OCR整定計算ツール

CT比・契約電力・変圧器容量を入力し、限時要素タップ値・瞬時要素タップ値・レバー値を自動計算。電力会社との保護協調の可否も判定。

受電方式・契約電力・変圧器容量を入力すると、OCR(過電流継電器)の限時タップ・瞬時タップ・レバーの推奨整定値を自動計算。電力会社OCRとの保護協調もワンステップで判定。

よくある条件

受電設備条件

CB形: 過電流遮断器(VCB等)を使用する受電方式

複数台の場合は合計容量

CT設定

5 A(国内標準)
推奨CT比:20/5 A

電動機条件

電動機始動電流がない場合は0。瞬時要素タップの決定に使用

選択したCT比(30/5A)が推奨値(20/5 A)と異なります。

計算結果

保護協調判定協調OK裕度 0.40秒
安全

基本計算

契約電力電流

13.1 A

変圧器定格電流

17.5 A

推奨CT比

20/5 A

CT二次側負荷電流

2.19 A

整定値

限時タップ 計算値

3.28 A

限時タップ 整定値

3.5 A

負荷電流×1.5以上の最小タップ

瞬時タップ 計算値

23.3 A

瞬時タップ 整定値

25 A

突入・始動電流以上の最小タップ

レバー整定値

2.0

電力会社OCRとの時間協調

計算根拠

契約電力電流 I = P / (√3 × V) = 150 / (1.732 × 6.6) = 13.12 A

変圧器定格電流 It = S / (√3 × V) = 200 / (1.732 × 6.6) = 17.50 A

CT二次側負荷電流 = I × (5 / CT1次) = 13.12 × (5 / 30) = 2.187 A

限時タップ計算値 = CT二次負荷電流 × 1.5 = 2.187 × 1.5 = 3.280 A

瞬時タップ計算値(突入) = It × 8 × (5/CT1次) = 23.33 A

JEAC 8011(高圧受電設備規程)に基づく標準的な整定計算。実際の整定には電力会社との協議が必要。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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年次点検でOCRの整定値を聞かれて固まった、あの日

「限時タップはいくつですか?」「レバーは?」——年次点検で電力会社の保安担当から聞かれて、資料を必死に探した経験はないだろうか。高圧受電設備を持つ事業場なら避けて通れない、過電流継電器(OCR)の整定値。でもこの計算、慣れていないとどこから手をつけていいか分からない。

このツールは、契約電力・変圧器容量・CT比を入力するだけで、限時要素タップ・瞬時要素タップ・レバーの推奨値を自動で算出する。電力会社OCRとの保護協調判定までワンステップで完結するから、計算ミスの心配がない。

なぜOCR整定計算ツールを作ったのか

開発のきっかけ

実務で高圧受電設備の整定値を確認する場面に出くわしたとき、驚いたのは「計算方法を知っている人が限られている」こと。ベテランの電気主任技術者が一人で整定値を管理していて、その人が異動したら誰も計算方法が分からなくなる——そんな話を何度も聞いた。

手計算でやろうとすると、CT二次側への換算、安全率の掛け方、タップの選定、レバーの決定と、ステップが多くてミスが紛れ込みやすい。エクセルで独自に計算シートを作っている技術者もいるが、数式の検証が属人化してダブルチェックが効かない。

既存のソフトウェアは有料のものが多く、年に数回の整定確認のためだけに導入するにはハードルが高い。ブラウザで開くだけで使える無料ツールがあれば、属人化を防ぎつつ計算ミスも減らせる。そう考えて開発した。

こだわった設計判断

計算根拠を常に表示するようにした。整定値だけを出力しても「なぜその値なのか」が分からなければ、電力会社との協議で説明できない。数式とステップを透明にすることで、結果の検証がしやすい設計にしている。

保護協調の判定を○×だけでなく、時間的裕度(秒数)まで表示するようにした。「ギリギリOK」なのか「余裕たっぷり」なのかが一目で分かる。

過電流継電器(OCR)とは何か——保護継電器の基礎

高圧受電設備を守る「番人」

過電流継電器(Over Current Relay、略称OCR)は、電路に流れる電流が設定値を超えたときに遮断器へトリップ信号を送る保護装置だ。家庭のブレーカーを高圧版にしたようなもの、と考えるとイメージしやすい。

高圧受電設備(6.6kV)では、変圧器の短絡事故や過負荷から設備を守るためにOCRが設置される。JEC-2510(日本電気協会)で定められた標準仕様に基づいて設計・整定される。

限時要素と瞬時要素

OCRには2つの保護要素がある。

限時要素(タイムエレメント) は、負荷電流の一定倍率以上の電流が流れたとき、レバーで設定した時間特性に従って動作する。過負荷保護が主な役割で、一時的な負荷変動では動作しないよう、契約電力電流の150%程度にタップを設定するのが一般的だ。

瞬時要素(インスタントエレメント) は、短絡電流のような大電流が流れたとき、瞬時(通常50ms以下)に動作する。変圧器の励磁突入電流(定格の6〜10倍)や電動機の始動電流で誤動作しないよう、これらを上回るタップ値に設定する必要がある。

CT比の役割

OCRは直接高圧電流を測定するわけではない。変流器(CT: Current Transformer)で電流を縮小してからOCRに入力する。CT比が20/5Aなら、一次側20Aの電流がCT二次側で5Aに変換される。OCRの整定値はすべてCT二次側の電流値で設定するため、CT比の選定がOCR整定の出発点になる。

参考: JEC-2510 過電流継電器

タップとレバー

タップ はOCRの動作開始電流を設定する調整機構。標準的な限時要素タップは3.0A〜7.0Aの範囲で、0.5A刻みで調整できる。

レバー は動作時間を調整する機構。レバー値が大きいほど動作時間が長くなる。電力会社のOCRより先に需要家のOCRが動作するよう、時間的な協調を取るために使う。

OCR整定が重要な理由——波及事故を防ぐ保護協調

波及事故とは

高圧受電設備で事故が起きたとき、需要家側のOCRが適切に動作しないと、電力会社の配電用変電所の遮断器が動作してしまう。これが「波及事故」で、同じ配電線に接続されている他の需要家まで停電させてしまう。

電気事業法施行規則では、自家用電気工作物の設置者に保安規程の作成と技術基準の維持が義務付けられている。OCRの整定不良による波及事故は、設置者の責任を問われる可能性がある。

保護協調の考え方

保護協調とは、「事故に最も近い保護装置が最初に動作する」ように時間的な順序を設計すること。需要家のOCR動作時間が電力会社のOCR動作時間より短ければ、需要家の設備だけが停止して波及事故を防げる。

JEAC 8011(高圧受電設備規程)では、需要家OCRと電力会社OCRの間に0.2〜0.3秒以上の時間的裕度を確保することが推奨されている。

整定値の確認が必要になる3つの場面

新設受電設備の設計時

新たに高圧受電契約を結ぶ際、受電設備の保護継電器整定値を電力会社に届け出る必要がある。設計段階でOCR整定を適切に行い、保護協調が取れていることを確認してから協議に臨む。

年次点検・保安協会の確認時

保安法人や電気主任技術者が行う年次点検では、OCRの動作試験と整定値の確認が定番項目。整定値の根拠を説明できるように、計算書を準備しておくと点検がスムーズに進む。

増設・設備変更時の見直し

変圧器の増設や契約電力の変更があったとき、既存のOCR整定値が適切かどうかを再検証する必要がある。負荷電流が変わればタップ値も変わるし、CTの選定からやり直す場合もある。

基本の使い方

3ステップで整定値が分かる。

Step 1: プリセットまたは手入力で条件を設定する

画面上部に「小規模店舗(50kW)」「中規模ビル(150kW)」「工場(300kW)」の3つのプリセットが並んでいる。まずは近い条件をタップすれば、受電方式・契約電力・変圧器容量・CT比が一括で設定される。自分の設備に合わせて個別に調整してもいい。

Step 2: CT設定と電動機条件を確認する

CT一次側電流をプルダウンから選択する。推奨CT比が自動表示されるので、それに合わせるのが基本。電動機がある場合は最大始動電流(高圧換算)を入力する。

Step 3: 整定値と保護協調を確認する

限時要素タップ・瞬時要素タップ・レバーの推奨整定値と、電力会社との保護協調判定が自動表示される。計算根拠の数式も確認できるので、報告書への転記もそのままできる。「整定値をコピー」ボタンで計算結果をテキストでコピーすることも可能。

具体的な使用例——6つのケースで整定値を検証

ケース1: 小規模店舗(契約50kW / 変圧器75kVA)

入力値:

  • 受電方式: CB形
  • 契約電力: 50 kW
  • 変圧器容量: 75 kVA
  • CT比: 20/5 A

計算結果:

  • 契約電力電流: 4.4 A
  • 限時タップ計算値: 1.64 A → 整定値: 3.0 A
  • 瞬時タップ計算値: 16.5 A → 整定値: 20 A
  • レバー: 2.0 / 保護協調: OK

解釈: 小規模なのでCT比20/5Aで十分。限時タップは最小の3.0Aでカバーできる。

ケース2: 中規模オフィスビル(契約200kW / 変圧器300kVA)

入力値:

  • 受電方式: CB形
  • 契約電力: 200 kW
  • 変圧器容量: 300 kVA
  • CT比: 40/5 A

計算結果:

  • 契約電力電流: 17.5 A
  • 限時タップ計算値: 3.28 A → 整定値: 3.5 A
  • 瞬時タップ計算値: 32.8 A → 整定値: 35 A
  • レバー: 2.0 / 保護協調: OK

解釈: CT比40/5AでCT二次側の計算値が標準タップ範囲内に収まる。

ケース3: 工場(契約500kW / 変圧器750kVA / 電動機あり)

入力値:

  • 受電方式: CB形
  • 契約電力: 500 kW
  • 変圧器容量: 750 kVA
  • CT比: 75/5 A
  • 電動機始動電流: 200 A(高圧換算)

計算結果:

  • 契約電力電流: 43.7 A
  • 限時タップ計算値: 4.37 A → 整定値: 4.5 A
  • 瞬時タップ計算値(突入): 43.7 A → 整定値: 50 A
  • 瞬時タップ計算値(始動): 13.3 A
  • レバー: 2.0 / 保護協調: OK

解釈: 電動機始動電流より変圧器突入電流の方が大きいケース。瞬時タップは突入電流基準で決定。

ケース4: PF-S形の小規模受電(契約100kW / 変圧器150kVA)

入力値:

  • 受電方式: PF-S形
  • 契約電力: 100 kW
  • 変圧器容量: 150 kVA
  • CT比: 20/5 A

計算結果:

  • 契約電力電流: 8.7 A
  • 限時タップ計算値: 3.28 A → 整定値: 3.5 A
  • レバー: 1.0 / 保護協調: OK

解釈: PF-S形はCB形よりレバーを小さく設定し、PFの溶断前にOCRが動作するようにする。

ケース5: CT比が不適切なケース(契約300kW / CT 20/5A)

入力値:

  • 受電方式: CB形
  • 契約電力: 300 kW
  • 変圧器容量: 500 kVA
  • CT比: 20/5 A(意図的に小さく設定)

計算結果:

  • 契約電力電流: 26.2 A → CT一次定格の120%超え → 警告表示
  • 限時タップ計算値: 9.84 A → 範囲外 → 警告表示

解釈: CT比が小さすぎると限時タップが標準範囲を超える。推奨CT比(50/5A)への変更が必要。

ケース6: 大規模施設(契約1000kW / 変圧器1500kVA / 電動機あり)

入力値:

  • 受電方式: CB形
  • 契約電力: 1000 kW
  • 変圧器容量: 1500 kVA
  • CT比: 150/5 A
  • 電動機始動電流: 400 A

計算結果:

  • 契約電力電流: 87.5 A
  • 限時タップ計算値: 4.37 A → 整定値: 4.5 A
  • 瞬時タップ計算値: 43.7 A → 整定値: 50 A
  • レバー: 2.0 / 保護協調: OK

解釈: CT比を適切に選べば、大規模施設でもタップ値は標準範囲に収まる。CT比の選定が整定計算の要。

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較

OCR整定の計算アプローチには大きく2つある。

1. 簡易法(定格電流ベース): 変圧器定格電流や契約電力電流をベースに、標準的な安全率(150%)を掛けてタップを決定する。JEAC 8011で推奨されている標準的な手法。

2. 詳細法(保護協調曲線ベース): OCRの時間-電流特性曲線と電力会社の保護協調曲線を重ね合わせ、動作時間の裕度を正確に計算する。高度な専門知識が必要。

本ツールは簡易法を採用している。実務の8割以上をカバーでき、電力会社との協議で求められる標準的な計算レベルに対応するためだ。

計算フロー

1. 契約電力電流 I = P / (√3 × 6.6)
2. 変圧器定格電流 It = S / (√3 × 6.6)
3. CT二次側負荷電流 = I × (5 / CT一次)
4. 限時タップ計算値 = CT二次負荷電流 × 1.5
5. 限時タップ整定値 = 計算値以上の最小標準タップ
6. 瞬時タップ計算値 = max(It×8, 電動機始動電流) × (5/CT一次)
7. 瞬時タップ整定値 = 計算値以上の最小標準タップ
8. レバー = CB形: 2.0(動作時間≒0.6s)、PF-S形: 1.0
9. 保護協調 = 需要家OCR動作時間 < 電力会社OCR動作時間(1.0s)

計算例(契約150kW / 変圧器200kVA / CT 30/5A)

I = 150 / (1.732 × 6.6) = 13.12 A
It = 200 / (1.732 × 6.6) = 17.50 A
CT二次負荷電流 = 13.12 × (5/30) = 2.187 A
限時タップ計算値 = 2.187 × 1.5 = 3.280 A → 整定値: 3.5 A
瞬時タップ計算値 = 17.50 × 8 × (5/30) = 23.33 A → 整定値: 25 A
レバー = 2.0(CB形)
保護協調 = 0.6s < 1.0s → OK(裕度0.4s)

エクセル手計算や有料ソフトとの違い

ブラウザ完結・インストール不要

エレックス極東やムサシインテックの保護協調ソフトは高機能だが、有料かつPC専用。本ツールはブラウザだけで動作するので、タブレットやスマートフォンからでも現場で即座に確認できる。

計算根拠の透明性

エクセルの自作シートにありがちなのが「数式がブラックボックス化する」問題。セルの参照先を追いかけるのが面倒で、結局検証されないまま使い続けてしまう。本ツールは計算根拠を常に表示するので、第三者検証がしやすい。

標準整定に特化

多段の保護協調や特殊な時間-電流特性には対応していない。その代わり、実務で最も頻度の高い「標準的なOCR整定」に特化して、操作ステップを最小限に抑えた。

OCRの豆知識——電磁形からデジタル形への進化

電磁形OCRの時代

1960年代まで主流だった電磁形OCRは、誘導円盤が回転する機械式の継電器。電流が大きいほど円盤の回転速度が上がり、一定角度回転すると接点が閉じてトリップ信号を出す。レバーは文字通り機械的なレバーで、円盤の回転角度を調整していた。

保護継電器 - Wikipedia

静止形・デジタル形への進化

1980年代以降、電子回路ベースの静止形OCRが登場。さらに2000年代からはマイクロプロセッサを内蔵したデジタル形OCRが主流になった。デジタル形は整定値の設定精度が高く、複数の保護要素を1台に搭載できるメリットがある。ただし基本的な整定の考え方(限時タップ、瞬時タップ、レバー)は電磁形の時代から変わっていない。

現場で使える整定の実務Tips

CT比選定は変圧器定格電流がベース

CT一次側電流は、変圧器の定格電流以上の最小標準値を選ぶのが基本。契約電力ではなく変圧器容量を基準にするのは、将来の負荷増加や突入電流にも対応するため。

レバーは「小さめ」が安全側

レバー値が小さいほどOCRの動作時間が短くなり、電力会社OCRとの時間的裕度が大きくなる。迷ったらレバーを小さめに設定するのが安全側の判断。ただし、小さすぎると負荷変動で不要動作するリスクもある。

整定後は必ず動作試験を実施

計算で求めた整定値をOCRに設定したら、継電器試験器を使って実際に動作時間を確認する。特にデジタルOCRは設定ミス(桁違い、タップとレバーの取り違え)が起きやすいので、動作試験でのダブルチェックが重要。

よくある質問

Q: CB形とPF-S形はどう使い分ける?

CB形は過電流遮断器(VCB等)で遮断する方式で、再投入が可能。PF-S形は電力ヒューズで遮断する方式で、ヒューズ溶断後は交換が必要になる。一般的に300kVA以下の小規模受電にはPF-S形、それ以上はCB形が選定される。設備費はPF-S形が安いが、復旧の迅速性ではCB形が優れる。

Q: デジタルOCRでもこの計算は使える?

基本的な整定の考え方は同じ。デジタルOCRは限時要素の特性(反限時、定限時、強反限時等)を選択できるため、タップとレバーに加えて動作特性の選定が必要になる場合がある。本ツールは標準的な反限時特性を前提としている。

Q: 計算データはどこに保存される?

すべての計算はブラウザ内で完結しており、サーバーへのデータ送信は一切ない。入力値・計算結果がクラウドに保存されることもないので、設備情報のセキュリティが気になる場合も安心して使える。

Q: 電力会社との協議にこのツールの結果をそのまま使える?

本ツールの計算はJEAC 8011に基づく標準的な整定手法に準拠している。「結果をコピー」機能で出力した内容を協議資料の参考として活用できる。ただし、最終的な整定値は電力会社との協議で決定するものなので、本ツールの結果はあくまで参考値として提示することを推奨する。

まとめ

OCR整定計算ツールは、契約電力・変圧器容量・CT比の3つの入力から、限時・瞬時タップとレバーの推奨値を自動計算する。保護協調の判定と計算根拠の表示で、電力会社との協議資料もスムーズに準備できる。

年次点検の前に整定値を再確認しておきたいとき、増設で整定を見直すとき、このツールで手早く計算結果を出せる。

電気設備の計算が気になった人は電線管サイズ判定シミュレーター需要率計算ツールも試してみて。


不具合や要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に教えて。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。高圧受電設備の保護協調計算を誰でも手軽にできるツールを作りたかった。

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