プラズマ切断・ガス切断の条件ガイド

材質と板厚から、プラズマの必要電流・速度・エア量とガス切断の火口番号・圧力・速度を出す

材質と板厚を入れると、プラズマなら必要な電流(きれいに切る・切れる・切り落とすだけの3段階)と速度・エア量、ガスなら火口番号・圧力・酸素の量が出る。手持ちの切断機の定格電流から切れる板厚も逆引きできる。

切断の条件

切断方式(ガス切断は燃料で選ぶ)
求めるもの
材質

プラズマ 0.5〜60mm

電源

結果

きれいに切るには35A 以上
軟鋼 12mm

きれいに切る

35A 以上

500mm/min

切れる

30A 以上

250mm/min

切り落とすだけ

26A 以上

125mm/min

電流別の切断速度(機械トーチ・最良品質)

45A

540 mm/min

65A

960 mm/min

105A

1,810 mm/min

125A

2,050 mm/min

必要エア量

188 L/min

45Aクラスの公表値

エア圧

0.59 MPa

5.9 bar

必要電流は Hypertherm の手持ち切断能力(軟鋼)を補間し、ステンレスは×0.85・アルミは×0.55。速度は Hypertherm の機械トーチ条件表(30A・85Aは非公開)

※メーカーが公表している条件表(Hypertherm・日酸TANAKA・小池酸素・パナソニック)を補間した目安。プラズマの切断能力と速度は新品の消耗品・実験室条件の値で、手持ち作業では速度が表より落ちる。機種・ノズル・エアの質で変わるため、実際の機械の取扱説明書の条件表を優先する。ガス切断は高圧ガス・可燃性ガスを扱う作業で、ガス溶接技能講習の修了が必要

PR

📘 切断作業の関連機材・参考書

関連ツール

「40Aで12mmは切れる?」——カタログの「切断能力」が読めない問題

プラズマ切断機のカタログを並べると、どの機種にも「切断能力◯mm」と1つの数字が書いてある。40A機なら20mm前後、60A機なら30mm超。ところが届いた40A機で16mmの鉄板を切ってみると、裏にドロス(溶けた鉄のつらら)がびっしり付いて、切り口は波打っている。「最大25mmって書いてあったのに、16mmでこれか」——こういう経験、あるよね。

逆の悩みもある。「12mmの鉄板をきれいに切りたい。何Aの機械を買えば足りるのか」。カタログの数字が「やっと切り離せる厚さ」なのか「きれいに切れる厚さ」なのかが分からないので、答えが出ない。ガス切断も事情は似ていて、板厚から火口を何番にして、酸素を何MPaにすればいいかは、メーカーのPDFの奥にある火口能力表を開かないと分からない。

このページのプラズマ切断・ガス切断の条件ガイドは、材質と板厚を入れると、プラズマなら「きれいに切る・切れる・切り落とすだけ」の3段階で必要な電流と、電流別の切断速度・エア量を出す。手持ちの機械の定格電流から、何mmまでなら切れるかを逆に引くこともできる。ガス切断なら火口番号・酸素圧・燃料ガス圧・切断速度と、酸素ボンベ1本で何m切れるかまで出す。数値はすべてメーカーの公表値を補間したもので、どこから来た数字かも以下で全部説明する。

なぜこのツールを作ったのか——同じ「切断能力」で意味が違った

溶接条件セレクターを作ったあと、同じ鉄工所の人に次に聞かれたのが切断だった。「溶接の前に板を切るでしょ。あれも何Aでやればいいか分からない」。それならメーカーの表を並べて答えればいい、と軽く考えて調べ始めたら、そこで手が止まった。

国内メーカーのカタログはどれも「切断能力◯mm」と1つの数字しか書いていない。その数字がどういう条件で測った値なのか、つまりきれいに切れる厚さなのか、ゆっくり動かしてやっと切り離せる厚さなのかが書かれていない。

定義をはっきり書いていたのは米国の Hypertherm だけだった。同社の製品ページは、手持ちトーチの切断能力を3段で公表している。**500mm/min で切れる板厚(Recommended)・250mm/min で切れる板厚(Maximum)・125mm/min でなんとか切り離せる板厚(Severance)**の3つだ。速さで定義しているので、数字の意味がはっきりしている。

この3段の物差しで国内のカタログを読み直すと、面白いことが分かった。パナソニックのエアプラズマ切断機 YP-035PF3(35A)の切断能力12mmは、Hypertherm の数字から補間した35Aの「きれいに切る(500mm/min)」12.0mmとぴったり一致する。ところが同じシリーズの YP-060PF3(60A)は36mm、YP-080PF3(80A)は40mm で、こちらは「切り落とすだけ(125mm/min)」の補間値(60Aで31.3mm、80Aで36.5mm)よりさらに大きい。同じメーカーの同じ「切断能力」という欄でも、機種によって意味が違っていたわけだ。冒頭の「最大25mmなのに16mmでガタガタ」は、使い手の腕ではなく、この定義のずれから来ていることが多い。

ガスのほうは別の不満があった。火口の能力表は日酸TANAKA や小池酸素が公開しているが、技術資料のPDFの1ページで、板厚から火口番号・圧力・速度を一度に引けるページは見つからなかった。酸素ボンベ1本で何m切れるかになると、消費量 L/h と速度 mm/min を自分で割り算するしかない。

そこで、Hypertherm の3段の物差しを軸にしてプラズマの必要電流を3段階で出し、ガスは火口表から酸素の減り方まで一気に出すツールにした。

プラズマ切断とガス切断の仕組み——「溶かして飛ばす」と「燃やして切る」

プラズマ切断とガス切断の違いを第一原理から

金属を熱で切る方法は大きく2つある。どちらも炎や光で切っているように見えるが、中で起きていることはまったく違う。

プラズマ切断は電気の力で切る。トーチの中の電極と板(母材)の間にアーク放電を起こし、そこへ圧縮空気を細いノズルで絞って吹き込む。空気は2万℃前後のプラズマ(電離した気体)になり、細い高速のジェットとして板に当たる。この熱で金属を溶かし、ジェットの勢いで溶けた金属を裏へ吹き飛ばす。溶かして飛ばすだけなので、材質を選ばない。鉄でもステンレスでもアルミでも切れる(電気を通す金属であることは必要)。

ガス切断は化学反応で切る。まず火口の周りの予熱炎(アセチレンやプロパンと酸素の炎)で鉄を赤くなる温度、おおよそ900℃前後まで温める。そこへ中心の孔から純酸素を吹き付けると、鉄そのものが酸素と反応して燃え、酸化鉄(ノロ)になる。この燃焼熱で隣の鉄がまた燃える温度になり、反応が前へ前へと進んでいく。できた酸化鉄は酸素の勢いで吹き飛ばされ、切断溝が残る。

たとえるなら、プラズマ切断はバーナーで氷を溶かすのに近い。外から熱を注いだぶんだけ溶ける。ガス切断はスチールウールに火をつけるのに近い。きっかけの熱を与えたら、あとは材料自身が燃えて広がっていく。ガス切断で100mmを超える厚板まで切れるのは、熱の大半を鉄自身が出しているからだ。

なぜステンレスとアルミはガスで切れないのか

「燃やして切る」には条件がある。燃えてできた酸化物が母材より先に溶けて流れ落ち、次の新しい面が酸素に触れ続けることだ。軟鋼はこの条件を満たす。

ステンレスは、含まれるクロムが表面に緻密な酸化膜を作り、酸素が中の鉄まで届かない。反応が続かないので切れない。アルミはもっと分かりやすい。酸化アルミニウムの融点は約2,070℃で、アルミそのものの融点(約660℃)よりはるかに高い。表面の酸化物が溶ける前に中のアルミが溶けてしまい、燃焼が前に進まない。そのため本ツールでは、ガス切断でステンレスかアルミを選ぶと計算せず、プラズマへ切り替えるよう案内する。

プラズマ切断の電流と板厚の関係——機械選びの目安

プラズマで厚い板が切れるかどうかは、ほぼ切断電流で決まる。電流が大きいほどアークに注がれるエネルギーが増え、同じ速さでより厚い板を溶かし抜ける。逆に同じ板厚なら、電流が大きい機械ほど速く動かせる。

速く動かせるかどうかは、切り口の品質に直結する。適正な速さで動かすと、ジェットが板を真っすぐ貫き、裏のドロスも少ない。電流が足りずにゆっくり動かすしかないと、ジェットが遅れて斜めに当たり、溶けた鉄が裏で固まってつららになる。Hypertherm が速度で3段を定義しているのはこのためだ。

本ツールが Hypertherm の公表値を補間して出す軟鋼の切断能力は次のとおり(手持ちトーチ。60A は45Aと65Aの間の補間値)。

定格電流きれいに切る(500mm/min)切れる(250mm/min)切り落とすだけ(125mm/min)
25A5.8mm9.0mm11.0mm
30A10.0mm12.0mm16.0mm
45A16.0mm22.0mm29.0mm
60A19.0mm24.3mm31.3mm
85A25.0mm32.0mm38.0mm
105A32.0mm38.0mm50.0mm
125A38.0mm44.0mm57.0mm

(出典: Hypertherm Powermax45 XP ほか各製品ページの Cut capacity を本ツールで補間。125A の「きれいに切る」だけは原典の速度が457mm/min)

「きれいに切る」と「切り落とすだけ」の差は、どの電流でも1.5〜1.9倍ある。カタログの1つの数字をどちらの意味で読むかで、選ぶ機械が1〜2クラス変わってしまうということだ。

ガス切断の火口と板厚の選び方

ガス切断では、電流の代わりに**火口(ひぐち)**を板厚に合わせて替える。火口の番号は、主に中心の切断酸素の孔の太さの違いだ。番号が大きいほど孔が太く、多くの酸素を流せるので、厚い板の奥まで燃焼を届かせられる。板厚に対して火口が小さすぎると下まで切り抜けず、大きすぎると酸素が無駄に流れて切り口の上の角が溶け落ちる。

手で持つ中型切断器(通称「中切」)の火口は、小池酸素と日酸TANAKA の資料で区分が一致していて、1番が3〜10mm・2番が10〜20mm・3番が20〜30mm だ。自動切断機の火口はもっと細かく番号が分かれている。本ツールが日酸TANAKA の火口能力表(アセチレン用 3040G)から引いた例は次のとおり。

板厚中切の火口自動切断の火口(適用板厚)酸素圧 / アセチレン圧切断速度
6mm1番0番(6〜9mm)0.20 / 0.02 MPa640 mm/min
20mm2番2番(16〜32mm)0.30 / 0.02 MPa458 mm/min
70mm範囲外5番(50〜100mm)0.40 / 0.03 MPa272 mm/min
150mm範囲外6番(100〜150mm)0.40 / 0.035 MPa150 mm/min

燃料ガスの圧力が0.02〜0.04MPa と酸素に比べて1桁小さいことに気づくと思う。燃料は予熱炎を作るだけで、切断の主役は酸素だからだ。装置や安全の全体像は、Wikipedia のプラズマ切断とガス溶接(ガス切断の項目はここに統合されていて、切断器の種類も載っている)が入口になる。

実務での重要性——電流・エア・酸素が足りないと何が起きるか

電流が足りないプラズマは、後工程の時間を食う

必要な電流に届かない機械で厚い板を切ると、まずドロスが裏に固着する。プラズマのドロスは軽いものならハンマーで落ちるが、遅い速度でできたものは母材に溶け付いて、グラインダーで削るしかない。切断より仕上げのほうが長くかかる、という逆転が起きる。

さらに無理をすると、アークが板を貫き切れずに途中で途切れたり、トーチの先へ溶けた金属が跳ね返ったりする。跳ね返りはノズルと電極を傷め、消耗品の減りが目に見えて早くなる。「機械は動くけど、毎週ノズルを替えている」という現場は、たいてい電流が板厚に対して小さい。

エアの量と圧力が出ないと、電流があっても切れない

エアプラズマは圧縮空気がプラズマの材料そのものだ。Hypertherm は電流クラスごとに推奨のエア入口流量と圧力を公表していて、45Aクラスで188L/min・0.59MPa、105Aクラスで260L/min・0.62MPa になっている。小型のコンプレッサーではこの流量を連続で出せず、切っている途中で圧が落ちてジェットが弱まる。電流は足りているのに急に切れ味が落ちるときは、エアを疑ったほうがいい。なおパナソニックのカタログは60A・80A機の必要エアを173L/min以上・0.49MPa以上としていて、メーカーで要求が違う。本ツールは Hypertherm の公表値を出すので、手持ちの機械の取扱説明書の値も見比べてほしい。

電源で出せる電流には上限がある

家庭の100Vコンセントで動くプラズマ切断機は多いが、出せる電流は限られる。Hypertherm の Powermax30 XP も、120V入力では出力が25Aまでに下がる。日本の100V・15Aのコンセントは米国の120V回路よりさらに余裕が小さいので、本ツールは100Vで25Aを超える電流が必要な場合に注意を出す。

単相200Vにも壁がある。パナソニック YP-060PF3 は三相200Vなら60Aだが、単相200Vでは40Aに下がる。45Aを超える機械は三相前提の機種が多いので、本ツールは単相200Vで45Aを超える場合にも注意を出す。「60A機を買ったのに、工場の単相コンセントでは40A機と同じ厚さしか切れない」という失敗は、購入前に防げる。

ガス切断の酸素圧と、ボンベの減り方

ガス切断では酸素圧が切り口を左右する。圧が低いと燃焼が下まで届かず、切断溝の下側が遅れて(ドラグが大きくなって)切り残しやノッチ(えぐれ)が出る。高すぎると酸素が渦を巻いて切り口が荒れ、上の角が溶け落ちる。

酸素の減り方は板厚で激しく変わる。日酸TANAKA の自動切断条件で、アセチレン・軟鋼6mmなら47Lの酸素ボンベ1本で約149m切れるのに、70mmでは約8.7mしか切れない。板が厚くなると1時間あたりの酸素量が増えるうえに速度が落ちるので、1mあたりの酸素量は掛け算で増える。厚板の切断を請け負うときに、ボンベの本数を見積もりに入れ忘れると赤字になる。

ガス切断は資格が要る作業

可燃性ガスと酸素を使う金属の溶断は、労働安全衛生法第61条の就業制限業務で、労働安全衛生法施行令第20条第10号に「可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務」として挙がっている。仕事としてガス切断をするには、ガス溶接技能講習の修了などの資格が必要だ。プラズマ切断機もアークを使う機械なので、事業として使うなら労働安全衛生規則第36条第3号の「アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等」の特別教育を受けておくのが通例になっている。本ツールの数値は条件の目安で、資格や安全装置の代わりにはならない。

活躍する場面——買う前、切る前、ボンベを頼む前

プラズマ切断機を買う前に、何Aを選ぶか決める。 よく切る板厚が軟鋼9mmなら、「きれいに切る」に必要な電流を見て、それを上回る機種を候補にする。たまにしか切らない厚い板は「切り落とすだけ」の段階で足りるかを見ればいい。用途を2段に分けて考えると、オーバースペックな機械を買わずに済む。

手持ちの機械で、この板が切れるか確かめる。 定格電流を入れると、きれいに切れる板厚・切れる板厚・切り落とせる板厚の3つが出る。「30A機で16mmは切れるが、切り口は期待しないほうがいい」といった判断が、試し切りの前にできる。

コンプレッサーを買い足す、または共用するとき。 電流から必要なエアの流量と圧力が出るので、手持ちのコンプレッサーの吐出量で足りるか、エアツールと同時に使えるかを見積もれる。

ガス切断の段取りを現場で確かめる。 板厚を入れると、手持ちの中切で使う火口番号と、自動切断機の火口番号・酸素圧・燃料ガス圧・速度が一度に出る。酸素ボンベ1本で何m切れるかも出るので、厚板の切断が何mあるかから、予備のボンベを何本頼むかを決められる。

基本の使い方——3ステップで条件が出る

ステップ1: 切断方式を選ぶ。 プラズマ切断、ガス切断(アセチレン)、ガス切断(プロパン)の3つから選ぶ。プラズマの場合は、「板厚から必要な電流」を調べるか、「定格電流から切れる板厚」を調べるかも選ぶ。

ステップ2: 材質と板厚(または定格電流)を入れる。 材質は軟鋼・ステンレス・アルミの3つ。プラズマの板厚は0.5〜60mm、ガスの板厚は3〜300mmの範囲で入れられる。定格電流から調べる場合は、手持ちの機械の定格電流(25〜125A)を入れる。プラズマのときは電源(単相100V・単相200V・三相200V)も選ぶ。電源は計算結果の板厚や電流そのものは変えないが、その電源で出せる電流を超える場合に注意が出る。

ステップ3: 結果を読む。 プラズマの板厚からなら、3段階の必要電流、45A・65A・105A・125Aの各クラスの切断速度、必要なエア量と圧力が出る。電流は小数を切り上げた「◯A以上」で、25A以下で足りるときは「25A以下で可」、最大の125Aでも届かない段階は「125Aでも不可」と出る。定格電流からなら、3段階の板厚とエア量・圧力が出る。ガスなら、中切と自動切断の火口番号、酸素圧・燃料ガス圧・切断速度、酸素と燃料の消費量、1mあたりの酸素量、ボンベ1本で切れる長さが出る。

具体的な使用例・検証データ(8ケース)

以下は、すべて本ツールの計算結果だ。

ケース1: 軟鋼12mmをきれいに切りたい(単相200V)

入力: プラズマ・板厚から・軟鋼・12mm・単相200V

結果: きれいに切る35A以上/切れる30A以上/切り落とすだけ26A以上。条件表の切断速度は45Aで540mm/min、65Aで960、105Aで1810、125Aで2050mm/min。必要エアは45Aクラスの188L/min・0.59MPa。

解釈: 12mmをきれいに切るなら、35A以上の機械が要る。40A機なら単相200Vでも注意は出ず、条件を満たす。30A機でも「切れる」段階には届くが、ゆっくり動かすことになり、裏のドロス取りを覚悟したほうがいい。

ケース2: 定格40Aの機械で何mmまで切れるか

入力: プラズマ・定格電流から・軟鋼・40A・単相200V

結果: きれいに切れる14.0mm/切れる18.7mm/切り落とせる24.7mm。必要エアは45Aクラスの188L/min・0.59MPa。

解釈: 40A機のカタログに「最大切断能力25mm」とあったら、それは「切り落とすだけ」の数字に近い。日常的にきれいに切れるのは14mmまで、と読み替えるのが現実的だ。冒頭の「最大25mmなのに16mmでガタガタ」も、これで説明がつく。16mmは「きれいに切れる」14.0mmを超え、「切れる」18.7mmの手前にいるので、ゆっくり動かすしかなく裏にドロスが残る。逆に14mmより薄い板で同じことが起きるなら、電流ではなくエア量か消耗品を疑う段階だ。

ケース3: ステンレス10mm(三相200V)

入力: プラズマ・板厚から・ステンレス・10mm・三相200V

結果: きれいに切る35A以上/切れる30A以上/切り落とすだけ26A以上。速度は45Aで605mm/min、65Aで1115、105Aで2230、125Aで2540mm/min(ステンレスの条件表)。エアは45Aクラス。

解釈: ステンレスは軟鋼の切断能力の0.85倍で見積もるので、10mmのステンレスは軟鋼12mmとほぼ同じ電流が要る。「薄いステンレスだから小さい機械で」とはいかない。

ケース4: アルミ10mm(三相200V)

入力: プラズマ・板厚から・アルミ・10mm・三相200V

結果: きれいに切る56A以上/切れる40A以上/切り落とすだけ33A以上。速度は45Aで860mm/min、65Aで1535、105Aで2660、125Aで2980mm/min(アルミの条件表)。エアは65Aクラスの210L/min・0.59MPa。

解釈: アルミは軟鋼の0.55倍で見積もるので、同じ10mmでもステンレスより一回り大きい電流になる。ただしこの係数はメーカーによって大きく違い、本ツールは小さいほう(厳しいほう)を採っている。Hypertherm の条件表には45Aで10mmのアルミを860mm/minで切る条件が載っているので、45A機で切れる可能性は十分ある。それでも、アルミ中心の用途なら60A級を候補にしておくと外れにくい。

ケース5: 家庭用100Vで軟鋼6mm

入力: プラズマ・板厚から・軟鋼・6mm・単相100V

結果: きれいに切る26A以上/切れる・切り落とすだけはどちらも25A以下で可。100Vの注意が出る。エアは30Aクラスの113L/min・0.55MPa。

解釈: 25Aの「きれいに切る」板厚は5.8mmなので、6mmはわずかにはみ出す。100V機でも6mmは切れるが、きれいに切るには少し足りない境目にいる。6mmを頻繁に切るなら200V機、という判断になる。

ケース6: 軟鋼45mmはプラズマで切れるか

入力: プラズマ・板厚から・軟鋼・45mm・三相200V

結果: きれいに切る・切れるは125Aでも不可/切り落とすだけ97A以上。条件表の速度は4クラスとも表の範囲外。エアは105Aクラスの260L/min・0.62MPa。

解釈: 手持ちのエアプラズマで45mmは、100A級でやっと切り離せる厚さだ。品質を求めるならガス切断に切り替える。同じ45mmをアセチレンで切ると、自動切断の火口4番(40〜50mm)・335mm/min・酸素0.35MPa・アセチレン0.025MPa で、酸素は1mあたり約351L、ボンベ1本で約17.7m切れる。中切の火口(〜30mm)は範囲外になるので、大型の切断器を使う。

ケース7: アセチレンで軟鋼12mm

入力: ガス切断(アセチレン)・軟鋼・12mm

結果: 中切の火口2番/自動切断の火口1番(9〜16mm)。切断速度526mm/min、酸素0.25MPa・アセチレン0.02MPa、酸素消費量2400L/h。1mあたりの酸素約76.1L、47L酸素ボンベ1本で約81.5m。

解釈: 12mmは中切だと2番の区分(10〜20mm)、自動切断機だと1番の区分に入る。番号の付け方が切断器の種類で違うので、火口を手に取ったら刻印と区分を確かめる。ボンベ1本で80m前後というのは、フルスピードで止まらず切った場合の値だ。

ケース8: プロパンで軟鋼25mm

入力: ガス切断(プロパン)・軟鋼・25mm

結果: 中切の火口3番/自動切断の火口2番(16〜32mm)。切断速度422mm/min、酸素0.35MPa・LPG0.02MPa、酸素消費量4600L/h。1mあたりの酸素約181.7L、ボンベ1本で約34.1m。

解釈: 同じ25mmをアセチレンで切ると、1mあたりの酸素は約151.4L、ボンベ1本で約41.0mになる。プロパンのほうが酸素を2割ほど多く使うのは、予熱炎に回す酸素が多いからだ(この火口で予熱酸素がアセチレン用400L/hに対しLPG用1300L/h)。燃料ガスの安さと酸素の減りの速さを天秤にかけることになる。ケース7と同じく自動切断機の条件なので、手で動かすと速度は落ち、消費量は増える。

仕組み・アルゴリズム——理論式ではなく公表値を補間する

候補手法の比較: 熱収支モデルか、公表値の補間か

板厚と電流の関係を出す方法は2つ考えられる。

1つは熱収支モデルで、アークの出力(電流×電圧)のうち板に入る割合を仮定し、切断溝の体積の金属を溶かすのに必要な熱と釣り合わせる方法だ。式としては美しいが、板に入る熱の割合はノズル径、エアの流量、トーチの高さで大きく変わる。その割合を校正するには結局メーカーの実測値が要る。

もう1つはメーカーの公表値を補間する方法で、本ツールはこちらを採った。電流クラスごとの切断能力はメーカーが実際に切って確かめた数字なので、モデルの仮定が入らない。

軸に Hypertherm を選んだのは、30〜125Aの電流クラスを6機種そろえて同じ定義で公表し、しかも3段の速度の定義まで明記している唯一のメーカーだったからだ。なぜ作ったのかの節で触れたとおり、国内カタログの「切断能力」は定義が機種ごとに揺れているので、補間の軸には使えない。

実装の流れ

// プラズマ(板厚から必要な電流)
切断能力[電流][段階] = 材質係数 × Hypertherm の Cut capacity(電流の間は線形補間)
必要電流 = 上の表を板厚で逆補間(25Aの値以下なら「25A以下」、125Aを超えたら不可)
切断速度[45/65/105/125A] = 条件表の板厚の間を、速度の対数で補間
エア = 必要電流を切り上げたクラスの推奨流量・圧力

// ガス
火口 = 板厚が入る区分(境界は小さい番号側)
速度 = 区分の両端の速度を板厚で線形補間
1mあたりの酸素[L/m] = (酸素消費量[L/h] ÷ 60) ÷ (速度[mm/min] ÷ 1000)
ボンベ1本で切れる長さ[m] = 6,202 ÷ 1mあたりの酸素

電流は線形、速度は対数で補間する理由

電流と切断能力の関係は、クラスの間でほぼ直線に並ぶので線形補間にした。一方、条件表の切断速度は板厚が増えると指数的に落ちていく。同じ割合で落ちる量を線形でつなぐと、区間の中ほどで速度を高く見積もってしまう。

例えば軟鋼14mmを45Aで切る速度は、条件表の12mm(540mm/min)と16mm(310mm/min)の間にある。線形なら425mm/minになるが、速度の対数で補間すると409mm/minで、線形補間は区間の中央で約4%速く出す。速度を高く見積もると切り残しにつながるので、落ち方の形に合う対数補間を採った。

25Aの点は120V入力時の公表値から作った

Hypertherm には25A機の製品が無い。そこで Powermax30 XP が120V入力のときに出力25Aになり、そのときの性能を「6mmを482mm/min・10mmを203mm/min・12mmを76mm/min」と公表しているのを使った。この3点を速度の対数で補間し、500・250・125mm/min で切れる板厚に直すと5.8mm・9.0mm・11.0mmになる。500mm/minの点だけは表の外側への外挿だ。

「きれいに切る」と条件表の速度は別物

ケース1を見ると、12mmの切断速度は45Aで540mm/minと出ていて、45Aの「きれいに切る」16mmの定義である500mm/minとは数字が合わない。これは2つの数字の出どころが違うからだ。電流別の速度は Hypertherm の機械トーチの条件表の Best Quality(最良品質)の速度で、手持ちの切断能力は最大速度で500mm/minが出る板厚を表している。条件表には最良品質より速い Production(生産性重視・最大の70〜80%)の速度も載っていて、それを0.75で割り戻すと45A・16mmで533mm/min、65A・20mmで600mm/min、105A・32mmで533mm/minになる。どれも500mm/min前後に収まり、2つの資料は矛盾していない。手で切るときの速さの目安としては、条件表の最良品質の速度のほうが現実に近い。

材質係数は2社の小さいほうを採った

ステンレスとアルミの切断能力は、軟鋼の値に材質係数を掛けて出す。この係数は2つの資料で比べた。Hypertherm の条件表で同じ速度になる板厚を比べると、ステンレスは軟鋼の0.83〜1.06倍、アルミは0.94〜1.15倍になる。一方、パナソニックのカタログの材質別切断能力では、ステンレスは軟鋼と同じ、アルミは0.56〜0.75倍(35A機で軟鋼12mmに対しアルミ7mm、60A機で36mmに対し20mm、80A機で40mmに対し30mm)だ。

ステンレスは2社がおおむね近いので0.85にした。アルミは2社で食い違い、Hypertherm の表では軟鋼並みかそれ以上に切れるのに、パナソニックでは半分強しか切れない。アルミは熱をよく逃がすうえ、ドロスが粘って切り口に残りやすく、どの品質を「切れた」とするかで差が出やすい材料だ。本ツールはパナソニック側の下限0.56を丸めた0.55を採った。必要電流を大きめに見積もる安全側の選択で、実際にはこれより小さい電流で切れる機械もある。

ガスは日酸TANAKA の火口表、ボンベは0℃基準に揃えた

ガス切断の火口・圧力・速度・消費量は、日酸TANAKA の技術データ資料の火口能力表(アセチレン用 3040G、LPG用 3051Ⅱ)から取った。火口番号と板厚の区分は小池酸素の火口一覧表とも番号ごとにほぼ一致することを確かめてある。

酸素ボンベは47L・14.7MPa充てんで7m³だが、この7m³は35℃基準の量だ。一方、火口表の消費量は0℃基準の L/h なので、日酸TANAKA の換算係数0.886を掛けて0℃に揃えた(7,000 × 0.886 = 6,202L)。揃えずに割ると、ボンベ1本で切れる長さを1割以上長く見積もってしまう。

計算例: 軟鋼12mm → 35A、アセチレン12mm → 81.5m

// プラズマ・軟鋼12mm・きれいに切る
30A の推奨 10mm < 12mm ≦ 45A の推奨 16mm
必要電流 = 30 + (12 − 10) ÷ (16 − 10) × (45 − 30) = 35A

// アセチレン・軟鋼12mm
火口1番(9〜16mm): 速度 9mm で 560、16mm で 480 mm/min
速度 = 560 + (12 − 9) ÷ (16 − 9) × (480 − 560) ≒ 525.7 mm/min
酸素 = 切断酸素 2000 + 予熱酸素 400 = 2400 L/h
1mあたり = (2400 ÷ 60) ÷ (525.7 ÷ 1000) ≒ 76.1 L/m
ボンベ1本 = 6202 ÷ 76.1 ≒ 81.5 m

ケース1とケース7の結果は、この手順で出ている。

プラズマ切断の条件を、電流・エア量・火口まで1画面で引ける

「プラズマ切断 電流 板厚」で検索して上に並ぶのは、メーカーのカタログと機種の比較・ランキング記事がほとんどで、材質と板厚を入れて条件を返す日本語の計算・早見ツールは見当たらなかった。カタログの「切断能力」が1つの数字でしか書かれていない問題は、冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおり。このツールの違いは、その数字を受け取ったあとに何ができるかにある。

ひとつめは、必要な電流を「きれいに切る・切れる・切り落とすだけ」の3段で返すこと。買う前の人が本当に知りたいのは「何Aを買えば、自分の板が仕上げ少なく切れるか」で、カタログの最大値を眺めても答えは出てこない。3段に分けてあれば、「普段は薄い板をきれいに、たまに厚い板を切り落とせればいい」という使い方の幅に合わせて電流クラスを選べる。手持ちの機械の定格電流から、切れる板厚を3段で逆引きすることもできる。

ふたつめは、ガス切断を火口番号で終わらせないこと。酸素圧・燃料ガス圧・切断速度に加えて、1mあたりの酸素量と47Lの酸素ボンベ1本で切れる長さまで続けて出す。火口の条件表そのものはPDFで手に入るが、表にあるのは1時間あたりの消費量なので、「この仕事でボンベが何本要るか」にするには速度で割り直す一手間がいる。ステンレスやアルミを選んだときは計算せず、ガス切断では切れないことを示してプラズマへの切り替えを促す。

関連ツールとは役割を分けている。切ったあとの溶接(TIG・MIG・被覆アーク・半自動CO2)の電流・電圧・速度は溶接条件セレクター、空圧シリンダーのエア消費量を積み上げてコンプレッサーの吐出量と動力を出すのはエア消費量・コンプレッサー選定、MAG・MIG・TIG のシールドガス(アルゴン・炭酸ガス)の消費量とボンベ本数は溶接シールドガス 消費量・ボンベ本数計算の担当だ。このツールが受け持つのは、プラズマ切断機が食うエアの量と、ガス切断が食う酸素の量。工場の同じコンプレッサーでシリンダーも動かしているなら、ここで出たエア量(L/min)を1000で割って m³/min にそろえ、シリンダー側の合計に足して吐出量を確かめる、という使い分けになる。

ガレージから始まったプラズマと、ボンベの色のきまり

プラズマ切断は溶接の研究から生まれた

プラズマ切断のもとになったのは、TIG溶接のアークを細いノズルで絞り込むプラズマアーク溶接の研究だ。米国の Robert M. Gage が1953年に考案し、1957年に特許になったと記録されている(Wikipedia: Plasma arc welding)。初期の装置は大きく高価で、決まった形を繰り返し切る量産ラインのための機械だった。

このツールが軸にしている Hypertherm も、出発点は小さい。同社の紹介ページによると、50年以上前に2台用のガレージで、創業者の Dick Couch と同僚の Bob Dean がプラズマアークをより細く絞る方法を見つけたのが始まりだという。今では従業員が全株を持つ会社になっている。その Hypertherm が手持ち機の性能を「500/250/125mm/min で切れる板厚」という3段で公表し続けていることが、このツールの計算の土台になった。

ipm という単位

Hypertherm の英語版資料では、切断速度が ipm(inches per minute、インチ毎分)で書かれている。3段の速度は 20ipm・10ipm・5ipm で、メートル版の資料ではこれが 500・250・125mm/min と書かれる。1インチは25.4mmなので、20ipm は厳密には500mm/minより少し速い。米国で決めたきりのいい数字を、メートル側でもきりのいい数字に丸めて載せているわけだ。

酸素は黒、アセチレンはかっ色

ガス切断の現場で、酸素ボンベが黒くアセチレンボンベが茶色いのは、業界の慣習ではなく省令のきまりだ。容器保安規則第10条が、高圧ガスの種類ごとに容器の塗色を定めていて、酸素ガスは黒色、水素ガスは赤色、液化炭酸ガスは緑色、アセチレンガスはかつ色(褐色)、その他のガスはねずみ色。しかも塗る面積は「容器の表面積の二分の一以上」と決まっている。

おもしろいのはプロパンで、同じ条文のただし書きで液化石油ガスの容器は塗色の義務から外されている。LPガスの容器は、この塗色の表に縛られない。その代わり、可燃性ガスの容器には「燃」の文字を書くことが同じ条文で求められている。色で見分けられないぶん、文字とガス名の表示を確かめる習慣をつけておきたい。

アセチレンを低い圧力で使う理由

火口表のアセチレン圧が酸素より一桁小さいのは、燃料が予熱炎を作るだけだからだが、アセチレンにはもう一つ、高い圧力で使えない事情がある。アセチレンは三重結合を持つ不安定な分子で、圧力をかけると火の気がなくても自分で分解して爆発する性質がある(分解爆発)。そのためボンベの中は空洞ではなく、軽石のような多孔質の詰め物にアセトンを染み込ませ、アセチレンを炭酸水のようにアセトンに溶かし込んで詰めてある(Wikipedia: アセチレン)。アセチレンボンベを寝かせて使ってはいけないと教わるのは、横にするとこのアセトンが一緒に出てきてしまうからだ。もうひとつ、アセチレンは銅と反応して衝撃で爆発する銅アセチリドを作るので、アセチレンの配管や継手には銅を多く含む材料を使わないことになっている。

プラズマ切断機の板厚目安を、現場で暗算するコツ

  • 軟鋼の「きれいに切れる板厚」は、30〜45A なら電流÷3、65A以上なら電流÷3.3 前後。30A→10mm・45A→15mm(Hypertherm の公表値は10・16)、65A→20mm・105A→32mm・125A→38mm(同じく20・32・38)で、ほぼ公表値どおりになる。ステンレスならそこから15%引き、アルミなら半分強と考えると、このツールと同じ安全側の見方になる。店頭やカタログを見ながら、電卓なしで機種を絞り込むのに使える。
  • コンプレッサーはタンク容量ではなく吐出量で比べる。タンクは一時的にためておく器にすぎず、長い切断では最後は吐出量の勝負になる。DIY向けのカタログでは「理論空気量」と「吐出量(実吐出量)」が並んでいることがあり、理論空気量はピストンが押しのける体積なので、実際に出てくる空気はそれよりかなり少ない。比べるのは吐出量のほうだ。手持ちの組み合わせで足りるか確かめるなら、タンクを満タンにしてから、普段いちばん長く切る距離を一気に切ってみる。途中でコンプレッサーが動き出しても圧力計の針が機械の必要圧力を割り込まなければ足りている。
  • タンクの水は毎日抜く。圧縮空気には湿気が凝縮した水が混じり、それがトーチまで届くと電極とノズルの減りが急に早くなる。作業の終わりにタンク下のドレンを開ける、配管の途中にフィルターやエアドライヤーを入れる、の2つで消耗品代が目に見えて変わる。
  • 速度が合っているかは、切った裏と切断面で見る。プラズマなら、裏に付いたドロスが大粒の玉状で叩けば簡単に落ちるときは遅すぎ、細いビード状で硬くこびり付いて落ちにくいときは速すぎ。ガス切断なら切断面の筋(ドラグライン)を見て、筋がほぼまっすぐ下へ流れていれば適正、後ろへ大きく遅れて曲がり下端が切り残るようなら速すぎだ。速度を上げるか下げるかは、この見え方で決める。

プラズマ切断・ガス切断の条件でよく聞かれること

Q: カタログの「最大切断能力」と、このツールの数字が合わない

数字の定義が違うのが原因だ。メーカーの「切断能力」がどの速度で切れる厚さなのか書かれていない点と、Hypertherm の3段に並べるとメーカーごとに位置がずれる点は、冒頭の「なぜ作ったのか」と「仕組み」の節で説明したとおり。手元のカタログと突き合わせるなら、その機種の定格電流を入れて切れる板厚を逆引きし、カタログの数字が3段のどこに近いかを見るとよい。「切り落とすだけ」の段に近ければ、その数字は仕上げ前提の板厚ではないと読める。

Q: 自分の機械は Hypertherm ではないが、使えるのか

電流クラスの目安としては使える。同じ電流クラスなら、機種が違っても切れる板厚は大きくは外れない。ただしノズルの形状や消耗品の状態で実際の条件は変わるので、取扱説明書に条件表が載っていればそちらを優先してほしい。エア量もメーカーで差があることは「実務での重要性」の節で触れたとおりなので、取説の必要エアと見比べてほしい。材質係数をどう決めたかは「仕組み」の節にあるとおりで、アルミは安全側の値なので、手持ちの機械の取説にアルミの切断能力が載っていればそれに置き換えて読んでかまわない。

Q: 表示される切断速度は、手持ちでもその速さで切ればいいのか

そのままでは速すぎることが多い。条件表の速度はトーチを機械で一定に動かし、高さも一定に保ったときの最良品質の値で、手で動かすとトーチの高さと速さがぶれるぶん、同じ電流でも表より遅くしないときれいに切れない。手持ちの人は、速度を「この電流ならここまでは速くできる」という上限として読み、ドロスの付き方を見ながら落としていくのが現実的だ。電流クラスの条件表に板厚が載っていない場合は、無理に推定せず表の範囲外と表示する。

Q: ガス切断の燃料は、プロパンとアセチレンのどちらがいいのか

切り始めの速さを取るか、ランニングコストと扱いやすさを取るかで分かれる。アセチレンは炎の温度が高く予熱が早いので、薄板や穴あけ、ガス溶接と兼用したい場面に向く。プロパンは炎の温度が低いぶん予熱に時間がかかり、火口能力表でも予熱用の酸素をアセチレンより多く使うが、ガス自体が安く、分解爆発の心配がないぶんボンベの扱いが気楽だ。どちらを選んでも火口は燃料ごとの専用品で、互いに流用できない。このツールで燃料を切り替えると火口番号と圧力・消費量がそれぞれの表に切り替わるので、同じ板厚で並べてみてほしい。

Q: 入力した板厚や電流は、どこかに送信されるのか

送信されない。計算はすべて開いているブラウザの中で行っていて、入力した材質・板厚・電流・電源の種類をサーバーに送ったり保存したりはしていない。条件表の数値はページを開いた時点でツールに組み込まれているので、読み込みが終わったあとは通信がなくても計算できる。結果をコピーしたときも、内容が渡るのは自分のクリップボードだけだ。

まとめ: 切る前に、電流とエアとガスの量を決めておく

プラズマは3段の電流と電流別の速度・エア量、ガス切断は火口番号から酸素ボンベ1本で切れる長さまで、切る前に決めたい数字をまとめて出す。切ったあとに溶接するなら溶接条件セレクター、コンプレッサーをシリンダーと共用するならエア消費量・コンプレッサー選定、溶接側のシールドガスのボンベ本数は溶接シールドガス 消費量・ボンベ本数計算へ。

条件表の読み違いや、手持ちの機械と合わない数字に気づいたら、お問い合わせページから知らせてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。パナソニックの「35A=12mm」がHyperthermの3段の物差しでちょうど「きれいに切る」側に乗り、同じシリーズの60A機の36mmは「切り落とす」側よりさらに外にあると分かったとき、カタログの1つの数字を信じて機械を選んでいた自分の過去の買い物を少し反省した。

運営者情報を見る

© 2026 プラズマ切断・ガス切断の条件ガイド