵抗の計算で、分圧のように電圧の比を取り出すわけではない。電流を決めるのがLED、電圧を分けるのが分圧、と覚えておくと混同しない。

/rc-filter-sim は抵抗とコンデンサで周波数特性を作るツール。分圧が「直流での電圧比」を扱うのに対し、RCフィルタは「周波数ごとの分圧比」を扱う。実はRCフィルタは抵抗とコンデンサのインピーダンスによる周波数依存の分圧そのものなので、本ツールで直流分圧の感覚をつかんでおくとフィルタの理解が一段速くなる。

このツールは「分圧の電圧降下を可視化する」一点に特化することで、テブナン/ノートン等価まで一度に出す。汎用回路シミュレータを立ち上げるより速く、暗算より正確だ。

テブナンの定理とブリーダ電流、知っておくと面白い話

分圧の世界には、由来を知ると腑に落ちる用語がいくつかある。

テブナンの定理は130年以上前のフランスから来た。 この定理は1883年、フランスの電信技師レオン・シャルル・テブナン(Léon Charles Thévenin)が発表したものだ。どんなに複雑な線形回路でも、2つの端子から見れば「1個の電圧源+1個の抵抗」に置き換えられる——という主張は当時かなり大胆だった。実は同じ内容を1853年にヘルムホルツが先に示していたことが後年判明したが、電気回路の文脈で広めた功績からテブナンの名が定着した。詳しくはテブナンの定理(Wikipedia)を参照。ノートンの定理はその電流源版で、ベル研究所のエドワード・ノートンが1926年に内部資料として示した双対表現だ。

ブリーダ電流の「ブリーダ(bleeder)」は「血を抜くもの」が語源。 真空管時代の電源回路では、電源を切った直後も平滑コンデンサに高電圧が残り、感電事故を起こした。そこで常に少しだけ電流を流して電荷を「抜く」抵抗を入れた。これがブリーダ抵抗で、流れる電流がブリーダ電流。分圧回路では、負荷に関係なく上下の抵抗を貫いて常時流れる電流を指す。本ツールの iBleeder がこれにあたり、Vin /(R1 + R2) で求まる。この電流が大きいほど出力は負荷の影響を受けにくくなるが、その分だけ電力を捨て続けることになる。

なぜ「1/10ルール」が使われるのか。 分圧で基準電圧を作るとき、経験則として「負荷電流の10倍のブリーダ電流を流せ」とよく言われる。これは負荷電流の変動が出力電圧に与える影響を1割以下に抑えるための目安だ。ブリーダ電流が負荷電流の10倍なら、負荷が変動しても下側抵抗を流れる電流の変化は全体の1割程度で済み、電圧降下も小さく収まる。逆に省電力を優先して抵抗を大きくすると、出力インピーダンス Rth が上がり、わずかな負荷でも電圧が崩れる。本ツールで Rth とブリーダ電流を同時に見れば、この綱引きが数字で見える。

分圧設計の実務Tips

  • ブリーダ電流は負荷電流の最低10倍を狙う。 基準電圧やセンサ電圧を作るなら、負荷が引く電流の10倍以上のブリーダ電流が流れるよう抵抗値を選ぶ。本ツールで Rload を入れて電圧降下率が5%未満に収まるかを確認するのが手っ取り早い。降下が大きければ R1・R2 を一桁下げる。

  • 下げすぎると電力を捨てる、上げすぎるとノイズに弱くなる。 抵抗を小さくすればブリーダ電流が増えて出力は安定するが、消費電力 totalPower が増える。逆に大きくすると省電力だが出力インピーダンスが上がり、外来ノイズや配線のリーク電流の影響を受けやすい。本ツールの消費電力警告(250mW超)とブリーダ電流警告(10µA未満)の両方が出ない範囲が実用的な落としどころだ。

  • バッファの入れどころは「負荷が動く・繊細・低インピーダンス」のとき。 マイコンのADCのように入力インピーダンスが高く電流をほとんど引かない負荷なら、分圧の生出力で足りることが多い。一方、リレーやLED、別段の回路を直接駆動するなら出力インピーダンスがネックになる。電圧降下率が caution(5%以上)になったらボルテージフォロワを検討する合図だ。

  • マイコンADC前段では分圧抵抗の合成値をADCの推奨ソース抵抗と比べる。 多くのマイコンはADCのサンプリングのため「ソース抵抗10kΩ以下」を推奨している。これは分圧の出力インピーダンス Rth(=R1 ∥ R2)に相当する。本ツールの Rth がこの推奨値を超えていたら、抵抗を下げるかバッファを入れる。

  • プルダウン/プルアップは抵抗1本でも分圧として捉える。 プルダウン抵抗にセンサや別の抵抗が並列にぶら下がると、それは立派な分圧回路だ。意図しない並列抵抗で論理レベルがずれるトラブルは、本ツールに R2=プルダウン値、Rload=並列する抵抗を入れて電圧を確かめると早い。

よくある質問

分圧回路で電源(電源装置の代わり)は作れる?

結論から言うと、分圧は「電源」には向かない。分圧で作った電圧は出力インピーダンス Rth を持つため、負荷が電流を引くたびに電圧が下がる。本ツールで 5V→2.5V(10k/10k)に10kΩの負荷を繋ぐと、出力が2.5Vから約1.667Vまで落ち、電圧降下率は33%にもなる。基準電圧(電流をほとんど引かない用途)なら分圧で十分だが、何かを駆動する電源が欲しいなら三端子レギュレータやDC-DCコンバータを使うべきだ。どうしても分圧電圧を電源的に使いたいなら、ボルテージフォロワでバッファして出力インピーダンスを下げる。

出力インピーダンス Rth って結局なに? なぜ `R1 ∥ R2` になる?

Rth は「出力端子から回路を覗いたときの内部抵抗」だ。テブナンの定理では、電源を理想的に短絡(0Ω化)した状態で出力端子から見た合成抵抗が Rth になる。電源を短絡すると R1 の上端と R2 の下端がどちらもGNDにつながり、出力端子から見ると R1 と R2 が並列に見える。だから Rth = R1 ∥ R2 = R1×R2 /(R1 + R2) だ。この Rth が小さいほど負荷に強い分圧になる。本ツールでは Rth を常時表示しているので、負荷を繋ぐ前に「この分圧は負荷に強いか」をひと目で判断できる。

分圧とトランジスタのバイアス分圧は同じもの?

トランジスタのエミッタ接地増幅回路では、ベースに与える直流電圧を2本の抵抗で作る「ベースバイアス分圧」がよく使われる。これは本ツールが扱う分圧回路と原理的に同じだ。ただしトランジスタのベースは電流を引く(ベース電流が流れる)ため、それが負荷として働き、分圧電圧を引き下げる。だからバイアス分圧では「ブリーダ電流をベース電流の10倍以上に取る」という設計指針が出てくる。本ツールでベース電流相当を Rload に換算して入れれば、バイアス電圧がどれだけずれるかの感覚はつかめる。バイアス設計の細部はトランジスタの hFE や動作点に依存するので別途検討が要るが、土台にあるのは同じ分圧の考え方だ。

ノートン等価のノートン電流 In は何に使う?

In はテブナン等価を電流源で表した双対表現で、In = Vth / Rth で求まる。意味としては「出力端子を短絡したときに流れる電流(短絡電流)」だ。負荷が極端に小さい(ほぼ短絡)状況での最大電流を見積もるときや、複数の電流源を重ね合わせて解く回路解析で役立つ。日常の分圧設計ではテブナン電圧 Vth と Rth だけで足りることが多いが、電流で考えたほうが見通しが良い回路もあるため、本ツールは両方を併記している。

抵抗の許容差(±1%や±5%)は計算にどう効く?

本ツールは理想抵抗を前提にしているが、実際のカーボン抵抗は±5%、金属皮膜でも±1%の誤差を持つ。分圧出力 Vout は R1 と R2 の比で決まるため、両方が同じ方向にずれれば比は保たれるが、逆方向にずれると出力電圧の誤差は最悪でおおよそ両者の許容差の和に近づく。±1%抵抗のペアなら出力は最大2%程度ばらつく目安だ。基準電圧で精度が要るなら、許容差の小さい抵抗を選ぶか、本ツールで中央値を出したうえで誤差幅を別途見込む。手元の抵抗値の確認には/resistor-color-codeが使える。

まとめ

分圧は「Vin × R2 /(R1 + R2)」だけでは終わらない。負荷を繋いだ瞬間、出力インピーダンス Rth が顔を出し、電圧が静かに下がる。本ツールはテブナン/ノートン等価と負荷時の電圧降下率を一度に出し、「このまま使えるか、バッファが要るか」をその場で判定する。設計の前後では、抵抗値の読み取りに/resistor-color-code、電圧降下が大きいときのバッファ設計に/opamp-circuit-calc、周波数で分圧比が変わるフィルタの理解に/rc-filter-simを合わせて使ってみて。気になる点や要望があれば、お問い合わせから気軽に連絡してほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。分圧比の式は覚えていたのに出力インピーダンスを忘れ、ADC前段の分圧でセンサ値が崩れて数時間溶かした。その反省からRthと負荷時の電圧降下を主役に据えたツール。

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