機械振動シビアリティ判定(ISO 10816-3)

回転機械の振動速度RMSから A/B/C/D の4ゾーンを自動判定

ISO 10816-3 の4ゾーン(A: 新規受入/B: 長期運転可/C: 短期のみ/D: 即停止)を、機械クラス・据付条件・振動速度RMS の3入力で即時判定する。

シナリオプリセット

機械クラス

Group1: P>300kW または軸高≥315mm / Group2: 15<P≤300kW, 軸高160〜315mm

据付条件

基礎・支持系の固有振動数が運転速度×1.25以上なら剛性、未満なら弾性。

判定ゾーンB無制限長期運転可
運転可

A/B 境界

1.4 mm/s

B/C 境界

2.8 mm/s

C/D 境界

4.5 mm/s

C/D境界(4.5 mm/s)までの余裕44 %
ISO 10816-3 は汎用指針であり、メーカー仕様やプロセス要求が優先する。軸受フィルム厚・潤滑条件・運転温度など総合評価で最終判断すること。
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振動計の液晶に「4.7 mm/s」— この数字、どう読む?

現場で振動計をあてがうと、液晶には無情にも小数点付きの数値が流れていく。4.7 mm/s、2.1 mm/s、6.8 mm/s。数字は拾える。でも「これって大丈夫なやつ?」と聞かれた瞬間、ポケットからボロボロになったメーカーのカタログを引っ張り出す羽目になる。しかもカタログは機種ごとに閾値が違い、ある機種では4 mm/sで警報、別の機種では7 mm/sまで許容。現場の頭はすぐ混乱する。

ISO 10816-3 は回転機械の振動速度RMSを A/B/C/D の4ゾーンに分類する国際規格だ。機械クラス(Group1/Group2)と据付条件(剛性/弾性)を選ぶだけで、「連続運転OK」「短期のみ」「即停止」が一意に決まる。このツールは、そのA4判の表をスマホ1画面に畳み込んだもの。巡回点検の合間にサッと叩いて、ゾーン判定と C/D 境界までの余裕を即座に返すことを目的としている。

なぜ作ったのか — 紙の表と"クラスの壁"

ISO 10816-3 の表A.1/A.2 は、国内の設備保全現場で長く使われてきた。ただ、いざ使おうとすると3つの壁がある。

1つ目は 入手性の壁。JIS B 0906(ISO 10816-3 の和訳)は有償規格で、現場作業者が気軽にスマホで開けるものではない。結局、誰かがコピーした紙の表が工務室の壁に貼られ、ボロボロに擦り切れていく。2つ目は クラス分けの壁。Group1とGroup2の境界は「P>300kW または軸高≥315mm」。現場で「このファンは軸高何mmだっけ?」と毎回銘板を覗き込むのは面倒だし、そもそも銘板の文字が油で読めないこともある。3つ目は 据付条件の壁。剛性据付か弾性据付かは「1次固有振動数が運転回転数の1.25倍以上あれば剛性」と定義されているが、これも現場で即断しづらい。

筆者自身、給水ポンプの巡回中に「振動値 3.2 mm/s」という測定結果を見て、これがBゾーンかCゾーンかで10分ほど悩んだ経験がある。事務所に戻ってから表を引き直し、「あ、22kWだからGroup2、基礎はコンクリート直結だから剛性、だからB/C境界は2.8 mm/s……つまりCゾーン」とようやく判定できた。その10分が惜しかった。現場で指を3回動かせば答えが出るツールが欲しかった。それが開発動機である。

既存のWebツールも探したが、英語UIのみだったり、Group1のみ対応だったり、境界値を単に羅列するだけで判定までしてくれないものが多かった。自分が欲しかったのは「数値を入れたら、ゾーンと余裕率を一緒に返してくれる」ツールだ。

ISO 10816 とは — 回転機械振動評価の国際共通語

ISO 10816 振動基準 の成り立ち

ISO 10816 は、機械の非回転部(軸受ハウジング等)で測定した振動速度RMSから、機械の運転状態を評価するための国際規格シリーズ。1995年に発行された当初は ISO 10816-1(一般指針)、-2(大型蒸気タービン)、-3(15kW超の産業機械)、-4(ガスタービン)など複数パートで構成され、その後2009年、2017年と改訂を重ねている。2017年には後継規格として ISO 20816 シリーズが発行されており、現在は両者が併用されている段階だ(ISO 20816-1:2016)。

このツールが参照するのは最も汎用的な ISO 10816-3:2009。対象は定格出力 15 kW 超、定格回転数 120 rpm から 15000 rpm の回転機械で、具体的にはポンプ、ファン、圧縮機、電動機、発電機などプラントでおなじみの機器をほぼカバーする。

A/B/C/D 4ゾーン の意味

ISO 10816 は、測定値を4つのゾーンに分類する発想を ISO 2372(1974年制定、2000年に 10816 に統合)から引き継いでいる。

  • ゾーンA: 新規受入レベル。工場出荷直後の新品機が満たすべき振動値
  • ゾーンB: 無制限連続運転可。長期運転に支障なし
  • ゾーンC: 許容不可だが短期運転は可。修理計画を立てるべき水準
  • ゾーンD: 損傷発生レベル。即座の停止を推奨

この4ゾーンは信号機の「青・黄・赤」と同じで、直感的に理解できる。たとえば車のスピードメーターで言えば「制限速度以下(A)」「制限速度〜+10km/h(B)」「+10〜+30(C)」「+30超(D)」のような感覚だ。

Group1 と Group2、剛性と弾性

ISO 10816-3 の肝は、機械を 4つのカテゴリ(2 Group × 2 Mounting)に分けて許容値を与える点にある。

  • Group1: 出力 300 kW 超、または軸高 315 mm 以上の大型機械。発電機、大型ファン、大型圧縮機など
  • Group2: 出力 15 kW 超 300 kW 以下、軸高 160〜315 mm の中型機械。汎用ポンプ、中型ファンなど
  • Rigid(剛性据付): 機械と基礎が一体で、1次固有振動数が運転回転数の1.25倍以上
  • Flexible(弾性据付): 防振ゴムやばねで支持され、固有振動数が低い

大型機は慣性が大きく、多少の振動でも即損傷にはつながりにくいので、中型機より許容値が高く設定されている。弾性据付は振動を"逃がす"構造のため、剛性据付より高めの許容値が許される。この4通りの組み合わせが、ツール画面のセグメントボタン2つに対応する。

実務での重要性 — 早期検知が数百万円を救う

軸受損傷の進行と振動値

転がり軸受の疲労損傷は、初期の微小剥離から最終破損まで段階的に進行する。実務経験則では、健全状態で 1〜2 mm/s だった機械が 4 mm/s を超えたあたりでアウターレースの剥離が始まり、7 mm/s を超えると転動体や保持器の破損に至る。ISO 10816-3 Group2 剛性据付の境界値(A/B=1.4、B/C=2.8、C/D=4.5 mm/s)は、まさにこの進行曲線に沿って設定されている。

もし B/C 境界(2.8 mm/s)を超えた時点で検知できれば、軸受1個の交換(部品10〜30万円+停止1日)で済む。これを見逃して D ゾーン(4.5 mm/s 超)まで放置すると、軸の曲がり、ケーシング損傷、カップリング破断が連鎖し、数百万円規模の修理+数日〜数週間の計画外停止につながる。プラント全体の生産損失まで含めると損害は桁が1つ上がる。

規格と法令の関わり

日本では労働安全衛生規則第151条で「定期的に点検し、必要な整備を行わなければならない」と定められているが、定量的な振動閾値は規定されていない。そこで現場は ISO 10816-3 や JIS B 0906、VDI 2056 といった国際・業界標準を根拠に自主基準を設定する。万が一事故が発生した際、「ISO 10816-3 のBゾーン内で運転していた」という記録があることは、過失の有無を判断する上で極めて重要な証拠となる。

トレンド管理が本当の価値を生む

もう1つ重要なのは、ISO 10816 の絶対値判定だけでなく トレンド管理 を併用すること。ISO 10816-3 自身も「前回測定値から 1.6 倍(+4 dB)を超える上昇があった場合は注意、2.5 倍(+8 dB)を超えたら要処置」と推奨している。絶対値ではまだBゾーンでも、前月比で倍増していれば何かが始まっている。このツールでもコピー機能を使って過去ログを蓄積し、手元の表計算ソフトでトレンドを追うことを推奨したい。

活躍する場面

定期巡回点検: 月次・週次でポンプやファンの振動を測り、前回値との比較+ゾーン判定をその場で記録する。

受入試験: 新規据付機械の試運転で、ゾーンA に収まっているか確認。メーカー引き渡し前の最終チェックとして。

故障調査: 異音やベアリング温度上昇を感じた機械で振動測定し、C/D ゾーンに入っていれば即停止判断の根拠にする。

予知保全プログラム: 重要機器に常設振動センサーを付け、閾値越え時にメール通知する仕組みの閾値設計にこのツールの境界値を流用する。

基本の使い方

  1. 機械クラスを選ぶ: 出力 300 kW 超または軸高 315 mm 以上なら Group1、それ以下なら Group2 を選択
  2. 据付条件を選ぶ: 機械と基礎が一体なら剛性、防振ゴムやばねを介しているなら弾性を選択
  3. 振動速度RMSを入力: 振動計で測定した軸受ハウジング上の速度RMS値(mm/s)を入力

結果欄にゾーン(A〜D)、評価コメント、A/B・B/C・C/D の各境界値、C/D 境界までの余裕率が即座に表示される。Cゾーン以上では注意バナー、Dゾーンでは警告バナーが表示される。

具体的な使用例

ケース1: 中型給水ポンプ 22 kW 剛性据付(定期点検)

  • 入力: Group2 / rigid / v = 2.5 mm/s
  • 結果: ゾーンB(無制限長期運転可)、C/D 境界まで余裕 44%
  • 境界値: A/B=1.4, B/C=2.8, C/D=4.5 mm/s
  • 解釈: A/B境界(1.4)は超えているが、B/C境界(2.8)手前。問題なく連続運転可。ただし前回測定から急上昇している場合は要観察

ケース2: 大型軸流ファン 500 kW 弾性防振据付

  • 入力: Group1 / flexible / v = 6.0 mm/s
  • 結果: ゾーンB、C/D 境界まで余裕 45%
  • 境界値: A/B=3.5, B/C=7.1, C/D=11.0 mm/s
  • 解釈: 6.0 mm/s という数字だけ見ると高く感じるが、大型機の弾性据付ではBゾーン内。Group2 剛性据付の同じ数値ならDゾーンになるので、クラス選択を間違えると真逆の判断になる好例

ケース3: 中型コンプレッサ 160 kW 弾性据付(異音調査)

  • 入力: Group2 / flexible / v = 5.0 mm/s
  • 結果: ゾーンC(許容不可、短期のみ)、C/D 境界まで余裕 30%
  • 境界値: A/B=2.3, B/C=4.5, C/D=7.1 mm/s
  • 解釈: B/C境界(4.5)を超えている。修理計画を立案し、次回計画停止までの短期運転のみ許容。振動周波数分析でアンバランスか芯出し不良かを切り分けたい

ケース4: 中型汎用ポンプ 37 kW 剛性据付(アラーム発報)

  • 入力: Group2 / rigid / v = 5.0 mm/s
  • 結果: ゾーンD(損傷発生レベル)、C/D 境界まで余裕 -11%(既に超過)
  • 境界値: A/B=1.4, B/C=2.8, C/D=4.5 mm/s
  • 解釈: 4.5 mm/s の C/D境界を超えた危険域。即停止して軸受・カップリング・軸芯出しを点検すべき。同じ 5.0 mm/s でも据付が弾性ならCゾーンで済む

ケース5: 新設 400 kW 発電機 受入試験 剛性据付

  • 入力: Group1 / rigid / v = 1.8 mm/s
  • 結果: ゾーンA(新規受入レベル)、C/D 境界まで余裕 75%
  • 境界値: A/B=2.3, B/C=4.5, C/D=7.1 mm/s
  • 解釈: A/B境界(2.3)以下で新設機の合格水準をクリア。メーカー引き渡し判定として理想的な数字。運転開始後のトレンド基準値として記録しておく

ケース6: 大型モーター 450 kW 剛性据付(重故障疑い)

  • 入力: Group1 / rigid / v = 8.0 mm/s
  • 結果: ゾーンD、C/D 境界まで余裕 -13%
  • 境界値: A/B=2.3, B/C=4.5, C/D=7.1 mm/s
  • 解釈: 大型機剛性据付でも 7.1 mm/s を超えたら即停止水準。ロータ曲がり、軸受破損、ルーズネスなど重症のサインが揃っている可能性が高い

ケース7: 小型送風機 18 kW 弾性据付

  • 入力: Group2 / flexible / v = 2.0 mm/s
  • 結果: ゾーンA、C/D 境界まで余裕 72%
  • 境界値: A/B=2.3, B/C=4.5, C/D=7.1 mm/s
  • 解釈: A/B境界ギリギリ手前で、新設機水準を保っている。弾性据付は剛性より許容値が緩い分、同じ 2.0 mm/s でも Group2 剛性据付なら B寄りになる(剛性ではA/B=1.4のため)

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較

ISO 10816 ゾーン判定ツールを作るにあたり、3つの設計案を検討した。

案A: 連続関数近似 — 境界値を滑らかな曲線でつなぎ、0〜1の健全度スコアを返す方式。学術的には美しいが、ISO 10816-3 は離散的な4ゾーン定義なので規格準拠からは外れる。

案B: 機械クラスの自動判定 — 出力kWや軸高mmを入力させてGroup1/2を自動選択する案。入力項目が増え、銘板情報を覚えていない現場ユーザーの負担が大きくなるため却下。

案C: 離散ルックアップ + 4択UI(採用) — 規格表をそのままコード化し、ユーザーに機械クラスと据付条件を2択ずつ選ばせる。規格準拠性と操作性のバランスが最良。

実装フロー

// 1. ISO 10816-3 Table A.1/A.2 の境界値を定数として保持
const LIMITS = [
  { group: "group1", mounting: "rigid",    ab: 2.3, bc: 4.5, cd: 7.1 },
  { group: "group1", mounting: "flexible", ab: 3.5, bc: 7.1, cd: 11.0 },
  { group: "group2", mounting: "rigid",    ab: 1.4, bc: 2.8, cd: 4.5 },
  { group: "group2", mounting: "flexible", ab: 2.3, bc: 4.5, cd: 7.1 },
];

// 2. 入力から該当する境界値セットを取得
const limit = LIMITS.find(l => l.group === machineGroup && l.mounting === mounting);

// 3. 4段階のゾーン判定
const zone =
  velocity <= limit.ab ? "A" :
  velocity <= limit.bc ? "B" :
  velocity <= limit.cd ? "C" : "D";

// 4. C/D境界までの余裕率(負値なら既に超過)
const marginPct = ((limit.cd - velocity) / limit.cd) * 100;

境界値は ISO 10816-3:2009 Annex A の Table A.1(剛性据付)と Table A.2(弾性据付)からそのまま引いている。将来 ISO 20816-3 に差し替える場合もこの定数配列を更新するだけで済む構造にしている。

計算例: Group2 剛性据付 v=2.5 mm/s

  1. ルックアップ: limit = { ab: 1.4, bc: 2.8, cd: 4.5 }
  2. 判定: 2.5 > 1.4 なので A ではない → 2.5 ≤ 2.8 なので B
  3. 余裕率: (4.5 − 2.5) / 4.5 × 100 = 44.4% → 四捨五入して 44%

mm/s と mm と g の違い

ISO 10816 が採用するのは 振動速度 RMS(mm/s)。振動には変位(mm)、速度(mm/s)、加速度(g または m/s²)の3つの物理量があり、周波数が違えば互いに相似変換できる。ただし変位は低周波成分を、加速度は高周波成分を強調するクセがあり、回転機械の代表的な故障周波数帯(10〜1000 Hz)を最もフラットに評価できるのが速度だ。ISO 10816 はこの経験則に基づき、速度 RMS を評価指標として採用している。振動計で測定する際は、必ず RMS(実効値)モード・速度レンジ で測定していることを確認してほしい(ピーク値モードだとRMSの約1.4倍の値になる)。

他の振動判定ツールとの違い

世の中の振動判定はメーカー独自基準と ISO 規格ベースの2系統に大別される。メーカー独自基準(例: ポンプメーカーのカタログに載る「5.6 mm/s 以下」等の単一しきい値)は自社機の実績データから作られていて信頼性は高いが、機械クラスや据付条件の場合分けが曖昧で、他社機には使えない。一方、専門の振動診断ソフトは周波数解析まで踏み込むので導入コストが高く、日常点検には大げさだ。

このツールはその中間を埋める。ISO 10816-3:2009 の表A.1/A.2 を忠実に実装し、Group1/Group2 と剛性/弾性の4パターン×4ゾーン境界(A/B/C/D)を網羅。入力は3つだけで、現場の振動計で読んだ mm/s をそのまま打ち込めば即判定が返る。ブラウザだけで動き、インストール不要、測定値は端末外に出ない。

さらに単なる合否判定で終わらせず、C/D境界までの余裕率(%)を併記する点が差別化のポイント。Bゾーン内であっても「C/D境界まであと何%」が見えればトレンド管理しやすく、前回測定との比較で劣化の兆候を掴める。メーカー基準と併用し、ISO 側で全体感を掴み、個別機種の詳細仕様で最終判断する——そんな使い分けを想定した設計だ。

豆知識: 4ゾーンの起源とカロリ曲線

ISO 10816 の前身は 1974 年制定の ISO 2372 で、当時から「A/B/C/D」の4ゾーン方式は存在した。さらに遡ると、ドイツの技術者 T. C. Rathbone が 1939 年に発表した振動重大度チャート(General Machinery Vibration Severity Chart)に行き着く。当時は変位 mils(千分の一インチ)で機械の状態を論じていたが、1950年代に Blake や IRD Mechanalysis が速度 RMS ベースの評価に切り替え、現在の mm/s 文化が定着した。

「なぜ速度 RMS なのか」には物理的な理由がある。機械振動の損傷エネルギーは広い周波数帯(10Hz〜1kHz)で概ね速度に比例することが経験的に知られており、変位(低周波優位)や加速度(高周波優位)よりも広帯域でフラットに機械の健康状態を表すからだ。この性質を示す曲線は ISO 7919 / ISO 10816 シリーズの解説に登場し、俗に「カロリ曲線(Carolina curve)」や「Rathbone chart」の名で呼ばれる。

ちなみにドイツでは VDI 2056 が長く使われ、1964 年版の区分けが ISO 2372 にほぼ継承された。欧州の重工業文化が国際規格の礎になっている証拠だ。日常の振動計に mm/s rms ボタンが最初から付いているのは、この半世紀の歴史の結果である。

Tips: 正しく測るための現場テクニック

  • 測定位置: 軸受ハウジングの水平・垂直・軸方向の3方向で測る。ISO 10816-3 は最大値を判定に使うので、3方向のうち一番大きい値で評価する。ハウジングの剛性が高い軸受キャップ上が基本。
  • プローブの接地: マグネットベースを使うなら塗装や油膜を避け、可能なら M6 スタッド取り付けが最も再現性が高い。手持ちプローブは 1kHz 以上で共振して値が跳ねるので注意。
  • 運転条件: 定格回転・定格負荷・熱的平衡(運転開始 30 分以上経過)後に測る。起動直後や軽負荷時の値は参考値どまり。
  • トレンドを残す: 単発の判定で終わらせず、月次や四半期で同じ条件の値を蓄積する。Bゾーン内でも右肩上がりなら早期介入のサインだ。C/D境界まで余裕率を記録しておくと劣化速度が見える。
  • 軸受ハウジング vs 軸振動: ISO 10816 は「ハウジング振動」規格。タービン等の大型機で軸自体の振れを測る場合は ISO 7919 の変位基準を使う。混同しない。

よくある質問

Group1 と Group2 の境界が微妙な機械はどう判断する?

ISO 10816-3 では Group1 が出力 300kW 超または軸高 315mm 以上、Group2 が出力 15〜300kW かつ軸高 160〜315mm と定義されている。境界付近(例えば 280kW、軸高 300mm)の機械は、安全側に倒して Group2(より厳しい側)で判定するのが実務の常套手段。メーカー仕様書に ISO 10816 の該当 Group が明記されていればそれに従う。

剛性据付と弾性据付はどう見分ける?

定義上は「基礎を含めた機械系の1次固有振動数が運転回転速度の 1.25 倍以上なら剛性、未満なら弾性」となる。実用的には、コンクリート基礎に直接アンカー固定なら剛性、防振ゴムやコイルばねで浮かしてあれば弾性と判断してよい。判断に迷ったら両方で計算し、より厳しい剛性側で評価しておけば安全。自由振動試験(インパクトハンマー打撃)で固有振動数を実測する方法もある。

周波数解析(FFT)は不要なのか?

このツールは振動速度の広帯域 RMS のみで判定するため、異常の「有無」は分かっても「原因」までは特定できない。ゾーンが C/D に入ったら FFT で周波数成分を調べ、アンバランス(回転1次)、ミスアラインメント(回転2次)、軸受損傷(高周波数)などを切り分ける次のステップに進む必要がある。逆に言えば、日常点検では広帯域 RMS の傾向監視で十分で、異常時だけ FFT を持ち出せばコストを抑えられる。

Dゾーン判定が出た。どう対応すべき?

ISO 10816-3 の D ゾーンは「損傷を引き起こすのに十分な振動レベル」と定義されており、即座に運転を停止して詳細診断を行うのが原則。ただし実務では、プロセス継続の都合で即停止できないケースもある。その場合は、(1) 測定値が機械の共振による一過性でないか確認、(2) 軸受温度・潤滑油の金属粉分析など補助データで劣化進行度を評価、(3) 安全が確保できる最短タイミングで計画停止、の順で対応する。D ゾーンのまま運転継続は軸受破損・シール漏れ・二次破損のリスクが高い。

Bゾーン内なのに機械から異音がする。信頼していい?

ISO 10816 の速度 RMS は低〜中周波(10Hz〜1kHz)の総合エネルギーを見る指標で、高周波の軸受初期損傷(数 kHz 帯)は捉えにくい。異音や温度上昇がある場合は、速度値が B ゾーンでも加速度包絡線(エンベロープ)処理や SPM(Shock Pulse Method)で軸受固有周波数を補助的に確認すべき。速度 RMS は万能ではなく、人間の五感と組み合わせて初めて真価を発揮する。

1回の測定値だけで判定していいのか?

原則として、判定は安定運転状態での再現性ある測定値で行う。起動直後・負荷変動時・サージ発生時の一過性スパイクでゾーンが変わった場合は、平常運転時に再測定して確認する。ISO 10816-3 も「代表値による評価」を前提にしており、最低でも3方向×複数回の測定で最大値を採用するのが推奨プラクティス。定期点検ではトレンドグラフに載せ、単発の異常値かどうかを時系列で判断する。

まとめ

振動速度 RMS と ISO 10816-3 の4ゾーン判定は、回転機械の健康診断で最も手堅い指標だ。このツールで Group と据付条件を選び、現場で測った mm/s を入れるだけで、A/B/C/D ゾーンと境界値、C/D までの余裕率まで一瞬で分かる。予知保全の第一歩として、あるいは受入検査の合否判定として活用してほしい。関連ツールとして、防振対策を検討するなら /vibration-isolation、アンバランス原因の切り分けには /rotational-balance、軸受余寿命の試算は /bearing-life、騒音側の評価は /noise-level を合わせて使うと、回転機械の状態把握が立体的になる。不明点や要望があればお問い合わせからぜひ連絡を。


不具合や要望があれば、お問い合わせページから気軽に教えて。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。ISO 10816-3 の表を紙で現場に持ち込み油で汚した経験から、スマホ1画面で Group と据付条件を選ぶだけで判定が返るツールに仕立てた。C/D境界までの余裕率を併記することで、Bゾーン内でも劣化傾向を掴めるよう工夫している。

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