熱源容量・台数分割計算ツール

冷房負荷から必要熱源容量・USRT・台数分割案・冷水/冷却水流量まで一括計算

建物の冷房負荷(直接入力 or 延床面積×用途原単位)から、必要熱源容量・USRT換算・台数分割案(1〜4台)・冷水/冷却水流量まで一括計算する熱源プラント概算ツール。

用途プリセット

負荷の入力方法

熱負荷計算で求めた建物全体のピーク冷房負荷。不明なら「延床面積×原単位」に切替

10%程度が一般的。空欄は0%

標準5℃(7→12℃)

熱源方式

空冷HPは冷却塔不要(冷却水系は非表示)。水冷・吸収式は冷却水量も算出

安定運転できる最小負荷率(カタログの容量制御範囲下限)

入力すると台数案ごとに低負荷運転の可否を判定

必要容量と流量

必要熱源容量550.0 kW≒ 156.4 USRT
推奨 2台

設計冷房負荷(余裕前)

500.0 kW

直接入力

冷水流量

1,577 L/min

往還ΔT5℃・ポンプ/配管の設計流量

冷却塔放熱量

687.5 kW

放熱係数 ×1.25

冷却水量

1,971 L/min

冷却水ΔT5℃固定の概算

台数分割の比較(1〜4台・均等分割)

台数
1台あたり容量
N-1カバー率
最小運転可能負荷
判定
1
550.0 kW156.4 USRT
0%
110.0 kW
2推奨
275.0 kW78.2 USRT
50%
55.0 kW
3
183.3 kW52.1 USRT
67%
36.7 kW
4
137.5 kW39.1 USRT
75%
27.5 kW

建物最小負荷率を入力すると、台数案ごとに低負荷運転の可否を判定します

冷却水量 1,971L/min を冷却塔能力計算(/cooling-tower-select)の「冷却水量から」モードに転記すると、公称冷却トンと推奨冷却塔容量まで続けて選定できます。
冷水流量 1,577L/min をポンプ揚程計算(/pump-head-calc)に転記すると、配管抵抗込みの必要揚程まで続けて検討できます。
冷房負荷原単位(W/m²)は空気調和・衛生工学会系文献の代表値による概算です。実施設計では必ず熱負荷計算に置き換えてください。台数の推奨は運転下限と冗長性の目安(必要容量200kW以上は2台基準)による参考値で、実際の台数・機種選定はメーカー選定資料・ライフサイクルコスト評価で確定してください。冷却水量は往還温度差5℃固定の概算です。

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「熱源は何kWを何台?」— 基本設計で毎回止まる問い

平面図がまだ固まりきらない基本設計の初期。意匠設計者や施主から真っ先に飛んでくるのが「この建物、熱源機は何kWで何台くらい?」という問いだ。機械室の面積も、受電容量も、冷却塔の置き場所も、屋上の荷重も、全部この答えから決まっていく。答えを保留すれば計画全体が止まるし、雑に答えれば実施設計で自分の首を絞める。

ところが、この問いに答えるための材料は驚くほどバラバラの場所にある。冷房負荷の原単位表は便覧のコピー、USRT換算は電卓、台数分割は先輩の経験則、冷水流量はまた別の手計算メモ。1つずつは単純な計算なのに、机に資料を4つ広げてようやく1つの答えになる。このもどかしさ、設備設計者なら覚えがあるよね。

熱源容量・台数分割計算ツールは、この一連の流れを1画面にまとめた無料ツールだ。冷房負荷(直接入力または延床面積×用途原単位)から余裕率込みの必要熱源容量とUSRT換算を出し、1〜4台の台数分割案の比較と推奨台数、冷水流量・冷却水量まで一括計算する。

なぜ作ったのか — 4つの計算が4つの資料に散らばっていた

きっかけは、熱源更新の検討で同じ手計算を3回やり直した経験だ。延床面積に原単位を掛けて負荷を概算し、余裕率を掛け、3.517で割ってUSRTに直し、台数で割って1台あたり容量を出し、最後に冷水流量を計算する。ここまでやったところで「吸収式でも比較したい」と言われ、放熱係数を差し替えてもう一周。さらに「余裕率は15%で」と言われてもう一周。計算自体は中学数学なのに、数字の受け渡しが多くて写し間違いが怖い。Excelを組んでもよかったが、どうせなら誰でも使える形にしたかった。

もう1つの動機は、当サイトの/cooling-load-calc(エアコン容量計算)との棲み分けだ。あちらは住宅や1室のエアコン容量を求める「負荷側・個別空調」のツールで、建物全体の熱源プラント容量はカバーしていない。「建物一棟の中央熱源を何kWにするか」という設備設計の入口が、当サイトでもWeb全体でも意外と空白だった。原単位からの概算・USRT換算・台数分割・流量算出を一気通貫でやれる無料ツールは、探しても見つからなかった。

ちょうど空調・換気設備設計をテーマにした書籍を執筆準備中で、その熱源計画の章で扱う計算をそのまま手を動かして試せる形にしたのが本ツールだ。書籍で式を追い、ツールで数字を動かす。この往復が一番身につくと思っている。

熱源容量の計算と台数分割 — 第一原理から整理する

冷房負荷と原単位(W/m²)とは — 建物が捨てたい熱の総量

建物の冷房負荷とは、室内を設計温湿度に保つために取り除くべき熱量の合計だ。外壁や窓から入る貫流熱・日射、人体や照明・OA機器の内部発熱、換気で取り入れる外気の熱。これらを最も厳しい条件(夏期ピーク)で積み上げたものが設計冷房負荷になる。本来は部屋ごとの熱負荷計算で積算するが、基本設計の初期は間取りすら流動的で、計算の前提が揃わない。

そこで使うのが原単位法だ。建物用途ごとの「延床面積1m²あたりの冷房負荷」の代表値(原単位・W/m²)に延床面積を掛けて概算する。空気調和・衛生工学会系の文献では、事務所100・商業施設150・病院やホテル110・学校80W/m²程度が代表値とされる。事務所5000m²なら 5000×100÷1000=500kW。実施設計では必ず熱負荷計算に置き換える前提の、あくまで初期概算の道具だ。

この負荷に余裕率(一般に10%程度)を掛けたものが必要熱源容量になる。経年による能力低下、負荷計算の不確実性、将来のレイアウト変更を見込む保険だ。

必要熱源容量kW = 設計冷房負荷kW × (1 + 余裕率% ÷ 100)
USRT換算      = 必要熱源容量kW ÷ 3.517
冷水流量L/min = 必要熱源容量kW × 60 ÷ (4.186 × 冷水往還温度差℃)

USRTとkWの換算 — 冷凍トンの定義

熱源機のカタログには今もUSRT(米国冷凍トン)表記が根強く残る。1USRTは「氷1米トン(2000ポンド≒907kg)を24時間で融かすのに必要な冷却能力」で、12000BTU/h=約3.517kWに相当する(詳細は冷凍トン - Wikipedia)。つまりkW表示の必要容量を3.517で割ればUSRTになる。500kWなら約142USRT、550kWなら約156USRT。カタログの機種ラインナップ(30USRT刻みなど)と突き合わせるとき、この換算を電卓で毎回叩くのは地味に面倒で、写し間違いの温床でもある。

冷凍機の台数分割はなぜ必要か — 部分負荷・N-1・ハンチング

必要容量が決まったら、次は「1台にまとめるか、複数台に分けるか」。台数分割の理由は主に3つある。

1つ目は部分負荷効率。建物の冷房負荷は年間を通じてピークに張り付いているわけではなく、中間期や夜間はピークの1〜3割まで下がる。熱源機には安定運転できる最小負荷率(部分負荷下限。カタログの容量制御範囲の下限で、機種により10〜50%)があり、これを下回ると発停を繰り返す。2台に分ければ、低負荷時は1台だけ運転して残りを止められる。

2つ目はN-1冗長。1台が故障しても残りで運転を続けられる。2台分割なら1台故障時も定格の50%はカバーでき、病院やデータ系用途では特に効く。

3つ目が発停ハンチングの回避。台所にたとえると、大きな寸胴鍋1つで味噌汁1杯分を温め直すようなものだ。強力なコンロでも弱火には限界があり、沸かしては止めるを繰り返す。中くらいの鍋2つに分けておけば、小さい方だけで火加減よく温められる。熱源プラントも同じで、「大きな鍋1つより中くらいの鍋2つ」が運転の自由度を生む。

一方で台数を増やすほど1台あたりは小さくなり、設置面積・配管・維持費は増える。この綱引きの中で「建物の最小負荷を下回らずに運転でき、冗長性も確保できる最小の台数」を探すのが台数分割の設計だ。本ツールは1〜4台の均等分割について、1台あたり容量・N-1カバー率・最小運転可能負荷を並べて比較し、推奨台数を提示する。

容量と台数を外すと何が起きるか — チラー容量選定の実務感覚

容量過大の実害は静かに効いてくる。定格に対して負荷が小さすぎる熱源機は低負荷運転が常態化し、COP(成績係数)が悪化し、発停が頻発して圧縮機の寿命を削る。イニシャルコストも受変電設備も配管も、全部ひと回り大きくなる。「大は小を兼ねる」が通用しない世界だ。逆に過小なら、猛暑日に冷水温度が上がりきって館内が冷えない。テナントビルなら即クレーム、病院なら医療環境の問題になる。

台数分割を誤ったときの症状はもっと分かりやすい。中間期の朝、負荷がピークの1割しかない時間帯に、1台あたりの部分負荷下限を割り込む。熱源機は冷やしすぎては停止し、冷水温度が上がってはまた起動する。いわゆるハンチングで、冷水温度は安定せず、機器は消耗し、電力デマンドにもノイズが乗る。本ツールで建物最小負荷率を入力すると、台数案ごとに「最小運転可能負荷≦建物最小負荷」を判定するのはこのためだ。

方式選定にも落とし穴がある。吸収式冷温水機は再生器の加熱分も冷却塔で捨てるため、放熱量が冷凍能力の約2.45倍。圧縮式(約1.25倍)の2倍近い冷却水が必要で、冷却塔・冷却水ポンプ・配管サイズが軒並み大きくなる。ガス焚きでデマンドを抑えられる利点だけ見て冷却水系を見落とすと、屋上に冷却塔が載らないという手戻りが起きる。

原単位の用途差も実務感覚として持っておきたい。商業施設150W/m²と学校80W/m²では、同じ延床面積でも負荷はほぼ倍違う。人と照明と外気量が桁違いだからだ。用途を取り違えた概算は、後工程の全数字を巻き込んで狂わせる。

このツールが活躍する場面

基本設計の熱源概算。 平面図と用途だけの段階で、延床面積×原単位から必要容量・台数・流量まで5分で概算し、機械室面積や受電容量の初期値を関係者に示せる。

熱源更新の容量妥当性確認。 既設が竣工時のまま過大になっていないか、現況の負荷感(直接入力)から必要容量を出し直して突き合わせる。更新は台数構成を見直す最大のチャンスだ。

空冷HP・水冷・吸収式の方式比較。 熱源方式を切り替えるだけで冷却水系の有無と冷却水量の差が即座に見える。吸収式の冷却水が圧縮式の約2倍という体感が、数字で掴める。

省エネ診断・台数制御の検討。 建物最小負荷率と機器の部分負荷下限を入れれば、現行台数で低負荷時にハンチング域へ入っていないかを確認できる。

基本の使い方 — 3ステップ

  1. 負荷を入力する。 熱負荷計算の結果があれば「冷房負荷を直接入力」、無ければ「延床面積×原単位で概算」に切り替え、用途プリセット(事務所・商業・病院・ホテル・学校)で原単位をセット。余裕率は10%が一般的。
  2. 熱源方式と運転条件を選ぶ。 空冷HPチラー・水冷チラー・吸収式から方式を選び、冷水往還温度差(標準5℃)と機器の部分負荷下限を入力。建物最小負荷率(任意)を入れると低負荷運転判定も出る。
  3. 結果を確認する。 余裕込みの必要容量kWとUSRT、1〜4台の比較表と推奨台数、冷水流量・冷却水量が一括表示。冷却水量は/cooling-tower-selectへ、冷水流量は/pump-head-calcへそのまま転記できる。

具体的な使用例7ケース — 入力→結果→解釈

実装済みのツールに実際の値を入力して検証した7ケース。

ケース1: 中規模事務所5000m²・空冷HP

入力: 延床5000m²×原単位100W/m²(事務所)・余裕率10%・空冷HPチラー・ΔT5℃・部分負荷下限20%・建物最小負荷率15% 結果: 設計負荷500kW → 必要容量550kW・冷水流量1576.68L/min。建物最小負荷75kW。1台案は最小運転可能負荷110kWが75kWを上回りNG → 推奨2台(275kW/台) 解釈: 空冷HPなので冷却水系の出力は無し(冷却塔不要)。1台にまとめると中間期に発停を繰り返すため、2台分割が正解になる典型例。

ケース2: 直接入力500kW・水冷チラー

入力: 冷房負荷500kW(熱負荷計算済み想定)・余裕率10%・水冷チラー・ΔT5℃・部分負荷下限20% 結果: 必要容量550kW=156.4USRT・冷水1576.68L/min・冷却塔放熱687.5kW・冷却水1970.86L/min・推奨2台(275kW/台) 解釈: 比較表では3台なら183.33kW/台(最小運転36.67kW)、4台なら137.5kW/台(同27.5kW)。冷却水量1971L/minを/cooling-tower-selectに転記すれば冷却塔選定まで一気通貫。

ケース3: 商業施設8000m²・吸収式

入力: 延床8000m²×原単位150W/m²(商業)・余裕率10%・吸収式冷温水機・ΔT5℃ 結果: 必要容量1320kW=375.3USRT・冷水3784.04L/min・放熱3234kW(×2.45)・冷却水9270.9L/min・推奨2台(660kW/台) 解釈: 同条件を圧縮式で計算すると放熱1650kW・冷却水約4729L/min。吸収式は約1.96倍の冷却水が要る。方式比較でこの差を最初に掴んでおくと冷却塔置き場で泣かない。

ケース4: シティホテル10000m²・水冷・24h負荷あり

入力: 延床10000m²×原単位110W/m²(ホテル)・余裕率10%・水冷チラー・部分負荷下限20%・建物最小負荷率20% 結果: 必要容量1210kW=344.0USRT・冷水3468.71L/min・冷却水4335.88L/min。建物最小負荷220kW。1台案は最小運転242kW>220kWでNG → 推奨2台(605kW/台) 解釈: 深夜も負荷が残るホテルでも、1台構成では下限を割る。判定はぎりぎりの差(242対220)で出ており、経験則でなく数字で確かめる価値がある。

ケース5: 大温度差設計ΔT7℃・800kW

入力: 冷房負荷800kW・余裕率10%・水冷チラー・ΔT7℃ 結果: 必要容量880kW・冷水流量1801.92L/min・放熱1100kW・冷却水3153.37L/min・推奨2台 解釈: ΔT5℃なら冷水は2522.69L/min。7℃に広げるだけで約71%まで減り、配管サイズとポンプ動力を直接圧縮できる。流量は/pump-head-calcでポンプ揚程の検討へ。

ケース6: 全台数案が低負荷NGの警告

入力: 冷房負荷1000kW・余裕率10%・水冷チラー・部分負荷下限40%(固定速機想定)・建物最小負荷率8% 結果: 必要容量1100kW・建物最小負荷80kW。4台分割でも最小運転可能負荷110kW>80kWで、1〜4台の全案NG → 推奨なし・警告表示 解釈: 下限の高い機種と負荷変動の大きい建物の組み合わせで起きる詰み筋。ツールは台数のさらなる増加・蓄熱槽の併用・小容量ベース機との組み合わせ・部分負荷範囲の広い機種への変更を促す。

ケース7: 小規模8kW — 個別空調域の案内

入力: 冷房負荷8kW・余裕率0% 結果: 必要容量8kW・冷水22.93L/min・推奨なし。「個別空調域」の警告 解釈: 10kW未満は中央熱源ではなくルームエアコン・ビル用マルチの領分。ツールは/cooling-load-calc(エアコン容量計算)へ誘導する。範囲外を黙って計算し続けない設計にした。

仕組み・アルゴリズム — 原単位法を選んだ理由と計算フロー

原単位法 vs 動的熱負荷計算

建物の冷房負荷を求める手法は大きく2つ。1つは動的熱負荷計算で、壁体の熱容量や日射・スケジュールを時刻別に解く。精度は高いが、入力項目が数十に及び、建物形状が固まらない基本設計初期には前提が揃わない。もう1つが原単位法で、用途別の代表値W/m²×延床面積の一発計算。精度は概算レベルだが、入力2つで即答できる。

本ツールは「基本設計の概算」に役割を割り切り、原単位法+直接入力の2モードを採用した。熱負荷計算済みなら直接入力でその値を活かし、未計算なら原単位で仮置きする。どちらでも後段の容量・台数・流量計算は共通だ。原単位は概算目安である旨を明記し、実施設計では熱負荷計算への置き換えを免責として促す。中途半端に詳細計算を積むより、概算と割り切って免責を明示する方が誠実だと判断した。

計算フロー

// 1) 設計冷房負荷(余裕前)
baseLoadKw = 直接入力 ? 冷房負荷kW : 延床面積m2 × 原単位W/m2 ÷ 1000

// 2) 必要熱源容量とUSRT換算
requiredCapacityKw = baseLoadKw × (1 + 余裕率% ÷ 100)
requiredUsrt       = requiredCapacityKw ÷ 3.517

// 3) 冷水流量(余裕込み容量=機器定格基準)
chilledFlowLmin = requiredCapacityKw × 60 ÷ (4.186 × ΔT)

// 4) 冷却水系(空冷HPは非表示。水冷×1.25 / 吸収式×2.45)
coolingHeatKw   = requiredCapacityKw × 放熱係数
coolingFlowLmin = coolingHeatKw × 60 ÷ (4.186 × 5)   // 冷却水ΔT5℃固定

// 5) 台数分割(N = 1〜4 均等分割)
capPerUnitKw  = requiredCapacityKw ÷ N
coverageN1Pct = (N − 1) ÷ N × 100          // 1台故障時のカバー率
minOperableKw = capPerUnitKw × 部分負荷下限% ÷ 100

流量式の Q×60/(4.186×ΔT) は水の比熱4.186kJ/(kg·K)による定番の変換で、係数は当サイトの/cooling-tower-selectと同一値に揃えてある。ツール間で数字がそのまま繋がる。

推奨台数のロジック

推奨台数は次の3条件を満たす最小のNとした。(1) 基準台数以上 — 必要容量200kW以上は2台、未満は1台を基準とする。200kW級以上の中央熱源はN-1冗長と部分負荷効率の観点で2台以上が定石という目安だ。(2) 1台あたり10kW以上 — 10kW未満は個別空調機の領分としてバッジ表示し推奨から除外。(3) 低負荷判定NGでない — 建物最小負荷率が入力されていれば、最小運転可能負荷が建物最小負荷(余裕率を掛ける前の設計負荷基準)以下であること。境界ちょうど(1台容量10.0kW、最小運転可能負荷=建物最小負荷)は浮動小数の誤差でNG側に転ばないよう、ε=1e-9付きの比較で安全側に通している。

なお条件(1)は低負荷判定より優先する。病院12000m²のケース(必要容量1518kW・建物最小負荷396kW)では1台でも低負荷はOK(303.6kW≦396kW)だが、冗長性の基準台数2台が効いて推奨は2台(759kW/台)になる。

計算例: 事務所5000m²を手で追う

ケース1をステップバイステップで検算する。

  1. 設計負荷: 5000m²×100W/m²÷1000=500kW
  2. 必要容量: 500×1.10=550kW、USRT換算 550÷3.517=156.4USRT
  3. 冷水流量: 550×60÷(4.186×5)=1576.68L/min
  4. 空冷HPなので冷却水系は計算しない
  5. 建物最小負荷: 500×15%=75kW(余裕前基準)
  6. 台数案: 1台550kW → 最小運転550×20%=110kW>75kWでNG。2台275kW/台 → 最小運転55kW≦75kWでOK。基準台数は550kW≥200kWで2台 → 推奨2台(275kW/台)

ツールの出力と完全に一致する。手計算6ステップぶんの受け渡しが、入力5項目で終わる。

空調設計フローの中での立ち位置

「熱源容量 計算」で検索して出てくるのは、USRTとkWの換算だけの単機能ページか、原単位表が載ったPDF資料がほとんどだ。原単位で負荷を概算し、余裕率を掛けて容量を決め、USRTに換算し、台数分割を比較し、冷水・冷却水流量まで出す——この一連の流れを1画面で完結できる無料Webツールは、探した限り空白だった。

当サイト内での役割分担も整理しておく。/cooling-load-calc は住宅・1室単位の冷房負荷からエアコン容量を選ぶ「負荷側・個別空調」のツールだ。対して本ツールは、建物全体をまとめて賄う「中央熱源プラント」の容量と台数を扱う。必要容量が10kW未満なら個別空調域としてエアコン容量計算の側を案内する仕掛けも入れてあり、守備範囲が地続きでつながっている。

そして本ツールの出力は、そのまま下流の設計に流れる。水冷チラー・吸収式で算出される冷却水量は /cooling-tower-select の「冷却水量から」モードに転記すれば、冷却塔の公称CTと推奨容量まで続けて選定できる。冷水流量は /pump-head-calc のポンプ揚程計算に、系統が決まれば /expansion-tank-sizing の膨張タンク検討につながる。負荷概算→熱源容量・台数→冷却塔→ポンプ→膨張タンクという基本設計の流れを、ブラウザだけで一気通貫にたどれるのが最大の違いだ。

豆知識 — 冷凍トンのルーツと大温度差送水

USRTは「氷1米トンを1日で融かす熱量」

冷凍トン(Refrigeration Ton)の由来は、機械式冷凍が普及する前の天然氷ビジネスにさかのぼる。1USRT(米国冷凍トン)は「氷1米トン(2000ポンド≒907kg)を24時間で融かすのに必要な熱量」で、これが12000BTU/h=約3.517kWにあたる。冷凍機は氷の代替品として売られたから、能力を氷の量で表すのが買い手に一番伝わりやすかったわけだ(冷凍トン(Wikipedia))。

日本冷凍トンは約1割大きい

ややこしいことに、日本には「日本冷凍トン(JRT)」という別の単位がある。こちらは氷1メトリックトン(1000kg)基準で、1JRT≒3.86kW。USRTより約10%大きい。高圧ガス保安法の冷凍能力の区分に使う法定冷凍トンはこの日本冷凍トン系の値で、メーカーカタログのUSRT表記とは別物だ。本ツールの換算はカタログで主流のUSRT(3.517kW)を採用している。法規チェックの数字と混同しないよう注意したい。

地域冷暖房は台数分割の極致

台数分割の考え方を極限まで推し進めたのが地域冷暖房(DHC)だ。1つのプラントから複数の建物へ冷水や蒸気を送るため、熱源容量は数万kW級。当然1台では成立せず、大容量ターボ冷凍機を何台も並べ、蓄熱槽と組み合わせて負荷変動を吸収する(地域熱供給(Wikipedia))。本ツールの1〜4台比較は、この世界の入り口にあたる。

大温度差送水という省エネトレンド

冷水の往還温度差は5℃(7→12℃)が長年の標準だったが、近年は8〜10℃の大温度差設計が増えている。流量は温度差に反比例するから、ΔT10℃なら流量は5℃の半分。配管径もポンプ動力も大きく減る。本ツールのΔT入力を5から10に変えるだけで、冷水流量が半減する様子をその場で確認できる。

Tips

  • 余裕率は10%を基準に、盛りすぎない: 余裕は熱交換器の経年汚れ・負荷計算の不確実性・将来の用途変更への保険だ。ただし20〜30%も積むと定格が大きくなりすぎて低負荷運転の時間が延び、COP悪化と発停頻発を招く。迷ったら10%、根拠があるときだけ上乗せする。
  • 部分負荷下限はカタログの「容量制御範囲」で確認: 同じチラーでも、インバータターボやモジュール型空冷HPは10〜20%まで絞れる一方、固定速機や吸収式は20〜30%が下限のことが多い。機種の目星がついたら、本ツールの部分負荷下限をその値に差し替えて判定し直すと精度が上がる。
  • 建物最小負荷率は中間期の内部発熱から見積もる: 外気負荷がほぼゼロになる中間期でも、人・照明・OA機器の内部発熱分の冷房は残る。事務所ならピークの10〜20%程度が出発点。24時間運転の病院やホテルは夜間負荷があるぶん高めに見込む。
  • 複数台は等時間運転でメンテ周期を揃える: 台数制御では特定の1台に運転時間が偏らないよう、起動順をローテーションする等時間運転が基本。全台の劣化とオーバーホール時期が揃い、更新計画が立てやすくなる。

よくある質問(FAQ)

USRTとkWの換算はどう計算する?

1USRT=3.517kWで換算する。kWからUSRTへは3.517で割るだけ。たとえば必要容量550kWなら550÷3.517≒156.4USRT、逆にカタログの300USRT機なら300×3.517≒1055kWになる。本ツールは容量算出と同時にUSRT換算を表示するので手計算は不要だ。なお高圧ガス保安法の法定冷凍トンは日本冷凍トン基準(1JRT≒3.86kW)で別物なので、法規手続きの数字には流用しないこと。

冷房負荷の原単位(W/m²)はどこまで信用していい?

基本設計の概算用と割り切ってほしい。プリセットの値(事務所100・商業150・病院/ホテル110・学校80W/m²)は空気調和・衛生工学会系文献の代表値だが、同じ事務所でもガラス面積・方位・OA機器密度・在室人数によって実負荷は±3割ほど平気でぶれる。方式比較や予算取りの段階では十分役立つ一方、実施設計では必ず建物ごとの熱負荷計算に置き換えること。

空冷HPチラーと水冷チラーはどう選び分ける?

ざっくり言えば規模と管理体制で決まる。空冷HPは冷却塔・冷却水配管・水質管理が一切不要で、屋上に置くだけ。数百kW程度までの中小規模やメンテ体制の薄い建物に向く。水冷チラーは冷却塔が必要な代わりに効率が高く大容量機が揃うため、1000kW級以上の大規模建物で本命になる。吸収式はガス・蒸気駆動で受変電容量を抑えられるが、冷却水量が圧縮式の約2倍になる点に注意。本ツールで熱源方式を切り替えると、冷却水量の差を数字で比較できる。

推奨台数はどういうロジックで決めている?

3つの条件を満たす最小台数を推奨している。(1) 必要容量200kW以上なら2台以上を基準にする(1台故障時のN-1冗長と部分負荷効率のため。200kW未満は1台から検討)、(2) 1台あたり容量が10kW以上(未満は個別空調機の領域)、(3) 建物最小負荷率を入力した場合は低負荷運転判定がNGでないこと。あくまで目安であり、実際の台数と機種はメーカー選定資料とライフサイクルコストで確定してほしい。

入力した建物データはどこかに保存される?

どこにも保存・送信されない。計算はすべてブラウザ内のJavaScriptで完結し、延床面積や冷房負荷の値がサーバーへ送られることはない。計画中の物件情報を入れても外部に出ないので、社外秘の案件検討にも安心して使える。ページを閉じれば入力値は消える。

まとめ

熱源容量の概算は、原単位・余裕率・USRT換算・台数分割・流量計算と、作業自体は単純なのに参照する資料が散らばりがちだ。本ツールなら負荷入力から推奨台数・冷水/冷却水流量まで1画面で終わる。上流の負荷側は /cooling-load-calc、下流は /cooling-tower-select/pump-head-calc/expansion-tank-sizing と組み合わせれば、熱源まわりの基本設計が一気通貫でつながる。改善要望や「この機能が欲しい」があれば、お問い合わせページから気軽に声を届けてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。熱源更新の検討で容量→USRT→台数→流量の手計算を3周した反省から、この4計算を1画面にまとめた。冷却塔・ポンプのツールと数字がそのまま繋がるのがこだわりだ。

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