単管で棚を組みたい。パーゴラを建てたい。庭の柱と柱の間に物干しを渡したい——で、この長さで何kgまで載るのか。ホームセンターの単管売り場をいくら眺めても、ネットの早見表をいくら検索しても、「自分の寸法ぴったり」の答えはどこにも書いていない。2mスパンの目安は見つかっても、実際に組みたいのは1.8mだったり2.3mだったりする。片持ちで突き出したいときの数字になると、もうほとんど情報がない。
このツールは、φ48.6の単管パイプを梁として使うときの強度をその場で計算する専用機だ。スパン・肉厚(2.4mm標準/1.8mm軽量)・支持条件(単純支持/両端固定/片持ち)・荷重タイプ(集中/等分布)・荷重を入れると、最大曲げ応力・許容曲げ応力・安全率・たわみ(L/300判定)・逆算した許容荷重が一度に出て、安全/注意/危険の3段階で判定される。根拠はJIS G 3444のSTK500の規格値と、構造力学の梁の標準式。早見表の「だいたい」ではなく、自分の寸法の数字で判断できる。
なぜ作ったのか — 早見表は「自分のスパン」に答えてくれない
単管DIYの解説記事はたくさんある。ただ、その強度情報はほぼ例外なく「2mスパンで中央に約○kg」という代表点の早見表止まりだ。スパンが1.8mだったら?荷重が棚板全体に分散するなら?片持ちで突き出したら?——早見表は点のデータだから、条件が1つずれた瞬間に答えられなくなる。比例で伸ばせばいいと思うかもしれないが、曲げ応力はスパンに比例する一方、たわみはスパンの3乗で効く。2mの目安を2.5mに「ちょっと伸ばした」つもりが、たわみは約2倍になっている。この非線形が、早見表の外挿を危険にする。
実はこのサイトには汎用の梁計算ツール /beam-strength が先にあって、原理的にはあれで単管も計算できる。だが作ってから気づいた。汎用機は断面性能——断面係数やヤング率——を自分で入力する必要があり、単管ユーザーにはこれが過剰なのだ。単管はφ48.6一択。肉厚も実質2.4mmか1.8mmの2択。つまり断面性能の入力は本来まるごと省略できる。そこで寸法入力を消し、「スパンと荷重と使い方」だけ聞けば10秒で答えが出る単管専用機として切り出したのがこのツールだ。
もうひとつのこだわりは、たわみと許容荷重の逆算を必ず併記したこと。単管DIYで実際に困るのは「折れる」より先に「たわんで使い物にならない」ケースが多い。強度の安全率だけ見て安心すると、長スパンでは棚板の上の物が転がるほど沈む。応力とたわみの両方で判定し、さらに「この条件なら何kgまでいけるか」を逆算で示す。設計の試行錯誤がその場で完結する。
単管パイプ 強度 計算の基礎 — φ48.6という梁を第一原理から
曲げ応力とは — 両手で持った棒の真ん中を押す
棒を両手で水平に持ち、誰かに真ん中を押してもらう場面を想像してほしい。棒は弓なりにしなる。このとき棒の内部では、下側の繊維が引き伸ばされ、上側が押し縮められている。この「引張と圧縮のペア」を生む回転力が曲げモーメントMで、材料の断面に生じる単位面積あたりの力が曲げ応力σだ。応力が材料の限界(降伏点)を超えると、棒は元に戻らない曲がり方をする。単管の強度計算とは、突き詰めればこのσを求めて材料の限界と比べる作業に尽きる。
両端を支えた梁の中央に荷重P(単位はN)が載るとき、最大曲げモーメントは次の式になる。
M = P × L / 4 (単純支持・中央集中荷重、Lはスパン)
σ = M / Z (Zは断面係数)
スパンLが長いほど、荷重Pが大きいほどMは大きくなる。てこの原理そのもので、支点から遠い位置の荷重ほど強い回転力を生むからだ。曲げモーメントの一般論は Wikipedia: 曲げモーメント が詳しい。
単管パイプ 耐荷重を決める材料 — STK500とJIS G 3444
ホームセンターに並ぶφ48.6単管の正体は、JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管) に定められたSTK500という鋼管だ。「500」は引張強さが500 N/mm²級という意味で、設計で使う降伏点(元に戻らなくなる限界)の下限は355 N/mm²。本ツールはこの355を基準強度Fとし、そこに安全率(長期1.5または仮設2.0)を掛けた許容曲げ応力と、発生応力σを比較する。
外径48.6mm・肉厚2.4mmの標準管の断面性能は、JIS G 3444の表値で断面二次モーメントI=9.32cm⁴・断面係数Z=3.83cm³・単位質量2.73kg/m。「軽い単管」として売られる肉厚1.8mmの軽量管はJIS表外の流通品で、計算値からI=7.26cm⁴・Z=2.99cm³・2.08kg/m。肉厚が25%薄くなると、強さの指標Zは約22%落ちる。
強さのZ・硬さのI — 断面係数と断面二次モーメントの役割分担
似た名前のIとZは仕事が違う。断面係数Zは「応力の出にくさ」を表し、σ=M/Zの分母として折れにくさを決める。断面二次モーメントIは「たわみにくさ」を表し、たわみ式δ=PL³/48EIの分母として硬さを決める。つまりZが強度担当、Iが剛性担当。同じ荷重でも、Zに余裕があるのにIが足りず「折れないけどベコベコにたわむ」状況は普通に起きる。だから本ツールは両方を必ず計算する。
たわみの慣用限界はL/300。スパンの1/300(2mなら6.7mm)を超えるたわみは、強度上は問題なくても、見た目の不安感・物の転がり・接合部の緩みにつながるため「注意」に降格させる。
単管パイプ 強度は支持条件で4倍変わる
同じスパン・同じ荷重でも、支え方で応力はまるで違う。両端を支えた単純支持の中央集中がM=PL/4なのに対し、片側だけ固定して突き出す片持ちの先端集中はM=PL。つまり片持ちは単純支持の4倍の応力が出る、最も厳しい条件だ。逆に両端を回転しないよう剛に固定できればM=PL/8と半分になるが、単管の直交クランプ接合は理論上の「完全固定」にはならない。だから実務では単純支持で評価するのが安全側の作法で、本ツールのデフォルトも単純支持にしてある。
この数字を外すと何が起きるか — 恒久変形・たわみ・「初日は持ったのに」
強度不足の単管がいきなりバキッと折れることは実は少ない。先に起きるのは、じわじわ進む恒久変形だ。発生応力が降伏点を超えると、荷重を下ろしても梁は元に戻らない。単管棚の中央がいつの間にか数cm下がっている、積雪の翌朝パーゴラの梁が波打っている、片持ち看板の根元がお辞儀している——これらは全部「σが許容を超えていた」ことの事後報告だ。
怖いのは「初日は持ったのに」という現象。静かに置いた初日の荷重は許容ぎりぎりで耐えても、物を勢いよく載せる衝撃、風によるゆすり、荷重の載せ替えの繰り返しで、実効的な応力は静的計算より大きく振れる。ぎりぎり設計は初日ではなく1か月後に破綻する。だから許容応力ぴったりではなく、安全率1.5以上を「安全」の条件にしている。
安全率の基準は2つ用意した。長期1.5は建築基準法の長期許容応力度の考え方(基準強度F÷1.5)で、常設の棚やパーゴラ向け。仮設2.0は仮設機材の安全率慣行に合わせた値で、仮設工業会 の認定基準が部材耐力に安全率2を見込むのと同じ発想だ。クランプ接合のばらつき、中古パイプの劣化、施工精度——不確実性が大きいと感じるほど仮設2.0を選ぶ。作用時間の長短ではなく、不確実性への割増と考えるのがこのツールでの使い分けだ。
そしてたわみ。強度が足りてもδがL/300を超えると、棚の上のペン缶が転がり、パーゴラの梁が目視でわかるほど垂れ、クランプ接合部に余計なこじり力がかかって緩みやすくなる。長スパンの等分布荷重は「強度OK・たわみNG」が定番のパターンで、本ツールはこれを注意判定として明示的に拾う。
単管DIYのこんな設計に
単管棚・作業台。棚板を受ける横パイプのスパンを何mmにするか、支柱を何本立てるかの根拠づくり。等分布100kg級の収納棚も、スパンさえ短ければ単管は余裕で受ける。
パーゴラ・カーポートの梁。3m前後の長スパンでは強度よりたわみが先に効く。屋根材や積雪を等分布荷重として入れ、L/300判定まで確認してから柱の間隔を決められる。
物干し。布団は意外と重く、4枚干せば30kgを超える。2mスパンの単管物干しが布団の重さに耐えるかを、勘ではなく安全率で答えられる。
片持ちの看板・日よけアーム。壁や支柱から突き出す構造は応力4倍の最厳条件。突き出し長さと荷重の限界を事前に押さえておけば、根元曲がりの事故を防げる。
薪棚・タイヤラック。薪もタイヤも密度が高く、見た目より重い。合計重量を等分布で入れて、棚受けパイプのスパンを詰めるかどうかを判断できる。
基本の使い方 — 3ステップ
ステップ1: スパンと肉厚を入れる。支点間の距離(片持ちは突き出し長さ)を0.1〜6mで入力し、肉厚を2.4mm標準か1.8mm軽量から選ぶ。φ48.6の断面性能は自動でセットされる。
ステップ2: 支え方と荷重の載り方を選ぶ。支持条件(単純支持/両端固定/片持ち)と荷重タイプ(集中/等分布)をタップ。等分布は「全長に載る合計の重さ」を入れる方式だ。
ステップ3: 荷重を入れて判定を見る。安全率とたわみの複合判定が3段階で出て、あわせて「この条件なら何kgまで載るか」の許容荷重が逆算表示される。荷重を決めかねているときは、この逆算値から荷重計画を立てるのが早い。
迷ったら単純支持×長期1.5。クランプ接合を固定扱いしない、いちばん安全側の評価になる。
具体的な使用例 — 検証済み8ケース
実装した計算エンジンに実際の値を入れて確認した8ケースを、入力→結果→解釈の3点セットで並べる。肉厚は断りがなければ2.4mm標準管、安全率基準は長期1.5だ。
ケース1: 単管物干し。 入力: スパン2m・単純支持×中央集中・30kg。 結果: σ=38.4 N/mm²(許容236.7)・安全率6.16・たわみ2.57mm(L/779)・許容荷重184.9kgf → 安全。 解釈: 布団を数枚掛けても6倍超の余裕。物干し用途で2mスパンはまったく問題ない。
ケース2: 単管収納棚。 入力: スパン1.5m・単純支持×等分布・合計100kg。 結果: σ=48.0・安全率4.93・たわみ2.26mm(L/665)・許容荷重493.0kgf → 安全。 解釈: 短スパン+等分布なら100kg級の収納も余裕。等分布は中央集中の半分の応力で済むのが効いている。
ケース3: パーゴラの梁。 入力: スパン3m・両端固定×等分布・合計60kg。 結果: σ=38.4・安全率6.16・たわみ2.17mm(L/1385)・許容荷重369.7kgf → 安全。 解釈: 数字は優秀だが、両端固定は直交クランプでは完全に実現できない理論上限の参考値。単純支持で入れ直すとモーメントは1.5倍になるので、実務判断はそちらで。
ケース4: 片持ち看板。 入力: 突き出し1m・片持ち×先端集中・15kg。 結果: σ=38.4・安全率6.16・たわみ2.57mm(L/390)・許容荷重92.4kgf → 安全。 解釈: 最厳条件の片持ちでも、1m・15kg程度なら安全圏。ちなみに応力はケース1と完全に同じ——15kg×1mの片持ちは30kg×2mの単純支持中央と等価な曲げを生む。片持ちの厳しさがよくわかる。
ケース5: 過荷重の3mスパン。 入力: スパン3m・単純支持×中央集中・150kg。 結果: σ=288.1 > 許容236.7・安全率0.82・たわみ43.3mm(L/69)・許容荷重123.2kgf → 危険。 解釈: 大人がぶら下がるレベルの荷重は3mスパンでは許容超過。恒久変形のリスクがある。逆算値が示すとおり、この条件の上限は123kg。載せたいなら中間に支柱を1本入れてスパンを半分にする。
ケース6: 軽量管(肉厚1.8mm)の物干し。 入力: スパン2m・肉厚1.8mm・単純支持×中央集中・30kg。 結果: σ=49.2・安全率4.81・たわみ3.29mm(L/607)・許容荷重144.3kgf → 安全。 解釈: 軽量管でも物干し用途は成立する。ただし標準管(ケース1)と比べ応力は約1.28倍、たわみも2.57mm→3.29mmに増える。取り回しの軽さと引き換えの差を数字で確認してから選びたい。
ケース7: 同じ物干しを仮設2.0基準で。 入力: スパン2m・単純支持×中央集中・30kg・安全率基準を仮設2.0に変更。 結果: 許容177.5 N/mm²・安全率4.62・許容荷重138.6kgf → 安全。 解釈: 発生応力とたわみはケース1と同じで、許容側だけが厳しくなる。中古パイプやクランプ精度に不安があるときはこちらで見ておけば、判断はより安全側に倒れる。
ケース8: 5mスパンのたわみ支配。 入力: スパン5m・単純支持×等分布・合計60kg。 結果: σ=96.0・安全率2.46・たわみ50.1mm(L/100)・許容荷重147.9kgf → 注意。 解釈: 強度の安全率は2.46と十分なのに、たわみが5cm——L/300限界の3倍——に達して注意判定。長スパンはたわみ支配になる典型例で、安全率だけ見ていると見落とす。たわみはスパンの3乗で効くから、中間支柱1本でスパンを半分にすればたわみは理論上1/16になる。
8ケースを通してわかるのは、判定を分けるのが「荷重の絶対値」ではなく「スパン×支え方×載り方」の組み合わせだということ。同じ30kgでも条件次第で安全率は6.16にも4.62にもなり、150kgは1.5mなら受けられても3mでは危険になる。だからこそ、自分の寸法で計算する意味がある。
仕組み・アルゴリズム — 梁の標準式6分岐という選択
手法比較 — 有限要素法でも骨組解析でもなく標準式
構造計算のアプローチは大きく3つ候補があった。(1) 有限要素法(FEM): 任意形状に対応できるが、単管1本の直線梁には完全にオーバースペックで、ブラウザ実装も重い。(2) 骨組解析: 複数部材の立体構造を解けるが、入力に節点座標や部材接続が要り、スマホで10秒の手軽さと両立しない。(3) 梁の標準式: 支持条件×荷重タイプが定型なら、材料力学の教科書に載る閉形式解がそのまま厳密解になる。
単管パイプ単体の直線梁——このツールの守備範囲——では、標準式は近似ではなく厳密解だ。入力6個で即答できる軽さも含めて、(3)一択だった。代わりに、クランプ接合の回転拘束のような「標準式に乗らない不確実性」は、両端固定を参考値扱いにして単純支持での安全側評価を推奨する、という設計判断で吸収している。
実装詳細 — 6分岐の式と定数の出典
計算の全体像はこうだ。支持条件3種×荷重タイプ2種=6分岐で最大曲げモーメントMと最大たわみδを求め、あとは共通処理に流す。
// 共通の前処理
P = 荷重kg × 9.80665 // [N] 等分布は合計荷重
L = スパンm × 1000 // [mm]
σa = 355 ÷ 安全率 // 長期1.5→236.7 / 仮設2.0→177.5 [N/mm²]
// 6分岐(E=205000 N/mm²、I・Zは肉厚別の断面性能)
単純支持×集中: M = PL/4 δ = PL³/(48EI)
単純支持×等分布: M = PL/8 δ = 5PL³/(384EI)
両端固定×集中: M = PL/8 δ = PL³/(192EI)
両端固定×等分布: M = PL/12 δ = PL³/(384EI)
片持ち×集中: M = PL δ = PL³/(3EI)
片持ち×等分布: M = PL/2 δ = PL³/(8EI)
// 共通の後処理
σ = M / Z
安全率 = σa / σ
たわみOK = δ ≦ L/300
許容荷重[kgf] = 入力荷重 × 安全率 // σ ∝ P の線形逆算
判定 = 安全率<1.0 → 危険
/ 安全率<1.5 または たわみNG → 注意
/ それ以外 → 安全
等分布荷重は入力を合計荷重Wとして受け、式はWL形に整理してある(単純支持のwL²/8はw=W/Lを代入するとWL/8)。定数の出典は、基準強度F=355 N/mm²がJIS G 3444のSTK500降伏点下限(平12建告2464の基準強度と同値)、ヤング率E=205,000 N/mm²は鋼の標準値、断面性能はJIS G 3444の表値(2.4mm: I=9.32cm⁴・Z=3.83cm³)と計算値(1.8mm: I=7.26cm⁴・Z=2.99cm³)。内部の単位はすべてmm系(I: mm⁴、Z: mm³)に揃え、換算ミスを構造的に防いでいる。
計算例 — 物干しケースを手で追う
ケース1(スパン2m・中央集中30kg・長期1.5)をステップバイステップでなぞる。
P = 30 × 9.80665 = 294.2 N
L = 2000 mm
M = PL/4 = 294.2 × 2000 / 4 = 147,100 N·mm(= 147.1 N·m)
σ = M/Z = 147,100 / 3,830 = 38.4 N/mm²
σa = 355 / 1.5 = 236.7 N/mm²
安全率 = 236.7 / 38.4 = 6.16
δ = PL³/(48EI) = 294.2 × 2000³ / (48 × 205,000 × 93,200) = 2.57 mm
たわみ比 = 2000 / 2.57 ≒ L/779 → L/300以内でOK
判定 = 安全率6.16 ≥ 1.5 かつ たわみOK → 安全
許容荷重の逆算は、σがPに線形比例することを使っている。荷重を2倍にすればσもちょうど2倍。だから「許容応力に達する荷重」は入力荷重×安全率で正確に求まり、この例なら30×6.16=184.9kgf。ただしこの逆算は応力ベースで、たわみ判定は含まない参考値。長スパンでは逆算値まで載せる前にたわみが先に限界を迎えることがある(ケース8がまさにそれ)ので、実際の荷重で入れ直してたわみまで確認するのが正しい使い方だ。
判定バンドは、許容応力自体に安全率1.5〜2.0が織り込み済みであることを踏まえ、安全率1.0以上を「許容内」、さらに1.5以上+たわみOKを「安全」とした。姉妹ツール /beam-strength の判定バンドと整合させつつ、たわみNGでの降格を加えた単管仕様の複合判定になっている。
早見表でも汎用梁計算でもない、φ48.6専用という選択
競合になるのは、メーカーサイトやDIYブログの耐荷重早見表と、汎用の梁計算ツールの2つだ。早見表は代表スパンの点データであり、支持条件や荷重タイプ、たわみまでは教えてくれない。
一方で汎用の梁計算ツールなら任意条件を扱えるが、断面二次モーメントや断面係数を自分で調べて入力する必要がある。単管はφ48.6一択なのだから、この入力は明らかに過剰。本ツールはφ48.6専用に割り切って入力を6個(スパン・肉厚・支持条件・荷重タイプ・荷重・安全率基準)に絞り、スマホで10秒で答えが出る。曲げ応力・たわみ・L/300判定・許容荷重の逆算まで一度に出るのは早見表にはない強みだ。
当サイト内での使い分けはこう。H形鋼や木材など任意断面の梁を検討するなら /beam-strength、足場としての積載荷重を考えるなら /scaffold-load、木の棚板のたわみなら /shelf-deflection。単管を梁として渡すならこのツール、という役割分担になっている。
単管パイプ雑学 — φ48.6という中途半端な数字のルーツ
単管パイプの外径48.6mmは、メートル法で考えると奇妙な数字だ。ルーツはインチ系の配管規格にある。呼び径1.5B(1½インチ)のガス管・鋼管の系譜を継いだ寸法で、JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)の呼び寸法にそのまま残っている。ミリで切りのいい50mmではないのは、配管の世界が今もインチ基準で回っているからだ。
STK500の「500」は引張強さ500 N/mm²級の意味。本ツールが基準強度に使う355 N/mm²は引張強さではなく降伏点の下限値で、「元に戻らない変形が始まる応力」を基準に許容値を決めている。壊れる手前ではなく、曲がり始める手前で線を引くのが構造設計の流儀だ。
流通面では定尺0.5〜6m(0.5m刻みが基本)で売られ、ホームセンターならカット販売もある。「軽い単管」として売られる肉厚1.8mmの軽量管はJIS表外の製品だが、高張力鋼で強度を確保しているものもある。ただし農業用のφ48.6パイプ(肉厚1mm前後)とは別物なので混同しないこと。
そしてDIYで見落とされがちなのが、パイプ本体より先にクランプが律速になる話。直交クランプの許容荷重は認定品で約350kgf(メーカー・製品で異なる)とされ、パイプの曲げに余裕があってもクランプの滑り・破壊が先に来るケースがある。詳しくは仮設工業会の認定基準を参照。本ツールの許容荷重が大きく出ても、接合部は別途チェックする癖をつけたい。
精度を上げる5つのコツ
- 迷ったら単純支持で評価する — 直交クランプ留めは理論上の「固定」にならない。両端固定の結果は上限の参考値と割り切り、単純支持の数字で判断すれば安全側だ。
- たわみが気になるなら中間に支柱を1本 — 載せる物の量(単位長さ当たりの荷重)が同じなら、たわみはスパンの4乗に比例する。スパンを半分にすればたわみは約1/16、曲げ応力も1/4。肉厚を上げるよりはるかに効く。
- 等分布に直せる荷重は等分布で入れる — 棚板・屋根材・薪のように全長に広がる荷重を中央集中で入れると応力が2倍に出る(M=PL/4 と M=PL/8 の差)。実態に合う荷重タイプを選ぶだけで判定が変わる。
- 屋外は積雪・風を忘れない — 積雪は水分を含むと1cmあたり約3kg/m²。パーゴラに30cm積もれば1m²あたり約90kg、屋根面積をかけると本体の想定荷重を軽く超える。
- 中古パイプは割り引いて考える — 本ツールの断面性能は新品STK500の公称値。錆びで肉厚が減ったり凹みのあるパイプは大幅に強度が落ちるので、安全率に余裕を持たせるか交換を。
よくある質問
人が乗る足場に使っていい?
使えない。労働安全衛生法が適用される足場・作業構造物は本ツールの対象外で、労働安全衛生規則と仮設工業会の基準に従って計画する必要がある。本ツールはあくまでDIYの棚・パーゴラ・物干しなど、単管を梁として使う場面の概算用。人が乗る・下を人が通る構造物は、計算結果にかかわらず専門家への相談を推奨する。
クランプ部分の強度は見てくれる?
見ていない。本ツールが計算するのはパイプ単体の曲げ応力とたわみで、クランプ・ジョイント接合部の耐力は対象外。目安として直交クランプの許容荷重は約350kgf(認定品・製品により異なる)で、パイプ側に余裕があってもクランプが先に律速になることがある。支柱の座屈・基礎・転倒も別途検討が必要だ。
農業用パイプ(φ48.6でも肉厚が薄い)でも使える?
使えない。本ツールはSTK500(降伏点355 N/mm²)の単管パイプ前提で、対応する肉厚は2.4mm(標準)と1.8mm(軽量管)の2種類。農業用ハウスパイプは同じφ48.6でも肉厚1mm前後・材質も異なり、断面性能と基準強度の両方が合わないため計算結果は当てにならない。
許容荷重(逆算)の値まで載せても大丈夫?
条件付きでOK。逆算値は「許容曲げ応力にちょうど達する荷重」で、応力ベースの上限だ。たわみの判定は含まれないため、長スパンでは許容荷重以下でもたわみがL/300を超えて「注意」になることがある。逆算値ぎりぎりまで載せる計画ではなく、荷重を入れ直して判定が「安全」になる範囲で使ってほしい。
入力したスパンや荷重のデータはどこかに保存される?
サーバーには一切送信されない。計算はすべてブラウザ内(端末上)で完結し、入力値が外部に記録されることはない。ページを離れれば入力内容は消えるので、残したい結果は「結果をコピー」ボタンでメモに貼り付けておくのがおすすめだ。
まとめ
φ48.6単管のスパン・支持条件・荷重を入れるだけで、曲げ応力・たわみ・安全率と許容荷重が10秒で出る。早見表にない自分の寸法に、数値の根拠を持てるのがこのツールの価値だ。単管を柱として使う積載検討は /scaffold-load、H形鋼や木材など任意断面の梁は /beam-strength、木の棚板のたわみは /shelf-deflection と組み合わせれば、DIY構造物の主要部材を一通りチェックできる。改善要望や「この条件も計算したい」があればお問い合わせページから気軽にどうぞ。