遊星歯車減速��計算

サン・プラネット・リングギヤの歯数から減速比・効率・トルク配分を自動算出。1段/2段/差動の3方式対応

サン・プラネット・リングギヤの歯数から、遊星歯車の減速比・伝達効率・トルク配分を算出する。固定要素の切替で3方式に対応。

歯数

条件: Zr = Zs + 2×Zp = 70

動力条件(任意)

機構図

固定S:20P:25P:25P:25R:70入力出力

噛み合い条件

OK

Zr = Zs+2Zp (70)

均等配置条件

OK

(Zs+Zr) % 3 = 0

計算結果

伝達効率96.9 %
高効率

減速比

4.50 :1

回転方向

同方向

サンと同じ向き

出力回転数

333.3 rpm

速度比

1 / 4.50

入力トルク

6.37 N·m

出力トルク

27.76 N·m

本ツールは遊星歯車の運動学的計算(速度・トルク)を行う。歯車強度・寿命・軸受荷重等の詳細設計には別途検討が必要。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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同じモーターなのにトルクが4倍になる――遊星歯車の仕組みを知っているか

小型モーターの出力トルクが足りない。だけど大きいモーターに変えるとスペースも重量もコストも膨らむ。そんなとき、歯車の組み合わせひとつで出力トルクを数倍に引き上げてくれるのが遊星歯車機構(プラネタリギヤ)だ。

サンギヤ・プラネットギヤ・リングギヤという3種の歯車が同一軸線上で噛み合い、どれを固定するかで減速比が変わる。自動車のオートマチックトランスミッション、産業用ロボットの関節、風力発電のギヤボックス――身近なところから巨大設備まで、この機構は至るところで使われている。

ところが、歯数を決めて減速比をさっと出そうとすると意外に手間がかかる。Zs・Zp・Zr の3変数に加えて噛み合い条件や均等配置条件まで確認しなければならない。このツールは、歯数を入力するだけで減速比・効率・トルクを一括算出し、条件チェックまで自動で行う。


なぜ「遊星歯車 減速比 計算」ツールを作ったのか

きっかけは、自分自身が遊星歯車の歯数を決めるとき毎回同じ計算を手で繰り返していたことだった。

Excel で =1+Zr/Zs と打てば減速比は出る。でも、その歯数の組み合わせが噛み合い条件 Zr = Zs + 2*Zp を満たすか? プラネットを3個配置できるか? 効率はどのくらい落ちるか? トルクは何 N・m になるか?――これらを1つのシートにまとめると、入力ミスの温床になる。しかも固定要素をリングからサンに切り替えると式が変わるから、分岐も必要になる。

既存のオンライン計算機もいくつか試した。しかし、リング固定にしか対応していないものが多い。サン固定や差動まで切り替えられるツールはほとんど見つからなかったし、噛み合い条件と均等配置条件を同時にチェックしてくれるものは皆無だった。

「固定要素を選ぶ → 歯数を入れる → 減速比もトルクも条件チェックも一発で出る」。この当たり前の体験がなかったから、自分で作ることにした。もともと歯車モジュール計算ツールを公開していたので、その延長線上で遊星歯車専用の計算機を仕上げた形だ。歯数の試行錯誤を高速で回したい設計者に使ってほしい。


遊星歯車機構とは何か――サン・プラネット・リング・キャリアの4要素

遊星歯車 基本構造

遊星歯車(エピサイクリック歯車とも呼ぶ)は、中心に配置されたサンギヤ、その周囲を自転しながら公転するプラネットギヤ、外周の内歯車であるリングギヤ(インターナルギヤ)、そしてプラネットギヤの軸を保持する**キャリア(腕)**の4要素で構成される。

太陽系になぞらえた名前のとおり、サンギヤが太陽、プラネットギヤが惑星、リングギヤが外縁の軌道に対応する。プラネットギヤは自らの軸で自転しながらサンギヤの周りを公転する。この「自転+公転」の二重回転が、コンパクトな機構で大きな減速比を生み出す秘密だ。

たとえばマヨネーズのキャップを回す場面を想像してみて。キャップ(リングギヤ)を固定した状態で、中心の棒(サンギヤ)を速く回すと、棒に押された歯車(プラネットギヤ)がゆっくり公転する。この公転がキャリアの出力回転になる。速い回転が遅い回転に変換されるわけだ。

遊星歯車 減速比 求め方(Willis の式)

遊星歯車の速度関係は Willis の式(基礎速度式)で表される。

ωs × Zs + ωr × Zr = ωc × (Zs + Zr)

ここで ωs, ωr, ωc はそれぞれサンギヤ・リングギヤ・キャリアの角速度、Zs, Zr は歯数だ。

固定要素によって減速比が決まる:

  • リングギヤ固定(最も一般的): ωr = 0 とすると、減速比 i = 1 + Zr/Zs。入力はサンギヤ、出力はキャリア。典型的には i = 3〜10 程度
  • サンギヤ固定: ωs = 0 とすると、減速比 i = 1 + Zs/Zr。入力はリングギヤ、出力はキャリア。i = 1.1〜1.5 程度の低減速
  • 差動(2入力1出力): サンとリングの両方に回転を与え、キャリアから合成出力を得る。自動車のディファレンシャルギヤがこの方式

遊星歯車 噛み合い条件

3つの歯車が物理的に噛み合うには、次の幾何学的条件が必要だ:

Zr = Zs + 2 × Zp

これはモジュール(歯の大きさ)が全歯車で等しいことが前提。この条件を満たさない歯数の組み合わせは実機として成立しない。

さらに、プラネットギヤを n 個等間隔に配置するには均等配置条件も満たす必要がある:

(Zs + Zr) mod n = 0

この条件が不成立だとプラネットの位相をずらす必要があり、設計が複雑になる。

参考: 遊星歯車機構 - Wikipedia

平歯車との違い

通常の平歯車による減速は、2枚の歯車を1段噛み合わせて最大 1:5〜1:7 程度。それ以上の減速比が欲しければ多段にするしかなく、スペースが肥大化する。遊星歯車なら同一軸線上で 1:3〜1:10 の減速が1段で得られ、トルクもプラネットの本数で分散されるため歯車への負荷が小さい。このコンパクト高トルクが最大の利点だ。


なぜ遊星歯車の減速比・歯数設計が実務で重要なのか

減速比が設計全体を左右する

遊星歯車の減速比は、モーター選定・軸設計・筐体サイズ・コストに直結する。たとえば減速比 4.5 と 7.0 では出力トルクが1.5倍以上変わる。同じモーターでもトルクが変わるから、減速比の選び方ひとつで「モーターを1サイズ小さくできた」という成果が生まれることもある。

歯数ミスが引き起こすトラブル

噛み合い条件 Zr = Zs + 2×Zp を見落として試作に進んでしまうと、歯車が物理的に組めない。均等配置条件が不成立のまま製作すると、振動や偏荷重が発生して軸受寿命が大幅に短くなる。試作段階での手戻りは数十万〜数百万円のコストインパクトになる。

効率の見積もりが甘いと熱問題に直結

遊星歯車の伝達効率は一般に 95〜98% と高いが、それでも入力 10 kW なら 200〜500 W が熱として放散される。効率の見積もりをサボると、減速機ケースの放熱設計が不足して油温上昇 → シール劣化 → オイル漏れという連鎖が起きる。特にロボット関節のような密閉空間では深刻だ。

規格・設計指針

歯車設計の基本は JIS B 1701-1(円筒歯車のモジュール)、JIS B 1702-1(精度等級)に規定されている。遊星歯車の歯数選定は 小原歯車工業の技術資料 や AGMA 6123(遊星歯車装置の設計)が実務でよく参照される。これらの規格と手計算を照合する場面で、本ツールのような計算機が役立つ。


遊星歯車 減速比計算が活躍する場面

減速機の選定・仕様検討

カタログに載っている減速機の歯数から減速比と効率を逆算し、自分の要求仕様に合うか素早く判定する。複数の歯数パターンを比較するとき、1ケースずつ手計算するのは非効率だ。

ロボット関節の歯車設計

協働ロボットやサービスロボットの関節部には遊星歯車が多用される。コンパクトさと高トルクが同時に求められるこの用途では、歯数をパラメトリックに変えながら減速比とトルクの最適点を探る作業が頻繁に発生する。

教育・学習

大学の機械設計演習や技術士試験の勉強で、遊星歯車の速度線図を理解するのにツールを使って数値を確かめると理解が早い。Willis の式に数値を代入して結果を即座に見られるのは学習効率を大幅に高めてくれる。

自動車トランスミッション解析

ATやHVのパワートレインには多段遊星歯車が使われる。各段の減速比・効率・トルク配分をざっくり見積もりたいとき、まず1段ずつの計算を回すのが定石だ。


基本の使い方 3ステップ

ステップ1: 固定要素を選ぶ

画面上部のセグメントボタンで「リング固定」「サン固定」「差動」のいずれかを選ぶ。一般的な減速用途なら「リング固定」を選べばOK。

ステップ2: 歯数を入力する

サンギヤ(Zs)・プラネットギヤ(Zp)・リングギヤ(Zr)の歯数と、プラネットギヤの個数を入力する。噛み合い条件と均等配置条件がリアルタイムでチェックされ、NG ならステータスカードに警告が出る。必要に応じて入力動力(kW)と回転数(rpm)も入れると、トルクが計算される。

ステップ3: 結果を確認する

減速比・回転方向・伝達効率・出力回転数・入出力トルクがグリッドに表示される。「結果をコピー」ボタンでテキストをクリップボードに取り込み、設計メモやExcelに貼り付けられる。


具体的な使用例――6ケースで減速比・効率・トルクを検証

ケース1: リング固定 標準減速(Zs=20, Zp=25, Zr=70)

項目
固定要素リングギヤ固定
歯数 Zs/Zp/Zr20 / 25 / 70
プラネット数3
入力1.0 kW, 1500 rpm
減速比4.50
伝達効率96.9%
出力回転数333.3 rpm
入力トルク6.37 N・m
出力トルク27.76 N・m

最もポピュラーな構成。1.0 kW のモーターで約 28 N・m の出力トルクが得られる。噛み合い条件 70 = 20 + 2×25 を満たし、均等配置条件 (20+70) mod 3 = 0 もクリア。教科書的なバランスの良い歯数だ。

ケース2: サン固定 低減速(Zs=30, Zp=20, Zr=70)

項目
固定要素サンギヤ固定
歯数 Zs/Zp/Zr30 / 20 / 70
プラネット数3
入力1.0 kW, 1500 rpm
減速比1.43
伝達効率98.8%
出力回転数1050.0 rpm
入力トルク6.37 N・m
出力トルク8.99 N・m

サン固定は減速比が小さいため、回転数をあまり落とさずにトルクを微増させたい場面で使う。効率 98.8% と非常に高い。コンベアの速度微調整や、既存のモーター回転数を少しだけ落としたいケースに向く。

ケース3: リング固定 高減速比(Zs=12, Zp=34, Zr=80)

項目
固定要素リングギヤ固定
歯数 Zs/Zp/Zr12 / 34 / 80
プラネット数4
入力0.5 kW, 3000 rpm
減速比7.67
伝達効率96.6%
出力回転数391.3 rpm
入力トルク1.59 N・m
出力トルク11.78 N・m

小型高速モーター(3000 rpm)を大きく減速するパターン。減速比 7.67 は1段遊星歯車としてはかなり大きい。サンギヤ歯数 12 はアンダーカット限界に近いので、転位歯車の検討が推奨される。噛み合い条件 80 = 12 + 2×34 を満たし、均等配置条件 (12+80) mod 4 = 0 も成立する。

ケース4: リング固定 中間設計(Zs=18, Zp=21, Zr=60)

項目
固定要素リングギヤ固定
歯数 Zs/Zp/Zr18 / 21 / 60
プラネット数3
入力2.0 kW, 1000 rpm
減速比4.33
伝達効率97.0%
出力回転数230.8 rpm
入力トルク19.10 N・m
出力トルク80.24 N・m

2 kW クラスのサーボモーターに遊星減速機を組み合わせる想定。出力トルク約 80 N・m はAGV(無人搬送車)の駆動輪に十分な値だ。噛み合い条件 60 = 18 + 2×21 を満たし、(18+60) mod 3 = 0 で均等配置もOK。

ケース5: サン固定 微減速(Zs=18, Zp=26, Zr=70)

項目
固定要素サンギヤ固定
歯数 Zs/Zp/Zr18 / 26 / 70
プラネット数4
入力3.0 kW, 900 rpm
減速比1.26
伝達効率99.2%
出力回転数715.8 rpm
入力トルク31.83 N・m
出力トルク39.69 N・m

減速比 1.26 というほぼ直結に近い微減速。効率 99.2% はほとんど損失がない。既存ラインの搬送速度を2割ほど落としたいが、モーターは変えたくない――そんな改造案件でサン固定が選択肢に入る。噛み合い条件 70 = 18 + 2×26 を満たす。均等配置条件 (18+70) mod 4 = 0 も成立。

ケース6: リング固定 高減速・5プラネット(Zs=15, Zp=30, Zr=75)

項目
固定要素リングギヤ固定
歯数 Zs/Zp/Zr15 / 30 / 75
プラネット数5
入力1.5 kW, 1800 rpm
減速比6.00
伝達効率96.7%
出力回転数300.0 rpm
入力トルク7.96 N・m
出力トルク46.18 N・m

プラネット5個配置により、1個あたりの歯面荷重を低減した高減速設計。噛み合い条件 75 = 15 + 2×30、均等配置条件 (15+75) mod 5 = 0 と両方クリア。5プラネットは高トルク・高寿命が求められる産業用減速機で採用される。風力発電のヨー駆動やクレーン旋回などが代表的な用途だ。


仕組み・アルゴリズム――Willis の式と Muller の効率近似

候補手法の比較

遊星歯車の減速比を算出する手法は大きく2つある:

  1. 速度線図法(Willis の式): 各要素の角速度を代数的に関係づける。最も広く使われる解法で、教科書やカタログにも記載がある
  2. トレイン値法(Tabular method): 歯車列全体を「固定腕→回転腕」の変換で整理する。多段の場合に見通しが良いが、1段計算ではオーバースペック

本ツールは Willis の式 を採用した。1段遊星歯車の3方式(リング固定/サン固定/差動)をシンプルに計算でき、実装も明快だからだ。

減速比の計算フロー

Willis の基礎式:
  ωs × Zs + ωr × Zr = ωc × (Zs + Zr)

リング固定(ωr = 0):
  i = ωs / ωc = (Zs + Zr) / Zs = 1 + Zr/Zs

サン固定(ωs = 0):
  i = ωr / ωc = (Zs + Zr) / Zr = 1 + Zs/Zr

差動(全要素回転):
  ωc = (ωs × Zs + ωr × Zr) / (Zs + Zr)

効率の Muller 近似

伝達効率の推定には Muller の近似式 を使う。1段噛み合い効率 η0 = 0.98(標準的な平歯車の値)を基準に、固定要素に応じた損失配分を計算する:

リング固定:
  η = 1 - (1 - η0^2) × Zr / (Zs + Zr)

サン固定:
  η = 1 - (1 - η0^2) × Zs / (Zs + Zr)

※ η0 = 0.98 → 1 - η0^2 = 0.0396

リング固定では Zr/(Zs+Zr) が損失の重み係数になる。リングギヤの歯数比率が大きいほど損失が増える(つまり高減速比ほど効率が下がる)。サン固定は Zs が小さいため損失が少なく、効率が非常に高くなる。

他の手法として Radzimovsky の効率式やISO/TR 13593もあるが、1段遊星の概算には Muller 近似で十分な精度が得られる。

トルクの算出

入力トルク: Tin = P × 9549 / n_in  [N・m]
  P: 入力動力 [kW], n_in: 入力回転数 [rpm]

出力トルク: Tout = Tin × i × η
  i: 減速比, η: 伝達効率

計算例(ケース1 の数値で確認)

条件: Zs=20, Zr=70, リング固定, P=1.0kW, n=1500rpm

1) 減速比:  i = 1 + 70/20 = 4.50
2) 効率:    η = 1 - 0.0396 × 70/(20+70)
              = 1 - 0.0396 × 0.7778
              = 1 - 0.0308 = 0.969 → 96.9%
3) 入力トルク: Tin = 1.0 × 9549 / 1500 = 6.37 N・m
4) 出力トルク: Tout = 6.37 × 4.50 × 0.969 = 27.76 N・m
5) 出力回転数: n_out = 1500 / 4.50 = 333.3 rpm

噛み合い条件と均等配置条件のチェック

噛み合い条件: Zr = Zs + 2 × Zp
  → 70 = 20 + 2 × 25 = 70  ✓

均等配置条件: (Zs + Zr) mod n = 0
  → (20 + 70) mod 3 = 90 mod 3 = 0  ✓

条件不成立の場合は計算を中止せず、StatusCard で警告を表示する設計としている。実務では噛み合い条件を厳密に満たさない歯数でも転位歯車で対応するケースがあるためだ。


遊星歯車計算ツール 既存との決定的な違い

ここでは他のオンライン計算ツールやExcel自作シートと比較して、本ツールがどこで差をつけているかを整理する。

1. 3方式をワンタップで切替

リングギヤ固定・サンギヤ固定・差動の3方式をセグメントボタンで即座に切り替えられる。同じ歯数構成でも固定要素を変えるだけで減速比が4.5から1.43に変わる、といった比較が数秒で完了する。既存ツールの多くは「リング固定」前提で、サン固定や差動をカバーしていない。

2. 噛み合い条件と均等配置条件の自動チェック

歯数を入力した瞬間に Zr = Zs + 2Zp の噛み合い条件と (Zs + Zr) % N = 0 の均等配置条件をリアルタイム判定。StatusCardで OK/NG が一目でわかるため、成立しない歯数の組み合わせに気づかないまま設計を進めるリスクがない。Excelで自作すると、この条件チェックを組み込み忘れがちだ。

3. トルク・効率まで一気通貫

入力動力と回転数を入れれば、Muller近似による伝達効率の推定、入出力トルクの算出までワンストップで完結する。減速比だけでなく「このモーターで出力何 N-m 出るのか」まで確認できるのは、減速機選定の実務で大きな差になる。


遊星歯車にまつわる豆知識

2000年前のプラネタリギヤ ― アンティキティラの機械

遊星歯車機構の歴史は驚くほど古い。1901年にギリシャ沖の沈没船から引き揚げられたアンティキティラの機械は、紀元前150-100年頃に製作された天体運行計算機。内部には遊星歯車と思われる差動機構が組み込まれており、太陽と月の運動を合成して日食・月食の周期を予測していたと考えられている。現代のAT(自動変速機)と同じ原理が、2000年以上前に天文学のために使われていたというのは感慨深い。

自動車ATの正体は遊星歯車セットの組み合わせ

トルクコンバーター式ATの中身は、実は2-4組の遊星歯車セットとクラッチ・ブレーキの組み合わせだ。各ギヤ段で「どの要素を固定し、どの要素を入力にするか」を切り替えることで、1速から6速(あるいは10速)までの変速を実現している。たとえばアイシンAWの6速ATでは、3組の遊星歯車セットと5つのクラッチ/ブレーキで全段を構成する。このツールで「リング固定 → サン固定」と切り替えたときの減速比の変化を見れば、AT内部で何が起きているかのイメージが掴めるはずだ。

風力発電のギアボックス問題

風力発電機のナセル内部にも遊星歯車式増速機が使われている。ブレードの回転数(10-20 rpm程度)を発電機に必要な1000-1500 rpmまで増速するため、2-3段の遊星歯車を直列に配置する。ただし、風荷重の変動による衝撃トルクがギアボックスの寿命を縮める原因となり、近年はダイレクトドライブ(ギアレス)方式への移行も進んでいる。遊星歯車の効率と信頼性のバランスは、再生可能エネルギー分野でも重要な設計課題だ。


遊星歯車 歯数選定のTips

1. まずリングギヤの歯数から決める

リングギヤは外径を直接決定する要素。搭載スペースの制約からリングギヤの歯数上限が決まることが多い。Zr を先に固定し、目標減速比から Zs = Zr / (i - 1) で逆算、Zp = (Zr - Zs) / 2 で求めるのが効率的だ。

2. プラネット数は3が無難、高トルクなら4-5

プラネット数を増やすと荷重分担が改善されて各歯の負荷が下がるが、均等配置条件 (Zs + Zr) % N = 0 を満たす歯数の組み合わせが限られてくる。まず N=3 で検討し、強度が不足する場合に N=4 や N=5 を試すのが実務的な手順だ。

3. 減速比10以上は2段構成を検討する

1段の遊星歯車で i > 10 を狙うとサンギヤが極端に小さくなり、歯底切下げ(アンダーカット)や軸剛性の問題が出る。i = 4-5 の遊星歯車を2段直列にすれば、i = 16-25 がコンパクトに実現できる。

4. 噛み合い条件が成立しない場合の調整法

Zr = Zs + 2Zp が成立しないとき、最も簡単な調整は Zp を 1 ずつ増減してみること。Zp を変えても減速比(Zr/Zs で決まる)は変わらないので、目標減速比を維持したまま噛み合い条件を満たせる。


よくある質問(遊星歯車減速比計算)

ウォルフロム機構(不思議遊星歯車)には対応している?

現時点では未対応だ。ウォルフロム機構は2つのリングギヤ(歯数がわずかに異なる内歯車)を使い、1段で i = 50-200 の超高減速比を実現する特殊な遊星歯車機構。通常の遊星歯車とは計算式が異なるため、将来的に別モードとして追加を検討している。

歯車の強度計算もできる?

このツールは運動学(速度・トルク・効率)に特化しており、歯面強度や歯元強度の計算は含まない。歯車強度の検討には 歯車強度計算ツール を併用してほしい。このツールで求めたトルク値をそのまま強度計算の入力に使えるので、セットで使うのがおすすめだ。

2段遊星歯車の直列計算はできる?

現在は1段のみの対応だ。2段直列の場合は、1段目と2段目をそれぞれ個別に計算し、減速比は i_total = i_1 x i_2、効率は eta_total = eta_1 x eta_2 で求めればよい。たとえば1段目 i=4.5(eta=96.9%)、2段目 i=4.5(eta=96.9%)なら、総減速比 20.25、総効率 93.9% となる。

入力した歯数やパラメータはサーバーに送信される?

一切送信されない。すべての計算はブラウザ上のJavaScriptで完結しており、サーバーとの通信は発生しない。入力データが外部に渡ることはないので、開発中の製品の歯数情報を入力しても問題ない。

バックラッシュの計算には対応している?

バックラッシュ(歯車間の遊び)の定量計算は含んでいない。バックラッシュはモジュール・圧力角・中心距離公差・歯厚公差など多くのパラメータに依存するため、このツールの運動学的な範囲を超える。JIS B 1702 のバックラッシュ規格を参照し、歯車メーカーのカタログ値と照合するのが実務的だ。


まとめ

遊星歯車の減速比計算は、歯数の組み合わせ・固定要素の選択・噛み合い条件の検証が絡み合う、地味に手間のかかる作業だ。このツールを使えば、3方式の切替から効率・トルクの算出、条件チェックまでをブラウザ上で一気に完結できる。

歯車設計の前後工程もカバーしておきたいなら、歯車モジュール計算でモジュール・歯数の基本寸法を確認し、歯車強度計算で歯面・歯元の安全率を検証、減速機構の総合計算で多段構成の全体像を把握する ── という流れがおすすめだ。

不具合や機能リクエストがあれば、お問い合わせページから気軽に連絡してほしい。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。遊星歯車の歯数選定でExcelの条件分岐を何度も壊した経験から、3方式ワンタップ切替の計算ツールを作った開発者。

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