カムフォロアは無傷、傷んだのはカムのほうだった
カムフォロアを選ぶとき、カタログの許容荷重と見比べて「よし、外輪は持つ」と安心する。ところが数か月後に装置を開けてみると、フォロア自体はきれいなまま、相手の平面カムに細い筋状の圧痕が並び、ところどころ薄皮がめくれたように剥がれている。こういう経験、機械設計をしていると一度は通る道だと思う。
カタログの定格荷重は、フォロア側の軸受としての値だ。相手の軌道については「トラック負荷容量」の欄を設けているメーカーもあるが、これは相手が一定の強さの鋼であることを前提にした値で(THK の解説は引張強さ約1.2kN/mm²の鋼を想定し、ほかの硬さは係数で読み替える)、生材のレールや調質だけの鋼板、高周波焼入れのカムにそのまま当てはまるわけではない。外輪の定格荷重だけを見て安心すると、相手の面の耐力は検討から抜け落ちる。
しかも傷み方が厄介だ。面圧が許容を超えたときの壊れ方は、表面がいきなり削れるのではなく、表面から少し潜った場所でせん断応力が山になり、そこから疲労き裂が育って表面を押し上げるように剥がれる。硬化層がその山より浅ければ、柔らかい心部が先に降伏する。表面を見て「まだ平気そう」と判断しているうちに、中では壊れ始めていることがある。
このページは、球と円柱の接触についてヘルツの式で最大面圧と接触幅を出し、表面下の最大せん断応力の大きさと深さまでを一続きで計算するツールだ。2つの材料それぞれについて許容面圧と比べ、どちらが先に効くかまで示す。
面圧を出したあとで手が止まる——作った理由
ヘルツの式自体は材料力学の教科書や機械設計便覧に必ず載っている。それでも毎回の検討で手が止まった理由は、大きく3つある。
1つ目は、式が場面ごとに散らばっていること。球と平面の式は見つかっても、球面座のように相手が包み込む凹の形、鋼のローラと樹脂の平面のようにポアソン比が違う組合せ、ころの長さ方向の扱いは、それぞれ別のページや別の本にある。等価曲率半径の凹を負で入れる、という一行を探すだけで時間を使う。
2つ目は、面圧を出しても「何と比べればいいか」で止まること。許容面圧は歯車の規格(JGMA 402-01 の許容ヘルツ応力)と転がり軸受の規格(JIS B 1518・JIS B 1519)にばらばらに書かれていて、しかも静的に押しつけるだけの基準と、転がりで何度も繰り返す基準とで値が大きく違う。軸受鋼なら静的が 4,200MPa、繰返しの疲労限の目安が 1,500MPa で、3倍近い開きがある。鋼球 φ10 を焼入れ平面に 500N で押すと最大面圧は 3,686MPa になり、静的なら許容内、繰返しなら完全にアウトだ。どちらの基準で見るかを決めないまま「面圧は 3,686MPa でした」と報告しても、判断材料にならない。
3つ目は、表面下のせん断応力の定数が ν = 0.3 専用であること。「最大せん断応力は 0.31p0、深さ 0.48a」という覚え方は便利だが、ポアソン比 0.3 の鋼どうしでしか正しくない。アルミ(ν = 0.33)どうしなら深さは 0.4908a に、ν = 0.29 の材料と 0.33 の材料を当てれば、同じ接触でも片側 0.4775a、反対側 0.4908a と食い違う。硬化層の深さを決めるのにこの差は無視できない。
そしてもう1つ、冒頭のカムの話がある。φ19 の軸受鋼の外輪と S45C 高周波焼入れのカムを当てると、外輪の許容面圧 1,500MPa に対してカムは 882.6MPa しかない。許容面圧を決めるのは相手側で、外輪のカタログ値だけ見ていると気づけない。
面圧の計算、表面下の応力の深さ、2つの材料それぞれの許容面圧との比較、基準の切替。これを1画面で、根拠の値と一緒に出せる道具が欲しかった。
ヘルツの接触応力と表面下のせん断応力
ヘルツの接触応力 とは
硬い球を硬い平面に押しつけると、理屈の上では1点でしか触れていないはずなのに、実際には両方がわずかに凹んで小さな円形の接触面ができる。円柱を平面に押しつけた場合は、長さ方向に細い帯状の接触面ができる。前者を点接触、後者を線接触と呼ぶ。
この接触面の大きさと、そこにかかる圧力(面圧)の分布を、弾性体の理論から閉じた式で求めたのがヘルツの接触理論だ。面圧は接触面の中で一様ではなく、中央で最大、縁でゼロになる半楕円の山形に分布する。この山の頂上が最大面圧 p0で、強度の検討で比べるのはふつうこの値になる。
ヘルツの理論は次の前提で成り立っている。
- 2つの物体はどちらも弾性範囲にある
- 接触面の大きさは、物体の曲率半径に比べて十分小さい
- 表面はなめらかで、摩擦はない
2つ目の前提は見落とされやすい。球面座のように「ほぼ同じ径の凹で受ける」と接触面が大きく広がり、前提から外れる。このツールでは接触半径(半幅)が曲率半径の1割を超えたら警告を出す。
合成ヤング率と等価曲率半径
2つの物体の材料と形の違いは、それぞれ1つの量にまとめられる。
合成ヤング率 1/E* = (1 − ν1²)/E1 + (1 − ν2²)/E2
等価曲率半径 1/R' = 2/D1 + 1/R2
1/R2 = 0(平面)、+2/D2(凸の球・円柱)、−2/D2(凹の座・穴)
E* は「2つの物体を、変形の総量が同じになる1つの物体に置き換えたときの硬さ」、R' は「2つの曲面を、平面に当たる1つの曲面に置き換えたときの半径」だ。凹の相手は曲率の向きが逆なので負で入れる。球面座や穴のように相手が包み込む形では、1/R' が引き算になって R' が大きく伸びる。これが「凹で受けると面圧が下がる」理由そのものだ。
ヘルツの式 面圧 計算
E* と R' が決まれば、接触の大きさと面圧は次の式で出る(F は荷重、L は線接触の長さ)。
点接触(球)
接触半径 a = (3·F·R' / (4·E*))^(1/3)
最大面圧 p0 = 3F / (2π·a²)
平均面圧 pm = F / (π·a²) = (2/3)·p0
接近量 δ = a² / R'
線接触(円柱)
接触半幅 b = √(4·F·R' / (π·L·E*))
最大面圧 p0 = 2F / (π·b·L)
平均面圧 pm = F / (2b·L) = (π/4)·p0
接近量 δ は、2つの物体の中心どうしが押しつけで近づく量だ。線接触では、物体の全体の寸法や支え方で変わるため、ヘルツの式だけでは決まらない。
ここで大事なのは、荷重を増やしても面圧は比例して増えないことだ。荷重を増やすと接触面も一緒に広がり、増えた力を広い面で受け止める。点接触では a が荷重の1/3乗で広がるので、面積は2/3乗、面圧は 1 − 2/3 = 1/3乗でしか増えない。線接触では b が荷重の1/2乗で広がるので、面圧も1/2乗になる。荷重を2倍にしても、面圧は点接触で 2^(1/3) ≒ 1.26倍、線接触で √2 ≒ 1.41倍にとどまる。
逆に言えば、面圧を下げたくて荷重を減らすのは効率が悪い。曲率半径・接触長さ・材料を変えるほうが、たいていは近道になる。
最大せん断応力 深さ
接触面の真下の応力を、表面から深さ方向に追っていく。対称軸の上では、深さ z を a(線接触は b)で割った ζ を使って次のように書ける(p0 で割った値、圧縮が負)。
点接触(ζ = z/a)
σz/p0 = −1 / (1 + ζ²)
σr/p0 = −(1 + ν)·(1 − ζ·atan(1/ζ)) + 1 / (2(1 + ζ²))
τ/p0 = |σr − σz| / 2
線接触(ζ = z/b、平面ひずみ)
σz/p0 = −1 / √(1 + ζ²)
σx/p0 = −((1 + 2ζ²) / √(1 + ζ²) − 2ζ)
σy/p0 = ν·(σx + σz)/p0
τ/p0 = (最大の主応力 − 最小の主応力) / 2
表面(ζ = 0)では、縦の圧縮 σz も横の圧縮 σr(σx)も大きく、両者の差は小さい。深くなるにつれて横方向の圧縮が速く抜け、縦の圧縮はゆっくり減る。差が開く途中に、せん断応力 τ が最大になる深さがある。鋼(ν = 0.3)の点接触ではおよそ 0.31p0 が深さ 0.48a に、線接触では 0.30p0 が深さ 0.786b に現れる。Wikipedia の「Contact mechanics」でも、ν = 0.33 の球で最大せん断応力の深さを約 0.49a としている。
たとえるなら、厚い消しゴムを丸い鉛筆の軸で上から押したときのようなものだ。押された表面そのものより、少し奥の層のほうが上下でいちばん大きく「ずれ」ようとする。ころがり疲れのはく離が表面の下から始まるのは、この深さにせん断応力の山があるからだ。
この山は降伏の判定にも使える。最大せん断応力説(Tresca)で τmax が降伏点 σy の半分に達したところで降伏が始まるとすると、鋼の点接触では p0 ≒ 1.61σy、線接触では p0 ≒ 1.67σy で表面の下から降伏が始まる。表面の面圧が降伏点を超えても、すぐに表面が潰れるわけではない理由がここにある。
ヘルツの式の数値的な前提は、転がり軸受の規格にもそのまま使われている。JIS B 1519(転がり軸受—静定格荷重)は、縦弾性係数 207GPa・ポアソン比 0.3 のヘルツの点接触の式に基づいて、静定格荷重を「計算接触応力」で定義している。
面圧の見積もり違いが招くこと
ヘルツの面圧は、壊れるか壊れないかを決める数字であると同時に、見積もりを1つ間違えると判定が丸ごとひっくり返る数字でもある。実務で効く分かれ目を5つ挙げる。
(a) 静的の基準で見るか、繰返しの基準で見るか。 JIS B 1519 の 3.2 は、基本静定格荷重を「最大荷重を受ける転動体と軌道の接触部中央の計算接触応力」が玉軸受で 4.2GPa、ころ軸受で 4.0GPa になる荷重と定めている。注記によれば、このとき転動体と軌道の総永久変形量は転動体直径の約0.0001倍——φ10 の鋼球なら約1µm のへこみだ。つまり静的の基準は「止まったまま押しても、使えなくなるほどの圧痕が残らない」線であって、回し続けて壊れない線ではない。回転・往復する部品には、JIS B 1518 附属書B が示す「約1.5GPa の接触応力で疲労限応力になる」という値のほうが近い。鋼球 φ10 と焼入れ平面、500N の組合せは静的なら安全率 1.14 で通るが、繰返しで見ると 0.41 になり、許容荷重は 739.9N から 33.71N へ約22分の1に縮む。
(b) 荷重を2倍にしても、面圧は2倍にならない。 上で導いたとおり、点接触は1.26倍、線接触は1.41倍だ。同じ鋼球 φ10 を 500N から 1,000N にすると最大面圧は 3,686MPa から 4,644MPa になり、静的の 4,200MPa をまたぐ。逆に言えば、面圧の余裕が2割あっても、荷重の余裕は点接触なら約1.7倍、線接触なら約1.4倍ある(許容荷重は点で安全率の3乗、線で2乗に比例する)。荷重の見積もりが粗い場面ほど、面圧の安全率だけでなく許容荷重で読むほうが感覚に合う。
(c) 受けの形は、材料を変えるより効く。 平面で 4,644MPa だった 1,000N の鋼球を、φ14 の球面座(凹)で受けると最大面圧は 2,014MPa まで下がる。材料も荷重も同じで、受けの形だけで半分以下になる。ピボットや球面座金を設計するとき、平面で受けるか凹で受けるかは、焼入れの有無以上に結果を左右する。
(d) 硬化層は、せん断応力の山より深くないと心部から壊れる。 カムフォロアの例(2,000N)では、最大せん断応力の深さは 0.1095mm だ。浸炭焼入れの SCM415 ローラ φ40 に 20kN をかけると、深さは 0.3729mm になる。荷重が大きく、曲率半径が大きいほど山は深く潜る。高周波焼入れや浸炭の有効硬化層がこの深さに対して浅いと、柔らかい心部にせん断応力の山がかかり、表面は硬いのに中から降伏し、硬化層ごと剥がれ落ちる。
(e) 許容面圧を決めるのは、たいてい相手側だ。 カムフォロアの外輪は軸受鋼でも、相手のカムが S45C の高周波焼入れなら許容面圧は 882.6MPa、焼入れしない調質材なら 598.2MPa まで下がる。同じ 2,000N で、安全率は 1.06 から 0.72 に落ちる。部品を選ぶときに目に入るのは購入品のカタログ値だが、壊れるのは自分で設計した相手の面のほうだ。
活躍する場面
カムフォロアと平面カム・溝カム
カムフォロアの外輪幅が接触長さ、外輪径が D1 で、相手のカム面が平面(溝カムの側面やカム板の外周の平らな区間)なら線接触の平面になる。カム曲線の最小曲率半径の区間では凸の接触として相手の直径を入れれば、いちばん厳しい場所の面圧が出る。カム側の焼入れの要否と、硬化層の深さの見当をつけるところまでを一度に済ませられる。
走行車輪とレール
天井走行の台車、搬送台車、ガイドローラの車輪は、平らなレール頭部に対して線接触になる。車輪の材質を上げても、レール側が生材のままだと許容面圧はレールで決まる。輪重から面圧を出し、レールの材質を上げるか、車輪径・踏面幅を広げるかを比べる場面に向く。
鋼球の受け・ピボット・球面座
ボールプランジャーの先端、ピボットの鋼球、球面座金、送りねじ先端の鋼球受けなどの点接触。平面で受けるか凹で受けるか、凹ならどこまで径を詰めるかで面圧が大きく変わる。止まったまま荷重を受けるなら静的、揺動や回転が入るなら繰返しの基準に切り替えて比べる。
ローラどうし・ピンと穴
送りローラ、ころがり接触で動力を伝えるローラ対、ピンと穴(すきまのある凹の線接触)。ローラ径の組合せや材質違いでの面圧を見積もるほか、樹脂ローラと鋼の平面のように材料の硬さが大きく違う組合せでも、接触幅と面圧の見当がつく。
基本の使い方(3ステップ)
ステップ1: 接触の形と寸法・荷重を入れる。 まず点接触(球)か線接触(円柱)かを選び、相手の形を「平面・凸・凹」から選ぶ。そのうえで直径 D1、相手の直径 D2(凸か凹のとき)、接触長さ L(線接触のとき)、接触面に垂直にかかる荷重 F を入れる。使わない欄には「相手が平面なので使わない」のような注記が出るので、残った値は気にしなくてよい。カムフォロア・走行車輪・鋼球×平面の3つのプリセットから始めて、寸法を自分の条件に書き換えてもいい。
ステップ2: 材料を選ぶ。 材料1(球・円柱の側)と材料2(相手の側)を、S45C の生材・調質・高周波焼入れ、SCM440 調質、SCM415 浸炭焼入れ、軸受鋼 SUJ2、ねずみ鋳鉄、アルミ合金、MCナイロンから選ぶ。選んだ材料の縦弾性係数・ポアソン比と許容面圧の既定値が欄の下に表示される。一覧に無い材料は「直接入力」にして、縦弾性係数(GPa)とポアソン比を入れる。
ステップ3: 許容面圧の基準を選び、判定と深さを読む。 回転・転がり・往復する部品なら「繰返し」、止まったまま荷重を受けるなら「静的」を選ぶ。最大面圧と判定、許容面圧(どちらの材料で決まったか)、安全率、許容荷重、平均面圧、接触半径(半幅)、等価曲率半径、合成ヤング率が表示され、表面下の最大せん断応力とその深さが材料ごとに出る。深さ方向の応力分布図で、せん断応力の山がどこにあるかも目で確かめられる。メーカーの許容値や社内基準があれば、許容面圧の欄に直接入れると、その値で判定し直せる。
ヘルツの式で面圧を計算してみる——8ケースの使用例
以下の8ケースは、いずれもツールに同じ値を入れて得た結果だ。数値は有効4桁で丸めている。
ケース1: カムフォロア φ19 × 高周波焼入れの平面カム
- 入力: 線接触・平面、D1 = 19mm、L = 11mm、F = 2,000N、材料1 SUJ2、材料2 S45C 高周波焼入れ、繰返し
- 結果: 接触半幅 b = 0.1392mm(接触幅 0.2785mm)、最大面圧 p0 = 831.3MPa、平均面圧 652.9MPa。許容面圧 882.6MPa(材料2のカム側)、安全率 1.06、許容荷重 2,254N で許容内。τmax = 249.6MPa、深さ 0.1095mm
- 解釈: 外輪側の許容(1,500MPa)にはまだ余裕があるのに、カム側の余裕は6%しかない。カムの有効硬化層は 0.11mm より十分深く取りたい。荷重の見積もりに衝撃が乗るなら、この余裕はすぐ消える
ケース2: 同じカムを焼入れなしの調質材にした
- 入力: ケース1の材料2を S45C 調質に変更
- 結果: 最大面圧は 831.3MPa のまま、許容面圧が 598.2MPa に下がり、安全率 0.72、許容荷重 1,036N で許容超え
- 解釈: 接触の形も荷重も同じで、相手の熱処理を省いただけで判定が反転する。最大面圧は弾性定数で決まるので、鋼どうしなら熱処理で面圧そのものはほとんど変わらない。変わるのは「どこまで耐えるか」のほうだ
ケース3: 走行車輪 φ200 × 平レール、荷重を倍にする
- 入力: 線接触・平面、D1 = 200mm、L = 40mm、材料1 S45C 調質(車輪)、材料2 S45C 生材(レール)、繰返し。F = 20kN と 40kN
- 結果: 20kN では b = 0.7501mm、p0 = 424.4MPa、許容面圧 514.8MPa(レール側)、安全率 1.21、許容荷重 29,440N で許容内。40kN では b = 1.061mm、p0 = 600.1MPa、安全率 0.86 で許容超え
- 解釈: 荷重2倍で面圧は 424.4 → 600.1MPa、ちょうど √2 倍だ。許容荷重 29,440N は荷重によらず同じ値になる(形と材料だけで決まる)。輪重が 29kN を超える車両ならレールの材質を上げるか、踏面幅を広げる。τmax の深さは 20kN で 0.5897mm と、大きな車輪ほど深く潜る
ケース4: 鋼球 φ10 × 焼入れ平面を静的に押す
- 入力: 点接触・平面、D1 = 10mm、F = 500N、材料1・2とも SUJ2、静的
- 結果: 接触半径 a = 0.2545mm(接触径 0.509mm)、p0 = 3,686MPa、平均面圧 2,457MPa、接近量 12.95µm。許容面圧 4,200MPa(JIS B 1519)、安全率 1.14、許容荷重 739.9N。τmax = 1,143MPa、深さ 0.1224mm
- 解釈: 鋼球1個に 500N で 3.7GPa という桁は、初めて見ると驚くが、軸受の世界ではふつうの値だ。静的に押しつけるだけなら永久変形は許容の範囲に収まる
ケース5: 同じ鋼球を繰返しの基準で見る
- 入力: ケース4の基準を「繰返し」に変更
- 結果: 許容面圧 1,500MPa(JIS B 1518 の疲労限の目安)、安全率 0.41、許容荷重 33.71N で許容超え
- 解釈: 同じ 3,686MPa が、基準を変えるだけで不合格になる。許容荷重は 500N の約15分の1だ。点接触は許容荷重が安全率の3乗で縮むので、安全率が0.41なら荷重は約0.07倍しか許されない。鋼球が転がりながら荷重を受ける用途なら、球の数を増やして1個あたりの荷重を下げるか、凹の溝で受けて接触を広げる
ケース6: 平面で超えた 1,000N を球面座 φ14 で受ける
- 入力: 点接触・凹、D1 = 10mm、D2 = 14mm、F = 1,000N、SUJ2 どうし、静的
- 結果: 等価曲率半径 R' = 17.5mm(平面なら 5mm)、a = 0.4869mm、p0 = 2,014MPa、安全率 2.09、許容荷重 9,064N で許容内。接近量 13.54µm
- 解釈: 同じ 1,000N を平面で受けると p0 = 4,644MPa で静的の基準も超える。φ14 の座で受けるだけで面圧は半分以下だ。1/R' = 2/10 − 2/14 の引き算が効いて、R' が 3.5倍に伸びた結果だ
ケース7: 座を φ10.4 まで詰める
- 入力: ケース6の D2 を 10.4mm に変更
- 結果: R' = 130mm、a = 0.95mm(接触径 1.9mm)、p0 = 529.1MPa、安全率 7.94。接触半径が球の半径の19%になり、ヘルツ理論の前提外の警告が出る
- 解釈: 面圧は劇的に下がって見えるが、接触面が曲率半径に対して大きすぎ、式の前提が崩れている。実際の面圧分布は半楕円から外れ、縁に寄ったり、なじみ方で変わったりする。値は目安にとどめ、メーカー資料や実験と合わせて判断する
ケース8: MCナイロンのローラ × 鋼の平面
- 入力: 線接触・平面、D1 = 50mm、L = 20mm、F = 500N、材料1 MCナイロン、材料2 S45C 調質、繰返し
- 結果: 合成ヤング率 E* = 4,013MPa、b = 0.4453mm(接触幅 0.8906mm)、p0 = 35.74MPa、τmax = 10.73MPa(深さ 0.3501mm)。ナイロンに出典のある許容面圧が無いため判定なし。手元の資料の値を仮に 20MPa として許容面圧に直接入れると、安全率 0.56、許容荷重 156.6N で許容超え
- 解釈: 樹脂は縦弾性係数が鋼の60分の1ほどしかないので、E* はほぼ樹脂側で決まり、面圧は鋼どうしよりはるかに低い。ただし樹脂の許容面圧はクリープと発熱で決まり、ヘルツの面圧だけでは判断できない。メーカーの許容面圧や PV 値を入れて判定するのが現実的だ
8ケースを並べると、面圧を動かすのは荷重よりも、受けの形(ケース6・7)、相手の材料(ケース1・2)、そして比べる基準(ケース4・5)だとわかる。
計算の仕組み——軸上の閉じた式を数値で最大化する
3つの候補と、選んだ方法
表面下の最大せん断応力を出す方法は、大きく3つ考えられる。
| 方法 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| (1) 定数の簡便法(点 0.31p0・0.48a、線 0.30p0・0.786b) | 掛け算だけで済む | ν = 0.3 でしか正しくない。アルミ(0.33)や樹脂(0.4)で深さがずれる |
| (2) 対称軸上の閉じた式を ν ごとに数値で最大化 | ν の違いを拾える。材料1側・2側を別々に出せる | 軸外の応力(転がり疲れで使う直交せん断応力)は扱わない |
| (3) 有限要素法・数値の接触解析 | 楕円接触・摩擦・塑性まで扱える | 入力が図面レベルになり、設計の初期検討に向かない |
このツールは (2) を採った。上で示した軸上の式は ν を含んでいるので、材料ごとのポアソン比で τ/p0 の山の高さと位置が変わる。とくに線接触では、ν が約0.24を下回ると平面ひずみの σy が最小の主応力側に回り、最大の位置が浅くなる。定数の簡便法ではこの変化を拾えない。
計算フロー
1. 材料1・2の E・ν を表(または直接入力)から取る
2. 合成ヤング率 E* と等価曲率半径 R' を出す(凹は 1/R2 を負に)
3. 点接触: a・p0・平均面圧・接近量 δ
線接触: b・p0・平均面圧
4. 材料1・2それぞれの ν で τ/p0(ζ) を探索
- ζ = 0〜3(a または b の倍数)を 0.001 刻みの 3,001 点で評価
- 最大の格子点の前後1刻みを黄金分割で 200 回詰める
- τmax = (τ/p0)最大·p0、深さ = ζ最大·a(b)、降伏開始の係数 = 1/(2·(τ/p0)最大)
5. 許容面圧 = 直接入力 があればその値
なければ min(材料1の既定値, 材料2の既定値)
(片方でも出典のある値が無ければ判定なし)
6. 安全率 = 許容面圧 / p0
許容荷重 = F·安全率³(点接触)、F·安全率²(線接触)
7. a(b) / 有限な曲率半径の最小値 > 0.1 なら前提外の警告
許容荷重が安全率の3乗・2乗になるのは、面圧が荷重の1/3乗・1/2乗に比例することの裏返しだ。深さ方向の分布図は、同じ応力の式を深さ 0〜3a(3b)の61点で評価して描いている。
計算例: カムフォロア(使用例のケース1)
E* = 1 / (0.91/207,000 + 0.91/205,939.65) = 113,444 MPa
(SUJ2 は 207GPa・ν0.3、S45C は 21,000kgf/mm² × 9.80665・ν0.3)
R' = 1 / (2/19 + 0) = 9.5 mm
b = √(4 × 2,000 × 9.5 / (π × 11 × 113,444))
= √(76,000 / 3,920,350) = √0.019386 = 0.13923 mm
p0 = 2 × 2,000 / (π × 0.13923 × 11) = 831.3 MPa
pm = 2,000 / (2 × 0.13923 × 11) = 652.9 MPa
τmax: ν = 0.3 で (τ/p0)最大 = 0.300283 at ζ = 0.786151
→ τmax = 249.6 MPa、深さ = 0.786151 × 0.13923 = 0.1095 mm
許容面圧 = min(SUJ2 1,500, S45C 高周波 882.6) = 882.6 MPa(カム側)
安全率 = 882.6 / 831.3 = 1.062
許容荷重 = 2,000 × 1.0617² = 2,254 N
式の検証——規格の係数と、別のツールの値を再現する
式と定数が正しいかは、規格の数値を逆から再現して確かめた。
- JGMA 402-01 の材料定数係数 ZM: 歯車の歯面強さの式に出てくる ZM は、kgf/mm² 単位の √(E*/π) にあたる。KHK 歯車技術資料の表10.9 にある5通りの組合せを、このツールの E* の式で計算すると、構造用鋼どうし 60.60・鋼×鋳鋼 60.24・鋼×球状黒鉛鋳鉄 57.87・鋼×ねずみ鋳鉄 51.68・ねずみ鋳鉄どうし 45.81 になり、表の 60.6/60.2/57.9/51.7/45.8 と表の桁で一致する
- JIS B 1519 のスラストころ軸受の係数 220: 線接触の式で p0 = 4,000MPa・E = 207GPa・ν = 0.3 のときのころ1本の荷重を書き直すと、係数は 220.97 になる。規格の 220 に対して +0.44% で、規格の係数がこの線接触の式から作られていることと、ツールの式が一致することが確かめられる
- ラック&ピニオンの歯面応力: JGMA 402-01 の歯面応力 σH は、ピッチ点での線接触の最大面圧と同じ量だ。ラック&ピニオンの選定計算(推力・トルク・歯の強さ)の計算例(200kg・2m/s を0.4秒で加速、m2.5・20歯で d = 50mm、歯幅25mm、SCM440 調質 × S45C 高周波焼入れ)のピッチ点の曲率半径・歯幅・法線荷重をこのツールに入れると、p0 = 643.97MPa、安全率 1.2030 になり、ラック&ピニオン側の σH 643.93MPa・安全率 1.2031 と一致する。わずかな差は、歯車側が ZM を 60.6 に丸めている分だ
- τmax とその深さ: ν を 0〜0.5 で振り、0.0001 刻みの全格子の最大値と比べて、差が 1e-9 程度であることを確かめた。結果は次のとおり
| 接触 | ν | τmax / p0 | 深さ |
|---|---|---|---|
| 点 | 0 | 0.385 | 0.382a |
| 点 | 0.3 | 0.310 | 0.481a |
| 点 | 0.33 | 0.303 | 0.491a |
| 点 | 0.5 | 0.266 | 0.548a |
| 線 | 0 | 0.5 | 表面 |
| 線 | 0.1 | 0.409 | 0.173b |
| 線 | 0.2 | 0.330 | 0.322b |
| 線 | 0.25 以上 | 0.300 | 0.786b |
ν = 0.3 の 0.310p0・0.481a は教科書の 0.31p0・0.48a に、ν = 0.33 の 0.491a は Wikipedia の 0.49a に合う。線接触の ν が小さい側は見落とされやすい。直接入力で ν = 0.1 の材料どうしを当てると、τmax は 0.4085p0 と大きく、深さは 0.173b と浅くなり、降伏開始の係数も 1.665 から 1.224 に下がる。
許容面圧の既定値の決め方
既定値は、一次資料で値を確かめられたものだけに絞った。
- 繰返し・鋼: JGMA 402-01 の表10.12〜10.14 の許容ヘルツ応力 σHlim を kgf/mm² × 9.80665 で MPa にした。S45C 生材 52.5(514.8MPa)、S45C 調質 61(598.2MPa)、SCM440 調質 79(774.7MPa)、S45C 高周波焼入れ 90(882.6MPa)、SCM415 浸炭焼入れ 164(1,608MPa)。ラック&ピニオンのツールと同じ値だ
- 繰返し・軸受鋼: JIS B 1518 附属書B の「約1.5GPa の接触応力のときに疲労限応力になる」から 1,500MPa
- 静的・軸受鋼: JIS B 1519 3.2 の計算接触応力から、点接触 4,200MPa(玉軸受)、線接触 4,000MPa(ころ軸受)。自動調心玉軸受の 4.6GPa は使っていない
- ねずみ鋳鉄・アルミ合金・MCナイロン: 縦弾性係数とポアソン比は持つが、許容面圧は持たない。鋳鉄は JGMA の表10.12 に欄が無く、アルミと樹脂には出典のある値が見つからなかったためで、判定なしとして直接入力を促す
S45C などの静的な許容面圧を持たないのにも理由がある。静的の基準は降伏点から決めるのが筋だが、JIS G 4051(機械構造用炭素鋼鋼材)は、熱処理後の材料の機械的性質を規定していない。調質や焼入れの条件で降伏点は大きく変わるので、規格に無い値を既定値に置くと、根拠のない判定を出すことになる。代わりに、上で触れた降伏開始の係数(鋼の点接触で p0 ≒ 1.61σy、線接触で 1.67σy)を材料ごとに表示し、手元のミルシートや試験値の降伏点から許容面圧を換算できるようにした。
ヘルツ接触応力の計算ツールとして、ほかと何が違うか
教科書の式が散らばっていて一続きにならない事情は、冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおりだ。ここでは、接触応力を調べるときに手に取る道具ごとに、何が出て何が出ないかを並べておく。
| 道具 | 出るもの | 出ないもの |
|---|---|---|
| 教科書・便覧 | 点接触・線接触の式と、ν = 0.3 の代表的な定数 | 数値そのもの。凹の受けや材料の違う組合せは、自分で式を組み直す |
| 海外の接触応力計算サイト | 接触半径・最大面圧・τmax とその深さ | 見かけた範囲では、深さを ν 固定の定数で出すものが多い。許容面圧との比較は無い |
| 軸受メーカーの技術資料 | 自社の軌道の形での面圧や静定格荷重 | 軌道以外の形(平面カム・レール・球面座・ピンと穴) |
| このツール | 球・円柱の6通りの形、ν の違う組合せでの材料ごとの τmax と深さ、繰返し/静的の許容面圧との比較と許容荷重、深さ方向の応力分布図 | 楕円接触・摩擦・塑性 |
このツールが受け持つのは「2つの曲面が押し合う1点(または1本の線)」だけで、その前後は別のツールに任せている。
- 歯車の歯面は、歯車強度計算(曲げ・面圧)やラック&ピニオンの選定計算のほうが、領域係数やかみ合い率まで含めて歯面の応力を出す。歯面をこのツールで扱うのは、ピッチ点1か所の確かめまでにとどめたい
- カムフォロアに掛かる荷重そのものは、カム曲線設計シミュレーターで加速度の山を読み、従動節の質量とばね力から見積もってから持ってくる
- 市販の転がり軸受の寿命は、カタログの定格荷重からベアリング寿命計算で出すほうが早い。自分で設計した転動面や、軸受の外で起きる接触がこのツールの出番になる
- すべって減っていく量は摩擦・摩耗量予測計算、硬化層がどこまで入るかは熱処理硬度シミュレーターの担当。後者で出した有効硬化層深さを、このツールの τmax の深さと並べて見る使い方を想定している
豆知識:レンズの実験から生まれた式と、kgf/mm² の規格表
電磁波のヘルツが、なぜ接触の式を書いたのか
接触理論の論文 "Über die Berührung fester elastischer Körper"(弾性固体の接触について)は1882年に出た。書いたのは、のちに電磁波の存在を実験で確かめ、周波数の単位 Hz に名を残したハインリッヒ・ヘルツその人だ。当時のヘルツはベルリン大学で学位を取ったばかりで、ヘルムホルツの助手を務める20代半ばの若手だった。
きっかけは機械ではなく光学で、重ねたレンズを押し付ける力によって光学的な性質がどう変わるかを調べていた。ガラス球をレンズに載せたときにニュートンリングが楕円に見えることから圧力の分布の形に見当をつけ、理論の検証にも同じ縞を使っている。同じ1882年には、題名に「硬さについて」を加えた続編も出した。電磁波の実験はその4年後、カールスルーエに移ってからの仕事だ。
1975年の歯車規格は、いまも kgf/mm² で書かれている
歯車の歯面強さを決める JGMA 402-01 は1975年の規格で、KHK の歯車技術資料に載っている許容ヘルツ応力も材料定数係数も、重力単位の kgf/mm² のままだ。浸炭焼入れの許容ヘルツ応力は 164 kgf/mm² と書かれていて、MPa に直すと約1,608MPa になる。
おもしろいのは材料定数係数のほうで、単位が (kgf/mm²)^0.5 と平方根の付いた形をしている。ここだけは 9.80665 ではなく、その平方根(約3.13)を掛けないと SI に直らない。古い社内計算書を読み直すとき、いちばん踏みやすい罠だ。
軸受の「1万分の1」は、注記に置かれた物差し
JIS B 1519 の基本静定格荷重は、本文では「玉軸受(自動調心を除く)4.2GPa・ころ軸受 4.0GPa の計算接触応力に対応する荷重」と応力で定義されている。実務の節で引いた「総永久変形量は転動体直径の約0.0001倍」は、注記のほうに回っている。
ヘルツの式は弾性の式なので、本来は塑性の量であるくぼみの深さを直接は出せない。そこで規格は、計算できる応力の側に線を引き、くぼみの量は「その応力ならこのくらい」という注記に置いた。同じ規格の静安全係数の指針が、運転条件を「滑らかな回転、振動を生じない」といった言葉で区分しているのを見ると、この1万分の1が壊れる限界ではなく、回り心地が損なわれ始める目安として扱われていることが読み取れる。
面圧を見積もるときのコツ
- 面圧を半分にしたいなら、荷重は点接触で1/8、線接触で1/4。荷重を2割減らしても面圧は1割前後しか下がらない。線接触で長さを伸ばす場合も、面圧を半分にするには長さが4倍要る
- 走行跡の幅で荷重を確かめる。カムやレールに残った光った帯の幅を測り、結果の接触幅(2b)と比べる。荷重を変えながら幅が合うところを探すと、実際に掛かっていた荷重の見当がつく。走行跡のほうがずっと広ければ、想定より荷重が大きいか、摩耗・塑性変形が進んでいる。鋼球の圧痕も接触径(2a)と比べられるが、くぼみができた時点で弾性の前提を外れているので、逆算した荷重は桁の見当として扱う
- カムフォロアの接触長さは、外輪幅から両側の面取りを引いた値を入れる。カムの板厚のほうが狭ければ、そちらを使う。外輪の外径が球面(クラウニング付き)のタイプは線接触ではないので、下のよくある質問の楕円接触の項を見てほしい
よくある質問(ヘルツの接触応力の計算)
直交する円柱や、溝の中の球(楕円接触)を扱わないのはなぜ? 代わりにどう見ればいい?
接触域が楕円になると、接触半径と面圧を出すのに楕円積分が要り、入力も2方向の曲率に増える。今の版では、形を球と円柱の6通りに絞った。代わりの見方は2つある。同じ径の円柱を直角に交差させた接触は、その径の球と平面の接触と同じ形になるので、球×平面で入れればよい。溝の中の球のように片方の向きだけ凹で受けている形は、その凹を平面に置き換えて入れる(内輪のように転がる向きが凸なら、球×凸で入れる)。実際より面圧が高めに出るので、安全側の見当として使える。
「判定なし」と出たとき、許容面圧の欄には何を入れればいい?
出典のある既定値を持たない材料(鋳鉄・アルミ合金・MCナイロン、静的で見るときの SUJ2 以外の鋼)がまじると判定は出ない。既定値の決め方は上の「計算の仕組み」の節で説明したとおりだ。静的なら、画面に出る降伏開始の係数(最大面圧 = 係数×降伏点)にミルシートの降伏点を掛け、さらに安全率で割った値を入れる。樹脂はメーカーの許容面圧か社内基準を入れる(仮の値を入れたときの読み方は、使用例の MCナイロンのローラのケースを見てほしい)。樹脂はクリープと発熱でも決まるので、この判定は面圧の側だけの目安になる。
ピンと穴のようにすきまの小さい組合せで、前提外の注意が出た
ヘルツの式は、接触の幅が曲率半径に比べて十分小さいことを前提にしている。すきまの小さいピンと穴では等価曲率半径が大きく伸び、接触半幅が径に対して大きくなりすぎる。たとえばピン φ20 × 穴 φ20.1・接触長さ30mm・3,000N では、最大面圧は 42.33MPa と低い一方で、接触半幅が 1.504mm になり、ピンの半径の1割を超えて注意が出る。この領域では面圧の分布が式の形からずれるので、値は目安として読む。ピンやブシュは、荷重を投影面積(直径×長さ)で割った平均の面圧で見るのが一般的なので、そちらと合わせて判断してほしい。
ころやローラの端で面圧が跳ね上がる分は入っている?
入っていない。線接触は長さ方向に面圧が一様と仮定しているので、出てくる値は接触長さの中ほどの面圧だ。まっすぐな円柱の端では、そこで接触が途切れるため面圧が局所的に高くなる(エッジロード)。軸が傾いていれば片側に寄って、さらに高くなる。端の面取りやクラウニングで逃がすのが定石で、クラウニングを付けると接触は楕円になり、線接触の値とは別物になる。結果は「端を逃がしたうえでの中ほどの面圧」として読んでほしい。
図面の寸法や荷重を入れても、外に送られない?
計算はすべてブラウザの中で動いていて、入力した径・荷重・材料の値はどこにも送信していない。サーバーに保存もしないので、ページを閉じれば消える。結果のコピーも、手元のクリップボードに文字が入るだけだ。客先の装置や試作中の部品の寸法をそのまま入れて問題ない。
まとめ
ヘルツの接触応力は、面圧の大きさそのものより「何と比べるか」と「どの深さで効くか」で判断が分かれる。このツールでは、球と円柱の6通りの接触について、最大面圧・表面下の τmax とその深さ・許容面圧との比較を一度に出せる。前後の検討には、次のツールを組み合わせてほしい。
- 歯車の歯面は歯車強度計算(曲げ・面圧)、ラック駆動はラック&ピニオンの選定計算(推力・トルク・歯の強さ)
- カムフォロアに掛かる荷重の見積もりはカム曲線設計シミュレーター
- 市販の転がり軸受の寿命はベアリング寿命計算
- すべりによる摩耗は摩擦・摩耗量予測計算
- 硬化層の深さは熱処理硬度シミュレーター
計算結果と実物の当たり跡が食い違ったら、お問い合わせページから知らせてもらえるとありがたい。