スラブ厚が200mmから250mmに変わった、支柱のピッチはこのままでいいのか
図面が差し替わって、スラブ厚が200mmから250mmになった。躯体側から見れば50mmの違いでも、支保工から見れば1㎡あたり1.2kNの上乗せだ。支柱のピッチは0.9×0.9mのままでいいのか、それとも詰めるのか。組立図を描き直す前に、まずここの当たりを付けたい——型枠支保工に関わっていれば、必ず一度は踏む場面だと思う。
ところが型枠支保工の強度計算は、たいていExcelの計算書テンプレを開くところから始まる。保存場所を思い出し、前の物件の数値を消して打ち直し、単位を確かめる。条件をちょっと振ってみたいだけなのに、その準備がいちいち重い。しかも「支柱間隔をどこまで広げられるか」は式を逆に解かないと出てこないので、結局セルの値を何度も書き換えて手探りすることになる。
このツールは、スラブ厚と支柱間隔を入れれば設計荷重・支柱1本あたりの負担荷重・許容支持力・安全率が一度に出る。判定がNGなら、許容内に収まる上限の支柱間隔まで逆算して返す。ブラウザで数字を振りながら、ピッチの当たりを数秒で付けるための道具だ。
なぜ作ったのか — 側圧は計算できるのに、支保工の鉛直側が抜けていた
きっかけは、型枠側圧の計算ツールを作ったときの引っかかりだった。コンクリートの打込み速度と気温からせき板に効く側圧を求めて、セパレーターの間隔を決める——そこまでは形になった。だが公開したあとで気づいた。型枠の検討は側圧だけでは半分しか終わっていない。せき板が横から押されて孕むより、支保工が下から抜けて落ちるほうが、事故としてははるかに重い。
そう思って世の中の型枠支保工の計算資料を見て回ると、事実上の標準は「Excel計算書テンプレをダウンロードして埋める」だった。それ自体は悪くない。ただ、多くのテンプレが支柱の許容支持力を1つの固定値で持っていた。セルに「許容支持力 19.6 kN」とベタ打ちされていて、その値がどこから来たのかが表に出てこないのだ。
パイプサポートの許容支持力は、実際には固定値ではない。使用高さが伸びれば下がるし、水平つなぎを2方向に入れて連係させれば戻る。下端が仕上げコンクリートに直置きかどうかでも変わる。つまり「同じサポートを使っているのに、階高が高い区画だけ実は足りていない」という取りこぼしが、固定値のテンプレでは構造的に見えない。しかも高さが伸びるほど許容値の落ち幅は大きくなるので、いちばん危ない側で誤差が出る。
だから、使用高さ帯・水平つなぎの有無・材端条件の3つを選ばせて、許容支持力そのものを動かす形にした。加えて、NG時に「じゃあ何m まで詰めればいいのか」を逆算して返すことにした。判定だけ出して終わるツールは現場で使えない。次にやることが数字で出てはじめて、組立図を描く手が動く。
型枠支保工の設計荷重と許容支持力 — 支柱1本が背負う面積から考える
支柱1本が背負う面積 — 床を支柱の真ん中で切り分ける
まず押さえるべきは「支柱1本が何㎡分のコンクリートを背負っているか」だ。
床の下に支柱を格子状に立てた状態を思い浮かべてほしい。上から見ると碁盤の目のように支柱の頭が並んでいる。ここで、隣り合う支柱と支柱のちょうど真ん中に線を引いて床を切り分けると、支柱1本につき1枚の長方形のタイルができる。そのタイルの上に載っているコンクリートは、その支柱が受け持つ——これが負担面積(分担面積)の考え方だ。
タイルの寸法は、X方向の支柱間隔とY方向の支柱間隔そのものになる。だから負担面積は spacingX × spacingY の掛け算1つで済む。0.9×0.9mなら0.81㎡、1.2×1.2mなら1.44㎡。ここで大事なのは、間隔は面積で効くという点だ。ピッチを1.2倍に広げると負担面積は1.44倍になる。長さの感覚で「ちょっと広げるだけ」と考えると、荷重は想像より跳ねる。
型枠支保工 設計荷重 とは — コンクリート+型枠+作業の3項
負担面積が分かったら、その上に1㎡あたり何kN載っているかを決める。それが設計荷重 w だ。
w [kN/m²] = コンクリート単位体積重量 [kN/m³] × スラブ厚 [m]
+ 型枠自重 [kN/m²]
+ 作業荷重 [kN/m²]
第1項はコンクリートそのものの重さ。普通鉄筋コンクリートの単位体積重量は建築で24 kN/m³、土木の標準示方書では24.5 kN/m³、軽量コンクリート1種なら約20 kN/m³ を使う。スラブ厚150mmなら 24 × 0.150 = 3.6 kN/m² だ。
第2項の型枠自重は、せき板・根太・大引を含めた型枠一式の重さ。合板型枠なら0.4 kN/m² が慣用値で、デッキプレートや鋼製型枠になると重くなる。
第3項の作業荷重が、初めて見ると意味を掴みにくい項目だと思う。これは作業員・打込み機器・コンクリートが落ちる衝撃をまとめて代表させた荷重だ。根拠は法令にある。労働安全衛生規則第240条第3項が、型枠支保工の設計荷重を「型枠支保工が支える物の重量に相当する荷重に、型枠一平方メートルにつき百五十キログラム以上の荷重を加えた荷重」と定めている。150kgf/m² は 1.4715 kN/m² に相当し、実務で標準的に使う1.5 kN/m² はこれを切り上げた値だ。つまり1.5は「標準」ではなく「法令下限」であり、ポンプの筒先が乗る位置や資材の仮置き場所では2.5〜3.0 kN/m² を見ておくのが素直な使い方になる。
支柱1本の負担荷重 P は、この w に負担面積を掛けるだけだ。
P [kN] = w [kN/m²] × 負担面積 [㎡]
パイプサポート 耐荷重 計算 は座屈長さで決まる
もう一方の許容支持力の側を見る。パイプサポートは、内管と外管を入れ子にして高さを調整する細長い鋼管だ。細長い柱を上から押すと、材料が潰れるより先に、途中で横に膨らんで折れる。これが座屈で、パイプサポートの耐力を決めているのはこの座屈である。
座屈しやすさは「座屈長さ」で決まる。柱が途中で横に押さえられていない区間が長いほど、少ない荷重で曲がる。だからパイプサポートを長く伸ばして使うほど許容支持力は下がる。(一社)仮設工業会の認定品パイプサポートの許容支持力表が、使用高さを 2.0m以下 / 2.0m超〜2.5m / 2.5m超〜3.0m / 3.0m超〜3.4m の4段階に区切っているのは、この座屈長さの効きをそのまま表にしたものだ。上下端とも木材に当たる標準的な納まりでは、この4段階で 19.6 / 17.6 / 13.7 / 9.8 kN と下がっていく。
そして、ここに水平つなぎが効いてくる。高さ2m以内ごとに水平つなぎを直角2方向に設け、さらにその水平つなぎが動かないよう変位を防止する(同規則第242条第6号イ)と、サポートの途中が横に押さえられ、座屈長さが分割される。細長い1本が短い柱2本分に化けるわけで、このとき許容支持力は使用高さによらず19.6 kN に戻る。つなぎが「効く」のは、渡しただけの状態ではなく変位防止まで済ませた状態だ、という条件が付くのはこのためだ。
材端条件も同じ理屈で説明できる。上端は根太・大引の木材に当たるのが標準だが、下端が下階の仕上げコンクリートに直置きになると、端部の回転が抑えられて座屈しにくくなる。表の値も 19.6 / 18.6 / 16.6 / 14.7 kN と、木材どうしの場合より高く出る。
最後に、負担荷重と許容支持力を比べる。
安全率 SF = 許容支持力 [kN] ÷ 支柱1本あたり負担荷重 [kN]
なぜこの照査が要るのか — 1本の過負荷が連鎖して崩れる
支柱1本が許容を超えたとき、その1本だけが静かに潰れて終わる、ということは起きない。実際の進み方はこうだ。過負荷の支柱がわずかに曲がる(座屈が始まる)→ その支柱が支えていた荷重が隣の支柱へ流れる → 隣も許容を超える → 連鎖して一気に面で抜ける。型枠支保工の崩壊が「バタン」ではなく「ドッ」と広い範囲で起きるのは、この荷重の再配分があるからだ。
しかも起きるタイミングが最悪だ。支保工に最大の荷重が載るのは打込み中で、そのとき床の上には作業員がいて、生コンが流れ込んでいる。崩れれば人とコンクリートが同時に落ちる。だから法令も型枠支保工には手厚い。労働安全衛生規則第240条は組立図の作成と、それに基づく組立を事業者に義務づけ、設計荷重に「型枠1㎡につき150kg以上」を加えることまで条文で決めている。第242条は水平つなぎの設置、パイプサポートを3本以上継いで使わないこと、継ぐ場合は4以上のボルトまたは専用金具を使うこと、高さ3.5mを超えるときの水平つなぎ2方向、そして沈下防止と滑動防止を規定している。
数値の感覚も掴んでおきたい。上下端とも木材の場合、許容支持力は2.0m以下の19.6kNから3.0m超〜3.4mの9.8kNまで落ち、ちょうど半分になる。段階ごとに見ると 2.0m以下→2.5mが −10.2%、2.5m→3.0mが −22.2%、3.0m→3.4mが −28.5% で、高さが伸びるほど落ち幅が大きくなる。「階高が少し高いだけ」で済まない理由がここにある。
一方、下端が仕上げコンクリートの場合は同じ範囲で 19.6→14.7kN=ちょうど3/4 に留まる。材端条件による差は 2.0m以下で0%、2.5mで+5.7%、3.0mで+21.2%、3.4mで+50.0% と、高さが伸びるほど開いていく。低い区画では材端条件を気にする意味がほとんどないのに、高い区画では5割の差になる。
荷重の側では、普通鉄筋コンクリート24 kN/m³ ならスラブ厚が100mm増えるごとに設計荷重が +2.4 kN/m² 増える。スラブ150mmで5.5 kN/m² だったものが、300mmでは9.1 kN/m²(+65.5%)、400mmでは11.5 kN/m²(+26.4%)になる。そして支柱ピッチは面積で効くので、間隔を1.2倍にすれば負担は1.44倍だ。厚さと間隔、どちらも「少しの変更」が荷重では効いてくる。
こんな場面で使う
組立図を描く前のピッチの当たり付け。スラブ厚と階高が分かった時点で、0.9×0.9mでいけるのか、1.2×1.2mまで広げられるのかを先に掴む。計算書を清書する前に方針が決まる。
図面変更でスラブ厚が変わったときの再検討。厚さだけ打ち替えれば、設計荷重と安全率がその場で更新される。ピッチを見直す必要があるかどうかの判断が最短で付く。
階高が高い区画だけの確認。同じ物件でも、吹抜けまわりや設備スペースだけサポートを長く伸ばすことがある。使用高さ帯を1段変えるだけで許容支持力がどれだけ落ちるかを、その場で見比べられる。
現場から「ここだけピッチを広げていいか」と聞かれたとき。上限支柱間隔の逆算値がそのまま回答になる。感覚で「たぶん大丈夫」と答えずに済む。
水平つなぎを入れる手間と、支柱を増やす手間の比較。連係ありに切り替えれば許容支持力が19.6kNに戻る。つなぎで解決するのか、それとも本数を増やすしかないのかを、同じ入力のまま切り替えて比べられる。
基本の使い方
ステップ1 — 設計荷重を入れる。スラブ厚(mm)とコンクリート単位体積重量(kN/m³)を入力し、型枠自重と作業荷重を加える。建築の鉄筋コンクリートなら単位体積重量24、合板型枠なら型枠自重0.4、作業荷重は法令下限の1.5から始めればいい。設計荷重が内訳付きで表示される。
ステップ2 — 支柱の配置を入れる。支柱間隔をX方向・Y方向それぞれ入力する。支柱1本あたりの負担面積・負担荷重と、1㎡あたりの支柱本数が出る。資材の拾いの感覚を掴むときは本数のほうを見るとよい。
ステップ3 — サポートの条件を選んで判定を読む。使用高さ帯・水平つなぎ(連係)の有無・材端条件を選ぶと、許容支持力と安全率が確定し、OK/注意/不可の3段階で判定される。
迷ったら、単位体積重量24・型枠0.4・作業1.5・連係なし・上下端木材という安全側のデフォルトのまま始めるのがいい。不可になったら、表示された上限支柱間隔までピッチを詰める。大引の位置が部材で決まっていて動かせない場合は「X方向のみ調整」の値を見る。
使用例で読む8ケース — 入力・結果・次の一手
ケース1: 一般階スラブの典型(余裕たっぷり)
スラブ150mm・単位体積重量24・型枠0.4・作業1.5・0.9×0.9m・使用高さ2.0m以下・連係なし・上下端木材。
設計荷重は 3.6+0.4+1.5=5.50 kN/m²、負担面積0.81㎡で支柱1本4.455 kN。許容19.6 kNに対して安全率4.40でOK。上限支柱間隔は正方1.89m・X方向3.96m。
一般階の標準条件なら支柱の支持力は問題にならない。ただし逆算値が実務上限の1.8mを超えており、ここで効くのは支柱ではなく大引・根太の曲げとたわみのほうだ。
ケース2: スラブ300mm・1.2×1.2m・高さ3.0m帯(ぎりぎり注意域)
スラブ300mm・1.2×1.2m・使用高さ2.5m超〜3.0m・連係なし・上下端木材。
設計荷重9.10 kN/m²、負担面積1.44㎡で13.104 kN。許容13.7 kNに対して安全率1.05の注意判定。上限間隔は正方1.23m・X方向1.25m。
現在の1.2mに対して上限が1.23m——余白は3cmしかなく、施工誤差やコンクリートの局部的な山盛りを吸収できない。作業荷重を2.0〜2.5に上げて再計算し、1.0を割らないか確かめたい。
ケース3: スラブ400mm・高さ3.4m帯(不可)
ケース2からスラブを400mmに、使用高さを3.0m超〜3.4mに変更。
設計荷重11.50 kN/m²、負担16.56 kN。許容が9.8 kNまで落ちるため安全率0.59の不可。上限間隔は正方0.92m・X方向0.71m。
厚さと高さの悪条件が重なった典型例。0.92mまで詰めれば支持力は成立するが、大引を動かせないならX方向0.71m——本数が跳ね上がる。まず「つなぎで済まないか」を試したくなる場面だ。
ケース4: ケース3に水平つなぎを入れる(つなぎだけでは足りない)
ケース3と同じ荷重条件のまま、連係ありに変更。
設計荷重・負担荷重はケース3と同一(11.50 kN/m² / 16.56 kN)。許容だけが9.8→19.6 kNに戻り、安全率0.59→1.18で不可から注意へ反転する。上限間隔は正方1.31m・X方向1.42m。
つなぎの効果は大きいが判定は注意止まりだ。しかも「連係あり」を選べるのは直角2方向のつなぎに加え、変位防止まで済ませた状態だけ。渡しただけの現場をこの条件で評価してはいけない。
ケース5: ケース3で材端条件を有利に見る(それでも不可)
ケース3と同じ条件で、材端条件だけ「上端木材・下端は仕上げコンクリート」に変更。
許容は9.8→14.7 kNに上がるが負担16.56 kNには届かず、安全率0.89で不可のまま。上限間隔は正方1.13m・X方向1.07m。
材端条件を最も有利に見ても足りないなら、残る手はピッチを詰めるか支保工形式を変えるかの二択になる。材端条件は不足を埋める手段としては弱い。
ケース6: 支柱間隔1.8m(広すぎるピッチ)
スラブ200mm・1.8×1.8m・使用高さ2.0m超〜2.5m・連係なし・上下端木材。
設計荷重は6.70 kN/m²と軽いのに、負担面積3.24㎡のせいで支柱1本21.708 kN。許容17.6 kNに対して安全率0.81の不可。上限間隔は正方1.62m・X方向1.46m。
スラブが薄くてもピッチが広ければ不可になる、という面積の効きが分かる例。ただしこの領域は大引・根太の曲げが先に効くため「1.62mまでOK」とは読めない。
ケース7: ケース6を連係ありにしても不可
ケース6と同じ条件で連係ありに変更。
許容は17.6→19.6 kNに上がるが、安全率0.81→0.90で不可のまま。上限間隔は正方1.71m・X方向1.63m。
ケース4と対になる例。つなぎで反転するかどうかは元の不足量次第で、2割足りない状態に1割の上乗せでは届かない。ここはピッチを詰めるしかない。
ケース8: 土木条件(単位体積重量24.5・作業荷重2.5)
スラブ250mm・単位体積重量24.5・型枠0.5・作業2.5・1.0×1.0m・使用高さ2.5m超〜3.0m・下端仕上げコンクリート。
設計荷重は 6.125+0.5+2.5=9.125 kN/m²、負担面積1.0㎡ちょうどなので支柱1本の負担も9.125 kN。許容16.6 kNで安全率1.82のOK。上限間隔は正方1.35m・X方向1.82m。
作業荷重を法令下限ではなく2.5で見た厳しめの条件でも、1.0mピッチなら余裕がある。負担面積1.0㎡は設計荷重がそのまま負担荷重になるので検算しやすい。
仕組み — なぜ認定品の共通表を使うのか
許容支持力をどう決めるかの3案
パイプサポートの耐力をツールで扱う方法は、大きく3つ考えられた。
案1: 座屈耐力を自前で解く。オイラーの座屈式や許容応力度から、断面性能と座屈長さを使って計算する。理屈としては最も一般的だが、パイプサポートは内管と外管の入れ子構造で断面が途中で変わり、ピンの遊びやガタもある。理想化した細長比が実物とどれだけ合うかを保証できないうえ、外径・肉厚・重ね長さの入力が要るので現場で手早く開けるツールにならない。
案2: メーカー製品ごとの許容荷重表を型式で引く。精度は高いが、型式の網羅とメンテナンスが際限なく増える。「うちの現場のサポートが一覧にない」で詰む。
案3: 仮設工業会認定品の共通表を使う。採用したのはこれだ。認定品であればメーカーを問わず同じ表が使えるため、入力は「使用高さ帯・連係の有無・材端条件」の3つで済む。型式を確認しに行かなくても、伸ばした長さと納まりさえ分かれば計算に入れる。代わりに、認定品でない製品・他社製品を継いだ組合せ・損傷や曲がりのある部材には使えないという制約が付く。
計算フロー
① 設計荷重 w = 単位体積重量 × スラブ厚/1000 + 型枠自重 + 作業荷重
② 負担面積 A = spacingX × spacingY
③ 負担荷重 P = w × A
④ 許容支持力 連係あり → 19.6 kN(高さ・材端によらず一定)
連係なし → 表[材端条件][使用高さ帯] を直引き
⑤ 安全率 SF = 許容支持力 ÷ P
⑥ 逆算 A_allow = 許容支持力 ÷ w
正方配置の上限間隔 = √A_allow
X方向のみ調整の上限間隔 = A_allow ÷ spacingY
④のテーブルは材端条件(2種)×使用高さ帯(4段)の2次元だ。上下端とも木材なら 19.6 / 17.6 / 13.7 / 9.8 kN、上端木材・下端仕上げコンクリートなら 19.6 / 18.6 / 16.6 / 14.7 kN。連係ありのときだけこの2次元を経由せず19.6 kN一定になるのは、水平つなぎで座屈長さが分割されて高さの効きが消えるからだ。判定は SF ≥ 1.5 でOK、SF ≥ 1.0 で注意、それ未満で不可。境界はどちらも上位側に含める。
⑥の逆算を2通り出しているのには理由がある。正方配置の上限間隔(√A_allow)はゼロから配置を決められるときの目安だが、実際の現場では大引の間隔が部材の曲げで先に決まっていて動かせないことが多い。そういうときはY方向を固定してX方向だけ詰める。その値が A_allow ÷ spacingY だ。どちらが使える数字かは段取りで変わるので、両方出しておく。
なお逆算値は実務上限の1.8mでクリップしていない。1.8mを超える値は「支柱の支持力だけならここまで広げられる」という意味であって、実際は大引・根太の曲げとたわみが先に効く。丸めて頭打ちにするより、素の値を出して注記で境界を伝えるほうが誤解が少ない。
ケース2を手で追う
スラブ300mm・単位体積重量24・型枠0.4・作業1.5・1.2×1.2m・使用高さ2.5m超〜3.0m・連係なし・上下端木材で、①から⑥まで順に追ってみる。
① w = 24 × 300/1000 + 0.4 + 1.5 = 7.2 + 0.4 + 1.5 = 9.1 kN/m²
② A = 1.2 × 1.2 = 1.44 ㎡
③ P = 9.1 × 1.44 = 13.104 kN
④ 許容 = 表[上下端木材][2.5m超〜3.0m] = 13.7 kN
⑤ SF = 13.7 ÷ 13.104 = 1.05 → 1.0以上1.5未満なので「注意」
⑥ A_allow = 13.7 ÷ 9.1 = 1.5055 ㎡
正方配置 = √1.5055 = 1.23 m
X方向のみ = 1.5055 ÷ 1.2 = 1.25 m
現在の1.2mピッチに対して上限は1.23m。数字の上では収まっているのに、余白が3cmしかないことが逆算で可視化される。判定だけ見て「注意か、まあ許容内だな」と流すのと、上限との距離まで見るのとでは、次の一手が変わる。
Excel計算書テンプレ・設計ソフトと立ち位置がどう違うか
許容支持力を固定値で持つ計算書だと何が見えなくなるのか、数字で示しておく。スラブ400mm・1.2×1.2m・3.0m超〜3.4m帯なら許容9.8 kNで安全率0.59=不可。ここに水平つなぎを入れて連係ありにすると19.6 kNで安全率1.18=注意に反転する。荷重もピッチも一切変えていないのに判定がひっくり返るだけの開きが、シート上には現れない。
有償の支保工設計ソフトなら部材リストから組立図まで一気通貫で作れる。ただしライセンスが要り、起動して物件を新規作成して、という手順が挟まる。「スラブ厚が50mm増えたけどピッチはこのままでいけるか」を30秒で知りたい場面には重すぎる。
このツールが引き受けるのはその隙間だ。ブラウザで条件を振りながら、設計荷重・支柱1本の負担荷重・許容支持力・安全率、そして許容内に収まる上限支柱間隔までを一画面で見る。役割分担もはっきりさせておく。せき板とセパレーターに効く型枠の側圧は型枠側圧計算、大引・根太に単管を使うときのスパンとたわみは単管パイプ耐荷重・スパン計算、枠組足場側の荷重は足場荷重・強度検討ツール、生コン数量とスラブの拾いはコンクリート配合・必要量計算と鉄筋量計算、ポンプ車やクレーンを据える地盤側は敷鉄板・アウトリガー接地圧計算——それぞれ別の面を見ている。このツールは「支柱の鉛直支持力」に絞りきることで入力を9項目に収めた。
19.6 kNという半端な数字の正体
許容支持力表の元単位はkgfだった
許容支持力を並べると 19.6 / 18.6 / 17.6 / 16.6 / 14.7 / 13.7 / 9.8 kN という中途半端な数字になる。理由は単純で、元の表がkgf基準だからだ。
| カタログ表記(kN) | 元の値(kgf) |
|---|---|
| 19.6 | 2000 |
| 18.6 | 1900 |
| 17.6 | 1800 |
| 16.6 | 1700 |
| 14.7 | 1500 |
| 13.7 | 1400 |
| 9.8 | 1000 |
kgf側はきれいに100kgf刻みで並ぶ。kN換算で小数第2位を切り捨てた結果が、あの半端な数字というわけだ。面白いのは1700kgfで、正確には16.67 kNなのにカタログ表記は16.6になっている。切り捨ての痕跡がここに残る。メーカーによっては16.7と書く例もあり、本ツールは他の値との一貫性を優先して16.6を採った。「元は2000kgf=約2トン」と読み替えると数字の実感がつかみやすい。
型式名では耐力は決まらない
パイプサポートは現場で「V型」「4号」のような型式名で呼ばれる。だが許容支持力は型式ではなく、どこまで伸ばして使うか(使用高さ)と、どう拘束されているか(水平つなぎ・材端条件)で決まる。同じサポートでも上下端とも木材・連係なしなら2.0m以下で19.6 kN、3.0m超〜3.4mではちょうど半分の9.8 kNまで落ちる。長い柱ほど座屈しやすいという物理が、そのまま表に出ている。
水平つなぎは「渡せば効く」わけではない
連係ありの19.6 kNを使うには、労働安全衛生規則第242条第6号イの「高さ2m以内ごとに水平つなぎを二方向に設け、かつ水平つなぎの変位を防止する」を満たす必要がある。渡しただけで変位防止をしていない状態は連係なしで評価する。同条第7号はパイプサポートを3本以上継いで用いないこと(イ)、継ぐときは4以上のボルトまたは専用の金具を用いること(ロ)も定めている。条文はe-Gov法令検索の労働安全衛生規則、認定品の枠組みは(一社)仮設工業会で確認できる。
Tips
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高い部分だけ足りないなら、まず水平つなぎを疑う: 全体のピッチを詰めるより手間も材料も少なく済むことがある。ただし効くかは元の余裕次第だ。スラブ400mm・1.2×1.2m・3.0m超〜3.4m帯は0.59→1.18で不可から注意に反転するが、スラブ200mm・1.8×1.8m・2.0m超〜2.5m帯は0.81→0.90で不可のまま。後者はピッチを詰めるしかない。
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材端条件は迷ったら「上下端とも木材」: 下端が仕上げコンクリートでも敷板を挟むなら木材扱いで見るのが安全側。両者の差は2.0m以下で0%、3.0m超〜3.4mでは+50.0%に開く。高い所ほど選び方が結果を左右する。
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作業荷重の1.5は下限であって標準ではない: 労働安全衛生規則第240条第3項の「型枠1㎡につき150kg以上」(=約1.47 kN/m²)を切り上げた値だ。ポンプ筒先が乗る位置や資材の仮置き区画は2.5〜3.0で見ておきたい。
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大引が動かせないなら「X方向のみ調整」を読む: スラブ400mmのケースでは正方0.92mに対しX方向のみだと0.71m。判断がまるで変わる。
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ピッチは面積で効く: 間隔を1.2倍に広げると負担面積は1.44倍。「10cmくらいなら」の感覚が二乗で跳ね返る。
よくある質問(FAQ)
水平つなぎを入れれば本当に許容支持力が19.6 kNまで戻るのか
戻る。ただし労働安全衛生規則第242条第6号イの「高さ2m以内ごとに水平つなぎを二方向に設け、かつ水平つなぎの変位を防止する」を満たして初めて、使用高さ・材端条件によらず19.6 kNを使える。1方向しか入れていない、筋かい等の変位防止をしていないなら使ってはいけない。迷うなら「連係なし」で評価すれば安全側に倒れる。なお使用高さ2.0m以下では、連係の有無にかかわらずどちらも19.6 kNで変わらない。
大引や根太は検討しなくていいのか
対象外だ。照査しているのは支柱の鉛直支持力だけで、大引・根太の曲げとたわみ、支柱の座屈と偏心載荷、水平荷重(パイプサポート等を支柱とする場合は設計荷重の5%、鋼管枠なら2.5%)に対する筋かい・水平つなぎの検定は含まない。とくに支柱間隔が1.2mを超えるあたりから、支柱の支持力より部材の曲げとたわみが先に効きはじめる。逆算した上限間隔が広く出ても、そのまま採用せず部材のスパン検討を別途行ってほしい。
メーカーが違っても同じ許容支持力表を使っていいのか
(一社)仮設工業会の認定品であれば共通の表として扱える。本ツールの値も認定品カタログの公表値で、複数メーカーのカタログを突合して同一値であることを確認している。ただし認定品でない製品、他社製品どうしを継いだ組合せ、曲がりや損傷・ねじ部の傷みがある部材には適用できない。実際に使う製品のメーカー資料で確認するのが原則だ。
3.5mを超える高さでも使えるのか
使えない。認定品の許容支持力表が3.4mで終わっているため、使用高さ帯の選択肢も3.0m超〜3.4mまでとしている。労働安全衛生規則第242条第7号ハにより、高さが3.5mを超えるときは高さ2m以内ごとに水平つなぎを二方向に設ける措置が必須になり、それ以上は枠組支保工や支保ばり方式の検討域だ。パイプサポートは3本以上継いで用いることもできない(同条第7号イ)ので、継ぎ足しで高さを稼ぐ発想自体が行き止まりになる。
入力したデータはどこかに保存されるのか
保存されない。スラブ厚も支柱間隔もブラウザ内のJavaScriptで計算が完結していて、サーバーには送信していない。図面情報にあたる数値を入れても外部に出ることはない。結果は「結果をコピー」で1行テキストとして取り出せるので、施工計画書や検討メモへの転記はそちらを使ってほしい。ただし末尾の注記のとおり、これは支柱の支持力だけの照査であり、組立図の代わりにはならない。
まとめ
設計荷重を出して支柱1本の負担に割り、許容支持力と比べる——骨格は単純だ。厄介なのは許容支持力が使用高さ・水平つなぎ・材端条件で2倍近く動く点で、そこを固定値で済ませた計算書は危険側にも過剰側にも転ぶ。条件を振りながら判定と上限支柱間隔を同時に見られるのが、このツールの狙いだ。
せき板・セパレーター側は型枠側圧計算、大引・根太に単管を使う場合のスパンは単管パイプ耐荷重・スパン計算、枠組足場側の荷重は足場荷重・強度検討ツールへ。数量の拾いはコンクリート配合・必要量計算と鉄筋量計算ツール、ポンプ車やクレーンを据える地盤側は敷鉄板・アウトリガー接地圧計算が担当する。
気になる点があればお問い合わせページから教えてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。型枠側圧のツールを作ったあとで「せき板より支保工のほうが事故は重い」と気づいて、鉛直側を埋めるために作った。許容支持力が固定値ではなく使用高さと拘束条件で2倍動く、というのが一番伝えたかったところ。
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