鏡板の計算(容量・重量・表面積)

JIS B 8247 の4種類について、呼び径と厚さから容量・内外の表面積・重量・ブランク径・検査寸法をまとめて出す

種類と呼び径(内径)・厚さを入れると、JIS B 8247 の寸法で容量・重量・表面積・ブランク径を出す

よくある鏡板(プリセット)

種類(JIS B 8247)

JIS B 8247 の4種類。半球形は JIS に無い

外径しか分からないときは 外径 − 2×厚さ

呼び径の1/10以下

寸法を直接入れる(任意・空欄なら JIS の標準)

保証厚さ(任意)

重量77.7 kg
JIS寸法内

断面図(皿形鏡板(SD))

T.L.D = 1,000.0Hlt = 9.0rR = 1,000.0

内深さ

193.8 mm

T.L.から内面の頂部まで

高さ H

220.8 mm

内面基準・外面まで 229.8

フランジ部長さ l

27.0 mm

JIS の 3t(20〜38)

中央部の内半径 R

1,000.0 mm

すみ部の丸みの内半径 r

100.0 mm

下限 61.1 mm

容量(合計)

120.2 L

曲面部 98.97 L(0.0990D³)+フランジ部 21.21 L

内面の表面積

1.075 m²

うちフランジ部 0.085 m²

外面の表面積

1.124 m²

うちフランジ部 0.086 m²

ブランク径

1,183.0 mm

板厚中心の面積と同じ円板。トリム代は含まない

板取りの板(正方形)

98.9 kg

1,183.0角 × t の板の重量

基準外周長さ C

3,198.1 mm

(D+2t)×3.1416

真円度の上限

10.0 mm

最大内径 − 最小内径

高さ H の許容範囲

214.5 〜 233.3 mm

JIS B 8247 7.1.2(呼び径1,500以下は −0.625〜+1.25%、超えると −0.625〜+1.0%)

タンク全体の容量・液面はタンク容量計算シミュレーター、必要板厚は圧力容器 板厚計算、外面の面積から塗料の量は塗装膜厚・塗料使用量計算へ。

等厚の理想形として計算した値。実際の鏡板は成形ですみ部などが薄くなり、トリム代・開先も加わる。発注・設計の値は鏡板メーカーの図面と見積で確かめること。

PR

📘 圧力容器・製缶の設計を学ぶ本

関連ツール

「この鏡板、何キロある?」で電卓が止まる

タンクの見積を組んでいると、決まって手が止まる質問がある。「この鏡板、何キロ?」「外面の塗装は何平米?」。胴の部分なら難しくない。円筒は開けば長方形の板なので、周長×長さ×厚さ×比重で重量が出るし、塗装面積も周長×長さで終わる。ところが両端の鏡板になったとたん、式が出てこない。

鏡板メーカーの寸法表を開くと、呼び径と厚さごとに高さや容量は並んでいても、重量や表面積までは載っていないことがある。載っていても材質が手元の条件と違う。R や r を特注にした瞬間に表から外れる。仕方なく平らな円板とみなして概算し、あとで数字が合わずに見積を組み直す。そういう経験がある人は少なくないはずだ。

たとえば JIS の皿形鏡板で、呼び径1,000mm・厚さ9mmの炭素鋼なら、容量は120.2L、外面の表面積は1.124m²、重量は77.7kgになる。成形前の円板に直すと直径1,183.0mm。この数字がその場で出せれば、吊り具の手配も塗料の拾いも板の発注も、電話一本のあいだに片づく。

このツールは、JIS B 8247 の4種類の鏡板について、種類と呼び径(内径)・厚さを入れるだけで、各部の寸法・容量・内外の表面積・重量・ブランク径・検査寸法をまとめて出す。断面図も一緒に描くので、R や r がどこの寸法なのかを図で確かめながら数字を読める。

なぜ作ったのか — 鏡板の式はPDFの奥に散らばっていた

鏡板の容積や表面積の式を探すと、探した範囲では、自治体が出している危険物タンクの容量計算の資料、大学の講義資料、原子力施設の計算書のPDFなどに断片的に載っているだけだった。式そのものはある。けれど、ブラウザに数字を入れてすぐ答えが返ってくる日本語のページは見当たらなかった。

容量だけを出すタンク計算なら見つかる。ただ、それはタンクを使う側の数字だ。鏡板を作る側・買う側が知りたいのは、重量・表面積・ブランク径(成形前の円板の直径)・受入検査で測る寸法のほうで、これらを一度に出してくれるものは無かった。容量が分かっても、重量を出すには板の体積が要る。板の体積を出すには外面の形が要る。結局、自分で式を組み立てるしかなかった。

組み立ててみて、ひとつ落とし穴に気づいた。正半だ円体形の鏡板は内面が半だ円体なので、外面も「半軸にそれぞれ厚さを足した半だ円体」で計算したくなる。ところが、だ円の線から一定の距離だけ外へ平行に移した線は、だ円にならない。呼び径1,500mm・厚さ12mmの正半だ円体形で比べると、外面をだ円で近似したときの殻の体積は、正しい等厚の殻より3.4%小さく出る。重量の見積で3%の差は、鋼材の発注では無視できない。

そこで、皿形・近似半だ円体形・平鏡板は輪郭を円弧として閉じた式で、正半だ円体形の外面は数値積分で、それぞれ近似に頼らずに計算するようにした。R・r の標準値、フランジ部長さ、高さの許容差やすみ部の丸みの下限は、JIS B 8247:2016 の規定どおりに持たせている。

鏡板とは — 胴の端をふさぐ「皿」の寸法を読む

鏡板の各部の名前

鏡板は、円筒形の胴の両端をふさぐ皿状の部材だ。圧力容器や貯槽、貯湯タンクの両端についている、ふくらんだふたの部分を思い浮かべてほしい。平らな板でふさぐより、ふくらませたほうが内圧を板の張力で受けられるので、同じ圧力に薄い板で耐えやすい。用語と種類の概略は 鏡板 (圧力容器) - Wikipedia にもまとまっている。

断面で見ると、鏡板は次の部分でできている。

  • フランジ部: 鏡板の縁にある短い円筒の部分。ここで胴と突き合わせて溶接する。長さを l で表す
  • T.L.(タンジェントライン): フランジ部の円筒と曲面が接する境目。寸法の基準線になる
  • 中央部の内半径 R: 中央の大きな球面の半径
  • すみ部の丸みの内半径 r: 中央の球面とフランジ部をなめらかにつなぐ、小さな円弧の半径
  • 高さ H: フランジ部の端から内面の頂部までの高さ。T.L. から頂部までの「内深さ」に l を足したもの

たとえるなら、皿形鏡板はスープ皿、正半だ円体形鏡板はお椀だ。スープ皿は底が大きな半径でゆるく曲がり、縁の近くでくるっと立ち上がる。お椀は全体が深く丸い。同じ口径でも、お椀のほうがたくさん入るし、器そのものも重くなる。鏡板でもまったく同じで、形の違いがそのまま容量と重量の違いになる。

JIS B 8247 の4種類と寸法の比率

JIS B 8247:2016「圧力容器用鏡板」は、鏡板を4種類に分け、R と r を呼び径 D に対する比率で決めている。規格の本文は JIS 検索(日本産業標準調査会) で規格番号から閲覧できる。

種類記号中央部の内半径 Rすみ部の丸みの内半径 r内深さ
平鏡板FHなし(中央は平ら)3t 以上r と同じ
皿形鏡板SD1.0D0.1D0.1938D
正半だ円体形鏡板ED—(半だ円体)—0.25D
近似半だ円体形鏡板AD0.9045D0.1727D0.2500D

正半だ円体形は、高さからフランジ部を除いた (H − l)/D が1/4になる半だ円体、つまり縦横比2:1の半だ円を回した形だ。近似半だ円体形はそれを2種類の円弧で置き換えた形で、R=0.9045D・r=0.1727D にすると内深さが0.2500D となり、正半だ円体形の D/4 とほぼ重なる。なお、全半球形の鏡板は JIS B 8247 の4種類には含まれていない。

フランジ部長さは厚さの3倍が基本で、ただし最小20mm、最大38mmを超える必要はないとされている。厚さ6mmなら3t=18mmだが20mmに切り上がり、厚さ16mmなら48mmではなく38mmで止まる。

もうひとつ大事なのが、呼び径 D は内径基準だということ。配管の呼び径のような「サイズの名前」ではなく、鏡板の内側の直径そのものを指す。規格が挙げる呼び径の系列は、300〜2,000mm が50mm刻み、2,100〜6,000mm が100mm刻みだ。

鏡板 容量 計算 — 回転体として考える

鏡板は、断面の輪郭を中心線のまわりに1回転させた形(回転体)だ。皿形なら、輪郭は「大きな円弧 R」と「小さな円弧 r」の2本でできている。これを回すと、中央は球の一部(球冠)、すみ部はドーナツ(トーラス)の一部になる。曲面部の容積はこの2つの体積の和で、そこにフランジ部の円筒 π/4 × D² × l を足せば鏡板1枚の容量になる。

まず内深さは、2つの円弧の中心の位置関係から決まる。

a = D/2                 // 内半径
c = a − r               // すみ部の円弧の中心から中心線までの距離
h = R − √((R − r)² − c²) // 内深さ(T.L. から内面の頂部まで)

皿形鏡板 容積 計算式

球冠とトーラスの体積を、球面とすみ部の接点で分けて足し合わせる。接点の位置は、中央の球面の半角 α で表せる。

α  = asin(c / (R − r))        // 中央の球面の半角
zt = r·cos α                  // 接点の高さ(T.L. から)
hc = h − zt                   // 球冠の高さ
V_cap = π·hc²·(3R − hc)/3     // 中央の球冠
I1 = ½·(zt·√(r² − zt²) + r²·asin(zt/r))
V_k = π·(c²·zt + 2c·I1 + r²·zt − zt³/3)  // すみ部(トーラスの一部)
V = V_cap + V_k               // 曲面部の容積(フランジ部を除く)

近似半だ円体形も同じ式に R=0.9045D・r=0.1727D を入れれば済む。平鏡板は中央が平らなので、α=0・zt=r・球冠なしとして、中央の平らな円の部分を足す。正半だ円体形の曲面部は半だ円体そのものなので V = π/24 × D³ になる。

標準寸法のまま計算すると、曲面部の容積と内面積は呼び径の3乗・2乗に比例する係数で整理できる(D を m で入れると m³・m²)。

種類曲面部の容積曲面部の内面積
皿形 SD0.0990D³0.990D²
近似半だ円体形 AD0.1338D³1.104D²
正半だ円体形 EDπ/24·D³(0.1309D³)1.084D²

正半だ円体形の 1.084D² と π/24·D³ は、英語圏の技術資料でも広く使われている値と一致する。皿形と近似半だ円体形の係数は、閉じた式と、輪郭を細かく分割した数値積分の両方で6桁まで一致することを確かめている。同じ呼び径でも、近似半だ円体形の曲面部は皿形の約1.35倍入る。スープ皿とお椀の差だ。

鏡板 表面積 — 内面・外面・板厚中心の3つの面

表面積も回転体として、球冠の面積とトーラスの面積を足す。

A = 2πR²(1 − cos α) + 2πr·(c·(π/2 − α) + r·cos α)

ここで気をつけたいのが、鏡板には厚さがあるので「面」が1枚ではないことだ。液に触れる内面、塗装や保温をする外面、そしてその中間の板厚中心の面がある。容量と内面処理には内面、塗装・保温には外面、板の大きさ(ブランク径)には板厚中心の面を使う。重量は、外面がつくる体積から内面がつくる体積を引いた「殻」の体積に密度を掛けて出す。どの面をどう計算しているかは、仕組みの節で詳しく扱う。

重量・面積・ブランク径 — 鏡板の数字が効いてくるところ

重量は吊り具・運搬・材料費を決める

鏡板の重量は、見積と段取りの両方に直結する。呼び径3,000mm・厚さ16mmの皿形(炭素鋼)なら、1枚で1,180kgになる。1トンを超えると、吊り具やクレーンの選定、トラックへの積み方まで変わってくる。材料費も鋼材のkg単価で積むので、重量の見積がずれればそのまま金額がずれる。胴と同じ感覚で「平らな円板」として概算すると、すみ部とフランジ部の分を取りこぼしやすい。

外面積は塗装・保温、内面積は内面処理

塗装・保温・ライニングの数量は面積で決まる。外面は塗装や保温材、内面は酸洗いや内面コーティングの拾いに使う。呼び径1,000mm・厚さ9mmの皿形なら内面1.075m²・外面1.124m²で、差は5%ほどだが、板が厚くなるほど差は開く。呼び径600mm・厚さ25mmの皿形では内面0.428m²に対して外面0.516m²と、外面が約2割大きい。内面の数字で塗料を手配すると、厚板の鏡板では足りなくなる。

ブランク径は板の手配に効く

鏡板は、平らな円板(ブランク)をプレスやスピニングで成形して作る。円板は正方形の板から切り出すことが多いが、正方形に内接する円の面積は正方形の約78.5%なので、残りの約21.5%は四隅の端材になる。呼び径1,000mm・厚さ9mmの皿形なら、ブランク径1,183.0mm の円板を取るために1,183.0mm角の板(98.9kg)が要り、鏡板そのもの(77.7kg)との差の約21kgが端材だ。材料費は端材込みの板で決まるので、見積では製品重量ではなく板取りの重量で積む必要がある。

すみ部の丸みの下限 r ≧ 3t

JIS B 8247 は、皿形・近似半だ円体形のすみ部の丸みの内半径について r ≧ 3t かつ r ≧ 0.06(D + 2t) を求めている。すみ部は曲がりがきつく、成形でも板が薄くなりやすい場所だ。皿形の標準 r=0.1D は、厚さが呼び径の1/30を超えると 3t を割る。呼び径600mmなら厚さ20mmが境目で、厚さ25mmにすると r=60mm に対して 3t=75mm となり、規格の寸法から外れる。もうひとつの条件 0.06(D + 2t) のほうは、厚さが呼び径の1/10以下なら標準の r=0.1D で必ず満たすので、厚板で効いてくるのは 3t のほうだ。近似半だ円体形は r=0.1727D と大きいので、厚さが呼び径の約1/17までは 3t を満たす。厚い板で皿形を選ぶときは、種類か r の見直しが要る。

保証厚さと必要板厚

成形した鏡板は、場所によって元の板より薄くなる。そこで JIS B 8247 は、材料規格の最小厚さ tmin から厚さ減少分を引いた保証厚さ tg = tmin − t·α(α は厚さ減少率)を定め、成形後の実測厚さがこれを下回ってはならないとしている。設計の側では、この保証厚さが内圧から求めた必要板厚を下回らないことを確かめる。必要板厚そのものは 圧力容器 板厚計算 で出せる。呼び厚さだけ見て足りていると判断すると、成形で薄くなった分の余裕が消えていることに気づけない。

見積から受入検査まで — 鏡板の計算が要る4つの場面

製缶・タンクの見積

タンク1基の見積では、胴と鏡板2枚の重量を積み上げて材料費と運搬費を出す。鏡板の重量と板取りの板の重量がその場で分かれば、端材込みの材料費まで一気に積める。材質を炭素鋼・SUS304・SUS316・アルミ合金から選べるので、同じ寸法で材質違いの見積を並べるのも手早い。

塗装・保温・ライニングの数量拾い

施工側で効くのは表面積だ。鏡板の外面積が分かれば、胴の外面積と足して塗装や保温の総面積が出る。内面ライニングや酸洗いなら内面積を使う。フランジ部の円筒の分も面積に入っているので、T.L. で区切って胴と二重に数えていないかだけ確かめればよい。

鏡板メーカーへ問い合わせる前の当たり

規格外の呼び径や、R・r を変えた特注寸法の鏡板は、メーカーの寸法表に載っていない。問い合わせる前に、どのくらいの深さ・容量・重量になるかを手元で当たっておくと、見積の比較や図面の打ち合わせが速くなる。呼び径が JIS の系列から外れていても計算は出し、系列外であることも知らせる。

鏡板の受入検査

届いた鏡板を検査するとき、内径を直接測るのは難しい。JIS B 8247 は外周の長さを基準外周長さ C = (D + 2t)π で定めており、π は3.1416を使う。内径の代わりに外周の長さで寸法を確かめられるわけだ。高さ H の許容差(呼び径1,500mm以下は −0.625〜+1.25%、超えると −0.625〜+1.0%)と真円度の上限(呼び径の1%)も出すので、検査表の基準値をその場で埋められる。

使い方 — 種類・呼び径・厚さの3ステップ

ステップ1: 鏡板の種類を選ぶ

皿形・正半だ円体形・近似半だ円体形・平鏡板の4つから選ぶ。よくある組み合わせ(一般的な容器、貯湯タンク、圧力容器、大型貯槽など)はプリセットからも入れられる。

ステップ2: 呼び径(内径)・厚さ・材質を入れる

呼び径は内径で入れる。外径しか分からないときは、外径から厚さの2倍を引いた値を入れる。材質は炭素鋼・SUS304・SUS316・アルミ合金から選び、それ以外は密度を直接入れる。R・r・フランジ部長さ l は空欄のままなら JIS の標準値を使い、特注寸法なら任意の欄に入れれば置き換わる。保証厚さを見たいときは、厚さ減少率(と、分かれば材料規格の最小厚さ)を入れる。

ステップ3: 結果と断面図を読む

重量と、JIS の寸法に収まっているかの判定が最初に出る。判定は、すみ部の丸みが下限を割っていないか、呼び径が規格の系列にあるか、R・r・l を直接入れていないかの3点で、どれかに当たるとその旨が表示される。その下に、内深さ・高さ H・l・R・r などの寸法、容量・内面積・外面積、ブランク径と板取りの板の重量、基準外周長さ・高さの許容範囲・真円度の上限が並ぶ。断面図には R・r・H・l・t と T.L. の寸法線が描かれるので、どの数字が鏡板のどこを指しているかを図で確かめられる。結果はまとめてコピーできる。

鏡板 重量 計算の使用例 — 10ケースで確かめる

ここでは10ケースを、入力・結果・読み取り方の順に並べる。数値はすべてツールの計算値で、重量は炭素鋼7.85・SUS304 7.93・SUS316 7.98・アルミ合金2.70 g/cm³ で出している。

ケース1: 一般的な容器(皿形・呼び径1,000mm・厚さ9mm・炭素鋼)

  • 入力: 皿形 SD、呼び径1,000mm、厚さ9mm、炭素鋼
  • 結果: R=1,000mm・r=100mm、内深さ193.8mm、高さH 220.8mm、l=27mm。容量120.2L(曲面部98.97L)、内面積1.075m²・外面積1.124m²、重量77.7kg。ブランク径1,183.0mm、板取りの板98.9kg。基準外周長さ3,198.1mm、高さの許容範囲214.5〜233.3mm
  • 読み取り: l は 3t=27mm がそのまま20〜38mmの範囲に入る。すみ部の丸みの下限は 3t=27mm と 0.06(D+2t)=61.08mm の大きいほうの61.08mmで、r=100mm は余裕をもって満たす

ケース2: 同じ呼び径で近似半だ円体形にする(呼び径1,000mm・厚さ9mm・SUS316)

  • 入力: 近似半だ円体形 AD、呼び径1,000mm、厚さ9mm、SUS316
  • 結果: R=904.5mm・r=172.7mm、内深さ250.0mm、高さH 277.0mm。容量155.0L(曲面部133.8L)、内面積1.188m²・外面積1.239m²、重量87.2kg、ブランク径1,243.1mm
  • 読み取り: ケース1の皿形と比べると、容量は約34.9L・約29%増える。内深さは正半だ円体形の D/4(250mm)とほぼ同じだ。重量は SUS316 で87.2kg、炭素鋼に置き換えると約85.8kg で、皿形の約1.10倍になる。容量を稼ぎたいなら深い形、重量と全長を抑えたいなら皿形、という使い分けが数字で見える

ケース3: 貯湯タンクの小さな鏡板(皿形・呼び径600mm・厚さ6mm・SUS304)

  • 入力: 皿形 SD、呼び径600mm、厚さ6mm、SUS304
  • 結果: 内深さ116.3mm、高さH 136.3mm、l=20mm。容量27.03L、内面積0.394m²・外面積0.414m²、重量19.2kg、ブランク径717.2mm
  • 読み取り: 3t は18mmだが、JIS の最小20mmに切り上がっている。高さ H はこの切り上げ後の l で計算している。すみ部の丸みの下限は36.72mmで、r=60mm は満たす

ケース4: 大型貯槽(皿形・呼び径3,000mm・厚さ16mm・炭素鋼)

  • 入力: 皿形 SD、呼び径3,000mm、厚さ16mm、炭素鋼
  • 結果: 内深さ581.3mm、高さH 619.3mm、l=38mm。容量2,940.7L(曲面部2,672.1L)、内面積9.268m²・外面積9.524m²、重量1,180kg。ブランク径3,458.8mm、板取りの板1,503kg。高さの許容範囲600.6〜649.3mm
  • 読み取り: 3t=48mm は最大38mmで止まる。呼び径が1,500mm を超えるので、高さの許容差の上側は +1.25% ではなく +1.0% になる。鏡板1枚で1トンを超え、ブランク径も3.4mを超えるので、板の手配と運搬の段取りを早めに決めたい大きさだ

ケース5: 圧力容器(正半だ円体形・呼び径1,500mm・厚さ12mm・炭素鋼)

  • 入力: 正半だ円体形 ED、呼び径1,500mm、厚さ12mm、炭素鋼
  • 結果: 内深さ375.0mm、高さH 411.0mm、l=36mm。容量505.4L(曲面部441.8L)、内面積2.609m²・外面積2.709m²、重量250.4kg。ブランク径1,839.8mm、板取りの板318.9kg。高さの許容範囲401.6〜429.8mm
  • 読み取り: 内深さは D/4 ちょうどの375mm。重量は外面を等厚の殻として計算した値で、外面をだ円で近似すると殻の体積が3.4%小さく出る。呼び径1,500mm は「1,500mm以下」に入るので、許容差の上側は +1.25% だ

ケース6: 平鏡板(呼び径800mm・厚さ9mm・炭素鋼)

  • 入力: 平鏡板 FH、呼び径800mm、厚さ9mm、炭素鋼
  • 結果: r=27mm、内深さ27.0mm、高さH 54.0mm、l=27mm。容量26.76L(曲面部13.18L)、内面積0.609m²・外面積0.647m²、重量44.4kg、ブランク径894.1mm
  • 読み取り: r を空欄にすると下限の 3t=27mm を使う。r が下限とちょうど同じ値なので、判定は境界で「満たす」側になる。中央が平らなので、容量のほぼ半分はフランジ部の円筒が占めている

ケース7: 厚い板で、すみ部の丸みが下限を割る(皿形・呼び径600mm・厚さ25mm・炭素鋼)

  • 入力: 皿形 SD、呼び径600mm、厚さ25mm、炭素鋼
  • 結果: r=60mm、下限75mm。内深さ116.3mm、高さH 154.3mm、l=38mm。容量32.12L、内面積0.428m²・外面積0.516m²、重量92.5kg、ブランク径774.5mm
  • 読み取り: 標準の r=0.1D=60mm が 3t=75mm を下回るので、すみ部の丸みが JIS の下限を割っていると知らせる。0.06(D+2t)=39mm のほうは満たしている。計算そのものは出すので、重量や面積の当たりは取れる。実際に作るなら近似半だ円体形にするか、r を大きくした寸法を検討する

ケース8: R・r・l を特注寸法で入れる(皿形・呼び径1,000mm・厚さ8mm・R800・r80・l50)

  • 入力: 皿形 SD、呼び径1,000mm、厚さ8mm、R=800mm、r=80mm、l=50mm、炭素鋼
  • 結果: 内深さ215.2mm、高さH 265.2mm。容量141.5L(曲面部102.2L)、内面積1.145m²・外面積約1.19m²、重量73.3kg、ブランク径1,219.0mm
  • 読み取り: R を標準の1.0D より小さくすると、中央が深くなる。曲面部の容積はケース1の皿形(98.97L)より約3%大きい。すみ部の丸みの下限は max(24, 60.96)=60.96mm で、r=80mm は満たす。l を入れたので、3t の自動値ではなく50mm で計算している

ケース9: 保証厚さを出す(皿形・呼び径1,000mm・厚さ10mm/9mm)

  • 入力A: 皿形 SD、呼び径1,000mm、厚さ10mm、炭素鋼、材料規格の最小厚さ9.7mm、厚さ減少率10%
  • 結果A: 保証厚さ 8.7mm(9.7 − 10×0.10)。重量87.3kg
  • 入力B: 皿形 SD、呼び径1,000mm、厚さ9mm、炭素鋼、最小厚さは空欄、厚さ減少率12%
  • 結果B: 保証厚さ 7.92mm(9 − 9×0.12)。重量77.7kg
  • 読み取り: 最小厚さを空欄にすると呼び厚さ t をそのまま使う。保証厚さは厚さ減少率を入れたときだけ出る。重量は呼び厚さで計算した値なので、成形で薄くなった分は差し引いていない。保証厚さが必要板厚を下回るなら、板を一段厚くする

ケース10: JIS の系列に無い呼び径(皿形・呼び径1,234mm・厚さ6mm・アルミ合金)

  • 入力: 皿形 SD、呼び径1,234mm、厚さ6mm、アルミ合金
  • 結果: R=1,234mm・r=123.4mm、内深さ239.1mm、高さH 259.1mm、l=20mm。容量209.9L、内面積1.585m²・外面積1.625m²、重量26.0kg、ブランク径1,429.4mm
  • 読み取り: 1,234mm は表3の系列(50mm刻み・100mm刻み)に無いので、系列外であることを知らせたうえで理論形状のまま計算する。手に入るかどうかはメーカーに確かめる。アルミ合金は密度が鋼の約1/3なので、同じ寸法の炭素鋼より大幅に軽い

以上の10ケースで、種類の違い、フランジ部長さの切り上げ・切り下げ、すみ部の丸みの下限、特注寸法、保証厚さ、系列外の呼び径までひととおり確かめられる。

仕組み・アルゴリズム — 円弧は閉じた式、だ円のオフセットは数値積分

手法の比較 — 容積係数か、回転体の式か

鏡板の容量の出し方には、大きく2つある。

  1. 容積係数を掛ける簡便法: 皿形なら 0.0990D³ のように、種類ごとの係数に呼び径の3乗を掛ける。手軽だが、R・r を特注寸法にした鏡板には使えない。重量や表面積も出せない
  2. 回転体の閉じた式+数値積分(採用): 輪郭を円弧やだ円に分け、回転体として容積と面積を計算する。R・r・l を自由に変えられ、内面・外面・板厚中心の3つの面を同じ道具で扱える

このツールは重量・表面積・ブランク径まで出すのが目的なので、2を選んだ。係数は結果として出てくるもので、入力ではない。

計算の流れ

// 1. 種類から R・r を決める(空欄なら JIS の比率、入力があれば置き換え)
// 2. 内面: 輪郭を円弧に分け、閉じた式で 内深さ・容積・面積
// 3. 外面: a・R・r に t を足して 2 と同じ関数に渡す
// 4. 板厚中心: a・R・r に t/2 を足して 2 と同じ関数に渡す
// 5. 正半だ円体形だけは 3・4 を数値積分で置き換える
// 6. フランジ部の円筒(π·a²·l、2π·a·l)を足す
// 7. 重量 = (外面の容積 − 内面の容積 + フランジ部の殻) × 密度
// 8. ブランク径 = 板厚中心の面積と同じ面積の円板の直径

3と4が同じ関数で済むのは、円弧を一定の距離だけ外へ平行移動させた線が、中心を共有する一回り大きな円弧になるからだ。すみ部の円弧の中心位置 c は変わらず、半径だけが t(または t/2)ずつ大きくなる。外面の深さは内深さに t を足した値になり、T.L. の高さは内面と外面でそろう。

正半だ円体形の外面は、だ円にならない

だ円には円のような「同心」の性質が無い。内面の輪郭を P(u) = (a·sin u, b·cos u) と媒介変数で書き、各点で外向きの法線方向に厚さ s だけ移した点を Q(u) = P(u) + s·n(u) とすると、Q がつくる線は半軸 (a+s, b+s) のだ円とは一致しない。頂部付近では曲率が小さくて差が出にくいが、すみに近い曲率の大きい部分で食い違う。

そこで、Q(u) を u=0〜π/2 の範囲で回転させた容積と面積を、シンプソンの公式 で2,000分割して積分している。結果は、等厚の殻の体積を曲面の性質だけで表す Steiner の式(殻の体積 = tA + t²∫H dA + 2πt³/3、H は平均曲率)と突き合わせ、呼び径1,500mm・厚さ12mm と 呼び径500mm・厚さ4mm の両方で相対差 4×10⁻¹⁰ に収まることを確かめた。外面を (a+t, b+t) のだ円で近似した場合は、同じ条件で殻の体積が3.4%小さく出る。

ブランク径を板厚中心の面積で取る理由

板を曲げると、外側は伸び、内側は縮む。そのあいだにある板厚中心の面は伸び縮みしない(中立面)とみなせる。成形前の円板の面積は、この中立面の面積と等しいと考えるのが自然だ。内面の面積で取ると円板が小さすぎ、外面で取ると大きすぎる。そこで、板厚中心の曲面の面積にフランジ部の 2π·(a + t/2)·l を足した A_mid から、ブランク径 = √(4·A_mid/π) を出している。

この考え方は重量の計算と矛盾しない。ケース1のブランク径1,183.0mm の円板に厚さ9mmと密度7.85を掛けると77.66kgで、殻の体積から出した重量77.66kg と一致する(差は厚さの3乗に比例する小さな項だけ)。なお、実際の発注ではトリム代(仕上げ代)が加わるが、メーカーごとに違うので含めていない。

計算例1 — 皿形・呼び径1,000mm・厚さ9mm(ケース1)

a = 500, R = 1000, r = 100, c = a − r = 400
α  = asin(400 / 900)          = 26.3878°
zt = 100·cos α                = 89.5806 mm
h  = 1000 − √(900² − 400²)    = 193.7742 mm
hc = h − zt                   = 104.1936 mm
V_cap ≈ 32.92 L,  V_k ≈ 66.04 L
曲面部 V = 98.966 L
フランジ部 π·500²·27         = 21.21 L
容量 = 98.966 + 21.21        = 120.17 L

外面は a=509・R=1,009・r=109 として同じ流れで計算し、外面の容積と内面の容積の差にフランジ部の殻を足して密度を掛けると、重量77.66kg になる。

計算例2 — 正半だ円体形・呼び径1,500mm・厚さ12mm(ケース5)

曲面部 V = π/24 × 1.5³ m³       = 441.79 L
フランジ部 π·0.75²·0.036 m³     = 63.62 L
容量                            = 505.40 L
内面積 = 1.084 × 1.5² + 2π·0.75·0.036
       = 2.439 + 0.170          = 2.609 m²

内面は半だ円体そのものなので係数で検算できる。外面と板厚中心だけを数値積分に回し、重量250.44kg とブランク径1,839.8mm を出している。

鏡板の計算ツールとしての立ち位置と、関連ツールとの分担

鏡板の数字を調べる手段がほとんど無いことは、冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおりだ。ここでは、手に入る別の手段と比べて何が違うのか、そしてこのサイトのほかのツールとどう仕事を分けているのかに絞って書く。

海外の計算サイト・メーカーの寸法表との違い

英語圏には鏡板の容積を出す計算ページがいくつかあるが、目にしたものの多くは ASME 系の皿形(すみ部の丸みが直径の6%)や 2:1 の半だ円体形を前提にしていて、JIS B 8247 の皿形(すみ部が内径の10%)や近似半だ円体形、平鏡板はそのままでは選べない。単位もインチとガロンが基本だ。一方、国内の鏡板メーカーの寸法表は JIS の形どおりで信頼できるが、載っているのは呼び径と高さが中心で、重量や表面積まで揃っている表は多くない。

このツールは JIS の4種類をそのまま選べて、容量・内外の表面積・重量・ブランク径・基準外周長さ・高さの許容範囲・保証厚さを一度に出す。容量だけ、重量だけの計算ではなく、見積と検査で同時に要る数字をひとまとめにした点がいちばんの違いだ。R・r・フランジ部長さを空欄にすれば JIS の標準値、数字を入れればその寸法で計算するので、メーカーの図面の値で確かめ算もできる。

このサイトの関連ツールとの役割分担

  • タンク全体の容量と液面からの容量は、タンク容量計算シミュレーターの担当だ。縦型・横型の胴と鏡板を合わせた容量や、液面高さごとの残量はそちらで見る。このツールは鏡板1枚を細かく見るためのもので、液面からの部分容量は出さない
  • 必要な板厚は、圧力容器 板厚計算で JIS B 8265 に沿って出す。そこで決めた厚さをこのツールに入れ、保証厚さが必要板厚を下回っていないかを突き合わせる、という順番になる
  • 塗料の量と缶数は、塗装膜厚・塗料使用量計算の担当だ。このツールが出すのは面積までで、膜厚や体積固形分から決まる塗料の使用量は扱わない
  • 胴やノズルまわりの板金のうち、円錐・レデューサ・エビ曲げ・相貫の展開図は板金展開図メーカーで描ける。鏡板は二方向に曲がった面なので展開図にはならず、代わりにこのツールがブランク径(成形前の円板の大きさ)を出す
  • 胴の重量は、鋼材重量・断面性能計算ツールの円形鋼管で外径と板厚を入れれば1mあたりの重量が出る。鏡板2枚+胴で、容器本体の重量がおおよそ揃う

「鏡板」「トリスフェリカル」「コルブボーゲン」――呼び名から見る鏡板

「鏡板」はもともと枠にはめる板の名前

「鏡板」という言葉は圧力容器だけのものではない。建具や家具では、框(かまち)や額縁の枠の中にはめ込んだ平らな板を鏡板と呼び、能舞台の正面に老松が描かれた羽目板も鏡板だ。雨戸の戸袋をふさぐ板も同じ名前で呼ばれる(Wikipedia「鏡板」)。どれも「枠や筒の口をふさぐ面」という共通点がある。円筒の胴の端をふさぐ部品にこの名前が付いたのは、その見立ての延長と考えると分かりやすい。日本にはこの部品だけを扱う業界団体(日本鏡板工業会)まであり、JIS B 8247 の改正もこの工業会と日本規格協会の申出で行われている。

英語名は形をそのまま言っている

皿形鏡板は英語で torispherical head と呼ばれる。torus(ドーナツ面)と spherical(球面)を合わせた言葉で、中央の球面とすみ部のドーナツ面の継ぎ合わせ、という構造そのものだ。flanged and dished(略して F&D)という呼び方もあり、こちらは「フランジを立てて皿状にした」という作り方を表している。正半だ円体形は ellipsoidal head、あるいは 2:1 semi-ellipsoidal head だ。2:1 は半径と深さの比のことで、深さが内径の4分の1、つまり半径の半分になる形を指している。

ドイツの規格の呼び名と、半径の基準の違い

ドイツには DIN 28011 の Klöpperboden(クレッパー形) と DIN 28013 の Korbbogenboden(コルブボーゲン形) がある。ドイツ語版 Wikipedia の解説(Gewölbter Boden)によると、クレッパー形は中央の半径が外径に等しく、すみ部が外径の0.1倍、コルブボーゲン形は中央が外径の0.8倍、すみ部が0.154倍で、コルブボーゲン形のほうが深い。同じ解説には、ASME の F&D は中央が外径と同じで、すみ部が0.06倍だとも書かれている。

ここで気をつけたいのは、ドイツの比率が外径に対して書かれていることだ。JIS の呼び径は内径基準なので、「中央の半径は直径と同じ」という一見同じ言い回しでも、どちらの直径を指すかで寸法が変わる。海外製の鏡板の寸法を JIS の表と見比べるときは、まず基準の直径を確かめたい。

Korbbogen はもともと建築の言葉で、「籠の取っ手のアーチ」を意味する。半径の違う円弧を3つ、5つとつないで、両端から頂部へ向かうほど半径が大きくなるようにした平たいアーチのことだ。円弧の組み合わせで楕円に似せた輪郭を作る、という発想は鏡板の近似半だ円体形と同じで、上の解説も、コルブボーゲン形はアメリカで使われる 2:1 の半だ円体形にかなり近いと書いている。英語圏の資料では、その 2:1 の半だ円体形を中央の半径およそ0.9D・すみ部およそ0.17Dの円弧で近似すると説明されることが多く、JIS の近似半だ円体形の R・r(「各部の寸法」の節の表の値)もこの比率に近い。国や規格が違っても、楕円を円弧2つで置き換えるという落としどころは似たところに収まっている。

現場で効く小技:外径の測り方・板取り・塗装面積の二重計上

  • 外径しか分からない鏡板は、巻尺1本で内径に直す。据え付け済みのタンクで内径が測れないときは、フランジ部(胴との溶接線の近く)で外周を巻尺で測り、3.1416 で割って外径にする。あとは「使い方」の節のとおり内径に直して入れればいい。巻尺は軸に直角に、たるませずに回すこと。保温が巻いてあると外周が大きく出るので、外装の上から測った値は使えない
  • 受入検査の外周は2〜3か所で測る。ツールが出す基準外周長さは、外周長さを基準とする鏡板(A種)の受入で、巻尺の実測と比べるための値だ。1か所だけだと巻尺の斜めがけで長めに出やすいので、位置を変えて測り、ばらつきが大きいときは真円度も疑う。内径を基準とする鏡板(B種)では、内径を向きを変えて何か所か測るほうが合っている
  • 塗装・保温の面積はフランジ部を二重に数えない。外面の表面積にはフランジ部の直線部分が含まれている。胴の長さをタンジェントライン間(T.L.〜T.L.)で拾うと、胴の側にもフランジ部が入るので、そのまま足すと二重計上になる。差し引くフランジ部の外面積は、外面の表面積の内訳として別に出るので、その分を引けばよい。手元で確かめるなら、基準外周長さ × フランジ部長さでほぼ同じ値になる
  • 板の手配はブランク径に余裕を足し、定尺の幅と比べる。ブランク径はトリム代(仕上げ代)を含まない値だ。メーカーごとのトリム代を足した径が、手配したい板の幅(4×8 の定尺なら1,219mm)に収まるかを先に見ておくと、継ぎ板が要るかどうかが早く決まる。開先加工やトリム代のぶん、材料費の重量は計算より増える
  • 重量の検算は「1平方メートル・1ミリで7.85kg」。鋼板は面積1m²・厚さ1mmあたり約7.85kgなので、内面と外面の表面積の平均 × 厚さ(mm)× 7.85 で、ツールの重量とおおむね同じ値になる。桁違いの入力ミスに気づくための、いちばん手早い検算だ

鏡板の計算でよく聞かれること

半球形(全半球形)の鏡板は計算できない?

このツールでは選べない。対象を JIS B 8247 の鏡板にそろえていて、この規格の種類は皿形・正半だ円体形・近似半だ円体形・平鏡板の4つで、全半球形は入っていないからだ。半球形の容量だけを知りたいなら、タンク容量計算シミュレーターで鏡板の形に半球を選べば、タンク全体の容量の中で扱える。重量や表面積は半球の式で直接出せるが、JIS の寸法や許容差の裏付けが無い形を同じ画面に並べると、どこまでが規格どおりなのかが分からなくなるので、あえて入れていない。

成形で薄くなった分は、重量に入っている?

入っていない。重量も表面積も、呼び厚さ t のまま全体が等しい厚さの理想形として計算している。実際の鏡板は、プレスやへら絞りで成形するときにすみ部などが薄くなるので、完成品の重量はこの計算値からずれる。ずれの大きさは成形方法・板厚・メーカーで変わり、一律の値が無いので割り引きはしていない。厚さ減少率を入れたときに変わるのは保証厚さだけで、重量は変わらない。吊り具の選定や運搬の手配には計算値をそのまま使い、正確な値が要るときはメーカーの図面と見積の重量で確かめてほしい。

正半だ円体形の外面を楕円として手計算したら、少し違う値になった

外面を楕円として扱うと少し小さく出る。正半だ円体形の内面は楕円だが、等しい厚さの板の外面は楕円にはならないからで、理由は「計算の仕組み」の節で説明したとおりだ。どちらを使うかで迷ったら、重量や外面積はツールの値を使えばいい。メーカーの資料や手元の Excel と数パーセント食い違ったときは、どちらかがこの近似を使っていないかを最初に疑うと原因にたどり着きやすい。比べ方の具体例は、使用例の正半だ円体形のケースを見てほしい。

R や r を入れたのに、結果が変わらないのはなぜ?

種類によって使わない欄があるからだ。正半だ円体形は形が深さの比だけで決まるので、中央部の半径 R もすみ部の丸み r も使わない。平鏡板は中央が平らなので R を使わず、使うのは r だけだ。使われない欄に値を入れると、欄の下に「計算に入っていない」と一行出る。皿形や近似半だ円体形で値を入れて変わらない場合は、入れた値が JIS の標準値とたまたま同じでないかを確かめてほしい。空欄に戻せば、いつでも JIS の標準値で計算し直せる。

基準外周長さの円周率が 3.1416 なのはなぜ?

JIS B 8247 が基準外周長さを (D + 2t) × 3.1416 と決めているからだ。基準外周長さは、受入検査で巻尺の実測と比べるための規格上の基準値なので、規格の書き方にそのまま合わせている。もっと桁の多い円周率で計算しても、差は呼び径6,000mmの鏡板でも1mmに遠く及ばず、巻尺の読みの細かさより小さい。一方、容量・表面積・重量の計算には通常の桁の円周率を使っているので、こちらは 3.1416 の丸めの影響を受けない。

入力した寸法や材質は、どこかに送られる?

送られない。計算はすべて開いているブラウザの中で行っていて、呼び径・厚さ・材質・R や r などの入力値を外部のサーバーに送ったり、保存したりはしていない。社外に出せない案件の寸法を入れても、画面を閉じれば手元にも残らない。結果を見積書や検査記録に残したいときは、コピー機能で結果をテキストにして、自分の書類に貼り付けて使ってほしい。

まとめ

鏡板1枚の容量・表面積・重量・ブランク径・検査寸法は、このツールでまとめて出せる。容器全体で考えるときは、次のツールと組み合わせると数字が一通り揃う。

欲しい鏡板の形や出してほしい数字があれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。鏡板の重量を平らな円板で概算して見積を組み直した経験から、正半だ円体形の外面が楕円にならないことまで式で詰めて作ったツールだ。

運営者情報を見る

© 2026 鏡板の計算(容量・重量・表面積)