サーボを選ぶときに必ずぶつかる「3つの壁」
装置設計でサーボモータを選定するとき、カタログを開いて最初に悩むのは定格トルクの数字じゃない。「このモータでほんとうに間に合うのか」「慣性比オーバーで共振しないか」「連続運転で焼けないか」の3つを同時に満たす型番が、どこにも書いていないことだ。
メーカーのサイジングソフトは便利だけど、三菱で合格した条件を安川に入れ直すと値が変わる。オリエンタルで引いた曲線を富士電機の資料と並べたくても、UIも単位も違う。結果、「A社の選定ソフトに頼った結果、B社の方が安かったのに気づけなかった」という場面が起きる。
このツールは、負荷トルク・慣性・運転条件を入れれば、定格・慣性比・実効トルクの3軸を同じ画面で判定する。メーカーは指定せず、推奨定格トルクという中立の数値を返す。最終選定で各社のカタログに当たるときの「共通の物差し」を作るのが狙いだ。
なぜ作ったのか
過去に低慣性モータで多関節ロボットを組んだら、動作中に位置決めがビリビリ震えてゲイン調整がまったく追い込めなかった。調べてみると慣性比がサーボ上限の10倍を大きく超えていた。最初の選定時、トルクの式しか見ていなかったツケだ。
別の案件では連続運転のベルトコンベヤで、ピークだけ見て定格ギリギリのモータを選んだら、真夏に保護停止が連発した。実効トルクを真面目に計算していれば防げた失敗だ。
こうした典型的な失敗は、メーカー選定ソフトを使えば大体避けられる。ただし困るのは比較検討の初期段階。三菱MR-J5、安川Σ-X、オリエンタルAZの見積を並べたい、でも各社のソフトを3つ起動して同じ条件を入れ直すのはしんどい。Excelで手計算すると、デューティの扱いやイナーシャマッチングの閾値がメーカーごとに微妙に違って、比較軸がブレる。
「中立の指標で概算し、そこから各社ソフトで精査する」という2段構えのワークフローにすれば、初期の比較検討が一気に楽になる。そう思って、慣性比・定格・実効トルクを1画面で判定するシンプルなツールを作った。Kindle本『メカトロニクス・駆動制御入門』の読者が実際に手を動かして理解できるよう、計算式はすべて記事に公開している。
イナーシャマッチングと実効トルクを正しく理解する
イナーシャマッチング とは
サーボの応答性と安定性を決めるのは、負荷慣性 JL とモータ慣性 Jm の比、つまり慣性比だ。一般に JL/Jm が大きすぎると、モータは「重いハンドルを繊細に動かす」状態になり、ゲインを上げると共振、下げると応答が鈍くなる。
身近なたとえで言うと、軽自動車のハンドルに巨大なトレーラーを連結するようなもの。入力に対して出力が素直に動かず、制御が効きにくくなる。
サーボメーカーが公表する推奨慣性比は、大体以下の範囲に収まる。
- 一般的なサーボ:
JL/Jm ≤ 10 - 高応答が必要な用途:
JL/Jm ≤ 3 - ステッピング(オープンループ):
JL/Jm ≤ 5
詳しくはイナーシャの定義(Wikipedia)やJIS B 8445(産業用マニピュレーティングロボット)で扱われている慣性評価の考え方を参照すると背景がわかる。
実効トルク(RMS トルク)とは
サーボは瞬間的に大きなトルクを出せるが、連続で出し続けると巻線が熱で焼ける。そこで「ある運転パターンを時間平均した等価トルク」を実効トルク(RMS: Root Mean Square)と呼び、これがモータ定格の70%以下に収まることを確認する。
運転を「加速・定速・減速・停止」に分けて厳密に計算するのが本式だが、初期検討ではデューティ簡略式で十分だ。
d = (加速+減速+一部定速) / 全体時間
Trms = √(d × Tp² + (1 - d) × TL²)
ここで Tp は加速時のピークトルク、TL は定常負荷トルク。dは「高負荷トルクがかかっている時間の割合」で、25〜90%くらいの範囲で入れる。連続運転(dが高い)ほど、実効トルクは定常負荷に引きずられる。
定格トルク選定の考え方
定格トルクの必要条件は2本ある。
- 静的条件: 定常負荷に安全率を掛けたもの。
ratedRequired = TL × S - 熱的条件: 実効トルクが定格の70%以下。
Trms ≤ 定格 × 0.7、つまり定格≥ Trms / 0.7
両方を満たす必要があるので、推奨定格トルクは2つの最大値を取る。
ratedRecommend = max(TL × S, Trms / 0.7)
これが初期選定で目安にする「最低限これ以上の定格が必要」という数値だ。
選定ミスは必ず現場で跳ね返ってくる
サーボ選定を間違えると、痛みは3種類ある。
1つ目は共振による位置決め精度低下。慣性比がサーボ上限10倍を超えたまま無理に動かすと、制御系のゲインを上げられず、停止精度がばらつく。0.1mmの繰り返し位置決めが要求される装置で、実測ばらつきが数倍に膨らむケースは珍しくない。減速比を追加する・高慣性型モータに変える・機械剛性を上げるといった対策が必要だが、どれも後からだと設計やり直しで大きな手戻りコストになる。
2つ目はモータ過熱による保護停止。ピークトルクは足りているのに実効トルクを見落とし、連続運転で巻線温度がアラームを吹く。製造ラインなら1時間停止で数百万円の機会損失、深夜にトラブル対応で呼び出される設計者の心労もある。JIS C 4034-1(回転電気機械 定格と特性)ではモータの熱的許容時間が規定されており、実効トルク基準は熱設計の入り口だ。
3つ目は過大な初期コスト。安全側に倒しすぎて1サイズ大きいモータを選ぶと、本体価格だけで数万円、ドライバや電源容量も跳ね上がる。100台量産なら百万円単位の差が出る。
たとえば中型搬送アームで負荷トルク2N·m・慣性比5倍・加減速0.1秒の条件なら、推奨定格は約5.1N·m。ここで「念のため」と1.0kW以上の大型モータを選ぶのは過剰投資、逆に2N·m定格で済ませるとピークと熱の両方でアウトになる。定格・慣性比・実効トルクの3軸を同時に見て、ちょうど良いサイズを掴むことが設計者の腕の見せどころだ。
活躍する場面
初期見積で複数メーカーを比較したいとき — 三菱・安川・オリエンタルの選定ソフトを3つ起動せずとも、必要定格トルクと慣性比が1画面で出る。そのあと各社カタログで「2.5N·m以上かつ慣性比が収まる」型番を拾えば、比較検討が一気に進む。
クライアントから「どのくらいのモータが必要?」と聞かれたとき — 打ち合わせ中にスマホで入力すれば、その場で「1kW前後、慣性比5倍」と回答できる。後日正式見積を出す前の握りに使える。
Kindle本や社内研修でサーボ選定を教えるとき — 受講者が実際に手を動かしながら、負荷トルクや加減速時間を変えて挙動を見られる。慣性比が20倍に跳ね上がると警告が出る、といった学習体験も提供できる。
既存機の更新・リプレースを検討するとき — 現行モータの慣性・トルクを入れて「今のサイズで足りているのか」を逆算できる。製造中止品の代替選定にも使える。
基本の使い方(3ステップ)
- モータ種別を選ぶ — サーボかステッピングを選ぶと、慣性比の判定上限が自動で切り替わる(サーボ10倍、ステッピング5倍)。
- 負荷・運転条件を入力 — 負荷トルク
TL、負荷慣性JL、モータ候補慣性Jm、最大回転数N、加減速時間ta、デューティ比、安全率Sを入れる。JLは/inertia-calcで計算した値をそのまま取り込める。 - 判定を確認 — 定格・慣性比・実効トルクの3項目が同時に判定表示される。推奨定格トルクを控えて、各メーカーのカタログで該当型番を探す。
具体的な使用例(7ケース)
ケース1: 中型搬送アーム(代表ケース)
- 入力:
TL=2 N·m、JL=0.001 kg·m²、Jm=0.0002 kg·m²、N=3000 rpm、ta=0.1 s、duty=30%、S=1.5、サーボ - 結果:
ω=314.16 rad/s、Tp=5.770 N·m、Trms=3.576 N·m、慣性比=5.0、推奨定格=5.109 N·m - 解釈: 慣性比5倍はサーボ上限10倍の半分で余裕あり。推奨定格5.1N·m以上、目安は750W〜1kWクラス。3社比較の初期値に最適。
ケース2: 高慣性比警告(減速機検討ケース)
- 入力:
TL=1 N·m、JL=0.01 kg·m²、Jm=0.0005 kg·m²、N=1500 rpm、ta=0.5 s、duty=40%、S=1.5、サーボ - 結果:
Tp=4.299 N·m、Trms=2.827 N·m、慣性比=20.0、推奨定格=4.038 N·m - 解釈: 慣性比20倍はサーボ上限の2倍。ここでツールは「機械共振リスク」を警告。減速機(例: i=3の遊星減速機)を追加すれば負荷慣性は1/9になり、慣性比2.2倍まで下がって制御が安定する。
ケース3: 小型SCARA手首
- 入力:
TL=0.3 N·m、JL=0.0001 kg·m²、Jm=0.00002 kg·m²、N=6000 rpm、ta=0.05 s、duty=50%、S=1.5、サーボ - 結果:
ω=628.32 rad/s、Tp=1.808 N·m、Trms=1.296 N·m、慣性比=5.0、推奨定格=1.851 N·m - 解釈: 高回転6000rpm・短ta 50msの典型的なピック&プレース。推奨定格は約1.85N·m、100〜200Wクラスの小型サーボで対応可能。
ケース4: 旋盤主軸(連続運転の厳しいケース)
- 入力:
TL=15 N·m、JL=0.02 kg·m²、Jm=0.005 kg·m²、N=4000 rpm、ta=2 s、duty=80%、S=1.5、サーボ - 結果:
Tp=20.236 N·m、Trms=19.303 N·m、慣性比=4.0、推奨定格=27.575 N·m - 解釈: duty80%の連続運転で実効トルクが大きく跳ね上がる。推奨定格はピークの1.4倍近く、熱条件が効いている。3.5kW以上の主軸モータ級が必要。
ケース5: パレタイザZ軸(重力負荷)
- 入力:
TL=10 N·m、JL=0.008 kg·m²、Jm=0.001 kg·m²、N=2000 rpm、ta=0.3 s、duty=40%、S=1.8、サーボ - 結果:
Tp=16.283 N·m、Trms=12.886 N·m、慣性比=8.0、推奨定格=18.409 N·m - 解釈: 重力負荷のため安全率を1.8と高めに設定。慣性比8倍はサーボ上限内だが警戒域。推奨定格18.4N·m、保持ブレーキ付きモータを推奨(/holding-brake-calcで保持トルクも確認)。
ケース6: XYステージ
- 入力:
TL=1 N·m、JL=0.0005 kg·m²、Jm=0.0001 kg·m²、N=3000 rpm、ta=0.08 s、duty=25%、S=1.5、サーボ - 結果:
Tp=3.356 N·m、Trms=1.888 N·m、慣性比=5.0、推奨定格=2.698 N·m - 解釈: 位置決め用途でdutyが25%と低く、ピーク重視の選定になる。推奨定格2.7N·m、400Wクラスのサーボが目安。短ta 80msで応答性を確保。
ケース7: ベルトコンベヤ駆動(連続・高慣性)
- 入力:
TL=5 N·m、JL=0.02 kg·m²、Jm=0.003 kg·m²、N=1500 rpm、ta=1 s、duty=90%、S=1.5、サーボ - 結果:
Tp=8.613 N·m、Trms=8.322 N·m、慣性比=6.67、推奨定格=11.889 N·m - 解釈: duty90%の連続運転で
TrmsがTpにほぼ等しい。この場合、熱条件(Trms/0.7)が効き、推奨定格はTL×S=7.5よりずっと大きい11.9N·mになる。静的トルクだけで選ぶと確実に焼ける典型例。
仕組み・アルゴリズム
採用した計算手法
サーボ選定の計算手法には複数の流派がある。
- ピークトルクだけで選ぶ方式 — 単純だが連続運転で熱破損する
- 運転パターン厳密積分方式 — 正確だが入力項目が多く初期検討に不向き
- デューティ簡略式(本ツール採用) — 精度とお手軽さのバランス
初期見積では3番目のデューティ簡略式が最適だ。メーカー選定ソフトの簡易モードもこの方式を採用している場合が多い。精密な運転パターン(台形速度・S字加減速・連続運転の複合パターンなど)が必要な最終選定段階では、メーカー純正ツールに任せる想定。
実装の計算フロー
// 1. 角速度を rpm → rad/s に変換
const omega = N * 2 * Math.PI / 60;
// 2. デューティを割合に変換
const d = duty / 100;
// 3. 加速ピークトルク = 定常負荷 + 慣性トルク
const Tp = TL + (JL + Jm) * omega / ta;
// 4. 実効トルク(RMS)= デューティ加重の二乗平均平方根
const Trms = Math.sqrt(d * Tp ** 2 + (1 - d) * TL ** 2);
// 5. 慣性比
const ratio = JL / Jm;
const ratioLimit = motorType === "servo" ? 10 : 5;
// 6. 推奨定格 = 静的条件と熱条件の大きい方
const ratedRequired = TL * S;
const ratedRecommend = Math.max(ratedRequired, Trms / 0.7);
3軸判定のロジック
定格判定: ピーク Tp が推奨定格の3倍超でng、2倍超でwarn、それ以下でgood。これはサーボの瞬時最大トルクが通常「定格の3倍・数秒以内」という仕様に対応する。
慣性比判定: JL/Jm が上限の1.5倍超でng、上限超でwarn、上限の半分超でok、それ以下でgood。上限はサーボ10倍、ステッピング5倍。
実効トルク判定: Trms が推奨定格の90%超でwarn、70%超でok、それ以下でgood。70%は業界標準の余裕代で、巻線温度のマージンに相当する。
具体的な計算例(ケース1の検算)
入力: TL=2、JL=0.001、Jm=0.0002、N=3000、ta=0.1、duty=30%、S=1.5
ω = 3000 × 2π / 60 = 314.16 rad/s
Tp = 2 + (0.001 + 0.0002) × 314.16 / 0.1 = 2 + 3.770 = 5.770 N·m
d = 0.3
Trms = √(0.3 × 5.770² + 0.7 × 2²) = √(9.990 + 2.800) = √12.790 = 3.576 N·m
ratio = 0.001 / 0.0002 = 5.0(上限10の半分でgood)
ratedRecommend = max(2 × 1.5, 3.576 / 0.7) = max(3.0, 5.109) = 5.109 N·m
この5.109N·mが「3社カタログで2.5N·m以上のモータを探す出発点」となる。Tp=5.77 は推奨定格の約1.1倍で、瞬時最大トルク余裕も十分。慣性比も熱条件も良好な、バランスの取れた選定だと判定できる。
他ツールとの違い
三菱電機・安川電機・オリエンタルモーターといった主要メーカーは、いずれも自社サーボ向けの選定ソフトを無償配布している。精度は折り紙付きだが、致命的な欠点がひとつ。自社製品の型番しか提案してくれないのだ。
装置の初期構想フェーズで「どのメーカーにするか」を決めかねている段階では、この囲い込みがじゃまになる。三菱で選定 → 安川で選定 → オリエンタルで選定、と3回同じ数値を打ち直す羽目になる。しかも各ソフトでUIもパラメータ名も微妙に違うので、比較疲れで思考が止まる。
このツールはメーカーから独立した中立比較型。入力は「負荷トルク・負荷慣性・候補モータ慣性・回転数・加減速時間・デューティ比・安全率」という物理量だけ。3軸判定(定格・慣性比・実効トルク)でNGが出ないモータ定格が分かれば、その値を持ってメーカー各社のカタログを横断できる。
もうひとつ、一般的なオンライン計算ツールは「必要トルク」単独のケースが多い。しかし実際の選定では慣性比と実効トルクが落とし穴になる。トルクだけOKでも慣性比が30倍あれば共振で調整地獄、実効トルクが定格越えなら運転中に熱保護がトリップ。このツールはその3つを1画面で同時に見せる。判定サマリーの◎○△×で、どこが危ないかひと目で分かる設計だ。
豆知識・読み物
イナーシャマッチングの発祥
「負荷慣性 ≒ モータ慣性が最適」という考え方のルーツは、1960年代のアメリカ工作機械業界にさかのぼる。当時NC(数値制御)旋盤の位置決め精度を詰めていた技術者たちは、DCサーボモータで重い主軸を駆動する際に負荷慣性とモータ慣性の比が制御安定性を左右することを経験的に掴んでいた。
理論的には、最大加速度を出すには「負荷慣性=モータ慣性」の1:1が最適解となる(ラグランジュの運動方程式から導かれる)。ただし現実のサーボ制御では機械剛性や減衰の制約があり、1:1に固執するとモータが過大になる。そこで業界慣行として10倍までが許容、5倍以下なら良好、という目安が定着した。
「慣性比10倍」の根拠
この10倍という数字には制御工学的な裏付けがある。サーボの位置ループゲインは機械共振周波数で頭打ちになる。慣性比が上がると合成慣性モーメントの中で負荷側の影響が支配的になり、カップリング・減速機・ボールねじの弾性要素と組み合わさって機械共振周波数が下がる。結果としてゲインを上げられず、整定時間が延びる。
経験則として、慣性比10倍あたりから位置決め精度の悪化が顕著になる。ステッピングモータの場合はオープンループ制御で脱調リスクが高いため、さらに厳しい5倍が目安となる(オリエンタルモーターの技術資料でも明記)。より詳しい制御工学的背景はWikipedia: 慣性モーメントを参照。
実効トルクという発想
実効トルク(Trms)の語源は、交流電気回路のRMS電流(実効値電流)にある。サーボモータの発熱は巻線抵抗による銅損が主で、銅損は電流の2乗に比例する。同じ平均電流でも瞬間的に大電流が流れる運転は発熱が大きい。これをトルクに置き換えたのが実効トルクで、熱的に等価な連続トルク値を意味する。
数式上は運転1サイクルのトルク2乗時間積分の平方根。加減速で大トルク、定速で小トルクの運転なら、両者を時間加重してRMSを取る。このツールではデューティ比(加減速時間の比率)で簡略化している。
Tips
- 速度-トルク曲線を必ず確認: モータ定格トルクは連続運転領域(緑色の帯)で出る値。高回転側の短時間運転領域(黄色帯)は数秒の加速用で、連続では使えない。カタログP-N特性曲線の境界をチェック。
- カップリング・減速機の弾性を見落とさない: 機械共振周波数は負荷慣性だけでなくカップリング剛性にも左右される。高剛性ディスクカップリング>ジョー>弾性体の順に固有振動数が高い。慣性比OKでも振動するなら剛性を疑う。
- 環境温度40℃超はディレーティング: モータカタログの定格は周囲温度40℃が基準。盤内温度が50℃を超える環境では定格の80〜90%に落として考える。密閉盤・屋外設置は要注意。
- 繰り返し加減速はワンサイズ上: 1分間に数十回の加減速を行う用途は、平均的なデューティ計算では過小評価しがち。実効トルクが定格の70%を超える場合は1ランク上のモータを推奨。
- 重力負荷軸は保持トルクも別途確認: Z軸など重力がかかる軸は電源OFF時の落下防止に電磁ブレーキが必要。定格トルク選定とは別枠で検討する(/holding-brake-calcで保持ブレーキの容量計算ができる)。
FAQ
慣性比が10倍を超えてもモータは動くのに、なぜ「NG」判定?
動くことと制御できることは別だ。慣性比が大きいとサーボの位置ループゲインを上げられず、整定時間が延びる・オーバーシュートが増える・外乱抑圧性が悪化する。10倍を超えると現場調整に数日かかることも珍しくない。このツールは「安定にゲイン調整できる範囲か」で判定している。装置の位置決め精度が緩い用途(0.1mm以下の繰り返し精度で十分等)なら20倍でも運用できるケースはあるが、一次判定ではNGと出す設計にした。
デューティ比とはなに?どう測ればよい?
1サイクルのうち「加減速でモータがフルトルクを出している時間」の比率。例えば4秒サイクルのうち加速0.5秒+減速0.5秒、定速3秒なら、デューティは(0.5+0.5)/4 = 25%。簡易的に運転パターンを加減速+定速の2フェーズに分けて計算している。定速区間が長いほどデューティは小さくなり、実効トルクは負荷トルクTLに近づく。正確なサイクル時間が不明なら、代表的な値(一般的な搬送装置30%、連続加工機80%)を使って様子を見るとよい。
ステッピングモータとサーボで慣性比の閾値が違うのはなぜ?
制御方式の違いが原因だ。サーボはエンコーダからの位置フィードバックで誤差を補正するため、慣性比が多少大きくても追従性でカバーできる。ステッピングはオープンループで指令パルスに同期する方式のため、慣性比が大きすぎると脱調(パルスに追従できず位置がずれる)が起きる。脱調すると位置情報が失われ、原点復帰が必要になる。この厳しさから、ステッピングは5倍までが安全圏とされる(オリエンタルモーター等メーカー推奨値)。
台形速度3段変化など複雑な運転パターンには使える?
本ツールはデューティ簡略版の実効トルク計算なので、3段以上に速度が変化する運転は正確には計算できない。その場合はメーカー選定ソフトの運転パターン入力機能(時刻ごとの速度・加速度を打ち込む)を使う必要がある。ただし初期検討には十分だ。最も厳しい加減速条件を抜き出してこのツールで一次判定し、OKが出たらメーカーソフトで精密検証する流れが効率的。
メーカーの選定ソフトとの使い分けは?
初期選定はこのツール、最終選定はメーカーソフト、という役割分担がおすすめ。本ツールはメーカー中立で「どのメーカーを選んでも共通の物理量」で判定するため、構想段階の容量感を掴むのに向く。候補メーカーが絞れたら、そのメーカーの選定ソフトで型番・ドライバ組み合わせ・速度トルク曲線・回生電力計算まで詰める。両者を組み合わせることで、ベンダーロックインされずに最適なモータを選べる。
まとめ
サーボモータ選定は「定格トルク・慣性比・実効トルク」の3軸で同時に判定する必要がある。どれか1つでもNGなら、運転中に共振・過熱・位置決め悪化のいずれかが発生する。本ツールはメーカー中立の一次選定用として、3軸判定を1画面で可視化した。
関連ツールもあわせて使ってほしい。負荷慣性の計算は/inertia-calc、ボールねじ駆動系なら/ball-screw-select、電源OFF時の落下防止には/holding-brake-calcが便利。困ったらお問い合わせからフィードバックをどうぞ。