鉄道模型 勾配シミュレーター

高低差と距離から勾配‰を計算。逆算で必要助走距離・レール本数換算・登坂難易度判定も

Nゲージ等のレイアウト勾配を一発計算。高低差と距離からパーミル・登坂難易度を判定し、逆算モードでは目標勾配に必要な助走距離とレール本数換算を表示。

勾配計算の結果

登坂難易度39.3‰
標準(メーカー推奨域)

勾配

39.3 ‰

必要助走距離

1,400 mm

S280×5本 / S248×6本 相当

勾配(%表記)

3.93 %

勾配角度

2.25 °

この勾配で標準クリアランスを登るには

TOMIX 複線立体交差 55mm

1,400 mm

KATO 橋脚No.5 標準 50mm

1,273 mm

登坂可否は動力車の性能・トラクションタイヤの状態・編成重量・レールの汚れで大きく変わります。本判定は直線勾配での一般的な目安です。勾配途中にカーブが入る場合は走行抵抗がさらに増えるため(模型向けの定量換算式は確立されていません)、1ランク余裕を持った設計にし、最終確認は実車での試運転をおすすめします。

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📘 鉄道模型のレイアウト作りに

関連ツール

「線路を立体交差させたい」。Nゲージのレイアウトを考え始めた人が、ほぼ必ず一度は描く夢だ。ところが図面を引き始めると、最初の壁が待っている。TOMIXの複線立体交差を列車がくぐるには、レール面で55mmの高低差が必要になる。この55mmをKATOが推奨する上限勾配4%(40‰)で登らせると、必要な助走距離は1375mm。1m37cmだ。900×600mmのボードなら長辺をはるかに超える。「55mm登らせるのに1m以上必要」——この現実を知らずに橋脚セットを買うと、レイアウトが板に収まらない。

計算式自体は単純で、勾配‰ = 高低差mm ÷ 水平距離mm × 1000。それでも設計の現場では「‰と%どっちだっけ」「S280何本分の距離?」「この勾配、うちの機関車は登れる?」と手が止まる。このツールは高低差と距離を入れるだけで、勾配のパーミル・%・角度の3表記、TOMIX S280/KATO S248の直線レール本数換算、登坂難易度の判定までを一画面で返す。逆に「40‰に収めたいなら何mm必要か」の逆算もできる。レイアウト設計の最初の関門を、数字で確かめながら越えるための道具だ。

なぜ作ったのか — 「Nゲージ 勾配 計算」で出てくるのは解説記事ばかりだった

きっかけは自分の設計ミスだ。TOMIXの立体交差を組み込んだプランを描いたとき、登り区間を「S280を3本も並べれば足りるだろう」と目分量で840mmにした。組んでみたら勾配は55 ÷ 840 × 1000 ≒ 65‰。2両編成の機関車が中腹で空転して止まり、客車を外してようやく登り切る有様だった。40‰に収めるには1375mm——ボードの長辺900mmでは直線ではどうやっても足りず、プランはやり直し。橋脚セットとレールを買い足した後で気づく、いちばん高くつくパターンの失敗だった。

そこで「Nゲージ 勾配 計算」で検索してみると、出てくるのは知恵袋の質問回答と、式を解説したブログ記事ばかり。式は載っている。‰の意味も書いてある。だが「高低差と距離を入れたら勾配と判定が出る」「目標勾配から必要距離を逆算できる」という双方向の専用計算ツールは見当たらなかった。汎用の勾配計算機はあっても、出てくるのは%と角度だけで、鉄道模型で使う‰表記もS280換算もない。結局スマホの電卓で55 ÷ 0.04を叩き、280で割って切り上げて……を毎回やることになる。

欲しかったのは、TOMIX 55mm・KATO 50mmという実在の規格値がプリセットされていて、‰⇔距離を双方向に計算でき、結果が「S280×5本」というそのまま買い物に使える形で出て、しかもKATO推奨上限4%を基準に「この勾配は現実的か」まで判定してくれるツールだ。無いなら作る。それがこのシミュレーターの出発点だ。

鉄道模型の勾配「パーミル(‰)」とは何か — 第一原理から

勾配 パーミル 計算の基本 — 1000mm進んで何mm登るか

鉄道の勾配は、水平方向に進んだ距離に対して垂直方向にどれだけ登るかの比で表す。日本の鉄道で使う単位が千分率のパーミル(‰)だ。定義はシンプルで、水平に1000進む間に1登れば1‰。単位は問わない——1000m進んで1m登っても、1000mm進んで1mm登っても同じ1‰だ。つまり1000mm(1m)走って55mm登る坂は55‰になる。パーセント(%)が百分率=100分のいくつであるのに対し、パーミルは千分率=1000分のいくつ。鉄道の勾配は道路よりずっと緩いので、%では小数だらけになってしまい、桁を1つ細かくした‰が使われてきた。単位の由来は Wikipedia: パーミル が詳しい。

式で書くとこうなる。

勾配‰   = 高低差h(mm) ÷ 水平距離L(mm) × 1000
勾配%   = 勾配‰ ÷ 10          // 40‰ = 4%
勾配角度° = atan(勾配‰ ÷ 1000) × 180 ÷ π

たとえばTOMIXの立体交差55mmを1400mmで登るなら、55 ÷ 1400 × 1000 ≒ 39.3‰。%に直せば3.93%、角度にするとわずか2.25°だ。

40‰がどれくらいの坂か — 自転車のたとえ

‰の数字だけ見てもピンとこないので、日常の坂に置き換えてみる。40‰=4%は、道路標識でいえば「4%勾配」の坂。自転車で登ると明確に脚に来て、ギアを落としたくなる程度の傾斜だ。100‰=10%になると、自転車では立ち漕ぎでもきつく、車でもエンジンの唸りが変わる急坂になる。角度にすると40‰は2.29°、100‰でも5.71°。図面の上では「ほぼ平ら」に見えるのが落とし穴で、見た目の緩さと登坂の負荷はまったく別物なのだ。

Nゲージ 勾配の限界 — 実物の基準と模型の基準

実物の鉄道では、幹線の最急勾配はおおむね25‰が目安とされる。歴史的な急勾配として有名なのが碓氷峠の66.7‰で、粘着運転では登れずアプト式ラックレールが使われた時代がある。粘着式(レールと車輪の摩擦だけで登る方式)の普通鉄道で日本一急なのは箱根登山鉄道の80‰だ。つまり実物の世界では、25‰で「幹線としては急」、66.7‰は「特殊装備が要るレベル」ということになる。

模型はどうか。Nゲージの動力車はトラクションタイヤ(ゴムタイヤ)を履き、実物より軸重の比率も有利なので、実物よりはるかに急な勾配を登れる。それでも一般に実用限界は30〜50‰程度とされ、KATOは公式に最大勾配4%(40‰)を推奨している。TOMIXの勾配橋脚をS280の半分=140mmごとに5mm上げる標準的な使い方をすると約36‰で、これもちょうど推奨域に収まる設計だ。本ツールの難易度判定はこの体系をそのまま帯にしている——25‰以下は実物幹線級で「余裕」、40‰以下はメーカー推奨域の「標準」、60‰までは編成次第の「急勾配」、それを超えると「非推奨」。数字の根拠が実物とメーカー基準の両方につながっているから、判定を設計の物差しとして使える。

レイアウト設計での重要性 — 勾配を甘く見ると何が起きるか

勾配の見積もりを誤ったときに起きることは、大きく4つある。

まず登れない。動力車が空転して勾配の途中で止まる。牽引両数を減らせば登れることもあるが、「フル編成で走らせたい」という当初の目的は崩れる。次に連結器外れ。勾配の始まりと終わりの折れ点で車両が突き上げられ、アーノルドカプラーが外れて編成が分断される。三つ目は下り勾配の暴走気味な挙動。急な下りでは自重で加速し、カーブ進入で脱線するリスクが上がる。そして四つ目が一番痛い、設計のやり直しだ。立体交差の助走距離が足りないと分かるのは、たいていボードや橋脚を買った後。冒頭で書いたとおり、TOMIXの55mmをKATO推奨の4%で登るには片側1375mm必要で、900×600mmボードには直線では物理的に収まらない。登って下りるなら助走は両側に要るから、必要距離は倍の約2.75mになる。この数字を知ってから設計するのと、知らずに設計するのとでは、手戻りのコストがまるで違う。

メーカーの基準も押さえておきたい。KATOは複線プランの案内で最大勾配4%を推奨しており、これが40‰=本ツールの「標準」帯の上限だ。TOMIXのPC勾配橋脚は10〜55mmを5mm刻みでカバーするセット構成で、140mmごとに1段(5mm)上げる標準配置が約36‰。つまり両社とも「40‰前後まで」を実用域として製品を設計している。この推奨域に収まっているかどうかが、走行の安定性とレイアウトの寿命を分ける実務的な分岐点になる。

勾配シミュレーターが活きる4つのシーン

立体交差レイアウトの設計。「オーバークロスさせたいが助走が収まるか」を、ボードを買う前に判定できる。高低差55mmプリセットと目標勾配の逆算モードで、必要距離をS280本数まで一気に見積もれる。

お座敷運転の橋脚計画。畳の上で勾配橋脚セットを並べるとき、何本のレールで何mm登るかをその場で計算。「S280 5本で55mmは39.3‰、標準域」と分かれば、安心して敷設に入れる。

モジュールレイアウトの高低差設計。規格で決まった接続高さに向けて、自分の担当区間内でどう高度を稼ぐか。区間長から勾配を出して、無理のない縦断計画を立てられる。

中古で買った勾配橋脚セットの検討。説明書なしのジャンク橋脚でも、最大高さと手持ちの直線距離を入れれば勾配と難易度が出る。「この本数で足りるのか、買い足しか」の判断材料になる。

基本の使い方 — 3ステップ

ステップ1: 計算モードを選ぶ。手持ちのスペースで勾配がいくつになるか知りたいなら「寸法 → 勾配」、目標の勾配に収めるには何mm必要かを知りたいなら「目標勾配 → 必要距離」。ボードサイズが決まっている人は前者、これから板を切る人は後者が起点になる。

ステップ2: 高低差を指定する。セレクトからTOMIX複線立体交差(55mm)・KATO橋脚No.5標準(50mm)を選ぶと入力欄に自動セットされる。HOゲージや中間段の高さは、カスタム値を直接入力すればいい。小数もOKだ。

ステップ3: 距離または目標勾配を入れて結果を見る。勾配の‰・%・角度、S280/S248の本数換算、登坂難易度のステータスカードが即座に出る。判定が「標準」以下に収まっているか、必要距離が手持ちのスペースに入るかを確認したら、コピーボタンで結果を控えて買い物メモにそのまま使える。

具体的な使用例・検証データ — 9ケース

実装した計算エンジンに実際の値を入れて確認した9ケースを載せる。‰は小数1桁表示、本数換算はすべて切り上げだ。

寸法 → 勾配モード(ケース1〜4)

ケース1: TOMIX立体交差55mmを1400mmで登る。 入力: 高低差55mm・水平距離1400mm → 結果: 39.3‰(3.93%・角度2.25°)、S280×5本・S248×6本、判定「標準(メーカー推奨域)」。 解釈: 定番の立体交差はS280 5本=1400mmでKATO推奨上限40‰のすぐ内側に収まる。参考表示ではKATO標準50mmなら1272.7mmで足りることも分かる。

ケース2: 同じ55mmを3000mmでゆったり登る。 入力: 高低差55mm・水平距離3000mm → 結果: 18.3‰(1.83%)、S280×11本・S248×13本、判定「余裕(長編成OK)」。 解釈: 実物幹線級の25‰を下回り、長編成でも安定して登れる勾配。スペースに余裕がある大型レイアウトならこの帯を狙いたい。

ケース3: 70mmの高低差を1200mmで。 入力: 高低差70mm・水平距離1200mm → 結果: 58.3‰(5.83%)、判定「急勾配(短編成向け)」。 解釈: 40‰を大きく超え、牽引両数を絞る前提の領域。参考表示によれば、この58.3‰のままなら55mmの高低差は942.9mmで登り切れる——高低差を70mmから55mmに見直せば助走を250mm以上短縮できると分かり、クリアランス再検討の材料になる。

ケース4: 100mmを800mmで無理やり登る。 入力: 高低差100mm・水平距離800mm → 結果: 125‰(12.5%・角度7.13°)、判定「非推奨(登坂困難リスク)」+100‰超の赤警告。 解釈: 箱根登山鉄道の80‰すら超える急勾配。計算値は返るが、一般的なNゲージ動力車では空転・登坂不能のリスクが非常に高い。高低差を減らすか距離を延ばすかの二択だ。

目標勾配 → 必要距離モード(ケース5〜7)

ケース5: 55mmを33‰で登らせたい。 入力: 高低差55mm・目標勾配33‰ → 結果: 必要距離1666.7mm(約1667mm)、S280×6本・S248×7本、判定「標準」。 解釈: TOMIX勾配橋脚の標準約36‰より一段緩い設計。S280換算6本という数字がそのまま買い物リストになる。

ケース6: KATO標準50mmを推奨上限40‰ちょうどで。 入力: 高低差50mm・目標勾配40‰ → 結果: 必要距離1250mm、S280×5本・S248×6本、判定「標準」。 解釈: 40‰ちょうどは境界だが判定は「標準」に入る(境界はすべて下側の帯に入れるルール)。参考表示ではTOMIXの55mmを同じ40‰で登るなら1375mmで、冒頭の数字がここで検算できる。

ケース7: 55mmを上限の100‰で。 入力: 高低差55mm・目標勾配100‰ → 結果: 必要距離550mm、S280×2本・S248×3本、判定「非推奨」。 解釈: たった550mmで登れる計算にはなるが、判定は非推奨。逆算モードは「最短ならここまで詰められるが、やるべきではない」という限界の可視化にも使える。

小数入力と境界値の挙動(ケース8〜9)

ケース8: 中間段の27.5mmを990mmで。 入力: 高低差27.5mm・水平距離990mm → 結果: 27.8‰(2.78%)、判定「標準」。 解釈: 橋脚の中間段のような小数の高低差もそのまま計算できる。プリセット外の値なのでセレクト表示は「カスタム」に切り替わる。参考表示では、この勾配で55mmを登るには1980mm必要と出る。

ケース9: 55mmを2200mmで——25.0‰ちょうど。 入力: 高低差55mm・水平距離2200mm → 結果: 25.0‰ちょうど、S280×8本・S248×9本、判定「余裕」。 解釈: 「余裕」帯の上限ぴったりは下側の帯に入る。境界値の扱いが25‰・40‰・60‰ですべて統一されているので、メーカー推奨の「4%以下」を文字どおり「40‰以下」として判定に使える。

仕組み・アルゴリズム — 千分率の直接計算を選んだ理由

手法比較: 角度経由の三角関数 vs 千分率の直接計算

勾配の計算には2つのアプローチがある。ひとつは角度を先に求めて三角関数で処理する方法。もうひとつは高低差÷水平距離の千分率をそのまま使う方法だ。本ツールは後者を採用した。理由は単純で、鉄道の勾配の定義そのものが「水平距離に対する高低差の比」、つまりtanだからだ。‰を直接計算すれば定義に対して誤差ゼロで、角度は表示用にatanで後から求めればいい。

紛らわしいのは斜面に沿った距離(斜辺)を基準にする流儀(sin基準)で、測量の世界には存在する。ただし40‰程度ならtan基準とsin基準の差は0.1%未満で、レール1本の長さにも満たない。定義への忠実さと分かりやすさを取って、水平距離基準の千分率直接計算に一本化した。

実装の全体像

計算エンジンの中身はこうなっている。

// モード1: 寸法 → 勾配
gradePermil = h / L * 1000;
// モード2: 目標勾配 → 必要距離
requiredRunMm = h / (p / 1000);

// 共通の派生値
gradePercent  = gradePermil / 10;
gradeAngleDeg = Math.atan(gradePermil / 1000) * 180 / Math.PI;
runForTomix55 = 55 / (gradePermil / 1000);  // 55mmを登るのに必要な距離
runForKato50  = 50 / (gradePermil / 1000);  // 50mmを登るのに必要な距離
s280Count = Math.ceil(requiredRunMm / 280); // TOMIX S280本数(切り上げ)
s248Count = Math.ceil(requiredRunMm / 248); // KATO S248本数(切り上げ)

// 難易度判定(境界はすべて ≤ で下側の帯)
if (gradePermil <= 25)      difficulty = "easy";     // 余裕
else if (gradePermil <= 40) difficulty = "standard"; // 標準
else if (gradePermil <= 60) difficulty = "steep";    // 急勾配
else                        difficulty = "severe";   // 非推奨

入力は高低差1〜500mm・水平距離50〜20000mm・目標勾配1〜100‰の範囲でガードし、範囲外はエラーメッセージを返す。レール本数の換算を切り捨てでなく切り上げにしているのは、足りない側に誤差を出さないため——本数は「これだけあれば敷ける」保証値として使えるようにしてある。

計算例: 55mmを1400mmで登るケースを手で追う

ケース1を式のとおりステップで追ってみる。

  1. 勾配: 55 ÷ 1400 × 1000 = 39.285714‰ → 表示は39.3‰
  2. %表記: 39.285714 ÷ 10 = 3.93%
  3. 角度: atan(0.0392857) × 180 ÷ π = 2.25°
  4. S280換算: 1400 ÷ 280 = 5 → 5本ちょうど。S248換算: 1400 ÷ 248 = 5.65 → 切り上げて6本
  5. 判定: 25 < 39.29 ≤ 40 なので「標準(メーカー推奨域)」

電卓でも同じ計算はできるが、‰・%・角度・2社ぶんの本数・判定を毎回この手順で出すのは面倒だ。その5ステップをまとめて肩代わりするのがこのツールになる。

カーブ区間の勾配を扱わない理由

正直に書いておくと、本ツールは勾配の途中にカーブが入る場合の抵抗増を計算しない。実物の鉄道には曲線抵抗の目安式として800 ÷ R(Rは曲線半径m)という換算が確立されているが、これをNゲージのR280やR243にそのまま当てはめて定量化できる根拠となる文献が確認できなかった。裏付けのない係数で「補正済み」の顔をした数字を出すより、直線勾配の正確な値を出した上で「カーブが入るなら1ランク余裕を持たせて」と定性的に注意するほうが誠実だと判断した。勾配中にカーブを含むプランでは、判定が「標準」でも一段緩い設計を心がけてほしい。最終確認は、実車での試運転がいちばん確かだ。

解説ブログ・汎用計算機との違い — Nゲージ勾配計算に特化する意味

「Nゲージ 勾配 計算」で検索して出てくるのは、知恵袋の一問一答か、計算例を1つ2つ載せた解説ブログがほとんど。読めば式は分かるが、自分のボードサイズと橋脚の高さに当てはめて計算し直すのは結局自分の電卓だ。しかも「55mmを40‰で登るには?」という逆算になると、‰を小数に直す一手間で桁を間違えやすい。

汎用の勾配計算機(建築・土木向け)も使えなくはないが、出力は%と角度が中心で、鉄道模型の共通言語であるパーミル(‰)表記が主役になっていない。そして当然、TOMIX S280やKATO S248の本数換算は出ない。

このツールは3つを1画面に統合した。

  • 双方向計算: 「寸法 → 勾配」と「目標勾配 → 必要距離」をセグメントで即切替。‰⇔距離のどちらからでも計算できる
  • 実規格プリセットとレール本数換算: TOMIX複線立体交差55mm・KATO橋脚No.5標準50mmをワンタップ入力。必要距離はS280/S248の本数(切り上げ)で出るから、そのまま買い物リストになる
  • 難易度判定: KATO公式推奨の最大勾配4%(40‰)を根拠にした4段階のStatusCardで、計算結果が「登れる勾配」かを即判断

数字を出すだけでなく「その数字で走るのか」まで答える。ここが解説記事との決定的な違いだ。

豆知識 — 実物の急勾配史と、模型が実物より坂に強い理由

実物の鉄道で25‰は「幹線の最急勾配級」とされる本気の坂だ。ところが日本の鉄道史には、その常識を大きく超える勾配がいくつもある。

最も有名なのが碓氷峠の66.7‰。信越本線の横川〜軽井沢間は、開業時(1893年)にラックレールを噛ませるアプト式で越え、1963年以降は粘着式+補機EF63の協調運転に切り替わり、1997年の新幹線開業まで104年間この急坂に列車を通し続けた。さらに上を行くのが箱根登山鉄道の80‰。ラックレールに頼らない粘着式の普通鉄道としては日本一の急勾配で、1000mm進むごとに80mm登る計算になる。新幹線でも九州新幹線が最大35‰を採用しており、これは整備新幹線の中でも特に急な部類だ。

面白いのは、Nゲージの標準的な勾配(35〜40‰)が実物換算では「碓氷峠の一歩手前」に相当すること。実物なら補機が必要なレベルの坂を、模型の動力車は単機で平然と登る。理由は2つある。第一に、模型は編成全体に対する動力車の重量比が実物よりずっと大きく、粘着重量を稼ぎやすい。第二に、動輪に巻かれたトラクションタイヤ。鉄輪同士の摩擦係数はせいぜい0.2前後だが、ゴムとレールの摩擦はその数倍あり、これが空転の限界を大きく引き上げている。

逆に言えば、トラクションタイヤが劣化・汚損した動力車は「実物並みの登坂力」に落ちる。40‰で急に登らなくなったら、坂ではなくタイヤを疑うのが正解だ。

レイアウト設計のTips

  • 距離は「登り+下り」の合計で見積もる: 立体交差は登った分だけ下ろす必要がある。55mmを40‰で登るなら片側1375mm、往復で約2.8m。ボード上で勾配が占める長さは必要助走距離の2倍と覚えておく
  • 勾配の始点・終点に緩和をつける: 平坦から一気に40‰へ折れ曲がると、連結器の高さがずれて自然解放や脱線の原因になる。始点・終点の1本分だけ勾配を緩めて「縦カーブ」を作ると安定する
  • ボードサイズから逆算するなら「目標勾配 → 必要距離」を先に: 900×600ボードに収まるかを悩む前に、40‰で必要距離を出してしまうのが早い。収まらなければ高低差を下げるか、カーブ区間も勾配に含める設計へ発想を切り替える
  • 登坂力の回復はタイヤ清掃から: 以前登れた勾配で空転し始めたら、トラクションタイヤとレールの清掃が第一。それでもだめならタイヤ交換。勾配を作り直すのは最後の手段でいい
  • TOMIX PC勾配橋脚は5mm刻み(10〜55mm): S280の半分(140mm)ごとに1段上げる標準的な使い方で約36‰。このツールで出した必要距離を140mmで割れば、橋脚を置くピッチの目安になる

よくある質問(FAQ)

「4%」と「40‰」はどっちが正しい表記?

どちらも同じ勾配で、単位が違うだけ。‰(パーミル)は千分率、%(パーセント)は百分率なので、‰ = % × 10 の関係になる(4% = 40‰)。日本の鉄道では実物・模型とも‰表記が標準だが、KATOの公式案内のように%で書かれる場合もある。このツールは‰・%・角度の3表記を同時に表示するので、どの表記で書かれた資料とも突き合わせられる。

HOゲージやZゲージでも使える?

使える。勾配の計算式 h ÷ L × 1000 はゲージに依存しないので、高低差をカスタム入力すればHOでもZでもそのまま計算できる。プリセット(TOMIX 55mm・KATO 50mm)とS280/S248の本数換算がNゲージ向けというだけだ。ただし難易度判定の帯はNゲージの一般的な動力性能を前提にしているので、HOの重量級機関車や小型Z動力では実際の登坂力が前後する。1ランク余裕を持って読んでほしい。

カーブを含む勾配はどう見積もればいい?

カーブ区間では車輪とレールの摩擦が増え、同じ勾配でも実質的な負荷が上がる。実物には曲線抵抗の推定式(800/R)があるが、模型に定量転用できる換算式は文献で確認できなかったため、このツールは直線勾配のみを計算対象にしている。実用上は「カーブを含む勾配は判定を1ランク厳しく読む」のが目安。standard(25〜40‰)と出たらsteep相当と考え、可能なら35‰以下に収めるか、試運転で確認してから固定するのが安全だ。

登坂難易度の「40‰」という境界には根拠がある?

ある。KATOが公式に案内している推奨最大勾配が4%(= 40‰)で、TOMIX勾配橋脚の標準的な使い方(140mmごとに5mm上昇)も約36‰とこの帯に収まる。つまり40‰以下は「メーカーが製品設計の前提にしている勾配」だ。一方、40‰を超えると牽引両数や動力車の個体差がシビアに効き始め、60‰超は空転・登坂不能のリスクが大きい。この実態を4段階の帯(≤25‰ 余裕 / 25〜40‰ 標準 / 40〜60‰ 急勾配 / >60‰ 非推奨)に落とし込んでいる。

入力したレイアウトの寸法データはどこかに保存される?

どこにも保存されない。計算はすべてブラウザ内(クライアントサイド)で完結していて、入力値がサーバーへ送信されることはない。ページを離れれば入力値は消えるので、設計を残したい場合は「結果をコピー」ボタンでクリップボードに取り、メモアプリやレイアウト図面に貼り付けておくのがおすすめだ。

まとめ — 勾配設計は「高さ」ではなく「距離の確保」から始まる

立体交差の成否を決めるのは橋脚の高さではなく、その高さに至るまでの助走距離だ。高低差と距離を入れれば‰・%・角度と難易度判定が出て、目標勾配からはS280/S248の本数まで逆算できる。ボードに線路を仮置きする前に、まず数字で成立を確かめてほしい。

レイアウトの縮尺検討には模型スケール換算ツールも合わせてどうぞ。実物の建物や車両の寸法を1/150に落とすとき、勾配計算とセットで使うと情景の設計が一気に進む。

ツールの改善要望や「この橋脚のプリセットも欲しい」といったリクエストはお問い合わせページから。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。Nゲージの立体交差で助走距離を目分量にして空転させて以来、勾配は‰と距離の両方で確かめてから線路を買う派だ。

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