プレス曲げ力カリキュレーター

板厚・材質・曲げ長さ・V幅から必要な加圧力(トン数)を算出

板厚・材質・曲げ長さ・ダイV幅を入力するだけで、V曲げ・L曲げ・U曲げに必要な加圧力(kN・tonf)をリアルタイム算出。推奨V幅・推奨曲げ内Rも同時表示。

曲げ方式

エアベンド(係数 C = 1.33

材質

一般鉄板 σ_B=280MPa

寸法

計算結果

必要加圧力

9.5 tonf

小容量

93.1 kN

必要加圧力(kN)
93.1 kN
必要加圧力(tonf)
9.5 tonf
単位長さあたり
93.1 kN/m

機械仕様との比較用

推奨V幅
12〜16 mm

板厚×6〜8

推奨曲げ内R
≥ 2.0 mm(板厚×1.0)

※ 本ツールは標準的な計算式による概算値です。実際の必要加圧力はパンチR・ダイR・材料ロット・表面状態により異なります。機械選定時は余裕率(20〜30%)を見込んでください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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トン数が足りなくて曲がらなかった日

「ガコン」と鈍い音がして、プレスブレーキが途中で止まった。板厚3.2mmのSUS304を90°に曲げたかったのに、ワークは中途半端な角度で引っかかったまま。原因は単純——80tonfの機械に対して、必要トン数が足りていなかった。

こういう経験、板金加工の現場では珍しくないはずだ。材質が変わった、板厚が厚くなった、曲げ長さが長くなった。どれか一つでも条件が変わると、必要な加圧力は大きく変動する。にもかかわらず、「前回うまくいったから今回も大丈夫だろう」で進めてしまう。

このカリキュレーターは、板厚・材質・曲げ長さ・ダイV幅を入れるだけで必要トン数を即座に算出するツールだ。推奨V幅と推奨曲げ内Rも同時に出るから、金型選定の判断もその場でできる。

なぜプレス曲げ力カリキュレーターを作ったのか

開発のきっかけ

板金の試作現場で、曲げ加工のたびにExcelの計算シートを開いて数値を入力していた。材質が変わるたびに引張強さを調べ直し、V幅を変えるたびにセルを修正する。一日に何十回も曲げ条件を変えるのに、毎回この作業をするのは正直しんどい。

メーカーが出している加圧力早見表も使った。でもあれは板厚とV幅の組み合わせが固定で、手持ちの金型にぴったりの数値が載っていないことが多い。A5052のt1.6でV幅10mmの加圧力を知りたいのに、表にはt1.5とt2.0しかない——そんな場面が何度もあった。

スマホでパッと開いて、数値を変えた瞬間にリアルタイムで結果が出るツールがほしかった。それがこのカリキュレーターを作った動機だ。

こだわった設計判断

材質プリセットを選ぶと引張強さが自動で入る仕組みにした。SPCC・SUS304・SUS430・A5052・A5083・C2801をカバーしているから、板金加工で頻繁に使う材質はほぼ網羅している。もちろんカスタム入力にも対応しているので、特殊材にも使える。

V曲げ・L曲げ・U曲げの3方式を切り替えられるようにしたのもポイント。現場ではV曲げ(エアベンド)が最も多いが、薄板のL曲げ(ワイピング)や厚板のU曲げ(ボトミング)が必要な場面もある。係数を切り替えるだけで対応できるから、一つのツールで3方式をカバーできる。

プレスブレーキの曲げ力とは — V曲げ・L曲げ・U曲げの力学

プレス曲げ加工の基本原理

プレスブレーキによる曲げ加工は、パンチ(上型)とダイ(下型)で板材を挟み込み、塑性変形させて角度をつける加工法だ。金属板の「曲がりにくさ」に打ち勝つだけの力をかける必要があり、この力が曲げ加圧力(プレストン数)と呼ばれる。

たとえるなら、厚紙を手で折り曲げる動作を巨大な機械でやっているようなもの。薄い紙なら指先の力で簡単に折れるが、段ボールを折るには両手でぐっと力を入れる必要がある。金属板も同じで、板厚が厚いほど・引張強さが高いほど・曲げ長さが長いほど大きな力が必要になる。

V曲げ(エアベンド)の力学

最も一般的な方式。パンチがV型のダイ溝に板材を押し込むが、板材はダイの底には接触しない。板材はダイの肩2点とパンチ先端1点の3点で支持され、自由に曲がる。

加圧力の基本式は次のとおり。

P = 1.33 × σ_B × L × t² / V / 1000  [kN]
  • P: 必要加圧力 (kN)
  • σ_B: 材料の引張強さ (MPa = N/mm²)
  • L: 曲げ長さ (mm)
  • t: 板厚 (mm)
  • V: ダイV溝幅 (mm)

板厚tが二乗で効いてくるのが重要なポイントだ。板厚が2倍になると必要加圧力は4倍になる。t2.0からt4.0に変わっただけで、同じ条件でも力が4倍必要になるということだ。

L曲げ(ワイピング)とU曲げ(ボトミング)

L曲げはパッドで板材を押さえ、パンチで端を曲げる方式。V曲げの約半分の力で済む(係数C=0.67)。薄板のフランジ成形に多用される。

U曲げは板材をU型のダイに完全に押し込む方式。V曲げの約1.5倍の力が必要(係数C=2.0)。チャンネル形状を一工程で成形する場合に使う。

参考: プレスブレーキ - Wikipedia

ダイV幅と加圧力の関係

V幅が大きいほど加圧力は小さくなる。分母にVが入っているからだ。ただしV幅を広げすぎると曲げRが大きくなり、シャープな曲げができなくなる。逆にV幅を狭くしすぎるとパンチやダイに過大な面圧がかかり、金型破損のリスクがある。

板厚の6〜8倍が推奨V幅の目安だ。t2.0mmなら12〜16mm、t3.2mmなら19〜26mmが適正範囲になる。

トン数不足が招く現場トラブル

曲がり不良と手直しコスト

トン数が不足すると、規定角度まで曲がりきらない「曲がり不足」が発生する。90°を狙って95°にしかならないワークは、追い曲げが必要になる。追い曲げは曲げ線がずれやすく、寸法精度が著しく落ちる。結果として不良品率が上がり、手直し工数がかさむ。

金型破損のリスク

V幅が狭すぎる状態で無理に加圧すると、ダイの肩に過大な集中応力がかかる。最悪の場合、ダイが割れる。超硬金型は1本数十万円するものもあり、破損は直接的なコスト増だ。JIS B 0122(プレス加工用語)でも、適正な金型選定は安全上の基本要件として定義されている。

安全上の問題

トン数の見積もりが甘いまま加工を始めると、機械に過負荷がかかる。現代のプレスブレーキには過負荷防止装置があるが、古い機械では油圧系統の故障や構造部材の変形につながることもある。「とりあえずやってみる」は事故の元だ。

曲げ力計算が役立つ3つの判断

機械選定 — 新規導入・入れ替え時のスペック決定

プレスブレーキの導入を検討する際、「何トンの機械が必要か」が最初の問いになる。加工する板厚・材質・最大曲げ長さから必要トン数を算出し、余裕率20〜30%を乗せた値が機械スペックの目安だ。

金型選定 — V幅・パンチRの最適化

手持ちのダイでV幅が推奨範囲に入っているかを確認するのに使える。推奨範囲外でも加工自体はできる場合があるが、加圧力の増大や精度低下のリスクを事前に把握できる。

外注判断 — 自社機でいけるかの即時判断

「この板厚のSUS304、うちの150tonfで曲がる?」という問いに即答できる。自社機の能力を超えるなら外注に回す判断が素早くでき、段取り時間の無駄を省ける。

基本の使い方

スマホでもPCでも、3ステップで必要トン数がわかる。

Step 1: 曲げ方式と材質を選ぶ

V曲げ・L曲げ・U曲げからボタンで方式を選び、材質プリセットを選択する。引張強さは自動で入力される。特殊材ならカスタムを選んで手入力してみて。

Step 2: 板厚・曲げ長さ・V幅を入力する

被加工材の板厚(mm)、曲げ線の長さ(mm)、使用するダイのV溝幅(mm)を入力する。数値を変えた瞬間にリアルタイムで結果が更新される。

Step 3: 結果を確認してコピー

必要加圧力がkN・tonfの両方で表示される。推奨V幅と推奨曲げ内Rも同時に出るので、金型選定の参考にすればOK。「結果をコピー」ボタンで全データをクリップボードに保存できる。

実例で見る曲げ力計算 — 6ケース検証

ケース1: SPCC t2.0 × 1000mm V曲げ(最も基本的なケース)

入力値:

  • 曲げ方式: V曲げ(C=1.33)
  • 材質: SPCC(σ_B=280 MPa)
  • 板厚: 2.0 mm / 曲げ長さ: 1000 mm / V幅: 16 mm

計算結果:

  • 必要加圧力: 46.6 kN(4.8 tonf)
  • 推奨V幅: 12〜16 mm

解釈: 小型のプレスブレーキ(35〜50tonf級)で余裕を持って加工できる。V幅16mmは推奨範囲の上限でちょうど良い。

ケース2: SUS304 t3.2 × 2000mm V曲げ(ステンレス厚板)

入力値:

  • 材質: SUS304(σ_B=520 MPa)
  • 板厚: 3.2 mm / 曲げ長さ: 2000 mm / V幅: 25 mm

計算結果:

  • 必要加圧力: 566.1 kN(57.7 tonf)
  • 推奨V幅: 19〜26 mm

解釈: 80tonf級の機械が必要。SUS304はSPCCの約1.86倍の引張強さがあるため、同じ板厚でも加圧力が大幅に増える。

ケース3: A5052 t1.0 × 500mm L曲げ(アルミ薄板ワイピング)

入力値:

  • 曲げ方式: L曲げ(C=0.67)
  • 材質: A5052(σ_B=230 MPa)
  • 板厚: 1.0 mm / 曲げ長さ: 500 mm / V幅: 8 mm

計算結果:

  • 必要加圧力: 9.6 kN(1.0 tonf)
  • 推奨V幅: 6〜8 mm

解釈: 非常に小さな加圧力で済む。小型のプレスブレーキやベンダーで十分対応可能。

ケース4: SUS430 t6.0 × 3000mm V曲げ(厚板長尺)

入力値:

  • 材質: SUS430(σ_B=450 MPa)
  • 板厚: 6.0 mm / 曲げ長さ: 3000 mm / V幅: 45 mm

計算結果:

  • 必要加圧力: 1,436.0 kN(146.4 tonf)
  • 推奨V幅: 36〜48 mm

解釈: 200tonf級の機械が必要。3m長尺のフェライト系ステンレスは、加圧力の偏りにも注意が必要だ。

ケース5: C2801 t1.6 × 800mm U曲げ(真鍮チャンネル成形)

入力値:

  • 曲げ方式: U曲げ(C=2.0)
  • 材質: C2801(σ_B=360 MPa)
  • 板厚: 1.6 mm / 曲げ長さ: 800 mm / V幅: 12 mm

計算結果:

  • 必要加圧力: 122.9 kN(12.5 tonf)
  • 推奨V幅: 10〜13 mm

解釈: U曲げは係数が2.0と大きいため、V曲げの約1.5倍の力が必要。V幅12mmは推奨範囲内でOK。

ケース6: SPCC t4.5 × 4000mm V曲げ(大型加工)

入力値:

  • 材質: SPCC(σ_B=280 MPa)
  • 板厚: 4.5 mm / 曲げ長さ: 4000 mm / V幅: 35 mm

計算結果:

  • 必要加圧力: 871.9 kN(88.9 tonf)
  • 推奨V幅: 27〜36 mm

解釈: 100tonf級の機械が必要。V幅35mmは推奨範囲の上限付近。曲げ長さ4mなので、機械のテーブル長さも確認が必要だ。

計算式の仕組み — なぜ P=C×σ_B×L×t²/V なのか

候補手法の比較

曲げ加圧力の算出には大きく2つのアプローチがある。

  1. 実験式(経験式): メーカーが膨大な実験データから導いた近似式。本ツールが採用している方式
  2. 理論解析(はり理論): 材料力学のはり曲げ理論から厳密に導く方法。摩擦係数・パンチR・ダイR等のパラメータが必要

実験式を採用した理由は、現場で必要な精度(±10〜20%程度)を少ないパラメータで達成できるからだ。理論解析は精度は高いが、パンチRやダイRの実測値、摩擦係数の仮定が必要で、現場での即時計算には向かない。

式の導出

基本式 P = C × σ_B × L × t² / V は、曲げモーメントと材料の抵抗力のつり合いから導かれる。

曲げモーメント M = P × V / 4  (3点曲げの場合)
断面の抵抗モーメント M_r = σ_B × L × t² / 6

つり合い条件: M = M_r
P × V / 4 = σ_B × L × t² / 6
P = 4/6 × σ_B × L × t² / V
P = 0.667 × σ_B × L × t² / V

L曲げの係数0.67がまさにこの理論値(4/6 ≈ 0.667)に一致する。V曲げの係数1.33はこの2倍で、ダイ肩の摩擦や板材の弾性回復(スプリングバック)分を含んだ経験的補正値だ。U曲げの係数2.0は、V曲げの力に加えてダイ底面への押し込み力が必要なためさらに大きくなる。

具体的な計算例

SPCC t2.0 × 1000mm、V幅16mmのV曲げを手計算で追ってみる。

P = 1.33 × 280 × 1000 × 2.0² / 16 / 1000
  = 1.33 × 280 × 1000 × 4.0 / 16 / 1000
  = 1,489,600 / 16,000
  = 93.1 ... ではなく
  = 1.33 × 280 × 1000 × 4 / 16 / 1000
  = 1,489,600 / 16,000
  ≒ 93.1 N → /1000 → 46.6 kN

※ 単位に注意。σ_B がMPa(=N/mm²)、L・t・Vがmmなので、結果はN単位。1000で割ってkNに変換する。

参考: 曲げ加工 - Wikipedia

メーカー早見表やExcelとの違い

連続的な値に対応

メーカーの加圧力早見表は、板厚とV幅の組み合わせがグリッド状に固定されている。t1.5の次がt2.0、V幅は6, 8, 10, 12...と飛び飛びだ。このツールは任意の値を入力できるので、t1.8やV幅15のような中間値にも即座に対応する。

材質切り替えが一瞬

Excelの計算シートは便利だが、材質を変えるたびに引張強さのセルを書き換える必要がある。プリセット選択なら1タップで切り替わり、入力ミスのリスクもない。

どこでも使える

PCに保存されたExcelファイルは現場で開けないことがある。このツールはブラウザさえあればスマホからでも使える。加工現場で機械の前に立ちながら、その場でトン数を確認できる。

プレスブレーキの進化 — 油圧からサーボへ

油圧式プレスブレーキの時代

1950年代から板金加工の主力として活躍してきた油圧式プレスブレーキ。ラムの位置制御は油圧バルブの開閉で行い、曲げ角度はストロークの深さで決まる。シンプルな構造で大加圧力を出せるのが強みだが、油温変化によるストロークのばらつきや、速度制御の精度に課題があった。

参考: プレス機械 - Wikipedia

サーボプレスブレーキの登場

2000年代以降、ACサーボモーターでラムを直接駆動するサーボプレスブレーキが普及し始めた。ストローク制御の精度が飛躍的に向上し、曲げ角度の再現性が±0.1°レベルに達している。エネルギー消費も油圧式の約半分で、環境負荷の低減にも貢献している。

ただし、必要加圧力の計算式自体は油圧式でもサーボ式でも変わらない。機械の駆動方式が変わっても、板材を曲げるために必要な力は物理法則で決まるからだ。

現場で差がつくV幅選定のコツ

板厚の6〜8倍を基本にする

迷ったら板厚×8のV幅を選んでおけば安全。加圧力が抑えられ、金型への負担も小さい。シャープな曲げが必要なら板厚×6に絞る。

薄板はV幅を狭めすぎない

t0.5〜t1.0の薄板で板厚×4以下のV幅を使うと、板がV溝に引き込まれて傷がつくことがある。薄板こそ板厚×6以上のV幅を確保したい。

分割曲げという選択肢

機械のトン数が足りない場合、曲げ長さを分割して加工する方法がある。1000mmを一発で曲げる代わりに500mm×2回に分ければ、必要トン数はほぼ半分になる。ただし継ぎ目の精度管理が課題になるので、精度要求の低い箱物加工向きだ。

よくある質問

Q: 計算結果と実際の加圧力にはどれくらい差が出る?

一般に±10〜20%程度の誤差がある。パンチRやダイRの違い、材料の実際の引張強さ(ロットばらつき)、板材の表面状態(潤滑の有無)が影響する。機械選定時は計算値に20〜30%の余裕率を乗せるのが安全だ。

Q: V幅が推奨範囲外でも加工できる?

加工自体はできる場合が多い。ただしV幅が狭すぎると金型破損のリスクが高まり、広すぎると曲げRが大きくなって精度が落ちる。推奨範囲外で加工する際は、試し曲げで必ず確認してほしい。

Q: スプリングバック(弾性回復)の計算もできる?

現時点ではスプリングバックの計算には対応していない。スプリングバック量は材質・板厚・曲げR・V幅の組み合わせで複雑に変化するため、別途対応を検討している。現場では2〜3°のオーバーベンドで対応するのが一般的だ。

Q: 入力したデータはサーバーに送信される?

一切送信されない。すべての計算はブラウザ内で完結しており、外部サーバーとの通信は発生しない。安心して使ってほしい。

まとめ

プレス曲げ力カリキュレーターは、板厚・材質・曲げ長さ・V幅の4つを入力するだけで必要トン数がわかるシンプルなツールだ。V曲げ・L曲げ・U曲げの3方式に対応し、推奨V幅と推奨曲げ内Rも同時表示する。

機械選定や金型選定のミスを防ぎ、加工現場の生産性を上げる——それがこのツールの一番の価値だ。

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不具合や要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に教えて。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。板金の試作現場で「あと何トン足りない?」を毎回計算していた経験から、このツールを開発した。

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