梁に並ぶ千鳥の溶接ビード、あのピッチはどう決めてる?
工場の組立ヤードで長尺のH形鋼にフランジ補剛材を取り付けている現場を見たことがある人なら、ウェブとフランジの間に短い隅肉溶接が点々と並んでいる光景を覚えているはず。50mm溶接して30mm空けて、また50mm溶接して——あの千鳥パターン、実は感覚で決まっているわけじゃない。連続隅肉溶接と同等の強度を満たすようにピッチと溶接長が数式で逆算されている。
とはいえ、現場で「脚長6mmの連続相当を脚長10mmの断続にしたい。ピッチはいくつ?」と聞かれて、すぐ答えられる設計者は意外と少ない。等価のど厚条件・最小溶接長・最大クリアスペース——AWS D1.1とJIS Z 3324が規定するチェック項目は3つ以上ある。電卓片手に毎回やっていると、フランジ1本あたり5分は溶ける。
このツールは、その「毎回の面倒」を1画面で終わらせるために作った。連続相当の脚長と断続脚長、溶接長、環境を入力するだけで、ピッチ・クリアスペース・規格チェックが一括で出てくる。鋼橋・プラント架構・造船ブロックまで、断続隅肉を扱う全現場で使えるはず。
なぜ作ったのか
きっかけは、ある日の鋼橋補剛材の設計レビューだった。ウェブに取り付く垂直補剛材の隅肉溶接を「脚長6mmの連続でもいいけど、熱歪みが怖いから断続にしたい」と若手が相談してきた。そこで筆者は手元のノートにp = L × a_i / a_cと書いて「脚長10mmでL=60mmなら、ピッチ100mm・クリア40mmね」と答えた。
ところが翌週、別の案件で同じことを聞かれて、同じ計算をして、同じ答えを書いた。さらに翌月、今度は腐食環境の屋外橋で「クリアスペース40mmはOK?」と聞かれて「えっ、屋外だから200mm以下だから——あ、OK」となった。3回目くらいで「これ、毎回やるの無駄じゃないか」と気づいた。
既存のWeb電卓を探したが、ピッチだけ出すものや、AWS D1.1の最小長だけチェックするものはあっても、「等価強度ピッチ+最小溶接長+最大クリア(環境別)」を一画面でまとめて出すツールが見つからなかった。AWS D1.1 §2.4.7を英語PDFで読み直すのも毎回面倒だし、JIS Z 3324の紙の本を棚から出すのも気が重い。
それなら作ればいい。既存の/weld-leg-sizeで脚長を決めて、/weld-strengthで強度チェックして、最後にこのツールで断続化する——という3段階フローが自然に組めれば、毎日の溶接設計が一気に軽くなる。そう考えて実装した。
断続隅肉溶接とは何か
断続隅肉溶接 とは ーー のど厚を「時間で薄める」発想
断続隅肉溶接(intermittent fillet weld)とは、連続した溶接線ではなく、一定のピッチで溶接部と非溶接部を交互に配置する隅肉溶接のこと。溶接ビードが「ーー ーー ーー」のように並ぶ。ウェブとフランジの接合、補剛材の取付けなど、せん断流が相対的に小さく連続溶接が過剰になる部位でよく使われる。
たとえるなら、ケーキの生クリームをホール全体に塗らずに「3cmごとに1cm塗って空ける」ような施工。同じ量のクリームでも、脚長を太くして塗る箇所を減らせば見た目のボリュームは保てる——これが断続隅肉の発想だ。溶接金属の総体積は減るが、太い脚長で局所的に応力を伝えるので、全体の強度は保てる。
のど厚等価条件 ーー 平均で考える
断続隅肉が連続隅肉と等価な強度を持つには、単位長さあたりののど厚面積が等しい必要がある。隅肉溶接ののど厚は0.707 × a(aは脚長)なので、連続の場合は単位長さ1あたり0.707 × a_c × 1のせん断面を持つ。
断続の場合は、溶接長Lの区間だけ0.707 × a_i × Lのせん断面があり、ピッチpの区間で平均される。等価条件を立てると次の式になる。
// 連続隅肉 vs 断続隅肉の等価強度条件
0.707 * a_c * p === 0.707 * a_i * L
// 両辺の0.707を消して整理
p = L * (a_i / a_c)
ここでa_cが要求される連続相当の脚長、a_iが実際に施工する断続の脚長、Lが1本の溶接長、pがピッチ(溶接開始点から次の溶接開始点まで)。クリアスペースsはp − Lで求まる。この関係は19世紀末から構造設計の教科書に載っている古典的な関係で、AWS・JIS・Eurocodeのいずれも同じ式を基礎にしている。
並列と千鳥 ーー 配置パターン
両側フィレット溶接の場合、両側を同じ位置で溶接する「並列(chain)」と、ウェブを挟んで半ピッチずらす「千鳥(staggered)」がある。並列は施工が単純で検査しやすい反面、応力集中が同じ断面に重なる。千鳥は応力集中位置がずれるため疲労設計上わずかに有利で、長尺梁の補剛材では千鳥が標準的だ。詳しくは溶接 - Wikipediaも参照。
実務での重要性 ーー 採用メリットと隠れたリスク
メリット1: 熱歪み・残留応力の低減
連続隅肉溶接は入熱量が大きく、長尺部材では溶接後に数十mm単位の反り(角変形・縦曲がり)が出ることがある。断続溶接にすると溶接総長が30〜50%減るため、入熱量もほぼ比例して減り、熱歪みが大幅に軽減される。とくに板厚9mm以下の薄板ウェブの補剛材では、連続にすると反りが規格値(JIS B 0405)を超えやすく、断続が標準となる。
メリット2: 軽量化と工数削減
溶接金属の体積と施工時間が減るため、材料費・人件費・溶接棒消費量のすべてが下がる。1mあたり連続隅肉a6で0.28kg、断続隅肉a6-50@150なら0.09kg——おおよそ1/3の溶接金属で済む計算になる。長尺橋梁で数千m単位の補剛材を施工する現場では、数百万円単位のコスト差が出る。
デメリット1: 腐食集中リスク
ここが最も警戒すべきポイント。断続溶接の非溶接区間は、雨水・結露水・海塩粒子が滞留するポケットになる。屋外大気環境では連続より最大30%早く腐食が進行するという実測データもあり、塗装膜の耐久性もクリアスペースで20%低下する。腐食環境(海岸・化学プラント)では断続隅肉は原則禁止というのがAWS D1.1・JIS Z 3324共通の立場で、この規格では最大クリアスペースを100mmに絞ってリスクを抑えている。
デメリット2: 疲労強度の低下
断続の溶接端部(始終端)は応力集中源になる。静的強度は等価でも、疲労強度はFAT等級で1〜2段階下がる。鉄道橋・クレーン走行桁など変動荷重を受ける部位では断続隅肉は使用禁止または低減係数を適用する必要があり、このツールも本体に警告を出している。建築基準法施行令 第67条および「鋼構造設計規準」(日本建築学会)にも疲労部材での断続使用制限が明記されている。
活躍する場面
- 長尺H形鋼の補剛材取付: ウェブ厚9mmに垂直補剛材を取り付ける典型ケース。連続a6を断続a9-50@120で代替し、熱歪みを抑える
- プラント架構のガセット溶接: 主材が太くフィレット要求脚長が小さいとき、断続化で工数を半減
- タンク側板の補強リング: 円周方向の補強材を断続で取り付け、検査用のクリアスペースを確保
- 造船ブロックの防撓材: 船殻外板に取り付く縦通肋骨(ロンジ)。海水暴露側は連続、内側は断続という使い分けが定石
基本の使い方(3ステップ)
- 連続相当脚長 a_c と断続脚長 a_i を入力: /weld-leg-size で決めた連続脚長をそのまま
a_cに、断続化で使う太めの脚長をa_iに入れる。a_i > a_cが必須 - 溶接長 L と環境を選択: 施工側の1本あたり溶接長(40〜100mmが一般的)と、屋内/屋外大気/腐食環境のいずれかを選ぶ
- 結果確認: ピッチ・クリアスペース・最小溶接長チェック・最大クリアチェックが表示される。すべて緑ならそのまま施工図へ
具体的な使用例
ケース1: 屋内・薄板梁の補剛材(標準例)
- 入力: a_c=5mm, a_i=8mm, L=50mm, 屋内
- 計算: p = 50 × 8/5 = 80mm、s = 80−50 = 30mm、Lmin = max(32, 40) = 40mm
- 結果: ピッチ80mm、クリア30mm、最小長OK(50≥40)、最大クリアOK(30≤300)
- 解釈: 典型的な薄板梁の補剛材。a5連続をa8-50@80に置換、熱歪みを抑えつつ規格クリア
ケース2: 屋内・中厚板補剛材(千鳥配置)
- 入力: a_c=6mm, a_i=10mm, L=60mm, 屋内
- 計算: p = 60 × 10/6 = 100mm、s = 100−60 = 40mm、Lmin = max(40, 40) = 40mm
- 結果: ピッチ100mm、クリア40mm、最小長OK(60≥40)、最大クリアOK(40≤300)
- 解釈: 中厚板の標準パターン。千鳥配置で疲労強度もわずかに改善
ケース3: 屋外大気・鋼橋のスチフナ
- 入力: a_c=6mm, a_i=8mm, L=50mm, 屋外大気
- 計算: p = 50 × 8/6 ≒ 66.7mm → 67mm、s = 67−50 = 17mm、Lmin = 40mm
- 結果: ピッチ67mm、クリア17mm、最小長OK、最大クリアOK(17≤200)
- 解釈: 屋外橋梁のケース。クリアが狭い分、環境制限200mmに対して余裕十分
ケース4: 腐食環境ギリギリNGパターン
- 入力: a_c=5mm, a_i=10mm, L=50mm, 腐食環境
- 計算: p = 50 × 10/5 = 100mm、s = 100−50 = 50mm、Lmin = 40mm
- 結果: ピッチ100mm、クリア50mm、最小長OK、最大クリアOK(50≤100)
- 解釈: 腐食環境でも50mmなら100mm制限内。ただし塗装仕様の見直し必須
ケース5: 最大クリアNGで設計見直し
- 入力: a_c=4mm, a_i=12mm, L=40mm, 腐食環境
- 計算: p = 40 × 12/4 = 120mm、s = 120−40 = 80mm、Lmin = max(48, 40) = 48mm
- 結果: ピッチ120mm、クリア80mm、最小長NG(40<48)、最大クリアNG(80>100)
- 解釈: 脚長を太くしすぎてピッチが開き、腐食環境の100mm制限を破る。Lを48mm以上にして脚長を10mmに抑えるなどの再設計が必要
ケース6: 厚板・長大溶接の設計
- 入力: a_c=8mm, a_i=12mm, L=100mm, 屋内
- 計算: p = 100 × 12/8 = 150mm、s = 150−100 = 50mm、Lmin = max(48, 40) = 48mm
- 結果: ピッチ150mm、クリア50mm、最小長OK、最大クリアOK
- 解釈: 厚板ガセットのケース。L=100mmと長めに取ることで始終端の応力集中を緩和
ケース7: 矛盾ケース(a_i < a_c)
- 入力: a_c=10mm, a_i=6mm, L=50mm, 屋内
- 計算: p = 50 × 6/10 = 30mm、s = 30−50 = −20mm
- 結果: クリアが負値、設計不成立(赤警告)
- 解釈: 断続脚長は必ず連続相当より太くなくてはならない。脚長を上げて再計算
仕組み・アルゴリズム ーー AWS D1.1 vs JIS Z 3324
候補手法の比較: なぜのど厚等価条件を採用したか
断続隅肉のピッチを決める方法は3通りある。
- のど厚面積等価法: 本ツール採用。
p = L × a_i/a_c - 許容せん断力等価法: 溶接部の許容せん断力を単位長さで割り、それに相当する長さを逆算。結果はのど厚法と同値
- AWS規定値直入れ法: AWS D1.1 表2.1の推奨ピッチをテーブル参照。簡便だが任意脚長に対応できない
のど厚等価法は物理的根拠が明瞭で、AWS・JIS・Eurocode 3(EN 1993-1-8)のすべてで採用されている国際標準。テーブル参照式は教育用途には便利だが、実設計では脚長が自由に決まるため汎用性に欠ける。
実装フロー
// 1. 入力検証
if (a_i <= a_c) return { error: "a_i > a_c 必須" };
// 2. ピッチ・クリアスペース算出
const pitch = Math.round(L * (a_i / a_c));
const clearSpace = pitch - L;
// 3. 最小溶接長チェック (AWS D1.1 §2.4.7.2)
const Lmin = Math.max(4 * a_i, 40);
const minLengthOk = L >= Lmin;
// 4. 最大クリアスペースチェック (AWS D1.1 §2.4.7.3)
const maxClear = {
"indoor": 300,
"outdoor-atmospheric": 200,
"outdoor-corrosive": 100,
}[environment];
const maxClearOk = clearSpace <= maxClear;
AWS D1.1 と JIS Z 3324 の規定比較
| 項目 | AWS D1.1 §2.4.7 | JIS Z 3324 |
|---|---|---|
| 最小溶接長 | 4×脚長 かつ ≧1.5in(≈38mm) | 4×脚長 かつ ≧40mm |
| 屋内最大クリア | 12in(≈305mm) | 300mm |
| 屋外大気最大クリア | 8in(≈203mm) | 200mm |
| 腐食環境最大クリア | 4in(≈102mm) | 100mm |
| 疲労部材 | 原則禁止 | 低減係数適用または禁止 |
両規格は実質的にほぼ同じ値を採用している(AWSインチ系→JISメートル系にSI換算しただけ)。本ツールはJIS系の切りのいい数値(40/300/200/100mm)を採用。詳細はAmerican Welding Society D1.1 および JIS Z 3324 を参照のこと。
計算例(ケース2のステップバイステップ)
入力: a_c=6mm, a_i=10mm, L=60mm, 屋内
p = 60 × (10/6) = 60 × 1.6667 = 100mms = 100 − 60 = 40mmLmin = max(4×10, 40) = max(40, 40) = 40mmminLengthOk: 60 ≥ 40 → truemaxClear(indoor) = 300mmmaxClearOk: 40 ≤ 300 → true
結果: ピッチ100mm、クリアスペース40mm、両チェックOK。施工図には「断続隅肉 a10-60@100」と記載する(JIS溶接記号表記)。
他の溶接ツールとの違い
断続隅肉溶接 設計ツールは、等価強度条件からピッチと溶接長を逆算することに特化している。単に脚長から強度を出すツールや歪みを予測するツールとは立ち位置が異なる。
脚長そのものを決める段階では /weld-leg-size が役立つ。荷重から必要なのど厚・脚長を算出するので、まずそちらで「連続隅肉なら a_c=5mm 必要」と決めてから、本ツールで「断続 a_i=8mm・L=50mm ならピッチいくつ?」と逆算する流れが自然だ。
強度の妥当性チェックには /weld-strength が対応している。曲げ・せん断・ねじりを受ける溶接部の応力を検証するツールで、断続化した後の実効のど面積でも再チェックできる。
熱歪みが気になる案件は /weld-distortion で角変形・縦収縮を予測してから断続化の幅を決めると手戻りが減る。連続溶接で歪みが許容を超える場合、断続にすることで入熱量を約 L/p に抑えられる。
競合の汎用溶接計算ソフトはライセンスが高く、数分の判断のためには重すぎる。本ツールは断続化の意思決定だけに絞り、ブラウザで即座に AWS D1.1 §2.4.7・JIS Z 3324 の規定可否まで返す点が明確な差別化だ。
千鳥パターンの力学的合理性
断続溶接を「並列」ではなく「千鳥(ジグザグ)」に配置する慣行には、理論的な裏付けがある。結論から言えば、千鳥は並列より曲げ・ねじりに対するロバスト性が高い。
断面欠損の分散
並列配置だと、両側のスキップ部(溶接していない区間)が梁軸方向の同じ位置に揃う。そこは上下どちらのフランジ-ウェブ境界にも連結がない「弱断面」になり、局所的な応力集中が発生する。一方、千鳥なら片側が溶接されていれば反対側は必ずスキップ、という互い違いで、弱断面が軸方向に分散する。
せん断流の連続性
プレートガーダーの設計ではウェブとフランジの間にせん断流(shear flow)が走る。連続溶接はこれを滑らかに伝達するが、断続でも千鳥ならせん断流が片側→反対側→片側とジグザグに受け渡される。並列だとスキップ区間で両側が同時に途切れ、せん断流の連続性が1本のラインで完全に断たれる。実験的にも、千鳥の方が疲労寿命が数割長い報告がある(Fisher らの疲労試験)。
座屈抑制の観点
薄板ウェブの横座屈では、フランジとの連結点がサポートとして働く。並列だと未連結区間の座屈長さが p-L のままだが、千鳥なら左右どちらかは常に連結されているので、実効座屈長さが約半分になる。細長比で言えば √2 倍の座屈耐力向上に相当する。
伝統技法としての確立
日本の造船業では戦前から千鳥溶接が標準だった。当時はリベットとのハイブリッドで、リベット孔を断続溶接のスキップ部に合わせることで構造連続性を確保していた。溶接が主流になった現代でもパターンだけが残り、JIS Z 3324 にも「千鳥を推奨」と明記されている。現場の職人が口頭で「千鳥のほうが持つんや」と言うのは、このような歴史的・力学的な裏付けの集積だ。
Tips — 施工管理のコツ
- 墨出しは開先ゲージを使う — ピッチ p とクリアスペース s を現場チョークで書くと累積誤差が数cm単位で出る。1m ごとに基準線を引き、各断続区間は専用ゲージで墨出しすると誤差 ±2mm に収まる。
- 始端・終端は連続で回す — 梁端部は応力集中部で、断続のまま終わらせると亀裂の起点になりやすい。両端 50-100mm は連続隅肉にして、中央部のみ断続化するのが AWS D1.1 の慣行だ。
- 千鳥配置は溶接順序をジグザグに — 同じ側を連続して打つと熱が偏り角変形が片側に寄る。左→右→左→右と交互に進めると熱バランスが取れ、残留歪みが最小化する。
- クリアスペース過大は NG の前に「錆」を疑え — 屋外大気暴露でスキップ200mm ギリギリでも、隙間に雨水が滞留すると境界で腐食が進行する。余裕をもって 150mm 程度で設計し、メンテナンス性を確保したい。
- 自動溶接の最小長に注意 — マグ半自動なら L=40mm でも問題ないが、サブマージアーク自動溶接ではアーク安定に最低 L=60-80mm 必要な機種が多い。施工法に合わせて最小長を上方修正する。
よくある質問
ピッチが計算値より少し大きくなっても構造上問題ない?
等価強度条件 p = L × (a_i/a_c) は上限なので、計算値より大きくすると強度不足、小さくすると余裕が出る。2-3mm 程度の現場誤差は安全側(小さめ)に丸めれば問題ない。ただし AWS D1.1 の最大クリアスペース(s ≦ 300/200/100mm)は別途絶対条件なので、ピッチを大きくする方向の調整は規格違反になりやすい。
疲労荷重下でも断続溶接は使える?
原則 NG。AWS D1.1 §2.4.7 でも橋梁の主応力部材など疲労等級の厳しい箇所では断続溶接を禁止している。橋脚やクレーンガーダーなどの動的荷重構造では必ず連続隅肉とし、熱歪みが問題なら脚長を下げるか溶接順序で対応する方針にしたい。本ツールは静的荷重前提の設計支援だ。
a_c=5mm と a_i=8mm のように脚長を変える理由は?
断続化すると単位長さあたりの溶接量が減るので、それを補うために各ビードを太くする。連続相当強度を維持するには、a_i > a_c でなければピッチが溶接長より短くなる(等間隔に詰めても足りない)。本ツールは a_c > a_i の矛盾入力を赤字で警告するので、脚長を決める段階で /weld-leg-size を併用してほしい。
AWS D1.1 と JIS Z 3324 で規定が違う場合はどちら優先?
日本国内の鋼構造なら JIS、海外向けや ASME 案件なら AWS を適用するのが原則。両規格の最小溶接長(4×脚長 かつ ≧40mm)はほぼ同値だが、最大クリアスペースは JIS が環境区分を細分化していない点で異なる。本ツールは厳しい側の AWS D1.1 §2.4.7 値(屋内300/大気200/腐食100mm)を採用しているので、JIS 設計でも安全側でカバーできる。
千鳥と並列、強度計算上の差はある?
等価強度条件 p = L × (a_i/a_c) 自体は配置に依らないので、静的強度は同じだ。差が出るのは疲労強度・座屈強度・せん断流の連続性で、千鳥のほうがロバストになる。本ツールは配置切替をUI上で表示するだけで計算値には反映しない。疲労が効くケースでは連続溶接を選び、静的ならどちらでも OK という使い分けを推奨する。
まとめ
断続隅肉溶接は、連続溶接の強度・歪み・コストのバランスを取るための古典的な手法だ。等価強度条件 p = L × (a_i/a_c) さえ押さえれば設計は単純だが、AWS D1.1 §2.4.7 の最小長・最大クリアスペースを同時にチェックする必要があり、電卓だと毎回面倒だ。本ツールはその一連の判断をブラウザ上で完結させる。
脚長選定は /weld-leg-size、強度検証は /weld-strength、熱歪みの予測は /weld-distortion と併用すれば、溶接設計の大半はこの4ツールで回せる。使ってみて気になる点があれば問い合わせフォームから連絡してほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。鋼橋補剛材の設計レビューで断続隅肉のピッチを毎回電卓で叩いていた経験から、連続相当脚長からAWS/JIS規定まで1画面でチェックできるように作ったツールだ。
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