その冷凍機に、冷却塔は何トン必要か
150kWのチラーを更新することになった。冷凍機の仕様書に書いてあるのは冷凍能力のkW値。ところが冷却塔のカタログを開くと、能力欄には「50CT」「80CT」と公称冷却トン表記が並んでいる。kWとCTが直結しない——設備設計なら一度はぶつかる、この定番のもどかしさ。
しかも冷却トンは「標準条件での能力」でしかない。冷却水の入口・出口水温、そして設置地域の外気湿球温度が標準からずれれば、同じ熱量を捨てるのに必要な塔の大きさは大きく変わる。kW→CT換算、レンジ・アプローチの算出、アプローチ補正、余裕率の上乗せ、機種刻みへの丸め——この一連の流れを1画面で完結させるのが「冷却塔能力計算・選定ツール」だ。
冷却水量(または冷凍機の冷凍能力)と水温条件を入れるだけで、冷却熱量・レンジ・アプローチ・公称冷却トン換算・推奨冷却塔容量までワンストップで表示。冷凍機モードなら必要冷却水量も逆算する。まずはデフォルト値のまま計算結果を眺めてみて。標準条件の意味が数字で腑に落ちるはず。
なぜ作ったのか — メーカーPDF線図の手前に、計算の足場がほしかった
冷却塔の選定は、最終的にはメーカーの選定線図・選定ソフトで決める。それは今も昔も変わらないし、本ツールもそこを置き換えるつもりはない。問題はその手前だ。
「この150kWチラーに冷却塔は何トンか」をざっくり掴みたいだけなのに、Webで「冷却塔 能力 計算」と検索しても、kWとCTを繋いでくれる計算ツールがほとんど見当たらない。メーカーサイトに飛べば機種ごとにフォーマットの違う選定線図PDFが待っていて、湿球27℃以外の条件を読み取るには慣れが要る。レンジ・アプローチ・冷却トンという概念は教科書に必ず載っているのに、数値を振って感覚を掴める場所がない。
もうひとつ、個人的にヒヤリとした経験がある。吸収式冷温水機の熱源比較をしていたとき、放熱量を圧縮式と同じ感覚で見積もりかけた。吸収式は再生器の加熱分も冷却塔で捨てるから、放熱係数は約2.45倍——圧縮式(約1.25倍)の2倍近い。頭では知っていても、kWからCTへの換算を手計算でやっていると、この係数の掛け忘れが普通に起きる。モード切替と放熱係数をツール側に組み込んでしまえば、この種のミスは構造的に潰せる。
もともと本ツールは、冷房負荷の算出から熱源機器の選定までを一気通貫で扱う空調・換気設備設計というテーマ——その熱源設計の章を、手を動かして確かめられるようにするために作った一連のツール群のひとつだ。冷房負荷をエアコン能力・冷房負荷の計算ツールで求め、熱源機器を選び、その放熱を処理する冷却塔を本ツールで選定し、冷却水ポンプをポンプ揚程計算ツールで検討する。設計フローの「放熱側」を埋めるピースが、ずっと欠けていた。
冷却塔の能力とは — レンジ・アプローチ・湿球温度の三点セット
冷却塔の能力計算を支える2つの温度差「レンジ」と「アプローチ」
冷却塔は、冷凍機で温まった冷却水を大気に放熱して冷やし戻す装置だ。能力の本質は「何kWの熱を大気に捨てられるか」。そして同じ熱量でも、捨てる難易度は2つの温度差で決まる。
- レンジ = 入口水温 − 出口水温。「何℃冷やすか」という仕事量の指標
- アプローチ = 出口水温 − 外気湿球温度。「理論限界まであと何℃の余白で仕事をするか」という難易度の指標
冷却熱量は水の比熱から素直に求まる。
Q[kW] = (冷却水量[L/min] ÷ 60) × 4.186 × レンジ[℃]
たとえば1000L/minを5℃冷やすなら348.8kW。ここまでは単純な熱収支だ。冷却塔選定が一筋縄でいかないのは、次のアプローチが絡むからだ。
冷却塔の限界温度はなぜ湿球温度なのか — 蒸発冷却の原理
開放式冷却塔は、水を充填材の上にばらまいて空気と接触させ、その一部(数%)を蒸発させることで残りの水から熱を奪う。夏の打ち水で路面が涼しくなるのも、汗が乾くとき肌がひんやりするのも同じ気化冷却だ。水1kgの蒸発は約2,500kJもの熱を持ち去る。顕熱のやり取りだけの空冷とは桁違いの放熱密度が出せる理由がここにある。
蒸発で冷やす以上、限界を決めるのは空気の乾球温度ではなく湿球温度だ。湿球温度とは「その空気が水の蒸発で到達できる理論上の最低温度」。空気が乾いているほど蒸発が進み湿球温度は低くなり、飽和空気(湿度100%)では乾球=湿球で蒸発は止まる。だから冷却塔の出口水温は、外気温が35℃あっても湿球27℃なら理論上27℃まで下げられる余地がある。逆にどれだけ巨大な塔を建てても湿球温度以下の水は作れない(詳細はWikipedia: 冷却塔も参照)。設計地点の湿球温度を確認したいときは空気線図・湿り空気計算ツールが使える。
アプローチが小さいということは、この理論限界ギリギリまで水温を詰めるということ。水と飽和空気の温度差(=伝熱の駆動力)が縮むため、同じ熱量を捨てるのに接触面積——つまり塔の体格——が急激に大きくなる。
公称冷却トン(CT)とは — 冷却トンとkWの換算
日本の冷却塔カタログの能力表記「公称冷却トン(CT)」は、日本冷凍空調工業会(JRA)の標準条件で定義された単位だ。
- 標準条件: 冷却水量13L/minを37℃→32℃に冷却、外気湿球温度27℃(レンジ5℃・アプローチ5℃)
- 1CT = 4.535kW(13/60 × 4.186 × 5 = 4.5348kW の慣用丸め値)
つまり CT = 冷却熱量[kW] ÷ 4.535 が冷却トンとkWの換算式。湿球27℃は東京の夏期設計値相当で、日本の標準的な夏を想定した条件といえる。
ただしこの換算は「標準条件なら」の話。実際の設計条件でアプローチが5℃からずれると、メーカー選定線図ではおおむね次の補正が掛かる(本ツール内蔵の代表値テーブル)。
| アプローチ | 補正係数 |
|---|---|
| 3℃ | 1.6 |
| 4℃ | 1.3 |
| 5℃ | 1.0(標準) |
| 7℃ | 0.8 |
| 10℃ | 0.65 |
アプローチを5℃から3℃に詰めるだけで必要容量は1.6倍。逆に乾燥地域でアプローチ7℃が取れれば0.8倍で済む。冷却塔の選定とは、熱量計算とこの補正の掛け算にほかならない。
実務での重要性 — 冷却塔が過小だと冷凍機が止まる
冷却塔の容量不足は「水がぬるいまま戻る」という形で現れる。冷却水温が上がると冷凍機の凝縮圧力が上昇し、最悪の場合は高圧カットで冷凍機が停止する。真夏のピーク、最も冷房が必要な瞬間に熱源が落ちるという、設備設計として一番痛いシナリオだ。停止に至らなくても、一般に凝縮温度が1℃上がると圧縮式冷凍機の消費電力は2〜3%増えるといわれる。冷却塔のケチり分は、冷凍機の電気代として何年も払い続けることになる。
かといって闇雲に大きくすればいいわけでもない。上の補正表が示すとおり、アプローチを1℃詰めるコストは非線形に効く。5℃→4℃で1.3倍、5℃→3℃で1.6倍。出口水温を「あと1℃低く」と欲張った設計条件は、塔の設置面積・重量・価格・ファン動力すべてに跳ね返る。屋上の構造荷重や設置スペースが決まっている改修案件では、アプローチ設定の1℃が成立・不成立を分けることさえある。
そしてもうひとつの実務の落とし穴が吸収式だ。吸収式冷温水機は再生器の加熱分も冷却塔で放熱するため、放熱係数は約2.45倍。圧縮式の約1.25倍に対しほぼ2倍で、同じ冷凍能力でも冷却塔・冷却水ポンプ・冷却水配管が軒並み大きくなる。圧縮式から吸収式への熱源変更を「冷凍機の入れ替えだけ」と見積もると、冷却水系統全部が容量不足という手戻りになる。本ツールはモードを切り替えるだけでこの差が数字で見えるので、熱源方式の比較検討の初手として使ってほしい。
このツールが活躍する4つの場面
冷凍機更新時の冷却塔容量確認。 既設の冷却塔を残して冷凍機だけ更新するとき、新しい冷凍機の放熱量を既設塔が処理できるかを最初に確かめる。仕様書のkW値から推奨CTを出し、既設銘板のCT値と比べるだけ。
基本設計の概算選定。 負荷計算がまとまった段階で、冷却塔の容量帯・設置面積・重量のあたりを付ける。構造・意匠との調整には早い段階の概算値が不可欠だ。
圧縮式と吸収式の熱源比較。 同じ冷凍能力で両モードを計算すれば、放熱量・必要CT・必要冷却水量の差が即座に並ぶ。冷却水系統まで含めたイニシャルコスト比較の出発点になる。
既設冷却塔の能力妥当性チェック。 「夏場に冷却水温が上がり気味」というビルで、銘板CTと現状の運転条件から必要容量を逆算してみる。経年劣化や充填材の汚れを疑う前に、そもそも容量が足りているかを数字で確認できる。
基本の使い方 — 3ステップ
ステップ1: 入力モードを選ぶ。 冷凍機仕様書の冷却水量欄が分かるなら「冷却水量から」。能力しか分からないなら「冷凍機能力から」を選び、冷凍能力kWと冷凍機タイプ(圧縮式×1.25 / 吸収式×2.45)を指定する。
ステップ2: 水温条件を入力。 冷却水の入口/出口水温と設計外気湿球温度を入れる。デフォルトは標準条件の37℃/32℃/湿球27℃。余裕率は経年劣化・充填材汚れを見込んで10%が一般的だ。
ステップ3: 推奨冷却塔容量を確認。 冷却熱量・レンジ・アプローチ・公称冷却トン換算(補正前/補正後)・余裕率込み必要CTと、代表機種刻みから選んだ推奨容量が表示される。冷凍機モードでは必要冷却水量L/minも逆算されるので、そのままポンプ選定に繋げられる。プリセットボタンに代表シナリオを6つ用意してあるので、まず押して挙動を掴むのが早い。
具体的な使用例 — 8ケースの検証データ
実装したツールに実際の値を入力して確認した8ケース。いずれも「入力 → 結果 → 解釈」の3点セットで示す。
ケース1: JRA標準条件の検証(13L/min・37→32℃・湿球27℃・余裕0%) 結果: 冷却熱量4.53483kW、レンジ5℃、アプローチ5℃、補正係数1.00、公称冷却トン1.00CT、推奨10CT(最小機種刻み)。 解釈: 定義どおり13L/minがちょうど1CTになった。ツールの計算基盤がJRA標準条件と整合していることの検証ケース。
ケース2: 150kW圧縮式チラー(37/32/湿球27℃・余裕10%) 結果: 放熱量187.5kW、41.35CT、必要45.48CT、推奨50CT、必要冷却水量537.5L/min。 解釈: 冷凍能力×1.25の放熱がそのままCTに乗る、最も出番の多い定番計算。150kW級チラーに50CT塔という組み合わせの根拠が数字で追える。
ケース3: 100kW吸収式冷温水機(37/32/湿球27℃・余裕10%) 結果: 放熱量245kW、54.02CT、必要59.43CT、推奨60CT、必要冷却水量702.3L/min。 解釈: 冷凍能力はケース2の150kWより小さいのに、必要CTは59.43と上回る。放熱係数2.45の威力であり、吸収式で冷却水系統が軒並み大きくなる理由がこの1ケースで体感できる。
ケース4: 流量1000L/min・標準水温(37/32/湿球27℃・余裕10%) 結果: 冷却熱量348.8kW、換算76.92CT、必要84.61CT、推奨100CT。 解釈: 中規模ビルの熱源クラス。標準条件なら補正係数1.0なので、水量からほぼ直読でCTが出る。
ケース5: アプローチ6℃の補間域(38/33/湿球27℃・1000L/min・余裕0%) 結果: 冷却熱量348.8kW、アプローチ6℃、補正係数0.90、補正後69.23CT、推奨80CT。 解釈: ケース4と同じ流量・同じレンジ5℃で、水温設定を1℃上げてアプローチを6℃に緩めただけで、補正前76.92CTが補正後69.23CTまで下がる。出口水温の1℃が容量に直結する好例。
ケース6: 乾燥地域・湿球25℃(37/32・500L/min・余裕10%) 結果: 冷却熱量174.4kW、アプローチ7℃、補正係数0.80、補正後30.77CT、必要33.84CT、推奨40CT。 解釈: 湿球温度が低い地域ではアプローチが自然に広がり、同じ水温条件でも塔が2割小さくて済む。設計湿球温度の地域差を確認する価値がここにある。
ケース7: 高湿球・アプローチ2.5℃の外挿域(37/30.5/湿球28℃・500L/min・余裕0%) 結果: 冷却熱量226.7kW、レンジ6.5℃、アプローチ2.5℃、補正係数1.75、補正後87.50CT、推奨100CT。 解釈: 同じ500L/minのケース6(補正後30.77CT)と比べ、湿球3℃差と出口水温の詰めで必要容量が3倍近くに膨らむ。アプローチ3℃未満は補正表の外挿域でもあり、ツールも警告を出す。この条件で進めるなら設計条件の見直しかメーカー線図での精査が必須。
ケース8: 工場プロセス大流量(5000L/min・40→32℃・湿球27℃・余裕15%) 結果: 冷却熱量2790.7kW、レンジ8℃、換算615.4CT、必要707.7CT、推奨800CT。 解釈: レンジ8℃の大温度差・大流量プロセス冷却。800CT級となると単セルでは収まらず、複数セル分割やセル台数割りの検討域。概算段階で規模感を掴んでからメーカー相談に入ると話が早い。
8ケースを通して見ると、熱量(流量×レンジ)とアプローチ補正の2軸で必要容量が決まる構図がはっきり分かるはず。
仕組み・アルゴリズム — なぜ標準条件換算+補正係数方式なのか
候補手法の比較
冷却塔の性能計算には、大きく3つのアプローチがある。
- KaV/L法(冷却塔特性法): 充填材の特性値KaV/Lと水空気比L/Gから、任意の水温・湿球条件の性能をエンタルピー差の積分で解く。メーカーの性能設計はこの系統で、厳密。ただしKaV/L値は機種固有でカタログには載らず、設計者側では入手できない。
- NTU-ε法: 熱交換器理論を冷却塔に拡張した方法。これも伝達単位数という機器固有データが前提で、汎用ツール向きではない。
- 標準条件換算+アプローチ補正係数方式(採用): 冷却熱量をJRA標準条件の公称CTに換算し、アプローチのずれを代表補正係数の線形補間で扱う。入力は水量・水温・湿球だけで済み、結果がカタログの公称値と直接比較できる。
本ツールの目的は「カタログのどの容量帯か」を即座に掴む概算選定であって、性能線図の厳密な再現ではない。だから方式3を採用した。補正係数はメーカー選定線図の代表値の目安であり、最終選定は必ずメーカー資料で確認する前提——この割り切りが、入力3〜4項目で答えが出る軽さを生んでいる。
計算フロー
// 1. 冷却熱量
flowモード: Q[kW] = (流量[L/min] ÷ 60) × 4.186 × レンジ
chillerモード: Q[kW] = 冷凍能力[kW] × 放熱係数(圧縮式1.25 / 吸収式2.45)
必要冷却水量[L/min] = Q × 60 ÷ (4.186 × レンジ)
// 2. 標準条件換算(JRA: 1CT = 4.535kW)
baseCT = Q ÷ 4.535
// 3. アプローチ補正(代表値テーブルの線形補間)
// 3℃→1.6, 4℃→1.3, 5℃→1.0, 7℃→0.8, 10℃→0.65
// 3℃未満は 1.6 + (3 − アプローチ) × 0.3 で外挿(参考値)
// 10℃超は 0.65 で頭打ち
correctedCT = baseCT × 補正係数
// 4. 余裕率と機種刻み
requiredCT = correctedCT × (1 + 余裕率/100)
recommendedCT = 代表刻み[10, 20, 30, ... , 800, 1000]の直近上位
(1000CT超は複数セル分割・メーカー相談域)
計算前には物理妥当性チェックが入る。レンジ≦0(入口水温が出口以下)は熱収支として成立しないためエラー。アプローチ≦0(出口水温が湿球以下)は蒸発冷却の理論限界を破るため、こちらもエラーで弾く。アプローチ2℃未満は計算自体は通すが「実用外」の警告を出す仕様だ。
計算例: 150kW圧縮式チラー(ケース2)のステップバイステップ
- 放熱量:
Q = 150 × 1.25 = 187.5kW。圧縮式は冷凍能力に圧縮機動力分が上乗せされる。 - CT換算:
baseCT = 187.5 ÷ 4.535 = 41.35CT。 - アプローチ補正: 出口32℃ − 湿球27℃ = 5℃で標準条件どおり。補正係数1.00、補正後も41.35CT。
- 余裕率:
requiredCT = 41.35 × 1.10 = 45.48CT。 - 機種刻み選定: 45.48CT以上の直近上位 → 推奨50CT。
- 必要冷却水量:
187.5 × 60 ÷ (4.186 × 5) = 537.5L/min。この値がそのまま冷却水ポンプと熱交換器サイジングの入力になる。
手計算でも追える流れだが、アプローチが半端な値(6.3℃など)になると補間計算が入り、モードや余裕率を振るたびに全段やり直しになる。そこを1画面で瞬時に回せるのが、ツール化した意味だ。
メーカー選定線図と何が違う? — Webで完結するクーリングタワー選定計算
冷却塔の選定といえば、メーカーサイトからPDFの選定線図を落としてきて、湿球温度とレンジの曲線を目で追う——これが今も定番のやり方だ。線図は正確だが、読むにはまず機種シリーズを仮決めする必要があり、「湿球温度を1℃変えたらどうなる?」を試すたびに線図を読み直す羽目になる。
本ツールは逆のアプローチを取った。冷却熱量→冷却トン換算→アプローチ補正→機種刻み選定という選定ロジックそのものをWebに載せ、入力を変えた瞬間に推奨容量が更新される。湿球温度を27℃→25℃に振るとアプローチが5℃→7℃に開いて補正係数が1.0→0.80まで下がる、といった感度が数秒で掴める。基本設計や更新検討の「アタリ付け」は本ツール、最終選定はメーカー線図——この使い分けが最短ルートだ。
もう1つの違いは設計フローの連携。負荷側のエアコン能力選定シミュレーターで冷房負荷を掴み、本ツールで熱源放熱側の冷却塔容量と冷却水量を決め、ポンプ揚程・選定計算ツールで冷却水ポンプを選ぶ。熱源まわり一式が単発の電卓ではなく、一気通貫の設計フローとしてつながっている。
白煙・レジオネラ・湿球27℃の由来 — 冷却塔をめぐる豆知識
冬の白煙は煙ではない
冬の朝、冷却塔からもうもうと立ち上る白い煙。あれは燃焼ガスではなく、塔から出た飽和空気が冷たい外気に触れて再凝縮した霧、つまり湯気だ。外気の飽和水蒸気量が小さい冬ほど目立つ。市街地では「火事では」と通報される事例が実際にあり、排気に加熱空気を混ぜて霧を消す白煙防止型冷却塔を選ぶケースもある。
レジオネラと薬注管理
開放式冷却塔は、30〜35℃の水を大気に開放しながら循環させる——レジオネラ属菌にとって好適な環境だ。厚生労働省の指針でも冷却塔は主要な感染源として管理対象になっており、殺菌剤の薬注・定期清掃・水質検査が求められる。設計段階から薬注装置とブローダウンの計画をセットで織り込んでおきたい。
充填材の進化が塔を小さくした
かつての冷却塔は木製スラットに水を滴らせて熱交換していた。現在はPVCフィルム充填材が主流で、薄い水膜を波板状の面に沿わせて気液接触面積を桁違いに稼ぐ。同じ公称冷却トンでも、塔の体積は昔と比べて大幅にコンパクトになった。
なぜ標準湿球温度は27℃なのか
JRA標準条件の湿球27℃は、東京の夏期設計湿球温度に相当する値だ。つまりカタログのCT値は「東京の真夏でこれだけ冷やせる」という約束にすぎない。乾燥地域なら湿球温度を下げて計算すれば塔は一回り小さくでき、逆に高湿球の地域では標準条件のままだと能力不足になる。地域条件を織り込めることが、冷却塔 能力 計算をツール化した意味でもある。
冷却塔選定で失敗しないためのTips
- 余裕率は10%が出発点: 充填材の汚れ・スケール付着・散水の偏りで、実能力は経年で確実に落ちる。10%が一般的な見込み値で、水質が厳しい現場や更新周期が長い案件は15%も検討する。
- 冬期運転は凍結と白煙を先に考える: 寒冷地では下部水槽の凍結防止ヒーターやファン制御が必須。白煙が問題になる立地なら白煙防止型の採用可否を初期段階で確認しておく。
- 設計湿球温度は気象データから: 気象庁の過去の気象データ検索で設置地点の夏期の乾球温度と湿度を拾い、湿り空気線図計算ツールで湿球温度に変換すれば、設計WBに根拠を持たせられる。
- 騒音値もカタログで必ず確認: 冷却塔はファン音と落水音で意外とうるさい。住宅隣接地では低騒音型・超低騒音型の選定と据付位置の工夫が、CT数の選定と同じくらい効いてくる。
FAQ — 冷却トン換算・アプローチの疑問に答える
Q. 冷却トン(CT)とkWの換算は?
1冷却トン = 4.535kW。JRA標準条件(冷却水量13L/minを37→32℃、外気湿球27℃)で定義された値だ。kW→CTは kW ÷ 4.535 で換算できるが、それが通用するのは標準条件のときだけ。アプローチが5℃と異なる場合は補正が必要で、本ツールはその補正まで自動で行う。なお冷凍機側の「日本冷凍トン」(約3.86kW)とは別物なので混同しないこと。
Q. アプローチはどこまで詰められる?
実用的な下限は3℃前後。理論限界は湿球温度そのもの(アプローチ0℃)だが、近づくほど塔は急激に大きくなる。補正係数で見ると5℃→1.0、4℃→1.3、3℃→1.6——1℃詰めるごとに塔が3割ずつ育つ感覚だ。2℃未満は事実上実用外で、本ツールも警告を表示する。出口水温を下げたいなら、まず設計湿球温度の妥当性を疑うのが先だ。
Q. 吸収式はなぜ冷却塔が大きくなる?
圧縮式が捨てる熱は「冷凍能力+圧縮機動力」で放熱係数は約1.25。吸収式は再生器を加熱した熱までまとめて冷却塔で捨てるため約2.45と、ほぼ2倍になる。同じ100kWの冷凍能力でも放熱量は125kW対245kW——冷却塔だけでなく冷却水ポンプも配管サイズもまるごと1クラス上がる。熱源比較では必ずここまで見ること。
Q. 密閉式(クローズド)冷却塔にも使える?
本ツールは開放式冷却塔を想定している。密閉式はコイルを介した間接熱交換になるため、同じ放熱量でも一回り大きな機種が必要で、開放式基準のCT換算はそのまま適用できない。開放式で概算の規模感を掴み、密閉式の実選定はメーカーに依頼する、という使い方にとどめてほしい。
Q. 入力したデータはどこに保存される?
どこにも保存されない。計算はすべてブラウザ内のJavaScriptで完結し、入力値がサーバーへ送信されることはない。案件固有の冷凍機容量や水温条件を入力しても外部には出ないので、業務検討にも安心して使える。
まとめ — 熱源まわりの計算を1本のフローで
冷却塔の選定は、冷却熱量→CT換算→アプローチ補正→機種刻みと、手順さえ分かれば怖くない。本ツールで概算のアタリを付け、最終確認はメーカー線図——この二段構えでいこう。熱源まわりでは、冷房負荷の算定にエアコン能力選定シミュレーター、冷却水ポンプの選定にポンプ揚程・選定計算ツール、熱交換器の検討に熱交換器 伝熱面積計算も併せて使ってほしい。
ツールへの質問や改善要望があれば、お問い合わせから気軽に送ってほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。吸収式の放熱係数(×2.45)を圧縮式の感覚で見積もりかけてヒヤリとした経験から、モード切替だけで係数ミスを構造的に潰せる冷却塔選定ツールにした。
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